【メルヘン】びっくり★ビッグパンケーキ(木乃 マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

◆流行も大事に
バレンタイン城の城下町、ドレミ・スィーツレストラン。
バレンタイン伯爵家に次ぐ名家として名高いドレミ家当主イライザが経営するレストランだ。
チョコリートと呼ばれるチョコを原材とした魔法の建材がレンガのように積み立てられて出来たこのレストランは
さながら『お菓子の家』が具現化したように見える。

休憩時間中、コックのドゥルセは思案していた。
「うーむ、古き良き伝統を守ってきたが……やはり変わり映えしないのは気になる」
ドレミ・スィーツレストランでは一応普通の食事もあるのだが、名物は巨大パフェなどの巨大スィーツシリーズだ。

ドゥルセは考えていた。
『なにか、新しい巨大スィーツを店に出せないのか?』
変化がない、というのは安定しているとも言えるがやはりユーザーのニーズを考えると今後の課題になりかねない。
「……そうだ、パシオン・シーではなにが流行っているのだろうか」
少しでもヒントになればいい、そう思いドゥルセは書店からいくつかの本を買って帰ることにした。

パシオンウォーカー、タブグル!パシオン特集、パシオン・シーの歩き方、などなどなど。
常夏の海岸線から見えるスカッとするような青色や、砂浜で踊り狂っているパーム・トレントの姿も写っている。
「どれもこれも、観光地向けって感じだなぁ」
頬杖を付きながらドゥルセはパラパラとページをめくっていくと、あるページに目が止まる。

「……パシオン、パンケーキ?」
そこにはタワー状に連なったパンケーキに山盛りの生クリーム、
そしてカラフルなカットフルーツが散りばめられた目にも鮮やかなパンケーキが一ページにデカデカと掲載されていた。

パシオン・シーで最近ブームになり始めた料理で、ソーセージや目玉焼きなどと合わせてモーニングプレートにもするらしい。
「こ、これだ!これを巨大スィーツにすれば面白いかもしれない!」

ドゥルセは早速試作品を作り始め、翌日にはイライザに相談して店頭に出してもらえないかと相談を持ちかけた。

◆新・巨大スィーツ!

ドレミ・スィーツレストランで新しい巨大スィーツを出します!
その名も『びっくり★ビッグパンケーキ』

5段に重なるパンケーキの上にどっさり盛られた生クリームが衝撃的♪
散りばめられた色鮮やかなカットフルーツが刺激的☆
カップル向けのスペシャルなパンケーキをご堪能あれ!

価格は1000Jr

ぜひぜひご賞味あれッ★

解説

目標:
びっくりビッグパンケーキを堪能しよう

ドレミ・スィーツレストラン:
バレンタイン伯爵家に次ぐ名家として名高いドレミ家当主イライザが経営するレストラン。
普通の食事もあるが、名物は巨大パフェなどの巨大スィーツシリーズ。
バケツサイズの甘いメニューが沢山用意されています。
今回は巨大パンケーキです。

イライザもドゥルセもリザルト中には登場しません。

パシオンパンケーキ:
いわゆるハワイアンパンケーキです。
画像検索をすると解りやすいです、飯テロ注意!

びっくり★ビッグパンケーキ:
パンケーキと生クリームを合わせた全長50cmの巨大なパシオンパンケーキです。
カップル向けという通り2人で食べることを想定しております。

★メニュー
●パンケーキ(一律1000Jr/2人分の料金です)
・ベリーベリーベリー
・マンゴーサニー
・アイスオンザラブ
・ハニートラップ
・バナナチョコラッテ

(内容はお楽しみ!ダイスでチョイスしてみてもイイかもしれません)
※ベリー、ハニー、など最初の3文字に略して構いません。

●ドリンク(一律100Jr/1人分の料金です)
紅茶(レモン、ミルク/ストレートの場合は紅茶のみでOK)
コーヒー(砂糖、ミルクを使う方は糖、乳など略してOK)
ハーブティー(ローズヒップ、カモミール、ハイビスカス/砂糖の代わりに蜂蜜が出ます)
 ↑ローズ、カモ、ハイビなど解るように略して頂けると幸いです

諸注意:
一般解放されている営業中の飲食店です。
貸切ではありませんので過度のイチャラブや、騒いでしまうと周りのお客様がガン見してしまうでしょう。

その他:
・『肉』の1文字を文頭に入れるとアドリブを頑張ります。

ゲームマスターより

ヒャッハー!巨大スィーツだぁ~ッ!!木乃です。

今回はハワイア……ゲフンゲフン、パシオンパンケーキをお二人で楽しんで頂きます。
一般解放されてる飲食店なので色々お気を付けください。
そして画像検索は満腹時を推奨します、本気(とかいてマジ)で!

それでは皆様のご参加をお待ちしております。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リゼット(アンリ)

 

ハニー
紅茶(ミルク
コーヒー

どんな理由よ!毎度毎度呆れるわ…
でも私も蜂蜜には興味があるわね
やっぱりパンケーキには蜂蜜よ

すごい…想像してたよりずっと大きいわ
待って!写真撮りましょうよ
バカ、あんたのじゃなくてパンケーキの写真よ

いけない、冷めてしまうわね
いただきましょうか

っ…!これは…
まるでパシオンビーチでバカンスを楽しんでいるかのように
日常とは違う特別な感覚を与えてくれる…!
まさにびっくり★だわ
こいつ、ただのでか盛りじゃない。侮れないわね

(味の詳細は書きづらいのでおまかせ

ちょっとアンリ、私ももっと食べたいんだからゆっくり食べなさいよ!

ミルクティは重さ的に失策だったかしら
でもケーキとの相性は抜群ね


水田 茉莉花(八月一日 智)
 

却下です
そんなの許したらあたしが会社に怒られます!
…ほづみさん
いくらネット配信が順調だからって
休日くらい仕事忘れたらどうですか?

まあ確かに、ほづみさんが作る食べ物はどれも好きだし
上手なのはわかってるけど…甘いもの苦手なんだよなー
あたしはブラックコーヒーでいいわ

うわー…この高さと生クリームは…
って、ほづみさん、1人で食べきる気?!
あ、ハイハイ、余裕があったら食べてもいいのね
え、この一切れ食べろって?
…ん、確かに美味しいかも、これくらいなら平気かな?

あ、やられた!
こらバカチビ、今の無し、なーしっ!
何よその気持ち悪い笑い方
いい加減黙りなさーいっ!
(生クリームを1枚のパンケーキですくって顔面ぶつけ)



和泉 羽海(セララ)
 
ベリーとハーブティー(ローズ)

(甘味につられて参加)
人がたくさん…この人目立つし…帰っちゃだめかな…
でもパンケーキ食べたい…なるべく隅の方にいよう…

どれも美味しそう…えっと…どれにしようかな…
(逡巡の後、ベリーを指さす)

すごい…大きい…全部食べれるかな
(目をキラキラさせながら夢中でパクつく)

…なんか視線を感じるんだけど…見られてる…?
(ちらっと見て目が合うと慌てて逸らす、を何度か繰り返す)

…?この人あんまり食べてない…

『(筆談で)食べないの?』

そういえばコーヒー、ブラックだ…
甘いの、苦手だったのかな…

多分、付き合ってくれたんだよね
ちゃんと、お礼、言わなくちゃ…

美味しかった…えと
『ありがとう』


錫谷 椿(シグリッド・ワーグナー)
 

5段パンケーキ…とっても食べ応えがありそうです!
食べても食べてもなくならなそうですよね、楽しみです
つい頬が緩むが指摘され恥ずかしい

・バナナ
・紅茶(ミルク)

実物を前にして大きさにすごいと感嘆
はっ、これのカロリーっていくつなんでしょう…?
…き、気にしたらだめですよね

それじゃあいただきます
…あ、美味しい!
これならいくらでも食べられそうです

協力して完食
今日はもう夜ご飯は食べれなそうです…

あの、今日はありがとうございました
いきなり誘っちゃってすみません
どうしても食べたかったんですけど…
カップル用ってあったから1人で来づらくて

本当ですか?嬉しいです!
また食べにきませんか?
他のメニューも気になってたんです


◆写真
「どれがいっかなー、フルーツが乗ってそうなのもいいがアイスもチョコも捨てがたい。でもここは一番心ひかれる名前のハニートラップだ!」
席に着いたアンリは1人百面相をしながら『びっくり★ビッグパンケーキ』の特別メニューを眺めていた。
1ページでかでかと掲載されている全長50cmのパンケーキは実物も迫力があるのだろうと容易に想像出来る、2人分とはいえそれなりに量があると思った方がいいだろう。
「罠だと言われても一度ははまってみたい!」
「どんな理由よ!?」
同席していたリゼットはぺしっとアンリの頭をはたく。
「でも私も蜂蜜には興味があるわね、やっぱりパンケーキには蜂蜜よ」
品名から想像するに、蜂蜜が使われていることは間違いないだろうと予想するリゼット。
「じゃあ決まりだな。さぁいくぜ、ハニー!飛び込んでやろうじゃねぇか!」
高らかに宣言しながら近くを通りがかったウェイトレスを呼びつけると、リゼットとアンリは早速注文してみた。

***
「お待たせいたしました、ハニートラップとミルクティーにコーヒーでございます」
あまりの重量に手押しワゴンで運ばれてきたパンケーキにリゼットとアンリは目を丸くした。
分厚いパンケーキ5枚の上に山のように盛られた生クリーム、とろりと上からかけられた黄金色のハチミツがより豪華な印象を感じさせた。
……しかし、傍目から見ると巨大なパンケーキというだけでトラップ要素は感じられない。
「すごい、想像してたよりずっと大きいわ」
「でっけぇ……さすがハニー、ご立派様!」
感心したように見つめるリゼットとは対照的に興奮気味にアンリは切り分け用のフォークとナイフを手に持つ。

「いっただき……」
「待って!写真を撮りましょうよ」
「あ?写真?」
じゃあカッコよく撮ってくれよ、とかっこいいポーズをとり始めるアンリ。
カッコいいかどうかは個人の美的感覚によるため筆者は詳細を敢えて触れないことにする。
「バカ、あんたのじゃなくてパンケーキの写真よ!折角の新メニューなんだからね?」
もうっ!とリゼットは薄紅色の頬を膨らませながらカバンからカメラを取り出す。
いつものことだと理解しているのだろう、アンリはリゼットの抗議も気に留めずカメラを取り上げてリゼットと一緒にパンケーキと写ろうとする。
「えーいいじゃん、一緒に撮ろうぜ」
「ちょ、ちょっと近すぎよっ」
「シャッター切っちゃうぞー、はいハニー?」
《パシャッ》

満面の笑みを浮かべながらカメラを降ろすアンリは満足げにリゼットに手渡した。
「いい写真が撮れてるとイイなぁ」
「このっ、バカバカバカっ!」
ポコポコポコとグーでアンリを叩くもそこは大の男である、痛くも痒くもない。
「悪かったって、俺と遊んでると冷めちまうぞ?」
「はっ!いけない」
そうしてようやく気を取り直してリゼットは座り直す。

「じゃ、いただきましょうか」
「気を取り直して、いただきまーす!」
アンリはナイフとフォークを手に取ると巨大パンケーキを切り始める。
ナイフを下まで下ろしていくと、切れ目から輪切りの黄色い果実が見えた。
「え、レモン?このまま食べろってことよね」
パンケーキに挟まれたレモンを訝しげに見つめながらリゼットは取り皿に盛り付けて一口。

「これは……砂糖漬けされたレモン!まるでパシオンビーチでバカンスを楽しんでいるかのように日常とは違う特別な感覚を与えてくれる…!」
リゼットの口の中に砂糖漬けされたレモンの抑えられた酸味が弾け、蜂蜜のコクがある甘さと混ざりあっていく。
ふわふわとしたクッションのようなパンケーキの甘みと生クリームも調和して爽やかな口当たりとなった。
「ハチミツとレモンなんて相性バツグンに決まってるじゃない……まさにびっくり★だわ」
巨大スィーツ故に大味だろうと思っていたリゼットは感服したように呟く。
「見える……パシオンビーチ、水着のちゃんネェが見える……!なんて甘い罠」
リゼットの感想が待ちきれなかったアンリもすでに食べ始めており、その味わいに思わずパシオン・シーまで飛ばされてしまったような気分だ。
『うふふ、目一杯召し上がれ(はぁと)』
……脳内ではスタイル抜群の褐色グラマラス美女がもっと食べて♪と促してくる。水着姿で。
(俺は、はまる!おじゃましまーす!)
アンリは無心に切り分けたパンケーキにかぶりつく。
「ちょっとアンリ、私ももっと食べたいんだからゆっくり食べなさいよ!」
リゼットは丁寧に少しずつ食べながらアンリに抗議する。

思わぬ甘い罠に、2人はすっかりハマっていた。

◆交流
「5段パンケーキ…とっても食べ応えがありそうです!」
錫谷 椿はドレミ・スィーツレストランに来てから終始笑顔だった。
(マンゴーも美味しそうだし、アイスも相性がいいでしょうし……迷ってしまいます)
実物をイメージしてしまうとついつい頬が緩んでくる。
「錫谷さん、顔が緩んでますよ」
「……はっ!」
そう指摘したのはシグリッド・ワーグナー。先日、椿のパートナーとなったポブルスの青年である。
物腰穏やかなシグリッドが端正な顔に小さく笑みを浮かべると椿は恥ずかしそうに頬を染める。
「錫谷さんはどれが食べたいですか?」
「えーと、バナナチョコラッテにしようかと。きっとチョコとバナナのトッピングでしょうし」
えへへ、と照れながらメニューを椿が指差すと「じゃあそれにしようか」とシグリッドがウェイトレスを呼び寄せた。

***
「うわぁ……すごいですね、文字通り巨大スィーツって感じです」
バナナチョコラッテがテーブルに乗せられると、椿は圧倒的ボリュームに思わず感嘆の言葉をもらす。
……椿には見えていないが、シグリッドは想像以上の高さに先に運ばれてきたコーヒーを片手に持ったまま顔を引き攣らせている。
「これ、カロリーっていくつくらいなんでしょう……?」
椿の疑問も無理はない。
分厚いパンケーキ5枚と山盛りの生クリームに、斜め切りにカットされたバナナと小粒のブロックチョコにチョコではない黒いソースがかけられているのだ。
巨大スィーツの名に恥じぬビッグマウンテンである。
「……き、気にしたらだめですよね」
あとが怖くなってしまった椿はふるふると首を横に振ると大きめのナイフで切り取り始める。
「この黒いソースってなんでしょうか?」
「チョコソース、ではなさそうですね」
椿は切り取った分を取り皿に分けて、綺麗に盛り付けた皿を互いの前に置く。

「それじゃあいただきます」
「頂きましょう」
謎の黒いソースが気になった椿はパンケーキにクリームごとフォークで塗るとそのまま口に入れた。
「あ、美味しい!このソースはコーヒーシロップですね、少し苦味が効いて味のアクセントになっています」
椿は嬉しそうに目を見開くと続けてパクパクと口に運んでいく。
「んーっ♪」
「なるほど、チョコとバナナも甘くて美味しいですがチョコとコーヒーシロップもいい組み合わせですね」
椿が幸せそうに両頬に手をつくとシグリッドも感心したようにもぐもぐと頬張る。
「これなら私、いくらでも食べられそうです」
再び取り皿に盛り付け始める椿。
実は量が多いことに懸念していたシグリッドにとっては、とても助かる情報だったことは彼女は今のところ知る由もなし。
「あっ!シグリッドさんの分はちゃんと残しますからね?」
「あはは、俺の分は気にしなくていいですよ。椿さんが美味しそうに食べているところをもう少し見たいです」
やんわりと回避するのも紳士的な対応と言えるだろう。

***
「あの、いきなり誘っちゃってすみません……今日はありがとうございました」
椿とシグリッドは頑張って完食、椿は注文していたミルクティーを飲みながらポツリと話し始める。
シグリッドは不思議そうに椿の顔に目を向ける、椿の淡い紫色の瞳が照れくさそうに右往左往していた。
「どうしても食べたかったんですけど、カップル用ってあったから1人では来づらくて」
「ああ、なるほど。でもこれだけ大きいと1人で食べるのも大変でしたでしょう」
小さく照れ笑いを浮かべる椿にシグリッドは一瞬きょとんとしたもののすぐに柔らかく笑みを浮かべる。
「錫谷さんと一緒に食べるのも楽しいし、パンケーキもとても美味しかったですよ。こちらこそ誘ってくれてありがとうございます」
シグリッドの言葉に椿の表情がパァッと明るくなる。
「本当ですか?嬉しいです!……あの不躾なお願いなのですが、また食べに来ませんか?」
椿はもじもじと恥らいながら言葉を続けた。
「他のメニューも気になってたんです。アイスオンザラブもアイスが乗ってそうですし、マンゴーサニーもフルーツ盛り沢山でしょうし!」
「……また、来ましょうか。新しいメニューが入っているといいですね」
すでに次に来るときを想像しているのだろう椿の様子に、シグリッドはクスリとおかしそうに笑みを浮かべた。

◆呼出
「よーっし、次のネット配信料理番組。テーマは『自宅でできるパンケーキ!』」
八月一日 智はグッと力こぶしを作り一人意気込んでいた。
「……あ、ここは取材費でよろしく♪」
「却下です」
調子の良い言葉を冷静に一蹴したのは水田 茉莉花。
「ドレミ・スィーツレストランから取材許可を得ていないのですよ?そんな事で経費の使用を許したらあたしが会社に怒られます!」
……そう、あくまでリサーチに来ているが店側からは許可を得ていない。
もし、交渉するにしてもオーナーのイライザから許可を得なければならず個人で面会するのは難しいだろう。

「ほづみさん、ネット配信が順調だからって休日くらい仕事忘れたらどうですか?」
「休日だからこそ!仕事中にここまで来られないんだからさ?」
「う……それも、そうですけど」
バレンタイン地方はパシオン・シーから更に南下せねばならず、タブロスからの移動を考えると厳しい。
智の予想外な正論に思わず茉莉花も言葉が詰まる。
「お、メニュー一杯あんなー、どれにしよっかな?」
そんな茉莉花を他所に智はメニューをパラパラとめくりだす、茉莉花は先に出されていたお冷を一口飲みながら居心地が悪そうに店内を眺める。
(はぁ……あたし、甘いもの苦手なんだよなー)
「あ、すいませーん、このバナナチョコの奴と、ミルクティー!みずたまりは?」
「……あたしはブラックコーヒーでいいわ」
智は早速ウェイターを呼び寄せると先に注文を始めていた、茉莉花は友をジトリと睨みつけつつ自分の飲み物をすかさず頼んだ。

***
「うわー……この高さと生クリーム」
「うっひょーっ、カットバナナにチョコブロックちらしと……コーヒーシロップかな?」
巨大スィーツに圧倒される茉莉花、巨大スィーツに目を輝かせる智。2人は対照的な反応を見せる。
「とにかく美味そうだ!」と智はフォークとナイフを手に皿を手前に寄せた。
「って、ほずみさん?1人で食べきる気!?仮にも2人前のパンケーキですよ、これ?」
訝しげに眉を顰める茉莉花。
「んっく……余裕があったら喰っていいんだぜ?」
既に食べ始めていた智は口に入れて咀嚼していた分を嚥下して答える。
「あ、ハイハイ。余裕があったら、ですね」
茉莉花はブラックコーヒーを啜りながらもう一度もぐもぐと勢いよく食べる智の様子を眺めている。

(ホント、このチビは美味しそうに食べるわね)
もぐもぐとテーブルの中央を締める大山のようなパンケーキを智は嬉しそうに食べ続けている。
しかし、隣の芝生は青く見てくる訳で。
(そんなに美味しそうに食べられると、気になるじゃない!)
思わずじーっと茉莉花が凝視していると、智はパンケーキを一口分小さく切り取ってバナナとチョコブロックを乗せる。
「ほれ、この辺りだったらコーヒーシロップが良い味出している所だぜ」
一切れをずいっと茉莉花の鼻先に智は近づける、驚いた茉莉花は反射的にそのままパクリ。
「ん、確かに美味しいかも。コーヒーシロップでほろ苦さもあってこれくらいなら……はっ!」
にひーっとニヤけた笑みを浮かべる智に茉莉花が平静を保とうとする。
「な、なによその気持ち悪い笑い方!?」
「ようやく俺の嫁に」
「それ以上は黙りなさーいっ!!」

茉莉花はパンケーキを全力で智に投げつけた、油断しきっていたこともあり智は顔面に直撃し生クリーム塗れになりそのまま床に倒れこむ。
……打ち所が悪かったのか、ピクピクと痙攣している。
「ハァハァ」
肩で息をしている茉莉花の肩を誰か優しく叩いてくる、振り返るとニッコリと笑顔を浮かべたスリーピースのスーツを着込んだ人物。
「な、なに?」
「フロア担当の者ですが店内で飲食物を使用し乱闘している方が居るという報告がありまして、詳しくお話をお伺いしたいのですが」

そう、忘れてはいけない。
ドレミ・スィーツレストランは一般開放されているのだ。他に客も店員も居る。
……当然、騒げば注目の的になるし、提供した飲食物を粗末に扱えば責任者も出てくるだろう。
説明しようにも生クリームまみれのパンケーキを顔面に受けている智が傍らに倒れているこの状況、如何様に説明しても取り繕いは難しい。

「お連れ様のお召し物も汚れてしまったようですので替えをご用意しますね」
「す、すみません」
(うぅ……他にお客さんと店員がいるのは解ってたことじゃない、あたしのバカっ)

少しぬるくなったコーヒーをぐいっと飲み込み、はしゃいでしまった自分に喝を入れる茉莉花であった。

◆気遣
和泉 羽海は所在無さげにきょろきょろと辺りを見る。
普段は外出すら稀な彼女がバレンタイン地方まで来るのは冒険と言っても過言ではなかっただろう。
「……」(人がたくさん……この人目立つし、帰っちゃだめかな)
羽海がこの人、と指すのは斜向かいに座るセララ。底抜けに明るいファータの青年は羽海にとっては未知数な存在でもあった。
「羽海ちゃん、どれが食べたい?好きなのを選んでいいよぉ」
セララがメニュー表を置いて差し出すと羽海は一瞥してメニューをゆっくりと開く。
「……」(どれも美味しそう、キラキラしてキレイ)
実は甘いものが好きな羽海、逡巡した後に『ベリーベリーベリー』を指差す。
「これは、ベリー3種のパンケーキかな?さすが羽海ちゃんはチョイスも可愛い!飲み物はハーブティーがあるね、このローズヒップなんかどう?」
「……」(またからかわれた……でも、それにしようかな)
羽海はセララの言葉に複雑そうな表情を浮かべながら小さく頷いた。

***
「……」(すごい……大きい、全部食べれるかな?)
羽海は生まれて初めて見る巨大なパンケーキに目を輝かせた。
生クリームの上にイルミネーションのように並ぶブルーベリーやラズベリー、苺、ストロベリーソースが色鮮やかで甘酸っぱい香りが食欲をそそる。
「羽海ちゃ~ん、切り取ってあげるからちょっと待ってね」
セララは楽しそうにナイフを入れると羽海の取り皿に器用にパンケーキと生クリームを乗せていく、最後に頂点に苺を乗せて置く。
「どうぞ~」
セララの顔をチラリと一瞥し、羽海は小さく手を合わせるとパクッと食べる。

「……」(甘酸っぱくて、美味しい)
羽海は目をキラキラと輝かせながら夢中になってパクパクと食べる。
セララも羽海が取りやすいように切り終えると、自身の分を皿に盛っておくが……食べ始める気配はない。
「……?」
羽海が視線を感じて横目でセララを見ると、頬杖をついて羽海を見つめていた。
――表情筋は完全に緩んでいる。
セララは慌てて目を逸らすと再びモグモグと食べ始めるが、視線は一向に他を向かないようだ。
羽海はセララを横目で見ては慌てて目を逸らすのを繰り返ししていた。
そして、羽海は何度かセララを見ていて『あること』に気づいた。
「……?」(この人、あまり食べてない……)
そう、セララ自身の皿には少ししか盛り付けておらず生クリームもあえて除けたように見えるのだ。

不思議に思った羽海は会話の際に唯一用いるメモとペンを取り出してこう書いた。
『食べないの?』
メモを見せられたセララはニッコリと笑みを浮かべながら口を開いた。
「うん、羽海ちゃんを見てるだけで胸がいっぱいだから」
羽海にセララの解答が真実かどうか見抜く力はない、しかしセララの手元には充分過ぎるの《答え》が置いてあった。
「……」(そういえばコーヒー、ブラックだ……甘いの、苦手だったのかな)
セララのコーヒーの傍らにミルクも砂糖も置かれていない、必然的にブラックコーヒーであることが解る。
「オレもちゃんと食べてるから、気にせず沢山食べて?ほら、苺も美味しそうだよ!」
セララはパクリと苺を食べながら笑みを絶やさず羽海に食べるよう勧めた。

「……」
羽海はローズヒップティーを一口飲んだ、普通の紅茶とは違い酸味が効いておりハチミツの甘味がふんわりと広がる。
――そして、もう一度メモを取り出してペンを紙面に走らせる。
セララはコーヒーで口直しをしていると、羽海はすぐにメモを見せた。

『ありがとう』

いつも下を向き、視線を合わせることを避けていた羽海がセララにホンの少しだけ視線を向け僅かに口角を上げている。
……彼女をよく見ない者には解らなかっただろう、羽海は微笑んでいた。
セララも驚いて目を見開いていたがすぐに破顔した。
「どういたしまして」
羽海はセララの返礼を聴くとすぐに視線を逸らし、再びパンケーキを食べ始めた。

「……」(この人は、からかってくるし頭のネジが一本足りないけど……悪い人じゃ、ないかも)
まだまだ理解できぬ相手ながら、悪人ではないだろうと感じた羽海であった。



依頼結果:成功
MVP
名前:和泉 羽海
呼び名:羽海ちゃ~ん
  名前:セララ
呼び名:アレ、あの人、セララ

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 木乃
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 4
報酬 なし
リリース日 01月29日
出発日 02月03日 00:00
予定納品日 02月13日

参加者

会議室

  • [3]錫谷 椿

    2015/02/02-21:26 

    錫谷椿です。
    よろしくお願いします!
    ちょっとお値段お高めですが、それに見合った量みたいですね。
    食べても食べてもなくならなそう…、楽しみです!

  • [2]リゼット

    2015/02/02-13:55 

    全長50cm…高さ50cmってことかねぇ。
    こりゃ腹減らしてかねぇとな!
    直径50cm、高さ50cmでも俺としては全然構わんが。
    問題はどれを食うかだな。どうしようかねぇ~

    【ダイスA(6面):4】

  • [1]水田 茉莉花

    2015/02/01-22:48 


    ぱんけーきっ、ぱんけーきっ!うひゃっほう!!
    どうも!でっけーパンケーキが食えると聞いてやってきました、八月一日智でっす!

    生クリーム山盛り、パンケーキも山盛り、フルーツもてんこ盛り!
    さーて、取材費の名目で食い散らかすぞこんちくしょー!


    茉莉花:経費では落ちません!!あたしが却下します!!!


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