プロローグ
寒さで曇る窓ガラス。冷たい風が木々を揺らす。外の様子に関わらず、今日もA.R.O.A本部は通常業務に追われていた。
そんな中、1本の電話が入ってきた。受付がそれに出る。
「はい、こちらA.R.O.A本部でございま……」
「はいはいどーもどーも!私『辛口組合メラモエパッチョ』の代表者でホッテラっていいます!
今回ですね私の町で恒例となってる『あつあつ!からから!フェスティバル!』のご案内をさせて頂きたいなと!思いまして!
こうしてお電話を掛けさせて頂きました!
『あつあつ!からから!フェスティバル!』略して『あつからフェス!』
寒いときこそ熱いもの!暑いときこそ辛いもの!まさに時代は旨辛ですよ!う・ま・か・ら!
お子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで、幅広い層に楽しんで頂ける内容となっていますので
ぜひともウィンクルムの皆さんにも足を運んでもらって!箸を進めてもらって!楽しんでもらって!
ちょい辛から激辛まで味のバリエーションも豊富でイベント盛りだくさんですから何卒ですね!」
電話口からのマシンガントークに押され気味の受付。どうやらイベントの告知をするために電話をしてきたようだ。とりあえず相手の名前と連絡先をメモして、詳細は近日中に再度文書を送って欲しいと頼んで電話を切った。ホッテラはまだまだ話し足りないといった様子だったが、このまま聞いていたら日が暮れてしまう。そう感じた受付は文書での提出という切り口でなんとか通話を終えた。
後日送られてきた文書にはイベントの詳細が載っていた。
***
「あつあつ!からから!フェスティバル!」開催のお知らせ
今年もこのイベントがやってきましたよ皆さん!
辛いもの大好きな方も苦手な方も楽しめる最高最強のイベント!
「あつあつ!からから!フェスティバル!」略して「あつからフェス!」
色んな辛い食べ物が集まっています!イベントも盛りだくさん!
「あつからフェス!」の内容は以下の通り!
●甘口、中辛、辛口、激辛ブース
4つのブースでそれぞれ料理やお菓子、飲み物を提供します。
辛いものが苦手な方は甘口へ!
「辛いものドンと来い!」な方は激辛ブースへ是非足を運んでください!
※どのブースにも水が常備してあります。ご自由にお飲みください。
【各所の代表的なメニュー】
◇甘口ブース・・・甘辛せんべい、ぴりっとスナックポテト、カレービスケット(甘口)など
◆中辛ブース・・・唐辛子スープ、練り辛子団子、お好み辛味焼きなど
◇辛口ブース・・・こだわり辛口生パスタ、ハバネロガム、鷹の爪スティックなど
◆激辛ブース・・・圧倒的激辛カレー、火傷寸前グミ、極限エビチリなど
●イベント盛りだくさん
◇挑戦者求む!!激辛たこ焼き!!
「あつからフェス!」主催の1人、ホッテラ氏の渾身の一品「激辛たこ焼き」!
1つ1つは小さめだが辛さはぎゅっと凝縮!それがなんと20個!果たして食べきれるでしょうか!?
(最大2人まで同時参加可能!)
◆超巨大鍋でカレー作り!
お店には到底入らない超巨大鍋を使用!屋外で豪快にカレー!特大のヘラを大人数で抱えながら作る!そのスケールのデカさを体感してください!
(辛さは甘口です。完成したら参加者で分けます)
◇辛さを形に残そうぜ!
「あつからフェス!」の思い出を胃袋だけでなく形でお持ち帰り!
辛いものが苦手な方でもこれなら大丈夫!この町には特産香辛料「ペッパラダル」があります。
その花を使った「押し花作り」や透明な小箱の中を彩る「キューブアート」など思い出となる品を作ってみては如何でしょうか!
ペッパラダルの花弁は鮮やかな赤色ですが、天然着色料を各種用意していますので、貴方だけのオリジナルが作れます!
「届け!旨辛の魅力!」
***
ほんのり辛いものから本格的な辛さまで集うお祭り。
足を運んでみては如何でしょうか。
解説
参加費:500Jr
ブースはそれぞれ会場の東西南北に配置されていて、中央がイベント用のスペースになっています。
会場自体がかなり広く展開しているので、全部を満遍なく巡るのは難しいです。
そのため行くことが出来るブース・イベントは最大3つまでと考えてください。
またイベントは2つまでが限界です。
イベントに参加せず、ブース巡りをするのも良いですし
ブースを1つに絞って2つのイベントで盛り上がるのもいいでしょう。
【ブースとイベントについて】
●ブース
訪れたいブースと、そこでしてみたいことをアクションプランにお願いします。
●イベント
参加したいイベントと、そこでの様子をアクションプランにお願いします。
◇挑戦者求む!!激辛たこ焼き!!
1人だけ参戦するのか、2人で参戦するのか。参戦した結果の予想をお願いします。
◆超巨大鍋でカレー作り!
特にありません。ただスタッフが協力しますが、力を要するイベントです。
◇辛さを形に残そうぜ!
「押し花作り」や「キューブアート」でどのようなものを作りたいか、アクションプランにお願いします。
ゲームマスターより
星織遥です。
辛いものを食べると体の芯から温かくなるように感じます。
寒さを乗り越えるお祭りになったらいいなと思います。
よろしくお願いします。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
月野 輝(アルベルト)
甘辛とかピリ辛くらいなら私も大好きなんだけど、あまり辛い物は少し苦手 中辛ブースでいい?良かった アル、ほんとは辛口ブースに行きたかったんじゃ いつも私に合わさせてしまってごめんね わ、ここ、スープもお好み焼きも程良い辛さね これなら結構食べられるわ ね、アル、このお団子も美味しいわよ(一つ差し出し !? ま、またそう言うことする 別に照れてなんてないけどっ お兄ちゃんじゃない、もの(小声でボソボソ) やっぱりアルにとって私って妹なのかしら… ね、帰る前にペッパラダルでお土産作っていかない? 赤い押し花を栞にしてプレゼントするわ 緑の押し花…アルの髪の色ね(微笑んで 何だか顔が熱いのは辛い物を食べたせい うん、きっとそうよね |
紫月 彩夢(紫月 咲姫)
熱くて辛いものって、やっぱりこの時期には惹かれるわよね 咲姫は、行きたいとこある?あんた、辛いの好きでしょ? 辛口ブースと、激辛たこ焼きと、甘口ブース? …ふーん カレーは甘口派だけど、別に辛いの食べれないわけじゃないのよ? ん、パスタでも結構辛い… けど、カレーじゃない辛さは結構新鮮ね 美味しいわよ?咲姫のそれは…鷹の爪スティック…? あたしはいいわ…多分無理 このサイズなら、幾つか食べれるかしら ッ…か、辛い…! あたし、一個で良い…後は咲姫、頑張って… ねぇ、咲姫。甘口ブース止めて、あっちで押し花作らない? 熱くて辛いを満喫したんだから、ちょっとくらい女の子して帰りたい 赤は、好き だからそのままの色を、押し花の栞に |
100000774(驟雨)
・激辛ブース、辛口ブース周辺を見て廻る。 ふふふ…この寒い季節、汗を流す良い機会だぞ ハバネロガムや鷹の爪スティック等珍しいものが揃っているな。 それにカレーもエビチリも申し分ない辛さだ。流石フェスを開催するだけはある。 なんだ驟雨、もうギブアップか?精進の無い奴め。 …まぁ楽しめば良いのだ、このブースが無理そうなら甘口の方にでも行くと良い。 ・イベントは激辛たこ焼きに挑戦。完食を目指す! たこ焼きは辛さは問題ないが数をこなせるかが問題だな。 まぁ勝利を目指すのみ!いざ! なんだ、戻って来たのか 私は私なりに楽しんでるだけだ。お前も素直に楽しんで見せろ ・思い出にキューブアートに挑戦 初めて見るが思うままにやろうか。 |
ドロテア(フィデリオ)
あつあつのからから! 楽しみですわ ふふん、お子様扱いはやめて下さいませ ドロテアは好き嫌いはありませんもの 激辛だってきっと大丈夫ですわ! 胸を張る 精霊の希望で甘口ブースへ あっ、辛…… な、何も言っていませんわー! ぴりぴりすると思いつつ頑張って食べ進める そっと水を渡され、無理しているのがばれているとわかり 恥ずかしいがぼそぼそとお礼を言って有難く水貰う あとは……ドロテアはカレーを作ってみたいですわ 大きなお鍋ですのね 興味津々で鍋を見上げ 早速お手伝いしますわ! ヘラを掴むが力が足りず逆に振り回されかけ わわっ、ありがとうございます フィーは力持ちですのね 一緒になら、大丈夫ですわ! 完成が楽しみですの …甘口ですわよね? |
●いざ旨辛の世界へ
吐く息は白く染まり、澄んだ空に溶け込んでいく。ウィンクルム達はそれぞれ「あつあつ!からから!フェスティバル!」の会場へと向かっていた。この「あつあつ!からから!フェスティバル!」というイベントは開催地域では「あつからフェス!」という略称で親しまれており、この時期の恒例行事となっている。そんなイベントに『ドロテア』と『フィデリオ』。『月野輝』と『アルベルト』。『紫月彩夢』と『紫月咲姫』。『100000774(ナナシ)』と『驟雨』。それぞれが期待を胸に赴く。
●ドロテア&フィデリオ
会場に到着したドロテアとフィデリオ。広い会場からは香辛料の風味が漂ってくる。
「あつあつのからから! 楽しみですわ!」
ドロテアが心底楽しそうにそう話す。
「ああ、値段分は取り戻そう」
フィデリオはどれぐらい食べれば元が取れそうかと会場を見渡してみる。入り口付近には会場の案内板が立てられていた。それによれば甘口、中辛、辛口、激辛の4つのブースが東西南北に広がり、その中央にイベント用のスペースが設けられているようだ。それを見てフィデリオはふとドロテアに尋ねる。
「ところで、辛いのは大丈夫なのか?」
「ふふん、お子様扱いはやめて下さいませ。ドロテアに好き嫌いはありませんもの 。激辛だってきっと大丈夫ですわ!」
フィデリオの問いにドロテアは胸を張って答えた。
(それなら……しかし本当に大丈夫だろうか……見た目からして苦手そうだが……)
ドロテアの元気な返事とは裏腹にフィデリオの心中は穏やかではなかった。そこである事を思いつく。
「まずは甘口ブースへ行かないか?このイベントがどのくらいの辛さを基本にしているのか把握したい」
「それもそうですわね。では早速参りましょう!」
フィデリオの提案をドロテアは快諾し、2人は甘口ブースへと足を運んだ。
甘口ブースに到着するとそこには大きく『甘口ブース』と書かれた横断幕が掲げられていた。これだけはっきりと示されていれば辛さを間違えてブースに入る人も居ないだろう。2人は甘口ブースの中を散策する。その一帯には屋台が所狭しと並んでいて、その隙間を縫うように給水スポットが一定間隔で配置されていて、紙コップと十分な量の水が用意されていた。食べ物は確かにどれも辛そうではあるが、甘口ブースだからだろうか、どことなく甘い香りも漂う。
(俺は辛くても平気なんだが……ドロテアはどうだろうか……)
フィデリオはそう思案しながら周囲を見渡す。甘口ブースなのでそんなに辛いものは無いだろうと思いつつ、手頃な辛さを探す。すると『甘辛せんべい』という文字が目に入った。
「ドロテア、あのせんべいはどうだ?」
「甘辛せんべい?いいですわよ」
2人はその屋台の前に行くと1枚ずつ受け取る。早速口に運ぶフィデリオ。ドロテアはせんべいを手にしたままフィデリオの様子をうかがう。パリッとした食感と、辛味に甘さが程よく合わさった味つけ。フィデリオは手軽に食べられるお菓子といった印象を受けた。
(これ……全然辛くないな)
フィデリオはそう思いながら、せんべいを食べ進める。
「あっ、辛っ……」
ふと声のしたほうを見るフィデリオ。そこには、せんべいを一口食べたドロテアの姿があった。甘辛とはいえ、ドロテアには辛かったようだ。
「ドロテアは、な、何も言ってませんわー!」
そう言ってせんべいを食べ進めるドロテア。しかしその表情はせんべいのピリッとした辛さを必死でこらえているのが丸分かりだった。フィデリオは近場の給水スポットから水を持ってくるとドロテアにそっと渡す。
「……あ、ありがとうございます……」
ドロテアはぼそっとお礼を言って水を受け取った。無理をしているのがバレてしまった事が恥ずかしかったようだ。ゆっくりと水を飲み始める。すると少しずつ口の中が落ち着いてきたのか、ドロテアも平静を取り戻す。
「ずっと食べていたら口が渇くぞ」
そう注意しつつ、フィデリオもどこか安心した表情を浮かべる。2人はしばらく甘口ブースを探検すると、次の目的地を話し合う。
「あとは……ドロテアはカレーを作ってみたいですわ」
「巨大な鍋で作るというイベントか。わかった、それに行こう」
こうして2人はイベント会場へと向かった。
イベント会場で2人を出迎えたのは巨大な鍋。火をくべるために組まれたレンガの土台によって鍋をさらに大きく感じさせた。
「大きなお鍋ですのね……!」
ドロテアは興味津々といった様子で鍋を見上げる。他にも参加者が集まってきたところで、鍋の横に設置された簡易階段を上り、2人は鍋を見下ろす位置に着いた。スタッフも食材と特大のヘラを抱えて階段を上る。まず鍋を火に掛けて油を入れる。そこへ食材を投入する。
「早速お手伝いしますわ!」
ドロテアは他の人と一緒にヘラを握り、食材を炒めようとする。しかしその腕では力が足りず、ヘラに振り回されそうになる。フィデリオは咄嗟に腕をのばすとドロテアの体を支える。それと同時にヘラも掴み、安定させる。
「大丈夫か?」
「わわっ、ありがとうございます。フィーは力持ちですのね!はい!一緒になら、大丈夫ですわ!」
ドロテアは気を取り直してヘラを握りなおす。その様子にフィデリオも微笑みを浮かべる。食材を炒めたら水を入れて沸騰させる。火を加減しながら食材にきちんと火を通す。そしたら一度土台の火を止めて特製のルゥを入れてから、再び煮込んでいく。あとは出来上がりを待つだけとなった。2人は階段を降りて、鍋の傍で完成するのを待っている。
「完成が楽しみですの!」
「そうだな」
「ところで……甘口ですわよね?」
こそこそと聞いてくるドロテアの様子にフィデリオは小さく笑みを返した。その後、出来上がった甘口のカレーを食べて、その美味しさに2人は満足したようだった。その後、祭りの雰囲気を楽しみながら会場を後にした。
●月野輝&アルベルト
会場に到着した輝とアルベルトを出迎えたのはイベントの熱気と辛味を伴った風。入り口付近の案内板を見ながら行き先を考える。
「辛い物はかなり好きなので辛口ブースでも構わないのですが……」
「甘辛とかピリ辛くらいなら私も大好きなんだけど、あまり辛い物は少し苦手……」
アルベルトと輝ではどうやら辛さに対する認識に差があるようだ。案内板を前に行き先を決めかねる2人。そこで輝が提案する。
「中辛ブースでいい?」
「そうですね……では中辛ブースに行きましょうか」
「良かった。ありがとう」
目的地が決まり、2人は中辛ブースへと向かった。道中、他のブースの雰囲気も感じながら歩を進める。その途中で輝がアルベルトに問いかける。
「アル、ほんとは辛口ブースに行きたかったんじゃ……いつも私に合わせてしまってごめんね」
「適度な辛さも好きだから問題ないですよ」
「……ありがとう」
そんなやりとりをしている間に目的のブースに到着した。
横断幕に大きく『中辛ブース』と書かれたその場所は、唐辛子スープや練り辛子団子、お好み辛味焼きなどの屋台が並んでいる。2人は早速それらを口に運ぶ。
「わ、ここ、スープもお好み焼きも程良い辛さね。これなら結構食べられるわ」
「そうですね、辛さとうま味がマッチしててかなりいけますね。このお好み焼きが旨いです」
そう言いながら2人はスープとお好み焼きを食べ進める。このブースに来たのは正解だったようだ。
「ね、アル、このお団子も美味しいわよ」
輝は練り辛子団子を1つ手に取ると、アルベルトに差し出した。
「団子ですか? ……なるほど、いけますね」
アルベルトは差し出された団子を輝の手から直接一口で食べた。その行動に思わず焦りと照れの表情を浮かべる輝。
「……?どうしました?そんなに照れずとも。私達は兄と妹みたいなものではないですか」
「別に照れてなんてないけどっ!」
慌てる輝とは対照的に落ち着き払った様子のアルベルト。
(お兄ちゃんじゃない、もの……。やっぱりアルにとって私って妹なのかしら……)
輝はそんな思いを抱きながら黙々と食べ物を口に入れる。アルベルトも同じように食べていき、お腹が膨れたところで次の行き先を話し合う。しかし2人ともこのブースで十分すぎる程食べてしまって、お腹は空いていない。そこで輝がこう切り出した。
「ね、帰る前にペッパラダルでお土産作っていかない?」
「お土産ですか? そうですね、付き合いますよ」
2人はそう話すと、イベント会場になっている中央ブースへと向かった。
中央ブースに到着すると、その一角に『辛さを形に残そうぜ!』と書かれた看板を見つけた。2人がそこに近づくとスタッフが声を掛けてくれた。押し花の栞を作りたい旨を伝えると、奥側の席へと案内された。そこでスタッフが必要なものを持ってきて一通り作り方を説明する。スタッフが付き添いながら2人は早速制作に取り掛かった。
(ペッパラダルは赤いから、色はこのままで……これを乾かして、それから挟んで……)
(色は緑にして……一緒にいられない時に、私の代わりに輝の事を守ってくれるよう祈りを込めてみましょうか)
それぞれの想いを込めながら栞作りを進めていく。そしてついに2つの栞が完成した。
「輝、どうぞ」
「ありがとう。緑の押し花……アルの髪の色ね」
輝は微笑みながら嬉しそうにそれを受け取った。すると今度は輝がアルベルトに栞をプレゼントした。
「赤い花の栞……輝だと思って大切にします」
そういいながら丁寧に受け取ると、アルベルトはそれを手帳にしまった。その言葉に輝は内心戸惑っていた。
(何だか顔が熱いのは辛い物を食べたせい……うん、きっとそうよね)
イベントの肝であった辛い料理を堪能し、お土産も出来た。2人は満足した様子で会場を後にした。
●紫月彩夢&紫月咲姫
会場は熱気に包まれていた。その中へ彩夢と咲姫が足を踏み入れる。入り口のそばに立てられた案内板を見ながらこれからの行動を思案する2人。
「熱くて辛いものって、やっぱりこの時期には惹かれるわよね。咲姫は、行きたいとこある?あんた、辛いの好きでしょ?
「私は辛いの大好きだし、とても嬉しいけど……」
彩夢の問いかけに縦に頷きを返す咲姫。しかし、咲姫は彩夢とは辛さの好みが違うことを分かっているので、どうしようか考えているようだ。
「あたし、カレーは甘口派だけど、別に辛いの食べれないわけじゃないのよ?」
「んー……それじゃ、辛口、たこ焼き、甘口って感じで回らない?」
「辛口ブースと、激辛たこ焼きと、甘口ブース?」
「ほら、甘口で口の中まろやかにして帰るってのもいいじゃない」
彩夢は咲姫の提案に特に異論を唱えることもなく、まずは辛口ブースへと向かった。
ブースに到着すると『辛口ブース』と大きく書かれた横断幕が目に飛び込んできた。所狭しと並ぶ屋台にはいかにも辛そうなものが並んでいる。彩夢が周りを見渡すと『こだわり辛口生パスタ』というメニューを見つけた。屋台の前まで移動してそれを受け取ると早速口に含む。
「ん、パスタでも結構辛い……けど、カレーじゃない辛さは結構新鮮ね」
そう思いながら彩夢はパスタを食べ進める。ふと咲姫に視線を向けると、なにやら棒状の赤い色をしたものをかじっている。
「咲姫のそれは……鷹の爪スティック……?」
「うん、そう。なかなか辛いよ。彩夢ちゃんも食べてみる?」
「あたしはいいわ……多分無理」
美味しそうに赤い棒を食べる咲姫を見ながら、彩夢は首を横に振った。咲姫はスティックを全部食べ終わると、ハバネロガムはどんな辛さなのかしら、といった調子で他の辛味も満喫していった。
辛口ブースを楽しんだ2人は次に中央のスペースへと足を運んだ。激辛たこ焼きのイベントに参加するために。スタッフに2人で参加すると伝えると、イベントの主催の1人でもあるホッテラがその場でたこ焼きを作り始める。2人は案内された場所で座って待っていると、出来たばかりのたこ焼きが20個運ばれてきた。見た目は小ぶりだが、匂いや色合いが辛さを含んでいることを伝えてくる。スタッフの合図とともに2人はたこ焼きに箸をつける。
「このサイズなら、幾つか食べれるかしら。……か、辛い……!」
彩夢は用心しながら口に運んだものの、予想以上の辛さに用意されていた水を一気に飲む。
「あつ、あつ……!って、彩夢ちゃん大丈夫?」
「あたし、1個で良い……後は咲姫、頑張って……」
「わかったわ。後は私が……うーん、勿体無いし、食べきりたいわね」
彩夢は1個食べてその辛さに断念した。咲姫が残りのたこ焼きに挑戦したが、後半になってその量に苦戦してしまい5個ほど残ってしまった。咲姫は残念といった表情を浮かべる。残ったたこ焼きはスタッフがパックに詰めるとビニール袋に入れて2人に手渡した。それを手にしながら2人はたこ焼きのスペースを後にした。
辛口ブース、たこ焼きと巡ったので次は甘口ブース。最初にそう2人で決めていたが、ふと、彩夢が提案した。
「ねぇ、咲姫。甘口ブース止めて、あっちで押し花作らない?」
彩夢が指差した方向には『辛さを形に残そうぜ!』という看板が見える。
「押し花? ……うん。良いわよ。今日の思い出、一つ残しましょ」
咲姫は彩夢の提案を受け入れ、当初の予定を変更した。
(熱くて辛いを満喫したんだから、ちょっとくらい女の子して帰りたい)
彩夢の胸中にはそんな思いがあった。
イベントの一角に到着すると、スタッフに案内されるまま奥へと移動する。押し花に必要なものを一通り確認するとスタッフが作り方を説明する。それを聞いた後、2人は押し花の栞作りを始めた。
(赤は、好き。だからそのままの色を、押し花の栞に……)
彩夢はそう思い、ペッパラダルの花弁に何も着色せずに作業を進める。
「赤……私も好きよ。私達の、お揃いの色だもの。可愛い栞ね。私も、お揃いに作っていい?」
咲姫の問いに首肯する彩夢。咲姫は小さく微笑むと、彩夢の作業を見ながら自分の栞を作っていく。そして2つの栞が完成した。
「可愛く出来たわ。どんな本を読もうかしら」
咲姫は栞を手にしながら嬉しそうに話す。彩夢はその様子を楽しそうに見つめていた。思い出の品を手に2人は会場を去った。
●ナナシ&驟雨
フェスティバルの会場に足を踏み入れたナナシと驟雨。熱意と辛味を帯びた独特な空気が流れている。
「ふふふ……この寒い季節、汗を流す良い機会だぞ」
「……ぐ、凄い気迫を感じますね。気のせいか目がチカチカする気がします」
イベントに気合十分なナナシと、イベントの空気に押され気味の驟雨。対照的な2人はナナシが先導して激辛ブースへと足を向ける。
ブースには『激辛ブース』と書かれた横断幕が張られている。屋台には見るからに辛そうなものが並び、匂いだけでその辛さを味わっているようにさえ感じられた。屋台の看板には圧倒的激辛カレー、火傷寸前グミ、極限エビチリなど、辛い以外に形容するのが難しいものばかりが見える。
「カレーもエビチリも申し分ない辛さだ。流石フェスを開催するだけはある」
ナナシが1人で激辛メニューを満喫する隣で、絶対食べたくないといった表情を浮かべる驟雨。
「なんだ驟雨、もうギブアップか?精進が足りないぞ。……まぁ楽しめば良いのだ、このブースが無理そうなら甘口の方にでも行くと良い。私はここを満喫したら激辛たこ焼きとやらを食べに行く」
そこまで言ってナナシは再び激辛メニューを口へと運ぶ。驟雨はその場を離れた。
驟雨は激辛ブースから移動して、中辛ブースへとやってきた。ナナシには甘口ブースを勧められたが、情けなさと悔しさからこのブースに移動した。せめてこのブースならスープくらい大丈夫だろう、と考えた。しかしナナシのことが気になり、彼女が向かったであろうたこ焼きのイベント会場を目指す。
驟雨がたこ焼きイベントの会場に到着すると、ナナシがまさにたこ焼きを食べ始めようとしていた。
「たこ焼き……辛さは問題なさそうだが数をこなせるかが問題だな。まぁ勝利を目指すのみ!いざ!」
そう意気込むとナナシは目の前に積まれたたこ焼きを食べ始めた。見るからに辛そうなたこ焼きを勢いよく喉の奥へとかきこんでいく。時間の経過とともにたこ焼きが徐々に減っていき、ついに空の皿だけになった。ナナシの食べっぷりに思わず絶句する驟雨。たこ焼きを食べきったナナシが驟雨の存在に気付いて近づいてくる。
「なんだ、戻って来たのか 」
「……何やってるんですか、ナナさん 本当侮れない方ですよ、貴女は」
「私は私なりに楽しんでるだけだ。お前も素直に楽しんで見せろ」
そう言うとナナシは『辛さを形に残そうぜ!』という看板のほうへと歩き出した。
看板のところまで辿りつくとスタッフが詳細を説明する。そこで出てきた『キューブアート』という言葉にナナシは関心を示した。それを作りたいという旨を伝えると、スタッフが掌にちょうど収まるほどの透明な箱やペッパラダル、着色料やピンセットを用意した。それらを指差しながらスタッフが一通り作り方を説明した。
「キューブアート……初めて見るが、思うままにやろうか」
ナナシはキューブの中を様々な色に染めた花弁で自由に埋めていく。それらは重なり合っては崩れるというのを繰り返しながら1つの形に収まる。いつしか箱に収まった立体的な絵画が出来上がった。最後に蓋をしてキューブアートが完成した。それを懐にしまうとナナシは驟雨とともに会場を後にした。
●祭りの終わり
4組がそれぞれの形で楽しんだ「あつからフェス!」も終わりを迎える。畳まれるテントや撤収される巨大な鍋。祭りの姿は消えていくが、ウィンクルム達の経験した時間は特別な思い出となって心に留まるだろう。
依頼結果:成功
MVP:
エピソード情報 |
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マスター | 星織遥 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | イベント |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 4 / 2 ~ 4 |
報酬 | なし |
リリース日 | 02月05日 |
出発日 | 02月13日 00:00 |
予定納品日 | 02月23日 |
参加者
会議室
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2015/02/12-21:40
挨拶するのをすっかり忘れていましたわ……!
ドロテアと申します。パートナーはフィデリオ様ですの。
どうぞよろしくお願い致します。
皆様も素敵なひと時を。 -
2015/02/11-23:12
こんばんわ。ご挨拶、したつもりでしていなかったうっかりよ。
紫月彩夢と、姉の咲姫。
輝さんとは、時期的にはお久しぶりだけど、私自身出かけるのが少ない中で何度も会えて、光栄。
初めましての方も、お互いフェスを満喫できればいいわね。
辛い物と熱い物は、この季節には嬉しいし、私も楽しみたい。どうぞ宜しく。
-
2015/02/08-14:57
輝達はまた会ったな。他は初めて見る者達か。
改めて、私の事はナナシと呼んでくれ。連れは驟雨と言う。
よろしく頼むぞ!
ふ……ふははは!あつからフェス!
辛い物好きである私の為にあるようなものだ!
全力で楽しませてもらおう!
驟雨:ナナさんの為にあるかは置いといて
あの調子でどんどん辛いものに挑戦するようです。たこ焼きも……でしょうね。
僕には出来ません、せめて中辛程度がちょうど良いですよ。(ため息 -
2015/02/08-13:29
こんにちは、月野輝とパートナーのアルベルトです。
ドロテアさん達には初めまして、彩夢さん達はクリスマス以来かしら、お久しぶり。
時期的に甘い物のイベントは多いけど、辛いものだらけのフェスって変わってるわよね。
私達はどこに行くかまだ考え中なのだけど、巨大鍋のカレーとペッパラダルが気になってるわ。
ブースは行くとしたら甘口かしら……私、あまり辛いと食べられなくて。
アルは辛いもの好きみたいだから変更するかもだけど。
とにかく、皆さん、楽しみましょうね♪