【白昼夢】いつでも君は、そこにいた(錘里 マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 ギルティガルテンへの足掛かり。教会の復活の為に、貴方達はタブロス上空に浮かぶ天空島、フィヨルネイジャに訪れていた。
 巨大な大樹を仰ぎ見て、流れる小川のせせらぎに心癒される、憩いの場と呼ぶに相応しい庭園。
 フィヨルネイジャの静謐な空気が、淀んだ物を洗い流しているような心地を覚えた。
 それはとても清々しい感覚で、貴方は暫しその感覚に身を委ね、浸った。
 ふと、気が付けば貴方は一人だった。
 そこがフィヨルネイジャであることは分かっていた。
 自分がウィンクルムである事も分かっていた。
 けれど、わからなかった。
 自分のパートナーが、誰だったのか。

 貴方の中から、パートナーに関する記憶だけがすっぽりと抜け落ちていた。
 身につけている物に贈り物があったような気がする。
 パートナーの口癖がうつっているような気がする。
 自分の生きる理由を与えて貰ったような気がする。
 何か、何か一つ、自分の中にあるパートナーの証を見つければ。
 思い出せるような気がする。

 フィヨルネイジャの静謐な空気は、不思議な現象を起こす。
 木漏れ日の差し込む穏やかな森の中を、一人きりで彷徨った貴方は、やがて同じ現象に立ち会っている仲間と出会う。
 神人も居れば、精霊も居る。
 ――あぁ、この中に、パートナーがいるのだろうか。
 それを知るのは、貴方だけ。
 赤い紋章が、ほんのりと熱を帯びる気がしている。
 さぁ、貴方はその手を、どこへ伸ばす?

解説

目的:
フィヨルネイジャではぐれたパートナーと再会すること
お互い相手に関することだけ記憶が抜け落ちている状態ですが、左手同士を繋ぐと元に戻ります

場所:
フィヨルネイジャ内、木漏れ日の差し込む穏やかな森
一人きりですが、危険な存在はいません
また、最終的に集合するのは決定事項です。迷子になる事もありません

プランに書いて欲しい事:
自分とパートナーの関係において、外すことのできない物、それにまつわるエピソードなど
過去エピソードの中で反映してほしい内容があればエピソード番号による指定をお願い致します
その場合は【最も影響するエピソード一本】に絞って頂けますようお願い申し上げます

エピソード以外の部分であれば、自由設定、プラン内に記載ください
プラン、過去エピソード、自由設定、会議室より外の情報は一切反映できませんので予めご了承下さい

費用:
フィヨルネイジャでのんびり過ごすためにお弁当セットを用意していました
そちらの費用として一組につき400jr頂戴いたします
お弁当を食べる描写も希望あれば入れようと思います
お弁当の中身の指定はしてもしなくてもどちらでも

ゲームマスターより

離れても、忘れても、再び繋ぎ合える絆
そういうものを垣間見られたらと思っております

リザルトノベル

◆アクション・プラン

スウィン(イルド)

  一緒にきたはずのパートナーはどこに…
というか誰だった?
澄んだ空気に記憶まで洗い流されてしまった?
笑おうとして笑えない

守りたいと思っていた
神人は精霊に守られるもの
そんな事は関係なかった
でも消えてしまったら守れない

大切な存在を求めて走る
人がいる場所に辿り着いた
この中にパートナーが?考えても分からないが
何故か視線は一人の精霊から離れなかった

その精霊に手をとられ一緒に走る
人がいない少し離れた場所で立ち止まり向き合う
文様がある左手を無意識に相手に伸ばす

告白された
色々考えてたはずだった
でもそんな余裕は全然なかった
「好きよ、イルド」
できたのは、素直な返事を返す事と
涙が出てくる赤い顔を隠す為に抱きつく事だけ



アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
  ★参照
【アキ・セイジ様専用】クルージング

◆気持ち
記憶が欠落してる
穴が開いたような感覚
不安で気持ち悪い
体が半分消えてしまったかのようだ(不安

◆行動
深呼吸
自分に質す

顔の見えない誰か
混濁の仕方が不自然
多分これは何かの作用だ
と思えば焦る必要は無い
落着いて原因を解消すれば良い
忘れているだろう誰かを思い出せば良いのだ

半身を抉られた感覚ってのは、よほど大切な相手だとの証明だ
ならば俺のことだから多分…(タブレット端末やスマホ確認

あった!

ランスとクルージングの甲板で撮った画像(撮ってると思う)を見た瞬間、彼を探し走り出す

人を掻き分け探す
あの高い背を
あのふさふさした尾を
あの力強い手を…(左手を一気に伸ばす

ランス!



フラル(サウセ)
  フィヨルネイジャに一人でいた。
隣に誰かいたはずだが、思い出せない。
とりあえず移動する。

一人でも平気なはずなのに、今はなぜか寂しさを感じる。
ふと、左手の甲の紋章を眺める。
顕現した時は青だった紋章が、今の自分の紋章は赤。
つまり、契約した精霊がいるはず。
しかし、相手が誰なのかを思い出せない。

確かにいたはずなんだ。
自分の過去を受け入れ、気にしてないと言ってくれた誰かが。

やっと他の人がいる場所に到着。
この中に、自分の相棒がいるのか?

仮面をつけたマキナが目に入る。
何かに怯えているように見え、その様子が気になり近づき声をかける。

自分を見て後ずさりされ、逃がしたくなくて思わず左手で相手の左手をつかむ。



暁 千尋(ジルヴェール・シフォン)
  アドリブ歓迎
【NO.11】

決して短い付き合いではないはずなのに、何も思い出せないなんて情けない

道端の花を見て)
この花はパンジー…じゃない、ヴィオラだと言っていた

花の名前は良く知らない
でもひとつだけ、覚えてるんだ
貴方が好きだと言ったから
泥水の中でまっすぐに綺麗な花を咲かせる姿が好きだ、と
数年ぶりに会って、それでも「彼」を『彼』だと認めることができたのは、その花を身に纏っていたから

あの時の答えはまだ出ていない
どんな関係になりたいのかも分からないままだ
けど、一緒にいたいという気持ちは変わらないんです

さて、それじゃあ答えあわせをしましょうか
顔も名前も覚えてなくても、僕は間違えたりなんてしませんよ先生



川内 國孝(四季 雅近)
  ■思出
・契約時、自信のなさ故に必要以上に緊張していた
・不注意でフードが脱げた後慌てて被り直す
・白い孔雀の尻尾が印象に残る
(俺なんかがウィンクルム?…しかもこの綺麗な奴と?…俺には…重すぎる…っうわ!?)
ハッ!み、見るんじゃない!!
(あの尻尾…孔雀か何かか?白い…)

・「鳥のテイルス」と言う事は何となく覚えている
・精霊は自分から逃げ出したんだと思い込み、立ち尽くす
・手がかりで探し当てた精霊を見て、本当に彼なのか凝視
この俺なんかがパートナーなんざ…精霊の方は煩わしいと思ったのだろうな
逃げられたんなら仕方ない
この中で鳥のテイルスと言ったら…奴だけ。だが…本当に?

…本当物好きだな、あんたは(無意識に苦笑


●思い馳せる
 フラルは、ぼんやりとした顔でそこに立っていた。
 ここがフィヨルネイジャであることは判る。
 けれど、隣に誰かいたはずだが、思い出せない。
 ふらり。分からないまま、とりあえず歩き出した。
 あちらへ、あちらへ。行かなければいけないような気が、していた。

 ふらりと歩きながら、スウィンは思案する。
 一緒に居たのは誰だった?
 肺腑に染み込む空気は、心地よくてあんまりにも清浄で。
 それ故に、あらゆるものが洗い流されてしまったかのよう。
 穏やかな空気に、笑いたいのに、笑えない。

 ぽっかり。それが相応しかった。
 アキ・セイジは、心の内側に穴の開いたような心地に、茫然としていた。
 居るはずの存在が居ない。それが、あまりに大きくて。
 じわりと侵食するように、気持ちの悪い不安が押し寄せる。
 あぁ、まるで体の半分が抉られてしまったかのようだ。

 川内 國孝の不安は、思い出せない事ではなかった。
 きっと、己の精霊は、國孝に懐かれる前にと逃げ出してしまったのだ。
 そうだ、こんな俺とパートナーであることに嫌気がさしたんだ。
 だとしたら仕様がない。仕様がない事だ。
 ――だけれど、穏やかな鳥の声が、どうしようもなく國孝を呼んだ。

 決して短い付き合いではなかったはずだ。
 暁 千尋は思い起こす。思い出せない思い出を。
 不明瞭で、霞掛っている記憶は、幾つも幾つもありすぎて、千尋からは切り離せない。
 あぁ、情けないな。それなのに思い出せないなんて。
 空を仰いで、千尋はほんの少し、考えてから歩き出した。

 穏やかなのに、薄暗い。サウセの心地は正しくそれだった。
 何かとても大切な事があるはずなのに、思い出せない。
 己の胸の内に穴の開いたような感覚。
 その穴が、まるで淀みを垂れ流しているかのように。
 恐怖が、サウセの胸中をじわじわと浸していく。

 傍にいないあいつ。記憶にないあいつ。
 ――あいつとは、誰だった?
 ちくりとした痛みを感じたような気がしたけれど、すぐに薄れた。
 その事が、一層不安を掻き立てて。
 イルドの進む足は、少しずつ、早くなっていく。

 苛立ちが、胸中を満たす。
 ああでもない、こうでもない。湧いては消える自問自答が終わらない。
 ヴェルトール・ランスは苛立ちに任せて頭を掻いた。
 こんな時に、あいつが居てくれたら、きっと、きっと――。
 ――はて。それは一体、誰の事?

 四季 雅近は記憶をたどった。確かに半月前には契約をしたはずだと。
 その相手が誰だったのか、全く覚えていないけれど。
 忘れるはずがない、と、思っていた。
 だってそれは、大切な神人の事だから。
 あぁ、だからきっと大丈夫だ。のんびり行こう。

 ジルヴェール・シフォンの胸中は、ごくごく穏やかだった。
 困ったわね、と首を傾げて見ても、その胸中に不安も焦りもない。
 傍らにいたのが誰だったのか。判らないけれど知っている。
 ふ、と微笑んだジルヴェールの髪を、柔らかな風が撫でた。
 ほんのりと、淡い香りを漂わせるように。

●ひとりたび
 雅近は思案に暮れる。
 のんびりと思い出すことを決めたが、さて何をきっかけに思い起こすべきかと思案した。
 パートナーとの思い出は、少ない。まだ出逢って半月。思い出らしい思い出がある方が不思議と言えばそうなのだが。
(……やはり、契約の時、か)
 雅近にとって、最もパートナーと深い縁を示す瞬間と言えば、それしかなかった。
 しかし、確かあの時は……と、幾ら思い起こしても、靄がかかったように曖昧に薄れてしまうばかり。
 首を傾げて、やれやれと肩を竦める雅近。
「印象深かったという記憶があると言うのに、その中身を思い出せんとは」
 難儀なものである。苦笑して、雅近はまた思案しながら歩き出した。
「っと、とと……」
 あまりに深く考え込んでいたせいだろうか。足元にせり出していた木の根に気付かずに、蹴躓いてしまった。
 倒れそうになった体を少し強く傍らの木に預けた瞬間、雅近は、ぱちくりと瞳を瞬かせた。
「……確か、あの時は……」
 『彼』の方が、足を取られて大転倒したのだ。
 あぁ、そうだ。そうしてその時、確か、見えたのだ。
「翡翠の、瞳……」
 あの時、確かに。
 とてもとても美しい翡翠に、雅近は見事に心を奪われたのだ。

 國孝は木漏れ日の差し込む森の中で、少し大きめの木に背を預けて座っていた。
 目深に被ったフードの端を、そよそよと風が撫でる。
 周りには誰もいない。引っ掴んで覆い隠すような真似をしなくても、いい。
 かさり、音がして、思わずフードの端を掴む。
 けれど、現れたのは小さなリスで。ほっと息を吐いてから、國孝は左手の紋様を眺めた。
 そう言えば、つい最近契約した精霊には、この顔を見られてしまったはずだ。
 不思議と曖昧にしか思い出せない、契約の記憶。
 だけれど確かにある記憶。
 俺なんかが神人に顕現するなんて。
 卑屈を拗らせた國孝は、顕現の事実を受け入れられず、ましてやウィンクルムとして精霊と契約するなんて、考えられもしなかった。
 そのため、契約時には必要事情に緊張して、あろうことか契約するはずの精霊の前ですっ転んでしまった。
 今思い出しても恥ずかしいし、あの時うっかり脱げてしまったフードのせいで、素顔を晒すことになってしまったのも後悔しかない。
 思い出してみたのは、あまり思い出したくない記憶だった。
 苦い顔をして、國孝は俯く。
 どうせ、どうせあの精霊も、卑屈な國孝に嫌気がさして、もっと優秀な人間の下に行ったんだ。
(……それでいい。どうせ俺には重すぎる話だったんだ……)
 あちらから離れてくれるなら、好都合だ。そう思い、言い聞かせ、膝を抱えようとした國孝の頭の上に、はらり、何かが落ちた。
 手さぐりで拾い上げて眼前に持って来てみれば、それは柔らかな羽根であった。
「鳥の、羽根……?」
 ざわり。國孝の中で、なにかが疼く。
 白い羽根。白い、尾羽。
 あぁ、そう言えば。
 自分なんかとパートナーになる事を喜んだあの奇特な精霊は、美しい鳥の尾羽を持っていた――。

 ◆

 守りたい、と。思う気持ちが、胸中に湧いては消えてを繰り返す。
 いや、思いは消えないまま、誰を、という疑問に躓いて、燻るばかり。
 スウィンはどこを歩いているのかも判らないまま、ふらり、思い直すように首を傾げる。
 守りたいと、思っていた。
 自分が神人なのは知っている。相手が精霊なのも理解している。
 だけれど、そんなことは関係なかった。
 だって、そう、あの時だってそうだったじゃないか……。
「……あの、とき?」
 いつかの、記憶。忘れてしまっている、思い出。
 だけれど確かにあるのだ。『彼』を知った切欠。『彼』を作る一片。
「――……、ッ……」
 名前を呼ぼうとして、出てこない。
 大切なのに。大切な人だと言う事は、解っているのに。
 消えて、しまったら。
 貴方を守れない。
 恐怖と焦燥に突き動かされるように、スウィンは森を駆けた。

 守りたい、と。思う気持ちが、押し留めようのないほどに溢れてくる。
 それはずっとずっと抱き続けていた感情で、記憶の欠落を以てしても摘み取る事の出来ない、イルドの一部だった。
 あの人を守りたい。その思いが、イルドを今日まで生かしてきた。
 ひょい、と、イルドは足元に転がっていた木の枝を拾って、じっと見つめる。
 恐怖と羨望がないまぜになった記憶は、いつまでも焼き付いている。
 幼さゆえの無謀があの人を傷つけた。
 それでもあの人は笑顔で頭を撫でてくれた。
 ただの浅慮な子供の無事を、心から、喜んでくれた。
 今度は、自分が『彼』を、守りたい。
 そんな幼い願いが、ウィンクルムとなる事で叶ったのは運命としか言いようがなかった。
 木の枝を手放して、イルドは両手の拳を握りしめる。
 手のひらに、武器の感覚が蘇る。
 守るための力は、得た。
「あいつを――」
 自分の事より他を優先する『彼』を、
「守ってやれるのは、俺だけだ」
 幾度目かの誓いを、口にして。イルドは真っ直ぐに森を進んでいく。

 ◆

 一人でも、平気な筈なのに。フラルは、寂しさを感じていた。
 静かな森の中をゆるりと歩くなんて、穏やかで素敵な時間だと言うのに。
 何が、こんなにも寂しさを感じさせるのか。その理由は、何となく判っていた。
 フラルは、そっと左手の甲を見つめた。
 そこには、神人の証である紋章がくっきりと浮かんでいた。
 オーガに襲われた村で、ウィンクルムの戦いを間近で見た記憶。
 フラルはその時に顕現した神人だった。
 あの時は青かった紋章が、確かに、赤くなっている。
(つまり、契約した精霊がいるはず)
 ……それが誰なのかは、思い出せないのだけれど。
 歩きながら、フラルは過去を思い起こす。
 襲撃時に顕現したフラルは、それによってオーガに狙われることになってしまった。
 幸いにも居合わせたウィンクルムに救われたが、それは同時に、彼らに深い怪我を負わせることになった。
 あのことを、今でも悔いている。
 その後悔が燻っていたせいで、契約の時、確か、確か――。
『守られるだけの存在になるつもりはない』
 そう……『彼』にそう言った。
 その言葉に、『彼』は傷ついていたように思う。神人を守護する義務のある精霊を拒絶するような物言いだったと、フラルは後になって思ったのだ。
 あぁ、思い出せ、思い出せ。
 自分が傷つけた相手の事だ。その時、『彼』はどんな顔をした?
(どんな、かお……?)
 思い出せない。思い出せないけれど、その理由が、記憶の欠落とは少し違うような気がした。
 彼の、顔なんて。
 初めから、知らないじゃないか――。

 左右違う色の目が不吉だと言われたサウセの顔は、仮面が隠していた。
 忌み嫌う態度や腫物を扱うような視線に俯いて、知らない振りをしていた。
 気が付けば周りに誰かがいることを厭うようになっていた。
 けれど、独りは、寂しかった。
 そんな感情の矛盾を埋めてくれた誰かが、居たはずだった。
 思い出せない、誰か。その人は眩しいほどの力強さでサウセを導いてくれた。
 いつの間にか、精霊であり、守る立場にあるはずの自分の方が、その人に憧れて、その人に頼っているのを自覚していた。
 それを恥じる感情がない事もなかったけれど、サウセの神人はそれを否定はせず、受け止めてくれた。
 けれど、サウセは知っていた。強いと感じたその人は、とても脆い物を抱えているのを。
 一つの後悔が、彼の背にしがみつき、いつだって胸を張るよう仕向けているのだと言う事を。
 知ったからこそ、その人を支えられるようになりたいと思っていたはずだった。
(確かに、少し前まで傍にいてくれたはずなのに……)
 ふるり、知らず、体が震える気がした。木漏れ日はこんなにも暖かいと言うのに。
 心の内側から、冷たい物が滲んでいるような……。
 恐怖に似た感覚に突き動かされるようにして、サウセの足が速くなる。
 人の、人の居る場所へ。
 そこへ行けば、ぽっかりと抜けた記憶欠片が、見つかるような気がした。
 独りは、もう嫌だ。
 早く、早く貴方の傍へ――。

 ◆

 森の情景は、あまりに穏やかで、胸中の薄らとした焦燥を押し留めようとしているかのよう。
 千尋はかすかに眉を顰めて、もやもやする胸の内を誤魔化すように、足早に歩く。
 特にどこへ向かっているわけでもなかったが、ただ黙って立ち尽くしている事も出来なくて。
 歩いて、それでも時折、溜息と共に立ち止まって。
 頭痛を押さえる様に、皺の酔った眉間にかすかに指を添えて。
 ふと、道端に咲いた花に、目が向いた。
「この花は……」
 見覚えがある。町中でも、整備された公園などでは特に良く見かける花だ。
 確か、パンジー……。
「……じゃ、ない。ヴィオラだと言っていた」
 そう、パンジーよりも少し小ぶりの花弁。この花と同じ大きさの物を、『あの人』と二人で、見た。
 千尋は、花の名前は詳しい方ではなかった。
 だけれどこの花は、『あの人』が教えてくれたから、判る。
 そしてもう一つ、千尋が良く覚えている花があった。
 それは泥水の中で真っ直ぐに綺麗に花弁を広げる花。
 『あの人』が好きだと言っていた花。
 千尋にとって『あの人』の象徴であり、数年来の再会においても、『あの人』を認識できたのはその花のおかげだ。
 ヴィオラの花が揺れる。
 問うてくる。
 ――その花の名は?

 そっ、と。ジルヴェールは髪に触れ、そこを彩る花の飾りを、指先でなぞった。
 不安じみた感情を払うかのように。あるいは、思い出を手繰るように。
 優しい指が、花の形をなぞると、ふと、懐かしい言葉を思い出した。
 まるで花のようだ。『あの子』が、ジルヴェールを称した言葉。
 それを言われた当時は、ジルヴェールはまだ身も心も『男』だった。
 だと言うのに、どこを見てそう称したのだろう。今でも不思議に思うが、それを不愉快だと思ったことは無かった。
 むしろ、嬉しかったのかもしれない。だから、緩やかに微笑んで教えてあげたのだ。自分の一番好きな花を。
 ――先生にぴったりだ。
 綻んだ笑顔が、一瞬、脳裏をよぎった気がした。
 弾んだ声が、一瞬、耳朶に響いた気がした。
 気がしただけで、ジルヴェールの胸中に燻っていた不安じみたものが、ふわりと晴れる。
 もう一度、髪飾りに触れた。
 ワタシの一番好きな花。
 貴方が、一層好きにさせてくれた花。
 出会ってから、暫し別れた時期があった。その時にも、この花を見れば『あの子』が思い起こされたものだ。
 今だって、そう。
「真っ直ぐで素直なワタシの可愛い――」
 ――可愛い、なぁに?
 言葉に詰まったのは、思い出せないからだけではなかった。
 言葉を、選べなかったのだ。
 あぁ、まるで恋する乙女みたい。そんな冗談めいた呟きが、胸の内を波立たせた。
 『あの子』は『ワタシ』にとって、なぁに?
 自問が、ジルヴェールの中に一つの答えを落とす。
 心の内側から囁きかけてくる一つの自覚に、ジルヴェールは導かれるように歩む歩調を速めた。

 ◆

 森を、一心不乱に駆ける。
 どろりとした何かが横たわっているような感覚を押し出すように、ランスは息を吸って、吸って、吸って、大きく吐き出した。
「ッ、は……!」
 気が、晴れない。
 苛立ちが、一層増したようだった。
 滲んだ汗を拭って、やめた、とランスは大きく独り言ちる。
 こんな所にいつまでもいたって、どうしようもない。
 フィヨルネイジャにはA.R.O.A.経由で来たのだから、A.R.O.A.に頼めば迎えも来るだろう。
 思案しながら内ポケットを探ると、携帯電話とは違うものが指先に触れた。
 求める物はそれではなかったはずなのに、何故だか、惹かれるように取り出して、見つめる。
 覚えがある。これは、貰い物だ。
 立派な万年筆は、大学受験を応援するためにくれた物だ。
 誰が?
 決まっている。『あいつ』だ。
 あいつが居ない。居ないのに帰れるわけがない。
 ランスは再び駆けた。
 大切なパートナーを、探して。

 ゆっくりと、一呼吸。それで、気持ちの悪さは幾分か落ち着いた。
 さぁ、落ち着け。己を宥めて、質す。
 胸の内にあるこの不安は、なんだ。
 何故、こんなにも記憶が不明瞭なんだ。
 セイジは考える。顔の見えない誰かの事。不自然な混濁の仕方。
(多分、これは何かの作用だ)
 もう一度、大きく深呼吸。
 何かによってこうなっているのなら、慌てても仕様のない事だ。
(原因を解消すればいい)
 忘れているだろう誰かを、思い出すための切欠を見つければ。
 セイジは、少しの思案の後、自身の荷物から携帯電話を取り出した。
 フィヨルネイジャに電波が通っているとはあまり思っていないが、目的はそれではない。
 探すのは、画像のフォルダー。
 パートナーを思い出せない事で半身を抉られるほどの感覚に陥ると考えれば、それはセイジにとって余程大切な相手だと言う証明。
(ならば俺のことだから多分……)
 果たして、そこに目的の物はあった。
 喜びに満ちたセイジの顔が、ぱっ、と上げられ、森を見渡す。
 初めて見る道だけれど、何処へ行けばいいのかは、分かる。
 だって、向かうべき場所を示すように、あんなにも眩い光に満たされているのだから。

●君と、ふたり
 ウィンクルム達は、気が付けば広い空間に出ていた。
 見たことのある顔が幾つもいる。あぁ、仕事や息抜きの場で会ったことがある者だ。
 理解したフラルは、一人一人の顔を順に見て、その中の一人に、視線を奪われた。
 仮面をつけたマキナ。
 何かにおびえた様子の、青年。
 彼も誰かを探すように視線を巡らせている。
 あぁ、そうか、他の者もパートナーの不在に当惑しているのか。
 思いながらも、フラルは真っ直ぐに仮面のマキナの元へ向かっていた。
「……どうしたんだ」
 何に、怯えている。
 案じる気持ちを添えて掛けた声に、マキナははっとしたようにフラルを振り返り、仮面の奥の瞳をかすかに見張った。
 自分とあまり年齢も変わらないだろう。
 そう言えば己のパートナーは、年の近い、付き合いやすい相手だったような覚えがある。
 判然としないながらも、フラルは自分を見定めるようなマキナの視線を真っ直ぐに見つめて。
 けれど不意に逸らされ、恐れる様に後ずさりをされるのを見て、思わず、その手を掴んでいた。
 左手に浮かぶ紋章。それが、導かれるようにマキナの左手を、掴んだ。
「サウ、セ……?」
 確かめるように呼んだ名に、胸につかえていた物がスッと降りる心地がした。
 フラルの声に、マキナは――サウセはかすかに震えて後、当惑したようにフラルを見つめ返した。
「フラルさん……」
 サウセの動揺は、フラルを見て思わず逃げ出そうとしてしまったことへの、罪悪感。
 気まずそうにもう一度目を逸らしたサウセを見つめて、フラルは小さく微笑んだ。
「サウセ」
「……はい」
「良かった、思い出せた」
 左手の紋章が二つ。揃いで並んでいるのを見つめて安堵しながら、フラルは独り言のように呟く。
「俺の過去を受け入れてくれたサウセの事だから、思い出せたんだと思う。……また、傷つけてしまったようだが」
 苦笑したフラルに、サウセは思わず、掴まれていた手を掴み返し、そんなことはないと食い下がった。
「貴方の心を見透かすような目に、確かに身を引きました。だけどその瞳が、いつも私を捉えてくれたから……」
 だから、貴方に憧れて、貴方に癒されて、今日まで共にこれたのだ。
 感情を示すのが苦手なサウセの精一杯の言葉に、フラルはかすかに丸くした瞳を柔らかく細め、頷いた。
「ありがとう」
 今、伝えられるのは、伝えるべきは、きっとこの言葉。
 認め合う事が出来るからこそ、こうしてまた、同じ時を刻み始められたのだから。

 ◆

 セイジは森を駆けた。携帯電話に表示しっぱなしの画像を、握り締めて。
 二人で出かけた旅行の思い出。
 運をすべて使い果たしのではないかと思うほどに豪華な客船でのクルージング。
 楽しかった。あぁそうだ、とても楽しかった。そんな幸福な思い出を、残していないわけがなかった。
 船の甲板で二人で撮った写真。こういったことに慣れた様子のパートナーが、器用に、綺麗に、撮ってくれた。
 少し見上げる目線。明るい表情を映えさせる金色の髪と瞳。
 テイルス特有の耳と尻尾はいつだってふさふさとして心地いい。
 撫でればくすぐったげに笑って、くしゃくしゃと頭を撫でてくれた。
 その手のひらは大きくて力強い。
 あぁ、なんだ。ちゃんと覚えているじゃないか。
 森を抜けたセイジは、開けた場所に集まった人の姿をぐるりと見渡して、見つけたその姿に真っ直ぐ駆け寄った。
 手を伸ばす。紋章の刻まれた左手を。
 同じ手を伸ばしたテイルスの青年は、セイジの姿を見て、笑った。
 写真と同じ、満面の笑みで。
「ッ、ランス!」
「セイジ!」
 手を繋いだ瞬間、喉の奥につっかえていたような感覚が解消され、自然と互いの名を呼んでいた。
 繋いだ手をそのまま引き寄せて、ランスはセイジを抱きしめる。
「何処行ってたんだ、心配したんだぜ」
 ぽふ、と。闇に近い黒緑の髪に頬を寄せて、ランスは眉を下げて問う。
 この姿に釘付けになった確信は、間違っていなかった。
 一体何が起こったのか。それは良く判らないけれど、こうして無事に再会できたのだ。深く考えることではない。
「あ、もしかしてあれか。絆の試練?」
「かもな」
 腕の中で、くす、とセイジが小さく笑う。
 釣られたようにランスもまた笑って、まぁ、と少し声を大きくして、高らかに告げる。
「そんなの楽勝だったけどな!」
 誇らしげな言葉とは裏腹に、ランスの胸中は安堵で満たされていた。
 繋いだ手がしっかりと握られたままであることに何となくそれを気取って、セイジはまた小さく笑う。
 けれど気の付かない振りをして、今はまだ、もう少しこのままで。

 ◆

 ふらふら、鳥の囀りを追いかけるようにして、國孝は森を歩いていた。
 きっと精霊は逃げ出したんだ。何度も自分に言い聞かせ、何度も納得して諦めようとしたけれど、その度に、感情に突き動かされる。
 森を抜けて、開けた場所へ。直に注がれた太陽が、嫌に眩しくて、國孝は思わず天を仰いで瞳を眇めた。
 その視界を、鳥の影が横切った。
(鳥……)
 白い鳥の尾羽。思い出したパートナーの断片を頼りに、辺りを見渡す。
 あの人は人間だ。あの人も違う。一人一人を確かめていくと、不意に、一人の精霊で視線が止まった。
(鳥のテイルスは、奴だけだ……)
 ――だけど。
(本当に、奴が俺のパートナーだとは……)
 そうとは、思えなかった。
 記憶の喪失や不可思議な現象を信じるくらいなら、初めから居なかったんだと納得する方が、よっぽど建設的だった。
 その方が、よっぽど、自分に相応しいと思った。
 だが、そんな國孝の思案をよそに、じっ、と凝視した精霊が、ずかずかとこちらへ歩み寄ってきた。
 國孝が見つめていたのと同じくらい、じぃ、と見つめられ、その視線の真っ直ぐさに、フードを被り直すのも忘れて視線を交わした。
「……俺の手を取ってみるかな?」
 不意に、精霊が左手を差し出してきた。
 手の甲に紋章。己の手にある物と、同じそれ。
 もしかしてこいつが。再び國孝に湧いた淡い期待を映すように、精霊はにっこりと笑んだ。
「俺も、お前のような気がする」
 促されるまま、國孝は精霊に手を伸ばして、震える指で左手を掴んだ。
 指先から、じわじわと広がるように、記憶が蘇った。
 思わず固まった國孝が、そっと視線を上げて見上げれば、その人はやはり、笑っていた。
「言っただろう? お前で良かった、國孝」
 無事の解決に安堵した二人は、持って来ていた弁当を木陰で広げ、フィヨルネイジャの雰囲気をのんびりと味わう。
 その折に、お互いが契約の時のことを思い起こしていたのだと告げ合って、國孝は自分がすっ転んだことを再び思い出して気まずげに視線を逸らす。
 楽しげに笑う雅近を盗み見れば、やはり綺麗だと思う。契約の時と同じように。
(……俺には、重すぎる……)
 こんな綺麗な男と契約を結ぶなんて。
 だけれど、その憂鬱を払ったのも、雅近だった。
『美麗な顔なのになぜ隠す?』
 倒れた國孝を引き揚げながらの一言。
 ぽかんとしてから、國孝はようやく、フードが脱げていた事に気が付いて、慌てて顔を隠したのだ。
『み、見るんじゃない! 俺は、兄弟みたいな優秀な存在じゃないから……』
『兄弟? ……人間は愚かだ。こんなに美麗と言うに、比較するとは』
『……そう言う冗談は、嫌いだ』
『むむ、冗談に聞こえるか?まぁ今はそれで良い』
 苦笑した顔を思い起こしてから、國孝は先ほどの雅近の笑顔を思い起こす。
 先程の顔は、多分、この半月見た中で一番綺麗だった。
 そんな顔で、「お前で良かった」と、言ったのだ。
「……本当物好きだな、あんたは」
 ぽつり。小さく零した皮肉は、けれど、どこか嬉しさを孕んでいて。
 零れた苦笑は、ほんの少し、心を許した印かもしれない。

 ◆

 『あの人』が選んだ花の持つ意味は、誠実、信頼、少女の恋。
 『あの子』が選んだ花の持つ意味は、信じた愛、恋の予感、暖かい心。
(ワタシは少女みたいに恋をしているようだけど)
 ねぇ、名前の思い出せない貴方。
(貴方の選んだ『恋の予感』……その相手に、ワタシは含まれているかしら……?)
 姿の見えない相手へと、ジルヴェールは静かに問う。
 答えは、今は聞かなくて良い。聞くのを怖いと思うのは、少女じみているだろうか。
 穏やかな空気を纏って、開けた場所で仲間たちの姿を見止めながら、ジルヴェールは待って佇む。
 やがて、そこに現れた一人の青年。じっと見つめていると、彼の方から歩み寄ってきた。
 目の前に立ち止って、一呼吸。きりりと表情を改めて、青年は左手を差し出した。
「さて、それじゃあ答え合わせをしましょうか」
 確信めいた物言いに、小さく噴き出して、ジルヴェールは紋章の浮かぶ左手を、一度口元に添えて、小首を傾げて見せた。
「それはどんな問題に対する答えかしら?」
「僕のパートナーが誰か。その回答です」
 いつの間にか、少年は青年になっていた。
 青年は、少年の頃とは違う姿になっていたジルヴェールを、すぐに見つけてくれた。
 ある意味、二度目の回答。ならば、
「顔も名前も覚えてなくても、僕は間違えたりなんてしませんよ」
 それが当然であると言うように、自信に満ちた顔に、ささやかな意地悪で口元へやっていた手を、そっと差し出した。
「さすがワタシの…自慢の教え子だわ」
 手を繋げば、満たされる心地。
 間違っているなんて、あるはずがないと思っていたけれど、離れていたパートナーとの再会には、安堵を覚える。
 少しの緊張を解すように小さく息を吐いた千尋は、ジルヴェールの髪飾りをちらりと見て、仄かに笑む。
「あの時の答えは、まだ出ていません」
 あの時。それがいつの事を示すのかは、ジルヴェールにも判った。
 聞くのが怖いと思っていた問いかけ。それでも、小さく頷いて先を促した。
「どんな関係になりたいのかも分からないままだ」
 千尋とジルヴェールの関係は、今はまだ『ウィンクルム』だ。
 それがどう変わるのか。どんな別名が付くのかは、まだ自分の中で明確にはなっていなかった。
 それでも、と。千尋は真っ直ぐにジルヴェールを見つめた。
「一緒にいたいという気持ちは変わらないんです」
 それが今の真っ直ぐで正直な感情。
 偽りのない事が、千尋の態度全てから伝わるから。ジルヴェールは穏やかに瞳を眇めて、一度伏せる。
「それで十分よ、チヒロちゃん」
 一緒に居たい。同じ思いを込めて、ただ一言、それだけを返した。
 淡く広がる薄紅色。
 『あの人』と『あの子』を繋いだその花は、泥水の中で凛と咲く、蓮の花――。

 ◆

 開けた場所に出た時点で、イルドは進むのをやめた。
 ここが終着点だと、何故だか理解できたから。
 ちらほらといる、自分以外の人の姿を一人一人眺めては、探すパートナーでない事を何となく悟って、眉を顰めて逸らす。
 小さな溜息を零しかけたところで、また一人、誰かが訪れた気配を見つける。
 ぱ、と顔を上げて、そのまま、目を離せなくなった。
 何かを考えるより先に、身体が動き出す。
 その人の元へ駆け寄ると、浚うように手を掴んで駆け出していた。
 振りほどかれるような感覚は無い。目の合った時に、相手も自分を真っ直ぐに見つめていたのを、頭の端で認識していたと思う。
 とにかく、なんでも良かった。自分を突き動かした衝動を確かめるために、イルドはただ、駆けた。
 ――走り抜けた森の先で、見つけた一人の精霊に、スウィンは釘づけになっていた。
 見つめあっているような感覚にも気付けないまま、ただ、こみあげるものに満たされる心地に、立ち尽くしていた。
 駆け寄ってきた彼に手を取られ、そのまま共に駆ける内に、掴まれた手首が熱くなるような感覚。
 息が上がるのは、鼓動が高まるのは、走っているせい?
 顔が熱いのは。胸が苦しいのは。
 貴方が、こんなにも眩しいのは――?
 左手の甲に見える紋様に、手を伸ばす。同じ手を差し出して、触れ合う指先をそのまま絡めた。
 繋いだ瞬間、ふわり。蘇る記憶。
 思い出の数なんて数えられる程度ではなくて、衝撃に似た感覚に眩暈がしたけれど、構わなかった。
「好きだ、スウィン」
 思い出した事。
 取り戻した物。
 それは全てかけがえのないものだけれど、まだ、足りない。
 欲しかった。ずっと、欲しかった。
 守れる力を、守れる立場を、この人の全部を、ただ求めてきたのだ。
「好きだ」
 噛みしめるように、もう一度。
 初恋が実らないなんて、そんな言葉が浮かんだけれど、すぐに消した。
(知るか、そんな事)
 今までは照れくささが押し留めた言葉だったけれど、今言わなくて、いつ言う。
 躊躇も葛藤も、要らない。
 だって、失ってからでは、遅いのだから――!
「――好きよ、イルド」
 柔らかな声が、返る。
 かすかに滲んだ声が。
 涙の滲んだ顔が、ほんのりと頬を染めてイルドを見上げている。
「……好きよ」
 あれこれ考えていた何もかもを押しのけて、ただ素直に答えたくなったスウィンの、それが、真っ直ぐな答えだった。
 ふわりと笑った顔を、恥ずかしげに伏せて抱き付いてくるスウィンを、イルドは優しく、けれど力一杯抱きしめた。
 もう、離したくない。
 誰よりも愛しい存在を、ようやっと、手に入れる事が出来たのだから。



依頼結果:大成功
MVP
名前:スウィン
呼び名:スウィン、おっさん
  名前:イルド
呼び名:イルド、若者

 

名前:暁 千尋
呼び名:チヒロちゃん
  名前:ジルヴェール・シフォン
呼び名:先生

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 錘里
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ EX
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,500ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 04月07日
出発日 04月13日 00:00
予定納品日 04月23日

参加者

会議室

  • [7]川内 國孝

    2015/04/12-23:22 

    雅近:

    こちらもプラン提出完了だ。
    ……さて、引き続き神人を探そうか。

  • [6]アキ・セイジ

    2015/04/12-23:03 

    プランは提出できているよ。
    うまくいくといいな。

  • [5]フラル

    2015/04/10-19:17 

    オレはフラル。
    よろしくな。

    パートナー…。
    確かに隣に誰かいたはずなんだよな…。
    とりあえず、その辺うろついてみるか…。

  • [4]スウィン

    2015/04/10-18:48 

    スウィンと、パートナーの…あれ、誰だったかしら…?
    え、えっと、お初さんもいつもの皆もよろしくぅ。

  • [3]暁 千尋

    2015/04/10-09:36 

    暁千尋です。
    初めましての方も、そうでない方も宜しくお願い致します。

    さて…僕のパートナーは一体どなたでしたかね?

  • [2]川内 國孝

    2015/04/10-00:25 

    雅近:

    むむ。初めての依頼故、みな初めましてになるな。
    俺は四季 雅近と言う。……はて、誰の精霊だったかな?

    まぁ気ままに探すとしようか。
    あちらでも会った際はよろしく頼むよ。

  • [1]アキ・セイジ

    2015/04/10-00:17 


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