リザルトノベル
◆アクション・プラン
ひろの(ルシエロ=ザガン)
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夜のカプカプビーチ
ちょっと歩きづらい。(ふらつく
(声に振り向く
つかまれってこと、かな。
(手を見て考えた後、そっと掴む
ルシェの手、あったかい。
なんとなく、少し力を入れて握る。
軽く力を入れられて、同じように返す。
遊んでるみたい。(少し楽しくて口元が綻ぶ
いつも手を握ってくれる。
私と手を握るの、嫌じゃないなら嬉しい。
私から握っても、大丈夫なのかな。(人肌恋しい
(見上げて一度目を逸らし、再度目を見る
「あの、……いつもありがとう」
一緒に居てくれるのも、手を握ってくれるのも。
本当に嬉しい、から。嬉しいって、思えるから。
(動きを目で追う
(繋いでない手で米神に触れ
……スキンシップが好き、なのかな。(わかってない
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夜のカプカプビーチは、恋人達や恋人未満の二人に最適だ。もちろん、友人同士で楽しむことも出来るが、一番は想い合う者達だろう。澄んだ空気がいつもよりも気持ちを素直にしてくれるかもしれない。
そんな夜のカプカプビーチに、『ひろの』と『ルシエロ=ザガン』は来ていた。
何を思ってか、ルシエロは人が少ない場所へとひたすらに歩みを進める。
ひろのはそんなルシエロの後ろをついていくが、そこは海岸、足が取られやすく若干ふらついてしまう。
(ちょっと歩きづらい)
足元を見て、体勢を整える。
「ヒロノ」
そんな事をやっていれば、聴きなれた美しい声が飛んできて顔を上げる。
そこにはふらつくひろのへと手を差し出しているルシエロがいた。
一瞬きょとんとするひろのを確認して、けれどルシエロは特に何も言わない。
(意味がわからない訳じゃないだろう)
思いながら、ただ待つ。
(つかまれってこと、かな)
考えたのは数秒、辿り着いたのは正解。
ひろのは差し出された手をそっと掴むと、ルシエロは小さく微笑んでまた歩き出した。
さっきよりは、ゆっくりと。ひろのに合わせるかのように。
(ルシェの手、あったかい)
痛く無い程度にしっかりと掴まれた手を見るともなしに見て、ひろのはなんとなく、少し力を入れて握り返す。ルシエロはひろのが力を入れたのを感じ、同じように軽く一度力を込める。
ひろのはまたお返しとばかりにきゅっと握る。ルシエロにまた握り返す。
(遊んでるみたい)
ひろのは楽しくて口元を綻ばせる。ほんの少しだけ。けれど、斜め上からチラリと見たルシエロはその表情の変化に気付く。
何という事も無い戯れ。それでも、ひろのは喜んでいる。
(この程度で喜ぶとは。加減が難しいな)
ルシエロは呆れにも似た笑みを零す。今後の距離の詰め方を考えながら。
ひろのはひろので、握った手で戯れながら、その手前の事を考える。
いつからだろう、二人の間では手を繋ぐことが多かった。
(いつも手を握ってくれる)
はぐれないように。任務上必要に応じて。支える為に。
色々な理由から手を繋ぐ。今となってはもう、手を繋ぐ事は普通の事となっていた。
(私と手を握るの、嫌じゃないなら嬉しい)
手を差し出してくれるのは、ルシエロだ。今日だってそうだ。だから、嫌じゃないと思いたい。
そう、いつだってルシエロからなのだ。ひろのからではない。ひろのではせいぜい、服の端を掴む程度だ。それ位しか近づけない。
だけど、もしルシエロが嫌じゃないのなら。
(私から握っても、大丈夫なのかな)
何か理由が無くても、ただその手の温もりを欲してもいいのだろうか。
ひろのはきゅっとまた力を込める。ルシエロもまた力を込めて返す。
自分から握った時も、同じように返されたら、と思いながら。
(素直というか、純粋というか)
繰り返される児戯に応じながら、ルシエロはまだまだひろのは子供なのだと改めて認識する。
「ルシェ」
不意に、ひろのが呼びかける。二人の足は自然と止まる。
ひろのはルシエロを見上げて一度目を逸らし、けれど決心したように再度目を見た。
自分から求めてもいいのかと、そう思う前に、言うべき事があると気がついていた。それを伝える為に、ひろのはじっとルシエロを見つめる。
「あの……いつもありがとう」
ルシエロは驚いたようにひろのを見る。その視線に気付いたけれど、ひろのは止める事無く続ける。
「一緒に居てくれるのも、手を握ってくれるのも。本当に嬉しい、から。嬉しいって、思えるから」
だから、ありがとう。
突然神人に顕現して、流されるように保護され、精霊と出会って、契約して、任務も幾つかこなして。
その間に少しずつでも、心が近づいて。
それでも不安だった。役に立たなくて、足手まといで、それでルシエロに怪我をさせてしまった事だってあったから、余計に不安だった。
誰にも言えなかった事と一緒に、それを伝えたことがある。いらない、と言われるのではないかと、それが怖いのだと、泣きながら伝えたことがある。
ルシエロは、それを受け止めてくれた。
『オマエが必要だ。だから、ヒロノ以外はいらん』
そう言われた事がどれだけ嬉しかったか。安堵したか。
あの時には言えなかった感謝の気持ちを、今告げた。告げて、もう一度、今度は一瞬ではなく、ずっと力を込めて握る。
ルシエロはそのかけられた力を同じようにかけ返しながら考える。
(突然どうしたのやら)
ルシエロにはひろのが言い出した意図が分からない。けれど、意図がどうであったとしても、ルシエロはただ受け止めるだけだ。
繋いでいない手をひろのの頭へと伸ばす。ひろのがその腕の動きを目で追うのを意識しながら、そっとひろのの髪をかきあげる。
かきあげ、そして身をかがめ、そっとひろのの米神に口付ける。
「どういたしまして」
米神から唇を離し、微笑みながら言う。
目の前で微笑まれたひろのは、目を丸くして固まっていた。
それをルシエロはおかしそうに喉で笑って体を起こす。
ひろのは繋いでない手で米神に触れ、今起こった事を振り返る。
キス、された。米神に。キス…………え?
(……スキンシップが好き、なのかな)
今度はひろのがルシエロの意図をつかめない。つかめず、混乱しながら間違った答えで納得しようとする。
自分の心臓がトクトクと小鳥のように速く音を刻んでいるのをそのままに。
(本来ならキスの一つもしたいが)
思いながらルシエロはひろのの唇を見る。見て、けれど、と思う。
(まだ早い)
やっと慣れて来たひろのを怖がらせる気も、逃がす気も無い。少しずつだ。少しずつ、けれど確実に。
「さて」
ルシエロが軽く伸びをする。それでひろのも意識を切り替える。
「ヒロノが眠くなる前に、夜の散歩を楽しむとしよう」
からかうように言えば、ひろのが「まだ大丈夫」と訴える。けれど語尾が弱くなっているから、ルシエロは喉を震わせて楽しそうに笑う。
夜の海岸を二人はまた歩きだす。波の音が二人の耳に心地良く響く。
「ルシェ、あのね」
「なんだ」
もう一つだけ、とひろのは口にする。
今度口にするのは、小さなお願い。
「手を、握ってもいい?」
「今握っているだろう」
「そうじゃ、なくて……えっと」
言葉を選んでひろのは言う。
「今度、私から、手を握っても、いい?」
恥ずかしそうに呟かれた声は、波に掻き消されそうな大きさだったが、ルシエロがそれを聞き逃すわけが無く。
「期待している」
ルシエロは満足気に微笑んで答え、その答えにひろのも口元を緩ませた。
少し離れたところにある巨大な岩「カプカプロック」に、真っ白な小さな男の子が座っている。
歩き出した二人の後姿を興味深そうに見て、けれどそこから動かない。
恋人達を見つけると好奇心から近寄ってくる神様の使い「カプカプ」。
二人がカプカプと出会うことになるのは、まだ少し先の話のようだ。
依頼結果:大成功