プロローグ
「シリア湖の桜がオーガに折られてから考えていたんだが、あそこにまた桜を植えに行こうと思うんだ」
「え……?」
「A.R.O.A.から派遣されたウィンクルムがオーガは征伐してくれたが、折れた木はどうにもならないだろう。なあ、ヨシエ。俺は、またあそこに桜を咲かせたい。危険は承知だ。苗木を植えに行くことを許してくれないか」
タブロス市内で庭師をしているコウゾウは、職人らしく頑固な性格をしていた。結婚後の旅行の行き先も、家を建てるときも、娘の進学も、全てコウゾウが独断で決めてきた。そんな彼が妻に頭を下げるなど、初めてのことだ。
ヨシエは床に頭をすりつけるようにしている夫を見下ろした。イエス、と言いたい気持ちは当然ある。なにせあの場所は、ヨシエたち一家にとって思い出の場所なのだ。
タブロスから三時間、親戚の住む町の近くにあるシリア湖は、水が澄んでいることで有名だった。湖畔には数えきれないほどの桜の木が植わっていて、満開の時期にはそれは見事な光景を見せてくれた。空を隠す、幾万という薄紅の花弁。親戚一家とともに、毎年、弁当を作って訪れ、花見をした。その度ごとに全員で撮っていた写真は、居間のアルバムにきっちりとおさまっている。
「でも、あなた……あそこは今度はデミ・ゴブリンが出るようになったみたいですよ。普段は人のいるところには出てこないけれど、桜にひきつけられたのかも、なんて言われているんですって。町の人はもうシリア湖でのお花見は諦めているというし、そこにあえてまた植えなくてもいいんじゃない?」
「俺は何度だってあそこに桜を植えるさ」
夫は頭を上げた。かっと見開かれた瞳が、まっすぐにヨシエを見つめた。
「もうすぐミワに娘が生まれる。俺たちはじいちゃん、ばあちゃんなる。ヨシエ、お前は孫にあの桜を見せたいと思わないのか? 俺たちよりも長く生きて、人生を見守ってくれる桜を、残したいと思わないのか?」
長年通った湖畔での、家族の笑顔を思い出す。25枚たまった、ミワの成長を追うことのできる写真は、ヨシエの宝物だ。
それでもヨシエは首を振った。
「桜なら、また別の場所を探しましょうよ。娘もお嫁に行って、今は私とあなたの二人きり……あなたが危険な場所に行く不安に、私は耐えられません」
「……だったら!」
コウゾウは勢いよく立ち上がった。
「A.R.O.A.のウィンクルムに同行を頼む。お前についてこいとはもちろん言わない。だから許してくれ」
それなら、と頷いたのが、2か月前。しかしコウゾウはその後、すぐに病床についてしまった。彼がヨシエに土下座までした意味を、ヨシエは初めて知った。彼は自分の体の変調に気づいていたのだ。
「夫の回復を待っていたんですが……いくら気丈な職人だって、病気を治すことなんて簡単にできませんよね。夫は多分、当分起き上がることはできないでしょう。だから私が、代わりに桜を植えに行きたいんです。わがままは承知です。でも、夫に、あなたが元気になるまで、あなたの夢は私が守ると伝えてあげたいんです」
どうか、とヨシエは涙をこぼした。
「……わかりました」
A.R.O.A.職員は、ヨシエの震える肩にそっと手を置く。
「ウィンクルムを同行させましょう。ヨシエさんは旦那さんと桜のことだけ考えてください。デミ・ゴブリンはこちらの者が引き受けますから」
ヨシエが顔を上げる。その顔を見、A.R.O.A.職員は一枚の封筒を取り出した。
「実は、村からも依頼が届いているんですよ。シリア湖を、またお花見のできる場所にしましょう」
「……ええ、ええ! 夫は正しいことを言っているんですよね」
「そうですよ。素敵な桜は、子供たちにも残すべきものです」
「私、ウィンクルムのみなさんのお弁当も作ります。そんなんじゃ大したお礼にもならないけれど、ぜひ食べていただきたいわ」
ヨシエの紅潮した頬に、A.R.O.A.職員は静かに微笑んだ。
解説
●目的
デミ・ゴブリン(約10匹)を退治すること。
●条件
桜の木を折らないようにしてください。
(万が一折ってしまってもとがめられることはありませんが、ヨシエが悲しみます)
●その他
桜の木は基本的にヨシエの親戚(男性2人)が植えますが、余裕があれば、作業を手伝ってあげてください。
コウゾウに見せるために、作業完了後にはみんなで写真を撮る予定です。
苗木を植える時期は、三月上旬くらい。桜はまだ咲いていないので、花見はできませんが、ヨシエの手作り弁当が食べられます。
ゲームマスターより
地域によってはそろそろ桜のつぼみも大きくなっているのではないでしょうか。
美しい桜を後世に残すためにも、ぜひ一肌脱いであげてください。
デミ・ゴブリンは10匹ほどと記載しましたが、参加していただける人数によっては、減らすことも考えています。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
マリアベル=マゼンダ(アーノルド=シュバルツ)
今まで通りずっとずっと先に生れてくる人たちのために、いまわたくしたちがしなければならない事があると、思うのです… アルさま、わたくし、その思いのおてつだいをしたいです…ごいっしょしていただけませんか…? わたくしの力はわずかで、まわりの神人のお姉さま方の足手まといになってしまうかもしれません… それでも、わたくしは何かせずにはいられないのです… お話し合いで分かり合えればでいいのですが…むずかしいですか? 剣を、にぎらなくてはならないのは、とてもこわいです…でも、お話しが出来ない仕方がありません… わたくしも、おてつだいしますっ! またお花がさくころに、見にきたいですね… |
月野 輝(アルベルト)
※心情 桜の木の過去から未来に繋がる思い出…… 素敵なお話だと思うわ 私達にできるのなら、その思い出を守ってあげたい それにそんなに素敵なお花見なら、私もしてみたいわ 桜が咲いたら、またここにきてみたいわね ……アルに聞かれたら、またからかわれそうね ※行動 他の方と協力してゴブリンを桜の木から引き離し一カ所に集めるわ ゴブリンってエサ(肉がいい?)で誘き寄せられるかしら? 少しずつエサを捲いて引き寄せられてきたら、そのまま集合場所まで誘導 エサで上手くいかない場合は少し攻撃して自分を囮にして誘導してみるわね 遠距離攻撃から逃れたのがいた時に備えて逃げられるのを防ぐわ お弁当も楽しみだから、ポットにお茶用意していくわね |
かのん(天藍)
基本指針 未来の桜の森のため、私にできる事を行いましょう 少し先の春に、今日植えた桜が綺麗に花開きますように 戦闘以外の行動 これでもガーデナーです、若輩ですのでコウゾウさんの足下にも及びませんが、植樹の作業は率先してお手伝いさせて頂きます ヨシエさんのお弁当を目にして 自分が作る以外の手作りお弁当なんて久しぶり・・・、大事に頂きます デミ・ゴブリン退治 ヨシエさん達に安全なところへ避難の声かけ 木を傷つけないよう、魔法や銃の攻撃を考慮に入れ、敵を水際等、桜から距離のある開けた場所へ誘導に協力 必要があれば、トランス状態に入りますが、その判断は天藍にお任せします 躊躇はしません、大切なものを守るための力なのですから |
日向 悠夜(降矢 弓弦)
ヨシエさんコウゾウさんご夫婦の為に、頑張らないと! ね、降矢さん? 敵の数は多いからね… 皆と協力するように立ち回らないとだ トランス状態に関しては戦闘の助けになるからね。デミ・ゴブリンでも気合入れて懸らないと! 桜の木へ近づいてくるゴブリン達へのけん制をする様に戦いたいね 神人の力でも倒せる相手だからといって無理は禁物だからね とどめなんかは降矢さんや他のウィンクルム達の精霊さん達にお願いしないとだね 自分が出来る事を確実に! お弁当!ヨシエさん…凄く料理上手だ…レシピ、教えてもらえないよね? まだ花が咲いていないけれど…いつかまた、ここへお花見に行きたいな… 敬称 女性:名前+さんorちゃん 男性:名前+さん |
アミィ・マールタイル(カイナ・モリノ)
■心情 依頼を受けた以上、やはり依頼者の要望や期待には出来るだけ応えたいな 人々の平穏や笑顔を守れるのなら、多少の無茶など折り込み済みだ 任せてくれ、私達が必ず守ってみせよう ■行動 デミ・ゴブリンを桜の木に近づけずに戦う 周囲を見渡し奇襲を受けない様に警戒して、発見したら呼びかける 私は積極的に前に出て、一層桜に近づけさせない 攻撃対象は味方と合わせて、一体でも数を減らしていく 私が相手になろう。来い! 傷を多く負った味方がいたら、敵との間に割って入るなどして狙わせない 遠くにいるならゴブリンに石を投げてぶつけて気を引く ■戦闘後 植樹を手伝おう。泥で汚れる程度は気にしない ふふ、次は美しい桜を眺めに来られたら良いな |
青空に枝を向けた木は、数え切れないほど。この全てに花が咲いたら、空を埋めてしまうのではないだろうか。
「これが全部桜の木……」
見上げ、マリアベル=マゼンダは思わず呟いた。
「そうよ、マリアベルちゃん。春になると一斉に花が開いて、それはきれいなのよ。シリア湖の水もきらきら輝いてね、まるでおとぎの国みたいなんだから」
ヨシエはお弁当の包みを抱えたまま、少女の隣にしゃがみこんだ。独り言を聞かれているとは思わなかったのだろう。きゃ、と小さく声をあげ、マリアベルは傍らに立つアーノルド=シュバルツの長身に身を寄せる。
「いきなり声をかけたから、びっくりしちゃったかな?」
ヨシエが言うのにふるふると首だけ振って、しかしマリアベルの体はアーノルドの後ろのままだ。
「すみません、少々人見知りがありまして」
「いえいえ、かわいらしいわ。娘が小さかったころを思い出します」
ヨシエはにっこりと微笑んだ。もう15年以上前の話だ。
「おう、ヨシエ、来たか!」
桜の中からがたがたと音がして皆が振り向くと、そこには苗木をたくさん載せた大きな馬車がやってきた。
「タクマさん、ヨウタさん」
ヨシエが二人の元に駆けていく。
「みなさん、彼らは私の親戚で、今日桜を植える手伝いをしてくれます。タクマさん、ヨウタさん、こちらはA.R.O.A.から派遣されたウィンクルムの方たちで……」
「デミ・ゴブリンを退治してくれるんだろ?」
タクマの言葉に、ヨシエが深くうなずく。
「このあたりには桜が密集してるが、もう少し北に行けば少々ひらけた場所がある」
そこでなんとかしてくれと、タクマは示唆しているのだろう。天藍は示された方向に目を向けた。たしかに木のない一角がある。
「あそこは木を植える予定の場所ではないのですか?」
かのんが聞くと、タクマは「いいや」と首を振った。
「桜の時期になるとここは人が集まるからな。簡易の店を出す人もいる。そのスペースだ。木が折られたのはもう少し先だよ。馬車が入れる道じゃないから、ここで待ち合わせたけどな」
黙って聞いていた天藍が、なるほど、と一同を見渡す。
「デミ・ゴブリンは数が多い。あのスペースに集めて、一斉攻撃を仕掛けるのがいいだろう。接近戦をする人間が囲い込み、遠距離攻撃ができる人間が、仕掛ける」
「そうね、未来の桜の森のため、自分達にできることを行いましょう」
かのんが同意を示す。
「ヨシエさん、コウゾウさんご夫婦の為に。頑張らないと! ね、降矢さん?」
「桜の木には、決して近づかせないようにしないとね。うん、頑張ろうね、悠夜さん」
日向悠夜と降矢弓弦が顔を見合わせる。
――素敵なご夫婦だわ。
月野輝は、親戚の男性たちと桜の苗木を品定めしているヨシエをじっと見つめていた。この場所には来られない夫の夢を継いで、危険の中桜を植えることを決めたヨシエの優しさには感服する。
「相変わらず乙女ですねえ」
アルベルトの呟きに、輝は振り返った。しかし揶揄する口調とは裏腹に、アルベルトの顔は笑んでいる。
「輝は私に依頼への同行を頼んできましたが」
言いながら輝の隣でヨシエを見る。病院のベッドの上のコウゾウは、今彼女がここにいることを知っているのだろうか。
「桜の花は嫌いではないので、輝に頼まれるまでもなく、断る理由はなかったんですよ」
デミ・ゴブリンがなかなか姿を現さないので、湖畔には平和な時間が流れていた。アミィ・マータイルはそれでも警戒し、周囲のわずかな異変を察知しようと努めている。ふわあ、と小さなあくびをしたのは、カイナ・モリノだ。
「このまま敵が来なければ楽でいいのに。デミ・ゴブリンがいるなんてほんとは勘違いなんじゃない?」
そんな彼をアミィはじろりと睨みつける。
「天藍のさっきの話は聞いていたか? ……しかたない、もっと直接的に言おう。カイナ、君にやってもらいたいことがある。我々味方の後方で、桜を守りつつ戦ってほしい。スキルはまだ使えずとも、魔法攻撃ができるなら、遠距離から頼む」
はいはーい、と間延びした返事に、アミィの眉間にしわが寄る。その傍らで、マリアベルが小さなため息をついた。
「お話しあいでわかり合えればいいのですが……難しいですか?」
マリアベルは、桜の木々を見上げた。武器は持っている。しかし剣を握らなくてはならないのは、今まで自室にこもってばかりであった小さな彼女には恐ろしいことだ。
「大丈夫ですよ、マリー」
アーノルドが優しく、マリアベルの震える手をとる。
「貴女が恐怖心を押さえて剣を握ると言うならば、私は貴女を守る為の祈りを捧げます。共に闘い、傷を、心を、癒してさしあげます」
まずは、ご一緒する皆さんに加護の祈りを。怪我なき様、そして、皆さんの守ろうとしている桜の木とヨシエさん達にも。
アーノルドが両手を組み、さやかな声で祈りをささげる。
そのときだった。カチャカチャと、金属と金属が触れあう音が聞こえ始めたのは。
「来たか」
「ヨシエさんたちはそこを動かないでください!」
アミィが剣に手をかけ、かのんが声をあげる。ヨシエは桜の苗木を抱きしめるようにしてうなずいた。
デミ・ゴブリンの姿は、最初は見えなかった。しかしだんだんと、幹と同色の古びた鎧が見え、浅黒い肌が見え……。
そこからは早かった。カチャ、カチャ。キィィ、キィィ! 甲冑を揺らし耳障りな声をあげながら歩いていたゴブリンが、不意に足を止める。こちらに気づいたのだろう。
「キキッ!」
一匹の高い声と同時、群れは一気にこちらに向かって走りだす。しかし、追い込むべきは逆の方向だ。
「ちっ、数が多いな。かのん、インスパイアスペルを!」
大きく首を縦に振り、かのんは天藍に身を寄せた。
「この場所は、貴方におまかせします」
緊張を押し殺した、早口のインスパイアスペル。少しばかり膝を曲げた天藍の肩に手を載せてバランスを取りながら、頬へつま先立ちのキス。周囲に水の流れる音が響いたのは一瞬のことだった。淡い光が二人の体を包む。
「俺が先行して、牽制しながら追い込もう。奴らが固まったところを魔法と銃撃で仕留めてくれ」
「わかりました!」
弓弦が両手に銃を取り出しながら答えるが、もう一人、カイナからの返事はない。
「カイナ! 返事!」
アミィの強い声に「はいはい」と渋々、状況に似合わぬのんびりした声が戻る。カイナは一応杖をとるが、それだけだ。不満な眼差しを向けながらも、アミィもまた武器を抜く。
「私が相手になろう。来い!」
天藍は無言のまま、まっすぐにゴブリンに突っ込んで行く。
「キイイッ!」
デミ・ゴブリンの錆びた剣が空を切る。攻撃を避けながら、踊るようなしなやかさで、天藍は敵に剣をあてた。ここで倒そうとすれば桜の木に危険が及ぶかもしれない。だから刃がゴブリンの肌を裂く、浅い攻撃にとどめている。移動しながらゴブリンを追いこむためだ。助力になればと、かのんが天藍を追いかける。
「私も皆さんと協力して、デミ・ゴブリンを集めなければ」
輝は持っていた袋から、ごそごそと肉をとり出した。
「輝、もう肉をまいている状況でもなさそうですよ。皆、武器を手に戦っていますから」
「でも、あっちにもいるわ」
輝は少し先の木の陰にいる敵に視線を向けた。二匹のゴブリンが、なぜか動かず、こちらをじっと見つめている。しかし黙っているからといって、逃す理由はない。
「本当ですね」
アルベルトは眼鏡の奥の目を細めた。
「私が囮になる方が、手っ取り早いかもしれない。きっと軽く攻撃を仕掛ければ追って来るわ」
剣を持つ輝の手に、アルベルトは自分の手を重ねた。
「その役は、私がやります」
「どうして、アル? 私だって剣の修練をしているのよ」
「貴女に怪我でもされたら、目覚めが悪いですから。輝は巻き込まれないように隠れていてください」
「隠れてって……貴方と私は一緒に戦うパートナーでしょ? だったら……」
パートナーとはいえ、いや、パートナーだからこそ、危険な目にあわせたくないと思っているのに。それを彼女はわかっていないのだろうか。
アルベルトは自身の剣を、ぎゅっと両手で握りしめた。
「しょうがないですね。だったら私から離れないでくださいよ」
そう言って、隠れている敵に向かって走り出す。ブロードソードに、アルベルトの魂が重なり、腕が鋭い刃となる。作戦は理解できるが、必須でもあるまい。ここで倒せるものなら倒してしまいたい。
「キィィ!」
大人しかったデミ・ゴブリンが、二匹まとめて刃のこぼれた剣を構える。その一匹に、アルベルトの剣が落ち、鎧の体が崩れ落ちる。後ろの輝の攻撃は、もう一匹をかすった。一匹は倒し、一匹は誘導となるだろうか……否、あと一撃で倒せる!
デミ・ゴブリンの突きだす刃を、武器となった腕で受け止める。はじき返す勢いで、アルベルトは敵の、甲冑に守られた胸を逆袈裟がけに切りあげた。
「キッ……」
武器を落とし、デミ・ゴブリンが絶命する。
一方、天藍が中心となっているグループでは、着々とデミ・ゴブリンが追い詰められていた。
弓弦は、皆の遠方で、手もとの銃に視線を向けた。この武器を使うには距離が必要だからと、悠夜とともに残ったのだ。
「まだ銃の扱いには慣れていないけれど……勝手はわかる。援護射撃をするならスキルを使ったほうがいいかな」
どう思う、悠夜さん。呼びかけられた悠夜は「戦闘の助けになるからね」と弓弦の腕に手を載せた。
「友よ、共に進もうぞ」
呟いた唇で、そっと弓弦の頬に触れる。ふわりと風が吹き、二人の体は微かな光に包まれる。
「少々気恥ずかしいね」
寝癖頭をかしげる弓弦の背中を、悠夜はどんと叩いた。
「そんなこと言ってないで。デミ・ゴブリン達が集まっている今がチャンスよ」
私はあっちで皆と戦うから。駆けだす悠夜の手には剣がある。
「キイ、キイィ!」
デミ・ゴブリン達の甲高い悲鳴と、武器の触れあう音が空気を揺らしていた。トランス状態になって照れている場合ではなかった。弓弦が両手の銃口を、敵に向ける。
「他の皆は動かないでくださいよ! 僕、本当は弓の方が得意なんですから!」
ガウン、ガウン! 連続して銃が鳴る。発射された弾は左右から回り込み、敵に向かって行く。
「キイィ!キィィ!」
銃弾が、ゴブリン達の上に降る。逃げ出そうとするゴブリン達。天藍の指揮の中、剣を向けるのは女性たち、アミィとかのん、そして追いついたばかりの悠夜だ。その後ろで、小さな手に大きな剣を持って、マリアベルもなんとか役に立とうと頑張っている。
アミィはパートナーの攻撃が届かないことに気付き、目の動きだけでカイナを探した。遠方の木陰に、ローブの端と気だるげな顔が見える。
「カイナ! いくら君が戦いや争いを面倒くさがる男だとしても、困っている人や危険な人を頬っておくほど冷血漢でもないだろう!」
カイナは木の陰からその全身を見せた。口元がなにやら動いている。隠れて詠唱中だったのか、両手で持った杖から、魔法の弾が生まれる!
「みんな、離れろ!」
天藍の声に、アーノルドがマリアベルを抱き上げる。
鮮やかな魔法エネルギーの塊が、デミ・ゴブリンたちに向かって行った。
「全部、倒れたのでしょうか」
アーノルドは胸にマリアベルを抱いたまま、さっきまでデミ・ゴブリンがいた場所を見やった。
「あの、アーノルドさま?」
「し、静かに」
ガチャリ。動く、音がある。
生き残った輩がいたのだ。
アーノルドはマリアベルを自分の後ろに下ろすと、マジックブックを取り出した。
「うまく術が機能して、同志討ちをしてくれたらありがたいのですが」
そう言ってブックを開く。しかし敵は一瞬動きを止めたのみだった。
「一網打尽、というわけにはいきませんでしたねえ」
駆け寄った弓弦が、デミ・ゴブリンを狙う。ガウン、と響く銃声に、マリアベルが耳をふさぐ。そんな彼女の目の前で、ゴブリンはついにこちらへと向かい始めた。
「キキ!キイイ!」
剣を上げ、カチャカチャと鎧を鳴らす敵の間。
「これで終わりにしてやる!」
武器を両手に、天藍が飛び込んで行く。
「やれやれ、マメなことだね」
のんびりした声はカイナが発したものだ。杖を抱えてやってきた彼の脛に、アミィががつんと蹴りを入れる。
「お前も働け、このひょろ長もやし!」
「さっき働いただろ、チビすけ! それにそろそろ終わる、ほら」
カイナが指をさした先では、最後のゴブリンが、天藍のダガーをうけ、地に倒れるところだった。
桜の苗木は『苗』というだけあって、そこまで大きなものではない。それでも量がまとまれば結構な重さにはなる。馬車の通れない道を背負って運んだのはタクマとヨウタ、そしてウィンクルムの男性陣だ。
目的地にたどり着き荷物を下ろすと、弓弦はとんとんと腰に手を当てた。この後は苗を植えることになる。まだ説明は受けていないが、穴を掘って苗を入れて、となれば。
「…こ、腰には気をつけよう」
ウィンクルムの中では最も年長に見える弓弦の言葉に、ヨシエは深くうなずいた。
「中腰ってよくないですからね。昔、うちの夫も腰を痛めているんですよ。無理をなさらないでくださいね」
「はは、兄さん肉体労働、苦手そうだからな」
タクマに笑われ、頭を一振り、項垂れる。
「でもカイナよりはましだろう」
アミィが自身のパートナーをじろりと見上げ、対するカイナはその視線をうっとおしそうに見下ろすばかり。
「なに言ってるのさ、俺も苗木運んだだろ、チビすけ」
「一本な! まあお前にはもともと高望みはしていないが……」
「デミ・ゴブリンを倒していただいただけで、ありがたいことです」
ヨシエが目礼とともに、弁当を置く。
「さて、そろそろ植えるぞ!」
そんなときにかかったのが、タクマの掛け声だ。
「手伝おう。なに、泥で汚れる程度は気にしない」
アミィは地に膝をつき、苗の植わるポットを手に取って、
「わたくしもお手伝いしますっ!」
マリアベルがしゃがみこみ、
「これでもガーデナーです。若輩ですのでコウゾウさんの足元にも及びませんが、お手伝いさせていただきます」
かのんがヨシエに笑顔を向ける。
「私も手伝いますよ。えっと、どうしたらいいんですか?」
アルベルトは輝と一緒にかのんを見、ヨシエを見やった。
「すみません、実は私はこういうことに疎くて……主人は仕事の話はほとんどしませんでしたし、私はずっと家庭に入っていたものですから。説明はヨウタさんがしてくれます。私も一緒に聞きますわ」
「はい、では俺が説明させてもらいます。まずはこのポットを手にとって――」
ヨウタがはにかみながらポットを上げ、教師さながらに話しだした。
陽気はまだ春とは少し遠いが、寒さに震えるほどでもない。カイナはひとり、木陰で目を閉じていた。
「そこは石が多いから俺が掘ろう。かのんはこっちを頼む」
「マリー、袖に土がついてしまっていますよ。少し折りましょうか」
「降矢さん、腰、大丈夫?」
「ストールが邪魔そうですね。縛ってあげましょうか? 輝」
眠っているわけではないので、そんな声が耳に届いている。ちなみに、カイナが手伝わないことに関しての、アミィの怒声はない。
次第に声が少なくなり、一同が植樹に集中していることがうかがえる。そんな時間がどれくらい過ぎた頃だろうか。
「そろそろお弁当にしましょう」
ヨシエの声が響くと同時、カイナはゆっくりと目を開け、体を起こした。辺りを見れば、小さな苗木が何十本となく植わっていた。
「よく植えたねえ」
「お前が寝ている間にな」
アミィはやっと起きたか、とカイナを見やる。
「私、お茶を持ってきたんです」
輝が自分の荷物の中から水筒を取り出して、ヨシエがお弁当を準備している場所へと持っていく。弁当は先取りの春さながらに華やかだ。中でも黄色の卵焼きがお勧めだと、ヨシエは胸を張った。
「うちの卵焼きは、主人の好みで甘いんですよ」
「私、甘いの大好きなんです」
ポットのお茶を注ぎながら、輝は笑みを見せる。
「自分が作る以外の手作りお弁当なんて久しぶり……。大事にいただきます」
かのんがそっと手を合わせる。「酒があれば完璧だ」と片頬を歪めるのは天藍だ。仕事中、とかのんにたしなめられている。
「お弁当……美味しそうだなあ!」
弓弦は三段重箱ふたつ分の昼食に、感嘆の声を上げた。
「煮物に焼き物に揚げ物……ごちそうばかり。ヨシエさん……すごく料理上手だ……。レシピ、教えてもらえないよね?」
悠夜の台詞に、ヨシエが嬉しそうに微笑む。
「構いませんよ。どのレシピですか?」
「全部! と言いたいところだけど、さすがに迷惑ですよね。ねえ、弓弦さんはどれが一番好き?」
「やっぱり、卵焼きですかねえ」
「じゃあ、卵焼きを!」
「……私も教えてもらってもいいですか?」
「かのんさんも? もちろんですよ。天藍さんはお酒がお好きみたいだから、おつまみになるものがいいかしら」
賑やかに交わされる会話の横で、マリアベルはおむすびを手に、アーノルドと並んで湖を見つめていた。シリア湖の水面は、きらきらと日の光に輝いている。宝石さながらの鮮やかさに、そっと目を細めた。
「きれいですね……」
「そうですね」
「またお花がさくころに、見に来たいですね……」
誰もが、マリアベルのように。この桜が咲いたら、と思いをはせている。
「少し先の春に、今日植えた桜がきれいに花咲きますように」
かのんが固い蕾を見上げると、皆はそれぞれ、顔を上げた。
「ふふ、次は美しい桜を眺めに来られたら良いな」
アミィがお茶を手に、苗木の枝に手を伸ばす。
「きっと……桜が咲いたらきれいなんだろうね」
そう言う弓弦の膝には本。悠夜はその、古びた書籍に手を載せた。
「いつかまた、ここへお花見に行きたいな……」
日当たりのいい桜の下、本を枕に昼寝をする弓弦を眺めるのもいいかもしれない。
「そうね、桜が咲いたら、またここにきてみたいわね」
ちらりとアルベルトに視線を向けて、しかし誘うことはせず。輝は満開に咲く桜を想像した。うっすら桃色の花弁が、風に舞う姿を。
……花が咲いたらまた来ようと誘ってみたら、喜ぶでしょうか。
未だ花の咲かない枝を見つめる輝に、胸の内で。アルベルトはそっと語りかけた。
「みなさん、あとで写真を撮らせてくださいね。夫に見せたいんです」
ヨシエが一同に声をかける。
「はあい」
返事は美しい自然の中で、高く響いた。
依頼結果:普通
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 瀬田一稀 |
エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | 戦闘 |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 普通 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | 通常 |
リリース日 | 03月16日 |
出発日 | 03月23日 00:00 |
予定納品日 | 04月02日 |
参加者
- マリアベル=マゼンダ(アーノルド=シュバルツ)
- 月野 輝(アルベルト)
- かのん(天藍)
- 日向 悠夜(降矢 弓弦)
- アミィ・マールタイル(カイナ・モリノ)
会議室
-
2014/03/22-23:42
わ、わたくしの方もプランをていしゅつしてまいりました……。
先にいったように、アルさまに後ろでがんばっていただき、わ、わたくしは、け、けんをもちますっ!((((ガタガタ))))
あたたかくなったら、きれいなさくらが見られればいいですね……。 -
2014/03/22-22:21
はい、悠夜さん、よろしくお願いします。
一応プラン提出完了です。
書いては直しを繰り返したので、文章がおかしくなってないといいのだけど……
私はエサで誘き寄せ、アルベルトには剣での牽制をお願いしてあるわ。
本人は「倒せそうなら倒してしまいますよ」と言ってるのよね…どうなる事か。
ともあれ、皆さん、よろしくお願いしますね。 -
2014/03/22-21:54
出発まであとわずかですね、改めましてよろしくお願いします皆様。
こちらは天藍にデミゴブリンに対し接近戦を仕掛けつつ、散らばることがないように牽制行ってもらうこと考えています。
手数があるので、削り役になるのではないかと。 -
2014/03/22-21:01
月野さん、かのんさん。よろしくお願いするね。
えっと…おびき寄せる作戦に協力する為に、
降矢さんに援護射撃をして貰おうと思うけれどいいかな?
丁度今覚えているスキルは足止めをして逃げ場をなくす様にも出来るみたいだからね。 -
2014/03/22-19:41
かのんさまは……ちゅーするのですね……(もじもじ/照)
まほうは、使えるのですね……!
ありがとうございます。
では、アルさまにはみなさんのがおけがをなさらない様に、かご(加護)のお祈りをおねがいしますっ!
それと、おびき寄せるのでしたら、ひつようないかも知れませんが、さくらの木にも、結界を、おねがいしてみますっ!
-
2014/03/22-13:38
はい、マリアベルさん、アミィさん、どうぞよろしくね。
魔法に関して、私も経験不足でよく判らなかったので勉強になったわ。
ありがとう、かのんさん。
スキルは強力な攻撃…所謂必殺技的なもので、通常の攻撃は
それぞれの得意分野でちゃんとできると言う事なのね。
私達も剣による接近戦しかできないので、魔法使える方々の力は心強いわ。
誘き寄せに関してはプランに入れてみたわ。
ダメだった時も何とか出来るようにはしてみたつもり。
できたら上手くいってくれると良いなとは思うのだけど…ね。 -
2014/03/22-00:11
ふむ、全員揃ったのか。
かのん君も輝君も、改めて宜しく頼む。
実の所、私もマリアベル君同様の悩み……魔法攻撃が出来るのかどうか悩んでいたのだが、かのん君の発言を見るに可能な様だ。
それならば、カイナには魔法で攻撃をしていてもらう様に頼むとしよう。
まぁ、どの道あのひょろ長もやしの事だ。打たれ弱いのは間違いないし、結局後ろにいてもらう事に変わりはないな。
おびき寄せられる物も、余裕があれば試してみて良いと思う。 -
2014/03/21-23:52
こんばんは、マリアベルさん。一緒に頑張りましょうね。
トランスの件は、そうですね、そうなんですが・・・
私の傍らに居てくれる天藍は、トランス状態になればジョブスキルが使えますので、状況によって必要があればと2人で話し合ったところです。
ライフビショップの方と同行するのは私も初めてなのでなのですが、エンドウィザードの方は通常状態でも魔法が使えるように伺ったような気がしますので、守備や回復系の魔法が使えるのではないでしょうか?
実のところ、こちらの天藍は接近戦が主なので、彼が怪我などした場合、サポート頂けたら心強いなと思っていたんです。
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2014/03/21-23:14
かのんさま、輝さま、よろしくお願いします……。
あ、あの……デミゴブリンなら、トランスしなくても、だいじょうぶって、AROAの人が言ってました……。
だから、その……ちゅーしなくても……だいじょうぶ……(//////)
わたくしの、パートナーのアルさま……アーノルドさまは、ライフビジョップなのですが、トランスしないときのまほう系ジョブは、どうゆう戦い方が出来るのでしょう……。
ふつうに、剣とかで、戦うのでしょうか……。
その当たりが、よく、分からないのですが…… -
2014/03/21-20:27
エサに釣られてくれるかは判らないけど、それじゃ、一応用意してみるわね。
お肉がいいかしら……
ダメそうなら、剣で攻撃しつつ追い立てる方向に変更できるようにしておくわ。
ただ、単純に考えて一人あたり2匹なのだし、レベル2の方もいらっしゃるし、
ひょっとして普通に攻撃しての退治でも大丈夫かも?
もし上手く集められなかった時は、その方向で考えてもいいのかもしれませんね。 -
2014/03/21-01:20
こんばんは
そうですね、何かデミゴブリンを引き寄せられる物があると良いですよね。
こちらはあまり良い案がなく、拳銃、直接攻撃の順で波状攻撃をかけて、集まっているところを魔法に頼る位しかないのかしらと思っていたところです・・・ -
2014/03/21-00:17
こんばんは、最後の一枠で参加させて貰ったわ。
月野輝と言います。パートナーはマキナのアルベルト。
皆さん、よろしくお願いしますね。
今までの流れを拝見するに、桜からデミ・ゴブリンを引き離しつつ、
一カ所に集めて…と言う流れでいいのかしら?
それなら私達は、撃ち漏らしたゴブリンに備える役を希望しても?
まだレベルも1だし、強力な攻撃はできないけど頑張るので。
そう言えば、ゴブリンってエサとかで釣られてくれるかしら?
もし釣られてくれそうなら、エサになる物を持っていって
それ一カ所に集めると言う事もできると思うのだけど。 -
2014/03/20-22:46
遅ればせながら、私も参加させて頂きます。
桜の木を痛めるデミ・ゴブリンがいるなんて見過ごせません。
皆様よろしくお願いします。
今までのお話し合いを伺いますと、できる限り敵を纏めたところで殲滅させる方向でしょうか?
たとえばですが、ゴブリンを牽制しつつ、1カ所に寄せて(湖の際に追い詰めるとか)、遠距離から攻撃のできるモリノさんと隆矢さんのお二方に攻撃して頂いて、残ったゴブリンを個別にあたるのはいかがでしょうか? -
2014/03/20-22:04
おや、アミィさん!ふふ、よろしくお願いするね。
うーん、そうだねぇ…
敵は、人数に比べ多いだろうし…
各個撃破で敵を減らすべきか、一度に敵を相手取るか…
敵を出来るだけ一か所に集めてアミィさんの所のモリノさんに魔法で一網打尽なんてのもいいのかな?
スキルが無くても、魔法の力は協力だからねぇ。
まあ…とりあえず、第一に桜の木の近くでは戦闘をしないって事でいいのかな?
ヨシエさん達を悲しませたくないからね。 -
2014/03/20-21:31
アミィさまも、よろしくおねがいします(ペコリ)
そうですね…。わたくしも春にさくらの花がみられるように、キズつけない様にしたいです……。 -
2014/03/20-21:29
はい。ふつつかものでありますが、よろしくおねがいします(ペコリ)
デミ・ゴブリン10ぴき……数の調整が入ってもたくさんのゴブリンが居そうですね……。
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2014/03/20-20:57
遅めの参加となったが、アミィ・マールタイルと精霊のカイナだ。
私達もこの一件に参加させてもらう事とした。宜しく頼む。
出来れば桜の木を守りたい所だし、桜から距離を取って戦うなどの配慮が必要になるだろうか。
スキルが使えないカイナより私の方がまだ戦えるかも知れないし、
うちの精霊は後ろに立たせて、念の為の守りとするなどを考えている。 -
2014/03/20-20:17
じゃあ、マリアベルちゃんって呼ばせてもらうね。
うーん…そうだねぇ…
明日もしかしたら誰か参加してくれるかもしれないけれど…
一応、この4人だけと想定してお話を進めよっか? -
2014/03/20-20:06
はい、ゆうやさま、ですね。
わ、わたくしの事は、お好きにおよび下さい(もじもじ)
出立日までもう少しありますが、4人だけと考えていた方がいいでしょうか……
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2014/03/20-19:12
(マリアベルさんの目線に合わせようとしゃがみつつ)
初めまして。
私は日向 悠夜って言うよ。
こちらこそ、よろしくお願いするね。
…マリアベルちゃんって呼んでもいいかな? -
2014/03/20-02:24
……あうぅ……。
は、初めまして。マリアベル=マゼンダともうします……。
よ、よろしくおねがいします……。