リザルトノベル
◆アクション・プラン
七草・シエテ・イルゴ(翡翠・フェイツィ)
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×3
私服に着替え、シャーク船長の酒場へ。
出来れば、2人横に並んで座れる席を希望。
空席であるか確認してから着席します。
おつまみに胡桃、カクテルはブルー・ムーンを注文。
無ければメニューから注文するか、マスターにオススメを尋ねる。
お互いに注文の品が届いた後、改めて乾杯。
カクテルを口につけて飲む途中、翡翠さんをチラっと見つめる。
でも、いざ目が合うと恥ずかしくなり、再び反らす。
「間接キスのせいです。この間のジュースの件と、昼間のカクテルの。
私には……刺激的なんです」
顔を赤くしながらそう言うと、
テーブルに置かれた彼の手の上に、自分の手をそっと重ねた。
「なので今は、翡翠さんに触れられるだけでも幸せですから」
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●誠実な愛
満月が照らし満天の星が夜空に広がる頃。七草・シエテ・イルゴと翡翠・フェイツィはゴールドビーチにある中心街・コーラルベイへやってきた。 白い壁の家々が宵闇色に染まり溢れる住居の光は地上にも星がこぼれ落ちてきたように思える。
「翡翠さん、ありましたよ」
プルメリアの髪飾りとマキシ丈のワンピースをまとうシエテが嬉しそうに指差す先には一件の酒場が建っている。
そこはコーラルベイが海賊港と呼ばれていた頃から続く『シャーク船長の酒場』
シャーク船長の名だけが残る荒くれ者共の集った酒場も今では海賊気分が味わえると有名になり多くの客で賑わっている。
「堂々とした店構え、海賊の名に相応しいな」
鮮やかなハイビスカス柄で彩られたゆったりめのシャツにカーゴパンツ姿の翡翠も愉快そうに目を細めると酒場へと入っていく。
店内は古ぼけた板打ちの床に円卓が数個置かれ、テーブルの上にフィッシュ&チップスやスモークジャーキー、ガーリックシュリンプなど食欲をそそる軽食と共にビールジョッキを手に歓談する観光客や仕事終わりにやってきただろう真っ黒に日焼けしたガタイの良い漁師達の姿も目に付く。
シエテと翡翠はカウンター席の端に通してもらうと、さっそくメニューを確認する。
「お酒と、つまめる物を頼みましょうか」
「だな。じゃあ俺は酒だけ頼むからシエの好きな物で」
すみません、とシエテが声をかけるとカウンター内からシワの深い色黒の厳つい中年の男が注文伝票を手に顔を出す。
「ブルー・ムーンとナッツをお願いします」
「俺はブルーマンデーを頼みたいんだがあるかい?」
注文を受けた男はサラサラと書いていくが、ふと途中で手を止める。
「お客さん、女性の前でそんな辛気臭い酒はやめときな……俺のオススメでもいいかい?」
「じゃあそのオススメで」
神妙な面持ちの男はオススメがあると提案し、翡翠も面白そうだと注文は勧められたものに変えることにした。
「うふふ、なんでしょうね?」
「よっぽど自信があるみたいだし、期待して待たせてもらうとしよう」
シエテもなにが出てくるのだろうとワクワクした様子で見つめ、翡翠と共にカウンターを覗き込む。
男はクルミの入ったナッツの盛り合わせをカウンターに出すとカクテルを作る支度を済ませ、シェイカーを取り出してみせる。
メジャーカップでドライ・ジン、スミレ色のリキュール、レモンジュースを正確な分量で注ぎ込みシェイカーをセットすると両手を添えて勢いよく振って混ぜ合わせていく。小気味よいテンポで数回混ぜ合わせると口が広く底の浅いカクテルグラスに注ぎ込んでいく。
薄紫色のカクテルに三日月型にカットされたレモンピールを浮かべて男はシエテの前に差し出す。
「ブルー・ムーンです」
「わぁ……! ありがとうございます」
カクテルの上で揺らぐレモンピールが夜空に浮かぶ月を連想させて、思わずシエテも感嘆の吐息をこぼし笑顔になる。
男はすぐに別のシェイカーを取り出すとラム酒、鮮やかな青のキュラソー、ライムジュースを同じように計りながら注いでシェイクする。混ぜ合わせてからシエテに出したグラスと同じグラスに注ぎ込めば、鮮やかな青色のカクテルが出てくる。
「こちら、スカイ・ダイビングです」
男の差し出す一杯の意図に気づいた翡翠はハッと驚いた表情になり、愉快そうに笑みをこぼした。
「なるほどね、こりゃ一本とられた」
「どういう事ですか?」
おかしそうに笑みを浮かべる翡翠にシエテは首を傾げた、翡翠はグラスを手にとって横目で視線を向ける。
「『月』に寄り添うなら『空』がいい、ってさ」
(月、空……あっ)
一瞬どういう意味なのかとシエテは思案するとすぐにその意味を理解した……月は自分を指し、空が翡翠を指しているのだと。恋人関係を見抜いた男の粋な計らいを受けてシエテの頬は赤く染まる。
「じゃ、楽しい一日に」
「……乾杯」
グラスの口を向ける翡翠にシエテもグラスを持ちぶつけ合うと小気味良い音が二人の間に響く、シエテがカクテルを一口含むとレモンの酸味とジンのほろ苦さが口に広がり、菫の艶やかな香りがふんわりと美しいカクテルを演出している。
(翡翠さんはどうかしら)
ふとシエテが翡翠に横目でチラリと視線を向けると、翡翠も鮮やかな青色のカクテルを満足げにみつめていた。
「ん? どうかしたか」
シエテの視線に気づいた翡翠がふっと視線をあげるとバチリと視線が交わった、深い緑色の瞳に自分が映り込み気恥ずかしくなってシエテは慌てて視線を逸らしクルミをぱくり。首を傾げる翡翠は再び視線を外すとシエテも再び翡翠の横顔を見遣り、翡翠が視線を向けると慌ててそらす……そんな事を数回繰り返すあいだは酒場の喧騒だけが聞こえてくる。
「……なぁ、シエ?」
痺れを切らした翡翠はぐい、とカクテルを飲み下すとシエテに向き直る。シエテは先ほどと同じように視線をそらしてしまうが翡翠は真っ直ぐ見つめたままだ。
「俺達、一応恋人だろう?」
「そ、そうですね……」
「なのに言いたいことも言わないままなの?」
言い切った翡翠は責めるような強い口調になってしまったことにハッとしてバツが悪そうに視線を逸らしながら座り直し姿勢を正す。ナッツを一つ手に取るとガリガリと噛み砕いていき口直しにならないものかと試したが気持ちはモヤモヤしたままだ。
「……私には」
シエテも自分の行動で翡翠を不機嫌にしてしまったことが申し訳なく、なんと言えば良いものかと言葉を選びながら口を開いた。翡翠も眉を顰めてシエテの方を見遣る。
「翡翠さんの行動が、私には……刺激的過ぎるんです。こんな感情を抱いたのは、翡翠さんが初めてで……その、色々な変化に、気持ちが追いつかないんです」
これまで過ごした日々の思い出が脳裏に浮かんできたのか、シエテは耳まで真っ赤に染めてうつむいてしまった。初心な反応を見せる彼女はお世辞にも嘘が上手いと言える人物ではないことを一番よく理解しているのは翡翠自身だ。
「……すまない。本当はさ……今の関係のままでいいのか、内心焦ってるんだ」
格好悪いところを見せたくないと、見栄を張ったせいでシエテを戸惑わせていることに気づいた翡翠も酒の力が背中を押してくれたのか、弱気な本音が口を突いて出る。翡翠の本音を聞いたシエテは顔を上げて見ると翡翠の横顔は物悲しさを感じさせる。
シエテはテーブルに置かれた翡翠の手の甲に自分の手をそっと重ねた、契約者の証である赤い文様が視界に入ってくる。
「今は、翡翠さんに触れられるだけで幸せですから……焦らずゆっくり、過ごしませんか?」
シエテは照れくさそうに笑みを浮かべて翡翠を真っ直ぐ見つめる、瞳は翡翠自身の手にあるカクテルと同じ色をしていて澄んだ青色がひどく愛おしくなる。翡翠も重ねられた手を返してつなぐように合わせると指先を絡めてシエテを見つめ返した。
「シエがそう言うなら……今はこのままでいい。この瞬間が俺にもとても大切だから」
翡翠の言葉にシエテも頷いていると、二人の前に先ほどの男がやってきた。
「俺からお二人にサービスだ、ブルーラグーンと言う」
置かれた二つのシャンパングラスには爽やかな水色のカクテルが注がれており、オレンジやレッドチェリーの飾り付けが可愛らしくグラスから伸びる ストローも南国の雰囲気によく合う。
「お二人とも淡い青色のカクテルをご所望だったのかと思ってな、こちらのカクテルについた言葉もよくお似合いかと」
男は込められた意味を伝える。
「誠実な愛、だそうだ……ごゆっくりどうぞ」
恭しく頭を下げた男は再びその場を離れた。
「粋だねぇ……折角だし頂こうか」
「はい、誠実な愛に」
シエテと翡翠は淡い青色のカクテルの注がれたグラスを手に取ると再びグラスをぶつけ合う。
「「乾杯」」
依頼結果:成功