【スイーツ!】チョコ鍋を楽しもうよ!(如月修羅 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

「チョコ鍋フェスタに行きませんかー?」
 職員がそう言って、のんびりと掲示物を眺めているウィンクルム達に声を掛けた。
「ちょっと前に別の人が説明してたと思うんで、聞いた人もいるかもしれませんが……今回はフェスタの方の紹介ですよー」
 チョコ鍋フェスタという催しがあって、そこの名物を食べに行きませんか、というお誘いらしい。
「こうやって楽しむことによっても貢献できますし、是非是非皆様楽しんできてください!」
 ところで、とウィンクルムの一人が手を挙げた。
 チョコ鍋と言っているが、それはチョコレートフォンデュみたいなものであっているのだろうかと。
「あぁ、勿論それもありますよ!
フェスタ中央の広場では、チョコの噴水がありまして、そこでフォンデュが楽しめます」
 いやまて、とウィンクルムが突っ込む。
「……それも?」
 不吉な予感。
「チョコ鍋ですから、普通にキノコとか肉とかの食材もいれますよ?」
「……いれます、よ?」
「はい。
普通のお鍋と変わりません。チョコの中で具材を煮ます。
スープが一応、醤油ベースだそうですが……。
あれですね、所謂あまじょっぱいみたいな! 
程よく具にしみこんだチョコ風味をお楽しみください。
ちなみに人気はハンペンやパンですね。意外と豆腐やブロッコリーも人気です」
「…………」
「大丈夫ですって! 死にはしません!」
 敢えて誰も突っ込んでいないが、一度この職員、美味しいという発言してない。
 ウィンクルムと精霊達の心理戦が始まるのかもしれなかった。
「そうそう、お鍋は個人個人で楽しんでもいいですが、大きい鍋があるそうなのでもしよかったら誰かと一緒にやってもよさそうですよね」
 そこらへんは、ご自由に! と笑う。
「あ、あと勿論チョコフォンデュを楽しんでもいいと思いますよ!」
 大きな噴水から見るチョコレートは圧巻なようである。
 楽しんできてくださいね、と送り出すのだった。

解説

 バレンタインが甘いだけだと誰が決めた!
 いや、甘いんですけどね……。
 
 
●お祭りに際して
 ペアで300jr、参加費として頂きます。

●鍋
 汁:少々甘めの茶色のチョコレート。醤油ベース(らしい)
 具材:豚肉・キノコ(シイタケ・えのき・ぶなしめじ)・豆腐・ハンペン・ブロッコリー
    大根・人参・白菜・牛蒡・蒟蒻・うどん・パン・魚(白身魚)

 全部入れてもいいですし、選ぶのも可能です。

●チョコフォンデュ
果物、パン、クラッカー、マシュマロ、クッキー、キャンディ

 他に何かつけたいんだー! とかあるのでしたら、持ち込みも可能です。

ゲームマスターより

 バレンタインだってのに……。
甘いだけじゃやだ、という方、お待ちしております!!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)

  「チョコ鍋フェスタを守れ」で確かに俺は約束した
だからやるしかない(悲壮な決意

出汁とチョコをペロリ
醤油に砂糖…みたいなものだな
醤油に砂糖で鍋…(じーっ



スキヤキだよ、ランス!
これはスキヤキだ!

なんだそっか(安堵
なら、待ってろ

牛肉と葱、ランスの好物の鶏肉も買って来る
2人鍋でスキヤキだ
白滝や豆腐は欠かせないよな(いそいそ
スキヤキだとわかれば怖い物は無いさ

ぱく)
一寸ユニークだけど、いけるかもー(カモー(カモー
2人ではふはふと食べると思う

俺も持ってきたんだよ、ほら(日本酒の小瓶

先入観を捨てて本質を掴んだ所に勝利はくるものだな
あ、でも家で作るのは…普通のスキヤキでいいよな?(くす

ああ、分かってるよ、ほら…



セラフィム・ロイス(火山 タイガ)
  バレンタイン…
(去年はフェスタで友達として過ごした。けど告白された後にするのは)

■慌てて仕舞い
チョコ鍋?ケーキやパフェの詰め合わせ?
本当に鍋なの!?
君らもタイガもだけど作り出した人はチャレンジャーだね
パンや豆腐なら辛うじて
お願いだから全部はやめて!?

(ごくり)パク
…想像より酷くない
何それ(笑


苺やバナナは美味しそう
僕は…!
◆カステラを取り出した際、VDの手作り抹茶ケーキをチョコ噴水に)

いや、お菓子を落としただけ
(習って【依頼52】頑張ったけど、気持ちも定まってない今あげるのは酷い、よね)

いいって!本当タイガは(笑みこぼれ
ん。それあげようと思ってたんだ。食べて


ごめん、ちゃんとあげるから…(小声


セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  よしチョコ鍋に果敢にチャレンジ!
新たな味覚に出会えるかもしれないじゃん。
「名物に旨い物アリっていうし!」
豚肉は外せないだろ。
豆腐もイケると思うんだ。そしてキノコ類だ。
シッカリ食べるぞ。どれも結構ウマいじゃん。
好き嫌いなく何でも美味しく食べるんだ、オレ。
お薦めハンペン、ブロッコリーも食べよう。白身魚も。
肉魚はガッツリ食べたい。
「牛肉の赤ワイン煮込みチョコソースってのも良いよな。また今度作ってくれよ」
とラキアに笑顔でお願いしよう。
ラキアの料理はとても美味しくてオレ大好きなんだ。

チョコフォンデュをデザートにしよう。
今度はフルーツ中心。
苺・キウィ・パイナップルが美味しい。
ほら、ラキア、あーんして(笑。



蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
  チョコ鍋…純粋に味が気になる
そんな訳で迷わず鍋の方に参加
もし想像を絶する味だったら、チョコフォンデュで口直しすればいいしな

試しに豚肉、鶏つみれ、豆腐、えのきを投入

煮えたら即フィンに勧める
普段、飯を作ってくれてるし
今日くらいは俺が(と言いつつ、まずフィンの反応を見ようとしている)

どうだ?
…本当に?(疑いつつ、フィンに口に入れられ)
甘い…けど、思ったよりはイケる?
何とも不思議な味だな

よし、もっと色々入れてみよう!
次々具材を入れては、まずフィンに勧め
彼の感想を聞いてから自分も食べる

む、これはアリだ
いや、これはナシだろ

フィンと言い合っていると、不思議と楽しい
…こんなに笑えるのは…フィンが居るからか?



天原 秋乃(イチカ・ククル)
  怖いもの見たさで結局チョコ鍋の方にも来てしまった…
とはいえ、祭りのメインって元々こっちなんだよな。何もせずに帰るのはなんだかもったいない

チョコ鍋の実物をみてちょっと引く
カレーにチョコレートを入れてコクをだしたりするけど、そういうのと同じだと思えばいいのか?
具材は…とりあえず人気のあるものをいくつか入れてみよう

煮込まれていく具材を眺めつつ…やっぱり食べる勇気はない
でも死にはしないってことだし…ううむ…
あ、そうだ
「イチカ、口開けろ」
軽口をたたくイチカの口の中に適当な具材を放り込む
こいつの反応みて食べるかどうか決めよう

イチカの表情は読み取れない。やっぱり食べてみるべきか…
「自分で食える。やめろ」


●フェスタの始まり!
 それはポルタ村のスイーツフェスタの出品者達の中でちょっと違う雰囲気を醸し出していた。
 甘いだけの雰囲気だけじゃない……どこか、緊張感の漂う、そんな雰囲気。
 こぽこぽと音を立てるチョコフォンデュの噴水とチョコの甘い香りは、どこにもひけをとらないのだけれど。
 場所を盛大にとってしまうそれは、スイーツフェスタのバレンタイン出張所という形で開催されいていた。
 そこもまた、他の出品者達と違った所か。
 そんなフェスタへやってきたのは話に聞いたウィンクルム達だ。
 その中の数名は、本場のチョコ鍋フェスタのために戦った記憶は新しい。
 ウィンクルム達のお蔭で 自信を取り戻した村人達は、今日もまた一段と楽しげにチョコ鍋を提供している。
 そんなチョコ鍋へ猛然と向かう人物が居た。
 約束したからにはやるしかない……悲痛な決意をにじませたアキ・セイジだ。
 そしてそんなアキを後ろから見守りつつ着いて行くヴェルトール・ランス。
「そんな勢い込まなくても……」
 とはいえ、人は時に勢いが必要なこともあるのかもしれなかった。 
 そんな彼らの近くでは、チョコ鍋に果敢にチャレンジ! と意気込むセイリュー・グラシアとそんなセイリューに付き合うラキア・ジェイドバインも一直線に向かっていく。
 新しい味覚の発見に出会えるかもしれない……とどこか楽しげなセイリュー。
「名物に旨い物アリっていうし!」
(本当は名物に旨い物無しって言うんだよ、セイリュー……)
 心の中でだけに留める優しさを発揮するラキア。
 一体どっちの言葉が正しいのか。
 それはもうちょっとで分かるだろう。
 そんな興味津々と同じ気持ちで怖い物見たさという、その好奇心はなかなかに抑えられるものではない。
(怖いもの見たさで結局チョコ鍋の方にも来てしまった……)
 元々はこちらがメインなわけで……と天原 秋乃はイチカ・ククルと共に、チョコ鍋へ。
(秋乃ってば結構怖いもの知らず?)
 首をちょっと傾げて思うけれど、そこは、まぁ言葉には出さず。
「まぁ、面白ければ何でもいいけど」
 ぼそりと呟いた言葉に秋乃が視線を寄越した。
「楽しみだね」
 その言葉に、あいまいに頷くのだった。
 同じように好奇心から チョコ鍋へ向かうのは蒼崎 海十。
「チョコ鍋……純粋に味が気になる」
 もしも想像を絶する味であれば、チョコフォンデュで口直しをすればいいわけだし、と比較的緩く考えていた。
 仕事柄、興味津々なフィン・ブラーシュはそんな海十の様子を見て頷く。
 海十のやる気も十分のようだ。
「どんな味だろうね」
 想像は膨らんでいく。
『セラー! チョコ鍋にチョコの噴水でフォンデュできるんだってさ!』
 火山 タイガがそう言って、セラフィム・ロイスにやるもん持って、行こうぜ! と声を掛けたのは少し前。
 やってきたセラフィムはどこか憂い顔。
(去年はフェスタで友達として過ごした。けど告白された後にするのは)
 バレンタインという今日この日を、どう過ごせばいいのか……。
 一人そう考えるセラフィムとは違い、タイガは見知った姿を見つけて声を掛ける。
「おー、皆も来たのか!」 
 その声に、皆も気が付き集まってきた。
 ここに居る面々全員が、チョコ鍋参加者……。
 なんだか連帯感が生まれた気がした。
「少なくとも、皆楽しそうだったんだよな」
 手伝った秋乃の言葉に、イチカがそうだね、と頷く。
「そうそう、大盛況だったし!」
 な? セイジ。と問いかけるヴェルトールの言葉に宣伝を主にしたアキも頷いた。
 前回を知っている四人が言うのならば、そこまで恐ろしいこともないだろうか。
 やがて、やってきたスタッフにと声を掛ければ、嬉しそうにいらっしゃいませと頭を下げた。
「楽しんで行って下さいね!」
 満面の笑みを浮かべたスタッフが、席にと案内していく……。   


●チョコ鍋を食べよう! 
 スタッフに案内され、席にと着けば既に周りは楽しそうな雰囲気だった。
 ただたんにいちゃいちゃパワーで他の物が飛んで行ってしまっているということも、ないとはいえない。
 運ばれてくるチョコ鍋に、皆の視線が集まった。
 暖かそうな湯気が立った鍋は、テーブルにと置かれて火がつけられる。
「お好きな食材を入れてくださいね!」
 そう言ってスタッフが去って行けば、それぞれのテーブルで静かな戦いが始まったのだった……。


「へえ、これがチョコ鍋かあ……茶色だね。当たり前だけど……」
 チョコ鍋を前にして感嘆の声が漏れる。
 秋乃とイチカはしばし鍋を見た後、具材をどうするかという問題にぶち当たっていた。
「とりあえず、人気のあるもの中心でいいか?」
 秋乃の問いに、否とは言わずイチカが煮えにくい物から順に入れていく。
 目の前に置かれた鍋は、ぐつぐつとチョコが煮だっていた。
 甘い香りと共に、確かに醤油の香りもする。
「カレーにチョコレートを入れてコクをだしたりするけど、そういうのと同じだと思えばいいのか?」
「……どうだろうね?」
 秋乃の問いに、イチカは答えを持っていない。
 コクというより、チョコのそのものの味が染み入っている気がする。
 どんどんと茶色の汁をすっていく具材を見ながら、秋乃は思う。
 食べる勇気はない、と。
(あぁでも死にはしないってことだし……ううむ……)
 迷うのはイチカだって同じだ。
 このままだと煮詰まって色々な意味で美味しくない一品が出来てしまいそうでもある。
 そんな時名案を閃いた秋乃が、迷うことなくキノコをとった。
「イチカ、口を開けろ」
 いわゆるあーん状態で口元にずずいっと押し付ければ、イチカが微笑を零した。
「あきのんから『あーんして』だなんて、今日は積極的だね」
 勿論、その積極的なのは毒見をさせるためだとは分かっている。
 分かっているけれど、こんな勢いでもなければお互い迷ったままかもしれなかった。
 軽口を叩くイチカに容赦なく突っ込まれたキノコは、一応外にでていた時間もあったためかそこまで熱くはなかった。
 とはいえ、口の中に広がる微妙な味。
 どっちかというとキノコそのものの味が強く感じる気がするソレ。
(美味しいような……そうでもないような……)
 微妙な表情を少しでもしてしまったら、秋乃は食べないだろう。
 だからこそ表情も変えずに、イチカは言う。
「うん、悪くないんじゃないかな。秋乃も食べてみな」
 じぃっと見つめてみるが、イチカの表情は変わらない。
 それとも、と逆ににやっと笑われた。
「あ、なんだったら僕が食べさせてあげようか?」
「自分で食える。やめろ」
 ぴしゃりと言いきって、意を決して豆腐を持ち上げた。
 最初からそれはちょっと厳しいかもしれないが、現実を知った方がいい気もする。
 果敢にもそれを口に入れる秋乃を見つめ、イチカがそっと置いてある水をとった。
「…………」
 正直に言うと、食べれない程ではない。
 水に溶かしたチョコに醤油を入れたそれは、チョコレート独特の甘さと、そしてどことなく感じる苦さ。
 そして存在を主張してくる醤油の味で、好みが明らかに分かれる味である。
 そんな味がしっかりと分かる豆腐は、この上なくシンプルだからこそ人気が高かったのかもしれない。
「イチカもほら」
 緑色の瞳がじーっとイチカの赤色の瞳を見つめる。
 目が据わっている秋乃の迫力に押されるように、イチカも箸をやるのだった。


 そんな近くでは、セイリューが嬉々として鍋に食材をいれていた。
 外せない豚肉に、キノコ類、そして豆腐もありだろうと入れていく。
(どんな事も実際やってみないと判らない、ってセイリューの言動で色々と教えてもらったから!)
 そういうわけで、ラキアも積極的に入れていく。
「お勧めのハンペンとブロッコリーも入れるだろ」
 白身魚も! 入れていくのに、人参と牛蒡を入れてラキアも頷く。
 ぐつぐつ煮られた鍋を暫し談笑をしながら待てば、程よく染み込んだ鍋が出来上がる。
 特に肉魚はしっかりと食べたいと、セイリューが魚を取りあげた。
 もぐりと口に含めば、チョコの甘さと苦さ、そして醤油の味。
 何とも言えない味が口の中に広がって行く。
 キノコにハンペン……と次々に口に入れて行くセイリューは、どれも結構美味しいと思う。
 セイリューの瞳に、幸せそうな色が灯った。
 比較的合いそうな、パンに浸して食べつつそんなセイリューにラキアが苦笑を零した。
「セイリューは何でも美味しそうに食べるね」
「好き嫌いなく何でも美味しく食べるんだ、オレ」
 そうなんだ、と頷き、ちょっと変わったグラッセみたいになった人参を食べるラキアに笑ってお願いする。 
「牛肉の赤ワイン煮込みチョコソースってのも良いよな。また今度作ってくれよ」
 その言葉に、今度ね。とラキアが頷く。
 鍋の中身は順調に減って行っていた。


 海十とフィンも鍋に具材を入れていた。
 豚肉、鶏つみれ、豆腐、えのきを投入し、満足げな海十にフィンが牛蒡を採りつつ口を開 く。
「もっと野菜も食べようね」
 好きな物だけを入れるのはダメだというその言葉に、海十がちょっと肩を竦めた。
 大根、人参、白菜、蒟蒻……次々と入れられたそれらが煮られていく。
 新しい味覚に挑戦というそれは、香りはそこまで悪くなかった。
 甘い香りの中に混じる醤油の香り。
 甘いのが苦手でないのならいけるかもしれない……味の染み込んだ食材をみて、すっと海十が白菜を掬いあげた。
 最初から肉で行くのもなんとなく申し訳ない。
「普段、飯を作ってくれてるし、今日くらいは俺が」
「え? 俺が先に食べてもいいの?」
 驚き青い瞳を瞬いたフィンだったが、それでも差し出されたそれを食べた。
「……お、意外とイケるぞ、海十」
 思ったよりは不味くはない。美味しいかと言われればそれはまた違うのだけれど。
 反応を見ていた海十はその言葉に半信半疑だ。
「本当に?」
 その言葉に、摘まんだ人参をそっと口元へやるフィン。
「ホントだって。いいからこれ、食べてみろよ」
 もぐもぐと食べてみれば、確かにちょっと変わったグラッセのような。
「甘い……けど、思ったよりはイケる?」
 ほら、言った通りだろうと頷くフィンに、何とも不思議な味だなと呟いた後、にこっと微笑んだ。
「よし、もっと色々入れてみよう!」
「いいね! 色々試してみようか」
 最初にフィンに食べさせつつ、2人でどれが美味しいか美味しくないかの品評会が始まった。
「む、これはアリだ」
 ハンペンは程良く味が染みていて美味しかった。
「うんうん、これは美味しい」
 逆に、えのきはキノコ独自の味と合わないのか微妙な味にフィンの眉もよる。
「うーん、これはちょっとイマイチかな……」
 食べてみて、同じく眉を寄せた海十。
 フィンが食べた物でいいと言った物でも、海十にはないなと思われる物もあって。
「いや、これは、ナシだろ」
 そうかなぁなんていうフィンと言いあって。
 自然と毀れた笑顔が、この時間がとても楽しいことをフィンに伝える。
 年相応に笑っている海十に嬉しさが込み上げながら、鍋をつつくのだった。


(チョコ鍋? ケーキやパフェの詰め合わせ?) 
 そんな愛らしいことを考えていたセラフィムは瞳を瞬いた。
 思っていた鍋と違う。
 どうみても闇鍋とかそういう次元の物だった。
「本当に鍋なの!?」
 作り出した人もチャレンジャーだね。とセラフィムが言えば、タイガがにっと笑った。
「まあ楽しむなら全部やったもん勝ちだって」
「お願いだから全部はやめて!?」 
 全部入れようとするタイガを慌てて止めながら、セラフィムも改めて食材を見る。
「豆腐とパンなら辛うじて……」
 行ける気もする、と言うものの、流石にそれだけだと鍋にはならない。
 タイガがそこそこに入れて煮れば、比較的安全そうな鍋が出来た。
「行くぞ。せーの!」
 ぱっと勢いで手に取った肉を口に居れれば、セラフィムが心配そうに視線を寄越す。
「意外といける!」
 ゆらりと揺れた尻尾が、そこまで味が悪くないことを伝えてくる。
 それに安心したかのように視線を戻すセラフィム。
「……」
 ごくり、と喉がなりつつも、どうにか一つ豆腐を食べてみた。
「……想像より酷くない」
 豆腐デザートというのが有る位だ、食べれないものではなかった。
 聞き耳を立てていたタイガがほっとしたように頷き、多分……と口を開く。
「スキヤキか。塩バニラやスイカに塩の法則だな」
 どこか納得したように言うタイガ。
「なにそれ」
 楽しげに笑うセラフィムに、タイガもどこか嬉しげに笑うのだった。


 すき焼き……。その解釈と同じように考えた者が居た。
 ぺろりと舐めてみた汁に、暫し考えるアキ。
(醤油に砂糖……みたいなものだな。醤油に砂糖で鍋……)
 じーっと見詰める姿に、ちょっと不安になるヴェルトール。
「スキヤキだよ、ランス! これはスキヤキだ!」
「カカオの立場どこいったよ」
 確かに醤油と砂糖だけども……と味見してみたヴェルトールも頷きを持って答えた。
「あ、マジだスキヤキじゃん!」
 安堵したように息を吐いたアキが、笑うヴェルトールに微笑んだ。
「なら、待ってろ」
 そういって、暫し席を外したアキは暫くして戻ってきたのだった。
 戻ってきたアキに、問いかけるヴェルトール。
「アレはある?」
 買い物をして帰ってきたアキがいそいそと牛肉やネギ、さらに白滝も入れて行くのにヴェルトールが問いかけた。
「ほら」
 受け取った鶏肉ににやりと笑う。
「分かってるじゃん」
「まぁね」
「いや、牛肉も好きだけど……っていうか肉全般好きだぜ? けど鳥とか兎とか草食動物って美味いよな」
 にこりと笑いながらスキヤキ? を作って行く2人。
 やがて出来あがれば、スキヤキよりはどこか甘ったるく、そしてちょっと苦い食べ物が出来あがったのだった。
 ダダをこねたら誤魔化すためのお酒は、普通に飲むのに回りそうだ……と、一口食べたアキを見つめ思う。
「一寸ユニークだけど、いけるかもー」
 かもー、とさらに笑うアキに、ヴェルトールも笑って一口食べる。
 確かにユニークだが、食べれないほどではない。
 どうせならばと出したお酒に、アキも持ってきたのだと日本酒の小瓶を取り出した。
 甘口のヴェルトールと、辛口のアキ。
 純米酒を酌み交わしながら食べるチョコ鍋は、酒のツマミに合っているような合っていないような。
「卵、お替わりあるぜ?」
 小鉢によそってやりながら言えば、ほろ酔い気分のアキが頷く。
 俺が仕切ってる? ま、いっかとヴェルトールが首を傾げた。
「鍋奉行ランス様と呼んでいいぞ」
 それに何を言ってるんだか、と苦笑を零したアキが、それにしても、と唇を開いた。
「先入観を捨てて本質を掴んだ所に勝利はくるものだな。 あ、でも家で作るのは……普通のスキヤキでいいよな」
 あぁ、と頷いたヴェルトールがはた、っと気がつく。
「あ、そだ。アレは?」
「あぁ、分かってるよ、ほら……」
 すかさず春菊が小鉢に入れられる。
 ツーカーの仲の2人のチョコ鍋は、まだまだ続いて行くようだった。


 やがて食べ終えたタイガ達が、チョコフォンデュへと向かおうと立ち上がった。
「食った食った次はチョコフォンデュ!」
 そんな様子に笑みが毀れる。
 他の皆はまだここに? との問いかけにチョコフォンデュを食べたことがなかった面々もそろそろ行こうかと腰をあげる。
 立ち上がらなかった面々は、のんびりと鍋をつついている。
 すでに食べたことがある秋乃とイチカ、アキとヴェルトールはもう少し鍋を楽しむと言い、声をかけたタイガ達に微笑む。
「美味しかったから、楽しんでくるといいぜ」
 秋乃が笑い、イチカも頷く。
「そうそう、美味しかったしね」
「楽しんでこいよ!」
 ヴェルトールもそう言って見送る。
「いってらっしゃい」
 アキもまた後でと微笑んだ。
「じゃぁまた後でね」
 セラフィムがそう言えば、手を振ってチョコフォンデュ組が噴水へと向かうのだった。


●フォンデュもあるよ!
 こぽこぽと水ではなくチョコが吹き上がっては落ちていく。
 チョコ鍋の時とは違って、此方ではより分かりやすく恋人達がいちゃいちゃしていた。
 宝石のように輝く果物、可愛く盛られたクラッカーや飴や、マシュマロ。
 どれも美味しそうに誘っている。
 やってきた面々は、それぞれ散って思い思いに楽しむのだった。


 楽しみだとやってきたタイガは、隣に居るセラフィムにと声を掛けた。
「クラッカーもいいな。俺はコーンスナック持ってきた。セラは?」
「僕は……!」
 ぽちゃんとカステラを取り出した際に、何かが落ちた。
「わりっ……途中で声かけたからだよな」
 咄嗟に覗き込むけれど、茶色のそれでは何が落ちたかは分からない。
「セラ? もしかして大事なもんか」
「いや、お菓子を落としただけ」
 掬おうと手を伸ばしたセラフィムの視線が揺らぐ。
 手作りの抹茶ケーキ、習って頑張って作ったそれを、今あげるのは……。
(気持ちも定まってない今あげるのは酷い、よね)
 そのわずかな逡巡の間に、タイガが手を突っ込んでいた。
 慌てて声を上げるセラフィム。
「いいって! 本当タイガは」
「あった!」  
 ほら、これ! と見せるタイガに、自然と笑みが毀れた。
「ん。それあげようと思ってたんだ。食べて」
「……なら食っちまうけど」
 先程からのセラフィムの様子。
 何もないわけではないとわかってはいるけれど、あえて深追いはせずにそれを食べる。
 甘くどこかほろ苦いそれに、それが抹茶ケーキだったことが分かった。
「うん、美味い」
 揺れる尻尾が、美味しいことを伝えてきて。
「ごめん、ちゃんとあげるから……」
 そんな様子を見ながら、小声で囁く。
 それは、聞こえなくてもいいと思われるほどの小さいものだったけれど。
 タイガの耳がぴくりと動いたことに、セラフィムが気付くのはいつだろうか。


 デザートとして楽しもうと、セイリューは果物へと視線をやった。
 チョコ鍋の方では食べるのを抑えていたラキアは、まずはクロワッサンにと手を伸ばす。
 食べられる量は有限だからこそ、此方の分も余力を残していたのだ。
「あ、美味しい」
 キウィを口に含めば、程良い酸味と甘さが広がって。
「パンと、クロワッサン、果物だとバナナと苺もいいよね」
 瞳をそれらに移しながらラキアが言えば、同じく苺もいいなと思っていたセイリューが自然な動きでチョコを纏わせたそれをラキアの口元へ。
「ほら、ラキア、あーんして」
 笑って言うセイリューが余りにも自然だから。
 ぱくり、と口元の苺を食べれば、甘い果汁と共にチョコの甘さも口に広がって。
 その時になってはっと気がつく。
「だ、誰も見てなかったよね?」
 焦ったように辺りを見渡すラキアに、セイリューが楽しげに笑った。 


 口直しは必要なかったかもしれないけれど。
 海十とフィンもチョコを果物に絡めては楽しむ。
「果物はやっぱり美味しいな」
 定番ともいえる苺チョコで食べるフィンに対して、海十はグレープにと手を伸ばす。
「さっぱりしてるな……」
 柑橘系は程よい酸味と甘さで、口の中がさっぱりする気がした。 
「チョコ、付いてるぞ」
 口の端についたチョコを拭いとってやれば、海十の頬が少し朱に染まる。
 そんな元へ、やがて食べ終えたチョコ鍋組も散歩がてらチョコフォンデュ組の所にとやってきた。
「美味しい?」
「あぁ、美味しいな、これ」
 イチカの問いかけに、海十がそう返せば良かったと笑みが返って。
「あの時、頑張ったかいがあるね」
 アキがそう言えば、秋乃も頷く。
「そうだな」
「どうせなら、もう少し楽しんでみるか?」
 ヴェルトールの言葉に、どうしようか? と首を傾げて。  
 食べないまでも、お喋りならしてもいいかな。と話がまとまった。
 甘い甘い香りに包まれながら、 時間はゆっくりと過ぎていく。
「ご馳走様でした!」
 そういう声が聞こえるまで、あともうちょっと……。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 如月修羅
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 02月05日
出発日 02月13日 00:00
予定納品日 02月23日

参加者

会議室

  • [7]アキ・セイジ

    2015/02/12-22:55 

    アキ・セイジだ。相棒はウイズのランス。よろしくな。
    フェスタを守るアドベエピで、
    「次は俺の希望で」と言ったランスにうっかり頷いてしまったのが運のつき(?)。
    チョコ鍋を食べることになったよ。

    だが気付いたんだが、チョコって砂糖だろ要するに。
    醤油ベースの出汁に砂糖で食材を煮るといったら、スキヤキなんだよ、スキヤキ!
    カカオの苦味が甘ったるさを引締める大人のスキヤキだと気付いたんだ。

    てなわけで、俺達はスキヤキを力一杯食べてくるよ。

    プランは出来た。今日のスイーツは軽くマシュマロだ。(皿に乗せ

    サイコロA*B:マシュマロの数


    【ダイスA(6面):3】【ダイスB(10面):9】

  • [6]セラフィム・ロイス

    2015/02/12-01:13 

    背後がばたついていて遅れた。もう一日もきってしまったな・・・(白紙をみつつ)
    どうも。セラフィムとタイガだ。顔なじみの面子と・・・
    海十は初めましてだね。某フェスティバルで発言してて印象にのこってるよ
    皆よろしく頼む

    さあて、チョコ鍋・・・どんな味なのかな

  • [5]蒼崎 海十

    2015/02/11-00:14 

    セラフィムさんも初めまして。
    よろしくお願いします!

  • セイリュー・グラシアとラキアだ。
    新たな味覚との出会いを求めて参加してみた!
    今回もヨロシク!

  • [3]蒼崎 海十

    2015/02/11-00:08 

    途中参加、失礼します。
    蒼崎海十です。パートナーはフィン。
    秋乃さん初めまして。
    アキさんとセイリューさんはまたお世話になります。

    チョコ鍋…一体どんな味なのか、凄く気になります。
    チョコフォンデュ、美味しいのですか…!(こちらも凄く気になっている)

  • [2]蒼崎 海十

    2015/02/11-00:07 

  • [1]天原 秋乃

    2015/02/08-19:17 

    ふむ、今のところ俺達だけか。
    ええっと天原秋乃だ。

    前回の依頼でチョコ鍋にちょっと興味が湧いてな、とりあえず見にいってみようってことになった。
    食べるかどうかはわからないが…まあせっかくだから食べてみたほうがいいよな。
    そうそう、チョコフォンデュは一足先にいただいたんだが、美味しかったぜ。


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