【灯火】マーブル★マーブル(上澤そら マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ


 幸運のランプを片手に、貴方たちはショコランドの草原に赴いた。
 何もない原っぱ……であったはずなのに、じわりじわり薄ぼんやりと周りに景色が生まれ始める。

 気付けば、大小様々なテントが立ち並んでいた。往来を歩く人も見える。
 テントの中は飲食店や雑貨店。薄明りのせいか、どこも妖しい雰囲気が立ち込めている。
 一番奥の大きなテントはサアカス小屋で、嬌声が聞こえるようだ。
 
 貴方たちは一つの小屋の前で、怪しげな老婆に声をかけられた。
 深い紫色のローブをすっぽりと纏い、その表情はハッキリとは見えない。
「お二人さん、チョコレートはいかがかね……」
 筋張った手が、軒先の包みを指せば、そこにはマーブル模様のチョコレートの数々。
 茶色や白、ピンクや緑。
 星型のやや大きめなチョコレートは二色で構成され、マーブル模様をしている。

「これを食べれば、きっと誰かを幸せにすることができる……かもしれないねぇ」
 ローブから覗く口元がニヤリ、と笑うのが見えた。

 せっかくだから、と貴方たちはそのチョコレートをそれぞれ購入し、ベンチに座る。
 チョコレートを齧り、飲み込めば。

●変身
 これはどういうことだ、とテントの老婆に詰め寄る。
「は、ははは、安心しなされ。夜が明ければ……朝日が見えれば元に戻る。せっかくだからこのひと時を楽しんではいかがかの」
 まったく悪びれる様子もなく老婆は笑った。

 こんな姿でどうやって幸せを集め、ランプに火を灯そうか。

 あたりを見回せば、暗がりにある、2人きりになれるベンチ。
 小さなアクセサリー類を売る雑貨屋。
 軽食を売るお店。
 怪しげな写真館、サアカス小屋などなどなど。
 
 朝になるまでどう過ごそう、と思う二人だった。

解説

●流れ
夜のバザーに来た! チョコ食べた! 変身! とりあえずバザー楽しもう!

変身後からの描写になる予定ですが、プランによっては変身前とか変身後も。
お買い物OKですがアイテム化されませんのでご了承ください。
プロローグ以外の場所で過ごすのもOKですが、突飛だとマスタリング入る可能性も……!

●ハイパーダイスタイム
挨拶時に【A、B共に6面ダイス】を振ってください。
以下の表に当てはまる姿に変身します。

精霊分も必要なので【挨拶を2度】していただくことになります。
(2度振った結果を神人、精霊、どちらに割り振っても構いません)

【A】
1【薄茶】女体化(顔かたちPL様の好きなもので。容姿詳細教えてね!)
2【白】6歳ぐらいの頃の姿(容姿詳細教えてね!)
3【桃】透明になる(着てる服だけ見える)
4【緑】パートナーの容姿になる(性格、口調などは元のまま)
5【黒】小人化(掌に乗るサイズ)
6【焦茶】女体化(基本は変わらず、女性ぽくなる)

【B】
1【茶】いつもの服装(自分の体形にぴったりになるように変化。詳細教えてね!)
2【青】パートナーの服装(自分の体形にぴったりになるように変化。詳細教えてね!)
3【金】ドレスアップ(詳細教えてね!お任せ可!)
4【橙】学生服(学ラン、ブレザー、形状詳細教えてね!)
5【銀】バニー服(GMの趣味だよ!)
6【赤】水着エプロン姿(形状詳細教えてね!お任せ可!寒くないよ!)

数字の後ろはチョコの色ですが気にしないでよきかと!
例:【A:2 B:4】 → 子供の頃の姿で学生服
  【A:6 B:1】 → 基本は変わらぬ女体化で、いつもの服
どちらを神人、精霊に振り当ててもOK。服装等、詳細ない場合お任せになります。

テンプレ
【A: B: 】

●PL情報
 チョコを食べて変身姿を見たことで老婆が小さな幸せ感じているので
 無理に幸せ探しせず、お互いの姿をいじり倒すプランでもOKです!

 チョコ代、一組様200Jrいただきます。

ゲームマスターより

お世話になっております、上澤そらです。
ダイスを使った強制お着替え第二弾。
解説長くて申し訳ございません。

裸エプロンは敷居が高かった……!けど、自分から脱いでもいいんやで(下衆な笑いで)
そしてカオスな流れになることは請け合いですが、物凄い格好で物凄いシリアスしてもいいのよ!
変身後の行動はお任せです。

お付き合いしてくださる勇者を募集しております。
B面に5がきます様に!B面に5がきますように!!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

柊崎 直香(ゼク=ファル)

  【A:3 B:5】

これは予想外。ゼクが女優さんのようだ
って僕の手が無い?
服装も見覚えないし……兎耳?
に尻尾。バニーさんだね

透明化も服もさほど驚きはしないけど
ゼクが混乱してて面白……憐れ
喋らなければ僕って認識できないか
触るのはいいけど頭の上の手は背丈測ってる?
やめたまえ(ぽかぽか)

一切喋らず。
ゼクの手を引いてバザーを彷徨おう
慣れない服気遣いエスコート。
僕、女性には優しいんだから。
僕が誰でもいいじゃない

サアカス小屋に引っ張り込んで、ほら見るのはあっち。
指差して。けれど僕は横目でゼクを窺って。
うーん、なかなかの美人さんだ
お礼?
僕の姿見えていたらそんな言葉も表情も、なかったろうね
一夜だけの夢に相応しい


セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  チョコを食ったら縮んだだとぉ!
(しばし考えて)
この体だとお子様向けお菓子を美味しく食べられるな!
「よし、屋台系ジャンクフード満喫しようぜ!」
ってラキア見たら。
「わーお。そっくりじゃん、オレ達」
どうしよう、笑い止まんねぇ。

オレの格好は軍服で礼装だ!
サーベルに飾緒、そしてサッシュだ、かっちょいー!
なんか勲章も付いててオレすげー!
ラキアに「写真撮っとこーぜ!」って写真館に行く。
手を繋いで嬉しい。

途中にある屋台の食べ物が超誘惑だぜ。
ラキアに「いか焼き食べよー。半分こしよー」とねだり買ってもらう。
わーい。
一口齧り、ラキアにも「あーん」と笑顔で差し出す。「しょーがないなー」とか言いつつ齧るラキアって素直。



蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
  【A:6 B:5】

女の身体、しかもバニー服…!
暗がりにある2人きりになれるベンチで途方に暮れる
この格好でウロウロしたくない

って、フィン…案外気が利くんだな(感動

フィンが見つけてきてくれた飲食店の中へ
本当だ、敷居があって個室みたいだ
これなら…
ここでお茶しながらのんびり朝を待とう

女体化の感想?
胸が重いし、力は入らないし…兎に角、早く元に戻りたい

そういうフィンは…
嘸かしモテただろ?

フィンの話を黙って聞いて、こう答える

それは、フィンが大事だからだろ
どうでも良い奴だったら、アイツ馬鹿な事してるなって、放っておくと思う
その方が自分にも得だろ?

別に俺は俺の思った事を言っただけ…って、調子に乗るな(引き剥がす


暁 千尋(ジルヴェール・シフォン)
  アドリブ歓迎

【A:6 B:2】
衣装:漢服(曲裾)+蓮の髪飾り

・・・いえ
ツッコミどころが多すぎて、どこから指摘すべきか悩んでました・・・
どうして先生はそんなに冷静でいられるんですか?馬鹿なんですか?
ていうか・・・先生、ですか?
(どうしてコレがアレになっちゃったんでしょうね

不調はありませんが、足元がスースーして落ち着かないです
あと胸が・・・
だ、駄目にきまってるじゃないですか!?

あぁもう・・・行きますよ
じっとしてるよりは気が紛れます
が、その格好で大丈夫ですか

人の視線が痛い・・・
なんでそう平気そうなんですか
・・・?あぁ、そうか
なにか違和感があると思ったら、口調がいつもと違うんだ

くっ・・・一枚だけですよ



●エプロン天使と漢服美女
 暁 千尋の掌に焦げ茶色と青色でマーブル模様を描いたチョコが乗っている。
 一方、千尋のパートナーであるジルヴェール・シフォンのチョコは、赤と白。 
「こっちは味の予想つくけど……チヒロちゃんのは何味かしらね?」
「食べてみましょうか」
 近くのベンチで2人がチョコを齧った。
「あら、美味しい!ホワイトチョコと苺ね。チヒロちゃんのは?」
 ジルヴェールが隣にいる千尋に声をかける……が、感じる違和感。
 彼の目に入るのは見覚えのある服装。
 そして千尋の顔が、遠い。
「チヒロちゃん?」
「先生……?」
「あら?ワタシの格好してるの!?しかも女性の身体?」
 驚くもジルヴェールはどこか楽しげだ。
 千尋の膨らんだ胸にマジマジとした視線を投げる。

 雰囲気はそのままに、はっきり女性化した千尋。
 元々整った顔立ちをした彼なのでまぁ違和感がない。
 服装は普段ジルヴェールが着こなしている漢服。袖下に余裕がある優雅な曲袖タイプだ。
 キャッキャするジルヴェールに、魂が抜けたような千尋。
 だがそれは己の姿のせいと言うよりはむしろ……。

 千尋は突然ベンチから立ち上がり、ジルヴェールの腕を無言で掴んだ。
「やだ、なぁに?」
 歩いて行く先には全身鏡。そこに2人の身体を映せば。
「……チヒロちゃん、大丈夫?」
 自分の身はともかく、千尋に心配そうに声をかけるジルヴェール。
「…………」
 項垂れる千尋。彼の髪に飾られた蓮の花飾りや簪がシャラリと音を鳴らし。
「チヒロちゃん?」
「……いえ。ツッコミどころが多すぎてどこから指摘すべきか悩んでました……」
 千尋は一度息を吸い、一気に。
「どうして先生はそんなに冷静でいられるんですか?馬鹿なんですか?ていうか……本当に先生ですか?」
 もはや半笑い、虚ろな瞳の千尋さん。
「失礼ね、私もこれは予想外だったわよ」
 鏡に映るジルヴェール……その姿はまさに天使と呼ぶに相応しい美少年。6歳程の姿となっていた。
 紫色の髪は現在とは違い短い。現在は優美な印象を与えるが、ジル少年はキリリと凛々しい。

 ――それだけなら。それだけならどれだけよかったことだろう。

 その天使が身に纏うものが……
「……先生は、昔からそういう趣味だったんですか……?」
 未だ目が虚ろってる千尋。
「やぁね。流石に当時はこんな趣味じゃなかったわよぉ……多分」
 千尋は改めて少年を直視した。
 細身の身体はサーフパンツを着用。
 だが、その上に……フリルのエプロン。真っ白な新婚さん向けフリルエプロン。
「……寒くないですか、先生」
 安心してください、特殊魔法加工だから寒くないヨ!
「大丈夫よ。ただ」
「ただ?」
「少なくともビキニじゃなくて良かったと思ってる……」
 同感です、と千尋が乳を揺らしつつ頷いた。

 そして2人は朝まで時間を潰すことになる。
 ベンチに隣り合い、千尋はジル少年の横顔を見つめた。
(どうしてコレがアレになっちゃったんでしょうね……)
 コレ=天使のような凛々しい美少年
 アレ=美しきオネェ
 千尋の視線を感じたジルヴェール。彼の想いを知ってか知らずか己の髪に触れ。
「こんな短い髪になったのは何年ぶりかな」
 ベンチから足をプランプラン。
「目線も低いし、落ち着かないというか……変な感じ」
 そう言って隣にいる千尋を見上げて笑う。
 無邪気な笑顔に不思議な感覚を覚えつつも。
「僕も足元がスースーして落ち着かないです……」
「そうかな?動きやすくない?」 
「あと、胸が……」
 重い。なぜ此処までたわわなんだ。
「そっか。そういえば今のチヒロちゃんには胸があるんだよね」
 流石に現在のジルヴェールは持っていないものだ。恐らく。
「……揉んでもいい?」
「だ、駄目にきまってるじゃないですか!?」
 ケチーと唇を尖らせるジル少年であった。

 そしてジル少年の「せっかくだから他も見てみたい」との言葉に、じっとしているよりは気が紛れるか、と思う千尋。
 千尋が少年の手を取り歩く。
「……その格好で大丈夫ですか?」
 心配する千尋だが、サアカス小屋もあるためか奇抜な服装をした人も少なくない。宙に浮く兎耳だとか。
(人の視線が痛い……)
 と内心思う千尋。そりゃあ華麗な美人さんだから仕方ない。しかし逆にジル少年は堂々としたもの。
「先生はなんで平気そうなんですか?」
「ん?堂々としていれば人の目なんて気にならないよ」
 ……それは現在の彼にも通じるのかも、と少し思う千尋。
「あぁ、そうか」
 千尋が手をポム、と叩いた。先程から感じていた気持ち。
「なにか違和感があると思ったら、口調がいつもと違うんだ」
 ジル少年は屈託なく笑った。
「そりゃそうだろう。この外見でこの格好で、更にオネェだったら本当にただの変人じゃないか」
 ……自覚はあるようだ。何故か安堵する千尋ちゃんだった。

 そしてジルヴェールが一つの小屋の前で足を止めた。その小屋は、写真館。
「あ!せっかくだし、写真撮ろう!」
「え!?嫌ですよ!」
 壮絶に拒絶する千尋に。
「……ダメ?」
 天使のような美少年が上目遣い。愛らしく上目遣い。
「くっ……一枚だけですよ……」
 そりゃあ陥落するよね!

 こうしてジルヴェールのアルバムに1枚の写真が加わった。
 なんだかんだ2人共、良い笑顔を見せていて。
(出来れば、今度は普通の服装で少年な先生に会いたいな……)
 千尋はこっそり呟いた。


●ダブル・セイリュー
 たった一口、チョコを齧っただけなのに。
 赤い髪を持つファータ、ラキア・ジェイドバインはニヨニヨとした笑みが止まらなかった。
「可愛いなぁ、可愛いなぁ」
 穏やかな表情が更に微笑みを増し、その緑色の瞳はキラキラと輝く。
 ラキアの神人、セイリュー・グラシア。彼は6歳児程の少年の姿へと変身していた。
 現在とそう変わらぬ青みがかったショートの髪、そして活発な印象を与える。

 セイリューは突然目線が物凄く下がったことに驚いた。
 目線はラキアとほぼ変わらなかったのに、今はラキアの腰近くにまで。
「チョコを食ったら縮んだだとぉ!」
 思わず声を上げるセイリューはラキアの白いローブをギュッと掴んで、見上げた。
「え?オレ?」
 服装はラキアだ。しかし、顔はセイリュー。見慣れた自分の顔。
 オレがラキアの服着たらこんな感じか…っていうか
「く、ふ、あっはっはっはっは!」
 ミニセイリュー、笑い転げる。ラキアのローブを着た違和感。
「え?何?俺……セイリューの顔してるの?」
 ニヨニヨしたのが原因かな……など思いつつ、己の顔をペタペタ触るラキア。
「あ、あっちに鏡あるぜ!」
 ミニセイリューがラキリューの袖を引っ張れば。
「わーお。そっくりじゃん、オレ達」
 セイリューがニッコリと笑う。しかもミニセイリューは軍服の礼服姿。
 サーベルに飾緒、そしてサッシュ。勲章もついた本格的なその服装はミニセイリューを凛々しく見せる。
「なんかかっちょいいし、オレすげーーー!」
 大はしゃぎのミニセイリューを暖かく見守るラキア。顔立ちはいつものセイリューより穏やかに見えるのはラキアの性格のせいか。
「うん、セイリューかっこいいし可愛い」
 微笑むラキア。
「鏡見なければ判らないし、2人で歩いてたらただの仲良し兄弟だよね」
「そだなー。あ、ラキア、確か写真館あったし、写真撮っとこーぜ!」
 確かにこんな現象は滅多にない。
「面白そうだね。Wセイリューだし」
「やっぱそうだろ!」
 とミニセイリューは満面の笑み。ラキアがセイリューに手を差し出せば、タタタと駆け寄りその手を掴む。
 小さい掌がとても可愛く、柔らかで。
(迷子にしないように気を付けなくちゃ。移動中はずっと手を繋ぎ離さないようにしないと!)
 ラキアは双子の兄弟には感じない愛情をミニセイリューに感じるのだった。

 写真館へ向かう途中も誘惑はたくさん。
 自然に手を繋げて嬉しいセイリューの鼻を香ばしい香りがくすぐった。
「ラキア、ラキア」
 繋いだ手をクイクイと引くミニセイリュー。
「なぁ、いか焼き食べよー。半分こしよー」
 可愛らしくおねだり☆
「買い食い、すると思ったよ」
 予想通りだ、とラキアは笑った。いか焼きを一つ購入し、ミニセイリューへ手渡す。
「はい、どうぞ」
「わーーーい!」
 無邪気な笑みを浮かべる彼の頭を思わず撫で。 
「あ、ちょっと待って」
 せっかく綺麗な服を着ているのだから、と己のハンカチでミニリューの襟元をカバーする。
 良いお兄ちゃんっぷりを発揮する。
「ラキア、ありがとー」
「熱いから気を付けて」
「はーい!」
 はふはふ、と熱そうに両手でいか焼きを懸命に食べるミニセイリュー。なんだこの可愛い生物。
 によによするラキアの視線に気づき、セイリューは
「あーん!」
 といか焼きを差し出した。いつもだったら多少躊躇するだろう。しかしこの姿なら
「しょーがないなー」
 そう言いつつ、すんなりといか焼きを齧るラキア。
「ん、美味しい」
 ……ラキアって、やっぱり素直。顔はセイリューだが、なんだかラキアの表情が見える気がした。

 こうしていくつかのジャンクフードを堪能し、写真館へ到着する2人。
 館から眼鏡美人女性とフリルの服を着た少年が出てきたのと入れ違いに、セイリューとラキアも中へ。
 そして出来上がった写真の中の彼らは、どう見ても兄弟。
「今度は俺、ラキアになってみたいなー。で、ラキアの子供の頃の姿が見たい!」
「えー、そんな面白いもんじゃないよ」
 想像し、苦笑する。こうしてWセイリューは、夜明けまで楽しく手を繋ぎ合うのだった。


●バニーガールと金髪制服天使
(女の身体……しかもバニー服……!!)
 蒼崎 海十はベンチで頭を抱えていた。
 謎の老婆から買ったチョコを食べた途端……膨らむ乳。
 身を包むバニーガール服。片耳だけ折れ曲がった兎耳が揺れる。
 見世物小屋にいる謎の羊が『らめぇ!』と嬉しそうに鳴き声を響かせる。
 普段の黒髪ショートカットはそのままに、ナイスバディ。その現実を海十は受け入れられなかった。
「あはは、海十お姉さん、可愛いね」
 海十の隣には利発そうな美少年が笑んでいた。
 それは海十のパートナーであるフィン・ブラーシュ。
 普段は明るく楽しく、どこかミステリアスな綺麗なオニーサンなのだが……チョコを食べたせいで、今の姿は6歳程の少年。金髪は短くすっきりとした印象。
 服装はブレザー。茶系のジャケットにシャツ&ネクタイ。ズボンはチェック模様で知的さを感じさせる。
 自分はそこまで困る姿ではないが、海十はどうにも羞恥に耐えられないようだ。
(ずっと外でこうしてるのも何だよな……)
 そう思ったフィン少年、何かを思いつき。
「海十、ちょっと待ってて。此処を動かないでね」
「え?フィン?ちょ、どこへ……」
 フィンはウインクすると駆け出した。
(……動かないで、と言われてもこの格好でウロウロしたくない……)
 項垂れる海十。目に入る自分の谷間。頭が痛くなってくるのだった。

 しばらくすると、フィンが走り戻ってきた。
 ほんの少しのはずだが、海十にとって一人の時間はとても長く感じられ。
「はい、海十お姉さん、こっちだよー」
「ちょ、ちょっとフィン、なんだよ、俺ここから動きたくない……!」 
 置いてけぼりにされた不安もあってか、海十ちゃん反抗期。
「ほら、良い子だからオニーサンについてきて!」
 お兄さんと言うには小さい身体のフィンが海十を強引に動かした。

 そして連れて来られた先は。
「……フィン……案外気が利くんだな……」
 感動の涙を浮かべそうな勢いの海十に。
「案外は余計だよ。ここなら人目につかないだろ?」
 そう言ってフィンが整った顔に笑みを浮かべた。
 ここはバザールの小屋の一つ。個室のちょっとした休憩処。
 2人は暖かいお茶を飲みながら、ここで朝まで過ごすことに決めた。

「ところで、女体化ってどうなの?」
 悪戯な笑みを浮かべるフィンに海十は気だるげに答える。
「胸は重いし、力は出ないし……早く元に戻りたい……」
 まったくもって迷惑だ、という表情を見せた。
「そういうフィンは……」
 チラリと少年姿のパートナーを見る。現在と同じく、整った美少年。
「……さぞかしモテただろ?」
「そう?分かっちゃう?」
 笑うフィン。
「よく天使のような笑顔って言われたもんだよ」
 その通りに、ニッコリとした笑顔を見せる少年フィン。
 だが、おどけるフィンに言葉を発さず、見つめてくる海十。
 フィンのちょっとした言葉や表情に滲み出る、本当の気持ち。
 重苦しさを感じ、沈黙を破ったのはフィンの言葉だった。
「……好かれようと、必死だったんだ……」
 やや俯き、呟かれた言葉。
「良い成績取って、手伝いも沢山して……相手を気遣って、相手が喜ぶことを考えて……」
 海十は黙って言葉を待つ。
「でも……逆効果だった。あの人にとって俺が優秀なのは疎ましいこと」
 あの人、というのがフィンの兄を指す事に海十は直ぐに気づいた。
 家督を争うことになった、フィンのただ一人の兄。
 そしてその兄がすでにこの世界に居ない事。フィルの身体に付く傷跡を思い出す。
 自嘲気味にフィンが俯いたままヘラリと笑った。
「それに気づいた時、俺は頑張るのを止めた。その時からあの人は俺を避けるようになった」
 フィンが窓の外に目をやる。
「遅かったんだよね……気づくのが」
 そして肩で息をつく。外見は子供だがその表情は現在のフィルを思わせるほど儚げだった。
 
 またしても訪れる沈黙。今度は黙っていた海十が口を開いた。
「でも。フィンはフィンの人生を歩めと言ってくれたんだろ?それは、フィンが大事だからだろ」
 フィンの目が見開く。
「どうでも良い奴だったら、そんな言葉は残さないだろ。俺だったら、アイツ馬鹿な事してるなって、関わらない」
 海十もまた、自分の中の大事な人物を思い浮かべていた。
「海十は……凄いな」
 フィンが笑う。
「別に俺は俺の思ったことを言っただ…けっ!?」
 視線を外し、そう答える海十の腰回りに……突然の衝撃。フィン少年が海十バニーちゃんのくびれたウェストに抱き付いている。
「って、調子に乗るなあぁああ!」
 むぎぎぎ!と離そうとするも、フィン少年意外と力が強い。
 こうして2人は夜明けまで、くっつき離れ、の攻防戦を繰り返すのだった。
「海十……有難う」
 天使は無邪気に笑いながら、呟いた。


●透明バニーボーイと銀髪美女様
「はい、ゼク。どーぞ」
 柊崎 直香がパートナーのゼク=ファルにチョコレートを手渡した。
 焦げ茶色に金色のマーブル模様のチョコ。金箔はよくあるが、ここまで金色のチョコは珍しい、とゼクは思った。
 一かけら口にする。味は悪くない。
 が、口の中でチョコを溶かした瞬間、魔法にかかったかのように己の着ている衣服が変化した。
 普段着ているモッズコートがいつのまにか……チャイナ服。
 女性もので、サテンのツルツルとした生地。足を出せばロングスカートのスリットからチラリと見える我が生足。
(服が変わったことは百歩譲る。だが中身が……)
 ゼクの眉間に皺が寄る。
(中身ってつまり俺なんだが俺は俺で性別は男だよな精霊は男しかいないしではこの状況は何だ)
 無表情ではあるが、脳内では物凄い勢いで思考が流れていく。
 チャイナドレスの開いた胸元から見える、谷間。作り物ではない、明らかに自分の胸が膨らんでいるたゆんたゆん。
 スカートから覗く自分の足もまぁ綺麗で、見慣れぬもので。
(よし)
 ゼクは直香へと振り返った。
「直香、これはどういうこと……」
 いない。
 すぐ後ろに居たハズの直香がいない。周りをキョロキョロと見渡すも、人の気配すらない。
 だが目の前に白い物体が浮いていることに気付いた。
 白くて細長い二本のそれが左右に揺れ。
「……兎の耳が……浮いてる?」
 よくよく見れば、その下には黒いブーメランパンツも浮いている。
 白い尻尾がふわふわと風に揺れている。
 ……ゼクは目頭を押さえた。
 やっと最近色んな物事に耐性ができていたと思うが……流石に処理能力の限界を感じたのだった。

 直香は、目を丸くした。
(これは予想外)
 振り返るゼクは、女優さんのようだった。
 元々見目麗しいゼク、見事にクールビューティーな美女へと変身している。
 やや身長は低くなっているようだが、女性にしては長身。そしてメリハリのついたダイナマイトボディは赤いロングチャイナドレスに包まれている。
 長いスリット、開いた胸元はクッキリとした谷間。真っ赤なピンヒール。
(じゃあ僕も女体化?)
 と直香も己の身体を見てみるも……腕が、見えない。
 腕どころか身体全体が見えないのだ。かろうじて見えたのは黒いパンツに白い尻尾。手首にカフス。首元に蝶ネクタイ。
(頭にも違和感……)
 そう思いながら直香が自分の頭に手を伸ばせば、長い2本の耳。
(うん。男バニーさんだね)
 理解するも、さほど驚きのない直香。
 それよりも目の前のセクシー美女のゼクさんが己の姿に混乱しているのがなんとも面白……憐れだ、と彼は思う。
 ゼクの視線が直香の兎耳に止まる。次いで全体。しかしゼクと視線は合わず。
(喋らなければ僕って認識できないか)
 ゼクはキョロキョロと周りを見回している。
 そんなゼクをちょいちょい、と直香は指で突いた。
 ゼクは驚きの表情を浮かべ
(この透明兎が直香か……!?)
 と恐る恐る手を兎の頭へと差し出してみる。
 ゼクの手が直香の頭をふわりと撫でる。その手は限りなく優しいのだが
(……触るのはいいけど、頭の上の手は僕の背丈測ってる?)
 ゼクの表情が恐る恐るから少しだけ緩やかに戻る。
(気づいたみたい、か)
 それでも手を頭から離さぬゼクに
(やめたまえ) 
 無言でぽかぽかとゼクの身体に猫パンチする直香だった。

 一度チョコの購入元へ戻れば、夜が明ければ元の身体に戻ると聞き。
 少し安心するも。一向に喋らない直香。
 そんな透明直香は、ゼクの手を取りバザーを歩き始めた。
 普段着ることがない女性服のゼク、そしてヒールの高い靴。
 人ごみでよろけそうになる美女を、直香はエスコートする。流石可愛い女装少年。
 対し、直香の表情どころか、姿も見えないゼク。
 だがその瞳は直香がいるであろう方向を見、優しく細まる。
(そんな瞳しないでよ。僕、女性には優しいんだから)
 僕が、誰でもいいじゃない。

 2人が着いた先はサアカス小屋。クイクイ、と透明バニーがゼクの服を引っ張った。
「ん?見たいのか?」
 有無を言わさず中へ引っ張られるゼク子さん。
 テントの中は想像より大きい。隣り合い座るも、ゼクは直香の方を向いている。
(もう、見るのはあっち)
 直香がステージを指させばカフスが動き。
(ステージを見ろということか……)
 ゼクは視線を前へと移した。
 
 ライオンの火の輪くぐりに、ピエロのジャグリング。空中ブランコなどなどなど……古典的なイメージのサーカスが繰り広げられる。
 それはまぁ、珍しいものではあるけれど。
(こっちの方が十分珍しいし)
 直香は隣の女性化したゼクを横目で窺う。
 褐色の肌に赤い瞳。一本に結わかれたサラリとした銀髪。
(うーん、なかなかの美人さんだ)
 見た目は丸っきり美しい女性の横顔だが、やはり面影はいつものゼクで。
 その瞳はステージに向けられている。2人の手は繋がれたままに。

 サーカスの光景が瞳に映りながらも、ゼクの心中は繋いだ手の感触へと意識が行く。
(間違いなくこの手の感触はあいつのもので)
 女性になったゼクの手よりもまだ小さいが……何度も掴んだ、手。
 何人もの人を助け、思い出を作ったいつもの感触。
(俺の不安や動揺を見抜いての行動なんだろう……)

 サアカスが終わる。
 周りの人が席をはずしていく中で、館内に残る最後の客となった直香とゼク。
 さぁ行こうか、と直香が立ち上がろうとすると、不意に繋いだ手にギュッと力を込められた。
「有難う」
 ゼクが呟いた。
(お礼?)
 それだけ呟くと、ゼクは立ち上がり手を繋いだまま出口へと向かう。
(直香の言葉も表情も無いとやはり調子が狂うが……)
(僕の姿見えていたらそんな言葉も表情も、なかったろうね)

 サアカス小屋から出れば、夜明けの光が近づくのがわかった。
――たまにはこんな一時も
――一夜だけの夢に相応しい
 ゼクと直香は手を繋ぎ、前を向いたまま。それぞれに笑みを浮かべた。



依頼結果:成功
MVP
名前:柊崎 直香
呼び名:直香
  名前:ゼク=ファル
呼び名:ゼク

 

メモリアルピンナップ


( イラストレーター: 渡辺純子  )


エピソード情報

マスター 上澤そら
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 4
報酬 なし
リリース日 03月03日
出発日 03月09日 00:00
予定納品日 03月19日

参加者

会議室

  • [9]蒼崎 海十

    2015/03/09-00:00 

  • [8]暁 千尋

    2015/03/07-09:49 

    ジルヴェールよ
    ふふ、皆楽しそうなことになってるわね
    今からとても楽しみだわ


    【ダイスA(6面):2】【ダイスB(6面):6】

  • [7]暁 千尋

    2015/03/07-09:46 

    暁千尋です。
    宜しくお願い致します。

    それでは・・・

    【ダイスA(6面):6】【ダイスB(6面):2】

  • ラキア・ジェイドバインです。
    セイリューが『神人バニー祭り』の波に乗りそびれてて
    ちょっぴり安心してしまったのはナイショさ。
    「せいりゅー、ろくちゃい」かぁ。ふふふふ。
    皆さんの華麗な変身姿を見て、幸せ感じちゃう自信があるよ!

    【ダイスA(6面):4】【ダイスB(6面):1】

  • セイリュー・グラシアだ。
    今回もヨロシク。
    運命のサイコロを振るぜ!

    ・・・・とおりゃー!(ぶん投げる)

    【ダイスA(6面):2】【ダイスB(6面):3】

  • [4]蒼崎 海十

    2015/03/07-00:23 

    フィン:
    女体化でバニーとは…(笑いを堪えている)
    うん、面白くなってきたね。

    俺はフィン。
    パートナーは海十だ。

    皆さん、宜しくお願いします。
    さて、俺は何が出るかな(ワクワク)

    【ダイスA(6面):2】【ダイスB(6面):4】

  • [3]蒼崎 海十

    2015/03/07-00:20 



    【ダイスA(6面):6】【ダイスB(6面):5】

  • [2]柊崎 直香

    2015/03/06-23:41 

    ゼク:
    透明バニーってなんだそれ……。

    柊崎直香とゼク=ファルだ。よろしく頼むな。
    …………(溜息)

    【ダイスA(6面):6】【ダイスB(6面):3】

  • [1]柊崎 直香

    2015/03/06-23:39 



    【ダイスA(6面):3】【ダイスB(6面):5】


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