【白昼夢】静かな渚の水音のはなし(京月ささや マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

 晴れ渡る青空。透き通るぐらい真っ青な晴天。
 復活祭の儀式のため、愛の結晶「ピーサンカ」を探して
 あなたたちは聖地・フィヨルネイジャを歩いています。
 空中に浮かぶこの島は、見たことも無い幻想的な景色ばかり。
 しかし、愛の結晶「ピーサンカ」はどこにあるのか…
 とにかく、この周辺を探索してみようとあなたたちはの意見は一致しました。

 フィヨルネイジャの土地をサクサクと進んでいると
 不意に木々で覆われていた景色が開けました。
 そこには、島でありながら湾のように大きく広がった透明な大きな水面。
 足元を見ると、小さな砂利の浅瀬に、海のように波が打ち寄せては返しています。

「ああ、やっと来たか!」

 と、いきなり後ろから声をかけられて、あなたたちはとても驚きました。
 後ろを振り返ってみると、それなりに確りとした体つきの男性が一人、
 そこに立っているではありませんか。今まではそこにはいなかったはずなのに…
 しかし、なんだか神人の様子がおかしいことに、精霊は気づきます。
 精霊は男性の出現に驚いただけだったのですが、
 神人はなんだか物凄く動揺しているのです。
「ああ、なんだ。この人は友達なのか?紹介してほしいな」
 男性は神人に向かって話しかけてきますが、神人はあまりの動揺にしどろもどろ。
「まあなんだから、こっちに来て作業しながら話そう。別荘があるんだ」
 そう言うと、男性は2人を手招きしつつ先に歩いていってしまいます。

 一体どういうことなんだ…?あれは知り合いなのか?
 男性の後ろをついていきながら、精霊は神人にたずねました。
 すると、小さな声で神人は言ったのです。

 あれは、自分の父親だ…と。

 もちろん、聖地・フィヨルネイジャに神人の父親がいるとは
 精霊は聞いたこともありません。
 それどころか、神人でさえも、ここに父親がいるのはありえないと思っている様子。

 戸惑いを隠せないあなたたち2人でしたが、ほどなくして彼の別荘に到着しました。
 しかし…別荘というよりも、波打ち際に建てられたそこは、
 まるで『海の家』のような雰囲気。
 靴を脱いで上がるように促した男性は、テーブルを挟んで2人と向き合いました。
「こういう所でも元気にやっているようで安心した。
 その人は誰なんだ?友達なのか?詳しく話してほしい」
 彼の神人をみつめる目はとても真剣です。
 どうやら…彼は、神人にとって精霊がどんな存在なのかを知りたがっているようなのです。

 微妙な沈黙が流れていると、ふと何かに気づいたように男性は立ち上がりました。
「飲み物でも持ってくるよ。特別な紅茶で少し時間がかかるから、まあくつろいで」
 そう言って、部屋から出て行った彼。
 飲み物が準備されて彼が戻ってくれば、神人は精霊の事を彼に話さなければなりません。

 あなたたちは顔を見合わせました。
 あなたたちには、なんとなくの確信があります。目の前にいた彼はきっと…幻。
 けれど、まぎれもなく神人の記憶の中にいる父親に間違いはないのです。
 こうして、あなたたちは、神人の父親に、精霊が自分にとってどんな存在かを
 詳しく説明するかどうかの選択肢を迫られることになったのでした…

解説

■目的
 聖地・フィヨルネイジャの湖で遭遇した神人の父親の幻に、
 精霊が自分にとってどんな存在かを説明するかどうかを決めて
 神人の父親と様々な対話をするエピソードになります。
 真実を話すもよし、嘘を話すもよし、幻へは神人が語るも精霊が語るもよし。
 話す言葉に心からの『想い』がこもっていれば、愛の結晶「ピーサンカ」が入手できます。
 
■消費ジェールについて
 特性紅茶の代金として400ジェール頂戴します。

■神人の父親の幻について
 衣服は少し南国のような格好をしていますが、まぎれもなく神人の実父の格好です。
 声や外見、喋りかたも神人の記憶そのままです。
 神人が過去に父親と早くに死別していたり父親を知らない場合は
 神人の実際の父親と同じ姿形、性格で目の前に現れます。
 この幻の父親は、神人に父親の記憶がなくても『この人は父だ』と直感させてしまいます。 父親の幻は、精霊の事が気になって仕方ないようです。
 神人には、精霊が神人にとってどんな存在かを詳しく知りたがっているようですが
 知ったところで何か危害を加えたり怒ったりするつもりはないようです。
 純粋に『親心』もしくは『好奇心』で気になっている様子です。
  
■精霊の説明について
 神人にとって精霊がどんな存在かの説明は、神人・精霊のどちらが行ってもOK。
 本当の事を話すもよし、ウソを話してもかまいません。
 ウソを話しても父親の幻はきちんとそれを信じてしまいます。
 本当の事を話すかウソを話すかは、彼が飲み物を準備している間に
 2人で相談して決めるなど、ご自由にどうぞ!

■説明後について
 精霊の説明をすれば父親幻は納得して消え、別荘と紅茶だけがその場に残ります。
 特性紅茶は、とても美味しいトロピカル風味の紅茶です。
 晴天の静かな湖畔の波打ち際にある父の幻が消えた別荘で
 お互いの関係について改めて語り合うのもいいかもしれません。

ゲームマスターより

こんにちは、京月ささやです。

今回は、神人と精霊が、神人の肉親のひとりである『父親』の幻と出会い
お互いの関係を親しい人に説明する試練を与えられるエピソードになります。
いわゆる…『お父さんに自分の好きな人をどう紹介しますか?』という内容です。

プランには、父親の外見や口調など、必ず書いてほしい外見の特徴や
キャラ情報に記載していない神人との特別な因果関係などがあれば
是非記載してください。

どうか、このエピソードで、皆様の絆が強まったり
関係の転機が訪れるような機会の一助となれることを祈っております。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)

  ◆父はセイジにとても似ている

◆相談
父は俺が子供の頃にオーガに殺されたって話はしたろ?
だから幻でも会えて嬉しい
けど、いざ話すとなると何をどう話して良いのか…

◆質問に答えつつ父とじっくり話す
俺は今、AROAでオーガと戦ってる
彼はランス、仕事の相棒だ
オーガに対抗する力は、絆が強いほど高まるらしい
だから、彼と同居してるんだ
ルームシェアって奴だ
うん…そう、だな
家族かな

えっ(汗
男同士だから恋人とかそういうのとは…

父の目を見る)

あーそうです恋人ですよ(ヤケ
貴方の息子は一寸ばかり道を踏み外しましたよorz

けど、だから…
もう俺は1人じゃないよ
それだけは安心して

★事後ランスに宥められたら恥ずかしすぎて悶えてしまう



セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  父が居るとはここは天国か(いや違うし。
親父は数年前に病気で他界しているんだよな。
だから今は兄が当主さ。
「親父」より「父上」と呼ぶような家だけど!

親父に嘘は言えないので。
ここは正直に話すとこだろ。
神人として顕現したとか、ラキアが大切なパートナーだっていう話するぜ
「危険な任務もあるけど、ラキアと一緒なら大丈夫って思ってる。オレ達生命の預け合いしてるからさ。お互いがお互いを護るんだ」って。
ラキアが居るから危険な任務にも飛び込んでいけるし、色々な人を助ける事も出来る。
「今世界自由で最も信頼していて、誰よりも大切な人だよ」と。
「オレはラキアを自分の半身だと思ってる!」
ドヤ顔できっぱり胸を張って言えるぜ!


鹿鳴館・リュウ・凛玖義(琥珀・アンブラー)
  (親父……。
振り返ればあの頃の俺は、
何か困った事があれば、すぐ、あんたに頼ってたね)

そう考えながらも、ふと琥珀ちゃんを見つめて思う。
昨年の今頃、公園に舞うピンクの粉を吸い込んだ時、
琥珀ちゃんが僕を「パパ」と呼んで甘えてきてくれた。
もう少し、パパって呼ばれたかったという
あの気持ちは今も変わらない。

「親父」
やおら椅子から立ち上がり、
琥珀ちゃんを後ろから抱きしめた。
「この子は精霊の琥珀ちゃん、俺の息子みたいな存在だよ」

あの時、
あんたは弱虫で生意気な俺を可愛がってくれた。
だから、あんたがしてくれたように俺もする。

「本当だよ」
どんなに血が繋がらなくても、
僕達はウィンクルムで……親子みたいなもんだからね。


明智珠樹(千亞)
  ●前提
父は既に死別。だが記憶喪失な珠樹、その事実覚えておらず。

●父
珠樹と同じ位の年頃の男。ニコニコ穏やか。
容姿は珠樹に面影あり、両目は青い。
「たまちゃん、大きくなったね!」
珠樹キョトン。
ただ感覚で「父親のようですね、ふふ」

『それよりパパ、かわいこちゃんとたまちゃんのお話し聞きたいな☆』

●紹介
「この方は千亞さんです。こう見えて男性です。
 私のパートナーで、愛しの人です、ふふ!」
楽しそうな珠樹&珠樹パパ。

●後
いいじゃないですか、千亞さん。
こうやって私の記憶の欠片を探す遊びだと思ってください。
きっといつかまた会えますよ(微笑み)

むしろ私は千亞さんのご両親に「息子さんを僕にください!」と土下座を…!


永倉 玲央(クロウ・銀月)
  ひ、久しぶりだね、父さん。
いいですかクロさん、父さんは上京する僕のことをとても心配してたんです。
幻とはいえ、あんまり不安にさせたくないんでよろしくお願いしますね?

父親の外見や口調・髪と目の色は玲央と同じで温厚な雰囲気、のんびりとした口調

・ある程度、本当の事を言う
・玲央の方から紹介
・「僕達は出会ってまだ日が浅いし、あまりお互いの事も深く知らないけど・・・僕はクロさんの傍にいたいと思ってる」
・説明後、「言っときますけど、傍にいたいってのはあんたが常日頃だらしないからほっとけないって意味で・・・別に告白とかじゃないですから!」(照れ)
・(あーもう、この人といると何か調子狂う!)

アドリブOK!



●揺れる紅茶と笑い声

 明智珠樹と千亞の前に出現したのは、珠樹とそう年齢が変わらない年頃の男性だった。
「たまちゃん、大きくなったね!」
 一方でたまちゃん、と言われた当の珠樹はキョトンとしている。
「この人…え…?」
 千亞はあたふたしていたが、そんな千亞に珠樹はニッコリと笑って一言。
「父親のようですね、ふふ」
「え…!!!??」
 珠樹の面影はあるからもしかすれば兄弟?とは感じていたが
 まさか、父親であろうとは思いもしなかった。
 珠樹には記憶がない。父親だという彼は…何故こんなに若いのだろう?
「あの、お父さん、珠樹さんについて聞きたいことが山ほど…!」
 別荘について腰を下ろした途端に千亞は凄まじい勢いで珠樹父に食いついた。
 …が、当の本人たちといえば、千亞の焦りは何処吹く風。 
「それよりパパ、かわいこちゃんとたまちゃんのお話し聞きたいな☆」
 のほほんとした珠樹父の言葉とにこにこ笑顔の珠樹に
 今度は千亞がキョトンとする番だった。
「え?僕らの話…ですか…?」
「まあまあ、お茶持ってくるから、くつろいでて」
 千亞があっけに取られている間に、珠樹父はその場を立ち去ってしまった。
「珠樹、僕のことはいいから記憶の手掛かりを…」
 珠樹父がいなくなった途端、くるりと千亞は珠樹の方を向き直る。
 記憶喪失の珠樹の記憶を見つけることが出来るかもしれない。
 こんなチャンスは滅多にない!と鼻息荒い千亞だったのだが
 どうも珠樹は今のこの状況を楽しんでいる風だった。
(うう、なんでそんなにものほほんと…!)
 焦る千亞。しかし噛み付くわけにもいかず悶々としていると
 珠樹父がお茶を持ってきて戻ってきてしまった。
「で、このかわいこちゃんはたまちゃんにとってどんなヒト?」
 にこにこしながら尋ねる珠樹父に珠樹はニッコリと笑みを浮かべると
「この方は千亞さんです。こう見えて男性です」
 と、紹介した。そして更にこう続けたのだ。
「私のパートナーで、愛しの人です、ふふ!」
「な、何言ってんだ!珠樹っ」
 いきなりの珠樹の発言に千亞は反射的にグーパンしそうになったが
 ここは珠樹父の目前。そんな事はできるはずもなく、握った拳を下ろして
 ただただ赤面して俯くしかない。
「あ、たまちゃんの片思いなの?」
 そんな様子が珠樹父はとても嬉しく感じているらしく、不機嫌になるような気配でもない。
「パパとしては珠樹の恋愛は上手く行ってほしいけど…」
 そして、その笑みは千亞にも向けられる。
「千亞ちゃん、無理はしないでね」
 その笑みは、いつも千亞が見ている珠樹の笑みとどことなく似ていた。
「…はい」
(…記憶、取り戻すつもりだったけど…)
 千亞の前の父子の姿は、とても楽しそうな空気だった。
(2人が楽しそうなら…いい、か)
 今はこの空気を楽しもう。そう思うと、千亞にも自然と笑みがこぼれていた。

 幸せそうな珠樹の姿と、千亞の事を聞くと嬉しそうに笑いながら珠樹父の姿は
 まるで陽炎のようにその場からゆっくりと消えていった。
「うぅ…結局全然珠樹のこと聞けなかった…!」
 待って下さいと言おうとしたが、叶わなかったことがやはり千亞は少し悔しい。
「いいじゃないですか、千亞さん。
 今日起きた出来事も…私の記憶の欠片を探す遊びだと思ってください…それに」
 珠樹の瞳が、まるで何かをなつかしがるようにそっと細められる。
「きっといつかまた会えますよ、彼には」
「そう…だな。また会いたいな」
 珠樹の微笑みに千亞も頷き返す。
 自分の父に、いつか会える。それは現実だろうか、幻だろうか、それとも記憶だろうか。
 どんな形でもいい、と千亞は思う。珠樹の記憶が戻るなら…
「というか、むしろ私はですね」
 シリアスな気持ちに浸っていた千亞の耳に、情熱あふるる珠樹の言葉が続いた。
「千亞さんのご両親に「息子さんを僕にください!」と土下座を…!」
「んなっ…!!」
 珠樹の言葉にシリアスな気持ちは吹っ飛び更に真っ赤になる千亞。
「だが土下座とその挨拶は止めろ…!!」
 今は珠樹父もいない渚のほとりの別荘で、2人の元気が響く。
 その声に紅茶の水面が一緒に笑うように揺れた。


●胸の中を言葉にすると

 別荘のリビングに通された永倉玲央とクロウ。
「ひ、久しぶりだね、父さん…」
 玲央の声は緊張で心なしか硬い。
 2人の目の前にいるのは、温厚な雰囲気の男性だった。
(へー、これが玲央の親父さんか…)
 まさかこんな所にいるはずがない、と玲央から聞かされているクロは
 目の前の玲央の父親をしみじみと眺める。
 幻らしいのだが、どう見ても実在する人物にしか見えないのだが。
(これがこの島が起こしてる現象なのかねぇ…)
「ま、お茶でも持ってくるからゆっくりしてください」
 髪の色も瞳の色も玲央と同じこの男性は、のんびりした口調でそういうと
 2人のいる部屋を後にしたのだった。
「いいですかクロさん。父さんは上京する僕のことをとても心配してたんです。
 幻とはいえ、あんまり不安にさせたくないんで…よろしくお願いしますね?」
「ん?ああ…」
 いつになく玲央の表情は真剣だった。それだけ父親の事が好きなのか…と
 クロは玲央の今まで知らなかった顔を見たような気がして少し嬉しくなる。
「父さんには、僕からきちんと説明するから…」
 ガララと戸が開いて玲央の父が入ってくると玲央の背筋がピンと伸びる。
「で?そのヒトはどんな方なんだい?」
 紅茶を一口のむと、玲央の父親は穏やかに口を開いた。
「この人は僕のバイト先の上司でパートナーのクロさんだよ。
 ほら、ウィンクルムになった事はこの前電話で話したろ?」
 必死に説明する玲央の言葉をクロは冷静に聞いている。
 まあ確かにある程度本当のコトだ…ウソは、ついていない。
 玲央に促されてクロはぺこりと頭を下げる。
「どうもお父さん、息子さんの生涯のパートナーのクロウです」
「んなっ…!!ご、誤解される言い方はやめろ!」
 あまりにもドストレートなクロの言葉に玲央は慌てて声を上げた。
「い、いやその、そ、そうだ…クロさんは何でも屋なんだ」
「何でも屋?」
 必死に話しを逸らす玲央をニコニコ見守りながら父はきちんと玲央の話題に食いついた。
「はい、そうなんです」
 クロはニッコニコと笑いながら頷く。
 内心は説明が面倒だとほんの少し思っているがそれも2人には内緒だ。
「まあ、要は金さえ払ってくれれば適当にやって誤魔化せばいい簡単な仕事ですわ」
「もっとましな言い方!」
 すかさず突っ込みを入れながら玲央は頭痛を覚えそうになる。
 幻とはいえ、あれだけ上京するときに自分の事を心配していた父なのだ。
 このままだと益々心配させてしまいかねない。
 玲央はグッと机の下で拳を握り締めた。
「父さん、僕達はクロさんと出会ってまだ日が浅い。
 それにあまりお互いの事も深く知らないけど…僕はクロさんの傍にいたいと思ってる」
 だから安心してほしい、と告げる玲央の言葉にクロは僅かに目を見開いた。
 まさか…玲央がこんな言葉を自分から言い出すなんて。
 その言葉を聞いた玲央の父親は穏やかに微笑んで頷く。
 そしてゆっくりその姿は消えていったのだった。

「消えちゃった…」
 あっけにとられたように玲央は肩の力を抜いてため息をついた。
 その横顔をクロがじいっと見つめて、一言。
「なー坊主、さっきのは告白と受け取ってもいいのかね?」
「は、はあっ!?」
 告白という言葉に玲央は素っ頓狂な声を上げた。
 その顔面はゆでダコのように真っ赤だ。
「い、言っときますけど、傍にいたいってのは
 あんたが常日頃だらしないからほっとけないって意味でっ…!!
 …べ、別に告白とかじゃないですから!」
 真っ赤になりながらアタフタとしている玲央をクロはニヤニヤ見ている。
 こんな情況で言い訳をしても照れ隠しにしか見えないのだが。
「ジョーダンだよ、ていうかオマエ言い方ややこしいんだもん」
「うぐぐ……」
 ニヤニヤしながら笑って頭をワシワシするクロに玲央は悔しそうに唇をかみ締める。
(あーもう、この人といると何か調子狂う!)
 勢いで自分の胸の内を口にした…はいいのだが。果たしてこれで…良かったのだろうか。
 いつもと同じで、どこか何かが確実に変わった2人をガラスコップの紅茶が映していた。


●誇りの宣言は高らかに

 お茶を持ってくる、と言って居間から立ち去った後ろ姿を
 セイリュー・グラシアは信じられないという風に見送った。
「父が居るとは…ここは天国か?」
 いや違う、とわかっていてもにわかには信じられない。
 一方のラキア・ジェイドバインはセイリューとは違う意味で驚いていた。
(セイリューとは全く違うタイプなんだな…)
 彼の父は上品で、でも『実はやり手な実業家』といった雰囲気だ。
(人当たりはいいけれど…色々見透かされていそうな気がする)
 その言葉は飲み込んで、ラキアはセイリューと顔を見合わせた。
「セイリューのワイルドさとは対極な感じで思索家な雰囲気なんだもの、驚いた」
 そう言うとセイリューは皮肉そうに肩をすくめて見せる。
「親父は数年前に病気で他界しているんだよな。だから今は兄が当主」
「へえ…」
「ま、親父っていうより父上、って呼ぶような家だけど!」
 明るく言うセイリューにそうなのか…と思うラキアだったが
 ふと、ある言葉に気が付いた。そう…病気で他界しているのだ。彼の父親は。
 そんな父親と今こうして再会した彼の気持ちは…
 そう思うと、そっとラキアはそっとセイリューの頭を撫でたのだった。

「さあ、飲んで。ラクにして」
 戻ってきた父親い促されて、ラキアとセイリューはそっと紅茶を口にする。
(これ、とても良いお茶だね…)
 ラキアは心の中で呟く。
 上流階級らしいセイリューの父親ならではなセレクトの気がした。
 さて、紅茶を一口のみ終えて、セイリューはそっとティーカップを置く。
 父親は隣にいるラキアの存在が気になって仕方ないらしい。
 ウソをつく理由もないし、ウソは…つけない。ならば正直に話すまでだ。
「親父、実は…」
 セイリューは父親に自分が神人として顕現し、ラキアとであった事を話した。
 そして、きちんとこう付け加えた。「ラキアが大切なパートナーだ」という事を。
 静かに聴いている父親の前で、セイリューは熱意を込めて説明する。
「ウィンクルムは危険な任務もあるけど、ラキアと一緒なら大丈夫って思ってる。
 オレ達生命の預け合いしてるからさ。お互いがお互いを護るんだ…
 ラキアが居るから危険な任務にも飛び込んでいけるし、色々な人を助ける事も出来る」
 その言葉を聞きながら、ラキアは自分でも止められないほど手に汗をかいていた。
 セイリューの説明はあまりにも直球すぎるのでかなり恥ずかしい。
(説明、超ストレートだ…セイリューだから仕方ないと思うけど…でも!)
 そう、でも、恥ずかしい事にはかわりがない。
 そう思っていた時、更にセイリューの声が大きさを増した。
「今世界中で最も信頼していて、誰よりも大切な人だよ。
 オレはラキアを自分の半身だと思ってる!」
 驚いて見上げた先には、そう父親に宣言するセイリュー。
 その横顔はとても…とても誇らしげだ。
 自分の事をそんなに思ってくれている…それに、自分は彼の言うとおり
 お互いを守って、危険な任務にも赴く。
 ラキアも覚悟を決めた。彼の父親の前で自分が頼りない姿なんて、晒せない。
「はい、全力で彼を護ります」
 頷いてそう同意するラキアの顔も、誇らしげな笑顔に満ちていた。
「そうか…ならば、安心だ…」
 2人の笑顔にゆっくりと頷くと、父親の幻はゆらりと揺れて煙のように消えた。
 はー…、とラキアは肩の力を抜く。
 セイリューは…まだ誇らしげに父のいた場所を見つめていた。
 そんなセイリューの横顔に、ラキアはまだ心臓のバクバクがとまらない。
 まさか自分を、半身のように思っているだなんて…心の準備がなかったのだから。
 どても、とても嬉しいけれど反応に困ってしまう。
 さあ、この紅茶を飲み終えたらどう話しかけたらいいんだろう…
 戸惑いながらも、ラキアは残りの紅茶を飲み干すためにカップに手を伸ばしたのだった。


●見守る貴方に真実を

 紅茶を持ってくると言われて居間に残されたアキ・セイジとヴェルトール・ランスの2人。
 父親の足音が遠ざかったのを聞いて、そっとセイジはランスの方を向いた。
「父は俺が子供の頃にオーガに殺されたって話はしたろ?
 だから幻でも会えて嬉しい…けど、いざ話すとなると…」
「親子水入らずだし俺は少し席を外そうか?」
 何を話していいのかわからない。そう言いたげなセイジに、そっとランスが告げる。
「ああ、すまない助かる…そうしてくれないか」
「わかった、ゆっくりな」
 頷くと、ランスはその部屋から出て父とは反対の方に歩いて行った。
「おや、彼はいないのかな」
 戻ってきたセイジの父は少し不思議そうな顔をしたが、
 セイジはそんな父親に思い切って自分のこれまでの事、
 そしてランスの事を話すことに決めた。
「セイジ今は…何をしてるんだ?」
「俺は今、A.R.O.A.でオーガと戦ってる。彼はランス、仕事の相棒だ…
 オーガに対抗する力は、絆が強いほど高まるらしい…だから、彼と同居してるんだ」
「ほう、同居…」
 同居と聴いて興味深げな父にセイジは頷く。
「そう、ルームシェアって奴だ…」
「じゃあすごく親しくしているわけか」
「うん…そう、だな。家族みたいな、間柄…」
 父親の質問にセイジは必死に答えていく。
 そんな2人の会話をそっとランスが隣室で聞いている事をセイジは知らない。
「恋人とかではなく?」
「えっ…」
 そして唐突な父親の突っ込みにセイジは面食らった。
 確かに男性同士で同居…というのはそういう風に思われても仕方ない…といえばそうなのだが。
「え、あ、いや…男同士だから恋人とかそういうのとは…」
 セイジが答えに困ってしどろもどろになっていると
 隣室からひょっこりとランスが顔を出した。
 ランスの方を見るセイジの全身からは
 自分に対して『助けて、どうにかして』というオーラがバンバン出ている。
 ランスはセイジの隣に腰を下ろしてニッと笑った。
「お父さん。お任せ下さい。セイジは必ず幸せにします。…だから息子さんを俺にください」
(!?!?!????!!)
 あまりにもド真ん中な言葉にセイジはただ呆然とするしかなかった。
 とんでもない宣言に心臓の鼓動はバクバクと早鐘のように鳴っている。
 恐る恐る父の目を見ると…どうやら父は怒っているわけではなさそうだ。
 しかも…その瞳は『隠していても何となくわかっていた』とでもいいたげで。
「あーそうです恋人ですよ…貴方の息子は一寸ばかり道を踏み外しましたよ!」
 もうこうなっては仕方ない、とセイジもランスとの関係をぶっちゃけてしまった。
 そこまで言って、セイジはどこか胸のつかえが取れた気がした。
 心臓の音が落ち着いてから、そっと、改めて父の目をまっすぐに見る。
「けど、だから…もう俺は1人じゃないよ。それだけは安心して」
 天国から自分を見守ってくれていたかもしれない父にずっと言いたかった言葉。
 そんな真剣なセイジとはまた別の真剣さでランスも父に宣言する。
「いずれ、時が来たら嫁さんにするつもりです。きっとタブロスいちの花嫁に…」
 そこまで言って言葉は途切れた、セイジの右ストレートがランスに炸裂したのだ。
「誰が嫁だ、誰が!」
 声を荒げるセイジにランスは「愛が痛い愛が」とに茶化す。
 どうしていつもそうなんだとか、だってかわいいからとか、
 2人がそんな軽口の応酬をしているうち、ゆらりと父の気配が揺らいだのがわかった。
 その気配を察知して、ランスは消え行くセイジの父に向かって
 真摯な顔で「ありがとうございました、お父さん」と別れの言葉を告げた。
「支えます…彼の心が揺れないように」
 その言葉は、消えた父の幻には届いただろうか。
 ひとりの気配が消えて、少し寂しくなった部屋の中で、そっとランスはセイジを振り返る。
 その笑みは、さっきの軽口の時とは別人のように凛々しい。
「…よかったな、会えて」
 その言葉に優しさに、セイジはこのヒトと会えてよかったと
 改めて自分の運命を誇りに思うのだった。


●総ての愛にあたたかさを

(髪も赤かったし、顔つきも体格も声も似てた…)
 居間に通されて、紅茶が運ばれるまでの間、琥珀・アンブラーは
 鹿鳴館・リュウとその父親の事を考えていた。
 色々似ているところはあった。違うところといえば…髪型だろうか。
 りくと父親は髪型と髪のうねり具合が違う。
(りく、うらやましい。あの人と本当に親子なんだ…)
(親父……。)
 普段とは少し雰囲気が違う緊張した空気。
 りくも、父親と自分の事を琥珀を横にして考えていた。
 紅茶を持ってくる、と言われて背を向けた父の姿は、あまりにも懐かしい。
(振り返ればあの頃の俺は、何か困った事があれば、すぐ、あんたに頼ってたね)
 それは、幼い頃の記憶。あの頃と今の自分は随分と違う。
 けれど、かたわらの琥珀を見て、りくは思うのだ。
 昨年の今頃だったか、公園に舞うピンクの粉を彼が吸い込んだあの日。
(琥珀ちゃんが僕を「パパ」と呼んで甘えてきてくれたんだっけ)
 あの時の記憶も鮮明に蘇る。そう、あの時にパパと自分を琥珀が呼んでくれて
 とても嬉しかったのを覚えているのだ。
 そして、もう少しパパと呼び続けてほしかった…その気持ちは今も変わらない。
「んっ?りく、どしたの?」
「いや…琥珀ちゃんの事を、考えてたんだ」
 そういわれて、琥珀は目をぱちくりとする。
 そういえば…これまで自分はりくの事を考えていなかった。
「はくにとって、りくは……りくは何だろ?」
「…何だと思う?」
「パートナーなのは、わかる…友達っていうと、違う。」
 拙い言葉で琥珀は自分の思考をめぐらせる。
 そう、パートナーなのはわかる。友達かといえばそうでもない。
(でも、恋人じゃおかし…)
 その言葉はなんだか口にしてはいけない気がして、琥珀はそっとその言葉は飲み込んだ。
 そうしているうち、りくの父親が紅茶を持って戻ってきた。
 待たせたな、という言葉と共に、紅茶が2人の目の前に置かれる。
「あ、あの、はっ、はくは…」
 なんとか自己紹介をしなければ。でもどういえば…と、琥珀は混乱しながら口を開く。
「親父」
 ソレを見たりくは、やおら椅子から立ち上がると、
 琥珀を抱え上げ後ろから抱きしめた。
「…ひゃあ!」
 唐突にりくの大きな手が後ろから伸びてきて琥珀は驚いて声を上げる。
 あたたかい腕に体温に自分が包まれているのがわかった。
(もしかして、りくに抱きしめられてる…)
「この子は精霊の琥珀ちゃん、俺の息子みたいな存在だよ」
 そう父親に告げる、りくの声は体温と同じぐらい温かかった。
 琥珀が見上げた先には、真剣な眼差しで父親の方を向くりくの表情。
「あの時、あんたは弱虫で生意気な俺をとても可愛がってくれた。
 だから俺は、あんたがそうしてくれたように…俺も琥珀ちゃんに、するよ」
 その言葉は決意に満ちた口調だった。
 父親の幻はその言葉にそうか、とひとこと呟くとゆらりと陽炎のように消えていった。
 消えていくさまを、りくはじっと見つめていたのだった。
「……ねぇ、りく」
 父親の幻が消え、沈黙が部屋を支配している中、おそるおそる琥珀は聞く。
「えと、さっき言ったこと、ほんと、なの?」
 りくが言った言葉。
 自分が、父親にしてもらったように、琥珀を可愛がるということ。
「本当だよ」
 そっと、琥珀を抱きしめたまま見下ろすりくの瞳は、やはり温かい。
「どんなに血が繋がっていないとしても…
 僕達はウィンクルムで……親子みたいなもんだからね」
 湖のうちよせる波音と共に、りくの言葉は琥珀に優しくあたたかく
 抱きしめた腕の温もりとともにそっと告げられたのだった。



END



依頼結果:大成功
MVP
名前:アキ・セイジ
呼び名:セイジ
  名前:ヴェルトール・ランス
呼び名:ランス

 

名前:永倉 玲央
呼び名:玲央、坊主
  名前:クロウ・銀月
呼び名:クロさん、あんた

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 京月ささや
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル シリアス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 3 ~ 5
報酬 なし
リリース日 04月23日
出発日 04月29日 00:00
予定納品日 05月09日

参加者

会議室

  • [11]永倉 玲央

    2015/04/28-23:49 

    プラン完成しました!

    アキさんにセイリューさんに凛玖義さん方初めまして、よろしくお願いします!
    琥珀くん可愛いなあ・・・。(子供好き)

  • [10]明智珠樹

    2015/04/28-22:14 

    ふ、ふふ!
    いつの間にやら賑やかになっておりますね、素敵です、ふふ…!
    凛玖義さんと琥珀さんは初めまして!ですね。何卒よろしくお願いいたします。
    素敵年の差コンビですね…!!

    皆様のお父様がどのような方なのか、とてもとても楽しみにしております。
    良き時間を過ごせますように…!!


    あ、好きな言葉は『股関節』です。うふふ、うふふふ。

  • [8]明智珠樹

    2015/04/28-22:10 

  • 珠樹君、玲央君は初めましてかな?
    ロイヤルナイトの琥珀ちゃんを連れてる神人の凛玖義っていうよ、よろしく。

    しかし、まいったなぁ!久々に肉親の顔見たんじゃない?僕。

    さて……何をどう話そうか。

  • [6]アキ・セイジ

    2015/04/28-01:52 

    プランは提出できたよ。
    なんだか恥ずかしいけど、うまくいくといいな。

  • [4]アキ・セイジ

    2015/04/28-00:08 

  • [3]永倉 玲央

    2015/04/27-22:36 

    玲央・
    あはは・・・。
    明智さん、千亞くん初めまして!
    永倉玲央です。
    イラストをほめていただき、ありがとうございます~。

    クロウ・
    あー、クロウ・銀月でーす。
    好きな言葉は「楽して稼ぎたい」です。

    玲央・
    どうゆう挨拶!?




  • [2]明智珠樹

    2015/04/27-22:07 

    改めましてこんにちは、明智珠樹です。そして隣に居るピンクの髪のウサギ王子は千亞さんです。
    玲央さんとクロウさんは初めまして、ですね。よろしくお願いいたします。
    イラスト完成おめでとうございます。かわいこちゃんと気だるげ美人さんですね、ふふ!
    萌え萌えキュンですn

    千亞:
    黙れ珠樹(蹴り)
    改めましてこんにちは、僕は千亞です。よろしくお願いします(ぺこ)
    コイツのことは気にしないでくださいね、お互い良い時間が過ごせますように…!(にこ)

    明智:
    ふふ、皆様のパパがどんな方か楽しみですねー(リンボーダンス踊りつつ)

  • [1]明智珠樹

    2015/04/26-00:26 


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