リザルトノベル
◆アクション・プラン
篠宮潤(ヒュリアス)
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×3
精霊の謎行動引きずって戸惑うも
誘いが新鮮で酒場へ
「…っヒック。ヒューリは、ちょっと何も言わな過ぎ、じゃない…っ?」
酔ってきた。本人への愚痴に
●
「昔のこと、話してくれたのは嬉しかった、けどっ
普段は、考えてること教えてくれないで、自己完結、するよね…っ」
「個性無い、なんて言ってるし…それ聞いて、僕がどう思ったか、とかっ
考えてない、でしょ」
「頑固も無愛想もヒューリの個性だよ!」←褒めてる
●
「さっきのあの行動だって…よく分からない、しっ、…え。仕返し?」
「だって、海とか川が関わる依頼、避けてる感じだった、から」
「うん。分かった、絶対…だよ?」
「もう、平気。…く、くすぐったい、よっ」
機嫌回復。笑顔
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●そうして一歩
「ウル、酒場へ行かないかね」
その言葉は篠宮潤にとって、とても新鮮だった。
思い出すのは昼間のこと。
ヒュリアスの様子は少しおかしかった。
首筋に噛みつかれたあの行動の意味は、未だにわかっていない。
何であんなことしたのか、一体何を考えてるのか。
自分の首元に残った感覚に戸惑いは隠せない。
潤の頭の中では何度も繰り返される答えの出ない疑問と質問。
聞きたいことは沢山ある。
言いたいことも沢山ある。
そんな中での誘いだった。
正直どうしようかという迷いはあった。
しかし、あのヒュリアスからの誘い。
それが潤にとっては本当に新鮮だったのだ。
だから潤は「行く」とだけ言葉を紡いだ。
二人がやって来たのは『シャーク船長』。
海賊気分で酒や軽食が楽しめると噂の酒場。
空気だけでも酔ってしまいそうな雰囲気をしている、が、それにしてももう何杯目だろうか。
潤の手には、追加の酒が注がれたばかりの樽型の容器。
顔は赤みを帯びていて、どこか意識がふわふわとしている。
ガヤガヤと騒がしい背景の中、もう一杯と言いたげに潤がその容器を空ける。
色々と考え込んでいたせいもあるのだろう。
大分酔いが回っているようだった。
元々、昼間はやり過ぎたと思っていたヒュリアス。
反省とお詫びから奢りのつもりで誘ったとはいえ
さすがにこれだけ飲んでいれば、身体が心配になってくる。
見かねたヒュリアスは、潤にそっとジュースを手渡した。
「ウル。少々飲みすぎでは」
そんなヒュリアスの言葉を、潤はふいと顔で避けた。
どこか不貞腐れたような表情の潤。
背けた顔のままジュースを受け取り、文句ありげな声を出した。
「ヒューリは、ちょっと何も言わなさ過ぎ、じゃない……っ?」
吃逆しながらそう言って、ジュースに口をつける。
果汁の風味が広がり、舌に残っていたアルコールの苦味がふんわりと消えていく。
それほど飲んでいたアルコールのせいだろうか。
廻らせていた思考が、口を衝いた。
ヒュリアスは、説明が足りない。
だからいつも困惑する。
もう少し何か言ってくれればいいのに。
そうすれば何かできるかもしれないのに。
今まで溜め込んでいた考えが、ぽろぽろと口から零れ出す。
そんな不満ありげな言い回しに気付いたヒュリアスは「ほぉ……?」と先を促し、目の前の潤を見つめる。
潤はその視線に気づいているのかいないのか
ヒュリアスから顔を背けたまま、言葉を繋げていった。
「昔のこと、話してくれたのは嬉しかった、けどっ
普段は、考えてること教えてくれないで、自己完結、するよね……っ」
それは、相手を理解したいからこそ思うこと。
いつもいつも。
いつだって、相談などではなく、ヒュリアスの中で全てが完結されてしまう。
口から出てくるのは、その流れで導き出された答えのみで
否定も肯定をしようにも、それが『事実』のように話されたことに
なんと伝えればいいのかわからなくなる。
どうすればいいのか、わからなくなる。
「個性無い、なんて言ってるし……」
そんなことないのに。
そんなこと、自身で決めつけてほしくなかった。
自分の意見はいらないのだろうか、と不安や寂しさも感じてしまうやり方。
ヒュリアスと同じ答えが潤自身にあるかどうかなど、聞いてみなければわからないはずなのだ。
しかしヒュリアスは、それをしてくれない。
「それ聞いて、僕がどう思ったか、とかっ、考えてない、でしょ」
ヒュリアスが何かを言った時に、自分が何かを感じ、反応する。
それは誰かと接する上で起きる当たり前の感情の変化。
交流を持つ以上、自身がその対象であるという自覚があるのかと、文句をぶつけながら
潤がジュースをぐいと仰ぐ。
個性が無いなんてことは全然ない。
ヒュリアスはヒュリアスで、一人の人間として、性格が、個性があるのだと。
「頑固も無愛想もヒューリの個性だよ!」
ジュースを飲みきると同時に力強く放たれた言葉。
伝えたかった言葉。
単語の意味合いは良いように思えないかもしれないが、潤自身は本気で褒めているつもりだった。
それがヒュリアスを体現する単語で、それがヒュリアスだから潤は共にいるのだと。
そうして潤から溢れ出る言葉に、ヒュリアスは目を丸くしたまま、きょとんとした表情をしていた。
(不思議なものだな)
潤から放たれる言葉は、今までにないほどに
ヒュリアスの耳に、脳に、心に、響いて。
ヒュリアス自身は酔ってなどいないのに
言われたばかりの言葉が、何度もエコーする。
潤がこれだけのことを発言していることも。
潤が色々と考えていたということも。
そして、自分の個性をそう思ってくれていたということも。
言葉として口から出ることはないが、色々なことへの驚きや喜びが混ざり、ヒュリアスはただ潤を見つめ続けた。
ヒュリアスを見ていない潤は、反応がないままだと思い「さっきのあの行動だって……」と考えていた不満を零し続ける。
昼の事を思い出したのか、どこか言いづらそうにぎゅっと強くコップを握っていた。
その姿を見て、ヒュリアスは小さく笑った。
「よく分からない、しっ」
「人を勝手に泳げんことにしていた仕返しだ」
即座に聞こえた返答に、やっと潤が顔を上げてヒュリアスと向き合う。
「え。仕返し?」
そこには口元に笑みを浮かべるヒュリアスの姿。
「何故泳げないと思っていたのかね?」
理由を問われ、潤は今までの依頼について思い返しながら説明する。
それは、日頃のヒュリアスの行動からだった。
あまり受けようとしない依頼の内容における共通点。
それは、水場。
「だって、海とか川が関わる依頼、避けてる感じだった、から」
そう答えた潤に「泳げんわけではない」とヒュリアス。
少々疎ましそうにも見える表情で、事情を潤に告げる。
「単に耳や尾が濡れるのが苦手なだけだ」
言葉と共に動く耳。
それを見て潤が何か言いたげな表情をする。
そんなこと、説明されなければわからない……と考える潤。
その表情から、しっかりと伝えていなかった故に誤解が起きたのか、と気付くヒュリアス。
すると「ふむ」と納得したようにヒュリアスが呟いた。
「つまり俺が話さな過ぎるのが問題と」
ヒュリアスの出した答えに、潤は「うん」と、こくこく頷く。
できればもう少し話してほしい。
何を考えているか知りたいし、わからなければ何も言えない。何もできない。
そうして何度も頷く潤に、ヒュリアスはふっと笑う。
「なら……今後はもう少し善処しようかね」
その言葉を聞いて、潤の表情がぱあっと明るくなった。
「分かった、絶対……だよ?」
約束、という言葉はないけれど
「あぁ」と答えたヒュリアスに満足げな潤の顔。
そんな潤の首元を見れば、昼間にあった仕返しの名残。
「……少々血が滲んだか。悪かった」
「もう、平気」
自分でもどうかと思えるようなその痕を、潤は隠す素振りなどしないままで。
(隠す気がないのがウルだな……)
それが潤らしい、という感情。
そんな少しだけ変わっている潤と、そんな潤を受け止めている自分。
何だかそんな自分達自身にふと笑みが零れて、その首筋を、一度撫でる。
「く、くすぐったい、よっ」
ぎゅっと身体を縮ませる潤に「悪い」と手を離したヒュリアス。
だけどその口元には笑みが残ったまま。
「もう一度、飲み直さないかね」
機嫌の回復した潤にそう尋ねると「じゃあ、もう少し、だけ」と笑う。
アルコールの弱い酒を二人で頼み、容器をぶつけると、こつんと鳴る音。
「乾杯」
そう言って微笑む潤に、ヒュリアスも小さな笑みを返した。
依頼結果:大成功