【メルヘン】withはしらせピヨ(木乃 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

◆しろくてふんわり
『ピヨピヨ、ピヨ』
「やぁ~今日も皆元気だなぁ」
ベイクはバケツ一杯の餌を手に鶏舎の中を見渡す。

ショコランドにある《ぴよぴよ養鶏場》
そこには『はしらせピヨ』というホワイトチョコで出来た愛くるしいヒヨコを育成しており今日も今日とて餌やりに勤しんでいる。
大人になると『チョコッケー』という少しでっぷりとしたニワトリへと変わり、中には茶色いチョコレートのような羽色のモノも現れる。
ぴよぴよ養鶏場にははしらせピヨだけが飼育されており、大人になると別の牧場や養鶏場へと運ばれていくのだ。

はしらせピヨの表面は粉砂糖をまぶしたようにフワフワしているが、
手に載せるとチョコが詰まっているように少しずっしりとした重みがある。
くりくりとした黒いつぶらな瞳は好奇心を覗かせ、無邪気な生き物なのだと感じられる。
ピヨピヨと幼子のような高い鳴き声はなんとも母性本能をくすぐる。

「だけど、この子達は最近元気がないなぁ」
隅に固まって身を寄せ合うはしらせピヨを見てベイクは眉を垂れた。
5匹のはしらせピヨ達はキョロキョロと周囲を不安げに見渡すように動き、エサやりの時以外はずっとくっついているのだ。
「最近、周りも変な生き物が増えてきたしなぁ……そうだ!」
ベイクはポンと手を叩くとエサやりを早々に切り上げていった。

***
「と言う訳で、ちょっとはしらせピヨちゃんと遊んできてくれないかい?」
ところ変わってバレンタイン地方のA.R.O.A.支部。
恰幅の良い中年の女性職員がニッコリと笑みを浮かべる。
「どうにも勘のいいはしらせピヨちゃん達が瘴気に怯えちゃって元気がないみたいよ、ちょっと遊んであげて欲しいわ」
職員はポンっと手を振る仕草をみせると、1人の神人が挙手する。
「はしらせピヨってなにか特徴はあるのですか?」
「特徴ね、ちょーっとおっちょこちょいな子が多いみたいよ?
 勢い余って壁に激突したり、階段から転げ落ちちゃったりするみたい、
エサやりとか一緒に玩具で遊びたい子はベイクさんから買い取ってちょうだいね」

「そうそう、大きさは手のひらサイズだから誤って握りつぶしたりしないようにね?」
このオバちゃん、さりげに怖いこと言ったぞ。

解説

目標:
はしらせピヨと遊ぼう

はしらせピヨ:
ホワイトチョコレートで作られた白いヒヨコ。
ヒヨコなんだけどやたらと足が速い。小型犬の成犬なみの速さで走る。
しかし、非常におっちょこちょいなので、
爆走して壁に激突したり、階段を転げ落ちていったりする。

大きさは手のひらサイズ。
性格は純粋無垢で好奇心旺盛な子が多いです。
ご飯や玩具で遊んでもらえると懐きやすいです。

場所:
ぴよぴよ養鶏場内にある放牧地のみとなります。
チョコ棒の柵で囲われており、抹茶色のアーモンドパウダーが敷き詰められています。
柔らかいのではしらせピヨが転んでも安心。

買えるもの:
《今回は『私物の持ち込みNG』とさせて頂きます》
おもちゃ(フリスビー、テニスボール、ねこじゃらし) 1個・200Jr
エサ 300Jr
(チョコフレーク、ビスケットのかけらが入っております)

諸注意:
はしらせぴよは瘴気の影響は現在受けていませんが、瘴気に怯えて元気がありません。
体は健康ですが、心のリフレッシュが必要なようです。

そして、割れモノ注意。(チョコだけに)

その他:
・『肉』の一文字を文頭に入れるとアドリブを頑張ります。

ゲームマスターより

木乃です、今回はチョコのヒヨコちゃんとキャッキャウフフするエピソードです!

どこかで聞いた名前?
はしらせはしらせ、白羽s……おっと、誰か来たようだ。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

篠宮潤(ヒュリアス)

 

・エサ1袋、テニスボール1個、猫じゃらし1つ

隅っこで固まってるヒヨコへ
最初は怖がらせないようエサを点々と一歩距離おいた位置にしゃがみ。
テニスボールに猫じゃらしをじゃれつかせ、テニスボールコロコロ追わせ。
「お、おいでー。楽しい、よっ」
1人遊び。めげない。ヒヨコさんが興味を持ってくれるまでは!

●遊び始めたら
ボール追いかけっこ。ヒヨコと競争。
「ええ!?速、い…っ?」
素で負けたり

チラッと、とても楽しんでそうな参加者皆の様子を見て
「ヒューリも…見習ってみな、い…?」
大丈夫だよと相手の肩に乗せ……たら、跳び跳ねたヒヨコころりん
「わ!割れちゃ…っ」
精霊と同時にキャッチ
あ。ヒューリの慌てた顔…初めて見たかも


香我美(聖)
  「とりあえずは、はしらせピヨと仲良くなりましょう」


はしらせピヨに手を差し出してみて、近づいてきてくれなければ手の上にエサをおいたり、エサをおいて自分は離れてみたりといろいろ試してみようかしら。
手の上に乗ってくれたら、聖さんの髪の色と比べてみたいですね。


購入:ねこじゃらし、エサ(計500Jr)



向坂 咲裟(カルラス・エスクリヴァ)
 

ホワイトチョコ…ホットミルクとの相性もなかなか…
あらなぁに?お家で作ろうと思っただけよ…?

はしらせピヨはよく転んじゃうのよね
ちょっと心配だわ…何処かへ行きそうになったら追い駆けるべきかしら…?
…そうね、おじさん。じゃあ遠くまで行く必要のないねこじゃらしで遊ぶわ
ぴょこぴょこ動いてかわいいわ…ぴよぴよ…
おじさん、交代しましょうか?

仲良くなれたら手の上に乗ってくれるかしら
この子にもメンタルヘルスが効くと良いわね
お腹いっぱいで、あなたはねむくなーる…

いっぱい運動して、いっぱい食べて、すやすや眠れたら…きっと、しあわせでイイコトよね
しあわせに、元気になってね

●スキル
メンタルヘルス

●道具
ねこじゃらし
エサ



クラリス(ソルティ)
   【購入】エサ・猫じゃらし

ピヨちゃんってチョコで出来てるのよね…いやぁね、食べないわよ?

元気が出ない時は思いっきり体を動かすとスッキリするわよ!
玩具を振りながらピヨを誘い走り回る
爆走する危ういピヨを身を呈して真剣に庇う精霊を見て悪戯心が
ほらピヨちゃん、こっちよこっち!

…それにしてもソルがそんなに小動物に悶える姿、初めて見たわ
世話焼きなのは昔からでしょ。…なんだか気に入らないわね
(ソルはあたしの事は何でもわかるくせにあたしだけ知らないのは不公平だわ!)

悪戯に付合わせた事のお詫びにと餌を掌に乗せピヨに差し出す
貴方たちの不安、出来るだけ早く取り除いてあげるわね
…それにしても美味しそうね、この餌



宮森 夜月(神楽音 朱鞠)
 

わくわくしながらアイテム申請
テニスボール、ねこじゃらし、エサ(ピヨにあげる用)

フリスビーははしらせピヨにぶつけてしまいそうなので使わない。
朱鞠にからかわれたら、とりあえず睨む。
「かわいい!」と声をあげ、しゃがみこんでそっと撫でる。
ねこじゃらしを揺らして誘ったり、テニスボールを転がしてやったりして夢中で遊ぶが
テニスボールをうっかり朱鞠の方に転がしてしまう
ボールを追いかけてはしらせピヨが走ると追いつけない。

「ちょ、ちょっと、食べないでよ!?」
焦って朱鞠の手からピヨを取り返そうと掌にエサを乗せて差し出す
「あんたのじゃないってば!」




◆見比べ
「とりあえずは、はしらせピヨと仲良くなりましょう」
香我美は餌の入った袋を片手に放牧地の片隅で震えるはしらせピヨを見つめていた。
はしらせピヨはぴよぴよ養鶏場の主であるベイクが突っつかれながらもどうにか放牧地まで連れてきてくれた。
柵ははしらせピヨが飛び出ないように隙間なくチョコで仕切られており、外に飛び出す心配はない。

「こっちへいらっしゃいな」
香我美がしゃがみこんで手を伸ばすが、はしらせピヨはプルプルと小さく震えるだけで近づいてくる様子はない。
「香我美さん、エサを見せたらもう少し警戒を解いてくれるんじゃないかな」
「そうですね。ほら、ご飯もありますよ」
香我美は袋に手を入れるとひと握り、もう一度はしらせピヨに差し出す。
中身ははしらせピヨ用に特別に調合されたチョコフレークや砕いたクッキーの欠片だ。
『……ピヨ?』
見慣れたエサが出てきたからか、不思議そうな様子ではしらせピヨはゆっくりと香我美の方へ近づく。
「ふふ、歩く姿も愛らしいですね」
はしらせピヨは香我美の手元まで近寄ると、じーっと加賀美の顔を見つめてからエサを啄み始める。
ひと握りのエサはすぐに食べ尽くしてしまい、『けピっ』と一息吐いた。

「怪我しやすいみたいだし、そこに注意かな?ほら、面白いものがあるよ」
聖は香我美と一緒にはしらせピヨがエサを食べる様子を眺め終わると猫じゃらしを取り出した。
棒の先にふわふわとした拳大くらいの毛玉が付いている。
「ほーら、お友達だよ」
『ピーっ!』
突如現れた大きな毛玉にはしらせピヨは驚きつつも、ちょこちょこと近づいていく。
聖が猫じゃらしを徐々に動かしていくとはしらせピヨも追いつこうとててて、と追いかけ始める。

(ふむ、聖さんの髪色に比べるとはしらせピヨはクリーム色がかった白……という感じでしょうか)
聖がはしらせピヨと遊ぶ様子を微笑ましく見守っている香我美はなんとなしに聖とはしらせピヨの毛色を見比べてみた。
抹茶色のアーモンドパウダーの上では、はしらせピヨの毛色はよく目立つ。
体がホワイトチョコでできているせいか、真っ白というより少しクリーム色がかっている。
対して聖はグレーがかった銀色というべきか、薄いシルバーアッシュのように見える。

香我美はめいっぱい穏やかな時間を過ごした、聖との交流にはしらせピヨも少しのリフレッシュが出来ただろう。
最後の方は飽きてしまったのかぐーぐーと寝息を立てていた。

◆食べたらアカン
「かわいい!」
宮森 夜月がはしらせピヨを見た第一声。
外に出されたはしらせピヨは依然、不安そうに柵の根元でぷるぷると震えながら夜月を見上げている。
好奇心旺盛とはいえ、今は瘴気の存在を感じ取っているせいで怯えの方が強いようだ。
『ピィー……』
「ほら、一緒に遊ぼう?」
夜月はしゃがみこんで目線を低くするとテニスボールとねこじゃらしを手にはしらせピヨに関心をもってもらおうとアピールする。

「フリスビーは使わんのか」
神楽音 朱鞠が意味ありげにニヤリと笑みを浮かべながら夜月に問いかける。
「ぶつかったら可哀想でしょ?」
「宮森はノーコンだからな」
朱鞠の言葉に夜月はじとーっと横目で睨みつける、朱鞠は視線を気にする事なくはしらせピヨのエサであるチョコフレークをボリボリ食べ始める。
「ちょ、ちょっと、食べないでよ!?」
「菓子なのだから問題なかろうて……しかしパサパサで味も薄い」
お菓子はお菓子でもはしらせピヨ用に調合されたモノと人用では違う、はしらせピヨ達のエサと考えると美味しくはない。

「当たり前でしょ……そんな事よりはしらせピヨと遊ぶわよ。それっ」
夜月は朱鞠の食い意地に呆れつつも当初の目的を果たそうと手に持っていたボールを転がす。
『ピ?』
てててっと抹茶色のアーモンドパウダーの中を跳ねるように緩い速度で転がるボールを追いかけるはしらせピヨ、追いついて夜月をじーっと見つめると―
『ピヨ!』
体当たりするように夜月の足元まで押し運んできてくれたのだ。
「ありがとう、えらい子だね」
『ピヨっ』
夜月はしゃがみこんでそっと撫でるとはしらせピヨは嬉しそうに胸を膨らませる。

「もう一回行くよ、それっ!」
今度は下手投げで少し勢いをつけてボールを投げる、ボールは勢いよく跳ね転げていく。
『ピキーっ!』
「競争しよ……って、速!?」
夜月がはしらせピヨと距離を詰めようとするものの、はしらせピヨの健脚(?)は見事だった。
手のひらサイズという事もあり、白い影が伸びるようにテニスボールを追いかけているようにすら見える。
小型の成犬くらいとは聴いていたがその小ささが余計に素早くみせていた。
『ピィー!?』
したたっ!と素早く動けるものの、まだまだひよっこ。
ボール間際で脚がもつれて転げるように転倒して文字通り転がっていく。

「わーっ!?大丈夫?」
『ピッピー♪』
夜月が慌ててはしらせピヨを拾うと、はしらせピヨは上機嫌な様子で小さな翼を広げる。
「よかった、今度は……あ」
夜月は三度目のボール投げをしようとするが誤ってポーンと大きく上に投げ飛ばしてしまう。
高く高く上がったボールは朱鞠の傍まで転げ落ちる。
『ピーっ!!』
しかし失投とは、はしらせピヨには解らず再び全速力でボールを追いかけ始める。夜月も慌てて駆けだす。

「ヒヨコというよりダチョウのようだな……おっと」
猪突猛進、柵に突っ込みそうになるはしらせピヨを朱鞠は狐尻尾でキャッチ。
ポスンッっと突っ込んだ後、毛の隙間からひょこりと白い頭が出てくる。
「愛い奴め」
朱鞠は食べかけだったクッキーの欠片を手に乗せて差し出す。
『ピヨっ♪』
すっかり懐いたのかはしらせピヨは朱鞠の手に乗るとクッキーの欠片を啄み始める。

「ふむ、なかなか美味そうな匂いだな」
ショコランド内で生きているとは言え体はホワイトチョコ。
思わず舌なめずりをしてしまう朱鞠に追いついた夜月が慌ててはしらせピヨを取り上げる。
「食わん、食わん」
「目が全く笑ってないんだよね」
朱鞠の態度に呆れつつ夜月も買っていたエサをはしらせピヨに差し出す。
『ピヨ!』
はしらせピヨは再び嬉しそうにエサを啄み始めた。
夜月の奮闘もあって、はしらせピヨはだいぶ落ち着いたようだ。

◆ピヨといっしょ
『ピヨピヨ♪』
「ちょっと、重いけど、ふわふわ、だ」
篠宮潤は予想外に懐かれ少し戸惑っていた。
近づいて逆に怖がらせてしまったので、敢えてエサを置きながら離れていこうと少しずつ離れると
今度ははしらせピヨからついてきたのだ。
結果として、はしらせピヨの警戒は即座に解かれて今は潤の手の中にいる。
「ヒューリっ、ど、どうしよう?」
「構ってやれば良いのではないかね」
潤は手の中で期待の眼差しを向けてくる幼い雛鳥に戸惑い、離れた場所で眺めていたヒュリアスに助言を促した。
ヒュリアスは地べたに腰をおろしていた、はしらせピヨが怯えないように配慮したのだろう。しかし近づいていく気はないようにも見える。

「じゃあ、これ、競争しよ」
『ピヨっ』
潤はポケットに入れていたテニスボールを取り出すとはしらせピヨは目を輝かせてぴょこぴょこと跳ねる。
はしらせピヨを地面に置いてボールをよーく見せてから、潤はぽんっとボールを緩やかに放る。
『ピヨピヨ!』
「ええ!?速、い……っ?」
足の速さに自信があったわけではないが、潤ははしらせピヨの猛ダッシュに目を見開く。
転がるように駆け抜けていくはしらせピヨは止まったボールに追いつくとぴょんとボールの上に跳び乗った。
『ピヨピヨ』
「驚いた、けど、転ばなくて、よかった」
おっちょこちょいだと聞いていたので全速力で走ったときは内心焦ったが、何事もなく潤はホッと胸をなでおろした。

ボールとはしらせピヨを拾うと、遠巻きで同じようにはしらせピヨと遊んでいるウィンクルムが視界に入る。
……パートナーと共にはしらせピヨと遊ぶ姿に、少しの羨ましさが芽生える。
(やっぱり、ヒューリも、仲良く、なって欲しい)

***
一方、ヒュリアスの方は未だに地べたに座り辺りを眺め物思いに耽けていた。
(皆も屈んで相手をせざるを得ないようだ、俺も下手に走ろうものなら踏み潰していただろうに……これだから小動物は苦手なのだよ)
ヒュリアスが動かなかったのは面倒だった訳ではない、自身の数十倍も小さな命を守るために敢えて動かないのだ。

(まぁ、ウル1人でもヒヨコの相手は大丈夫だろう)
「ねぇ、ヒューリ」
ヒュリアスが小さく溜息をつくと、件の潤がはしらせピヨを抱えて傍に立っていた。
「ヒューリも……見習ってみな、い?」
伏し目がちに、躊躇いがちに紡がれた潤の言葉は他のウィンクルムを指しているとヒュリアスには容易に連想出来た。
潤の言葉にヒュリアスは渋い顔を見せ、気まずそうに視線を外す。
「俺が近づいても……ヒヨコを怖がらせるだけではないかね……?」
「! 大丈夫だ、よ」
不思議そうに様子を見ていたはしらせピヨを潤はヒュリアスの肩に乗せてみた。

「!?」
ヒュリアスはビクッ!と体を大きく震わせ驚きのあまりに表情が固まる。
タラリと冷や汗を流しながらそーっと肩に乗る小動物に視線を向けていく。
『ピ?……ピー♪』
小さく首を傾げたはしらせピヨはヒュリアスが遊んでくれると思ったのだろう、ぴょこぴょこと跳ねるが
立っていたのは不安定なヒュリアスの肩である、不安定さを気にする注意力は雛にはない。
『ピィ!?』
「わ!割れちゃ……っ」
慌てて潤が手を伸ばすと同時に、色の黒い無骨な手が同時に飛び出す。
「「あっ」」

はしらせピヨは潤と……ヒュリアスの手によって事故は免れた。
「……あまり持っていても、体温で溶けんかね」
「あ、そ、そうだ、ね」
ヒュリアスは大きく溜息を吐くと同時に視線を逸らしながら手も離した。
『ピヨピー』
「ご、ごめん、ね、怖かった、ね」
涙目でぷるぷると震えるはしらせピヨを潤は指先で優しくなでた。
(ヒューリの慌てた顔……初めて見たかも)
潤はいつも冷静な彼の、思わぬ表情を垣間見た。

◆言葉の力
「ホワイトチョコ……ホットミルクとの相性もなかなか……」
「お嬢さん、ベイクとやらが怒るぞ?相手は飼育されているヒヨコだ」
向坂 咲裂はじーとはしらせピヨを見つめながら呟く。
カルラス・エスクリヴァは顔を顰めながら咲裂をたしなめる。
「あらなぁに?お家で作ろうと思っただけよ?」
咲裂はなんでもないふうに返すが、相手がヒヨコだと思って発したその発言が宜しくなかった。

『……ピィ!』
小さな体を震わせながらもフーッ!と羽を逆立ててはしらせピヨは咲裂を威嚇した。
……5匹のはしらせピヨ達は勘が良すぎたが故に、瘴気の存在を仲間内でもいち早く察知していたのだ。
自分に対してかはさておき、不穏な発言をされ過敏に察知したのだろう。
「ほら、お嬢さんが不安がらせるようなことを言ったから怒っているぞ?」
「……ごめんなさい、サキサカサカサは怒らせたかった訳じゃないわ」
咲裂は僅かに目を伏せてしゃがみこんで目線を合わせる。

なんとかなだめられないだろうかと、最近覚えたメンタルヘルスケアを活かそうと思うにも相手はお菓子で出来ているとはいえ《動物》だ。
動物学についてもっと知っていた方がこの場は活かせただろう、動物と人ではあまりにも有り様が違い過ぎる。

「はぁ……とりあえずエサでもあげておこう。満腹になれば少しは気も緩む」
カルラスは面倒臭そうに溜息を吐きながらエサ袋からいくつかクッキーの欠片を取り出す。
『ピ?』
「飯だぞ、いらないのか?」
『ピヨっ』
カルラスもしゃがんではしらせピヨにクッキーの欠片を乗せた手を差し出すとぽてぽてとはしらせピヨが近づいてくる。
手前まで来ると物欲しそうな様子でカルラスを見つめ、手を引く様子がないことを感じてか更に距離を縮めてエサをついばむ。
「カルさん、ずるいわ。サキサカサカサも元気にしてあげたいの」
「お嬢さんは満腹になったこいつと遊んでやればいい」
本音は疲れるのが嫌なだけだったが、咲裂は小さく頷くとはしらせピヨがおかわりも食べきるのを待つことにした。

***
『けピっ』
お腹いっぱい食べたはしらせピヨは先ほどよりもほんの少しまるっとしたシルエットになっていた。
満腹になったことでカルラスの言うとおりだいぶ気は緩んだようだ。
「さぁ、ワタシと遊ぼう」
咲裂は猫じゃらしを取り出すとはしらせピヨに近づけてフリフリと撫でつけるように気を引こうとする。
『ピヨっ!?……ピヨヨっ』
大きな毛玉に迫られて一瞬驚きつつも、もふもふと撫でられて気持ちいいのかくすぐったそうにコロコロ転がる。
「遠くに行かないように、こっちへどうぞ」
咲裂は遠くまで転がっていかないように、近くで方向転換するように猫じゃらしの位置を変えてころころころりんと転がしていく。

『ピヨピヨっ♪』
「……ふふ」
先ほどは警戒心を抱かせてしまい、咲裂は内心不安だったがどうにか打ち解けられたことに安堵して小さく笑みを浮かべる。
「お嬢さんも元気になったようでなによりだ」
「え……?」
「私達ははしらせピヨのリフレッシュをしに来たんだ、オーガの脅威に怯えて不安を抱えているのに私達が食べるぞ、なんて言えば私達も怖い存在に思われてしまう。
……それが冗談だとしても、言われた相手を傷つけてしまうだろう。もう次からは気をつけられるかね?」
我が子を嗜めるようにカルラスは優しい声音で咲裂に言い聞かせる。
「……ええ、サキサカサカサは相手を傷つけてしまわぬよう気をつけるわ」

咲裂がカルラスに目を向けていると、いつの間にかはしらせピヨはカルラスの方へと転がっていっていた。

◆ぴよぴよぱにっく
「見るからに美味し……ソル、どしたの」
ぷるぷると震えているはしらせピヨを堂々とした仁王立ちで眺めていたクラリス、しかしそれ以上に気になる動きをしていたのがソルティ。
「あ、ぁぁ」
全身をブルブルと震わせ体調不良なのかと思えるが、瞳は爛々と輝き顔は紅潮していた。
さりげなく、力強く握られている猫じゃらしも体の振動に合わせて小刻みに震えている。
「クラリス、可愛いピヨさんたちの為に全力で遊んで元気になってもらおう……!」
「そ、そうね」
珍しく萌えあがっている(not誤字)ソルティに流石のクラリスも軽く引いた。
ドン引きまでいかなかったのが幸いだ!

「元気が出ない時は思いっきり体を動かすとスッキリするわよ!」
ソルティの握っていた猫じゃらしをクラリスが取るとはしらせピヨに近づいていく。
ビクッ!?と体を大きく震わせたものの恐怖心からか走り去る様子はない。
「さ、思いっきり遊ぶわよ!」
猫じゃらしを振って遊ぼうアピールをしていると最初は怖がっていたはしらせピヨも襲ってくる訳ではない事に気づいてクラリスの猫じゃらしに近寄り始める。
「ほれほれ、逃げちゃうよー!」
『ピピィ!』
最初は歩いていたクラリスが少しずつ駆けだす、はしらせピヨも同様にクラリスを追いかけ始める。
「え、速くない!?」
脚の速さに自信がある訳ではなかったものの、距離を縮めてくるはしらせピヨの爆走にクラリスも驚きの声を漏らす。
『ピヨピヨっ!』
そして勢い余ってクラリスの脇を駆け抜けてチョコの柵に突撃しかけた、その時。

「危なーいっ!!」
ソルティが慌ててはしらせピヨをダイビングキャッチ、抱えると転がって勢いを殺していく。
オーガ戦よりもアクティブな気がするがそんな事はない!
「大丈夫?」
『ピ!』
寝転がったままソルティははしらせピヨを解放するとはしらせピヨも元気な返事で答える。
様子を見ていたクラリスの心に悪戯心が芽生えてくる。
「ほらピヨちゃん、こっちよこっち!」
『ピィー♪』
再び猫じゃらしではしらせピヨを挑発したクラリスが走り出すとはしらせピヨも同時に追いかけ始める。
「ちょ、楽しんでるだろ!?」

ソルティは予想通りはしらせピヨのセービングに文字通り駆り出されていく。

***
「もうダメ!一杯走ったわ」
『ピヨッピヨッ♪』
クラリスがドサッとアーモンドパウダーの上に大の字で寝転ぶ。
はしらせピヨはまだ遊び足りないのか、腰を左右に振りながら小躍りしている。
「次は俺と遊ぼうか」
『ピィ!』
ソルティは猫じゃらしを拾うと緩急をつけてはしらせピヨの周りに揺らし始め、クラリスが横目で見る。

「可愛いなぁ」
「それにしてもソルがそんなに小動物に悶える姿、初めて見たわ」
「誰かさんのせいで世話焼きになったのかな、俺」
考え込むような素振りをみせてソルティは冗談めかしにクラリスに視線を向ける。
「世話焼きなのは昔からでしょ、なんだか気に入らないわね」
クラリスはぷぃっと視線を空に向ける、透き通る青さに少しだけオレンジ色の光が混ざり始めていた。

(ソルはあたしの事は何でも解るくせに、あたしだけ知らないのは不公平だわ!)
空の色のように少しだけ混じり始める不満がクラリスの胸中に芽生え始める。
《キュルゥー》
『ピィー』
突然間の抜けた音が響いてくると、はしらせピヨがしょんぼりしたような顔をしている。
「ソル、コレ食べさせたげて」
クラリスが放り投げたのははしらせピヨの餌だ、チョコフレークをソルティが取り出すとはしらせピヨは手に乗りパクついた。
「ピヨさんがチョコッケーさんになっても怯えず伸び伸び暮らせるように俺たちも頑張らないとね」
「貴方たちの不安、出来るだけ早く取り除いてあげるわね」
ソルティが餌付けを始めるとクラリスも起き上がってはしらせピヨを指先でちょんちょんと撫でる。

『ピヨピヨ!』
はしらせピヨはスリスリとクラリスの指に体をすり寄せていた。

◆お別れの時間
楽しい時間ももう終わり、無邪気なひよこ達も全員とはいかなかったもののリフレッシュが出来た。
「ありがとなぁ、はしらせピヨ達もこれでしばらく大丈夫なハズだ。あんたらもたまにはピヨ達のこと、思い出してくれよな」
『ピヨピヨっ』
『ピヨ♪』
『ピィー』
お見送りにはベイクの他に3匹のはしらせピヨもついて来ていた。
帰路につくウィンクルム達が見えなくなるまで、ベイク共にその離れていく背中を見つめ続けているのだった。



依頼結果:成功
MVP
名前:篠宮潤
呼び名:ウル
  名前:ヒュリアス
呼び名:ヒューリ

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 木乃
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 02月01日
出発日 02月07日 00:00
予定納品日 02月17日

参加者

会議室

  • [8]向坂 咲裟

    2015/02/06-00:03 

    向坂 咲裟よ。パートナーはカルラスさん。
    初めましての人もそうでない人も、みんなよろしくね。

    ホワイトチョコで出来たぴよぴよ…楽しみだわ。

  • [7]クラリス

    2015/02/05-09:07 

    こんにちはっ、あたしはクラリスよ
    皆さん宜しくねっ

    潤ちゃん…どっかで会った事ある気がしてたんだけど思い出したわ!病院で青い髪の渋イケメンと一緒にいた可愛い子ねっ
    うふふ、また会えて嬉しいわ!


    瘴気の事なんて吹っ飛んじゃうくらいピヨちゃんたちとたくさん遊ぶわよ〜っ(拳を掲げ)

    ソルティ:
    ……俺、死ぬかもしれない…(依頼書を握り締めピヨのあまりの可愛さに打ち震えている)

  • [6]クラリス

    2015/02/05-09:03 

  • [5]香我美

    2015/02/04-21:07 

    初めまして、香我美と申します。こっちはファータの聖さんです。
    篠宮さん、宮森さんこちらこそ宜しくお願い致します。他の方もよろしくお願いしますね。

    はしらせピヨたちが早く安心できるようになると良いですね。

  • [4]香我美

    2015/02/04-21:03 

  • [3]宮森 夜月

    2015/02/04-12:29 

    皆さんはじめまして!
    篠宮さんはお久しぶり!

    宮森 夜月と精霊の朱鞠です、よろしく!

  • [2]篠宮潤

    2015/02/04-10:28 

  • [1]篠宮潤

    2015/02/04-10:27 

    宮森さ、ん、樹氷の迷宮以来、で、お久しぶり、だねっ。

    クラリスさん、どこか…病院の待合室でお見かけした、ような…?? ←
    向坂さ、ん、香我美さん、初めまして、だ。
    篠宮潤(しのみや うる)という、よ。どうぞよろしく、だ。

    ………ピヨ、たち、早く元気に、してあげたい、ねっ。
    体力、続くかぎ、り、いっぱい遊ぶつもり、だよ!


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