リザルトノベル
◆アクション・プラン
リチェルカーレ(シリウス)
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水着:パステルピンクのタンキニ
レースとフリルで可愛らしく
綺麗な海に誘われて浅瀬に
撮影なんて恥ずかしいな
涼しい顔のシリウスに少し口を尖らせて
でも熱帯魚を見つけ 追いかけているうちに撮影されているのを忘れはしゃいだ笑顔に
見てシリウス 綺麗な魚
あっちにもいる…きゃあ!?
よそ見をしていたら波を被って海中へ
慌てたのは一瞬 すぐに逞しい腕に抱きあげられて
きょとんと相手の顔を見上げる
間近に見える翡翠の双眸と
触れ合った場所から伝わる体温が ちょっと恥ずかしい
呆れたような でも優しい彼の笑顔に
頬を染めて 次第に花がほころぶような笑みを
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●花開く
太陽の光を返してきらきらと光るゴールドビーチの浅瀬に、パステルピンクが感嘆した様子で佇んでいる。
空よりも澄んだ青い髪と海よりも煌めく青い瞳を湛えた白い肌をふんわりと覆うパステルピンクは、水着。
水着としては露出を抑え気味のタンキニだが、レースとフリルをあしらったそれは、色と相まって少女の可愛らしさを引き立てる。
少女――リチェルカーレは、綺麗な海に誘われるように、浅瀬に訪れていた。
「綺麗……」
小さく零してから、パートナーのシリウスを振り返り手招こうとして、同時に、同行している撮影隊にも気付いてしまった。
『ミラクル・トラベル・夢気分』の撮影協力を依頼されて、快く諾を返したまでは良いのだが、改めてそれを認識すると、少し、視線が泳ぐ。
(撮影なんて恥ずかしいな……)
嫌、ではなくて、照れくさい。
だって今日ここで撮影された映像は、二人の思い出とかそんな物には納まらず、テレビを通して多くの人に放送される可能性があるのだから。
見る人には自分達はどんな風に映るのだろう、とか。今日の格好は変じゃないだろうか、とか。年頃の少女らしい感情に、頬が熱くなる。
そんな彼女の隣に居並ぶシリウスの姿は、紺のサーフパンツに、黒のラッシュガード。袖が無く、フードの付いたそれは夏の海を楽しむ仕様。
そして微かに頬を染めて視線を泳がせるリチェルカーレに対して、シリウスときたら丸っきり涼しい顔。
リチェルカーレにはシリウスの水着を似合っていると思うような気持ちの余裕さえないというのに。
どうかしたかと窺うような視線に、狡いと言いたげに唇を尖らせるも、口には出さず。リチェルカーレは、ちゃぷん、とシリウスより先に浅瀬に足を付けた。
「冷たい……」
ほんの少し弾む語尾は、ちゃぷ、ちゃぷと少し歩を進めたところで、あ、と嬉しそうな声を上げた。
視線の先には、すいすいと泳ぐ小さな熱帯魚。初めは、ちょん、と屈んで視線だけで。
やがてあちらこちらにその姿を見つけるようになって、リチェルカーレは浅瀬にちゃぷちゃぷと音を立てながら、その姿を追いかけ始めた。
そんな風に海を楽しみ始める頃には、撮影されているのも忘れているようで、普段通りの無邪気にはしゃいだ笑顔を見せている。
青い空に白い雲。よく似た色を持つリチェルカーレが纏うパステルピンクは、海辺に咲く花のように、映えていた。
そんな彼女は、気付いていないのだろう。
涼しい顔をして見せるシリウスとて、撮影される事には照れくささに似た妙な気分を覚えていることも、リチェルカーレの水着姿に、一瞬鼓動が早まったことも。
いつも通り、マキナの例に漏れない無表情で受け流した胸中は、リチェルカーレに伝わる事がないのが、幸いだ。
「見てシリウス、綺麗な魚」
笑みを湛えてシリウスを振り返り手招くリチェルカーレを、眩しいものを見るように、瞳を細めて見つめたシリウスは、手招かれるのに素直に応じて浅瀬の心地よさに足を浸す。
どれ、と同じ場所を覗き込んでは、つんつんと服の裾を引いてくる彼女の指に促され、すぃと視線を滑らせる。
そこかしこで姿を見かける魚は、触れる事の敵わない宝石のようにも見える。
きらきらと瞳を輝かせて、そんな魚たちの姿を追うリチェルカーレを、子供みたいだな、とシリウスは少しだけ苦笑した。
「あっちにもいる……」
「転ぶなよ」
引いていた服の裾を手放し、また別の魚群を追いかけようとするリチェルカーレに、シリウスがそんな声をかけた、矢先だった。
「きゃあ!?」
魚の姿を追いかけるのに夢中になっていたリチェルカーレの姿が、不意に大きく打ち寄せた波にさらわれる。
追いかけている内に少し沖に寄ってしまっていたらしい。足を取られて態勢を崩したリチェルカーレは、海中に引き込まれるような感覚に慌てたようにもがく。
――が、それはほんの一瞬の事だった。
縋るように伸ばした腕を掴まれ、すぐさま、ぐい、と逞しい腕に抱き上げられた。
海水に晒された目は痛んで、波に浚われた驚きと相まってうっすらと涙が滲んでいたけれど、とても近い距離に、人の顔がある事は判別できた。
ぱちくり。瞳を瞬かせれば不意に鮮明になる視界。きょとん、とした顔で見上げたそこには、珍しく慌てた顔を見せるシリウスの姿があった。
「リチェ、大丈夫か……!」
紡がれる声には、動揺が滲んでいるように、思えたけれど。
それよりも、リチェルカーレは間近に見つけた翡翠の双眸から目が離せなかった。
強くはない。冷たくもない。そんな、柔らかで暖かな、翡翠の瞳。
水に浸かって俄かに冷えた腕に、じわりと、シリウスの体温が伝わるのを自覚して、とくり、胸の奥が高鳴った。
それを、まだ。リチェルカーレは『恥ずかしい』と認識するのだけれど。
頬が熱くなるのを自覚して、つぃと視線を外しかけたリチェルカーレだが、不意に、その視界にシリウスの笑顔が映って、また、瞳を奪われた。
「……本当に、お前は目が離せない」
それは、呆れたような顔だった。
だけれど、優しい顔だった。
きっとそれは、言葉通りの感情の現れなのだろう。
あぁ、ほら、だから言ったんだ。転ぶなと。足元をちゃんと見ていないからだろう。そんな文句じみた台詞を集約した、心配と安堵。
不意にリチェルカーレに過ったのは、先日、イベリンの地で歌を披露した時に自覚した、傍に居たいという願い。
優しい瞳で、優しい顔で笑うシリウスの表情に、リチェルカーレの心と同じ形で、シリウスにも、リチェルカーレの傍にいる意思を、垣間見たようで――。
何よりも勝ったのは、喜びだった。
だから、頬が熱くなっても、目を逸らす気にはなれなかった。
心の満たされたリチェルカーレに浮かんだのは、花の綻ぶような笑顔。
それを、抱きかかえた姿勢で至近距離で捉えたシリウスは、先程ほんの一瞬だけ感じた鼓動の早まりを、再び感じる。
(あぁ……)
この少女は、自分にとってなんと大きくなっているのだろう。
リチェルカーレを抱き上げた時、シリウスはその体の軽さと、濡れた瞳に息を呑んだ。
彼女が忽然と消えてしまいそうな、あるいは、そのまま波に浚われてしまいそうな。それはきっと、恐怖に似た感覚だったのだろう。慌てて手を伸ばしたのは、突き動かされたからか。
だけれど、視線の合った彼女は、無垢な顔をきょとんとさせていた。
何が起こったのかも理解していないかのような表情がおかしくて、つい、笑っていた。
そんな自分の何が、彼女の琴線に触れたのかは判らない。判らないけれど、シリウスはリチェルカーレの満面の笑顔に、言い得ない幸福を覚えたのだ。
ふと、カメラがこちらを向いているのに気が付いた。
リチェルカーレには気付かれ無いように、さりげなく姿勢を変えれば、ファインダーには彼女の姿は収まらない。
(誰かに見せるのは、惜しいな)
撮影の同行は許可したけれど、映すものは、選んでいいはずだ。
ならばこの、パステルピンクが映える、飛び切りの青い花は。
(今は――)
今は、シリウスだけのもの。
依頼結果:大成功