リザルトノベル
◆アクション・プラン
瀬谷 瑞希(フェルン・ミュラー)
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カプカプビーチで、ミュラーさんと2人で散策します。
時間は夕方が良いですね。陽が傾いてきた頃です。
夕焼けの中で見るカプカプロックは、きっと昼間と違う姿を見せてくれると思います。
写真は昼間撮ったものが多いから。
黄昏時の風景が見たいんです。
きっと海鳥達の戻ってくる姿が遠くに見えて、少し幻想的な風景が楽しめると思います。
それに黄昏時なら、少し涼しいですものね。
風が気持ちいいです。
カプカプさんに会えた時の為に、キャンディーを持っていきます。お口に入れると甘くて、ひんやり冷たく感じるキャンディーです。
小さな男の子のなら、甘い物が好きかもって。
逢えるといいな。
逢えたらキャンディーをあげて抱きしめたいです。
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●好奇心で満ちる夕焼けの海辺
人で賑わうビーチも、陽が傾き空も海面も橙色に染まる頃には、徐々に人影を減らし
今、カプカプビーチを歩いているのはほんの僅か。
(白いワンピース姿のミズキも可愛いな)
潮風を気持ちよさそうに受け、なびく黒髪を片手で抑えながら前を歩く 瀬谷 瑞希 のシルエットを
フェルン・ミュラーは目を細め見つめていた。
やっぱりミズキには白が似合う。
大人っぽさだけでなく、襟元はセーラー型になって白の上に青が飾り、その胸元を控えめな水色の小さなリボンで添えて。
うん、すごくキュートで好みかも。……なんて、見とれているのは、流石にカッコ悪いからミズキには秘密だ。
「? ミュラーさん、何か私の顔に付いてます?」
くるりと振り返った瑞希が、小首を傾げた。
ああ……そんな仕草もまた可愛、いやいや。落ち着け、自分。
バレちゃうほど熱い視線を送ってしまっていたのだろうか、とミュラーは誤魔化すように何でもないよと笑顔を向ける。
「夕焼けの中で見るカプカプロックは、きっと昼間と違う姿を見せてくれると思います」
前方に見える巨大岩を指さしながら、瑞樹は嬉しそうにミュラーへ告げた。
女の子ならお洒落なカフェとか、ムードあるムーングロウあたりがいいかな、と思案していたミュラーに
瑞希は「写真は昼間撮ったものが多いから。黄昏時の風景が見たいんです」と、カプカプロックを希望したのである。
(個性的だよね。そこがいいんだけど)
自分の想像する言動の上をいつもいく瑞希。片時も目が離せなくて困るよ、と思いながらも全く困惑した表情など浮かべず
どこか楽しげにミュラーは瑞希の後に続く。
「あ、海鳥たちが戻ってきたみたいです」
散策していた足を止め、夕焼けで染まる海の方へ瑞樹は視線を向けた。
「水平線へ還ろうとする夕陽からまるで生まれてきたみたいです」
「ミズキは詩人だね」
黄金色の光をその身に浴びて飛んでくる海鳥たちを眺めた二人は、自然と視線を絡ませ微笑み合う。
頬にかかる艶髪を、そっと指で流してやりながら。
「ミズキ、肌寒くは無い?」
「大丈夫。風が気持ちいいです」
「うん、夕方だから涼しくて良いね」
ふと足元に目をやってしゃがみ込む瑞希。
どうしたんだろうと覗き込んだミュラーの瞳に映ったのは、小さなカニ。
アナタはこれから海へ還るとこですか?なんてカニに話しかける瑞希を見ては、うん好奇心旺盛だよねホント、と
どこか、なにかを耐えるように瑞希観察に集中しようとするミュラーの姿。
―― だってちょっとこれは可愛すぎるだろ……!?
先程まで、とても詩的で大人っぽい横顔を見せていたミズキが、今度は突然無邪気な発言し出すなんて……。
今にも両手で包み込みたい衝動を、驚かせてしまう!という紳士な心で必死に抑え込んでいるようだ。
葛藤と悶えの狭間を行き来するミュラー。
人、それを ギャップ萌え と呼びますきっと。
●想いを繋ぎ合わせて
そんな2人を、じーーー、と見つめる視線が一つ。
すぐそばのカプカプロックに、色白な男の子がちょこんと座っている。
どこから見ても仲睦まじいカップルにしか見えない瑞希とミュラーを、ひとしきり見つめた後
いそいそと岩場を下りて、足音しない砂浜を素足のままゆっくり歩いて行く。
「……あっ」
「うん?」
カップルだと勘違いされているとは露も知らない2人。
人影に気付いて顔を上げると、無意識に声が出た。
もしや、このコが噂のカプカプさん?
瑞希の瞳がきらきらと瞬いた(※そんな瑞希の、またもあまり見ない表情を発見してミュラー氏が悶えているのは言うまでもない)。
おもむろにワンピースの胸ポケットから何かを取り出す瑞希。
「えっと……カプカプさん、ですか? 初めまして、瀬谷瑞希といいます」
「俺はフェルン・ミュラーだ」
律儀に名乗る瑞希に倣ってミュラーも続く。
男の子、二人を取り巻く優しい雰囲気に安心したのか、人懐っこい笑顔をにこーっと浮かべ返答とした。
怖がらせたりしないかと、少し緊張はらんでいた瑞希もホッと肩の力を抜いて、広げた掌をそっと男の子の前に差し出す。
そこには、透明な紙に包まれたまぁるいキャンディが。
宝石のような、真珠のような綺麗なそれをしげしげと覗き込むカプカプ様。
こてん、と不思議そうに首がかしいだのを見て、瑞希はキャンディの袋を破くと自分の口にふくんで見せた。
「飴です。おいしいですよ」
もう一つの袋も破いてあげてから、再度男の子に差し出してみる。
口の中でコロコロ転がし微笑を向ける瑞希とキャンディを交互に見てから、カプカプ様、おそるおそる飴を手に取り口へと運んだ。
『!?』
クリンッとした両目が溢れんばかりに見開かれる。
甘いだけでなく、ひんやり冷たく感じるキャンディだったようで、驚いたらしい。
しかし、そのまま舐めているうちに口内に広がるほんのりした甘さに、次第に頬を緩めた。
「よく飴なんて持ってたね?」
「小さい男の子の姿、って聞いていたので。甘いの好きかなって」
念を入れた用意周到なとこは瑞希らしい。
可笑しそうに肩を揺らして、ミュラーは瑞希を、男の子を見守る。
そのうちに、瑞希が今度は両手をそっと伸ばした。
「カプカプさん、抱きしめても……いいですか?」
瑞希の問いに、キャンディで片側の頬をぽっこり膨らませたまま、男の子はニコニコと自ら瑞希の両腕に飛び込んだ。
「わぁ……ミュラーさん、カプカプさんの体、ひんやりして気持ちいいですよ」
―― ミズキに抱き締められるなんて羨まし……じゃなかった。
笑顔で戯れる2人を思わず凝視していたミュラー、危うく本音がポロリと出るところだった。一度首をぶんぶん。
「そういえば、抱きしめると幸運がやってくるかも、とか噂では言ってたね? じゃあ……」
俺も、と手を伸ばしたミュラーに、どうぞと言いかけた瑞希が硬直した。
ミュラーの広い腕の中に、カプカプ様だけでなく瑞希もすっぽりと収まっていたのだ。
みみみゅっ……、とどもる瑞希。頬がほんのり赤いのは、夕陽のせいだけではないようだ。
あ、猫語ミズキ。
以前にも見た、動揺のあまり可愛らしく噛む様をほんわかミュラーは堪能中。
そんな2人の間で、声こそ出ないもののそれはキャッキャッと喜ぶ笑顔を浮かべる男の子が。
楽しそうなカプカプ様の様子に、瑞希の体は次第に弛緩していく。
カプカプさん、何だか可愛い……。
温かな腕に抱かれて、瑞希はミュラーへ顔を向けた。
いつもの控えめな微笑とは違い、綻んだ蕾がゆるやかに開いて色鮮やかな姿で人を感嘆させるような、
とても、とても幸せそうな微笑みを称えて。
ミュラーの心が満ち足りていく。
―― これだけで俺には素晴らしい幸運だ……!
瑞希と男の子を抱えた腕の力を、ミュラーは微かに、微かに強めた。
俺はこんなに素敵な思いをもらったけれど、じゃあ彼女は?
最初はオーガを怖がり自分へも緊張や遠慮を向けていた彼女が、少しずつ気丈に成長し応えてくれるのが
ミュラーにとって嬉しくも、心苦しくもあって。
俺は少しでも君に何かを返せているのかな……。
彼女にもっと幸運が訪れて欲しいよ。
そう願うミュラーだけれど。
再び男の子へ向いた瑞希の表情は、彼の角度からは見えない。
もしも見えたなら、彼の願いが叶っていることを知っただろう。
―― もう少し……このままでもいいかな……
今日の潮風は今日しか感じられないように。
伝わるぬくもりが今だけな気がして名残惜しくて。
こんなに幸せなのは、カプカプさんのおかげでしょうか……それとも、ミュラーさんの……
瑞希は微笑む。先ほどよりも、もっともっと優しい気持ちを抱き締めて。
観察していた時よりも、ずっと温かな雰囲気を醸し出す二人に挟まれたカプカプ様。
自分を抱く細い腕と逞しい腕を、ぎゅっと一度抱き返すのだった。
依頼結果:大成功