白銀疾走、雪合戦!(和歌祭 麒麟 マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 タブロス近くの雪山でスノーモービルに乗れるらしい。
 天気がいい日が続いているが、気温は低く、雪の状態はいいと旅行会社は言っていた。スキーやスノーボードもいいが、雪山をスノーモービルでかっ飛ばすのは、それはそれで楽しそうである。
 白銀の雪山をスノーモービルでかっ飛ばそうと思って、雪山の情報に目を通していると、イベントを行っているらしいことがわかった。
 その名も「疾走雪合戦」
 スノーモービルで走りながら、筒状のブロアーのような道具で雪球を打ち出して、雪合戦をするというイベントである。
 二人乗りのスノーモービルで、雪山を高速で走り回るだけでも爽快感があるというのに、雪玉を機械で打ち出すというぶっ飛んだこのイベントはさぞかし気分がいいだろう。

●スノーモービルの運転手引き
 運転関係のスキルがあると、普通の人よりも上手に操縦が出来るようだ。
 スノーモービルは脚が安定した乗り物だが、コツがあるのだ。雪がたまって塊になっている所を走るのに、慣れていないとアクセルを吹かさないと通過しにくい。乗り慣れてくるとハンドル技術でどうとでもなる。
 アクセルを全開にすると時速60キロメートル毎時くらいのスピードが出る。つまり原付より速い。落っこちても怪我はしないようにプロテクターを付けるが、運転には注意しよう。

●雪玉発射装置の取扱説明
 雪を貯めておくタンクが付いていて、雪玉を作る必要はない。狙った相手を照準器のセンターに入れてスイッチを押すだけ。それで雪玉が超高速で発射される。
 連射も効くので打ちまくろう。

解説

 雪山でスノーモービルに乗って雪合戦をするエピソードです。
 相手はウィンクルムと同じ数だけいます。ペアで1つのスノーモービルに乗ります。
 運転担当と雪玉を打つ担当を決めましょう。
 チーム戦で、ウィンクルムチームとNPCチームで対戦してもらいます。
 基本的に個人プレイのプランを書いていただければ問題ありません。連携攻撃などをする場合は、プランに記載してください。

★雪合戦のルール
 15分の試合時間に、より多くの雪玉を相手にぶつけたチームの勝ちです。
 雪玉が当たっても失格になりません。何回でも当たれるし、当てられます。

★エリア説明
 雪合戦のエリアは全部で2カ所あります。

Aエリア:とにかく平地で広いです。雪の壁が所々にあります。スノーモービルのスピードを出すのには難しいエリアですが、隠れやすいので被弾しにくいです。
 運転と雪玉発射装置の扱い次第では相手に雪玉を沢山当てることも出来ないことはありません。

Bエリア:斜面エリアです。遮蔽物はありません。スノーモービルのスピードが限界まで出せます。隠れる場所がないので被弾しやすいです。
 当たりやすいですが、相手に雪玉を大量に当てるチャンスが生まれる場所でもあります。高速戦を楽しみたい時はこのエリアがオススメです。

★相手NPC
 平均的なスノーモービル操縦技術を持っています。
 雪玉を5連射したあと、反撃に備えて回避運動を始めます。
 エリアAでは壁に隠れて5連射した後、素早く次の壁までスノーモービルを移動させます。
 エリアBではこちらの後ろをとることを狙ってきます。正面からのすれ違い攻撃を苦手としています。

★参加必要経費400Jrが必要です。

ゲームマスターより

 スノーモービルで走り回りましょう。
 ひと味違った雪合戦を楽しんでください。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

月野 輝(アルベルト)

  スノーモービルって初めてだわ
運転も弾を発射するのもどちらも楽しそう
アルが運転するの?じゃあ私は弾を撃つ方にするわね

場所:エリアA
初心者が高速移動は危ないものね
相手が移動してくる隙を狙って壁の陰から狙ってみるわ

雪玉、当たってもそれほど痛くない
プロテクターのおかげ?
なんかアルが私よりも数段雪まみれの気がするのは気のせい…じゃない?
もしかして運転しながら私を庇って……
なら、私もそれに応えないとっ!
頑張って弾当てるわよ!

あー、凄く楽しかったわ
すっかり童心に返っちゃった
ね、アルは……え?
いつもと違う笑顔……こんな風に声上げて笑うアルを見るの初めてだわ
やっ
ちょっと動機治まってっ
もう、判りやすすぎよ、私……



ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
  【運転手】

前半はAエリアにて
スノーモービルの運転が巧みな組がいれば
その人たちのハンドルの捌き方を見て運転技術を盗む
こちらでは回避行動重視、積極的に相手の前には特攻しません。

運転技術が上がっても上がっていなくても
Bエリアに移動一気に攻勢に出ます
雪が踏み固められていない場所を選んで移動
近づく組がいればモービルのケツを滑らせて雪煙を上げ方向転換、視界を奪う

こちらではスピードというか手数重視

【心情】
車の運転はしたことはありますが勝手が違う
体のバランスと状況判断を重視しなければ
自分の能力を過信しているとトチる

ディエゴさんがすぐ後ろにいるという事実も踏まえて冷静にならないと

【スキル】
運転:レベル1



七草・シエテ・イルゴ(翡翠・フェイツィ)
  Bエリアを滑ります、私は雪玉を打つ側。
正面に敵がいない時は、
翡翠さんの後方や左右を狙う人がいないか可能な限り確認。
見つけたら、玉を打って対抗しましょう。
「翡翠さん、後ろは死守しますから、
前方に敵がいたら、すぐ知らせて下さい」

けれども、ふと翡翠さんと話をしていたら、敵に不意打ちされてしまいました。
少し油断した自分の悔しさから、気づけばギラついた目で敵を追う自分がいました。
「・・・・・・翡翠、勝つわよ」
(3オクターブ低い声で雪玉発射装置を構えながら、敵を狙う)

「ごめんなさい・・・・・・その、無性に悔しかったんです」
というわけで後半は、我ながら大人気ない事をしました。
楽しかった分、今日は反省ですね。



Elly Schwarz(Curt)
  Bエリア
雪玉担当

・機械を持って自分の成長に染々
少し前の自分だったら、重くて持てなかったかもしれません。
そう思えば、僕も成長出来ているんでしょうか。

・どんなに不利でも、クルトと連携し勝ちに行く意気込み
・後ろに回り込まれないよう、相手が後ろに来たらクルトに即合図
・クルトが作ったチャンスに雪玉を打てるだけ打つ
・危ない怖いと思ったらちゃんと彼に抱きつく
こちらの方が不利ではありますが、勝つつもりで行きましょう!
動き難いエリアより、こちらの方が燃えますよね!
クルトさんっ後ろに来てます!
近づくのは少し怖いですね…。(ギュッ
よ、よし。行きますよーっ!

・終了後
凄く爽快でした、楽しかったです。またやりたいですね!





ガートルード・フレイム(レオン・フラガラッハ)
  ●心情
レオンこういうの好きだな…付き合うが

私達は運転技術もないしAエリアの方が…て、馬関係あるのか?
(相方に押されBへ)
じゃあ私が撃つ役だな(後ろに乗ってブロアー構える)
ぇ?!お?!ちょ?!(急加速に狼狽える)

くっ…(スポーツスキルでバランスとり何とか雪玉連射)
おい、速度セーブしろ!敵に当たらん!
お前スピード狂か!

うわ…っ(投げ出され、気がついたら腕の中)
(レオンに呆れるが、腕の中は何だか悪くない。相手につられ笑う)
あー楽しい
レオン、私は兄はいるが、歳が離れていてな
子供の頃は引っ込み思案だったし、こんな遊びはした事なかった
兄ができたみたいで嬉しいよ

(言われた言葉にドキッ!
唐突に相手を意識した)




 今日は快晴だ。タブロス近くの雪山に遊びに来ているウィンクルムたち。雪は新雪が残っている場所が多数あり、気象条件などから雪の状態は非常にいいようだ。
 スノーモービルが雪に埋まって止まってしまう心配もあまりなさそうで、雪合戦を楽しめそうである。
 ウィンクルムたちはイベントにエントリーしたときに渡された雪玉発射装置を持って、貸し出されたスノーモービルの横でゲーム開始を待っていた。

「スノーモービルって初めてだわ」
「馬に乗るのならある程度の自信はあるのですが……。まあ、何とかなりますか」
 月野 輝とアルベルトが初めて乗るスノーモービルにワクワクしながら、雪合戦の作戦を立てる。スノーモービルはかなり感覚的に運転が出来るので、他の乗り物になれているだけでも運転しやすさが全然違うものである。
「運転するのも雪弾を発射するのもどちらも楽しそう」
「運転は私が。輝は撃つのに専念してください」
「アルが運転するの? じゃあ私は弾を撃つ方にするわね」
 運転と攻撃の担当を決めると二人は細かな作戦を話し合う。

 スノーモービルを運転してディエゴ・ルナ・クィンテロの元に戻ってくるハロルド。ハロルドはどんな感覚なのか慣らし運転をしていた。
「車の運転をしたことがありますが、勝手が違います。体のバランスと状況判断を重視しないとダメですね」
 運転して感じた感想をハロルドはディエゴに伝えた。
「運転をみていたが、うまく乗れていたじゃないか。充分に操縦できていると思う」
 ハロルドの運転は巧みで、身体能力の高さがかなり効いていると感じた。一方、ディエゴは雪弾発射装置の特徴などを試し打ちして感覚を掴もうとしていた。あまり真っ直ぐ飛ばないが、コツさえ掴めば狙い撃つことも出来そうだと感じる。

「これがスノーモービルか。一度でいいから乗ってみたかったんだよね! というわけでさ、シエ、これ、俺が運転する」
「翡翠さん、後ろは死守しますから、前方に敵がいたら、すぐ知らせて下さい」
 翡翠・フェイツィと七草・シエテ・イルゴは初めてみるスノーモービルに乗って試し運転をしてみた。エンジン音の大きさに驚きつつも、雪の上を高速で走り抜けるが楽しかった。
「ついでといっちゃ何だけど、勝ちに行こうか」
「はい、そうしましょう」
 翡翠とシエテはゲーム開始まで、スノーモービルで遊びながら運転を練習した。

 エンジンが唸り、雪の斜面を走って上がるスノーモービルが一台見えた。Curtである。マニュアルに目を通して今は練習中だ。
 思いの外、感覚的に乗れるのでこれなら問題なく運転が出来そうだと感じる。
「少し前の自分だったら、重くて持てなかったかもしれません。そう思えば、僕も成長できてるんでしょうか」
 雪弾発射装置を構えてElly Schwarzは雪弾をポンポンと撃ってみる。電動式の連発なので、楽に連射が効いて楽しかった。

「絶対楽しそうだ、雪原疾走!」
「レオン、こういうの好きだな……付き合うが」
 スノーモービルをみてテンションが上がっているレオン・フラガラッハを見て、少し苦笑しつつ、ガートルード・フレイムもゲームの開始を楽しみにしている。
 レオンが試し乗りでスノーモービルに乗り込む。スターターを引いて一気にアクセル全開で雪原を走り抜けていく。
 楽しそうにものすごいスピードを出しているレオンの運転を見て、ガートルードは「大丈夫か……?」と不安な気持ちになった。せっかく来たのだから楽しんでいこうと気持ちを切り替え、ガートルードは雪弾発射装置を手に持った。


 ゲームが始まった。スノーモービルのエンジン音が大きな音を立てる。トラックと呼ばれるキャタピラがアクセルをふかすと高速で回転して雪を蹴り出だした。
 ウィンクルムたちは一斉に雪原を自由に走り出す。
「初心者が高速移動は危ないものね。相手が移動してくる隙を狙って壁の影から狙ってみるわ」
 輝がいうとアルベルトは頷き、雪の壁で隠れられるエリアAに向かってスノーモービルを走らせる。
「そうですね。私たちの技術ではエリアBは危険そうですし、エリアAに行くのが無難でしょう」
 車体の前部分のスキー板が新雪を弾いて、雪が煙のように舞い上がっていく。
 雪面の凹凸に車体が上下に揺れた。雪が舞い上がり一瞬前が見えなくなる。視界が戻ると、エリアAに踏み込んでいた。
「では相手が壁から出てくるように、まずは壁の間を移動して誘いだしてみましょうか。相手が壁から出てきたら即座に撃って下さい」
 そういってアルベルトはスノーモービルを壁から壁に移動させていく。止まった状態からスノーモービルを動かすのにはアクセルを強くふかさないと動かないので、エンジン音が強く鳴り響く。
 近くで、同じようにエンジン音が聞こえるので相手のスノーモービルが近くにいるのだろう。
 雪の壁から出た瞬間の出来事だった。雪弾が大量に飛んでくる。どうやら相手に見つかったようだ。アルベルトは素早くアクセルをふかして移動する。止まっていては的になってしまうからだ。何発か雪弾が当たった。
「雪玉、当たってもそれほど痛くないものね。プロテクターのおかげ? なんかアル私より数段雪まみれの気がするけど、気のせい……じゃない?」
 アルベルトが雪弾攻撃の盾になり輝への命中量を減らしていたのだ。そのためアルベルトは雪まみれとなっている。スノーモービルを走らせていればどのみち雪まみれになるので、アルベルトは雪だらけになったことは気にしていない。
(もしかして運転しながら私を庇って……、なら、私もそれに応えないとっ!)
「頑張って弾、当てるわよ!」
 一気に攻勢に出る輝たち。雪の壁から相手が少しでも見えたら連射をして雪弾を浴びせていく。相手に雪弾が当たるたびに派手に雪弾が砕けてキラキラと散っていく。
 アルベルトの緩急を付けた運転で相手はうまく狙えないようだ。平地になっているとはいえ、多少の凹凸は雪面にあるので、雪が散り視界はお互いにいいとはいえない。
 攻撃のタイミングでスピードを落とすのが命中率を非常に高めていた。相手は素早く移動することしか考えていないのか。雪玉を連射しては移動するだけなので、アルベルトと輝の攻撃を沢山受けている。
 楽しく雪合戦をしていると15分という時間はあっという間に終わる。
「あー、すごく楽しかったわ。すっかり童心に返っちゃった。ね、アルは……え?」
 アルベルトが「あはは」と楽しそうに笑っている。いつもの何かを企んでいるような笑顔とは違い、少年のような屈託のない笑顔だ。
「こんなに笑ったのは久々です」
 アルベルトが楽しそうに、いう。
(いつもと違う笑顔……、こんな風に声を上げて笑うアルを見るの初めてだわ。やっ、ちょっと動悸治まってっ、もう、わかりやすすぎよ、私……)
 二人は雪合戦を心から楽しむことができた。


 アクセルをふかし、ハロルドはエリアAに向かってスノーモービルを走らせる。雪面の凹凸でスノーモービルが跳ね上がるが、ハロルドもディエゴもうまく腕と膝で衝撃を吸収してクリアしていく。
 スノーモービルが新雪の上を走り抜けると粉雪が舞い上がった。
 エリアAにたどり着くと、雪の壁が所々に設置されているのがよく見える。壁の間隔は広めに作られているので、壁から壁に移動する時は無防備になってしまうようだ。
「壁の間をハイスピードで移動しようと思うのですが、その間に攻撃できますか?」
「試し撃ちをした感じだと、できそうだ。ここでは相手を絞ろう。一台のスノーモービルを徹底的に狙っていくのはどうだ?」
「わかりました」
 アクセルをふかしてスノーモービルを壁の影に移動させるハロルド。相手のエンジン音が聞こえてくる。仲間のエンジン音と混ざって賑やかだ。
 アクセルを強くふかして壁から飛び出すと、反対の壁から出てきた相手チームのスノーモービルを見つけた。
 雪面の凹凸でスノーモービルが跳ねる。お互いに雪をまき散らしながらすれ違っていく。
「射撃ってのはこうやるんだよ」
 ディエゴが素早く雪弾を発射した。相手の運転手に見事に当たる。連射はしない。
 相手が連射してきた。すれ違いに雪弾が大量に飛んでくる。ディエゴは狙える範囲で雪弾を打ち落として被弾を減らした。
エリアAからエリアBに移動を始めた。エリアBには壁がなくお互いに狙いやすいエリアとなっている。高速で移動しながら雪弾をぶつける必要がある場所だ。
 急な斜面を登り切ると、車体先端のスキー板が持ち上がり、小さくジャンプする。雪面に着地すると同時に、フルスロットルでスノーモービルを走らせていく。
「相手が見えました」
「このエリアは完全に手数勝負だな」
 相手を狙って、一発から三発程度と短く、しっかりと狙いを定めて雪玉を発射するディエゴ。距離があるからか相手はスノーモービルを左右に動かして雪玉の被弾を減らしている。
 後ろから一台来ているのがエンジン音でわかる。仲間ではない。
「Uターンします。掴まっていてください」
「反撃のチャンスだな」
 ハロルドは体重移動でスノーモービルを一気に180度反転させる。大量の雪が舞い散り、雪煙で自分たちの姿が一時的に相手から見えなくなる。
 相手との向きは真正面だ。すれ違いに大量の雪弾を浴びせてやった。
(多分、連射すればたくさん当たるということで良いんだろうけどな……。銃を扱っている者としては、そういう考えはプライドが許さない、勝ちとか負けとか理屈じゃない……)
 ディエゴは正確に狙いを定めるために、しっかりとハロルドに掴まり雪弾を放っていった。
「……その、ディエゴさん、近いです」
 気がつくと、思っていた以上にハロルドと密着していたディエゴ。
「別に邪な気持ちがあるわけでは……、嫌ではないが」
「つまり、どういうことですか?」
「い、いや違う……、その……、深く突っ込むな」
 ディエゴが答えに窮している一方で、ハロルドは冷静にならないといけないと考えていた。
(ディエゴさんがすぐ後ろにいるという事実を踏まえて、冷静にならないと)
 気がつけばゲームの時間はあっという間に終わり、楽しく雪合戦をすることが出来た。


 エリアBの雪原をシエテと翡翠はスノーモービルで走り回る。このエリアには相手が多い。雪弾があちこちから飛んでくるので反撃をしたりして、スリルが楽しめている。
「それにしても白銀の世界を駆け巡るのって楽しいな。スキーやスノーボードとは、また違った疾走感がたまらない」
「雪弾を撃つのも楽しいですよ。連射できるのが爽快ですね」
 翡翠と楽しく話ながら雪合戦をしていると、横を通過していったスノーモービルに、不意打ちで雪弾が大量に浴びせられてしまった。シエテが優しい表情のままプツリと、何かがキレた。
「大丈夫か?」
「……翡翠、勝つわよ」
 シエテを心配して声をかけた翡翠。いつもより3オクターブ低い声で雪弾発射装置を構えるシエテに驚き、スノーモービルを走らせる。相手に近寄れと無言の圧力がかけられているように感じたからだ。
(なんか様子がおかしいし、雰囲気が違うからかな……。まあ、気にしないでおこう)
 翡翠は深く考えずにスノーモービルの運転を楽しむ。相手のスノーモービルを横切るようにして通過すると、シエテがこれでもかと相手に雪弾を連射した。
 あっという間に、相手は雪まみれになる。シエテが本気になって雪弾を放つ姿は、飾り気がなく、ありのままの魅力がある。
 新雪の斜面を一気に走り上がると、雪が派手に散って、光を乱反射する。後ろを振り向くと、翡翠の目にはキラキラと輝くシエテが写っていた。
「相手の正面にまわってください」
「任せておけ」
 翡翠はシエテの指示に従い、相手のスノーモービルの真正面に向かって走っていく。後ろに一台接近しているスノーモービルがいるが、シエテの連射攻撃で後ろから逃げていった。
 新雪の上を通過するたびにエンジンを強くふかして、雪を蹴散らして走り抜ける。スノーモービルのスキー板が宙に何度か浮いてバウンドをした。
 正面から雪を蹴散らしながら向かってくるスノーモービル。雪弾が大量に飛んでくる。うまく狙いが定まっていないのか、ほとんど被弾しなかった。
 シエテは射程距離に入ったと思ったタイミングで、大量の雪弾を放つ。相手に雪弾が大量に命中して、雪弾が砕けてキラキラ散っていく。
 ゲームに熱中しているとあっという間に時間は過ぎ去る。ゲームが終わって興奮が冷めてきたシエテは、翡翠にいった。
「ごめんなさい……その、無性に悔しかったんです」
 シエテは反省しているが、翡翠は「楽しかったなら、それでいいじゃないか」と優しくいう。
(我ながら大人げないことをしました。楽しかった分、今日は反省ですね)
 高揚感、疾走感、どちらも経験できて楽しく雪合戦をすることが出来た。


「運転の練習はした。あとは実戦あるのみだな。エリーの前でヘマは出来ないし、勝ちにもこだわりたい」
 クルトは小さい声で「いけるはずだ」と唱えてアクセルをふかす。後ろからエリーが掴まってきた。
 スノーモービルは大きなエンジン音を立てて、雪面を疾走する。スキー板に雪が弾かれて舞い上がり、少量だが雪を被りながら走って行く。
 高速で移動をしながらの雪合戦エリアである、エリアBに到着した。
「こちらの方が不利ではありますが、勝つつもりで行きましょう! 動きにくいエリアより、こちらの方が燃えますね!」
「怖いと思ったら俺に抱きつくんだ。落とさないように気を付けるが、運転にあまり自信がない」
「わかりました。クルトさんなら大丈夫です。信用してますから」
 エリーとクルトが長い斜面を走っていると、後ろから一台のスノーモービルのエンジン音が聞こえてきた。スノーモービルが走ると派手に雪が飛び散るし、エンジン音もすごく大きい。広い雪原でもよく聞こえて目立つ。隠れるなんてできないのだ。
 真っ直ぐ運転していたエリーとクルトが狙われる。
「もう少し引きつけたら、一気に減速する。しっかり掴まっていろよ」
「減速してすれ違いざまに攻撃するんですね」
 二人の作戦は、後ろから追ってくるスノーモービルを引きつけて、急制動で減速して横ですれ違い、雪弾攻撃をすることだ。
「今だ」
 相手のスノーモービルがものすごいスピードで接近してくる。
「近付くのは少し怖いですね……」
 クルトにエリーは掴まる。クルトにくっついていると安心できるのだ。
 ついにスノーモービルが完全にすれ違うタイミングがやってきた。雪弾を連射して相手を雪まみれにする。
 相手の後ろについて、後ろから淡々と狙いながら前のスノーモービルに雪弾を放ち続けていく。
「どうやら、真っ直ぐ走っている時間が長いと、後ろをとられるみたいですね。斜面をあちこち登ったり降りたりしていた方が、追尾されにくそうです」
「そうだな。考えて運転してみよう」
 エリーとクルトはゲーム中に状況をどんどん分析していって勝ちを狙う。
 右に見える斜面を一気に登ると、すぐに下り坂になっている。坂の頂上で一度車体が跳ねた。二人は腕と膝で衝撃を吸収して、スムーズに疾走を続ける。
 再び相手が見えてきた。後ろはとられていない。
「正面からのすれ違いを狙いませんか?」
「いいな。そうしよう。もう少し相手まで移動させる」
 クルトの運転で、相手との距離がとても短い時間で縮まった。あとはすれ違いざまに攻撃をするだけだ。エリーはすれ違う前から連射して、大量の雪弾を撃っていく。相手の攻撃もあって空中でぶつかり合って壊れる雪弾もかなりあった。一気に雪で視界が奪われる。
 エリーの攻撃は効果的で相手に大量の雪弾を当てることが出来た。
 夢中になっているとゲームの時間はあっというまに終わりを迎えた。
「凄く爽快でした、楽しかったです。またやりたいですね!」
 エリーが満面の笑みを浮かべてクルトにいう。
「また、こういうゲームをするのも楽しいだろうな」
 運転を楽しんだクルトもスノーモービルに満足できた。


 スノーモービルを運転しているレオンはエリアBの方に向かって走らせていた。
「ここは絶対にエリアB! 俺、馬の騎乗技術あるし、機械だって似たようなもんだろ」
「私たちは運転技術もないし、エリアAの方が……て、馬関係あるのか?」
 ガートルードの疑問も気にせず、レオンはアクセルを強く握った。
「しっかり掴まってろよ!」
「ぇ?! お?! ちょ?!」
 アクセル全開でキャタピラがフル回転する。雪を蹴散らし猛スピードで雪原を走り抜けていくレオンとガートルード。あまりの急加速にガートルードはレオンにしがみついている。
 鼻歌を歌いながら楽しそうにレオンはエリアBの斜面を飛ばしていく。雪が舞い上がり、あっという間に雪まみれだ。レオンは楽しそうに笑いながら、相手のスノーモービルを見つけると追いかけていった。
 こちらの後ろに付くことを狙っていた相手のスノーモービルは、ものすごい勢いで迫ってくるレオンとガートルードに驚いて逃げ始める。
 ガートルードは超スピードの中で雪弾を撃ち出していった。連射で雪弾が前方に飛んでいって、相手の背中にヒットしていく。スピードが速すぎて車体が揺れ、ろくに狙えない状況だというのに、頑張っている。
「くっ……、おい、速度セーブしろ! 敵に当たらん!」
「速いほうが楽しいじゃないか。もっと飛ばそうぜ」
「お前、スピード狂か!」
 相手を追い立てて、大量に雪弾を当てた終わった頃、ついに新雪の山に突っ込むレオンたちだった。雪が派手に舞い上がって、スノーモービルがジャンプする。急に減速したスノーモービルから二人はポーンと放り出された。
「うわ……っ」
 ガートルードはやっぱりこうなるかと思ったのもつかの間、体が飛ばされて思考が停止する。新雪の上にドサリと落ちて人形の穴を開ける。痛みが何もないと思えばレオンの腕の中で守られていた。
 お互いに雪まみれで笑みがこぼれる。
「あー、楽しい。レオン、私は兄がいるが歳が離れていてな。子供の頃は引っ込み思案だったし、こんな遊びはしてこなかった。兄ができたみたいで嬉しいよ」
「……いいけどさ」
 レオンがガートルードの手をとって雪の中から起こしてくれる。レオンは力強くて新雪の上でもガートルードは簡単に起き上がることが出来た。
 レオンは起き上がったガートルードを自分に引き寄せる。
「俺は、兄と妹の関係じゃ嫌だぜ?」
 屈託のない笑顔を見せるレオンにガートルードの鼓動が跳ねる。今までにレオンに対して感じたことのない気持ちが芽生えた気がした。
 スノーモービルを雪の中から起こしている間も、ガートルードは自分の胸の高鳴りが治まらなかった。
「お、大丈夫そう。行けるぜー?」
 目を合わせようとしないガートルードを見てレオンは何だろうと首を傾げるが、深くは気にしない。
 雪合戦の終わりの時まで楽しくスノーモービルで楽しむことが出来たのだった。 


 ゲームの結果は、ウィンクルムチームが186発、相手チームに雪弾をぶつけた。相手チームがウィンクルムチームに当てたのは127発なので、ウィンクルムチームの圧勝だ。
 ゲームを楽しんだことが、良い展開を引き寄せた。スノーモービルに乗っての雪合戦はこうして幕を閉じたのだった。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 和歌祭 麒麟
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 01月27日
出発日 02月03日 00:00
予定納品日 02月13日

参加者

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