【メルヘン】with ピンクのウサギさん(蒼色クレヨン マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

シュガーレイク。
パステルカラー広がるショコランドの中心にある、大きな湖。
砂糖水で溢れ、ソーダ水の川が幾箇所から流れ込み、場所に寄っては炭酸も混じる湖である。
先日はゼリー状の魚が見かけられたとか。

 その湖周辺には、シュガー・セタ・ラビットという淡いピンクの兎が住み着いている。
甘いモノが大好きで人懐っこく、ショコランドの住人が来るとぴょこぴょこ近寄って、
戯れたりおやつのご相伴に預かっていた。

 しかし最近、シュガー・セタ・ラビットの姿がぱったり見られなくなったのだという。
シュガーレイクには、シュガー・セタ・ラビットしか在り処を知らない、最上のシュガー生る実があり
いつも戯れた後にラビットが持ってきてくれていたのだと。
その実でしか作れないお菓子などもあり、困り始めたお店なども出てきているとか。

 オーガに襲われたかはたまた瘴気の影響で病気になっているのか、ショコランドの住人や妖精たちがずっと心配している。
だがオーガが居たら……と思うと、住人たちはシュガーレイクに近づけなくなってしまったらしい。

 「どうか、シュガー・セタ・ラビットの安否を調べてもらえないでしょうかっ」

 ショコランド内見回り中に立ち話として聞いていると、いつの間にか何人もの妖精や小人に囲まれ、
お願いされている状態になっていた。

解説

●シュガー・セタ・ラビットを探せ!

 シュガーレイクをひたすら歩き回り、ピンクの淡いウサギさんを探してあげて下さい。
とある理由(以下参照)で動けなくなっています。
どこでウサギさんを見つけるか、ご自由に考えて頂きプランに記載して下さい。
(ウィンクルムの数だけウサギさんはいます)

見つけた後は、ウサギさんと戯れたりシュガーレイクでデートを堪能したりと楽しくお過ごし下さい☆

〇シュガーレイク
・全てが砂糖水でかなり甘い(場所により炭酸混じり)。砂糖濃度が濃い為か、浮力があり体が完全に沈むことはない。
・湖中央に中島。時折砂糖を吹き出す山がある。
・至るところに小さな森林。生る実は甘く、葦のような植物の茎はサトウキビの如し。
他の動物たちは普通に過ごしているようだ。

〇シュガー・セタ・ラビット(※PL様情報)
・甘いモノ大好き。湖の水は一日に何度か飲まないと(気分的に)生きていけない。
 でも頭から落っこちそうで自分一匹じゃ飲めない。(いつも誰かに飲ませてもらっていた)
・鳴き声は「ムィ、ムィ―」。しかし嬉しかったりで興奮すると「イッキーッ!」と鳴くとか。
・実は最初のうちは、訪れたヒトたちと遊ぶつもりで軽く隠れていただけだった。
 が、姿を見せないのはオーガの影響ではと恐れた人々が湖に訪れなくなってしまったことで
 すっかり寂しんぼで弱って倒れてしまっている(空腹で倒れてる感じ)

 見つけたら全力で構ってあげて下さい。

●シュガーレイクまでの交通費一組【300Jr】消費
(先日のオーガが出たという噂によりかなり迂回ルートになってしまった模様)

ゲームマスターより

ピンクの兎さんを、愛でて 愛でて 愛で倒すエピです(キリリッ)

さぁ!某GM様だと思ってこれを機に遠慮なく!!☆ ←

リザルトノベル

◆アクション・プラン

木之下若葉(アクア・グレイ)

  まず水筒に水が入っている事を確認して、と
兎…甘いものが好きならお菓子も食べるかな?
今の持ち合せはクッキーぐらいしか無いのだけれど
いちごミルク味、食べたかったんだよね

二人でゆっくりと湖の周りを歩く
小さな林をかきわけて
靴を脱いでソーダの浅瀬を渡って
しばらく歩いていたら茂みの中に小さな塊
ピンクって言っていたしこの子かな

大丈夫?と背中を撫でる
目を覚ましたらお水をあげて
起きられる?と聞いてみるよ

君を待ってる皆にお願いされたんだ
元気になってくれると嬉しいな、って

おやつのクッキー、シュワシュワ甘い湖の水
一緒にいかが?と伝えて抱き上げ、もふもふなでなで
ふふ、アクアとはまた違ったもふもふさんだね(もふもふ



信城いつき(レーゲン)
  おーいシュガー・セタ・ラビットー…長い
前後を略してセタちゃんだ

発見したら湖の水飲ませよう
怪我や病気がないか確認するまで我慢(うずうず)
無事なら速攻抱っこだ!ぬいぐるみみたい、かわいいっ!

みんな心配してたよ。
そうだセタちゃんが知ってるシュガーの実、散歩がてら取りにいこうよ。そしたらみんなも喜ぶよ

(移動中も抱きかかえ)
ごめん!俺だけ独占してた。レーゲンも触ってみた…あーあ、レーゲンのチョコ食べられちゃった。
以前魚釣りで小動物に持って行かれた時も怒らかったよね

そんなに優しすぎると我儘になるよ…俺みたいに

だから甘やかし過ぎだよ
こーのー女ったらし、いや違う男ったらし?
じゃあ……いつきったらし(くすくす)



西園寺優純絆(ルーカス・ウェル・ファブレ)
  ☆心情
「うさちゃんを探すですの?
分かったですの!
はいですの!頑張って探してうさちゃん助けるのだよ!
それにうさちゃんをもふもふしたいんだもんね(ニコニコ」

☆発見場所
湖にほど近い森林の中

☆発見後
「ルカ様~うさちゃんいたぁ?
…うさちゃん発見ですの!
ルカ様ルカ様、うさちゃん怪我してる?
大丈夫かなぁ?
うさちゃ~ん(ツンツン
はーいごめんなさいなの…
でもルカ様、うさちゃん起きたですの
うさちゃん大丈夫怪我してない?
ホント?良かった~(ニコ
あっうさちゃんは寂しいと死んじゃうって先生が言ってた!
わーい!うさちゃん一緒にあそぼ!(抱っこや撫でたりもふったり
えへへ可愛いのだよ~
うさちゃん大好き又遊ぼうね(ほっぺキス」



明智珠樹(千亞)
  さぁ千亞さん。
早急にラビちゃんを探しましょう。
千亞さんも鳴いてみてください。恥ずかしがらず!

皆さんご無事で安心しました……!
(寄ってきたウサちゃんに)
お義父さんお義母さん、千亞さんを僕にください…!
『…ッッ!?(赤面)ここは僕の実家じゃない!(跳び蹴り)』

(千亞を微笑ましく見守り)
「甘いものに溢れ、可愛らしいこの世界が似合いますね、千亞さんは」
(私と出会わなければ。千亞さんはきっと、戦いに身を置かず過ごせましたでしょうに…)

(千亞の唇を塞ぐように人差し指で触れ)
答えは要りません。私の想いを伝えただけです。
たとえウィンクルムという名目上であっても、
私は貴方の側にいられるだけで幸せです(微笑み)



●ウサギさん発見!

「今日のおやつはワカバさんリクエストのいちごミルク味のクッキーです!」
「いちごミルク味、食べたかったんだよね」
「……ワカバさんってたまに不思議な味をリクエストされますよね」

 シュガーレイクのほとりを歩きながら、木之下若葉とアクア・グレイは、ピンク色が視界に入らないかと周囲を見渡しながら会話する。
湖からは風にのって、仄かに甘い香り。

「わあ!本当に甘い湖なんですね。泳いだら自分まで甘くなってしまいそうです」
「アクアの砂糖漬け?」

 ソーダ水の浅瀬が立ち塞がったのを見れば、若葉はカジュアルブーツをすぽんと脱いだ。
それに倣いアクアも自身の靴を両手に持って、ソーダの浅瀬にしゅわじゃぶっと歩き出す。

「若葉さんの靴、本当あったかそうですよね!」
「そうだね。なにせアクアとお揃いだから」
「? 僕、ワカバさんとは全然違う靴ですよ?」
「この中、ウール素材なんだよね」
「……ワカバさん……」

 なんて、通常運転な雑談をして浅瀬を渡ると、小さな林が広がった。
横に並んで、茂る雑草を二人でかき分けながら進んでいく。

「兎さんも食べて下さるといいのですが」
「うん?クッキー?」
「はい……」
「きっと大丈夫だよ。アクアのおやつの美味しさは、俺が一番よく知ってるもの」

 にっこりと微笑んだ若葉の優しい笑顔に、アクアも元気に頷いて。
草むらをかき分けたところで、アクアの瞳に何かが映った。
若葉もすぐにそれに気付く。

「ピンクって言っていたしこの子かな」
「そうですね。この方かもしれません」

 そこには、ぐったりとうつ伏せになったピンクのウサギがいたのだった。


* * * * *


「ユズ、頑張って探し回りましょう。もしかしたら一刻を争う可能性があるやも知れませんからね」
「はいですの!頑張って探してうさちゃん助けるのだよ!それにうさちゃんをもふもふしたいんだもんね」

 ニコニコと答える西園寺優純絆。
深刻な表情になっていたルーカス・ウェル・ファブレだが、屈託のない笑顔を見れば一つ、息を吐く。
(急いて焦っても、見つかるものも見つかりませんね……)
ぽんと、太陽浴びて輝く金の髪を一撫ですると、純真無垢な蒼い瞳は不思議そうに見上げられた。

 そうして連れ立って歩くことしばし。
シュガーレイクを囲むように生えていた木々の間に、ピンク色の長い耳が二人の視界に映るのだった。


* * * * *


「さぁ千亞さん。早急にラビちゃんを探しましょう」
「ああ。兎さんが可哀想なのは勿論、甘いものが作れなくなるのも大問題だからね」

 住人の話を聞いた瞬間、なんという大事件!とばかりに一目散に捜索に出た明智珠樹と千亞。
足並みはとても揃っている。思惑がそれぞれ異なっているのは仕様である。
ウサギさんを救う為、また、敵がいるならば当然珠樹も守らなくてはという使命感から、千亞は武器を持参していた。
長い耳を仕切りに動かし、あたりの音に集中しているところへ、明智から言葉が放たれる。

「千亞さんも鳴いてみてください」
「この非常時に何言ってんだ!」
「非常時だからこそ、です!もしかしたらお仲間だと思って姿を見せてくれるやもしれません。さぁっ、恥ずかしがらず!」

 珠樹のクセに意外と説得力がある、だと!?
千亞、それ以上返す言葉が見つからなかった。

「む、むぃ。むぃー」

 顔を真っ赤にしながら、千亞は振り絞るように森林の中へと声を掛ける。
鳴き真似をした途端隣りで悶え始めたパートナーは見なかったことにして。
千亞の涙ぐましい果敢な鳴き声に、まるで応えるかのように『ムィ―……』とか細い声が二人の耳に確かに届いた。
紫と赤の瞳が見合わせられるのだった。


* * * * *


「おーいシュガー・セタ・ラビットー……長い。前後を略してセタちゃんだ。セタちゃーん!」
「湖の水を飲んでたらしいから、湖周辺を探してみよう」

 信城いつきがウサギの名を叫ぶ横で、レーゲンは持参した水筒に湖の水を汲んでいく。
来る前に、ショコランドの住人に聞いてみたところ、どうやらこの湖の水が生きがいだと聞いて。
水筒の蓋をキュッと締め。さていつきと一緒に叫ぼうかな、と立ち上がったレーゲンの耳に、
そのいつきの別の叫びが飛び込んできたのだった。

「わぁ!?セタちゃん居た――――っ!!」
「え!?もう見つかったの!?」


●もふるぜセタさん!じゃなかった、セタ・ラビット!

「大丈夫?」

 若葉は、倒れたままのウサギの背中をそっと撫でた。
いきなり頭で無かったのは正解だったかもしれない。
突然現れた、いつも訪れる住人たちと違った大きな人間に、ウサギは体は動かせないもののつぶらな瞳だけをきょろきょろ動かし
すっかり震え始めてしまっていた。突如眼前に手が迫ってきたら痙攣でも起こしていただろう。
背中に優しい温もりを感じて、セタ・ラビットは次第に緊張していた体を緩めていった。

 落ち着いた様子を見てから、若葉は水筒に入れてきた綺麗な水をウサギに差し出してやる。
一口、二口と飲んだのを見てホッとするアクア。
水を飲み終えたウサギ、やたらと若葉の手を見つめている。
そこには、まるでチョコワッフルのように見えるチェックキルトグローブがはめられていた。
見てる。
ヨダレが出そうな感じに。

「あっ、宜しければどうぞです?」

 その視線の意図に気付いたアクアは、慌てて自身お手製のクッキーを差し出してみる。
ウサギさん、すんすんと鼻を鳴らしていちごミルク味クッキーに口を寄せる。

 ぺろ……、かしゅっ

「あ!食べてくれました……!」

 とても嬉しそうな表情のアクアに、ね?だから言ったでしょう?と若葉が首をかしいで目を細めた。
若葉に体を支えながら、結局クッキー一枚をぺろりとたいらげたセタ・ラビットを見て。

「どうでしょう?甘いもので少しでも元気になれたでしょうか」
「起きられる?おやつのクッキー、シュワシュワ甘い湖の水。一緒にいかがかな?」

 言葉は通じずとも、何度も訪れてくれてた住人たちの会話から、どことなく単語の空気を読み取って。
セタ・ラビットは『ムィムィッ』と要求するような声を上げた。

「君を待ってる皆にお願いされたんだ。元気になってくれると嬉しいな、って」

若葉がウサギを抱き上げながらそう伝える。
その間に、アクアは水筒のコップを持って先に湖の方へ駆け出した。
ちゃぷっとコップに甘い水を掬うと、ゆっくり歩いてくる若葉を待って。
そうして、ウサギが飲みやすいようにコップを傾けて口元へ近づけてやる。

 ピチャピチャピチャァァァ!

セタ・ラビット、物凄いいきおいで水を飲む。

「そっか。ここの水が大好きなんだね」

 その様子に若葉は語りかけながら、飲み終わった頃を見計らって耳や背中をもふもふなでなで。
続いてアクアも、若葉に抱っこされたままのウサギさんをなでなで。

「本当に、柔らかい毛並みの兎さんですね。ワカバさん凄く幸せそうです…!」
「ふふ、アクアとはまた違ったもふもふさんだね」

 若葉、ウサギを撫でていた手をそっとアクアの頭に乗せて。こちらもなでなでもふー。
しょうがないですね、という顔をしながらも、どこか笑みを浮かべたアクアと
羨ましそうに見上げるセタ・ラビットがいるのだった。


* * * * *


「おや?そこにいるのは……、ピンクの淡い耳……兎……?嗚呼アレがシュガー・セタ・ラビットさんですね」
「ルカ様~うさちゃんいたぁ?……うさちゃん発見ですの!」

 先に茂みをわけ入って小さな体が通りやすいようにしていた広い背中に、無邪気な声が響いてきた。
ピンクのウサギが倒れている姿を目にすると、優純絆もさすがに眉を下げて駆け寄って行く。

「ラビットさん、大丈夫ですか?」
「ルカ様ルカ様、うさちゃん怪我してる?大丈夫かなぁ?うさちゃ~ん」

 ツンツンとふわふわの体を触る。
本人なりに心配しての行動だったが、怪我の有無がまだ未確認であったルーカスからしっかりとした口調が溢れる。

「……コラ、ユズ止めなさい」
「はーいごめんなさいなの……」
「良い子です」

 素直な返事。
愛情という名の教育もいつも素直に受け止めてくれる優純絆に、微笑んではまたその頭を優しく撫でて。
そんな温かい会話を感じ取ったのか、セタ・ラビット、ぴくりと動いて両の目がそろそろと開かれた。

「あ!ルカ様、うさちゃん起きたですのっ。うさちゃん大丈夫怪我してない?」

 すぐに気付いた優純絆はルーカスに伝える。
慎重にウサギの体を調べたルーカスは、ゆっくりと安堵の色を浮かべた。

「特に怪我の様子は無いですねぇ」
「ホント?良かった~」

 パッと笑顔になる優純絆。ちょっぴり首を傾げるルーカス。

「しかし何故倒れてたのでしょう?」
「あっうさちゃんは寂しいと死んじゃうって先生が言ってた!」
「……ふむ、あながち間違ってないかもしれませんねぇ」

 両手を打ち鳴らした優純絆の言葉に、ルーカスも成程と頷いた。
久しぶりに聴く人の声。楽しそうな会話。
セタ・ラビット、ほんわか心が回復するのを感じた。
次第にもぞもぞと体を動かすと、優純絆とルーカスが見守る中、数分後には起き上がりひょこひょこ歩き出せるようになっていた。

「ではユズにラビットさん、遊びましょう」
「わーい!うさちゃん一緒にあそぼ!」

 ひょーい♪とウサギを抱っこして、撫でたりもふったりしながら優純絆は遊べそうな場所をきょろきょろ探す。
喜び勇んで駆け出す様を、ルーカスは優しい眼差しで見守りながら声をかける。

「転んだり怪我しない様にするんですよ」
「はーい!ルカ様―っ。えへへ可愛いのだよ~。お名前、セタ・ラビットさん?ユズは、ユズって言うんだよー」

 湖のほとりにウサギを下ろして、前足に握手しながら語りかける優純絆。

「他にお友達いるのかなぁ。ユズもね!この間お友達、出来たのだよ~♪カズハちゃんに、フタバちゃんにー、ミツバちゃん!
 今度はみーんなと一緒にウサギさんと遊べたらいいですのっ」

 にこにこと話す内容にルーカスは耳を傾ける。

(ふむ……余程雪童さんたちが好きになったんですねぇ。
 流石にいつ現れるか分からない雪童さんとは難しいですが……)

 ウサギの真似をして、ぴょこぴょこ並んで跳ねている楽しそうな様子を見つめ。

(ユズの為に兎を飼う事を考えましょうかねぇ……)

 愛しき息子の為ならば。ルーカス、真顔で唸っていた。


* * * * *


「ご無事で安心しました……!」

 声を頼りに森林の中を進んで行くと、ピンクの体が幹の根元に丸まっているのを見つけ、安堵の息をつく明智。
そんな明智の無防備な背中を護るように、後からついて行く千亞。
周囲に敵らしい気配が無いことが確認出来れば、そっと胸元に隠していた手裏剣から手を離し。
代わりに手のひらいっぱいに握られたのはチョコレート。
一口サイズのそれをぱらぱらとセタ・ラビットの鼻先に広げながら、千亞は優しく声をかけた。

「ウサちゃん、どう?食べられる?」

 人の気配と甘い香りに、うっすらと目を開くセタ・ラビット。
チョコを一つとって、明智はその小さな口元へと運んでやる。

 ぱくっ……もぐもぐもぐー!

 ウサギさん、凄い勢いで食された。
明智や千亞が撫で続けていれば、次第にその体に力を取り戻したセタ・ラビット。
嬉しそうに『ムィ―!』と鳴くと、明智の方へぴょこぴょこ寄ってきた。

「お義父さん、いえお義母さんでしょうか。千亞さんを僕にください…!」

 明智、三つ指ついてセタさんもといラビットさんに懇願。

「…ッッ!?ここは僕の実家じゃない!」

 大きい方のウサギさん、再び頬を真っ赤にしては顔を上げた瞬間の明智狙って飛び蹴りをかます。
もはや打たれ慣れている明智、ぐふっと倒れるもののすぐに嬉しそうな表情で起き上がる。
その姿も発言も頭から消すように、セタ・ラビットをもふもふと愛でまくる千亞。
一人と一匹のウサギさんたちを微笑ましそうに見つめていた明智の瞳に、ふと、どこか切なげな色が宿った。

「甘いものに溢れ、可愛らしいこの世界が似合いますね、千亞さんは」
「そりゃあ僕もショコランドに住めたら幸せだけどねー。……ん?どした珠樹?」

 ただ明るいだけじゃない声色に、いつもと違った雰囲気を感じ取った千亞が振り返る。
その真っ直ぐな瞳を、一度避けるように瞼を伏せて――。

(私と出会わなければ。千亞さんはきっと、戦いに身を置かず過ごせましたでしょうに……)

 それでも手離せない。もう出会ってしまったから。
明智は、今度はしっかりと千亞の目を見つめ返した。

「千亞さん。ウサちゃんに伝えた言葉に偽りはありません」
「……え?は?」
「ちゃんと、土下座して、正式に貰い受けたいと願っております」
「ななな何を言ってるんだ、僕は…っ、!?」

 千亞の唇を塞ぐように人差し指で触れる。
そして静かに微笑んだ。

「答えは要りません。私の想いを伝えただけです。たとえウィンクルムという名目上であっても、
 私は貴方の側にいられるだけで幸せです」

 いつもならすぐに蹴りを入れたいのに。
とても冗談には聞こえない、明智の真摯な言葉に千亞は口をはくはくさせていたが。
どうしたの?と見上げるウサギのぬくもりに、波打つ心をどうにか鎮めて。

「……勝手にしろ」

 ただそれだけ呟いた。
セタ・ラビットにも、そして明智にも、その逸らされた顔の中に熟れた頬の色がしっかりと見えていたのだった。


* * * * *


 湖そばの大きな石の影に、ちょこんと見えるまん丸しっぽ。
いつきが駆け出して覗き込めば、そこにはピンクのウサギ、セタ・ラビットがぐってりと倒れていた。

「わわわ……レ、レーゲン!水っ水―!」

 慌てて後を追ってきたレーゲンの手から、湖の水を口元にポトリと落とされ。
大好きな大好きな甘い水の味に、セタ・ラビット、ぱちっと瞳を開けた。
レーゲンが丁寧に、セタ・ラビットの小さな体に怪我や病気がないか確認しているのを
どこかうずうずした様子で見守るいつき。
顔を見合わせたレーゲンが、にこっと微笑んだのを見て、いつきはパッと表情を輝かせた。

「ぬいぐるみみたい、かわいいっ!」
「ムィッ!?」

 じっと我慢していたいつき、すごい早さでウサギさんを抱き上げた。
ウサギさんびっくり。もこもこの毛、ぶわっ。
するものの、いつきの心から嬉しそうな無邪気な笑顔。寂しんぼの心に光がほっこり灯る。

「うん可愛いね」

 すぐにいつきに懐いて身を摺り寄せるウサギさんと、心底楽しそうにその体を撫でるいつきを微笑ましく眺めるレーゲン。
ついた言葉は明らかに両方に向けてである。
そんな生あたたかな視線に気づかず、いつき、まだ夢中でウサギに語りかける。

「みんな心配してたよ。そうだセタちゃんが知ってるシュガーの実、散歩がてら取りにいこうよ。そしたらみんなも喜ぶよ」

 『シュガーの実』の言葉にウサギさん、首ふるふるるん。いつき、首こてん。
( ―― なんだろうこの可愛い小動物たちは)
レーゲン、こっそり口元に手を当てる。

 それはさておき、ウサギさんの反応にレーゲンも不思議そうに視線をやって。
そして、ああ、とどこか納得したようにいつきへと言葉を向けた。

「いつも遊んでる住人さんたちが未だに場所を知らないってことは、このラビットだけの秘密の場所、なんじゃないかな?」
「えっ?そうなのか?」
「遊んでくれたお礼に実をくれる、って言ってたし。場所を知られちゃうと、もう遊んでくれないかもって思ってるかもね」

 ウサギさん、言葉は分からなくても会話している様子を一生懸命耳ぴくぴくさせて聞いて。
不安そうな瞳と出逢えば、いつきはわしゃもふーっとウサギの体を撫でた。

「もう!そんなことないのにっ。この国の皆、お前のこときっと大好きなんだぞ!俺もね!」

 でも分かった!シュガーの実はいいよっ、とウサギに再び笑顔を向けて。
歩き出さない様に、セタ・ラビット、どこなく理解したようで一度『ムィ!』と鳴いた。

「せっかくだから、私も触っていい?」
「あっごめん!俺だけ独占してた」

 いつきは慌ててレーゲンへと抱っこしていたセタ・ラビットを渡した。

「毛並みもふわふわしてて気持ちいいね。チョコは食べるかな」

 胸ポケットから取り出した板チョコをそろりと差し出すレーゲン。

 もしゃぱくー!

「……一かけのつもりだったんだけど、丸ごと持って行かれたね。先日のバイトで貰った抹茶チョコを持ってこようと思ってたんだけど」

 いつきとの思い出の品が一瞬で消え失せることを考えると、変えて良かったかも……と一瞬どこか遠い目になったレーゲンが。
誤魔化すように、お腹こわさないようにするんだよーなんて言っていると、いつきから声がかかった。

「……あーあ、レーゲンのチョコ食べられちゃった。以前魚釣りで小動物に持って行かれた時も怒らなかったよね」

 いつきの言葉の意味することが分からず、先を促すようにレーゲンは見つめる。

「そんなに優しすぎると我儘になるよ……俺みたいに」
「我儘?……いいよ、いつきなら。いつきの我儘なら、かまわないよ」

 なんだそんなこと、とレーゲンは柔らかな笑顔で笑う。
こんなに優しい人に大事な、両想いの人が出来ないはずないんだよなぁ……と、
いまだ過去の自分を思い出せないいつきはそんなことを思う。

「だから甘やかし過ぎだよ。こーのー女ったらし、いや違う男ったらし?」
「その、女ったらしも男ったらしも勘弁してもらえないかなぁ。他の人には言わないよ」

 困ったような笑顔を見つめ。
今、目の前にいるレーゲンが紡ぐ言葉が本当かどうかくらい、分かる。
ならいいかと。いつきは口の端を上げた。

「じゃあ……いつきったらし」
「……あぁ、その『たらし』なら喜んで」

 くすくすと笑い合う2人。
和んだ空気に、安心してどこかウトウトし出すセタ・ラビットの姿があった。


●「イッキー!」

 各々のウィンクルムが それぞれの場所でセタ・ラビットと戯れる中。
いつか訪れるお別れの時間。

「さぁユズ、そろそろ帰りましょうか」
「もうですのっ?そっかー……うさちゃん大好き!又遊ぼうね」
 
 ウサギさんの頬にチュッとキスを落とす優純絆を、微笑ましそうに見つめるルーカス。

「元気な姿を皆に見せてあげてね」
「千亞さんを見るだけで元気になる私のように、きっと皆さんも喜ばれますよ」

ご機嫌でウサギさんに話しかけていた千亞に、説得力たっぷりな言葉を向ける明智。

「名残惜しいけど、きっと今度は住人の皆がいっぱい来てくれるからね」
「セタ・ラビットさん、お元気でー!」

 もふ撫でが空いて寂しくなったのか、片手をアクアの頭に当てて、もはや気にしないアクアと仲良く手を振る若葉。

「ぜったいまた遊びに来るからー!」
「今度はもっともっとおやついっぱいでね」

 ウサギさん以上に寂しそうに、中々歩み出さず何度も振り返るいつきの隣りで、
決して急かすことなくいつまでも一緒に声をかけるレーゲン。

 どのセタ・ラビットたちも、まだまだ遊び足りなそうに『ムィムィ―!』としばし鳴くも。
遠ざかるウィンクルムたちを追うことはせず、最後には『イッキ――!!』と盛大な送り出すような
感謝の鳴き声を披露しているのだった。



依頼結果:成功
MVP
名前:木之下若葉
呼び名:ワカバさん
  名前:アクア・グレイ
呼び名:アクア

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 蒼色クレヨン
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 4
報酬 なし
リリース日 01月29日
出発日 02月04日 00:00
予定納品日 02月14日

参加者

会議室

  • [11]信城いつき

    2015/02/03-23:40 

  • [10]明智珠樹

    2015/02/03-23:27 



    【ダイスA(10面):3】【ダイスB(10面):3】

  • [9]明智珠樹

    2015/02/03-23:27 

    と!このままスタンプだけで終わらせようなんて、そうは問屋がおろしませんッッ!!
    皆様こんばんは、明智珠樹です。
    優純絆さんとルーカスさんははじめまして、ですね。
    今更ですが、よろしくお願いいたします、ふふ……!!

    千亞さんはシュガー・セタ・ラビットさんを、私は隣のおっきぃピンクの兎さんを愛でる行動になりそうです、
    後者は拒否られる可能性大です。
    アドリブ大歓迎です、ここに書くなですねそうですね。でもステータスシートにも書いてありますのでご容赦ください。
    千亞さんをムィームィー鳴かせたいです、ふふ、ふふふふうふふふふふふふふうふ。


    …なんだか変なテンションで申し訳ございません、こっぱずかしいプランを書いてしまってるからでしょうか、
    どうか皆様良き時間を過ごせますように…!ふふ!!

  • [8]明智珠樹

    2015/02/03-23:22 

  • [7]木之下若葉

    2015/02/03-23:11 

  • [6]西園寺優純絆

    2015/02/03-09:58 

  • [5]明智珠樹

    2015/02/02-00:33 

  • [4]西園寺優純絆

    2015/02/01-21:02 

  • [3]信城いつき

    2015/02/01-11:57 

  • [2]木之下若葉

    2015/02/01-09:00 

  • [1]明智珠樹

    2015/02/01-00:23 


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