セールに揺れるいろどりの髪(京月ささや マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

●セールの商店街で声をかけたのは…

「あのう、すみません…ちょっと、よろしいでしょうか?」
春を前にしてセールにわいているタブロス市内の商店街を歩いていたあなたたちは
控えめな少女の呼び声に足を止めました。

振り返ってみると、シンプルなワイン色のワンピースを着た小柄な少女があなたたちを見ていました。
「実はあなたたちにモデルになっていただきたいんです…
 お店の存亡がかかってるんです!是非お願いします!!」
ガバッ!と土下座せんばかりの勢いで頭を下げる少女。
その大きな声とリアクションに、商店街をいきかう人々の目が一気に注目!
あわてたあなたたちは、ひとまず少し離れた場所で話しを聞くことにしました。

「私の名前はミュリーと言います…ヘアメイクアーティスト…です」
少女はそう名乗ると、あなたたちを自分が経営しているという店に案内しました。
そこは商店街のメインから10分ほど歩いた場所にある小さなお店。
あなたたちはそこで、赤や緑、虹色といった様々な色や形の
ウィッグが並べられているのを目にしました。
そう、ここは彼女が経営するウィッグショップだったのです。

「実は、なかなか売り上げがのびなくて…建物のオーナーに先日言われちゃったんです。
 来週までにお前の商品が人気だって証明できなかったらこの建物から出て行ってもらう、って…」
うつむき、目に涙を浮かべながら話すミュリー。あなたたちは顔を見合わせます。
なぜなら、店内にあるウィッグはデザインや色や形、
ぜんぶがとても個性的で素敵なものばかりだったからです。
もしも売れない理由があるとするなら、それはきっと立地。
商店街のメイン通りにお店があれば、もっと売れていたのかもしれません。

あなたたちはそれを彼女に提案してみましたが、彼女は今現在、お店をはじめたばかり。
商店街のメインにお店を構えられるほどの財産を持っていないのだそうです。
「あなたたちにお願いがあるんです…
 このお店のウィッグをつけて、商店街のセールを楽しんできてもらえませんか?
 それで、その様子を写真に撮って、私に渡してほしいんです…!」
商店街は、現在春前のセールで大賑わい。
新しく商店街に出店したドーナツ専門店のメニューが30パーセントオフになっていたり
まだ肌寒い冬向けに、衣料品店がマフラーや手袋を半額で販売中。
さらに、商店街中央にある広場では、豪華景品があたるくじ引きも開催されています。
この豪華景品を引き当てようと、広場では人が沸きかえっています。

ミュリーは戸棚からカメラをあなたたちに手渡しました。
「オーナーは、私のウィッグを街で見かけるまでお前に実力があるって認めないって…
 だから、私のウィッグで幸せになってくれる人たちがいるって事を
 オーナーに証明できたら、きっとわかってくれると思うんです…!」
どうやら、オーナーは写真さえ見せれば納得してはくれる様子。
店内のウィッグは好きに利用してくれて構わないとのこと。
しかも、利用したウィッグはプレゼントしてくれるのだそうです。

「それに、あなたたちはとても幸せそうに見えたから…
 その幸せのお手伝いができそうな気がするなって思って。
 だから、声をかけさせてもらったんです。どうか、お願いします…!」

ぺこりと頭を下げるミュリー。
そして、店内にある、たくさんの魅力的なウィッグたち。
あなたたちがこのウィッグをつけて楽しめば、このお店は救われるのです。
このウィッグをつけて一風変わったデートをしてみるのも悪くないかもしれません。
こうして、あなたたちはミュリーのウィッグをつけて
セールにわきたつ商店街を楽しむことを決めたのでした。

解説

●ミュリーのお店とウィッグについて
 ロングやショート、ストレートやパーマなど、
 男女用の様々なス色やタイルが用意されています。
 装着するとウィッグだとはわからない仕上がりです。

●消費ジェールについて
 ウィッグ&カメラレンタル代として300ジェール消費とさせて頂きます。

●写真について
 商店街のセールを楽しみ、その様子を撮影すればOK。
 カメラは1人につき1台、撮り直しは何回でも可能。
 ミュリーがベストショットを現像してオーナーに渡します。
 オーナーはミュリーのウィッグが使われている姿を確認すれば納得するので
 決めポーズでなくても問題ありません。

●商店街のくじ引きについて
 1回5ジェールでくじを引け、何回でもトライ可能。
 ◆3等:花屋で好きな花束を1つ無料で作れる券
 ◆2等:レストランディナーが1回無料になる券
 ◆1等:商店街で『なんでも好きなものを1つ無料で購入できる券』
 この豪華景品を引き当てようと、広場には人がひしめいています。
 はずれてもキャンディかチョコがもらえます。

●衣料品店の冬物半額について
 商店街の冬用定番アイテムが半額で販売されています。
 いつもだと手に入りにくいものが手に入るかもしれません。
 ラインナップ
 ◆手袋:100ジェール
 ◆マフラー:150ジェール
 ◆ニット帽:100ジェール

●ドーナツ専門店について
 商店街に新しくできたドーナツ専門店でお茶ができます。
 シンプルからゴージャスまで、豊富なメニューをお楽しみいただけます。
 メニュー
 ◆コーヒー・紅茶・オレンジジュース:50ジェール
 ◆シンプルドーナツ:50ジェール
 ◆ホイップサンドドーナツ:70ジェール
 ◆ゴージャスフルーツホイップドーナツ:100ジェール

●当エピソードで入手できるアイテムについて。
 本エピ内のみでの描写となります。

●その他
 ミュリー店のすぐ隣に小さめの公園があります。
 小さなベンチがいくつかあってホッとできる空間です。

ゲームマスターより

こんにちは、京月ささやです。
2本目のハピネスエピソードになります。

ウィッグを使って好きな髪形や髪色を楽しみながら
商店街で楽しくデートをしよう!というエピソードです。
デートを楽しむことができれば、ミュリーのお店は救われて
今後、もっといいことにつながっていく…かもしれません。

皆様の楽しいデートや思い出のお手伝いができますと幸いです。
宜しくおねがいします!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

月野 輝(アルベルト)

  私達、二人とも髪長いんだけど大丈夫?
大丈夫なら楽しそうだし喜んで引き受けるわ

実は私、ふわふわの柔らかそうなブロンドに憧れてたのよね
小さな頃に読んだ絵本のお姫様はみんなそう言う髪だったもの
黒髪って魔女とかそう言う人が多くて(昔を思い出してくすっと笑って


うん、そうね、そうかもしれない(精霊の言葉に素直に頷く

ふふ、ありがと(手を取って

■セール
ね、見て
クリスマスの時の手袋と似た色のマフラーや帽子があるわ
まるでお揃いみたいよね
……マフラー買っちゃおうかしら

■ドーナツ
新しいお店なら人多いわよね
休憩がてらお茶しつつウィッグの話してみましょ

「このウィッグ、まるで付けてないみたい」
「付け心地いいわね」
等話題に



ひろの(ルシエロ=ザガン)
  ウィッグ:アンニュイロング編みこみハーフアップ、セピアで一部ピンクの差し色

一緒で、幸せに見えた……?(首傾げ

(視線を彷徨わせ、呟く
「……ドーナッツがいい」

ルシェも。幸せに見えたの、かな。
だと、いいな。一緒で迷惑じゃないなら、……いいな。
(握った手に少し、力を込める

シンプルドーナッツ1つと、オレンジシュース。
ん。ドーナッツおいしい。

「食べてるとき撮るの、ずるい」

髪が長いの、慣れない……。
ルシェも髪が違うだけで、別人みたい。

「ルシェのも、撮る」
たぶん、これ一枚で良いと思う。

……ルシェ、やっぱりきれい。
髪の色が違うから、かな。今日はなんか眩しいけど。

「……わかんない」
(褒められ恥ずかしく、目を伏せる



エリー・アッシェン(ラダ・ブッチャー)
  心情
うふふ、普段とは違う髪型になれるんですね。髪を染めたりパーマをかけたことが一度もなくて、ウィッグで変身するのが楽しみです。

ウィッグ
スミレ色のゴシック風の縦ロール

行動
商店街でこの格好は、良くも悪くも目立つはずです。周りの人々に悪印象を与えないよう、礼儀正しい振るまいや言動を心がけます。
くじ引きを一回チャレンジ。くじを引くのは私で、三等狙いです。ワイン色のバラの花束が、ゴシックの雰囲気にピッタリだと思います。ミュリーさんのお洋服の色でもありますし。
くじの結果の後は、公園で写真撮影です。お店の応援になるようなステキな写真を撮りましょうね。バラの花束が手に入った場合、それも小道具として活用します。


ソノラ・バレンシア(飛鳥・マクレーランド)
  ウィッグつけて買い物、ねぇ…
まーたまにはこういうのも面白そうじゃん?
私らそんな幸せそうに見えたのかね?

しっかし…まぁ、お似合いですよ飛鳥さぁん、ククク(からかってる
でもさー、飛鳥昔はそこまでじゃなかったけど髪伸ばしてたじゃん?何で切ったの?
邪魔ってのは何となく分かるなー。特に今はほら、ショートだから。何つーか楽だねー。

しかしどうする?もともと冷やかしのつもりだったからなー、セールで欲しい物があるわけじゃ…あー、そういやくじ引きやってるんだっけ?そこ行ってみるか。

くじはお互いそれぞれ一回だけ、より良い賞が出た方が勝ちって事でどうよ?
よし、じゃあ私先に行くわよー
…ってアレ?もしかして今写真撮った?


アンダンテ(サフィール)
  私達にお店の存亡が掛かっているのね…
頑張りましょう、サフィールさん!

ウィッグ
栗色のセミロング
ベール外してウィッグ装着

普通の色も素敵よね…
どう、似合う?ふふ、ありがとう!
サフィールさんは黒、黒ね?(じーっと見て色を覚える

道中適宜精霊の写真を撮りつつ進む
まずはドーナツでも食べにいかない?腹ごしらえは大事よ!
私はゴージャスフルーツホイップドーナツにするわね
すごく贅沢な気分になれそうだもの

それも美味しそうね…
あら、いいの?ありがとう!
…なんだか、デートみたいね?
私達って他の人から見たらどう見えているのかしら

そ、そういえば一緒にいるのに一人ずつ写るのも寂しいわよね
一緒に写りましょう?
ドーナツも一緒にね



●ドーナツリング=エンジェルリング?

「私達にお店の存亡が掛かっているのね…頑張りましょう!」
 ミュリーから話を聞いたアンダンテは、サフィールを力強い眼差しを向けた。
「まあ、頑張りましょう」
 そこまで力まなくても…は思いつつ、黒のショートヘアを選んだサフィールが振り返ると
 アンダンテはベールを外し、栗色のセミロングを装着しようとしていた。
(…ごく普通の髪色…か)
 彼女が一般人風の髪色を選んだのを見て、
 やはり彼女は一般とは違う自らの髪色に思うところがあるのだと気付かされる。
「普通の色も素敵よね…」
 ネットで髪をまとめ、鏡を見て呟いくアンダンテ。
「どう、似合う?」
「はい、似合っていますよ」
 と微笑んでみせれば、ありがとうと言って微笑むアンダンテはとても嬉しそうだ。
「サフィールさんは黒…黒ね?」
 言いつつ、じいっとサフィールを見つめるアンダンテにサフィールは少し焦ってしまった。
(そんなに見なくてもわかるはず…なんですが…)
 視力が弱いアンダンテとは視界のピントを合わせるのに必死なのだが、サフィールは知らない。
 さすがにこんなにまじまじ見つめられると…動揺を隠せない。
「…? どうしたの?」
「い、いえ、なんでも…では、行きましょうか」
 慌ててサフィールが外出を促し、2人は商店街に繰り出した。

 お店のため…と思いつつ、どこかでサフィールの珍しい姿を記録に残そうと
 アンダンテは歩きながらシャッターを押す。
(なんだか…隠し撮りをされているみたいですね…)
 写真撮影が目的だと判っていても妙に気恥ずかしい。
「まずはドーナツでも食べにいかない?腹ごしらえは大事よ!」
 そんなサフィールに行き先を提案するアンダンテはとても自然だ。
 恥ずかしさでむずがゆさを覚えつつサフィールと共にドーナツ店に入る。
「私はゴージャスフルーツホイップドーナツにするわ…」
 ひときわ豪華にデコレーションが施されたそれは、見ても食べてもすごく贅沢な気分になれそうで。
 席に着いてサフィールのトレイを見ると、シンプルなドーナツが乗っている。
 それはそれで……美味しそうに見えるのも事実。
「…どうぞ」
 アンダンテの視線が自分のドーナツに目が釘付けになるのがわかって
 サフィールは自分のドーナツを千切ると、彼女の皿にそっと置いた。
「あら、いいの?ありがとう!」
 素直に喜ぶ彼女を見ていると自分のドーナツは減るが、悪い気分にはならない。
 そんな風にサフィールがぼんやりと思っていると、不意にアンダンテの声がきこえた。
「ねえ…なんだかこれ、デートみたいね…」
 その言葉にサフィールの心拍がどきりと跳ね上がる。
「私達って…他の人から見たらどう見えているのかしら…」
 いつも通りの髪型であれば、髪色であれば、気にしないでいた事だった。
 けれど、いつもと違う自分達はどんな風に見える…?
「まあ…髪色は普通でも顔立ちは似てないですし…兄妹には見えないと思いますが
 妙齢の男女が一緒に行動しているのなら、それは…」
 口にしているうち、次第に気恥ずかしさがこみ上げてきてサフィールの言葉は途切れてしまった。
 アンダンテもそれは同じだったようで、2人の間に妙な沈黙が流れる。
「そ、そういえば!一緒にいるのに一人ずつ写るのも寂しいわよね…!」
 沈黙を破って先に口を開いたのはアンダンテだった。
「ね、一緒に写りましょう?ドーナツも一緒に、ね!」
 先ほどまでサフィールだけを映していたカメラを差し出す。
 サフィールも慌てて頷いて一緒に写真を撮影する事にした。
 アンダンテがサフィールの隣に移動し、カメラを自撮りするように構える。
 ドーナツも入れて、自分達も入れて…フレーム内に収まるように。
(アンダンテ…なんだか、顔、が…近い…!)
 何故だろう。いつもよりアンダンテを意識してしまうのは髪色のせいだろうか。それとも…
 こうして、サフィールの顔が若干強張った、けれどもとても微笑ましい2ショットが完成したのであった。


●本当に綺麗なものは

 2人とも髪の毛が長いのだけれども大丈夫だろうか…と最初は戸惑った二人だったが
「大丈夫です!髪の長い方でもネットを使えばウィッグは装着できますから!」
 という力強いミュリーの言葉で迷う必要はなくなった。
「私、ふわふわの柔らかそうなブロンドに憧れてたのよね…
 小さな頃に読んだ絵本のお姫様はみんなそんな髪だったもの」
 柔らかなウエーブを描くブロンドのウィッグを手に取り、月野輝は目を細める。
「…それに黒髪って、魔女みたいだって言う人が…多くて」
 くすりと笑ったそれは、過去の何に向けてだったのだろうか。
 それをあるベルトは笑い飛ばさずしっかりと聞いていた。
「なるほど…だから輝は「お姫様」ではなく「騎士」の立ち位置へ自分を持っていこうとしてたのですね」
「え…」
 アルベルトの言葉に、輝は少し目を見開く。
(…輝の黒髪はそのブロンドよりも綺麗だと、思いますけどね)
 そんな輝を見ながら、アルベルトはその本音はそっと心にしまうことにした。
「うん、そうね…そうかもしれない」
 輝はアルベルトの言葉をかみ締める。
 そんな輝の様子がアルベルトにとっては嬉しい。
 またひとつ、彼女は過去の自分の傷と向かい合ったのかもしれない。
「では今日は私が姫の騎士になりましょうか」
 アルベルトは笑いながらショートのウィッグを選ぶ。髪色はいつもの輝と同じ黒い色。
「さあお手をどうぞ…お姫様?」
「…ふふ、ありがと」
 ウィッグをつけて、手を差し出して笑って見せるアルベルトに微笑みを返し、
 輝は差し出された手を取って、商店街へと歩き始めた。

「ね、見て」
 賑わう書店外の中、輝はアルベルトの手を引く。
 視線の先には、2人がクリスマスに過した時間を思い出す色合いの手袋やマフラーが並んでいた。
(これを買ったら…おそろいになる、みたい)
 近づいて、そっと品物に目を配る。身につけるなら…ぬくもりを一番近く感じられるマフラーだろうか。
(…マフラー…買っちゃおうかしら…)
 と、輝が思案しているうちに、いつの間にかアルベルトの姿が消えていた。
 輝がその事に気付いていない間にアルベルトは素早く会計を済ませ、輝のもとへ戻ってくる。
「どうぞ、プレゼントです」
「これ…マフラー…?」
「ほら、よかったら撮影していただきましょう」
 ね?とアルベルトに促されるまま、マフラーを巻いて通行人に頼み、写真を撮影してもらう。
 クリスマスの思い出とお揃いのようなマフラーを巻いた、2ショットだった。

「少し、休憩しますか?」
 アルベルトの誘導でドーナツ店に入る。
 新しい店舗のため店内は人は多いため、席につくとアルベルトが注文をしに席を立った。
 帰ってきたアルベルトはテーブルに2つのトレイ並べる。
 輝のトレイには、ゴージャスフルーツホイップドーナツと紅茶。
 それとは逆に、シンプルドーナツとコーヒーを注文するのがアルベルトらしい。
 お会計は気にしないでほしいと目線で問われ、ありがとう、と輝は微笑んだ。
 そうして、今の自分たちの姿がまるで自然な事に気付く。
「このウィッグ…まるで付けていないみたいね」
「そうですね、本当に自然ですね」
 …自然なのは輝の微笑みもそうだ。それはとてもアルベルトにとって嬉しいことで。
 カメラの中にお互いに隠し撮りした写真の中でも、それぞれの姿はとても自然で…綺麗で。
 アルベルトも輝に合わせてウィッグの話しに花を咲かせる。
 そこには、ウィッグで違う髪色になったとしても、なんら変わりはない
 幸せなふたりの姿とマフラーがそこにあったのだった。
 

●仲良し2人の向かう先 

「ウィッグをつけて買い物、ねえ…」
 ソノラ・バレンシアはミュリーの依頼に興味深げな笑みを浮かべる。
「まあ、たまにはこういうのも面白そうじゃん?」
 くいっと飛鳥・マクレーランドの方を見やると飛鳥もにっと笑って頷く。
「ていうか…私ら、そんなに幸せそうに見えたのかね?」
 不思議そうに呟きながらソノラは鏡にうつった自分達を見つめる。
「幸せそうというか…お前の能天気さが勘違いされたんじゃないか?」
 ニヤリと笑ってみせる飛鳥は余裕といった状態だ。
「じゃあ、選びますか!」
 ソノラの言葉から数分後、ョートヘアのウィッグをつけたソノラは
 飛鳥の姿を見てニヤニヤ笑っていた。
 飛鳥は後ろで一つ結びのロングヘア。
 髪の色はお互い元のままだが見た目はかなりの激変だ。
「しっかし…まぁ、お似合いですよ、飛鳥さぁん?」
 くくく、と笑い混じりに声をかけてみるソノラ。
「…人の事からかうな、全く…」
 相変わらずな調子の彼女に、飛鳥は苦笑まじりだ。
「でもさー…」
 そんな飛鳥を改めてまじまじとソノラは見る。
「昔はそこまでじゃなかったけど髪伸ばしてたじゃん?」
 なんで切ったの?と問いかけるソノラに、飛鳥は少し記憶を過去にさかのぼらせた。
「何で切った、か…」
 そういえば、何故自分はそこまで伸ばしていた髪を切ったのだったか。
「特に理由らしい理由は無いぞ。あるとすれば…何となく邪魔だったから、だな。」
 つまらない返答だろうなと思ってソノラを見てみると、
 意外にもソノラは納得しているような表情だった。
「邪魔ってのは何となく分かるなー。特に今はほら、ショートだから」
 今の自分の髪型がショートなのに違和感はないらしい。むしろ気に入っているらしい。
「何つーか楽だねー。」
 と言ってソノラは笑って見せる。首周りの風通しがよくなったのが気持ちいいようだ。
「そっちもまぁ…似合ってるんじゃないか?女らしさの無いお前にピッタリだ。」
 飛鳥も負けじと皮肉混じりに返して見せると
 不機嫌さを見せるでもなく、ソノラは「な?」と言って明るく笑って見せた。
 一見はたから見てハラハラするようなやり取りもツーカーになってしまうほどに
 腐れ縁以上の仲のよさを、ミュリーは見抜いていたのかもしれない。

「しかしどうする?もともと冷やかしのつもりだったからなー」
 別にセールで欲しい物があるわけじゃ…」
 商店街に出たはいいものの、殆どノープランだったソノラは困り顔だ。
「あー、そういや…」
 少し考えたところで、ソノラがポン、と手を叩いた。
「広場でくじ引きやってるんだっけ?そこ行ってみるか。
 くじはお互いそれぞれ一回だけ、より良い賞が出た方が勝ちって事でどうよ?」
 飛鳥を見てニヤリと笑ってみせるソノラに、飛鳥もにやりと笑う。
「くじ引きで勝負…お前らしいな。」
 意気投合した2人は、人ごみをかきわけつつくじ引き会場へと足を運んだ。
「よし、じゃあ私が先に行くわよー」
 鼻息荒く意気込むソノラを見つつ、飛鳥はポケットに入っていたカメラに気付く。
 そういえばミュリーに頼まれた写真をまだ一度も撮影していなかった。
(写真の事を忘れていたな…まぁいい、今撮ってしまうか…)
 気合を入れてくじを引くソノラの横顔にピントを合わせ、シャッターを押す。
 ワクワクと輝く横顔のソノラ。
(…ま、悪くない写真が撮れたんじゃないか)
 飛鳥の押したシャッター音に、くじを引いたソノラの顔が驚いてこちらを向いた。
「…ってアレ?もしかして今写真撮った?」
「ん?まあな…」
 写真を撮るならせめてひと声かけて欲しいなとちょっと思ったソノラだったが
 自分もポケットにカメラが入っていたことを思い出してニヤリと微笑む。
「ほら、次はそっちの番!」
 促されて、次は飛鳥がくじ引きに向かった。くじを引いたまさにその瞬間を素早く撮影する。
 隠し撮りのお返し、というわけだ。
「さあさ、結果を見よう!勝負勝負!」
 お互い、手に取ったくじは1つずつ。中身を開くのは2人同時だ。
 今まさにお互いの勝負がわかれるその瞬間、2人の顔はその場の誰よりも楽しそうに輝いていた。 


●繋いだ手

(普段ならこういった類は断るんだが。…偶には良いだろう)
 納得したように店内を見回して納得するルシエロ=ザガンの傍らで、ヒロノは少し首をかしげている。
「一緒で、幸せに見えた……?」
 ルシェと共にいる自分の表情はそんなにも幸せそうに…見えたというのだろうか。
「ヒロノ、選ばないのか?」
 色とりどりのウィッグ…一体自分にどれが似合うのか。目移りをしてしまう。
「これはどうだ?」
 迷うヒロノだったが、ルシェが差し出したのは、セピアにスッと一部にピンクの差し色の入った
 アンニュイなロング編みこみにハーフアップにセットアップされたウィッグを身に付ける。
 一方、ルシェは長い髪をウィッグネットを利用し、ロングウルフの髪型になっていた。
 髪色はハニーブロンド。襟足の毛先の赤がよく映えている。
 そんなルシェの姿がなんだかまぶしくて、ヒロノは少しうつむいた。
「ヒロノ、何処へ行きたい?」
 商店街のマップを見つつ、ルシェがヒロノに問いかける。
「……ドーナツがいい」 
 くじ引きや衣類売り場など、様々なポイントで視線を巡らせ、ぽつりとひろのが呟いた。
 商店街はセールで沢山の人が行き来して混雑している。
 ルシェは経験上、ヒロノが人混みが苦手らしいのは理解していた。
 同じ混雑でも、ヒロノの希望したドーナツ店ならば、店内なので少しはマシかもしれない。
「なら、行くぞ」
 差し出された手をヒロノは小さい力ながらもしっかりと離れないように繋いだ。
(ルシェも。幸せに見えたの、かな。…だと、いいな。)
 ひろのはルシェの大きな背中を見上げる。もしルシェの姿が…ミュリーにも幸せに見えたのなら。
(一緒で迷惑じゃないなら、……いいな。)
 きっとそうだったら、どれだけ嬉しいだろうと、そう思うと握った手に少し力がこもった。

「ホイップサンドドーナツと、珈琲を頼む。ヒロノは…?」
 店内に入って注文をしつつルシェがヒロノを見て聞く。
「…これ、と、これ」
 ヒロノの細い指がシンプルドーナツと、オレンジシュースを指差す。
 ヒロノらしいセレクトに、ルシェの口元が少しほころんだ。トレイにのせ、向かい合わせにテーブルに座る。
「…ん。おいし…」
 もく、と一口食べるとじんわりとした優しい甘みが口に広がる。
 その時、カシャっと音がした。見上げた先には、カメラを手にしたルシェ。
 ルシェの手の中のカメラには、
 ドーナツを口にして緊張していた表情が和らいだヒロノの姿が映っていた。
「食べてるとき撮るの、ずるい」
「今回は、楽しそうな写真が必要らしいからな」
 少しむくれるヒロノだったのだが、ガマンするんだなとルシェは優しく微笑む。
 …それに、ひろのが笑うこともあまりないので、この写真はルシェにとっても貴重だった。
 ヒロノはむずがゆそうに肩をすくめた。
 恥ずかしいことは勿論、髪の毛が長いことにもなかなか慣れない。
 ルシェの姿も、髪の毛が違うだけでなんだかいつもと全く違って見える。
「ルシェのも、撮る」
 ぐ、っと力を込めてカメラを持ち上げると
「好きなだけ撮るといい」
 と、ふっと笑みを浮かべて、ルシェは珈琲カップを持ち上げた。
 それを見た途端、ひろのの指がシャッターを自然と押していた。
 プレビュー画面にはルシェの微笑み。それを見て、多分これ一枚で良いとひろのは思った。
 それに……ルシェは、やっぱりきれいだ。
 髪の色が違うからだろうかなんだか今日は彼がいつも以上に眩しい気がした。
「長い髪も似合うな。伸ばさないのか?」
 ルシェの言葉にひろのは驚いた。この髪の毛も…似合っている、なんて。
「……わかんない」
 ルシェに褒められるのが嬉しくて恥ずかしくて、ヒロノは目を伏せるしかなかった。
「答えになってないぞ。ヒロノ。」
 混雑するドーナツ店の中。ルシェのおかしそうな笑みと、ヒロノのはにかんだ笑みが輝いた。



●エリー・アッシェン&ラダ・ブッチャーペア

「ふふ…普段とは違う髪形になれるんですね…!」
 髪を染めたりパーマをかけた経験がないエリーは、変身できるのが楽しみで
 様々なウィッグを手にとっては鏡の前に立っている。
「お店のためだからあまり緊張しないで済むねぇ」
 ラダも上機嫌。ウィッグにはなかなか手が出ないものだが、店舗休載のためなら心は軽い。
 それに、ラダには一度試してみたかったヘアスタイルがあったのだ。
 本当はとても手間がかかる髪形なのだが、ウィッグなら気軽に挑戦もできる。
 少しして、鏡の前にはいつもと違う2人の姿があった。
 エリーはスミレ色がまぶしい、ゴシック風の縦ロールヘア。
 念願のカールが強くあたった髪の毛に、エリーのテンションも上がる。
 いっぽうのラダは、細めに編まれたドレッドヘアーだ。
 髪飾りに鮮やかな赤黄緑のヘアビーズも数多くついている。
「これ、ブレイズっていう髪型なんだよぉ」
 憧れの髪型にできて、ラダは上機嫌だ。
「さあ、行きましょうか!」
「そうだね!」
 いつもと違うヘアスタイルに心おどらせ、2人は商店街にくりだした。

 …が、商店街のメインストリートに入る時にエリーは気付く。
 自分達の姿は良くも悪くも…けっこう目立つ。
(周りの人たちにに悪い印象を与えたら、ラダさんにもミュリーさんにも迷惑だわ…
 こんな姿だからこそ、礼儀正しい振るまいや言動を心がけなくては…)
 上がりすぎそうになるテンションをぐっとこらえ、
 2人はあらかじめ行く事に決めていたくじ引き会場に向かうことにした。
 景品めあてに大賑わいの楽しい広場を見回し、ラダはもうすでに何枚かシャッターをきっている。
「私が、くじを引きますね…!」
「うん、がんばって…!」
 見守るラダに手を振って、エリーはくじ引きの台に近づく。
(1回勝負…決めたいわ、是非!)
 エリーの狙いは三等の花束。できるならワイン色のバラの花束を作りたい。
 きっと今の自分のゴシックな服装にピッタリだし…それに。ミュリーの洋服の色でもあるから、だ。
 一方、ラダの願いは二等のレストラン…なのだが。
(けど、フォーマルな場所だと入店、断られないかなあ…)
 ここまで考えて思い直す。ならば、エリーの狙い通り、三等が出るように念じるのみだ。
「いきます…!!」
 ラダが見守る中、エリーがくじを引いた――…

「さあ、撮影しましょう、ラダさん!」
「ようし、いい写真、撮らないとね!」
 所かわって、ここは公園。エリーの手には、ワイン色の花束が握られている。
 見事、エリーは三等を引き当てたのだった。
 とても素敵な当選結果。そして…とても素敵なバラの花束。
 お店の応援になるような、とてもステキな写真を撮りたいのがエリーの願い。
 もちろん、それはラダも同じ。
「さ、ラダさん…もう少しこっちに」
 同じフレームに、自分もラダも花束も入るように。
 そして、自分達の笑顔も一緒に写るように。
(あら…)
(あれぇ…?)
 シャッターを押す寸前二人は気付いた。
 なんだかこの距離は…今付けているウィッグと同じように…今までとなんだか、違うような…。
 カシャリ、というシャッター音と共に
 2人の満面の笑みがワイン色のバラの花束と共にきらめいていた。


●ミュリーの机

「…ありがとうございます…!」
 机の上に集まった、何枚もの写真たち。
 それを眺めて、オーナーはこの店舗の存続を了解してくれた。
 これからも頑張りなよ、という言葉をもらって、ミュリーはがばっ!と頭を下げる。
「本当に、ありがとうございました…いつか、ご恩はお返しします…!」
 カメラを渡してくれた人たちに言ったお礼を、ミュリーはもう一度口にする。
 ミュリーの机の上には、5組それぞれの笑顔がウィッグと共に輝いていた。
 それは、きっとこの店だけではなく、世界を照らしてくれる希望の光。
「ウィッグ…つくってきて、よかった…」
 感謝と感激と、そして嬉しさの涙が、そっとミュリーの頬に光ったのだった。


FIN



依頼結果:大成功
MVP
名前:エリー・アッシェン
呼び名:エリー
  名前:ラダ・ブッチャー
呼び名:ラダさん

 

名前:アンダンテ
呼び名:アンダンテ
  名前:サフィール
呼び名:サフィールさん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 京月ささや
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 02月17日
出発日 02月24日 00:00
予定納品日 03月06日

参加者

会議室

  • [5]ソノラ・バレンシア

    2015/02/23-15:42 

    はいはいソノラさんですよー。
    特に目当てのブツはないんでぶらぶら冷やかす感じかねぇ。
    てきとーによろしくー。

  • [4]ひろの

    2015/02/22-23:09 

  • [3]アンダンテ

    2015/02/22-16:07 

  • [2]月野 輝

    2015/02/20-21:09 

    ひろのちゃん達とアンダンテさん達はお久しぶり。
    エリーさん達とソノラさん達は初めましてね。
    私は月野輝、パートナーはシンクロサモナーのアルベルト、どうぞよろしくね。

    ウィッグで変身とか、楽しそうよね。
    私は髪が長いから大丈夫かなって最初思ったんだけど、
    ネットを被れば大丈夫みたいなので協力する事にしたの。

    みんな素敵に変身できればいいわね♪

  • [1]エリー・アッシェン

    2015/02/20-18:40 

    エリー・アッシェンと申します。
    商店街でミュリーさんのウィッグをウィンクルムがアピール。お店が上手くいくといいですね。


PAGE TOP