リザルトノベル
◆アクション・プラン
ハティ(ブリンド)
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二人分のかき氷を持ってリンの元へ
どこに居ても目立つ男だな
そんないっぺんに話し掛けたら返事できないだろ
人探しか…かき氷だったら多分同じ列に並んでた
そろそろ戻ってくる頃だと思う
…混んでたんだよ
流石に人が多いな
落ち着かないのは題目に影響されすぎだろうか
そもそもリンは撮られてもいいのか?
思案しつつかき氷を崩す
何をすればいいと思う?
…アンタの事を好きな人…かな
それがアンタの好きな人なら
大事にする理由があるし
…考えた事なかったからな
話してるだろ?
食うか?苺味
リンのメロン味も貰う
星見に夜再び浜に出て
水面に映る月を追うように海へ
繋がった手は水の中だが重なった影はまるで
いいのか?こんな…
じゃなくてアンタ水着は…
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ヤシの木に背をあずけて立ち、ブリンドは嘆息した。
「ったく、この距離で迷子になったんじゃねえだろうなあの野郎……」
ちょっとカキ氷を買ってくる。リンも食べるだろう? そう言ってハティが太陽の下に出ていったのが一時間も前。いったいどこまで出かけたというのか。ここに来る途中に見た店じゃないのか。あそこなら歩いて数分だろうが。ったくガキかよと文句が脳内を駆け巡る。
木々の間から陽ざし鮮やかな海岸に目を向ければ、そこにはたくさんの水着姿のウィンクルムがいた。男も女も一様ににこにこと楽しそうで、ブリンドは舌打ちをする。ちなみに別に楽しそうなのが嫌なのではない。
「くそっ」
散歩道に戻り、足元の砂を蹴る。額にかかる髪をかきあげうつむくと、度の入っていない眼鏡が汗で滑った。正直不快だ、今のなにもかも。しかしこんなところでぐだぐだ言っていてもハティは戻らないし、探しに行けば行き違いになることは明白である。ここで待っていると言ったのだ、自分はここにいればいい。
ブリンドは再び茶色い幹に背をつけた。……が、目の前を赤髪が通りはっとする。
しかしそれはハティではなかった。短髪でボーイッシュではあるが、明らかに女性だ。ふらふらと揺れる体と、不安げな眼差しが気になった。知らない人間だからと言って放ってはおけず、ブリンドは声をかけた。
「おいお前大丈夫か? 迷ってんのか? それとも気分でも悪りィのか?」
小柄な彼女の、自分の相棒さながらに白い顔を覗き込む。そのときだ。
「そんなにいっぺんに話しかけたら返事できないだろう」
聞き慣れた声。よく知った顔が隣に並び、ブリンドは視線を上げた。横には散々待っていたハティがいる。もちろん両手にはカキ氷を持っていた。
赤髪の女性は人を探しているのだと説明した。容姿を聞いたハティが、それならたぶんカキ氷の列に並んでいたと言うと、彼女は嬉しそうに微笑んで、そちらへと向かって行った。
その背をなんとなく見送った後、ハティはブリンドに氷をひとつ渡してくる。
あんな風に笑顔は見せられないし見せるつもりもないし、そもそも見せたいとも思わないとブリンドは、いつも通りの仏頂面でその氷を受け取った。
「お前おせーよ」
「……混んでたんだよ、流石に人が多くて」
ハティはさっきブリンドがしたように、白い砂浜に視線を向けた。ヤシの木のお蔭で日陰になっているこの道とは違い、あちらの世界はすべてがきらきらと輝いていた。太陽も海も、ウィンクルムたちも。
「あれなら撮影班も撮りやすいだろうな……」
きゃっきゃと遊ぶ仲間に思わず呟けば、ブリンドはため息だ。
「そんなの、得意な連中に任せときゃいーだろ」
「そうだが……そもそも、リンは撮られてもいいのか? ……たとえばその、さっきの女性、とか」
「俺ぇ? ってかなんであの女が出てくるんだよ」
ブリンドは呆れた声を出し、ハティの緑の目をじっと見る。
「お前はどうなんだよ。本当に誰ともつきあいねーの? さっきの女とは普通に話してただろ。好きなタイプとかねえのかよ」
「……好きなタイプ……」
矢継ぎ早に聞かれて混乱するも、ハティはひっかかった言葉を繰り返した。それはあれか、たとえば髪の色はこうで、肌の色はこう、性格は……というタイプのことか。
黙り込むハティの腕を、ブリンドが掴む。こんなところに突っ立ってたら邪魔だからと近くのベンチに連れて行かれ、並んで腰を下ろした。邪魔も何も今まで散々立っていたくせにと気付く余裕は、ハティにはない。返事を待っているのかそれとももう回答を諦めたのか、しゃくしゃくと氷を崩すブリンドを、ちらりと横目で見やる。好み……俺の。
「……アンタの事を好きな人……かな」
ブリンドの手が、止まる。その意味に気付かず、ハティは先を続けた。
「それがアンタの好きな人なら、大事にする理由があるし」
「おめー絶対今考えただろ」
ブリンドはゆっくりとこちらを向いた。銀の瞳がハティを見るも、ハティはそれから目をそらす。
「考えた事なかったからな」
「なら適当に答えず考え直せ。俺は俺の事じゃなくて、お前の話を聞いてんだよ。いつも口を開きゃ俺の話ばっかの癖に、いもしねー誰のこと考えてるやら」
投げ捨てるように言うブリンドの唇の前に、ストローのスプーンが差し出された。そこにのっているのは赤い苺の氷の山。
「ちょっと落ち着いたほうがいいぞ。食うか? 苺味」
「……お前、俺の言う事聞いてたのか?」
ブリンドは呆れ――口を開けた。出された氷を口に含めば、いかにも安っぽい甘さが口に広がる。
きっと、何を言っても無駄なのだろう。とりあえず今できることはと、手に持っていたカキ氷を、器ごとハティに渡すことくらい。
「どうせメロンも食いたいんだろ? 勝手に食え」
※
日は沈み、月が照らす海岸を、ハティとブリンドは歩いている。昼間は輝いていた水面は、今は闇だけを映していた。寄せては返す波も見えず、音が聞こえるのみである。
あれだけの人数がいたのだから、きっとこの場に二人きり……ではない。しかし視界に映るのは自分達のみではあった。
新月でないから見える星は限られている。それでもタブロスの街中よりはだいぶ美しい空を、二人は見上げた。センチメンタルに浸るつもりはないが、普段見ることができないものを眺めるのもたまにはいい。ふと、ハティが暗い海に目を向ける。
「月が……海に映っている」
「ああ? お、ほんとだ」
どこぞの女みたいなことを言いだしたと思いきや、水平線まで続く淡い光の道筋は、実際に見てみればかなり幻想的ではあった。思わず引き込まれそうになる……が、当然それは気持ちだけのこと。しかしハティは違ったようで、その足が、ざっと一歩、砂を踏んだ。
「おい、どこ行くんだよ」
声をかけるも、彼は止まらない。あの海の先、月を掴むと何かあるとでもいうのか。たしかに美しい月だが、あれはただの偽物に過ぎないのに。昼間のことといい今といい、彼の言動の意味がブリンドにはわからない。いや、もともとか。それでも……それだからこそ、彼を放っておけはしないのだが。
「ハティ、待てよ!」
足に水がかかる距離で、ブリンドはハティの手首を捕まえた。ハティは一度振り返ったものの止まらずに、ばしゃばしゃと水の中へと入っていく。
「おい!」
そんなにあの月が欲しいのか。これはどうにかしても止めるべきか。彼を捕えた手は水中にある。離せばこの男は、どこに行ってしまうんだろう。考えた背後で、何かが一度、ぱしりと光った。振り返り目を凝らせば、カメラを持った男性が一人。撮影クルーというやつだろうか。ハティが口を開く。
「いいのか? こんな……」
ちろと視線が動いたのが、さっきのクルーのいたあたり。ブリンドはすぐに、彼が何を言いたいのかわかった。
「まあ、撮られても悪い画じゃねえだろ。ここまで来て月って……」
「じゃなくて、水着は」
至近距離で、あどけない緑の眼が瞬かれる。
――そっちか。そっちなのか。自分の勘違いに、かっと顔が熱くなる。相手の顔色など判別できない夜だということが、幸い、ではあったが。
ブリンドは掴んでいたハティの手首を離すと、彼の胸を思いきり突き飛ばした。
「着てねーよボケがァァ! おめーが急に進むから!! いったい何があったんだよ!」
「何もない。アンタと綺麗な月を見たかっただけだ」
「はぁ!?」
とっさに大きな声を返した。しかし言われていることを考えてみれば、なかなかに恥ずかしいことである。
――この天然!
ブリンドはハティの顔に、思いきり水をかけた。
「おい、いきなり何を……」
「は、お前が変なこと言うからだ!」
「変なって……俺は思ったままを言っただけだ」
「そんなだから、好きなタイプも出てこねーんだよ!」
二人の声は暴れる水音ともに、暗い海岸に響き渡る。もはやかしゃかしゃと光るフラッシュも気にならなくなっていた。
依頼結果:大成功
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名前:ハティ 呼び名:お前orハティ |
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名前:ブリンド 呼び名:ブリンド、リン |