リザルトノベル
◆アクション・プラン
アマリリス(ヴェルナー)
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準備運動を終えて色んな意味で
長かった…と内心思いつつプールへ入る
まって、どこに行くの
では別行動でとばかりに去ろうとしたの引きとめ
まあ、それもそうだけど…
じゃあ泳ぎを教えて
わたくしも泳げるけど、きっと貴方の方が上手でしょう?
バカンスってなにかしらと思わなくもないけれど
まあ、一緒にいられるのならそれでいいわ
ある程度たちバーに誘い休憩
冷たいジュースを注文
座ってのんびりとしていたら撮影されている人が目に入る
仲がいい様子に若干羨ましさを覚えつつも
うちはうち、よそはよそと再度思う
まあ、貴方はあまり撮影とか得意そうではないものね
…そ、そう
想定外の答えが返ってきてうまく返事ができない
意味もなくストローぐるぐる
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プールの水は冷たくて気持ち良い。
(ここまで、色んな意味で長かったですわ……)
アマリリスはしみじみとそう思いながら、プールの中へと入った。
準備運動だけで、プールに入る前からぐったり疲れてしまった気がする。
ヴェルナーに教えられての準備運動。
触れる肌と近さに、心臓は限界を訴える程ドキドキしてしまって……どうにかなりそうだった。
「ふう……」
ゆっくり肩まで浸かると、吐息が漏れる。
火照った身体にプールの水は心地良かった。
ヴェルナーはそんなアマリリスの様子を確認して、一つ満足そうに頷く。
これで不測なし。
彼もまたプールにきちんと足先から浸かり、アマリリスの隣へ歩み寄った。
──ヴェルナー、取り敢えず少し泳ぎましょうか。
そう言い掛けたアマリリスの言葉は、ヴェルナーの声に遮られる。
「それでは」
ぺこりと頭を下げるなり、彼はアマリリスに背を向けた。
──え? まさか?
アマリリスは思わずきょとんとしてから、慌てて彼の腕を掴む。
──あ、筋肉の感触が……などと思っている場合ではありませんわ。
「まって、どこに行くの」
「プールですし、泳ごうかと思いまして」
振り向いたヴェルナーが、何故引き止められたのか不思議そうに首を傾げる。
「まあ、そうね……プールですしね……それもそうだけど……」
アマリリスはそっと彼の腕を離しながら、考えた。
「じゃあ、わたくしに泳ぎを教えて」
視線を上げて彼を見つめれば、ヴェルナーは瞬きする。
「アマリリスは泳げないんですか?」
「わたくしも泳げるけど、きっと貴方の方が上手でしょう?」
「わかりました。お任せください」
ヴェルナーは大きく頷いた。
「では、基礎から順にお教えします」
活き活きと輝くヴェルナーの青い瞳に、アマリリスは気付かれないよう微笑む。
(バカンスってなにかしらと思わなくもないけれど……まあ、一緒にいられるのならそれでいいわ)
彼の顔を見ていたら、そう思えた。
「まずは、ボビングで息継ぎの練習をしましょう」
「ボビング?」
「水底を蹴ってジャンプする勢いで、水中と水上、交互に顔を出し入れする上下運動です」
ヴェルナーは軽い動きで、水中でジャンプしては沈む動作をやってみせた。
「これで息継ぎの練習をします」
「なるほど……やってみますわ」
アマリリスはヴェルナーの真似をして、上下運動にチャレンジする。
「水上で一気に息を吸って」
「すぅ」
「水中で少しずつ吐いて」
ぶくぶく。
二人で並んでジャンプして沈むを繰り返す。一定のリズムで繰り返せば、息継ぎは段々と苦にならなくなり、リラックスして出来るようになった。
「これで息継ぎの練習は終了です。次は水面に浮く練習をしましょう」
満足そうにヴェルナーは頷いて、今度は膝を抱え丸くなって水に浮いてみせる。
「体の力を抜いていれば、沈む事はありません」
「わかりましたわ」
「大きく息を吸って上半身を前に倒してください」
背中にヴェルナーの手が触れて、アマリリスはドキドキと鼓動が早まるのを感じる。
(ヴェルナーに気付かれないといいのだけども……)
鈍感な彼は気付かないに違いない。そう思ったら、ちょっぴり切なくもなった。
何という厄介な難しい相手なのだろうか。今更ではあるが。
そうこうしている内に、アマリリスは、背中を上にして浮く事が出来た。
「アマリリス。抱えている膝を離して、手足の力を抜いて下さい」
言われた通り膝を離せば、所謂くらげ浮きと呼ばれる体勢で、身体全体で浮遊感を感じる。
「ゆっくり起き上がります」
ヴェルナーに支えて貰い、アマリリスは再び水底に足を付いて立った。
「今の感覚を忘れないでください。では、続いてキックの練習をしましょう。私が補助します」
ヴェルナーの大きな手が、アマリリスの両手を持つ。
「顎は引いて、水中では目を開けたままで、お臍の辺りを見て下さい。足は力を抜いて──小さくゆっくりとキックを」
アマリリスは頷くと、水中に浮いた。ヴェルナーに引っ張って貰いながら、ゆっくりバタ足で水中を進む。
力強い手がしっかりと支えてくれるお陰で、アマリリスに恐怖心はない。彼が掴む手が熱い。
「アマリリス。そのまま息継ぎも練習しましょう。人差し指から水に入れて、思いっきり肩から伸ばすようにして前に出します」
ヴェルナーの手に誘導されるまま、水を掻く。
彼の指示通りに腕を動かすと、ぐんと身体が前に進んだ気がした。
息継ぎのタイミングが少し難しかったが、これも彼の指示に従えば、スムーズに出来るようになる。
「何だか、今までの泳ぎよりも……凄く楽になった気がしますわ」
「それは良かった。綺麗なフォームですよ、アマリリス」
ヴェルナーがにっこりと満足そうに笑った。
その顔に少しだけ見惚れてしまってから、アマリリスは視線を逸らす。
「そ、そろそろ少し休憩しましょうか」
「そうですね。適度な休憩が必要です」
アマリリスの言葉に、ヴェルナーは何の疑問も持たずに頷いた。
「カフェ・バーに行きましょう」
「では、アマリリス。少し待って下さい」
ヴェルナーは先にプールから上がると、アマリリスを引き上げる為に手を差し出す。
その事に嬉しくなる自分を感じながら、アマリリスはその手を取った。
カフェ・バーのテーブル席に向かい合って座る。
大きな窓からは明るい陽射しが降り注いでいて、ゴールドビーチの絶景が広がっていた。
アマリリスとヴェルナーは、トロピカルドリンクを注文した。
挿してあるハイビスカスとライムが、南国な雰囲気で華やかだ。ビタミンカラーも美しい。
ストローに口を付ければ、冷たい甘さが口いっぱいに広がった。
「甘いですが、後味がさっぱりしていて美味しいですね」
「そうね。パイナップルの味が爽やかだわ」
思っていた以上に喉が渇いていたらしく、二人は暫し夢中で楽しんだ。
「それにしても……ヴェルナー、泳ぎを教えるのが上手ね」
半分ほどグラスを空けて、アマリリスが口を開く。
「驚きましたわ」
「いえ……アマリリスは元々泳げましたから、スムーズだっただけかと」
少し照れた様子で、ヴェルナーが首を振った。
「悪い癖が付いていませんでしたし」
手の掻きなど、癖が付いていると矯正し難いのだと、彼は笑う。
会話からして、バカンスも色気の欠片も無いけれど……これはこれでいいのかしら……と、アマリリスは思った。
キラッ。
ふと、視界の端に光るカメラに、アマリリスは気付いた。
仲睦まじいウィンクルム達を、テレビカメラが撮影している。
彼らは肩を抱き合って、楽しそうに笑い合っている。
「……」
正直、若干羨ましい。眩しいくらいに。
(でも──)
視線を戻すと、ヴェルナーが首を傾けている。
(うちはうち、よそはよそ、ですわ)
ヴェルナーとあんな風にしている自分なんて、想像すら出来ないし。ましてや心臓が確実に持たない。
「撮影ですか」
アマリリスの視線を追って、撮影カメラに気付いたヴェルナーが少し神妙な顔をした。
撮影は難しいと思った彼は、事前にアマリリスに頼んで、撮影への参加を断っていたのだ。
「まあ、貴方はあまり撮影とか得意そうではないものね」
申し訳なさそうな顔をしている彼に、アマリリスは微笑む。
「そうですね、そういったものはあまり……」
ヴェルナーは視線を落とし、トロピカルドリンクのハイビスカスを見つめた。
「それもありますが……」
視線を上げると、真っ直ぐにアマリリスを見てくる。
不覚にも心臓が跳ねた。
「あまり他の方に見られるのは、なぜかはよくわからないのですが……好ましくはないなと」
考え考えヴェルナーは言葉を紡いだ。
「……そ、そう」
肝心な主語がない言葉。
でも、彼の眼差しが雄弁に告げている。
想定外過ぎる。何て返事をしたらいいのかしら?
相槌だって震えてしまった。
ストローを指先でぐるぐる回すと、ドリンクもクルクル回って。
何だか、わたくしみたい──。
(仕方ないですわ)
だって──。
ヴェルナーが軽く目を見開く。
目の前のアマリリスが、とても綺麗に微笑んでいたから。
依頼結果:大成功