プロローグ
肌寒い日々が続いていましたが、それもようやく終わりを迎えようとしています。少しずつ気温も高くなり、春を身近に感じるようになってきました。寒さゆえに出かける事にやや億劫な気持ちがあった時もありましたが、そのような時期も過ぎ、厚いコートを羽織る必要もなくなりました。外を歩けば植物が芽を出そうとしている姿も見られますし、道行く人々も春らしい格好で歩いています。
そんな陽気な雰囲気に身を預け、貴方達は、やや遠くの町へ遊びに出かけることにしました。そこはタブロス市から南東に進んだところにある、田舎と都会の中間を表したような町。オーガの出現やその討伐。最近でいえばバレンタイン地方でのボッカ襲来騒動。そういった事から少し離れて、何も気にせず1日を過ごしてみませんか。この町には様々な施設が集まっており、地元の人々もよく利用しています。気軽に立ち寄れる雑貨屋に、ケーキセットが評判の喫茶店。素敵な世界へ導いてくれる映画館に、地元の人達の作品が見られる美術館。バッティングやテニスなどが楽しめるレジャー施設も見受けられます。どれも規模が大きいとはいえませんが、十分楽しめるでしょう。この場所で過ごす1日はどのようなものになるのでしょうか。
解説
入場料など:500Jr
以下の場所から【最大3ヶ所まで】選択してください。
●雑貨屋
キーホルダーやハンドメイドの小物を扱っているお店です。
可愛らしいデザインのものが揃っています。
●喫茶店
ケーキセットが評判のお店です。
2種類あり、チョコケーキセットと苺ケーキセットから選べます。
内容はケーキ、ドリンク、ヨーグルト、フルーツです。
ケーキは【チョコケーキ・苺ケーキ】から1つ選択。ドリンクは【紅茶・コーヒー】から1つ選択。
ヨーグルトとフルーツは共通で、フルーツはキウイとパイナップルを小さく切ったものです。
●映画館
現在放映している映画は3種類です。
「True of Death」ジャンル:ホラー
未知の敵から逃げ惑うホラー。
「Jump!!」ジャンル:アクション
主人公がジャンプアクションを駆使して敵を倒していく爽快アクション。
「邂逅」ジャンル:ラブロマンス
主人公とヒロインが出会い、徐々に距離が近づいていく王道のラブロマンス。
●美術館
この地域で活動している人たちによる展示会が開かれています。
絵画や彫刻などが多数展示されています。
●レジャー施設
バッティングや屋内テニスなどが楽しめます。
プランには
・どの場所に行くのか
・訪れた場所でどういった行動を取るのか
を書いてください。
ゲームマスターより
星織遥です。
今回はウィンクルムの皆さんが過ごす日常に
スポットを当ててみたいと思い、このようなお話を考えました。
よろしくお願いします。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
まず初めに映画館行きます 観るのはもちろん「邂逅」 CMを見て気になっていたんです、原作はあるんでしょうか 王道ラブロマンスって良いですね 私が今収集している恋愛小説もほとんど王道ものです ボーイミーツガール…っていうんですか、甘酸っぱい感じでいいですよね! 幼馴染シチュエーションとかも捨てがたいんですけど やはり私は見知らぬ二人が出会って、みたいなのが好きです! そういえばディエゴさん、前に貸した小説ちゃんと読みました? 疲れたような顔してますけど、あの小説を読み込めばこの映画の良さがわかりますから 今日は小説と映画の感想を語るまで帰りませんからね! …私喋りすぎてますか? そんなことはないと思うんですが…。 |
ペディ・エラトマ(ガーバ・サジャーン)
美術館、喫茶店、雑貨屋の順ね 美術館では一緒に見て回るわ 「綺麗ね」とか「色が鮮やかで面白いわ」とか感想を話したいわね ガーバが山の絵を見ているのに気づいたけどそっとしておくわ 「喫茶店で休憩しない?」 「ケーキが目当てだろう?」 礼儀正しいだけだったガーバが、からかうような言い方をしたから少し嬉しいと思うわ 苺ケーキと紅茶がいいわね 「ガーバはウィンクルムとしての生活は窮屈?」 山の絵を見ていたのを思い出して聞いてみるわ ガーバの答えは嘘と本当が半々ね 「私も登山をしてみたいわ」 「危険だ。神人はオーガに狙われるんだぞ」 言い方に少し凹むわ 「そうね。ガーバの言う通りだわ」 プレゼントに思わず笑ってしまうわ 「ありがとう」 |
空香・ラトゥリー(鏡 ミチル)
みっちゃんとお出かけ!(うきうき) みたいえーががあるのでさそっちゃった! 【映画館】 空香、らぶろまんすがみたいなー! え?ホラー?ぜっっったい嫌ですっっ! みっちゃんこそ、ラブロマンスでおんなごころをお勉強するといーですよー! 映画中は『あんな恋愛してみたいな』とうっとり。 ラストは涙。ハンカチ借り 「ありがとです、みっちゃん」小声で感謝。 【鑑賞後、喫茶店へ】 (チョコケーキ&紅茶注文) えーが、たのしかったです、うっとりです…! 食べますよぅ! もー、みっちゃんはでりかしぃがないですね! そんなんじゃもてませんよー? じゃあ、どんな恋愛してるんですか? (ニヤニヤ笑顔に) ……遠慮しますっ。 ケーキおいしぃですー! |
和泉 羽海(セララ)
アドリブ歓迎 ●映画館:ホラー 映画館で映画とか久しぶり… あたしが選んでいいの…?じゃあ……アレがいい やっぱり家で見るより迫力ある…から目逸らせないし… まさか、あんな展開になるとは思わなかった… あの伏線がミスリードだったなんて…良い意味で裏切られて面白かった ……この人に一体何が起こったのかな…… 『大丈夫?(口パク』 …嫌いなら、そう言えばいいのに… よく分からない…嫌いなものに無理してまで付き合うことないと思うんだけど… もう一回見たいって言ったら…本当に泣いちゃうかな ●雑貨屋 こういうお店初めて… …なんでこの人はこんなに馴染んでるんだろう… 可愛いけど…あたしには似合わない… お揃いとか…無理…聞いてないし |
ツェリシャ(翠)
今日はよろしくお願いします(ぺこ で、どこ行けばいいのかわからなかったので姉と妹に聞いてみたんですが 会話が続かなそうだから映画見てから喫茶店はどう?とのことでした という事で、行きましょう 映画 私はホラーでしょうか わかりました、ここは間をとってラブロマンスにしましょう 問題ありません、二人とも見たくないものを見れば公平です あ、ポップコーン買ってきます 喫茶店 チョコケーキセット、紅茶 食わず嫌いはいけないと思いました 案外面白かったですね 甘いものは別腹です いえ、そんな目で見てた気がしましたから 柔な神経はしていないので思った事は口にだして貰えると助かります 言わない場合は勝手に解釈します だから遠慮はしないで下さい |
タブロス市から南東に進んだところ。そこにある、田舎と都会の中間を表したような町。そこに『和泉羽海』と『セララ』。『空香・ラトゥリー』と『鏡ミチル』。『ペディ・エラトマ』と『ガーバ・サジャーン』。『ツェリシャ』と『翠』。『ハロルド』と『ディエゴ・ルナ・クィンテロ』。それぞれのウィンクルムが向かっていた。
●映画の好みとブレスレット
羽海とセララは町に到着した。人の往来はあるものの、それほど多くない。程よい騒がしさが町全体に広がっている印象だった。
「どこ行こうか?」
セララはいつも持ち歩いているメモ帳にそう書くと、羽海に見せる。それを受けて羽海は辺りを見渡す。都会とは言いがたいものの、遊ぶ場所はいくつかありそうだった。その中で羽海は映画館へ行きたいという旨をメモに書き記す。それを見て、セララは了承した。
「よし、決まりだね!行こっ!」
2人は映画館へ向かって歩き出した。
映画館に到着した2人。施設は全体的に小さく、上演本数も少ない。しかし映画を楽しむには十分な環境だった。
(映画館で映画とか久しぶり……)
羽海は感慨にひたりながら映画館を見上げた。2人は中に入ると、映画の案内コーナーへと移動する。そこで現在上映されている作品を調べた。どうやら今は3本のみで、ホラー、アクション、ラブロマンスがあるようだ。
「う~ん……迷うなぁ……そうだ!羽海ちゃん選んでよ!」
(えっ……あたしが選んでいいの……?じゃあ……アレがいい)
羽海は少し考える素振りを見せた後、ある1点を指差した。それはホラー映画「True of Death」の宣伝ポスター。言葉で表現するのが難しい異形の存在がこちらに迫っている様子が描かれている。
「あ、あの映画が見たいの……?」
セララは確認するように問いかける。それに対して頷きを返す羽海。セララは羽海に同意するとチケットを買う。
(でも、お、おかしいよね……デートで見る映画って普通ラブロマンスじゃないの!?)
内心の動揺を抑えつつ、セララは羽海とともに劇場へと移動した。
劇場全体が暗くなり、スクリーンにタイトルロゴが現れ、上映が始まった。物語は主人公達の何気ない会話から始まり、好奇心から廃屋に入っていく。そこからポスターに描かれた異形の存在が様々なパターンで現れ、主人公達に迫り来る。音響なども相まって怖さがより一層際立っていた。
(やっぱり家で見るより迫力ある……から目逸らせない……)
羽海はそんなスクリーンに釘付けだった。
(なにこれ!?本気で怖いんだけど!?何で羽海ちゃん平然と見てられるの!?意外!新たな一面を発見☆……とか言ってられないんですけどぉぉ!?)
一方、セララは羽海の新たな一面に感激しながら、半泣きで映画の恐怖に苛まれていた。
そんな非日常的な世界はエンドロールとともに終わりを迎えた。羽海はそれを見ながら映画を振り返る。
(まさか、あんな展開になるとは思わなかった……あの伏線がミスリードだったなんて……良い意味で裏切られて面白かった)
うんうん、と確認するように頷く。その隣でセララは魂が抜けていた。
(大丈夫?)
羽海はその様子を見て心配そうに口パクで声を掛ける。それに気付いたセララは魂をなんとか戻しつつ、こう答えた。
「ごめん……本当はホラーとか血とか苦手なんだ……」
(……嫌いなら、そう言えばいいのに……)
「男は好きな子の前では格好つけたいものだよ。まぁ……結果、このザマなんだけど」
苦笑いを浮かべながらセララは話す。
(よく分からない……嫌いなものに無理してまで付き合うことないと思うんだけど……もう一回見たいって言ったら……本当に泣いちゃうかな)
(ついで暗闇に乗じて怖がる羽海ちゃんと手とか繋げると思ったのにな~残念)
2人は心の中でそれぞれの思いを抱きながら映画館を後にした。
次に2人は雑貨屋に訪れた。お店の中には可愛らしいデザインのキーホルダーやハンドメイドの小物が溢れている。
「うわぁ!どれも可愛いねぇ!もちろん羽海ちゃんの可愛さには敵わないんだけど!」
(こういうお店初めて……なんでこの人はこんなに馴染んでるんだろう……)
そんな事を思いながら2人は店内を巡る。するとセララがあるブレスレットを前に立ち止まる。
「あ、これなんかどう?」
そう言いながら、それに手を伸ばす。
(可愛いけど……あたしには似合わない……)
「買ってくるからちょっと待っててね!」
羽海の思いとは裏腹に、セララはそれを持ってレジへと向かった。
(ここに居るのも悪いし、外で待とうかな……あれ?いま、2つ持ってた?)
一旦店の外に出る羽海。そして先ほど浮かんだ疑問は戻ってきたセララによってすぐに解消された。
「お待たせ!ほら!見てみて!」
セララは楽しそうに袋からブレスレットを2つ取り出す。
「これ、ペアのブレスレットなんだよ!このチャームをあわせるとハート型に!はい、プレゼント!」
(お揃いとか……無理……聞いてないし)
嬉しそうに話しながらブレスレットを手渡すセララ。受け取りつつも困惑気味の羽海。2人のチャームに日差しが空から降る。光り輝くチャームは2人の今後を照らすようにも思えた。
●楽しさと喜びを
空香とミチルは町の中をゆったりと歩く。
「みっちゃんとお出かけ!」
空香は浮かれる気持ちを隠すことなく、そう口にした。
「きょうはね、みたいえーががあるのでさそっちゃった!」
「見たい映画ねぇ……」
ミチルは怪訝な表情を浮かべつつも空香と一緒に映画館へと向かう。
映画館に着くと空香が開口一番、こう言った。
「空香、らぶろまんすがみたいなー!」
「見たい映画ってお子様アニメかと思いきや……。おまえ、恋愛もの理解できるのか?ホラー行こうぜ!」
「え?ホラー?ぜっっったい嫌ですっっ!みっちゃんこそ、ラブロマンスでおんなごころをお勉強するといーですよー!」
「ホラーでもいいだろ!面白そうじゃねえか!」
チケット売り場の前で互いの主張を繰り返す2人。その末、ミチルが折れる形でラブロマンスを見ることになった。2人はチケットを購入すると劇場へと入っていった。
今上映されているのは『邂逅』というラブロマンス。スクリーンでは主人公とヒロインが出会い、徐々に距離が近づいていく王道の流れが展開されている。
(うわー、俺こんな純愛したことねーわ)
ミチルはあくびをかみ殺しながら進むストーリーを追う。ふと、空香のほうに視線を向ける。空香はスクリーンに釘付けでうっとりとした表情を浮かべている。
(女はこーゆーのが好きなんかねぇ)
ミチルの疑問をよそに映画はクライマックスへと突入する。感動的なシーンがBGMと演出が相まって綺麗な世界を映し出す。それを見て空香は思わず涙を浮かべていた。それに気付いたミチルは無言でハンカチを差し出す。
「ありがとです、みっちゃん」
涙ぐみながら空香は小声でそう答えると、ハンカチを受け取って涙を拭く。
(泣くほどか?……女はこーゆーのが好きなんかねぇ)
改めて疑問を抱いたミチルであった。
空香の様子が落ち着いてから、映画館を後にする2人。少し町を散策すると喫茶店を見つけたので、そこに入ることに。ケーキセットがおすすめということで、空香はチョコケーキと紅茶を、ミチルは苺ケーキとコーヒーをそれぞれ注文する。店員が奥へ消えると空香が話し始める。
「えーが、たのしかったです!」
「うっとりしたり涙流したり……あれ、そんなによかったか?」
「ほんとーにうっとりです……!」
「ああそうかい……」
そんな会話をしていると注文したケーキセットがそれぞれ届く。ケーキとドリンク、その横にはヨーグルトとフルーツが添えられていた。ミチルは早速食べ始める。しかしふと視線をあげると、先程の映画の余韻に浸っているらしく、空香がケーキに手を伸ばす様子が無い。
「なんだ空香、食わないんなら俺が食うぞ?」
「た、食べますよぅ!もー、みっちゃんはでりかしぃがないですね!」
そう言って空香もケーキを食べ始める。しかし、言われっぱなしは嫌だと思ったのかこう切り返した。
「そんなんじゃモテませんよー?」
してやったりと言った表情の空香。それに対してミチルは自分のケーキを食べながら
「こう見えて俺はモテモテなのー。映画デートなんてしないだけなのー」
と答える。
「じゃあ、どんな恋愛してるんですか?」
追求する空香。ミチルはケーキを食べ終えると、フルーツを口に運びつつコーヒーを味わう。そうしてから一呼吸置いて言葉を発した。
「俺の恋愛?……そうだな、あと10年したら教えてやってもいいぜ?」
不敵で艶のある笑みを浮かべるミチル。その笑顔に、遠慮します、と静かに返す空香であった。
その後も他愛のない話をしながらケーキセットを食べ進める。ケーキの美味しさに満足そうな空香。空香が食べ終わるまでコーヒーをゆっくりと飲むミチル。2人は同時に食べ終えると店を後にした。
「ケーキおいしかったですー!」
「ああ、まあな」
嬉しそうに話す空香に相槌を返すミチル。
(ま、たまにゃこんなデートもいいかも、な)
「どうかしたの?」
「なんでもねえよ」
ミチルはそういうと少し足を速めた。その後を追いかける空香。2人はこうして長閑な1日を過ごした。
●穏やかな時
ペディとガーバは町に着くと、まずは美術館へ向かうことにした。美術館に到着すると、2人は一緒に館内の作品を鑑賞する。
「この絵、綺麗ね」
「ああ、細部まで整っている」
「あ、こっちのは色が鮮やかで面白いわ」
「うん、陰影の表現が見事だ」
同じものを見ているのに、思っていることが少し違う。ガーバはこの違いが面白いと感じていた。そんなことを思いつつ館内を歩いていると、1枚の絵が目に入った。それは山の上から遠くの山脈を描いたもの。ガーバは思わず立ち止まり、その絵に見惚れてしまった。ペディはいきなりガーバが立ち止まって驚いたが、その視線の先に気付いた。ガーバが山や森を歩くのが好きなのは知っていたので、あえてそっとしておいた。
美術館の作品を一通り鑑賞すると外へ出た。まだ時間は十分ある。するとペディがこう切り出した。
「ねえ、喫茶店で休憩しない?」
「……ケーキが目当てだろう?」
ガーバはペディをからかうように答えた。礼儀正しさを絵に描いたようなガーバがそのような表情を見せた事にペディの口元が緩む。ガーバはその様子を見て不思議そうに首を傾げたが、喫茶店に異論は無かったので2人はそこを目指して歩き出した。
喫茶店を見つけるとその扉をくぐり、腰掛けて早速メニューを見る2人。その店ではケーキセットが好評というのでペディは苺ケーキと紅茶、ガーバはチョコケーキと紅茶のセットをそれぞれ注文した。店員がそれらを運んでくるとガーバはフォークを手に取り、食べようとした。しかしふと、ペディの視線に気付く。どうやらガーバの注文したチョコケーキを食べたいようだ。ガーバはそれを半分に切ってペディの皿に乗せる。
「え、あ、ありがと」
「甘いものがすきなんだな」
「……ええ」
ペディは自然な微笑みをガーバに返す。いつのまにかこんな風に笑えるようになったのか、とガーバは時の流れを感じた。ケーキにドリンク、ヨーグルトとフルーツ。それらを口に運びながら2人は軽い会話を繰り返す。その中で、ペディがガーバに問いかけた。
「ねえ、ガーバはウィンクルムとしての生活は窮屈?……さっき、山の絵を見ていたでしょ?」
「さっきのは……どこの山なのか考えていたんだ」
「……私も登山をしてみたいわ」
「危険だ。神人はオーガに狙われているんだぞ」
ガーバは思わず強い口調で迫ってしまい、少し慌てた様子を見せた。ペディもガーバの物言いに少し落ち込んでしまった。
「そうね、ガーバの言う通りだわ」
ふと静寂が訪れる。2人は黙々とケーキセットを食べ続ける。フォークと皿があたる音だけがカチカチと流れた。
喫茶店を後にした2人。しかしどこかぎこちない雰囲気が漂っている。この空気を変えようとガーバがペディに雑貨屋に行かないか、と提案する。ペディは了承したものの、気まずさを引き連れたまま雑貨屋のドアをくぐる。店内には可愛らしいデザインの小物が広がっていた。ペディはそれらを手にしては戻すのを繰り返す。その隙にガーバは目に留まったとあるストラップを、ペディに気付かれないように購入した。
店を出ても、なお気まずい空気が流れている。その流れを断ち切るようにガーバがペディに声を掛ける。
「その……これを受け取って欲しい」
ガーバは先程の店で買った品物を渡す。いつ買ったのだろうか、と不思議に思いながら袋を開けるペディ。すると中には、眠っている姿が謝っているように見える猫のストラップ『ごめん寝』が入っていた。ペディはそのプレゼントを見て思わず笑ってしまった。その笑い声にガーバも安心した表情を浮かべる。いつのまにか2人の間に流れる空気の色は変わり、温かさに包まれていた。
「素敵なプレゼント、ありがとう」
ペディはそういうとガーバと再び町を歩く。今度は歩み寄るように歩調を揃えて。
●歩み寄るということ
町に到着したツェリシャと翠。すると突然ツェリシャが頭を下げる。
「今日はよろしくお願いします」
いきなりの挨拶に思わず反射的にお辞儀を返す翠。その様子に礼儀正しいな、と翠は感じた。
「で、どこ行けばいいのかわからなかったので、姉と妹に聞いてみたんです。そしたら会話が続かなそうだから映画を見てから喫茶店はどうか、とのことでした」
「それは聞いたとしても口に出さない方が……」
「という事で、行きましょう」
先行きに不安を覚える翠をよそに、ツェリシャは映画館に向かって歩き出した。その後ろ姿にますます不安感を募らせる翠であった。
映画館に到着すると2人は現在上映されている作品を確認する。ジャンルはホラー、アクション、ラブロマンスの3種類。
「どれにする?僕はこの中ならアクションかな」
「そうですね、私はホラーでしょうか」
「ああ、それならホラーでも……」
「わかりました。ここは間をとってラブロマンスにしましょう」
翠が同意するのを遮るように、ツェリシャが別の案を提示する。翠は改めてホラーでも構わないという意思を伝える。しかしツェリシャはこう続けた。
「問題ありません、2人とも見たくないものを見れば公平です」
「それは公平なのかな……」
「公平です。あ、ポップコーン買ってきます」
そういってツェリシャはフードコーナーへ行ってしまった。翠は押し切られる形でラブロマンスを一緒にみることになった。
映画を見終え、劇場を後にした2人は喫茶店に入った。ケーキセットがおすすめとのことで、ツェリシャはチョコケーキと紅茶、翠は苺ケーキとコーヒーのセットを注文した。少し待つと、注文したものが2人のもとへ届く。それを口に運びながらさっき見た映画の話をする。
「先程のラブロマンス、案外面白かったですね」
「うん、面白かったね。2人が幸せになれてよかったよ」
「食わず嫌いはいけないと思いました」
そんな事を言いながらケーキセットを食べ進める。
(ツェリシャ……劇場内でも結構食べていたけどよく入るね……)
「甘いものは別腹です」
「え!?僕喋ってた!?」
翠は心の中で思ったつもりだったが、口に出ていたのかと思い、咄嗟に口を覆う。
「いえ、そんな目で見ていた気がしましたから」
そう言いながら紅茶をすするツェリシャ。ソーサーにカップを置くと言葉を続ける。
「柔な神経はしていないので思った事は口にだして貰えると助かります。言わない場合は勝手に解釈します。だから遠慮はしないで下さい」
そこまで言うと休めていた手を動かし、再び食べ始める。翠は心の中で今日を振り返った。ツェリシャのペースに呑まれて今後に不安を感じた部分はある。しかし行き先を周囲に相談したり、自分の事を見ていることも分かった。これも神人の歩み寄りだろう。まだ掴み所が不明だが、そのうち理解し合えればいいなと思いながらコーヒーを口に運んだ。
●ロマンチックは難しい
ハロルドとディエゴは町に到着すると迷わず映画館を目指す。ハロルドがCMを見てから気になっている作品があるという。映画館に入り、2人は上映されているものを確認する。現在3種類の映画が上映されており、ジャンルはホラー、アクション、そしてラブロマンス。
「ありました。この作品です。『邂逅』。王道のラブロマンスらしいですが、原作はあるんでしょうか」
目当ての作品を見つけると嬉しそうに劇場の中へと足を運んだ。
映画を見終わり、2人は喫茶店に移動する。席に腰掛けケーキセットを注文し終えると、ハロルドが楽しそうに話し始める。
「王道ラブロマンスって良いですね。私が今収集している恋愛小説もほとんど王道ものです。ボーイミーツガール……っていうんですか、甘酸っぱい感じでいいですよね!幼馴染シチュエーションとかも捨てがたいんですけど、やはり私は見知らぬ二人が出会って、みたいなのが好きです!」
「だな」
「そういえばディエゴさん、前に貸した小説ちゃんと読みました?疲れたような顔してますけど、あの小説を読み込めばこの映画の良さがわかりますから。今日は小説と映画の感想を語るまで帰りませんからね!」
「お、おう……」
(コイツ……こんなに喋る奴だったか?普段は俺より喋らないのに……。まあ、こういうのではしゃぐのは女の子ならではなんだろう……)
そんな事を思いながらディエゴはハロルドの話に耳を傾けていた。そこに注文したケーキセットが運ばれてくる。ハロルドの前には苺ケーキと紅茶のセット、ディエゴの前にはチョコケーキとコーヒーのセットがそれぞれ置かれた。しかしディエゴは甘いものが苦手なので、ケーキを少しずつ食べる。そうしているとハロルドがケーキにフォークを通してディエゴの口元に持っていく。
(これは……さっきの映画の真似か)
ディエゴは先程見た映画の中で、恋人になった2人が食事をするシーンでこんな場面があったことを思い出す。しかし、以前うっかりやって恥ずかしい事態になった事をディエゴは忘れていない。さりげなく遠慮の意思を示し、コーヒーを口元へ運ぶ。
「……私達もロマンチックになれるかなぁと思いました」
ハロルドの発言に思わず咳き込むディエゴ。心配するハロルドに大丈夫だと手で示し、呼吸を整える。ようやく落ち着いたところでディエゴはハロルドを見る。その視線にどうしたのか、と尋ねるハロルド。ディエゴはそれに対して、今日は普段よりもよく喋っている、と伝えた。ハロルドはそんなことはないと思うんですが、と不思議そうな顔をする。自分で気付かないほど話すことに夢中になっているのか、とディエゴは改めてコーヒーを楽しみつつ思った。それと同時に、今日は映画と小説の話に満ちた日になるだろうと確信ともいえる予感を抱いた。
●続く日常
今日はタブロス市から南東に進んだ、とある町での出来事。それはきっとありふれた日常。けれどこの日常は続き、その日常の中に生まれる小さな特別が、きっとこれからも積み重なっていくことだろう。
依頼結果:成功
MVP:
エピソード情報 |
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マスター | 星織遥 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | ハートフル |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 03月30日 |
出発日 | 04月07日 00:00 |
予定納品日 | 04月17日 |
参加者
会議室
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2015/04/06-18:14
おす。空歌・ラトゥリーの精霊、鏡ミチルだ。
いい女いっぱいなのに、なぜ俺の隣にはちっこいのが…
ともかく、プラン提出完了だぜ。
映画館と喫茶店に行く予定だ。どこかで見かけたらよろしく頼むぜ。
んじゃ、またな。 -
2015/04/05-15:26
初めまして、ツェリシャです。
過ごすのに丁度いい時期になりましたね。
よろしくお願いします。 -
2015/04/03-22:43
はろはろ~初めまして!セララ君と可愛い羽海ちゃんだよ~
暖かくなって良いデート日和になったね~うん、楽しみだ。
よろしくね! -
2015/04/03-21:57
こんばんわ。
ハロルドさんとは一度お会いしたわね。
のんびりとデート。楽しそうだわ。
よろしくお願いしますね。 -
2015/04/03-00:06
-
2015/04/02-23:02
はじめまして!そらか・らとぅりーです!
まだどこに行こうかなやみちゅうですが、きっとどこかで
みんなとすれちがう気がしますねっ!
よろしくおねがいします!!(ぺこ)