リザルトノベル
◆アクション・プラン
桜倉 歌菜(月成 羽純)
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○昼間思いっきり浅瀬で泳いでのんびりした後、服を着て夕暮れのゴールドビーチへ
海を黄金色に染まる様子を見たかったんだ!
海の家で二人でトロピカルドリンクを購入してから、ヤシの木の下のベンチに座って、ドリンクを飲みながら海を見よう
段々とオレンジ色に染まる空と、それを反射して煌めく海と
言葉に出来ない光景ってこんな事を言うんだね
たった一言、綺麗…としか言えない感動
隣の羽純くんに綺麗だねと言おうとして、目が合ってしまって
羽純くんの瞳にも黄金色
なんて綺麗なんだろう…
金縛りにあったみたいに、言葉が出てこなくて、目が離せない
羽純くんの顔が近付いたら、そっと瞳を閉じます
肩を抱き寄せられたら、速い鼓動伝わっちゃうよね
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●潤う喉に艶を感じて
昼には頭上で輝いていた太陽が、水平線へ移動してきている。
やがて、水平線へ消える太陽を惜しむかのように空も海も青を脱ぎ捨て、表情を変えるだろう。
「間に合った……」
桜倉 歌菜がヤシの木の下に設置されていたベンチに腰掛ける。
変わりゆく表情の全てを見たかったから、まだ紅にも黄金にもなりきっていないことに安堵した。
それは、月成 羽純も同じ思い。
「良い所が空いていたな。あと少ししたら、先を越されていたかもな」
「うん! 急いで着替えた甲斐があったね!」
「急いで着替えなければならなかったのは、歌菜がのんびりしていたからだろ」
「あ、ヒドイ」
浅瀬で思い切り泳ぎ、その後もビーチや海の家で楽しく過ごした為、ホテルに一旦戻ったのは遅い方だった。
夕暮れは絶対に見たいと歌菜が言うので、羽純は急いで着替えたものである。
もっとも、歌菜はそれ以上時間が掛かり、最終的にはゆったりではなく急いでここへ来ることになったのだが。
「海の家の営業時間に間に合って良かったな?」
「女の子は時間が掛かるの」
それだけゆっくりだったと羽純がからかうと、歌菜はそう言ってトロピカルドリンクを一口飲んだ。
「思ったよりすっきりしてる。アセロラが入ってるからかな」
歌菜が飲んでいるのは、オレンジとアセロラのトロピカルドリンクだ。
トロピカルドリンクだと通常アルコールが入っているが、海の家で出すものだけあり、ノンアルコールのもののみ販売していた。
もっとも、未成年の歌菜には飲酒は禁じられている為、アルコールのみの販売だと困ってしまうのだが。
「羽純くんのはどう?」
「俺のは甘いな」
歌菜に話を振られた羽純が飲んでいるのは、マンゴーとパイナップルのトロピカルドリンク。
「昼散々泳いだし、甘いものがいいんだよ」
「そうじゃなくても羽純くんは甘いの好きなんじゃ」
撮影クルーが少し驚いた羽純のチョイスに対し、歌菜は本人のコメントへこのように返答している。
そう、羽純は甘党なのだ。
「細かいこたぁいいんだよ」
羽純はその先を放棄し、トロピカルジュースをまた飲む。
ジュースを飲む度に喉が動き、妙に艶を感じた歌菜は視線を海に戻し、自身のトロピカルジュースを飲む。
さっきまで、オレンジとアセロラの味を感じたのに。
(ドキドキして、味が分からなくなっちゃった)
羽純くんの所為だ。
言ったら、理由を言わないといけないから、言わないけど。
●変わりゆく青達
「だいぶ、太陽が地平線へ移動してきたな」
「うん。空の色が段々オレンジになっていくね……」
来た時よりも更に太陽は水平線へ近づき、空は青から色を変えつつある。
羽純に頷く歌菜は、既に空になったトロピカルドリンクの容器の中にある氷をストローでかき混ぜつつ、時が近づくのを待っていた。
「絶景が見られそうだな」
「うん」
羽純に答えながら、歌菜はさっきよりもドキドキしていることに気づいた。
きっと、絶景への期待と羽純と一緒に見られる嬉しさから来るものだろう。
そのドキドキは、歌菜を裏切ることはなかった。
夏の暑さを反映したかのような空は、太陽が水平線へ触れるとより一層鮮やかなオレンジへと色を変わった。
そのオレンジと水平線に触れられた太陽の輝きを受け、海もまたその色を変える。
黄金色の狭間にオレンジが煌き、ひとつとして同じ色がない。
昼は空の青と海の青の境目があやふやと思っていたのに、今は空も海も違うのだと心で感じさせてくれる。
空と海が太陽を惜しむ、最後の時間───
「綺麗……」
歌菜の口から漏れたのは、感嘆の溜め息。
綺麗という一言さえ陳腐に感じてしまう、そんな美しさがあると思った。
言葉に出来ない光景とは、正にこういう光景のことを言うのだろう。
「魂が、震えるというのかもしれないな」
歌菜と同じように見入る羽純から、言葉がそう漏れる。
言葉で語るには、人はあまりにも言葉を知らない。
心よりも深く……魂を震わせる美しさを表現出来る言葉があったら、教えてほしいものだ。
この光景を、この感動を的確に表現出来る者はいないだろう。
「魂が震える……そうかもしれないね」
歌菜が呟くと、海からの風が頬から髪へと撫でていく。
その横顔に、羽純は気づいた。
浅瀬で泳いで笑っていた少女とは違う女性がそこにいる。
年相応に明るく笑っていた少女は、夕陽に照らされた綺麗な女性───
(彼女は誰だ……)
羽純は、思わず息を呑んだ。
●交わる青と黄金
俺は、ある女の子を知っていた。
常連となっている弁当屋で、看板娘として頑張っている女の子だ。
孫娘なのだと、彼女の祖父は笑った。
明るい笑顔で頑張るその子を、こっそり見るという楽しみがお弁当以外にも加わったのを覚えている。
彼女は、俺と契約する神人となった。
『あまりはしゃぐな。少しは落ち着け』
自分を王子様と呼ぶ彼女に対して、俺は保護者のような気持ちだった。
明るく元気で、けれど、ちょっと夢見がちなお人好し。
俺がしっかりしなければとそう思った。
『私ね、覚えてないの』
赤と青の光を帯びた幻想的な丘の上でそう言った歌菜は、明るいだけの女の子ではなかった。
彼女は、孤独と罪悪感をずっと抱えていたのだ。
強いと思っていた女の子は、自身の弱さをずっと責めていた。
変わりゆく心、けれど、手を伸ばせない。
理由は、知っていた。
ウィンクルムだった父親が、母親ではない誰かを守って逝ったから。
もし、自分が歌菜を残してしまったら……歌菜はまた独りぼっちになってしまう。
それが怖くて、言えなくて───クチナシの花に託した。
『独りにならないで』
俺を強くしてくれる女の子は、いつだって俺を想ってくれる。
だから、夢は叶うと信じて待っていた。
けれど、今、ここにいる彼女は───
「羽純くん……?」
綺麗な光景を見つめる羽純を盗み見ようとして、歌菜は羽純が景色ではなく自分を見つめていることに気づいた。
太陽の輝きを映した黒の瞳は、まるで黄金に見える。
ブラックオパールだって、こんなに綺麗な色彩を見せないだろう。
歌菜はその吸い込まれそうな瞳に縫いとめられ、動けなくなる。
綺麗で、言葉が出なくて。
互いの色しか分からないかのように青と黄金は逸らすことなく、吸い寄せられていく。
羽純の手が、先程の風の余韻を消すように歌菜の頬から髪を撫でる。
自分以外触れるのを許さないかのように、けれど、大切な物に触れるようにひどく優しく。
肩を抱き寄せられ、羽純の顔がゆっくり近づいてくる。
歌菜は、そっと目を閉じた。
初めて出会った時から、この心を捕らえて離さない人。
物語の王子様ではなく、手を伸ばして感じる私だけの王子様。
あなたを知る度に、私は恋に落ちている。
私の強さも弱さも受けとめてくれる、私のクチナシ。
私の心は、ずっとずっとあなたもの───
瞼の向こうで空と海が輝いている。
耳に届くのは、寄せては返す波の音。
けれど、波の音以上に感じるのは鼓動だ。
(まるで、全身が心臓になっちゃったみたい)
歌菜は羽純に自分の速い鼓動が伝わってしまっている気がする。
だって、羽純の鼓動も同じ位速いから。
互いの鼓動の速さが境界線を越えているように感じて、何だか心地良くて。
唇は離れたのに、まだ重ね合わせているような気さえする。
「陽が暮れたな。帰るか」
「……うん」
別れを告げた太陽を名残惜しむように水平線へ視線をやった羽純に歌菜も頷く。
やがて、太陽の輝きとは異なる優しい光を纏った月が空と海を優しく照らすだろう。
歌菜に手を差し伸べると、歌菜は手を重ね合わせてくる。
立ち上がってから、羽純は周囲に誰もいないことで撮影中だったことを思い出した。
「後で礼を言っておかないとな」
「そうだね」
気を利かせてくれたと羽純が言えば、見上げる歌菜が笑ってそう言った。
その顔は知っている女の子の顔だったけれど、羽純の心には先程の知らない女性の顔が焼きついている。
ひとつとして同じ色がなかったあの光景───それは、歌菜そのものだったのかもしれない。
依頼結果:大成功