リザルトノベル
◆アクション・プラン
吉坂心優音(五十嵐晃太)
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☆夕方位のカプカプビーチ
「晃ちゃん、プール楽しかったねぇ♪
去年の夏休みはテニスの合宿とか部活や事件で忙しかったし、海とかプールに行く暇無かったもんねぇ…
でも今年は行けて良かったぁ♪
来年は亮ちゃんとつっちゃんと一緒に来たいなぁ☆
うん!ダブルデートだよぉ(ニコ」
(二人で手を繋ぎながら仲良く歩く)
「そう言えば、此処、カプカプがいるんだって!
それで、そのカプカプを抱き締めると幸運がもたらされると言われてるんだよ~
二人で抱締めると尚更良いって♪
って、へっ?
アレ?いつの間にいたんだろう?
気付かなくて御免ね?(頭撫でてみる
ねぇ、神様?
君を抱締めたいんだけど良いかなぁ?
(ふふっ又ハモっちゃった…♪)」
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夕暮れのカプカプビーチを、男女が行く。
神人、吉坂心優音は自分より少し背の高い精霊、五十嵐晃太をそっと見上げた。
真っ白な砂浜が沈みゆく太陽の光を受けて薄オレンジにキラキラ輝いている。
燃えるようなオレンジをバックにした晃太の笑顔が眩しくて、心優音は少しドキッとする。
「みゆ、ほら」
スッと差し出された手を取り、優しく指を絡めてもう一度二人は歩き出す。
きゅっきゅっと音を立てて、砂浜を歩めばまるで二人の足音は一つの音楽のようにさえ聞こえた。
「晃ちゃん」
「ん?」
「プール楽しかったねぇ」
昼間にホテルの最上階にあるプールで思う存分泳いだことを思いだし、心優音はまた行きたいな~とうっとり息を吐く。
そんな心優音の横顔に、晃太は優しく微笑んで答えた。
「せやな、久々にプールで泳ぎまくったわぁ……」
ウィンクルムの仕事でバタバタしていることもあり、こうやってゆっくりプライベートで泳ぐなんて、二人にとってはだいぶ久しぶりなことになるだろう。
「去年の夏休みはテニスの合宿とか部活や事件で忙しかったし、海とかプールに行く暇無かったもんねぇ……」
「ホンマやで、去年はほぼほぼそれしかやっとらん記憶しかあらへんもん」
はは、と晃太が苦笑するのに合わせて、心優音もくすくすと笑う。
そう、夏休み、と言っても去年は全く暇がなかった。
だから、実質ウィンクルムとしての生活が始まって初の夏休みらしい夏休みになったことだろう。
今年こそ、こんなにゆっくりしてていいのかな? なんて真面目な心優音の胸にちらと過ぎるが、フルに力を出し切るためにも休息は必要。にっこりと破顔して心優音は晃太を見つめた。
「でも今年は行けて良かったぁ♪」
「めっちゃたのしかったわ!」
ね、と微笑みあう二人。
んーっと伸びをして、晃太が叫んだ。
「夏休み最高、いやっふー!」
海に向かって叫べば、ざざん、と波が相槌を打ってくれる。
傍らでふふ、と心優音が笑った。
「来年は晃ちゃんのお兄ちゃんと、その彼女さんと一緒に来たいなぁ☆」
あ~なるほどな、と晃太は頷く。
優しい性格の心優音の事だ、この楽しさ、風景を兄カップルたちにも、と思ったのだろう。少し考え込んで晃太は口を開いた。
「来年は兄貴たちとも来れたらええなぁ?」
「うんっ、ダブルデートだよぉ」
無邪気に笑う彼女を見て、自然と晃太も笑みが零れる。
「さ、もう少しあっちの方も行ってみよか?」
晃太がもう一度手を差し伸べると、心優音はその手に自分の華奢な手を重ねる。
二人はその手がつながっているのがごく自然な事であるように、寄り添って波打ち際を歩き始めた。
波が、寄せては返すのを繰り返す。海の囁きに耳を傾けながら、人気のないビーチをゆるりと歩いていく二人の影が夕日に照らされ長く伸びていた。
思い出したように、心優音があっと声を上げる。
なした? と晃太に問われ、心優音は瞳をキラキラさせて語り始めた。
「そう言えば、此処、カプカプがいるんだって!」
「ほぉ……、噂によく聞く神様やんな?」
このビーチの名前にもなっている『カプカプ』この砂浜自体はそんなに広いものではないので、もしかしたら会えるかもと巷で囁かれている。
「確か小さな男の子やっけ?」
うんうん! と心優音が嬉しそうに頷くのを、微笑ましく晃太は見つめる。
「恋人同士が来ると好奇心から寄ってくる、とか?」
「そうそう! 晃ちゃん良く知ってるね!」
もしかしたらあたし達もカップルだからカプカプ様来てくれるかな? 心優音は悪戯っぽく笑って、晃太とつないだ手を一度離して、絡めるように腕を組んでもう一度手をつなぐ。
「それで、そのカプカプを抱き締めると幸運がもたらされると言われてるんだよ~」
抱きついたまま上目づかいで晃太を見上げると、晃太が少し頬を赤らめる。
その視線は、ちょっと反則だ。
「そか、会えたらええなぁ?」
「二人で抱き締めると尚更良いって♪」
開いた方の手でぽんぽんと心優音の頭を撫でてやると、心優音は擽ったそうに身をよじる。どこかから、くっついてきていたと思われる撮影クルーのシャッター音が聞こえた。
「あっ」
「今、撮られたね……」
苦笑すると、ちょっと離れた木陰から最高のショットを頂いてご満悦のアルバが親指を突き立てて会釈した。
唇が「ごゆっくり!」と動く。
なんだか見せつけちゃったなぁと心優音が会釈をすると、撮影クルーはこれ以上二人を追跡するのも無粋と判断したのかくるりと踵を返して撤収した。
「ふふ、あの写真もらえるのかな?」
「一枚しか撮ってなかったみたいだけどその前の動画で撮ってたんかな!?」
ははは、とあっけらかんとして笑う二人。
が、ぴたり、と止まった。
晃太が急に声を潜める。
「……なぁみゆ?」
「って、へっ?」
囁くような晃太の声に、心優音は晃太が視線を送る方を見る。
そこに、真っ白な少年が目をキラキラさせて佇んでいた。
先ほどまでの二人のラブラブっぷりをよ~く見ていた模様。
「カプカプ様ってこの子やと思う……」
心優音も、驚きを隠せぬままこくり、と頷く。
まさか、噂の神様に出会えるだなんて。
「アレ? ……いつの間にいたんだろう?」
撮影クルーに会釈を返したときはいなかった。確かにいなかったはずなのだが。
神出鬼没とはまさにこのこと。
「いや、話に夢中やってんから気付かんかったんや」
「気付かなくて御免ね?」
そっと手を伸ばし、嫌がらないのを確認して心優音はカプカプの頭を優しく撫でる。
言葉を発さない小さな神様は嬉しそうに目を細め、心優音の手のぬくもりに身をゆだねた。
「さてと、なぁ神さん?」
「ねぇ、神様?」
呼びかけた声が被って、二人は顔を見合わせた。そして、少し笑う。
カプカプは、そんな二人を微笑ましく見上げた。
どちらから何を言うのかな? そんな表情のカプカプに、二人はほぼ同時に口を開く。
「君を抱締めたいんだけど良いかなぁ?」
「あんさんを抱締めたいんやけどえぇかな?」
言った内容がそのまま被っていることに、二人はぷっと吹き出した。
(ふふっ又ハモっちゃった……♪)
なんだか通じ合っているみたいで、嬉しい。
顔を見合わせ微笑みあい、それからカプカプの返事を待った。
こくり、と頷いたのを見て、二人は両腕を広げる。おいで、と言うと、抱きしめることを許可したはずのカプカプがととと、と走り出した。
「え?」
逃げているのではないようだ。
とてとてと走っては二人がついてくるのを確認するように振り返っている。
ついておいで、と言いたいのに気付き、二人はカプカプの後ろを追いかけていく。
すると、カプカプが急に立ち止まった。
「ここって……」
そこは、ちょうど綺麗に夕日の光が差しこむ場所。
ファイアー・オパールのように煌めく海に、桃色の雲を浮かべたサンセットの空。
白い砂はキラキラと輝き、まるで映画のワンシーンのよう。
「そっか、ここに俺らを連れてきたかったんやな」
おおきにな、と晃太がカプカプの頭を撫でる。
「ほんと……すごく綺麗だよ……ありがとう」
心優音が瞳を潤ませながらお礼を言うと、カプカプは照れくさそうに首をことりと傾げた。それから、だっこを求めるように大きく両腕を広げる。
二人は顔を見合わせて優しく頷き合ってから、そっとカプカプを間に挟んでぎゅっと抱きしめた。
まるで本当の父と母に抱きしめられているかのように、カプカプは二人の愛を感じる。
嬉しそうに微笑むカプカプに、晃太と心優音は互いの額をこつんとくっつけて笑いあった。
――本当の家族みたいだね。と。
依頼結果:大成功