リザルトノベル
◆アクション・プラン
瑪瑙 瑠璃(瑪瑙 珊瑚)
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○1
海の家に行き、空いている席を探して確保した後、
店員にラムネとイカの串焼きを注文。
無ければ、オススメのメニューを聞いてそれを注文する。
外の景色を眺めながらイカ焼きを食べた後、珊瑚に話しかける。
「お前とまた、こうして夏を過ごせた事を嬉しく思う」
あの時、大学でお前に出会っていなかったら。
ウィンクルムとして契約していなかったら。
おれは……少なくとも一人ぼっちのままだった。
そう言って、徐にラムネをゆっくりと口に入れていった。
何言ってるの?と笑う珊瑚に、恥ずかしながらも「本当だ」と一言。
正直、上手く言えないけど。
お前が必要としているように、おれも……お前が必要なんだ。
だから傍にいる、これからもずっと。
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●次も、その次も
灼熱の太陽が容赦なく照りつける、コバルトブルーの海と真っ白な砂浜のコントラストにヤシの木が南国の雰囲気を引き立てているゴールドビーチは家族連れやカップルで賑わっており、それぞれの夏を満喫している真っ最中だ。瑪瑙 瑠璃と瑪瑙 珊瑚も撮影協力に申し出て、貸し出された水着を身に付けるとゴールドビーチでひとしきり遊んだ後に海の家まで腹ごしらえにやってきた。
「よかった、席は少し空いているようだ」
瑠璃は店内を見回して空いている席はないかと確認してみた。大勢の客が訪れることを想定していたようで店も大きめに作られているのだろう、二人で座れる席はいくつか残っているようだ。
瑠璃と珊瑚の姿を見つけた店員が席まで案内すると、ちょうど海の見える位置で影のかかった席だった。
「すげー良い席じゃん!眺めもいいし涼しいし、運が良かったな!」
「落ち着け、子供じゃないんだから」
目を輝かせてキョロキョロあちこちを見回している珊瑚をたしなめながら瑠璃は店内に張り出されているメニューに視線を巡らせる。
「そんなに腹も空いてないし、イカ焼きとラムネにするか……珊瑚は決まったか?」
「うーん、じゃあ、俺は……うん、決めたぜ!」
ようやく落ち着いて腰を据えた珊瑚も決まったというので瑠璃は通りかかった店員に声をかける。
「イカ焼きとラムネを」
「オレはコークとスイカで、よろしくな!」
少々お待ちください、と注文伝票をしたためた店員は厨房の方へと駆けていく。入れ替わるようにカメラを片手に携えた男性カメラマンがやってきた。
「お疲れ様。休憩中かな?」
「ちょっと小腹が空いたので」
声をかけてきたカメラマンに瑠璃が会釈を返すと珊瑚も「お疲れさんだぜ!」と手を上げる。
「僕は店内を回っているから急にカメラを向けても怒らないでね?」
そう言ってカメラマンは頭を軽く下げると再び離れていく。
(ここにもカメラマンが居るのか、気を引き締めないとな)
うっかり変なところを撮られては堪ったものではない、瑠璃は心の中で気を引き締めていると店員が瑠璃と珊瑚の注文した品物をトレイに乗せて戻ってきた。
「お待たせ致しました、ゆっくりしていって下さいね!」
コークとラムネは王冠のようなキャップが付いたままの細い瓶ボトルで出され、栓抜きを一緒に置いていってくれた。こんがり焼かれたイカ焼きから漂う焼けた磯の香りが鼻腔をくすぐり、すぐにでもかぶりつきたくなる。スイカも三角状に切られ、真っ赤な果肉はジューシーな甘味を予感させる。
「うっひゃー!美味そうっ」
「いただきます」
スイカを食べ始める珊瑚は夢中でムシャムシャとかぶりつき、瑠璃は2本の瓶の蓋を開けてから両手を合わせて熱々に焼かれたイカに刺さる串を持ち頬張る。塩を軽くまぶして味付けされただけのシンプルな味わいだが引き出された食欲を満たしていく充足感がある。瑠璃ははふはふと火傷しないように口の中で転がしながらラムネで飲み下す。炭酸水特有の弾けるような喉越しが癒してくれた。
一時の空腹を癒される満足感にわずかに笑みを浮かべる瑠璃は不穏な気配を察知……みると珊瑚がリスかハムスターのような、頬袋に餌を溜め込んでいるような状態になっている。
「……珊瑚」
ジロリと鋭い視線を向けながら瑠璃は珊瑚のやろうとしている行動を推測する。
「種を吹き飛ばすんじゃない。来ている他のお客に迷惑をかけることになるんだ、テレビカメラにも恥ずかしいところを撮られたいのか?」
厳しい口調で制止する瑠璃に珊瑚は唇を尖らせながら渋々とスイカの乗っていた皿に種を吹き出していく、これも珊瑚を気遣っての発言なだけに解ってほしいところだが……瑠璃は溜め息をこぼしイカ焼きを頬張る。外では海の家と同じくわいわいと観光客が賑わっている様子が視界に映り、楽しげに遊んでいる他のウィンクルムの姿も見える。
「珊瑚」
潮騒の心地よい音の向こうにある水平線を見つめる瑠璃は改まって珊瑚に話しかける、珊瑚は口に含んでいたコークをゴクリと飲み込むと神妙な面持ちの瑠璃を見やる。
「お前とこうして夏を過ごせることを嬉しく思うぞ。お前と出会って、契約して……色んなことが大きく変わった」
もし、お前に出会っていなかったら。ウィンクルムとして契約していなかったら。
「なにもない日常を送っていたら、自分は一人ぼっちのままだっただろう。人付き合いも苦手だし、なんというか……浅い付き合いの気楽さに甘えていたんだろうな」
珊瑚の前で感傷的になるなんてらしくないな、と思いながらラムネを飲み込んでそれ以上の言葉を濁す。
「……あ、はは! 何言ってんだよ、らしくねぇぞ?」
瑠璃の思わぬ発言に気恥ずかしくなったのかぎごちない笑みを浮かべて珊瑚は目を逸らした、瑠璃は狼狽している珊瑚に水平線へ向けていた視線を移す。
「聞いてくれ。正直、上手く言えないけど……お前が必要としているように自分もお前が必要なんだ。だから……」
だから、これからも……。 瑠璃は躊躇いがちに息を呑んで珊瑚を見つめ直す。
「これからも宜しくな」
柄にもないことを言ってしまったと気恥かしそうに瑠璃はラムネをぐいっと飲み込んだ、すでに炭酸が抜けかけていて甘ったるさだけが残る。珊瑚は珍しく呆気にとらていて瑠璃の居心地の悪さが増していく。
(流石に変だと思われたか?)
唐突過ぎたか、と瑠璃が反省していた瞬間。 ダンッ!とテーブルを勢いよく叩きながら珊瑚が立ち上がる。
「アテーメーヤンヤー! オレだって、チャー!マジュンゥン!ウリー!!ナマだってチムガナサン、チムドンドン……」
「さ、珊瑚!ストップ!」
声を張り上げる珊瑚を慌ててなだめる瑠璃……しかし、時すでに遅し。
「「……」」
海の家は臨時のレストランと言っても過言ではなく、公共の場と認識しても差し支えないだろう。そんな場所で聞いたこともない訛りの強い言語の大声を上げているとなれば注目は嫌でも集まってくる、店員や店内でくつろいでいた観光客の視線は珊瑚と瑠璃に集中する。店内は一瞬にして沈黙に包まれた。
……当然、こんな面白い騒動をテレビクルーが見逃すはずもなく。
『ジ、ジー』
瑠璃と珊瑚の騒ぎもバッチリ、テレビカメラに収められていた。瑠璃は片手で顔を覆うと深い溜息を吐いた……『ちゃんと忠告したことを忘れていたのか』と言いたげである。
「あ、あはははは……なんでもないっ、なんでもねぇから!」
バツが悪そうに笑みを浮かべる珊瑚は笑って誤魔化すと身体を縮こませるように座り直した、大した騒動ではないのかと野次馬根性で見物していた者も蜘蛛の子を散らすように引いていき店内は元の喧騒に包まれる。元の情景にすぐに戻ったことに珊瑚は安堵するが目の前にいる瑠璃だけが変わらず痛む頭を抑えているようだった。
「自分はさっき忠告したからな」
「……へーい」
気まずい空気が二人の間に流れる中、割って入ってきたのは撮影していたカメラマンだ。
「大丈夫かい?撮影していた僕が言うのもなんだけれど、ホントに喧嘩してた?」
「いや、そういう訳じゃ……今のも放送するんですか」
申し訳なさそうに眉をハの字に垂れるカメラマンに瑠璃は弁解しながら今のやりとりを放送してしまうのかと怖々と尋ねる。
「面白い映像だから使いたいけどちょっと難しいかな、なにを言っているのか解らなかったし」
「アッゲェっ!?」
苦笑するカメラマンに珊瑚はしょんぼりとテーブルに突っ伏す。
「まあまあ、気を落とさないでね……僕も失礼するよ」
男は瑠璃と珊瑚に会釈すると別のクルーと交代しに海の家から抜け出していった。
「……珊瑚」
頬杖を付きながら再び外の景色を眺める瑠璃は不意に呟く。
「来年もまた来ような」
依頼結果:普通