リザルトノベル
◆アクション・プラン
スウィン(イルド)
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×2
(視線に気付き)この傷跡が気になる?
前に、神人に顕現した切欠を詳しく話すって言ってたわね
今話しましょうか
知ってる通り、俺は昔自警団に所属してて小さな村に派遣もされてたわ
あの時、派遣先がオーガに襲われて
ウィンクルムがくるまで防衛してた
でも逃げ遅れた子供がオーガに見付かって…
助けようとしたけど、オーガには勝てなかったわ…
(黙って首を振り)
気を失って、目を覚ました時には全て終わってた
オーガはウィンクルムに倒されていて
神人になった俺はそのまま保護された
イルドなら、いいわ(触られてぴくりと反応するがそのままで)
…ありがとう
折角の夏休みなのに暗い話しちゃってごめんね
残りの時間も楽しみましょ!
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●過去の先にある微笑み
テレビクルーからの誘いにさりげなく断りを入れつつ、ゴールド海岸にあるコーラルベイにあるリゾートホテルで夏休みを満喫することにしたスウィンとイルド。
ふたりは、共にいながらもそれぞれに楽しみを見つけ出してホテルでの優雅な一時を満喫していた。
夏と言えば水、プールだろう!…ということで、食事を楽しみつつ、普段は余りそんな格好をすることも少ない水着へとそれぞれ着替え、リゾートホテルならではのゆったりと大きなスケールのプールで泳いでそれぞれに体をほぐす。
…普段、オーガとの闘いなどで疲れた体の毒気が、健康的な日差しとプールの透明な水に抜けていくような気がするのは気のせいだろうか、と水に体を髪をぬらしながら、スウィンもイルドも互いに思っていたのだった。
時にプールの中で自由に泳ぎ、時に会話を交わしつつ、適度に疲労を覚えたふたりがプールサイドのカフェバーに腰を下ろしたのは、太陽が夕日となって海の境界線に傾きつつある頃だった。
少し奥まった席にイルドが腰掛けていると、ドリンクのおかわりを注文してきたスウィンがこちらに歩いてくるのが見えた。
(………)
その様子を見ながら、イルドは自分の視線がある箇所にどうしても釘付けになってしまう事に内心ため息をつく。
普段ならイルドの視線はスウィンの瞳を見ているが、やはりどうしても今日は気にするなと言われても…気になってしまう。
それは…スウィンが水着を着ることであらわになった、左脇腹の余りにも痛々しい傷跡だった。軽い傷なんてものではない。かなりの大怪我だと想像するに難しくないものだった。
「この傷跡が気になる?」
自分の視線に気付いたのだろう、2人分のドリンクをもってきたスウィンに微笑みながら指摘されて、イルドは若干心の中でしまったかな、と思う。折角の夏休みだというのに、気まずい空気になりはしないかと。
けれども、意外にもスウィンはテーブルに置いた、フルーツが華々しく盛られたドリンクを尻目に、不愉快そうな表情を浮かべる事もなく、にこりと微笑んだ。
「…前に、神人に顕現した切欠を詳しく話すって言ってたわね」
「…ああ」
そう、そういえばスウィンは言っていたのだった。以前、自分が神人として顕現した切欠は、オーガに大怪我を負わされたせいだということ。
しかし、その詳細はまた今度話すと言っていたのだ。実際、確かに気にかけてはいたのだが、自分から掘り起こすことではないだろうと、イルドは自分からその事をあまり持ち出すことはしていなかった。
「…今話しましょうか?」
「…いいのか?」
思わぬスウィンからの提案に、イルドは目を見開く。
スウィンが神人として顕現した、その詳細。それを今話してくれるのだという。
人生の大きな分岐点になった思い出を今。思わず、本当に大丈夫かと思い、聞き返したイルドにスウィンはもう一度微笑みを深くすると頷いた。
「ええ…今、話すわ」
「ああ…なら、教えてくれ」
スウィンの柔らかな微笑みの向こうに、どこか自分に対する信頼と、安らぎと…そして少しの覚悟が見えたようで、イルドも心の中で腹をくくる。スウィンの思い出を受け止めるための。
どんな過去であろうと、受け止めたいと思う。
イルドのその心境を察したのか、ドリンクから伸びているストローで中身を少し吸い上げ喉を潤すと、ゆっくりとスウィンは語り始めた。
「知ってる通り、俺は昔自警団に所属してて小さな村に派遣もされてたわ…
あの時、派遣先がオーガに襲われて…俺はウィンクルムがくるまで防衛してた」
スウィンが話す内容をイルドは脳裏で想像しながらゆっくりと聞く。そうしてスウィンの表情にも注意深く目を配る。その瞳が、唇が過去に震えていないだろうかと。それだけ、スウィンの語る過去は凄惨なことだと容易に想像がつくからだ。
オーガは本当に強い存在たちだ。そして、襲撃にあった村にウィンクルムが到着するまでの間、何がどれだけ犠牲になっていたかは…自分達もおなじウィンクルムである身。想像してしまう。凄惨な状況であった事は間違いないであろう事を。
そんな状態の中で、スウィンは必死に自警団の一員として、派遣された村と、そこに住んでいる人達を守ろうとしていたのだ。
「でも逃げ遅れた子供がオーガに見付かって…」
そこまで言って、スウィンの目がすうっと細くなる。まるでその時の思い出が脳裏に飛来しているかのように、いや、実際にそうだったのかもしれない。
少し、テーブルの上のスウィンの手が強く握り締められたような気がして、イルドの掌にも少し力がこもった。
スウィンの言葉の先には、痛々しい結果が待ち受けているかもしれないと思いながら、けれども、自分にその過去を話そうとしたスウィンの覚悟をムダにしたくはなかった。だからこそ続きを話してほしいとイルドは思う。
「それで、その子は…?」
好奇心ではなく、純粋にスウィンからその記憶を引き出したくて、イルドは促す言葉をかけた。その言葉に、少しの沈黙のあとで、スウィンは悔しそうに首を横に振る。
「…助けようとしたけど、オーガには勝てなかったわ…
気を失って、目を覚ました時には全て終わってた」
その言葉を聞いて、イルドは納得する。
スウィンは、自分の傷の事について、一切何も話していなかった。
けれど、言葉にしなくてもわかる。
そう、脇腹にあるその傷は、スウィンが必死に失いたくない物を守ろうとして負った傷なのだと。そうして、自分は神人に顕現し、子供の命は失われたのだ。
「オーガはウィンクルムに倒されていて…神人になった俺はそのまま保護された」
「そうだったのか…」
どう言葉を返していいものかとイルドは思う。その傷をひとり見るたび、スウィンはいつも何を思ってきたのだろうか。この傷は、スウィン自身が負った体の傷だけではない。心の痛みの思い出でもあるからだ。
「…その、触ってもいいか?」
そう考えると、思わずイルドの口から言葉が滑り出ていた。
かける言葉はない…けれど、その傷に触れれば、もしかすれば、何かを共有できるかもしれないとも、どこかで思ったから。スウィンをもっともっと、理解できるかもしれないと。
一瞬スウィンは瞬きをしたが、微笑んで頷いた。
「イルドなら、いいわ」
その言葉に何かを許された気がして、イルドは恐る恐る傷跡に触れる。
触れられてスウィンの体はぴくりと反応したが、振り払うそぶりもなく、ただじっとイルドの指先を見つめている。
普通の肌とは違う少し凹凸のある手触りがイルドに傷と、その傷が刻まれた凄惨な状況を伝えてきた。
悲しみにイルドの眉間に縦皺が寄る。昔、自分の知らないところでスウィンがこんなに心にも体にも大怪我をしたと思うと、いたたまれないものがあった。
「もうお前にこんな怪我はさせねぇ…俺がいる」
それは、イルドの心の底からの言葉だった。
二度と、スウィンが大切なモノを失わないように、悲しみも悔しさも、心にも体にも傷を負わないように。自分がいるからと。
「…ありがとう」
それは、スウィンにも充分すぎるほど伝わっていた。
だからこそ、そっと謝る。
「折角の夏休みなのに暗い話しちゃってごめんね」
その言葉に、いいやいいんだ、と言葉にせず首を振るイルドにスウィンは明るく微笑んだ。過去から逃げる笑みではない。過去を話せたこと。けれど、受け入れてくれたイルドへの感謝の微笑みだ。
「さあ、残りの時間も楽しみましょ!」
そう言うと、スウィンはドリンクグラスを掲げた。それに微笑んでイルドもグラスを掲げる。
そして、夕日に照らされたプールサイドで、グラスはカチンと小気味いい音を立てたのだ。それは、これからこの2人の歩む道を祝福するような、澄んだガラスの音色だった。
依頼結果:大成功
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名前:スウィン 呼び名:スウィン、おっさん |
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名前:イルド 呼び名:イルド、若者 |