プロローグ
草木も眠る丑三つ時。『幸運のランプ』を掲げて、ウィンクルム達は彷徨えるバザーを訪れる。
一組のウィンクルムがその不思議な光景に感嘆の溜息を洩らした。
ある店では香しい紫煙が立ち上り、ある店では不思議な宝石がきらめきを放っていて、広場では流浪の民がどこか懐かしい歌を歌っている。
そんな中で、あなたは小さなテントを見つけたのだ。
不思議と、足がそちらを向く。テントにぶら下がっている表札には『ユッカの占い部屋』と書かれていた。そっと入口越しに声をかけると、穏やかな女性の声で「どうぞお入りください」と返答がある。
「ようこそ、ユッカの占い部屋へ」
夜空のような深い紫色のベールをかぶり、口元を薄い布で隠した彼女はそのアメジスト色の瞳を細めた。天井を見上げれば、銀糸で星空が描かれている。ふわりと広がる、白檀の香り。
テーブルの上には水晶球とタロットカードが置かれていた。
「ここはタロット占いの店です。……あまり目立たない店でしょう?こんな店に足が向いたのだから、きっと何かが引き寄せたのね」
瞳を縁取る長い睫がそっと伏せられる。
「悩みや知りたいことがあるのでしょう?当たるも八卦当たらぬも八卦。私の占いを聞いていきませんか?」
あなたは差し出されたタロットカードにそっと手をかざした。
解説
目的:ユッカの占いを体験しましょう。
参加費:お一人様1000Jr。(神人か精霊、どちらか選択)
お二人の関係性を占いたい場合。1500Jr
一枚引いて占うタイプの占術になります。
まず、プランには
・占ってほしい内容
・占いの結果が
ざっくり言って「よかったときの反応」と「悪かったときの反応」
(信じる、とか信じないとか、落ち込む、とか笑い飛ばす、とかその程度でOKです)
を明記してください。
占い方法は2パターンです。
*自分でカードを引きたい!という方は、会議室のダイスを振ってください。
10面ダイス1回と、6面ダイス3回(二回書き込むことになりますね)の、合計の数をプランに書いてください。そこから割り出していきます。その後、コイントスをお手元で(アナログになってしまいますが)していただき、掲示板及びプラン内にてご申告ください。
(どこかのプロセスが抜けてもユッカが補正します)
*カードを引くプロセスに関しユッカにすべて任せる!という方は、
【お任せ】、とプランに明記ください。実際にユッカが皆さんの悩みや相談を聞いて手元のタロットカードを引きます。
☆占いの最後にはお土産に星空のこんぺいとうを差し上げます。サービスです。
(特に何か効果があるものではないけど、いろいろな味が入っていておいしいよ!)
★attention
占いですので、かなりランダムな感じになります。アドリブが多くなることが見込まれますので、ご了承ください。占い結果が悪かったとしても、それが今後のプレイにかかわるわけではないので、気にやまないでくださいね。(もちろん、悪かったことを引きずってもいいけど(笑))当たるも八卦当たらぬも八卦~!
ゲームマスターより
不思議なバザーの不思議なお店。
占いです!
(ダイスでどうやって割り出すの?という質問にはお答えできませんが、うまーくランダムになるよう調整するのでご了承くださいね)
寿も趣味でタロットやってますが、今回は大アルカナのみ~。
あくまでも”占い”ですので、何が出ても気にしすぎちゃだめだよ!塔が出ても……!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
羽瀬川 千代(ラセルタ=ブラドッツ)
【お任せ】 あのね、一人で占ってみたい事があって …有り難う。終わったらすぐ、迎えに行くよ 知りたい内容は『彼への想いを隠し続けていくべきか』 …俺はさっきの人の事が好き、で(小さく声震え 培ってきたパートナーとしての関係が壊れたり、 変わったりしてしまう事が怖いから気持ちは伝えられなくて 生まれて初めての恋だから、きっと余計に 結果が悪い内容なら多分、動揺はするけれど 最終的にどう行動するのか決めるのは自分だから最後まで向き合います 相談後、面と向かって話すのは何だか気恥ずかしく俯き加減に 結構待たせちゃってごめん。色々聞いて貰っていたから ?…凄く嬉しい申し出だけど、俺はそこまで泣かないよ。またからかってるの? |
スウィン(イルド)
【お任せ】 ■内容 二人の関係性 そうねぇ、じゃあイルドとの相性を… あ、いや、ウィンクルムとしてね!うん! これからも相棒としてやってくんだし 一回くらい占っといてもいいわよね 相性壊滅的だったらどうしよっか(けらけら) ■結果がいい時 結果がいいと嬉しくなるわね~♪ あら、不器用で顔がこわーいイルドと 上手くやっていけるのはおっさんくらいじゃない? 感謝してよね(くすくす) ■結果が悪い時 ウィンクルムって相性がいい相手となるものなのに意外ね? 判断の仕方が違えば結果も違うものなのかしら でも相性が悪いのにうまくやってるんだから おっさん達凄いんじゃない?ふふ ■お土産 可愛くて美味し♪(甘党なので喜ぶ) |
信城いつき(レーゲン)
※16表 ちょっとやりたい事があるんでそれを占ってもらいたい……な、何かは内緒! (ユッカにだけひそひそ)俺が…レーゲンに告白するのが良いか悪いか占って。 【良】良かった。なんか後押しされた気分。 偶然あたったフリして、こっそり隣のレーゲンの手に触れてみる いつかはちゃんと手をつなげたら良いな 【悪】(悪かった場合のみ告白。レーゲンの手を強く握る) …………好きだよ。 ごめんなさいユッカ。せっかく占ってもらったのに……でも諦めたくないんだ 他に大事な人がいるって知ってる。我儘だって知ってる でも、俺はレーゲンが好き…です。 記憶?何のこと? いいの?俺なんかで本当にいいの?(激しく動揺) |
セラフィム・ロイス(火山 タイガ)
セラが占い■合計18、表 (やっぱり迷ってるんだ…) やってもいい? わかった 話してから引くんですよね?タイガ、耳を塞いでてくれる ごめん僕の問題だから ◆ 家族に、今のあり方を反対されてます 仕事も友達も、それ以上はもちろん 何かあった時このままじゃ済まない (隔離されて、また無くしてしまう) 立ち向かいたい。彼のおかげで変われたから どんな道になるか教えて下さい ■良い 勇気もらいました。来れてよかったです (進むのは怖いけれど自信がもてた) ■悪い そう、ですか 大丈夫…教訓にするから。昔の僕じゃない …欲しい物があるって幸せだ(求めてくれるから、いや、くれなくても頑張りたい。君の隣で笑えるように) !?甘…不意打ちは酷いよ |
スコット・アラガキ(ミステリア=ミスト)
やだなミスト、相性占いなんかするまでもなく 俺たちの仲は未来永劫まじ円満だよぉ>< …あっ、普通に運勢見てもらう感じか (結果が良いにしろ悪いにしろ) 大丈夫だよぉ、ミスト。俺がついてるもん! 君の幸せのためなら、どんな運命も変えてみせる 君の笑顔以上に俺の道を明るく照らしてくれるものはないんだから! それにツイてないのは単に注意不足なだけだよ 最近よくレンタル店でドラマ借りてるよね きっと夜遅くまで観てるんでしょ ちゃんと寝ないから頭がぼんやりさんなんだよぅ ファーストシーズンで打ち切りなのが救いだねっ! …あははは、それはお断りしまーす マンゴーとベネックス(ドラマの人物)の面倒まで見る義理ないも~ん |
訪れたのはスコット・アラガキとミステリア=ミスト。天幕に足を踏み入れたところでスコットが言った。
「やだなミスト、相性占いなんかするまでもなく、俺たちの仲は未来永劫まじ円満だよぉ」
きゃぴ、と言い放つ彼をよそにミストはユッカに占って欲しい内容を話しはじめた。
「最近びみょーにツイてないんだよなー」
「……あっ、普通に運勢見てもらう感じか」
てっきり相性占いをするのだと思っていたスコットはなんだか肩透かしを食らったような。
「ツイていない……のですか」
ユッカが手元のタロットカードをシャッフルする。
「図書館で借りたCD落として弁償するハメになるわ」
(わぁ、それはお気の毒様です……)
「ボディソープとトリートメント間違うわ」
(ん?トリートメント?)
「俺の頭と商品を高速で四度見した店員の表情が忘れらんねー。「こいつ何をリペアする気だ」って顔だったぜ」
ミストの話のオチにユッカは吹き出しそうになるのを抑える。四度見!そいつはかわいそうである。
(確かに……その頭にトリートメントは……うん)
横でスコットもぷぷぷと笑いをこらえている。
「これは大きな災いの前兆なのか否か、ひとつ視てもらえませんかね……」
ユッカは頷いてタロットカードを机に扇形に広げる。そして、目を閉じて念じてから一枚引いて開いて見せた。
「月……逆位置ですね」
逆位置。その響きに少しだけミストが怯む。
「それってなんか悪い意味の……!?」
「いえ、大丈夫です」
ユッカは描かれた月を指さしながら説明を始める。
「正位置だと、不安や無意識、揺れ動くといった意味になるカードですが、逆位置なら意味も逆になります」
にっこりと彼女は笑った。
「つまり、今の悩みの解決の糸口がきっと見つかる、ということですね。それと、悩んでいたことは実は大したことではなかった、という意味にも取れます」
よかったね、とスコットがミストの肩を叩いた。
「まーじっすか!あざす!ちょっと気持ちが上向いたわー」
ほっとミストが息を吐き出す。
でも、ここ最近ツイてないのは一体なんでなんだろう。引っかかる疑問を投げかけると、ユッカはうーんと考え込んで一つの答えを出した。
「月の逆位置には、『原因は外より内』という意味もあるんです」
えっ。内側。ミストの表情が曇る。自分が悪いということだろうか。
それを察してスコットが笑いかけた。
「大丈夫だよぉ、ミスト。俺がついてるもん!」
「スコット」
「君の幸せのためなら、どんな運命も変えてみせる。君の笑顔以上に俺の道を明るく照らしてくれるものはないんだから!」
ね、だから笑って。とスコットは無邪気に言って見せる。
「いつもながら大げさだな、もー」
ミストの手が、自分より背の高いスコットの頭をぽんぽんと撫でた。
「それにツイてないのは単に注意不足なだけだよ」
「あぁ、それはあるかもしれないですね」
ユッカが月明かりだけの薄暗いカードをじっとみつめた。
「最近よくレンタル店でドラマ借りてるよね。きっと夜遅くまで観てるんでしょ、ちゃんと寝ないから頭がぼんやりさんなんだよぅ」
「あー……確かに寝不足気味だったかも。続きが気になって気になって……」
ユッカがうんうんと頷く。
「わかります。次々見ちゃうんですよね。……でも、なんだか原因はそれっぽいですね?」
「ファーストシーズンで打ち切りなのが救いだねっ!」
スコットが明るい笑顔でさらりと告げる。ミストの上にがんっと重たいものが降ってきたように見えた。
「打ち切、……うち、……うっ」
膝から崩れ落ちるミストにユッカは目を丸くした。
「ありゃ」
確かに、打ち切りならばこれ以上の夜更かしもなくなるだろう。が。
「どんな運命も変えてくれんだろーっ、この運命もなんとかしろよおお」
打ち切り反対とばかりに項垂れるミスト。スコットは明るくへらっと笑った。
「……あははは、それはお断りしまーす」
登場人物の面倒まで見る義理ないもーん!と笑い飛ばす彼にミストは涙目であった。
「あ、あの、金平糖あげるから元気出して……」
明るい二人の未来に幸あれ。ユッカは二人を送り出すのであった。
次に占い部屋に訪れたのは、セラフィム・ロイスと、火山タイガ。
「神秘的だなー」
キョロキョロと占い道具やテントの天井を見回し、水晶玉を覗き込むタイガにユッカはふふっと笑った。
「この空間だから、占いに集中できるんですよ」
そうなのかぁ、と納得しながらタイガはセラフィムを見やった。
何か、まだ迷った顔をしている。が、意を決したようにこちらを向いた。
「やってもいい?」
「おう、待ってる」
「わかった」
短いやり取りだが、セラフィムの緊張が伝わってくる。
「ええと、悩みを聞いていただきたくて。話してから引くんですよね?……タイガ、耳を塞いでてくれる?」
ハッとしてタイガがセラフィムの顔を覗き込む。
「悩みなら聞くぞ?」
俺にも話してくれ、という彼に、セラフィムは首を横に振った。
「ごめん、僕の問題だから」
タイガの気持ちはわかる。けれど。
「……わーった」
タイガはその頼みに従って、耳を手で覆った。
「外でお待ちいただかなくてもいいのですね」
ユッカがそう確認すると、セラフィムは頷いて話しはじめた。
「家族に、今のあり方を反対されてます。仕事も友達も、それ以上はもちろん何かあった時このままじゃ済まない」
「あり方……?」
ユッカは意味が分からないと小さく首を傾げる。水晶玉を覗き込むと、彼が病で臥せっていたころの光景がちらり、と見えた。
ふとタイガの方を見ると、彼が耳をふさぐ手を少し緩めているのに気付いた。ユッカはわずかに眉を顰めるも、それが彼なりの気遣いなのだと気づき、セラフィムに知れていないのならいいだろうと流すことにした。
(セラ、家で何か言われてんのか。病弱だったから過保護なのも頷けるけど、家柄で付き合う奴や門限も厳しいし……いい子なのが長所で短所なんだよな。そこが良いけど)
いつも家には忍んで来るように言われているタイガは、セラフィムの両親がこの関係をよしとしていないことくらいはわかっていた。
「……立ち向かいたい。彼のおかげで変われたから。どんな道になるか教えて下さい」
(なるほど……)
ユッカは聞いた話と水晶玉の事から推理する。彼は、厳格な親に連れ戻されることを危惧しているのだろうか。カードをシャッフルし、セラフィムに渡した。
「お好きなカードを引いてこちらへ向きを変えずに置いてください」
するりと引いたカードは、月。正位置だ。
「……このカードを単刀直入に解説しますと、不安、という意味」
ドキ、とセラフィムの胸が高鳴る。
「このまま一人になってしまうのではないかという、恐怖。相手の本心がわからずに揺れ動く気持ち。それをあらわしている」
そう、見透かされているかのようなカードの言葉。
「……失うことへの恐れ、そんな気持ちを強く感じるわ。けれど、嵐はいつまでも続くものではないの。……立ち向かうことを忘れないで」
ユッカの鋭い眼光がセラフィムを見つめる。立ち向かい、戦わずして得るものはないという様に。セラフィムは恐れを押し込め、しっかりと一度だけ頷く。
「勇気をもらいました。……大丈夫、昔の僕じゃない」
来れてよかったです、と微笑む。タイガはその晴れやかな顔を見てにかっと笑った。
「なんか知らねーけど、セラ次第ってことか?」
こくり、と頷けば、タイガは彼の手を取り天幕の外へ。
「姉ちゃん、占いも金平糖もサンキュ!」
次見て回るぞ、とセラの手を引いた。セラは肩越しにユッカに会釈する。彼女も、軽く手を振った。
「……欲しい物があるって幸せだ」
ぽそりと呟いたセラの口に、タイガが金平糖を突っ込む。
「!?……甘。不意打ちは酷いよ」
タイガは自分も金平糖を口に放り込み、もぐもぐしながら無邪気に笑った。
(求めてくれるから、いや、くれなくても頑張りたい。君の隣で笑えるように)
「占い部屋?だって!ちょっと入ってみましょっか」
精霊、イルドの腕を引っ張ってこのテントに入ってきたのは神人、スウィン。
迎え入れられた濃紺のテントの中で、二人は相性占いを希望する。イルドは物珍しげに天井の星座を見つめていた。
「相性……」
ユッカの唇が弧を描く。恋愛運、と言いたげな顔だ。
「あ、いや、ウィンクルムとしてね!うん!」
「あら」
せっかくだから恋愛も、というユッカ。内心、そちらも気になってはいるが。
「これからも相棒としてやってくんだし一回くらい占っといてもいいわよね」
スウィンがそういうと、イルドも小さく頷く。占いを盲信するタイプではないが、決して馬鹿にしてかかっているわけでも無い。ユッカはそれを気取って嬉しそうにタロットカードをシャッフルし始めた。
「相性壊滅的だったらどうしよっか」
けらけらと笑うスウィンにイルドはほんの少し不安げな顔をする。ユッカが二人を見つめながら引いたカードは、運命の輪。逆位置だった。
「……まぁ」
ユッカが少し狼狽える。スウィンは身を乗り出して尋ねた。
「何?どういう意味だったの?」
「……お二人の相性は、今は決して悪くはないのです。むしろ、良いものなのですよ。運命に導かれて引きあわされたお二人ですから」
イルドが、何か悪い事でもあるのかと先を促すと、ユッカははっきりと告げた。
「……これから、悪い方へ転換する可能性がある、という意味です。逆位置は、その兆し……」
え、とイルドが固まる。
「すれ違い、疑心暗鬼、不可抗力により引き離される……そんな意味のカードです。……絶対に、その手を離さないで」
ユッカが泣きそうな目で二人を見る。
スウィンは元気づけるように答えた。
「でも、相性は悪くないのよね?今までだってうまくやってきたし」
「……そうだな」
確認するように顔を見合わせる。イルドがニヤリと笑った。
「こんなおっさんと上手くやってけんのは俺くらいじゃねーか?」
「あら。不器用で顔がこわーいイルドと上手くやっていけるのはおっさんくらいじゃない?感謝してよね」
軽口を叩きあって笑いあう二人。その様子にユッカは安堵した。
「あの、これお土産の金平糖です」
受け取った金平糖をそのまま口に含み、スウィンはにっこりと笑った。
「可愛くて美味し♪」
ころんとした星屑のような色とりどりの金平糖をスウィンは手のひらに少量開ける。
ほら、イルドも。と差し出せば、彼も紫色の金平糖をつまんだ。
不安にさせるような占いをしてごめんなさいね、というユッカにスウィンは首を横に振る。
「んーん!いいのよ~、だってカードそのままを正直に教えてくれたんだもの」
「……ありがとうございます。占いは、良い結果は心の糧にするため。悪い結果は起こらないように対策を練るためにあるものです」
ですから……。そう言いかけて、ユッカは止めた。
金平糖を幸せそうに頬張るスウィンとそれを見つめるイルドを見ていたら、もう一度言う必要はないだろう。
『その手を離すな』と。
占い部屋の前で足を止めたのは、羽瀬川千代。精霊のラセルタ=ブラドッツはその横顔を訝しげに見つめた。ラセルタは、基本的に神託や占いの類を信じる方ではない。だから、この店にも引き寄せられる要素はないだろう。けれど、大切な神人がここで足を止めた。
(一体何を抱えているのか。俺様には何も言わずに)
もやもやとした感情を押し込め、テントに吸い寄せられるように入っていく千代に付き添う。ようこそ、と迎え入れたユッカと目が合い、千代はラセルタの方に向き直った。
「あのね、一人で占ってみたい事があって」
「……わかった。俺様は物珍しい調度品でも探しに行くとしよう」
ゆっくり占うといい、とラセルタは不機嫌さを隠して踵を返した。
「……有り難う。終わったらすぐ、迎えに行くよ」
ラセルタがテントを後にすると、ユッカは首を傾げる。
「……パートナーさんに聞かれたくないことなのですね」
そう、千代が知りたいのは……『この想いを隠し続けるべきかどうか』
「……俺はさっきの人の事が好き、で……」
千代のか細い声が震える。
「培ってきたパートナーとしての関係が壊れたり、変わったりしてしまう事が怖いから気持ちは伝えられなくて……」
ユッカは真剣な面持ちで聞きながらカードを混ぜた。
「生まれて初めての恋だから、きっと余計に」
ギュッと手を握り締めて千代は俯いた。
ユッカがひいたカードは、世界、正位置。
「……先に進むのは、きっと怖いですよね。……けれど、大丈夫ですよ」
え、と千代が顔を上げる。
「このカードの意味は、完成という意味なんです。次のステージへ進める、という暗示。今までの障害は消え去り、思いも伝えやすいときに来ているのでしょう」
占いは必ずではないけれど、運は向いているから頑張って。そう彼女に背を押され、千代はお土産の金平糖を持ってラセルタを迎えに行った。
「結構待たせちゃってごめん。色々聞いて貰っていたから」
きっと思いは伝わるなんて言われてしまったものだから、なんだか気恥ずかしくて、彼の顔を見ることができず俯き加減でもじもじと切り出す。
「話は終わったのか?すぐ戻ってきたのは褒めてやるが……」
(……何故此方を見ようとしない)
わずかに苛立ちながらラセルタは千代の顔を覗き込んだ。
「俺様は未来を占う事は出来ないが、お前の話を聞いて力を貸す事は出来る」
まっすぐ射抜くような視線に千代は瞳を瞬かせた。
「悲嘆に暮れる時はこの胸で泣かせてやってもいい」
ラセルタがとん、と指先で自らの胸を軽く示す。
「?……凄く嬉しい申し出だけど、俺はそこまで泣かないよ。またからかってるの?」
ほんの少しむくれながら千代がそういうと、ラセルタはその肩をぐい、と引き寄せ、顎先を指で軽く持ち上げ自分の方を向かせた。
「……俺様以外に弱った姿を、隙を見せるなと言っている」
ユッカに弱音を吐いたことへの嫉妬だろう。ようやく千代は合点が行った。
「それを独占出来るのは俺様だけの特権だろう?」
真剣な眼差しに、びく、と肩を震わせる。
ふっとラセルタが息を吐いた。
「……機嫌を直したければ、その金平糖を寄越せ」
視線をずらし、冗談っぽく言うラセルタに、千代も微笑んでとびきり甘い金平糖を手渡した。どうか、いつか伝えられるよう。
ユッカの占い部屋に緊張した面持ちで入ってきたのは信城いつき。精霊レーゲンは保護者のように傍らに寄り添っていた。
「ずいぶん真剣だけど何を占ってもらうの?」
「ちょっとやりたい事があるんでそれを占ってもらいたい……な、何かは内緒!」
レーゲンに顔を覗き込まれて、あたふたしながらいつきは首を横に振る。
「……内緒、ね。楽しそうだからいいか」
穏やかに笑う彼に、いつきはほっと胸をなでおろす。そして、聞かないでね、と念を押してユッカに耳打ちした。
「俺が……レーゲンに告白するのが良いか悪いか占って」
その声に、ユッカが息をのむ。告白。その結果を占うのはとても難解な事。一つ頷いて、ユッカはカードをいつきに差し出した。
「よく混ぜて、お好きなものを引いてください」
いつきが手に取ったカードには禍々しい曇天に雷が落ちた塔が描かれている。
「……塔」
ユッカの表情が曇った。
「単刀直入に申し上げて、今は動くべきではないというカードです。不本意な変化、崩壊、関係の終わり……そんな意味のカード。どう転んでもよい意味には取れないです」
いつきの瞳がふるり、と震える。
だめだ、と言われてしまった。
レーゲンもその言葉だけ聞いて、いつきのしたいことは『やらないほうがいい』と言っているのがわかり、残念そうに眉尻を下げる。
ユッカも次の言葉を探して口ごもる。
いつきは、抑えきれない感情にレーゲンの手をぎゅっと握った。
「どうかした?気分でも悪い?」
「…………好きだよ」
意を決したように震える声でいつきはそう告げた。
ユッカは驚いて目を見開く。
「ごめんなさいユッカ。せっかく占ってもらったのに……でも諦めたくないんだ」
小さく首を横に振り、そして、ユッカは力強く頷いた。
いいの。占いはただの参考だから、思うままに行動して、と小さく促す。
「他に大事な人がいるって知ってる。我儘だって知ってる。でも、俺はレーゲンが好き……です」
震える声で、泣きそうになりながらいつきは伝える。レーゲンは驚きうろたえながら答えた。
「いつきが、私を?……もしかして記憶戻った?」
「記憶?何のこと?」
オーガに襲われた時のショックですべて記憶が飛んでいる彼は、何を思い出したと聞かれてもわからない。
「……違う?あぁごめん今の忘れて」
首を傾げるいつきの手をレーゲンは優しく包む。
「いつきの我儘ならかまわないって言ったよね。嬉しいよ。こんな最高の我儘言ってくれて、本当に嬉しい……」
レーゲンが優しく微笑む。いつきは嬉しくてふと口元を緩めた。
と、次の瞬間。
「……!!」
ズキ、とこめかみのあたりが痛んだ。
ズキン、ズキン、と鈍痛が頭を襲う。
「……っ……」
記憶が、戻ろうとしているのか。
好きという気持ち、レーゲンの気持ち、全てがない交ぜになることで、『あの日』の記憶が呼び起されようとしているのか。
「いつき!?……いつき……っ」
「わかん、な……」
いつきが頭を押さえて目を瞑る。ユッカは慌てて奥の方へポットを取りに行った。
「だって、レーゲンには……大切な人がきっと、いて、……それ、は」
……誰なのだろう。
いいの?俺なんかで本当にいいの?
告白を受け入れられたけれどあまりにも現実味の無いことで頭が混乱する。
「なんか、じゃないよ、いつき……っ」
レーゲンの腕が混乱するいつきを抱きしめた。背中を擦れば少し落ち着いてくる。
ユッカが持ってきた白湯を飲むころには、すっかり頭痛も収まっていた。
……ひょっとして、これが占いの示していたことなのだろうか。
つらい記憶が呼びさまされる、そのことが。
ユッカは金平糖を手渡しながら、祈りを込めた。
どうか、二人の苦しみが取り除かれますように。
*******
ふわり。ウィンクルムたちのランプに火がともる。
誰かの役に立てたユッカの小さな喜びと、未知の体験に心を弾ませ、あるいは悩ませ、成長したウィンクルム達の小さな幸せが、ランプの中をゆったりと揺蕩っていた。
依頼結果:大成功
MVP:
名前:信城いつき 呼び名:いつき |
名前:レーゲン 呼び名:レーゲン |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 寿ゆかり |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | イベント |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 02月28日 |
出発日 | 03月06日 00:00 |
予定納品日 | 03月16日 |
参加者
会議室
-
2015/03/05-21:52
毎度お騒がせしております!
スコットとかわいいスタンプの流れに乗れなくて悄然としてるミストだよ!
俺のとこは占いの方法はお任せだなー
それにしてもボッカの全裸占いって
流行の先端をいきすぎて転げ落ちそうな感あるよね
ミスト『言うと思ったよこのバカ…』 -
2015/03/05-21:51
-
2015/03/04-00:37
サイコロ書き込みで合計18
コイントスはこちらでやって【表】が出たと申告させてもらうね
さて・・・どうなるか -
2015/03/04-00:32
【ダイスA(6面):3】【ダイスB(6面):6】 -
2015/03/04-00:29
どうも。セラフィムとタイガだよ。見かけた際はどうぞよろしく
あれ・・・?お任せ多いのかな?これからかな
占いは僕がして、タイガは待たせてる
・・・いい結果がでることを願いたい。本当に
【ダイスA(10面):6】【ダイスB(6面):3】 -
2015/03/03-23:40
こんばんは!信城いつきと相棒のレーゲンだよ。
今回もどうぞよろしくね。
占いたいこと…………な、内緒!特にレーゲンには秘密!(なぜか顔真っ赤)
コイントスは裏か表かって事でいいのかな?やってみたら表だったよ。
よし、これで占ってもらえるね。どんな結果出るかな……
【ダイスA(6面):3】【ダイスB(6面):4】 -
2015/03/03-23:34
【ダイスA(10面):5】【ダイスB(6面):4】 -
2015/03/03-00:24
-
2015/03/03-00:17