リザルトノベル
◆アクション・プラン
ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
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仲睦まじい様子を見せると喜ばれるんですね
チャンスですね
ただディエゴさんが「はいそうですか」とうなずくわけがありません
なので、かき氷早食い勝負を持ち掛けます
私が勝ったら「一日夫婦同然の態度で過ごす事」
かき氷のカップは四つ
先に二つ食べたほうが勝ち
甘いものが苦手なのはわかっています、この海の家にはコーヒー味のかき氷もあるんですよ
ですがシロップはカップの下のほうにあるので崩すまで何の味かわかりません。
コーヒー味のかき氷があると言っただけで
勝負に使うとは言ってません
ディエゴさんちょっと老けましたね
撮影の方がきました!
はい、あーんして ダーリン
ビデオも回してますから
グルメリポしないと!(嘘)
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●多少の卑怯はご愛嬌
パシオン・シーにあるゴールドビーチで、『ハロルド』と『ディエゴ・ルナ・クィンテロ』は夏の休暇に訪れている。
すぐそばには海の家があり、夏らしい食べ物が揃っている。定番の苺味のかき氷や珍しいコーヒー味のかき氷も置いてある。
「仲睦まじい様子を見せると喜ばれるんですね」
ウィンクルムは容姿端麗な男女のペアで、その華やかさから人目を惹く。パシオン・シーにはテレビ撮影のクルーがきており、夏の行楽を満喫するウィンクルムのベストショットをカメラにとらえようと、鵜の目鷹の目で狙っている。
「チャンスですね」
参謀や知将を思わせる含みのある口調で、ハロルドはつぶやいた。
「ただ……」
と、少しうつむきがちになって考え込む。
「ディエゴさんが『はいそうですか』とうなずくわけがありません」
「よくわかってるじゃないか」
後ろからディエゴが近づいて、何やら思案しているハロルドへと声をかけた。
「何度も言うが俺は人前でそういう態度はとらない」
腕組みをしながら、ディエゴはそう言っている。ハロルドとディエゴはかなり親密な関係を築いてきているウィンクルムなのだが、ディエゴは人前でイチャイチャすることに抵抗感を持っている。
そんなディエゴに対抗すべく、ハロルドは作戦を考えた。
一度ディエゴと別行動で海の家に買い物に向かう。
戻ってきたハロルドは、両手にかき氷のカップを抱えていた。白い氷で覆われていて、何味かはわからない。
「ディエゴさん。私と勝負しましょう」
ハロルドはディエゴにあるゲームを持ち掛ける。
「かき氷早食い勝負です。私が勝ったら『一日夫婦同然の態度で過ごす事』」
「かき氷早食い勝負……。なんで俺がそんな勝負受けなきゃいけない」
ちなみに、ディエゴが買った場合に、彼にどんな勝利特典があるのかは一切言及されていない。ハロルド、最初からすでに勝つ気充分である。それだけハロルドはこの時点ですでに自分の勝利を確信していた……ということだろうか。
「かき氷のカップは四つ。先に二つ食べたほうが勝ち」
ルール説明をおこなう。
「俺は甘いもの苦手なんだぞ……」
困り気味の表情を浮かべるディエゴだったが、ハロルドは涼しい顔で頷いた。
「甘いものが苦手なのはわかっています、この海の家にはコーヒー味のかき氷もあるんですよ」
四つのかき氷を持ちながら、ハロルドはかすかに唇の端を上げたイタズラっぽい微笑みをディエゴに向けた。
「ですがシロップはカップの下のほうにあるので崩すまで何の味かわかりません」
「コーヒー味のかき氷? わざわざ用意したのか……わかった、わかった。捨てるのも悪いし受けてやるよ。絶対勝つが」
勝負のためにそこまで準備をしたハロルドの申し出を断るのも気が引ける。ディエゴはこの勝負に受けて立つことにした。
「その心意気です。はい、どうぞ」
ハロルドは余裕に満ちた受け答えで、ディエゴにかき氷を手渡した。
かき氷に添えられていた細長い匙で、ディエゴはサクサクと味のない氷を口に運ぶ。甘い味が苦手な彼は、まずは上の氷を食べて取り除き、底のシロップが何か確認する、という方法をとった。
「む……」
真っ赤なシロップがカップの底に溜まっている。
(最初のカップは苺味だ)
かき氷を食べるハロルドの姿をディエゴはチラリと確認する。けっこう順調なペースで食べ進んでいる。
早食い勝負なので、相手の食べるスピードも無視できないが、ディエゴが知りたいのは別の情報だ。ハロルドが手にしているかき氷はすでにシロップで色づいており、ド派手で人工的な赤ピンクに染まっていた。
(……エクレールのも苺味だな)
ディエゴは先ほどハロルドが説明したルールを思い返す。
(ということは残り二つはコーヒー味、苺味は辛いが我慢して早く食べよう)
そう覚悟を決めると、ディエゴは猛然とかき氷を食べ始めた。
苦手な甘い味と頭にキーンとくる痛みのダブルパンチが襲ってきたが、そんなことで音を上げる気はない。
甘いもの対策として、白い氷を慎重に残しておいて、苺シロップでマヒした舌を休めたりと工夫した。
どうにか一個目のカップを食べ終えて、ディエゴは次のかき氷に手を伸ばす。
次のカップの中身はコーヒー味だと思われる。
コーヒーの味で苺の甘さを中和したかったので、ディエゴはすぐに味のない氷部分を底のシロップへと崩し落とした。
「!?」
予期せぬ色彩に、ディエゴの目が驚きで見開かれる。
「二つ目も苺味……!」
カップの底に仕込まれていたシロップは、彼が期待していたほろ苦いコーヒーではなく、またしても苺であった。
(こいつ……俺を罠にはめたんだ。コーヒー味なんか最初からなかった!)
眼差しだけで詰問するように、ディエゴはハロルドを見た。
パートナーから向けられる疑惑の視線。ハロルドはしれっとこう答える。
「コーヒー味のかき氷があると言っただけで勝負に使うとは言ってません」
「……」
ディエゴは頭を抑える。策にはまった自分自身が恥ずかしい。
「ディエゴさんちょっと老けましたね」
「……おい」
なんて軽口まで叩きながら、ハロルドは余裕しゃくしゃくといった有り様で、見事かき氷の早食いに勝利した。
「約束を忘れてませんよね? 『一日夫婦同然の態度で過ごす事』」
やや不本意ながらも、ディエゴは承諾した。
人前でベタベタする、というのが苦手なだけでハロルドのことはディエゴも大切に思っている。それに、その条件を飲ませるために、用意周到な作戦を立てたことも、考えようによっては愛らしい。そう思って、ディエゴは納得することにした。
撮影クルーの姿を見つけ、ハロルドは笑みを深めた。
「撮影の方がきました!」
一日夫婦同然の態度で過ごす事。それがハロルドがかき氷の早食いで勝った時の約束だ。
たまたまの偶然なのか、さりげないペアルックを意識していたのかはわからないが、ハロルドとディエゴはお揃いのサンダルを身につけていた。それもいっそう、二人をより仲睦まじく見せていた。
リゾートステップ。洗練されたデザインから若者から人気があるサンダルだ。飾りのターコイズは、夏の空と海の色を吸い込んでいっそう青く見えるようだった。
「はい、あーんして。ダーリン」
まだ残っている苺味のかき氷を一匙すくい、ディエゴの口元へ持っていくハロルド。
「……おいしいよ。はにー」
ご機嫌なハロルドとは対照的に、棒読みのセリフで返すディエゴ。
ディエゴの気持ちを知ってか知らずか、美男美女ウィンクルムが魅せつけてくれたアツアツのワンシーンを撮影班は嬉々としてカメラにバッチリおさめた。
ハロルドがディエゴの耳元でこそっとささやいた。
「ビデオも回してますからグルメリポしないと!」
ちなみに、これも真っ赤なウソである。
今日のハロルドときたら、悪ノリ気分がかなりノリノリのご様子だ。
「リ、リポだと……?」
突然の無茶振りに少し慌てるディエゴ。
今のディエゴには、グルメリポートなんてしている余裕はない。
しかし良識ある彼は、自分がリポを断ったりおかしな対応をすることで、このかき氷を販売している海の家に迷惑をかけてしまうのでは、と心配した。
「えーと、グッドテイスティ……」
撮影のカメラに向かい、困ったようにぎこちない笑顔でそう言うディエゴ。
すかさずハロルドは幸せそうな表情で甘えるように身を寄せた。
依頼結果:成功