【メルヘン】お菓子工場の不思議なパーティ(京月ささや マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

●一枚のチラシが導いたお菓子工場のパーティ

立ち込める瘴気を浄化しようと、ショコランドにきたあなたたち。
「そこのお二方、よろしければ是非!我らのお菓子工場へ!」
デートの場所をどうしようか…と街中を散策していると、元気のよい声が聞こえてきました。
見ると、ショコラの精霊があなたたちの手元にチラシを配っています。

手にしたチラシをみてみると、『倉庫大解放!スゥイート・シャングリラパーティ!』の文字が。
開催場所はブレーダーマンのお菓子工場の別館。
どうやらこのチラシ、見渡すとあちこちで配られている様子。
しかも、今あなたたちがいる場所は、その工場から徒歩数分の場所のようです。

ひとまず見に行ってみるか…と、そのまま道をまっすぐ歩いてみると、
ほどなくブレーダーマンのお菓子工場の入口にたどり着きました。
そこには『スゥイート・シャングリラ大放出!記念パーティ』と書かれた
キラキラと輝く看板が。
入口で案内をしている職員の精霊さんに聞いてみると、
工場の倉庫にずっと保存していた貴重なお菓子の材料を解放したので
その記念に行われるパーティが本日1日だけの限定で開催されるというのです。
しかも、この日に工場見学に訪れた人は誰でもこのパーティに参加可能!

「ようこそいらっしゃいました!この暗い世の中、どうかハートとお洋服だけでもハッピーに!」

入口に立っていた別の精霊が笑顔であなたたちを迎えます。
詳しく聞いてみると、
瘴気やオーガによるチョコレート不足で暗い気持ちになっていた
ショコランドをなんどか明るくしようと、
工場で働く精霊たちが計画したパーティーなのだとか。
倉庫にたくわえていた貴重なチョコレートやキャンディの材料を使って作られる、
一風変わったチョコレート菓子の魅力を
めいいっぱい楽しんでもらえるパーティなんだそう。

そのお菓子の名前は『スゥイート・シャングリラ』。
固まると口以外では溶けないチョコと、宝石のような輝きのキャンディを組み合わせて作る
ジュエリーのように身に付けても食べても楽しめる、とっても不思議なお菓子だそうです。

工場内に入ったあなたたちは、別館に誘導する立て看板にそって歩いてゆきました。
すると、別館ではまさにパーティの真っ只中!
パーティ会場では、様々なアクセサリーの形をした
『スゥイート・シャングリラ』の試食&試着会や、
オリジナルスゥイート・シャングリラの手作りイベントも開催されています。
ほかにもチョコ&キャンディをテーマにしたダンスイベント
『スウィートロリポッピンショー』が夕方から行われる予定だそう。

「さあさ、皆さんどうぞ、このくら~い気分を吹き飛ばすために
 このパーティを心ゆくまで楽しんでくださいね!
 ここで手にしたお菓子は全てお持ち帰り自由です!」

ここまで来たからには、楽しまないわけにはいきません。
こうして貴方達は、この楽しそうな工場内のパーティに参加することをきめたのでした。

解説

解説

●スゥイート・シャングリラパーティについて
 ブレーダーマンのお菓子工場の中で働く精霊達によって企画されたパーティ。
 昼の3時からはじまり、夜の9時まで開催されています。

●消費ジェールについて
 パーティ参加費用として一律500ジェールを消費とさせて頂きます。

●スゥイート・シャングリラについて
 口に入れる以外では溶けることがないチョコレートと、
 宝石のような輝きのキャンディを組み合わせて作られる
 とてもキレイなチョコレート菓子です。
 お菓子としてはもちろん、アクセサリーとしても利用できます。

●試着・試食コーナーについて
 工場で作られたスゥイート・シャングリラの数々を
 食べてみたり、身に付けてみたりすることができます。
 ティアラやネックレスに王冠など、職人芸が光るお菓子が満載。
 身に付ければプリンセス・プリンス気分が味わえるかも?

●手作り体験について
 会場の一角で行われているお菓子作り体験コーナー。
 宝石のようなジュエリーキャンディ、
 粘土のように伸ばしたり丸めたりできて1時間ほどで固まるチョコ
 キャンディに好きな味や色を付けられるシロップや、
 チョコを金色や銀色にできるスプレーが用意されています。
 2時間以内に好きな材料を使ってオリジナルのスゥイート・シャングリラを作成できます。
 作成したスゥイート・シャングリラはお持ち帰りが可能。

●スウィートロリポッピンショーについて
 会場のメインフロアで午後6時~夜9時にかけて行われる音楽とダンスのイベント。 
 このショーに参加する人は、お菓子の仮面を付けて
 ダンスフロアで歌って踊ることができます。
 演奏ステージにも飛び入りは自由です。

●その他
 会場から外に出ると、さわやかに炭酸がはじける小さなサイダーの池があります。
 疲れたらこのサイダーが溢れるブルーの池のほとりで一休みしてもいいかもしれません。

ゲームマスターより

はじめまして、京月ささやと申します。よろしくお願いします!

お菓子工場内で行われているパーティに参加し、
さまざまな体験をしながら思い出を作っていただけるエピソードです。

皆様にとって、とても楽しいストーリーになるよう頑張ります。
どうぞ宜しくお願い致します!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

油屋。(サマエル)

 
ふと周りを見渡して思い出す
バレンタインの存在を忘れかけていた

スウィート・シャングリラを発見し
精霊が宝石好きなのを思い出してプレゼントしたいと考える
見ちゃ駄目だからね ってこら 笑うなーっ!
四苦八苦しながらキャンディ+チョコのネックレス作成
背中を預ける「相棒」に感謝の気持ちを込めてプレゼント

(サマエルがお礼を言うなんて…)

精霊が泣きそうな顔をしていたから思わず
本当はアタシに何て言って欲しかったの?
言わなければ良かったのに
気づかないふりをしていればずっとこのままで居られたのに
でも、いつか言わなければならないのなら

ごめんねサマエル
アンタが一番欲しがってる物はあげられないんだ

精霊の告白を断る


かのん(天藍)
  キラキラして本当に宝石のよう、綺麗ですね

手作り体験
天藍の頼みに紙と筆記具を借り薔薇の花の分解図を書く:植物学スキル
折角だからと一緒に作る
薔薇の形のチョコに青のキャンディを添え

天藍からのお菓子のお返しに自分が作った薔薇のチョコ菓子を渡す
髪留めや渡したお菓子の色合いから青が好きなのかと聞かれ

天藍って異国の言葉で空色の意味ですよね
その色合いをイメージしました

いつか晴れた空色の薔薇をこの手で咲かせたいと思っている事
顕現し適正者として紹介された時、天藍の名前が私が一番欲しい色の名で不思議な縁を感じた事を話す

天藍の気持ちがとても嬉しく貰った赤薔薇を手に包み大切にしますねと
お礼の気持ちを行動で示し頬にキスを



エリー・アッシェン(ラダ・ブッチャー)
  心情
こんな時だからこそ賑やかなパーティを開く。その心意気、ステキです!

行動
試着コーナーでお気に入りのスゥイート・シャングリラを探します。銀色のティアラを試着。プリンセスなんてガラではないですが、せっかくのパーティですから照れよりもノリですよ!
バリバリムシャァと試食品を噛み砕くラダさん。その食べっぷりだと、本当に金属を食べているみたいで怖いですよ。見かねて、口元を拭くためのハンカチを貸します。
午後六時からのショーでは、仮面をつけて踊りましょう。
ステージに飛び入り参加するラダさんを手を振って見送ります。私は音楽には詳しくありませんが、ラダさんの歌声は好きです。ハスキーで伸びやかな美声だと思います。


ドロテア(フィデリオ)
  楽しんでいきましょうね、フィー

まずは試着・試食コーナーに行ってみたいですわ
プリンセス気分が味わえるだなんて夢のようですの

わあ、綺麗…
銀色のティアラを身に付けてみる
どうですか、プリンセスに見えます?
えへへ、嬉しいですわ!

フィーも付けてみてはいかがです?
私がプリンセスならフィーはプリンスですわ!
王冠を手に取り精霊に乗せようとする

誘われて目を輝かせる
まあ、それは素敵ですわ!

私に似合う色はなんでしょう?
青……確かにそんな気がしますわ

少し形は歪な所もあるけどティアラ完成
勿論ですわ!
だってこれはドロテアのためのティアラです
ドロテアとフィーが一緒に作った、世界に一つだけのものですわ
ずーっと大事にしますわね!


織田 聖(亞緒)
  初めての亞緒さんとのお出かけ、です。
緊張しますが…楽しみです、ね(にこ)

●試着
わぁ…素敵なアクセサリーです…!
ティアラ似合いますか?嬉しいです。
亞緒さんに王冠…あ、兎耳で難しいですか、ね…

●手作り
(ならば!と亞緒専用王冠を一生懸命チョコで作成)
結構難しいです…!
(とりあえず被れるもの完成)
わぁ、指輪…!ありがとうございます(にっこり)

●ショー
え?王冠付けてくださるんですか?嬉しい、です。
(ダンスにドキドキ)

●サイダー池
お疲れではないですか?
私は大丈夫です、よ。凄く楽しいです。
亞緒さん…不束者ですが、これからよろしくお願いします(ぺこり)

…亞緒さんが、優しい人で…本当によかった、です(にこ)



●心にずっと秘めていたこと

「これは…凄いな、本物の宝飾品みたいだ」
 会場にずらりと並んだスゥイート・シャングリラたち。
 光り輝くそれらを見て、天藍はまるで本物のの宝飾品みたいだと口にした。
 その言葉は、はからずとも、かのんが考えていたことと全く同じ。
 その事が嬉しくて、ここに来てよかったと嬉しさがこみ上げてくる。
「かのん、あそこで手作り体験があるらしい…行かないか?」
「ええ、是非。作りましょう」
 天藍の提案にかのんは素直に頷き、体験会場に足を運ぶ。
 到着すると、ほどなく二人の前に運ばれてくる材料たち。
 天藍はチョコに手を伸ばしたが、その手がふと、とまった。
「…かのん、頼みがある。俺は薔薇を作りたい…綺麗に作りたいんだ。
 手を貸してくれないか?」
「ええ、喜んで…!」
 また、同じ…。かのんも薔薇を今まさに作ろうと考えていたのだった。
 二人の考えがシンクロしているのを感じ、
 かのんは丁寧にキッチンペーパーに図解を描いていく。
 そうしてほどなく…2人の薔薇のスゥイート・シャングリラが出来上がった。
 二人の手には、それぞれ大輪の薔薇の花がジュエリーの輝きと共に咲き誇っていた。
「本当に、きれい…」
 思わず互いの薔薇に見とれてしまう。図解は同じでもそれぞれの個性がよく出ていた。
 それぞれの花がとても魅力的だと、そう思う。
 二人がスゥイート・シャングリラを作り終えた頃には、もうショーが開幕していた。
「ショーもいいが…池の方に行かないか?」
 そっと天藍がかのんに語りかけると、かのんは頷く。
 そうして腰を下ろした池の畔では、会場からショーの音が薄らと聞こえてきていた。
「かのんに渡したいと思って作ったんだ」
 天藍がそっと手にしていたスゥイート・シャングリラを差し出す。
「ありがとうございます…私も、これを…」
 互いの薔薇を交換しあい、微笑む。天藍が受け取った薔薇には、青く輝くキャンディ。
「このキャンディもかのんの髪留めも青、だな…かのんは青色が好きなのか?」
「ええ…この薔薇につけた青いキャンディは、天藍のお名前…
 天藍って、異国の言葉で空色の意味ですよね?その色合いをイメージしました」
 自分の名前をイメージした…その言葉に、天藍の胸は高鳴る。
 そんな天藍を、かのんはそっと見つめて続けた。
「私は、いつか晴れた空色の薔薇をこの手で咲かせたいと思っています
 顕現し、天藍が適正者として紹介された時、その名が
 私が一番の夢の色の名だったから…不思議な縁を感じたんです、その時に」
 胸のうちを聞かされ、天藍も自然とその口が隠していた心を紡いでいた。
「俺は…バレンタインに男が女性に花を贈るという風習を知った。
 その時にかのんに花を贈りたいと思った…けれど、気が引けいていた…」
 仕事柄、かのんの自宅には常に綺麗な花が咲いている。
 だからこそずっと引け目を感じていた。
 彼女の生業である花を自分が贈るに値するだろうか…と。
「そんな時に、自分の手から生み出せるこの手作り体験があると知って決めた。
 …これなら、かのんの近くに誇りを持っておいて貰える、と」
「天藍…」
 かのんは言葉につまる。嬉しかったのだ。
 天藍が自分へこんなに精一杯の気持ちを示してくれている事が。
 包み込むように天藍の思いが形になった薔薇を抱きしめ、
 かのんはそっと天藍の頬に口づける。
「大切に、しますね…」
 そのくちづけは、何よりの感謝の印。
 目の前に広がるサイダーの青く光る水面も、自分達を祝福してくれているかのようだ。
 彼女をずっと大切にしたい。その気持ちを込めて、天藍はそっとかのんを抱き寄せた。
 いつか彼女が自分の名と同じ色の薔薇を咲かせる時、傍で共に見たいと願いながら… 
 

●思いは交差し、そして…

 今日がバレンタインだという事を、すっかり忘れていた油屋。
 そんな彼女と共に工場のパーティに足を運んだサマエルは気が気ではなかった。
 このパーティはバレンタインに相応しいイベントが沢山あるの。
 もしも、自分の人形である彼女が自分以外の誰かに思いを抱いてしまったら…?
 いや、そんなはずはない。彼女は自分だけの人形…だが、不安は尽きない。
「全く、こちらの気も知らず…」
「ねえサマエルは宝石が好きだったよね?」
 サマエルの気持ちを知ってか知らずか、
 油屋はサマエルが宝石好きだと思い出したようだ。
 一直線に手作り体験コーナーに向かうと、油屋は熱心に何かを作り始めた。
「見ちゃ、ダメだからね」
 背中を向けているように釘を刺してから油屋は作業をはじめたが、
 言われてみれば見たくなるというもの。
 こそりと様子を盗み見てみれば、
 油屋は必死にチョコを伸ばして金銀に色付け、宝石を付けようとしている。
 だが、その指先はちょっと不器用で。
 必死になって作るその様子が可愛く思わず笑いが出てしまう。
「こら!笑うなーっ!」
「いや?笑ってなど…ふふ」
「笑ってるじゃないか!」
「いいのか? 手をとめると固まるぞ?」
 そんなやりとりを交わすうち、出来上がったのはネックレス。
「ほら、あげる…相棒のしるしだよ。いつもありがと」
 油屋からサマエルに渡されたそれは…不器用ながら気持ちがこもっているもので。
 しかし、サマエルの言葉は嬉しさと同時にずくりと痛む。
 …これは相棒として、渡されたのだから。
「ありがとう…大切にする」
 だが、気持ちは本当に嬉しい。自然と笑みがこぼれ、感謝を口にしていた。
 サマエルの言葉に油屋も驚く。いつもドSだと思っていたサマエルがお礼を言った…
「折角のパーティだ。…踊るか?」
 油屋の作ったネックレスをつけて、サマエルがダンスに誘う。
 楽しい音楽が流れる中、ネックレスの光に誘われるように
 油屋はダンスフロアへ導かれた。
 サマエルは油屋の手を取る。相棒としての証のネックレスを付け、仮面をつけて。
 腕の中で不器用ながら踊る油屋も嬉しそうに見える。…これでいい。
 しかし、仮面ごしに判るほど泣きそうな顔をしていたらしい。
 気づけば油屋がサマエルを見上げていた…
「サマエル…」
「…ん?なんだ?」
「…サマエルは…私になんて言って欲しかったの…?」
 どくん、と鼓動が大きく鳴った。まさか…神人からこういった言葉を聞くとは。
 告げても、いいのだろうか。彼女の言葉でもう逃げ場は無くなった。自分は…
「…愛している…俺は、早瀬を…」
 一度口にしてしまえば、もうとめることはできなかった。
 思いを告げるサマエルとは裏腹に、油屋は哀しい気持ちを抑えられない。
 油屋もいつのまにか気付いていた。サマエルが自分をどう思っているかを。
 そして今の告白で、それが的中していた事を。
「言わなければ…よかったのに…」
 小さく小さく呟く。気付かないふりをしていればずっとこのままで居られただろう。
 けれども、いつかこの言葉を言わなければならないのなら、それはきっと今。
「ごめんねサマエル…アンタが一番欲しがってるものはあげられないんだ」
 その言葉に、サマエルは呆然と油屋を見つめる。
 愛しているという気持ちの、拒絶。
 過去に彼女は『このまま一緒に過せたら良いのにね』と言っていた筈ではなかったのか。
 なぜ自分の気持ちを知りながら彼女は突き放すのか。なぜ…
 互いを知ったせつなさがにネックレスは哀しく光る。
 哀しい表情は仮面の下に隠して、2人はただ音楽に身を委ね踊り続けるのだった。



●華やかに咲く秘め心
 
 暗い気持ち…だからこそ、少しでも明るく!
 そんな前向きな気持ちがエリー・アッシェンとラダ・ブッチャーの足取りを軽くさせる。
「うっふふ…こんな素敵なお菓子が試着できるんだったら楽しまないテはないですね!
 さあ、思いっきり楽しみましょう、ラダさん!」
「そうだね、すっごく楽しそうだしね!」
 うきうきと二人が足を運んだのは、スゥイート・シャングリラの試着コーナー。
「プリンセスなんてガラじゃないけど…」
 エリーが数ある中から手に取ったのは銀色に輝くティアラ。
(こういう時こそ楽しむのが一番!照れよりノリでいかなきゃ…!)
 一瞬ためらいつつも、エリーはティアラを付けてみる。
「イェーイ!!今の俺!すっごく王様!!」
 一方、反対側では金色の王冠を頭上に載せたラダが、上機嫌でスゥイートシャングリラを物色中。
 その様子があまりに楽しそうなのでエリーがラダに近づけば、ラダはキラキラした瞳をこちらに向ける。
「ねえねえ、こんなにキレイなものが食べられるって信じられないよね!」
「ええ、ほんと。固さもあるし全然溶けないし…」
「じゃあ、食べてみようよ!いただきます!」
「え、ちょ…!!ラダさん…!」
 ラダはエリーの目の前で大きめの紅い宝石がついた指輪をポイと口に放り込んでしまった。
「んん~!美味しい!これ、イチゴ味の飴とチョコだよ!」
 それに美味しい!と更にラダは上機嫌。
「ほら、食べてごらんよ!」
 と、緑色の宝石がついたブローチを渡されて口に含むと、青りんごの味がエリーの口いっぱいに広がる。
「…美味しい!」
「でしょでしょ!たっくさん食べるよ~!」
 そう宣言すると、ラダは今度はおおきなネックレスを掴み
 バリバリと音を立てて飴とチョコをあっという間に噛み砕いていく。
(うーん、金属を食べているみたいに見えるわ…)
 そんな、誤解されがちだけれど根が明るく優しいラダを、エリーは大好きで。
「ラダさん、口元…いっぱいついてますよ」
「ん?あ、ありがと!いや~ホント美味しい!最高!」
 ポケットからハンカチを出して手渡したラダの顔はとても嬉しそうで。
 それを見て、甘酸っぱい思いがエリーの胸を染めていく。
 そうこうしているうちに、時計はもうすぐ6時になろうとしていた。
「ねえラダさん、せっかくだからショーにも参加しましょう!仮面もお菓子ですって…!」
 エリーに手を引かれ、ラダの気持ちは若干複雑だ。
 エリーの気持ちに気が付いていないわけではない。だが今は…まだ、何かが違う。
 ダンスを二人で踊ってエリーを勘違いさせてしまうのはきっと一番残酷。
 だから、ダンスフロアに入るが早いか、仮面を付けてエリーの方を振り返る。
「ここって飛び入りオッケーなんだっけ?」
「ええ、確か大丈夫なはず…」
「じゃあ、ボクは歌っちゃおっかな!皆で盛り上がれそうな歌にしよう!」
 そう言うと、あっという間にラダは舞台に駆け上がってしまった。
 一緒にダンスを踊ろうとしていたエリーは少し複雑に思いながらも
 いちもくさんに駆け上がるラダを手を振って見送る。
「みんな!明るく楽しく最後まで楽しもう!イエー!」
 フロアを思い切り盛り上げてラダは歌い続ける。
 ラダの明るく元気な歌声は、ポップソングにとてもマッチした。
 その歌声にわっとフロアから歓声が上がる。その姿はまるでトップスター。
 舞台上のラダの姿を、エリーは少し切なく、しかしとても誇らしく思う。
(ラダさん…私、ラダさんの歌声は好きです。ハスキーでとっても伸びやかで…)
 そして思う。外見も何も全く関係がない、美しい声。
 やっぱり自分はラダが大好きで仕方が無いと、舞台上で輝き続けるラダを見て
 改めてエリーは自分の気持ちをかみ締めるのだった。


●世界にたったひとつの

「なんて豪華なんでしょう…!」
 パーティー会場に入ったドロテアの胸は高鳴る。
 屋敷に暮らしてはいるものの、両親は滅多に戻ってはこない。
 それに比べて、フィデリオと共に訪れたここは、なんて賑やかなのだろうか。
「フィー、まずは試着・試食に行きましょう!」
「ああ、そうしよう」
 試着コーナーは、豪華なスゥイートシャングリラの数々が並んでいる。
 背中をツンツンとつつかれてフィデリオが振り返ってみると
 いつの間にか銀のティアラを装着したドロテアがフィデリオを見上げていた。
「フィー、どうです?プリンセスに見えます?」
「…ああ、見える」
「えへへ、嬉しいですわ!!」
 頷いたフィデリオにドロテアは上機嫌だ。
 フィデリオはどうして反射的に頷いたのだろうか少し戸惑っていた。
 もしかしたら、その場の空気に流されたのかもしれない。
 …が、ドロテアが楽しそうなのが何よりフィデリオにとっては心地いい。
 そう思っていると、ずずいっと目の前に王冠が差し出された。
「ねえ、フィーも付けてみてはいかがです?」
 それはまるで童話の王子がつけているような王冠の形。
「私がプリンセスなら、フィーはプリンスですわ!」
 ドロテアはフィデリオの頭に王冠をのせようとした…のだが。
 身長がフィデリオよりも低いためどうしても届かない。
「も、もう少し…」
 ぐぐぐ、と伸びをするドロテアを見てフィデリオはしみじみと思う。
(俺はプリンスって柄じゃないと思うんだけどな…)
 そう考えつつもかがんでみる律儀なフィデリオ。
「届きましたわ!とてもよくお似合いよ!」
 それはどうみてもプリンセスとプリンス、というよりは女王から褒美を賜る配下に見えているのだが
 ドロテアはそれに全く気付いていたいので、フィデリオは口に出さないでおく。
 そのかわり、気になっていたことを伝えることにした。
「ドロテア…そのティアラ、髪の毛と同じ色だから少し気になるんだが」
「そういえば…そうですわね…」
 銀の髪に銀のティアラでは同じ色。このままでは髪の毛に同化して見えてしまう。
「考えたんだが…違う色でオリジナルを作ってみるのはどうだ?手作りできると聞いたんだが」
「まあ!それはステキですわね…!」
 そう言ってフィデリオと共に手作りコーナーに移動したドロテアは、
 どうせ作るならなら…自分に似合う色のティアラをと考えていた。
 好きな色よりは…目の前の、この精霊に決めてほしい。
「フィー、私に似合う色はなんでしょう?」
 フィデリオは一瞬考えこみそうになったが、思いなおす。
 目の前にはどんなひときわ輝いているドロテアの瞳があった…この色がいい。
「…青だな。海のような青い色が似合うと思う」
「青…確かに、そんな気がしますわ…!」
 納得してうなずくと、早速ドロテアはティアラ作りに取り掛かった。
「俺も手伝おう」
 フィデリオもそう言うと、ドロテアの手伝いをする。
 ああでもないこうでもないと試行錯誤するドロテアの姿は一生懸命だ。
 そして、ようやくすこしいびつではあるが、ティアラは完成した。
「…展示している物とは少し違うが…構わないのか?」
 フィデリオの言葉に、ティアラを付けてドロテアは誇らしげに笑ってみせる。
「勿論ですわ!だってこれはドロテアのためのティアラです!
 ドロテアとフィーが一緒に作った、世界に一つだけのものですわ」
 誇らしげに胸をはるドロテアの笑顔は、孤独さの欠片も感じられない明るいもので。
「ずーっと大事にしますわね!」
 輝く笑顔を見て、フィデリオは微笑む。
「それなら、良かった…」
 その笑顔は、宝石よりもティアラよりもまぶしいと思うフィデリオだった。


●夕暮れの下で輝いたものは

  織田 聖にとって、亞緒とのはじめてのデート。
 何をするにも鼓動が高鳴るのだが、
 それをパーティ会場のあちこちで輝くスゥイート・シャングリラが更に彩った。
 まず2人が立ち寄ったのは試着&試食コーナー。
 並べられた数々のアクセサリーはどれも素敵なものばかりで、思わず付けてみたくなる。
「聖さん、似合いますね…お姫様みたいですよ」
 ティアラをつけてみた聖に亞緒は優しく微笑んでみせる。
「ありがとうございます、嬉しい…!そうだ、亞緒さんも王冠を…ってあ…」
 王冠を探そうとして聖は困ってしまった。亞緒は兔の耳がある。
「ふふ、確かにこの耳があると王冠は少し難しいですね…」
 くすくす笑う亞緒に、必死に聖は考える。そしてひらめいた。
 ここに無ければ、作ればいいのだ…!
「亞緒さん、私、手作りコーナーで王冠、作ります!」
「ええ、そうしましょうか」
 微笑む亞緒に元気付けられ、二人は手作り体験でそれぞれに作品を作り始めた。
 必死に王冠を作っていく聖だったが、ふと見ると亞緒も何かを作っている。
(何を作ってるんだろう…)
 そう思いつつも、チョコが固まるまでは1時間。時間はあっという間だ。
 かなり難航はしたが、なんとか亞緒がかぶれる王冠を作ることができた。
「あの、これ…できました、どうぞ…!」
 王冠を渡すと、亞緒は嬉しそうに笑って受け取る。
「ありがとうございます、では、私もお返しにこれを…」
 そう言って、そっと聖の掌におかれたのは、キレイな宝石キャンディがはめ込まれた指輪。
「わあ、指輪…!ありがとうございます…!」
 きらびやかな指輪と、亞緒の気持ちがとても嬉しい。
 特別なものをもらったような気持ちで、聖は指輪をそっと指にはめた。
 見上げると、亞緒も自分が作った王冠を装着している。
 手作りなので職人のように上手な仕上がりではない…
 それでもかぶってくれる亞緒の気持ちに嬉しさがこみ上げる。
「さあ、もっと楽しみましょう…ね?」
 そして、王冠をかぶった亞緒は、聖を手招きして、ダンスフロアに誘った。
 フロアに到着したふたりにお菓子の仮面が手渡される。
 仮面を付けた亞緒は、スッと聖の手を取ると微笑んで見せた。
「お姫様…踊っていただけますか?」
 仮面ごしでもわかる亞緒の瞳と微笑みのキレイさに、ドキドキしながら聖は頷く。
 そっと手に手をとり、二人の距離がぐっと縮まった。
「実はね、私もダンスは初心者なんです…」
 それはそっと恥ずかしそうに囁かれた言葉。
 失敗してもわらわないでくださいね?と言われて聖は首をぶんぶんと横に振る。
 笑うなんて出来るはずがない…こうして踊っているだけでも、
 こんなにトキメキで胸がいっぱいになるのだから。 
 ダンスの時間は、王冠を作っているよりも長く、けれどもあっという間に過ぎて行った。
「…聖さん、お疲れではないですか?」
 ダンスを一区切りして、サイダーの池へと2人は足を運んだ。
 そういえばずっと立ちっぱなしでいたことを思い出す。
「私は大丈夫です、よ。凄く、楽しいです」
 明るく笑う聖。その笑顔をとてもステキだと亞緒は感じていた。
 微笑みながら頷き、よかったと返す亞緒に、聖はぺこりと頭を下げた。
「亞緒さん…不束者ですが、これからよろしくお願いします…!」
 それは、ちょっぴり勇気のいる挨拶だと、亞緒はわかっている。
「こちらこそ、これからよろしくお願いします」
 微笑を返すと、聖の笑顔がよりいっそう輝いたような気がした。
「今日一日で聖さんの笑った顔を沢山が見ることができて安心しました…」
 立ち上がって、聖の手を取り、微笑みかける。
「よかったら…もう一曲、踊っていただけますか?」
 …もっと見たいと思うのだ。彼女の笑顔を。このパーティでも、これからも。
 そして、それは聖も同じだった。
「はい…喜んで。…亞緒さんが、優しい人で…本当によかった、です…」
 夕暮れの空の下、ふたりの笑顔がどの宝石よりも輝いた瞬間だった。
 

FIN.



依頼結果:成功
MVP
名前:油屋。
呼び名:乳女 ゴリラ 早瀬
  名前:サマエル
呼び名:サマエル

 

名前:織田 聖
呼び名:聖さん
  名前:亞緒
呼び名:亞緒さん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 京月ささや
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 02月11日
出発日 02月16日 00:00
予定納品日 02月26日

参加者

会議室

  • [9]油屋。

    2015/02/15-23:21 

  • [8]かのん

    2015/02/15-23:16 

  • [7]織田 聖

    2015/02/15-19:17 

    織田 聖のパートナーの亞緒と申します。
    よろしくお願いいたします。

    結局、盛り沢山なプランとなってしまいましたが提出完了しました。
    皆様の楽しそうな姿も楽しみにしております。

  • [6]エリー・アッシェン

    2015/02/15-17:17 

    おおっと、挨拶がラストになっちゃいましたね!
    エリー・アッシェンですよ~。うふふぅ~。

    パートナー精霊のラダさんは、スウィートロリポッピンショーの音楽に興味があるみたいです。

  • [5]ドロテア

    2015/02/15-11:18 

    初めまして、ドロテアと申します。
    どうぞよろしくお願い致します。
    付けてもよし、食べてもよしで何をしようか迷ってしまいますの。
    今からすごーく楽しみですわっ!

  • [4]油屋。

    2015/02/14-23:50 

    こんちはー!油屋。だよっ!!初めましての人もお久しぶりの人も宜しくねっ♪
    試食と聞いてやって来ましたッ!食べるよ食べるよーっ!!!
    あ、そういえばバレンタインだった……。

  • [3]かのん

    2015/02/14-23:36 

    油屋。さんとエリーさん、お久しぶり
    ドロテアさんと聖さん、はじめまして
    何だか色々あって、何をしてみようか本当に迷ってしまいますね
    ふふ、楽しそうです

  • [2]かのん

    2015/02/14-23:34 

  • [1]織田 聖

    2015/02/14-01:01 

    はじめまして。織田 聖と申します。
    よろしくお願いいたします(ぺこ)

    隣は黒兎テイルスの亞緒さんです。
    試食に試着に手作りにダンス…参加できるものが多くて悩みます、ね。
    皆様とお会いできますのを楽しみにしております、ね(ぺこ)


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