プロローグ
●その手に掴め!
「可愛いウサギちゃん達が困ってるんですぅ!」
舌ったらずなA.R.O.A職員が泣きそうな声を上げ。
「えっと、依頼はですね、可愛いうさぎちゃん……ブレジール・ラビットちゃん4家族です」
ブレジール・ラビットとは。
ショコランドの「忘れられた古都」近辺に住んでおり、身長は50cm~75cm程。
直立して歩き、靴やネクタイ、ベストなどを着たお洒落ウサギさん。
頭もよく、人の言葉も理解できる。
それ以外はごくごく一般的なウサギと変わらない。
「そんなウサギちゃん達のご家族が、オーガの瘴気に晒されて……狂暴化しているのです。今はこんな感じです」
どん、とA.R.O.A職員が自分で描いたイメージ図を皆に見せた。
毛は逆立ち、色もド紫。瞳は赤く、前歯は長い。
正直言うと、絵心なさ過ぎてどこまで本当かわかりかねる。
ネズミにも見えるが、尻尾はふんわりと丸い。
「でもですね、こんな小悪魔系ウサギちゃんになった彼らも、元に戻す方法があるんです!」
どん、とA.R.O.A職員が新たなパネルを皆に見せた。
『尻尾を握れ』
シンプルだ。
どうやら狂暴化ラビットの弱点は尻尾。ここを強く握れば力が抜けて意識を失うようだ。
そして一時間も寝れば元の姿に戻るらしい。
「で、ですね、今回の4家族はこちら!」
『ドライ家』
温厚なラビット一家。一人兎娘が狂暴化。娘は人参だーいすき!
『ゼクス家』
勉強家なラビット一家。一人息子が狂暴化。本当は遊びたい!と思っていたとか。
『アハト家』
旅芸人のラビット一家。お父さんが狂暴化。楽しそうなことだぁいすき!
『ノイン家』
洋服屋のラビット一家。お母さんが狂暴化。赤い色がだぁいすき!
どれも可愛らしいウサギだったころの写真だ。
今では「フシャアアアア!」状態なので人語を理解できるかも怪しい。
だが、きっと潜在的な好みなどは変わらないのでは?と職員は言う。
「ウサギちゃんと戦うのは心苦しいですが、なるだけ傷つけず尻尾を掴んで、助けてあげてください!」
敵の攻撃方法は電気ピリピリ!感電攻撃と、もう一つは鋭い前歯による噛みつき攻撃。
威力はそこまでではないが、厄介な相手だ。
「無事に家族を元に戻せたら、各家族がお礼をしたいそうですよ!あ、あと……尻尾握った時の触り心地、後で教えてくださいね」
なんでだか頬を染める職員だった。
解説
●流れ
それぞれの狂暴化ラビットと戦う!(他ウィンクルムさんと連携できません、ごめんね!)
家族救出!
眠るウサちゃんを赤子のように抱えながら各お家へ!
お礼のアフタヌーンティー楽しもうぜ!
戦闘もお茶も、完全個別になる予定です。
でも相談は好きなだけどうぞ!どうぞ!
●尻尾を掴め
敵の攻撃方法は『電気ビリビリ』『前歯攻撃』の二種類
ゴム手袋、ゴムカッパ貸し出し可能。
ただし敵の前歯攻撃で破れる可能性があります。
兎の気を惹くための道具や荒縄などもある程度貸し出せます。
が、あまりに特殊なものはマスタリングの可能性ありますよ。
また、感電は三回喰らうと15分ほど動けなくなるのでご注意を!
トランスも可能です。
ただ狂暴ウサギが深い傷を負うと任務失敗ですぞ。
【注意】
担当家庭の振り分け
一番目に挨拶した人『ドライ家』
二番目に挨拶した人『ゼクス家』
三番目に挨拶した人『アハト家』
四番目に挨拶した人『ノイン家』
にてお願いします。
参加者同士の同意があれば交換もOK!ですっ。
参加人数が満たない場合でもモブウィンクルムが助けると思うのでお気になさらず!
●アフタヌーンティー
各ウィンクルムのみの個別です。ウサちゃん達は提供後、席をはずします。
アフタヌーンティー三段トレーに2人分載ったものです。
(神人、精霊さん同じメニューだよ!)
一口サンドイッチの段、スコーン&ジャムの段、プチケーキ数種類の段
紅茶は様々な種類あり。珈琲もあります
各ウサギ家庭で違うものが振舞われます。
食べ物の好みや苦手、紅茶の好み等がある場合教えてください
何もなければ適当に提供しますっ
アフタヌーンティー、文字数食うので「AT」表記推奨ですよ!
ゲームマスターより
アフタヌーンティーで画像検索してニヤニヤする上澤そらです。こんにちは!
苺溢れる季節になってまいりましたな!
ホワイトデーっぽいシナリオ出したい!!でもウサギの尻尾も掴みたい…!!
その結果こんなプロローグになりましたとさ。
ハピよりのアドです。難易度はとてもとても簡単です。
初心者様も中級者様も上級者様も、どうぞお気軽にぜひ!ぜひ!
参加者も兎の格好にさせていただこうかと思ったけど、流石に自粛したよ!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
羽瀬川 千代(ラセルタ=ブラドッツ)
兎さんの危機を見過ごすなんて出来ない それに心配しているご家族を、早く安心させてあげたいから ゴム手袋・カッパを着用 彼が囮役をする間に兎さんの背後へ回り込む 好機が巡ってくるまで身を屈めて待機 (きっと上手くいく…信じて待つよ 発砲を合図に飛び出し尻尾を掴みに掛かる 緊急時はクリアライトで兎さんの注意を逸らす 救急セットを持ち込み簡易的に兎さんの怪我が無いか確認(※医学 走り回って疲れたでしょう、俺が抱いて歩くよ …今のは凄く語弊がある言い方だよ、ね?(照 安心したからかな、温かい紅茶が沁みる(ほう …正直、助けるのに夢中だったからあんまり覚えてなくて でもね、折角なら兎さんが元気な時にもふもふ出来たらなぁって思うよ |
アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
ドライ家担当 ◆任務 ゴム合羽手袋の上から白兎パーカー装備 「合羽だけでは創傷に弱いからな」 フードも被る 沢山の人参を餌に俺が囮、ランスがバック挟撃 娘さんの名を呼びつつ人参チラチラ 突っ込んでくるのを逃がさぬよう、両手で抱きつつバックステップで突撃の衝撃を緩和 首を切られないように胸部で抱えるよう細心の注意 そこをランスが握る 「名付けて”もふっとキャッチ作戦”だ」 そっと抱っこして運ぼう 手袋外して撫で撫でしたい ああ…もふもふだ 可愛いな 柔らかい… ◆茶会 「俺はコーヒー。ブラックで」 兎の娘さんも良かったらどうぞ 悪い夢だったんだと安心させてあげたい *無茶苦茶可愛がる、菓子もあげる ば…バカ 何言ってんだ; 拗ねるなよ(ぽふ |
セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
ゼクス家のガリ勉ウサオ君がオレ達の相手だな! 勉強ばかりで遊ばないとストレスが溜まるからな。 「しっぽ掴み鬼ごっこしようぜ!」と遊びに誘う。 ルールは簡単、しっぽ掴まれたら負けだ。 オレ達もしっぽアリな装備で参上! オレはキュートなうさぎちゃんを意識して装備整えた。 「ママに代わってお仕置きだ・ゾ☆」キラッ☆ポーズ。 鬼ごっこな要領で行くぞ! ほら、ラキア、追いかけるぞっ! 挟みうちにしてしっぽぎゅっと握るぜ。もふもふっと。 運動の後のお茶は美味しいぜ。 サンドイッチもぐもぐ。 何でも美味しく食べるぞ。 人参ケーキも喜んで食べる。 「うさぎ相手だから友達って思ってもらえるようにうさぎコスにしたんだ」と笑顔。楽しかったな! |
萌葱(蘇芳)
手袋、カッパ2人分借用 液体洗剤とストロー持参 あ、これ? シャボン玉、楽しいと思うんだけど ふわふわ浮いている所に兎のお父さん来てくれないかなーって って事で兎さんの注意引くからその隙に尻尾握ってよ トランスはしなくて良いのかな? いや、そこ全力で拒否しなくても(笑) 挨拶だと思えば良いじゃない 兎の目の前でシャボン玉飛ばす 攻撃を受けないよう兎の動きに注意、一定の距離を保つ 蘇芳に攻撃が向きそうな時は声を出して伝える 蘇芳が行動しやすいように、シャボン玉は散らばらないよう吹く場所、風向きに注意する AT 蘇芳は珈琲、ブラックね 甘い物苦手ならケーキ僕が受け持とうか?(甘党) なんだ、残念 そういえば尻尾はやっぱりふかふか? |
●ドライ家 ~白兎と黒兎
温厚なラビット一家であるドライ家。その長女であるウサ子が狂暴化してしまった。
彼女を元の可愛い兎に戻すために派遣されたのはアキ・セイジとヴェルトール・ランス。
セイジはゴム合羽とゴム手袋を着用し、更にその上に白兎のパーカー着用中。
「合羽だけでは創傷に弱いからな」
そう言いつつ、フードも被るセイジ。赤い瞳を持つ彼はすっかり可愛いウサちゃんだ。
そんなセイジの姿に萌え萌えキュンしているのは彼の精霊、狼系テイルスのランス。
セイジとお揃いの型、しかし此方は黒兎仕様のパーカーを着こむ。
「セイジ、兎のコスプレしたかったわけじゃないんだ」
ランスの言葉に、セイジはゴム合羽を裂けさせぬ為と兎を傷つけないためだと説明する。
「なら、狼でもいいじゃん」
己の尻尾をフリフリするランスに
「それだと絵的に悪役になってしまうだろ」
咄嗟に口を出た政治の言葉に。
「……狼って悪役か……」
「……御免」
イジけるランス。仕方ないよね、男は狼。
そんなやりとりをしつつ、ウサ子の出現地域に2人は向かう。
セイジは手にたっくさんの人参。彼女の大好物だ。
「お、いた」
ランスが『フシャアアアア!!』と飛び跳ねるウサ子を見つけ、セイジに目配せする。
セイジは手に持つ人参をチラつかせながらウサ子の名を呼んだ。
「フシャアアア!(人参よこしぇ!)」
ピョンピョコとウサ子がセイジへと近付いてくる。
そのタイミングを見計らい、ウサ子へ人参をてぃっ!と投げてみればウサ子は勢いよく飛びつき、ムシャムシャと夢中に人参を齧った。
その隙にランスはウサ子の背に回り込むように移動する。
ウサ子が食べ終わりそうなのを見計らって、セイジは
「ほーら、もう一本あるぞ」
彼女に人参をチラつかせた。すると
「フシャア!(もっとよこしぇ!)」
とウサ子がセイジが手に持つ人参目がけて飛び込んできた。
鋭い歯を持つウサ子の突撃をバックステップで衝撃を緩和させ。セイジはガッシリと彼女の身を捕まえた。
ウサ子の歯は人参を捉える。
「行くぜっ!」
とランスがセイジに……ではなく、ウサ子の尻尾目掛けて飛び込み。ムギュっ!とウサ子の尻尾を掴んだ。その感触に
(あ、なんかキュンときた……)
そんなトキメキを覚える思うランス。ウサ子はみるみる力が弱まり、クタッと力なくセイジの身に身体を預けた。
スヤスヤと寝息が聞こえ、2人は安堵する。
「もふっとキャッチ作戦、大成功だな」
セイジの言葉にランスが笑みを浮かべた。
●ゼクス家 ~よく遊び、良く学べ
「フシャアアアアアアア!(もう勉強なんてたくさんだあああ!)」
草原で鳴き叫ぶのはグルグル眼鏡をかけたゼクス家の兎息子、ウサ雄。
小さいリスやら無駄に追い回して八つ当たりを始める。
「待て、ウサ雄くん!オレ達が相手だ!」
誰だ!?とばりにウサ雄が足を止め、眼鏡をクイクイッ。
そこにいたのは兎をイメージした可愛い耳やら触り心地良さそうなボディやハンドを着用し、笑顔で決めポーズをとるセイリュー・グラシアの姿が……!
可愛いけれど、彼はれっきとした男子だ。
その隣には、セイリュー以上に女性らしいポジションだが極普通の依頼用装備にゴム手袋とコートを着用した彼の精霊、ラキア・ジェイドバインが。
若干顔が引きつっている気もするがそこにはノータッチでセイリューが言葉を続ける。
「勉強ばかりでストレスが溜まるのはわかる!だが!だからといって暴れていいなんてことはない!」
セイリューが装備した武器、ムーンステッキをズビシッ!とウサ男くんに向ければ、彼はたじろいだ。そりゃそうだよね。
「小動物までいじめちゃう悪い子は!ママに代わってぇぇぇ、おっ仕置きだ・ゾ☆」
キラッ☆とまるで光が放ったかのようにポージングするセイリュー。
(遠い……なんだかセイリューが遠いよ……)
なんでだか視界が滲むラキアであった。
「ふ、ふしゃあああああ!!(何、この人達なんなの!?)」
動揺しつつ叫び声を上げるウサ雄。そんな彼にセイリューは己の兎装備の尻尾をフリフリと見せつける。
「尻尾掴みごっこしようぜ!ルールは簡単、尻尾掴まれたら負けだ!」
セイリューの言葉にウサ雄は
「フシャアアアアアア!!!!(ちょっと何言ってるかわからないけど、その尻尾食いちぎってみせる!)」
ぴょんぴょこぴょんぴょこセイリューを追いかける。
「ほーら、ほーら、こっちだぞー」
ひらひらと蝶のように舞うセイリュー。
ウサ雄くん、残念。この人こんなだけど超強いんだ。
とりあえずウサ雄のグルグル眼鏡にはセイリューの姿しか映ってないらしい。ラキアはとりあえずウサ雄を挟み撃ちするために追う。
(なんでセイリューはこんなにノリノリなんだ……!?)
兎衣装で笑顔でノリノリなセイリュー。
正直、すぐに捕まえられそうな感じなのだが、ラキアがウサ雄の尻尾を掴もうとするとセイリューが遊び足りなさそうな表情を向けるわけで。
(ラビットを捕まえる口実で、絶対に遊んでる……!)
いい汗流すウサ雄とセイリュー。
彼らの追いかけっこはなっかなか終わらなかった。
●アハト家 ~シャボンと企業戦士
普段はサラリーマンとして紛争する蘇芳、流石に今日はスーツ姿ではない。
ファータのシンクロサモナーである彼は軽めのローブに短刀「蝉時雨」を携えている。
パパ兎対策にゴム合羽、ゴム手袋もバッチリだ。
そんな彼の護るべき大学生神人、萌葱。
萌葱も蘇芳同様、装備の上にゴム手袋にゴム合羽を着用している。しかし。
「……何を持ってきたんだ?」
萌葱の手には可愛いプラスチック容器に入った透明な液体と、先が花のように切られているいるストローが。
「あ、これ?懐かしくない?シャボン玉、楽しいと思うんだけど」
そう言うと蘇芳はストローに液体洗剤をつけ、ふぅっと息を吹き込んだ。
大小様々なシャボン玉があたりを流れていく。その姿は幻想的で美しい。
「ふわふわ浮いている所に、兎のお父さん来てくれないかなーって」
楽しいもの好きなお父さんなら、きっと反応してくれるはずだと萌葱はいつものにこにこ笑顔の目尻を更に落とす。
(……危ないことはさせたくないが、1人ではどうにもならないことは確か、か)
蘇芳がスクエア型の銀縁眼鏡をクイッと押し上げ
「あまり兎に近づき過ぎないように」
そう伝えれば、シャボン玉に見入る萌葱が振り返った。
和やかに遊んでいるようで、風向きの確認をしつつ
「はーい。ところでさ、トランスはしなくていいのかな?」
「トランス!?」
のほほんとした笑顔で言われ、蘇芳はたじろぐ。
「兎に怪我をさせるわけには行かないってことはジョブスキルも使わない、ならば必要ないだろう」
正論を述べているはずなのに、どこか焦っているようにも感じられるのは早口で喋ったせいか。
「いや、そこ全力で否定しなくても」
萌葱が笑うのは、彼の動揺の真の理由に気付いているからだろう。
(頬にキスだとか……ってか、トランスの方法どうにかならんのか)
ふぅ、と溜息をつく蘇芳に
「挨拶だと思えばいいじゃない」
ぽそりと呟く萌葱だった。
「ふしゃあああああ!!(こんな生活、もうたくさんだあああ!!)」
遠くから雄叫びが聞こえる。
見ればシルクハットを被ったでっぷりとした狂暴化兎。あれがお父さん兎だろうと2人は確信する。
少しづつ距離を縮め、先程の試しシャボンで風向きを確認した萌葱が一気にシャボンを放出する。
(シャボーーーン、スプレーーー!)
ふぅーーー!と勢いよく飛んでくるシャボン玉。兎パパは何事か!?とぴょこぴょこ飛び跳ね。
このシャボン玉が上手く兎パパの気を逸らすことに成功し、蘇芳は容易に兎パパの後ろへ回り込むことを成功した。
(慎重に……)
失敗するわけにはいかない、とジリジリと距離を詰める蘇芳。
そんな蘇芳の動きを見つつ、萌葱はシャボン玉を巧みに吹き、兎パパを操った。
「蘇芳、今っ」
上空に向かってしゃぼん玉を吹けば、兎パパがそのシャボンに向かって大きくジャンプした。
「よしっ」
蘇芳は落ちてくる兎パパをガッシリとキャッチすると共に、即座に尻尾を掴むのだった。
●ノイン家 ~赤ずきんちゃん
草原に吹く風は心地よい。
一面が緑の中で、一際目立つ赤。
堂々とした佇まいで不敵な笑みを見せるのはディアボロのラセルタ=ブラドッツ。俺様気質でありながらも気品を感じさせるのは彼の生まれ持ってのものだろう。
だが、今は。
ゴムカッパの上に赤色のケープを羽織っている。
スッポリとフードも被っている。ご丁寧に角用の穴が空いている、素敵ディアボロ仕様ケープだ。
「ラセルタさん、頼りにしてるね」
そんなラセルタに柔らかな笑みを浮かべるのはラセルタ頭巾ちゃんの神人、羽瀬川 千代。
彼もゴムカッパとゴム手袋を着用だ。手に持つのはクリアライト。攻撃を仕掛ける気はなく、目を眩ませる道具だ。
兎さんの危機を見過ごす事なんてできない、と気合十分な千代。
「それに、心配しているご家族を早く安心させてあげたいから」
「そうだな。早く終わらせて優雅な茶を楽しむとしようか」
ラセルタはそう言うと、赤いケープをファサッ!とたなびかせるのだった。
(喋らない動物は不得意だが、千代に頼られるならば悪くない)
そう思いつつラセルタはママ兎へと近付いていく。
「フシャアアアアアアア!!!(たまには家族サービスしなさいよねぇぇ!)」
日頃の鬱憤なのか荒ぶるママ兎。赤をはためかせ動くラセルタにすぐに気づき、突進を仕掛ける。
「ふん」
華麗にケープを捌き、ママ兎の突進をかわすラセルタ。その姿はまるで闘牛士のよう。
赤色と美男子にママ兎は夢中なようで、懸命にラセルタを追いかける。
(赤頭巾を追う兎か、まるでお伽話のシチュエーションだな……)
視界に入る千代の動きもしっかりと見れる程に、ラセルタの動きには余裕がある。
「どれ、その自慢の歯で俺様の身体に傷の一つでも付けてみろ」
笑みを浮かべ、挑発するように妖しく笑う。
「フシャアアアアアア!!(有閑マダム舐めんじゃないわよぉおおお!)」
しかしラセルタの動きに必死についていくばかりで、上手く攻撃もできないでいるママ兎。
そんな彼らの追いかけっこを千代は身を屈め待機する。
(きっと上手くいく…信じて待つよ)
「口ほどにもない。そろそろ遊びは終わりだ」
ママ兎の疲労を感じたラセルタは千代の動きやすい位置まで兎を誘導し、ケープをはずし投げつけた。更に頭上に向けて発砲する。
大きな音にビクッ!!と体を硬直させる兎。
「失礼するねっ」
そんなママ兎に飛びかかり、千代は尻尾を難なく掴んだのだった。
●ドライ家 ~兎ジェラスィー
ウサ子はスヤスヤと、セイジの腕の中で寝息を立てている。
それを羨ましく見るのはランス。
狂暴化し毛色も変わっていた兎だったが、セイジが柔らかく抱っこし家族の元へ帰す途中でどんどんと元のウサギへと戻っていった。
「……可愛いな」
手袋を外した手で、セイジはそっと兎を撫でる。スヤスヤ寝息を立てる兎に微笑むランス。
「あぁ、もふもふだ……柔らかい……」
優しい表情を見せるセイジ。ぷくぅっと頬を膨らますランスの表情には気づかなかった。
無事にウサ子を家族の元へ返せば、お礼にアフタヌーンティーが振舞われた。
三段トレーには軽食やスコーン、ケーキが載る。
セイジにはブラックコーヒー。ランスには温かな蜂蜜紅茶が用意された。
「ん、美味い」
そう言い、パクパクと勢いよくトレーを空にしていくランス。
(相変わらずよく食べるな)
とセイジは思うも、それはどこかやけ食いにも似た雰囲気で。
「ランス、俺の分も食べるか」
そうセイジが提案しようとした時、先程助けたウサ子が大量におかわりを持ってやってきた。
そしてペコリ、と二人に頭を下げる。
「おや、こんなにいただいていいのかい?よかったな、ランス」
トレーを受け取りランスへと渡せば、サンキュとランスが笑みを見せた。だが。
「ウサ子さんもよかったらどうぞ」
セイジはそう笑み、ウサ子にもお菓子を勧める。そんなそんな、と手を振るウサ子。
「悪い夢を見てたんだ、もう大丈夫」
セイジはウサ子の頭を撫でた。
すると、ジトーーーーッとした視線がセイジに突き刺さる。
(兎は可愛い。それは認める。でも、ほっとかれるとなんかこう、さ……)
唇を尖らせるランスは意を決し
「なぁ……セイジは兎が良いのかよ……」
拗ねる狼さん。大きい身体がいつもより小さく見える。
「ば、馬鹿。何言ってんだ」
事の重大さに気づくセイジ。拗ねるなよ、とランスの頭をぽふぽふと撫でる。
「べっつに、拗ねてないしぃー」
触ってもらえた嬉しさを隠し、尚も唇を尖らせるランス。
そんな2人を見て、ウサ子は楽しそうに微笑むのだった。
その後、ランスは依頼を説明した職員の元へ。
「ほら、知りたがってたろ?」
落ちていた毛糸で作った、もふもふ玉を手渡した。
「こんな感触だったぜ。ま、俺の尻尾には敵わないけどな~♪」
あの後、思う存分セイジにもふられたランス。鼻歌交じり、上機嫌で去っていくのであった。
●ゼクス家 ~腹ペコ
追いかけっこを楽しんだ後、へばったウサ雄の尻尾を見事掴んだセイリューとラキア。
セイリューがウサ雄を背負い帰り道を行けば、家へ到着する頃にはすっかり元の可愛いウサギへと戻る。
その姿に2人は安堵し、家族へと引き渡した。
そして2人はゼクス家でお礼のアフタヌーンティーをいただくことに。
三段トレーに用意されたスコーンやサンドイッチにケーキ。
「運動の後のお茶は美味しいぜ」
セイリューがゴクゴクと用意されたお茶を飲み干せば、セイリューがお代りを注ぐ。
ダージリンの良い香りが辺りを包み。
「走りまわってお腹すいちゃったよ」
お代りを注ぎたした後、ラキアはサンドイッチをつまんだ。サーモンとクリームチーズの王道の組み合わせに目を細めるラキア。
レタスとローストビーフのサンドイッチをモリモリと頬張るセイリューの食べっぷりに笑顔を向けながら
「君の作戦って本当に体力勝負だね」
紅茶の香りを存分に楽しみながら、ほふぅと息をつく。そんなラキアの視線に気づき
「美味しいな!ん?ラキアどうした?苦手な食べ物でもあるのか?」
「あ、そんなことないよ。大丈夫、美味しい」
「ほら、この人参ケーキもすっごく美味しいぜ!」
勧められ、オレンジ色をしたケーキを口に運べば、自然な甘みが広がる。
「へぇ、流石うさぎさん。人参使いが上手だね」
そう言いラキアは目の前の大きな兎さんの耳に視線を。
「うさぎ相手だから、友達って思って貰えるようにうさぎコスにしたんだ」
ニカッとセイリューが笑った。
「尻尾はやっぱりもふもふだったし……楽しかったな!」
スコーンをもりもり食べつつ、尻尾を掴んだ際のもふもふ感を想いだし手をワキャワキャ動かすセイリュー。
「どんな状況でも楽しむこと、息抜きも大事だね」
ラキアは家の外で走り回る眼鏡うさぎの姿に視線をやり、微笑んだ。
「そうだな!たまにはラキアも変わった服装してみるといい」
「遠慮しとく……」
しばらくはセイリューの決めポーズが頭から離れることがなさそうなラキアだった。
●アハト家 ~たまにはゆっくり
蘇芳がパパ兎を抱え、依頼主の家へと帰る。着く頃にはすっかり元の可愛いパパ兎へと戻っていた。
そしてお礼のアフタヌーンティーのトレーと共にドリンクが供される。
互いのお願いしたドリンクを見比べれば。
「蘇芳はブラックコーヒーだね」
砂糖もミルクにも手を付けない蘇芳に、彼らしいと萌葱は思う。
そして萌葱の手には乳白色をしたロイヤルミルクティー。お砂糖をいくらか入れ
「ふぁ、美味しい」
カップに口を付け、幸せそうな笑顔を見せる萌葱。
「あんたのミルクティーは甘そうだな」
追加で砂糖を投入する萌葱に蘇芳はつい呟いた。
「あれ?蘇芳、甘いもの苦手ならケーキ僕が受け持とうか?」
心なしか目がキラリと光っているようにも感じられる。
「甘いものが苦手なわけじゃない。飲み物は甘くない方が好きなだけだ」
「なんだ、残念」
本気とも冗談ともつかないような笑みを向ける萌葱に、どれだけ甘いものが好きなんだ、と蘇芳は心の中で呟いた。
スコーンにクロテッドクリームを付け、美味しそうに頬張る萌葱。
優雅な所作が似合う、と蘇芳は思う。
日頃仕事に追われる蘇芳としては、このようにゆっくりと食事をとることがままならないことが多い。ついつい急いで食べようとするのを自制する、悲しきサラリーマンの性。
穏やかな時間が過ぎるも、どうしても残してきた会社の仕事がチラつき。
「ね。ねーってば、蘇芳」
「……あ、な、なんだ?」
ついつい明日の会議のことに意識が飛んでいた。
「もう、目を開けたまま寝てるのかと思ったよ。そういえば尻尾はやっぱりふかふか?」
「手触り?」
勿論、と笑みを返す萌葱。
「触りそこねちゃったからさ。ふかふかなのかな、って」
「……まぁ、そんなところだ」
そうか、兎にあまり近づかないように、という約束事を萌葱は守ったのか……と蘇芳は思った。
「まぁ、また触れる機会もあるだろ」
ブラックコーヒーをすすり、プチケーキをパクつく。
「そうだね、そうだといいなぁ」
相変わらず笑顔を崩さず、萌葱はニッコリと笑むのだった。そして彼の視線は蘇芳のトレーにまだ残る、プチシュークリームに注がれ。
「…………食うか?」
「やったぁ」
根負けした蘇芳さんであった。
●ノイン家 ~赤ずきんちゃん
救急セットを持ち込み、簡易的に怪我がないかママ兎を調べる千代。
特に目立った外傷もなく、千代とラセルタは安堵の笑みを浮かべた。スヤスヤと眠るママ兎をラセルタの赤いケープで包んでやり。
「ラセルタさん、走り回って疲れたでしょう。俺が抱いて歩くよ」
そう言い、千代が兎を抱きかかえ。優しい眼差しを眠る兎に注ぐ。
家路まで歩く途中も兎を柔らかく撫で、慈しむ千代に。
(なんだ、このほんのり沸き起こる気持ちは……!?)
湧き上がる何とも言えない気持ちをラセルタは抑え。
「……そうして見ていると、良い母親になりそうだな」
平静を装い、頷く。
「……母!?……今のは凄く語弊がある言い方だよ、ね?」
一瞬にして色々な妄想が駆け巡り、頬を赤らめる千代だった。
無事にママ兎を送り届ければ、お礼としてアフタヌーンティーが振舞われた。
暖かい紅茶が入ったカップを千代は両手で包み、カップに口を付ければ、ほぅと息をつく。
「安心したからかな、暖かい紅茶が沁みるね」
それはラセルタも同感の様で。
「任務後の茶は格別だな」
紅茶を味わい、スコーンへと手を伸ばす。焼きたてだったようで、手に取るとまだ温かみを感じる。
ナッツ入りの生地を契り、頬張れば香ばしさと生地の甘みが口の中で広がった。
「美味い」
ラセルタから出た言葉に、千代が表情をやわらげた。
その千代の表情に、先程の兎を抱きかかえる千代を思い出し
「で、兎の尻尾はどうだったのだ」
「……あ」
千代が思い出したように口をポカンと開けた。
「正直、助けるのに夢中だったから……」
抱きかかえた際の撫で心地は覚えてるのだけど……と千代は腕組みをしながら思い出そうとしてみるが。
「あんまりよく覚えてないや」
苦笑する千代。
「……でもね、折角なら兎さんが元気な時にもふもふできたらなぁ、って思うよ」
抹茶ケーキをパクリと口に頬り、千代が笑った。
お前らしい……とラセルタは口角を上げ
「代わりに触れても構わんぞ?」
隣の席にいる千代に身体を寄せ、彼の目元で自身のディアボロの尻尾をチロチロと揺らしてみれば。
「ちょ、ちょっとこんなところでそんな、密着して……」
妖艶に微笑むラセルタに頬を染め、身体を硬直させる千代だった。
依頼結果:大成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 上澤そら |
エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | イベント |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 4 / 2 ~ 4 |
報酬 | 通常 |
リリース日 | 03月09日 |
出発日 | 03月15日 00:00 |
予定納品日 | 03月25日 |
参加者
- 羽瀬川 千代(ラセルタ=ブラドッツ)
- アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
- セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
- 萌葱(蘇芳)
会議室
-
2015/03/13-01:16
こんばんは、羽瀬川千代とパートナーのラセルタさんです。
俺たちはノイン家のお母さんラビットの救出、ですね。
それぞれの任務となりますが、皆様どうぞ宜しくお願い致します。 -
2015/03/12-05:36
新米ウィンクルムの萌葱と蘇芳です
えっと、僕たちは3番目だから、『アハト家』のお父さんの担当だね
皆さんよろしくお願いします! -
2015/03/12-00:22
-
2015/03/12-00:20