大雪に見舞われ(寿ゆかり マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

―心行くまでウインタースポーツを楽しもうとやってきたつい最近出来たばかりのロッジ。
 今日はたくさん遊んだね、なんていいながら戻ってくると、いきなりブツンと電気が消えた。
 あれ?あれ?とうろたえる貴方と精霊。

「大丈夫ですか!?」
 扉を叩く音がする。暗闇に目を慣らしながら扉を開けると、ほのかな雪明りの中A.R.O.A.職員が懐中電灯を手に持ち、その眼に焦りの色を浮かべてこういった。
「ついさっきから雪、酷くなってきたでしょう……その影響で、電気が来なくなっちゃったみたいなんです」
 えっ。と声を上げる貴方に職員は背負っていたものを渡す。
「このロッジ、薪ストーブとかが無いんですよ……、だから、緊急用のコレしか……」
 そういって取り出したのは、カセットボンベ式の簡易ストーブ。
「ええと、ロッジの管理側から借りてきたんですけど、今のお客さんの人数に合わせるとガスボンベは一組二本だけ、一本につき持続時間は二時間半程度なんで、五時間くらいしかつけられないんですけども……」
 すでに食事は終え、時刻は夜10時を回ったところ。これから冷え込みも厳しくなるだろう。
「ほんとすみません……ないよりはマシ、ということで」
 電気は明日の朝には復活するらしい。
 職員は更に防災用の食糧セットと毛布の追加分、そして懐中電灯と防災ローソクとマッチとを手渡していった。
 楽しいレジャーから一転。寒い夜をパートナーと乗り切らねばならない。
 オール電化のツケである。なんとか、乗り切らねば。

解説

一泊旅行(ウインタースポーツつき)でしたので、おふたり様1000Jr頂きます。

☆目的:寒さに耐え、乗り切れ!
シンプルです。とにかく、寒いんですよ!ロッジ!
ストーブはつければ寝室一部屋はなんとか暖まりますが、つけたまま寝るわけにもいかんので寝る際には消します。つけて寝ても、ボンベを交換しないと途中で消えます。
どうやって体を温めましょうね!公序良俗に反しない内容で、考えてくださいませ。

補足*
寝室はセミダブルのベッドが2つ、サイドテーブルが一つ。広さ的には一般的なビジネスホテルなどの二人部屋分です。ストーブをつけていれば、そこそこ暖かくなります。
 しかもこのロッジ、とんでもないことにオール電化です。管理人はおバカなの?って感じですね!?
 お外は猛吹雪。出ようなんて考えない方がいいです。
 お天気予報では朝になれば晴れるとか。
 ついでに。なんと、携帯などは圏外です!

☆プランには、夜が明けるまでどのように寒さをしのぐかをお書きください。
 ずーっと起きてる事もないのですが、いろいろと、ね。
 寒くて心細くなっちゃったり、暗くて怖かったり。いろいろあるよね。ね。
 もちろん、昼間してきたウィンタースポーツの事を振り返るのも良いですよね。



ゲームマスターより

寿の部屋が寒いだけなんですよ
そんなんどーだっていいんで冬のせいにしますか……。

*お泊りエピなのでGMもドキドキですが、節度を守って楽しくお泊りしましょう!
 (修学旅行みたいだね!!)
*アドリブの可能性あり。NGの方は”NG”とお書きください。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

手屋 笹(カガヤ・アクショア)

  服装:ロッジ宿泊用寝巻き

さ、寒い…!
ずっと簡易ストーブに頼る訳にもいかないですし、
一体どうしたら…(毛布を被る)

い、一緒にですか…!?
へ、へへへへんな事しないでくださいよ!?
暖を取る為ですからね…!

お邪魔します…
うう、あったかくはなりましたけど、
これは…とても落ち着かないです…
カガヤ…?まだ寒いのですか?

毛布により深く入り
わたくしからもカガヤに手を回して
もう少しぎゅっと身体をくっ付けます。
また風邪を引かれたらわたくしが看病しないといけないのですから、あくまで予防ですから…!

ちゃんと寒くないようにしてくださいね…
(カガヤの顔を見て)これで大丈夫ですか…?
それなら良かった…えっと…おやすみなさい!


エリー・アッシェン(ラダ・ブッチャー)
  心情
冷え性の私にはハードな試練です。

行動
ストーブ着火。ローソクが燃え尽きるまで怪談でもしましょう。
ストーブが消えたら別々のベッドで就寝……できないぐらい寒いっ!
ラダさんの提案を承諾。それなら抵抗感が薄いですし。
暗闇で外は猛吹雪。ただラダさんの体温や心音が聞こえます。
緊張しているのは私だけで、ラダさんはぐっすり。こんな状況で熟睡できるのは、私に異性としての魅力がないからでしょうか……。
いえ。無防備に眠れるぐらい私を信頼してくれている、と解釈しておきましょう!
あくまでも友達。恋人になるなんて夢物語ですね。
おはようございます。吹雪の後は快晴ですよ。
奇遇ですね。私もある意味、ラダさんの夢を見てました。


ミオン・キャロル(アルヴィン・ブラッドロー)
  寝るに限るわ!

ベット冷たい
ギシギシ窓ガタガタ…嵐…?
不安…段々不安

…起きてる?
違っ…眠るには早いわよね!
薄くて寒いのよ、この蒲団【がばっと起き上がり抗議

ありがと…【寒いのは嫌い、暗いし何か気まずい

いつ、電気つくのかしらね?
早く復帰すると良いわね


…会話、続ける気ある?【むぅっと横顔を見る
そうだけど…!【もやもや
…何よ?【笑われて更にむぅー

うーっと黙る
音にびくっ
(手、冷たい…毛布独占してるし
ばさっと毛布を精霊にかけ一緒にくるまる
凍死なんて洒落ならないから!

手を握られ吃驚、顔を見る
目が合うとドキッとして膝に顔を埋める
(そう、話さなくてもいいのね
重なった手が暖かい
眠くなってきたわ(落ち着く…?



桜倉 歌菜(月成 羽純)
  羽純くんと思い切りウインタースポーツを楽しんで幸せだったのに…何という事でしょう!

このままじゃ部屋が冷え切ってしまうので、早々にストーブ点火

これからどうしよう…暗くて怖いし
恋愛映画だったりだと二人寄り添って暖を取る…というのが王道だけど
私と羽純くんは恋人じゃないし(心で呟いていて落ち込んだ

羽純くんに急に呼ばれてビックリ
え?来い…って
いいの?
そ、そうだよね、非常事態だもんね
あはは…お邪魔します

彼のベッドにお邪魔する形で一緒に毛布に包まります
彼の鼓動、体温、温かい…
どうしよう、私の鼓動、早いの伝わってるよね?
幸せだけど、緊張でクラクラ
眠れないよ
…そう思ってたのに、体温が心地よくて、気付けば夢の中


名生 佳代(花木 宏介)
  ちょっともぉ、最悪ぅ!
ありえないんだけどぉ!
超寒いじゃん!
それに懐中電灯とローソクだけで、超暗いしぃ…ッ!
ご、ごめん…アタイ、暗いのマジで無理…。
少し暗くなっただけで、前が全然見えなくなるんだもん…。
…目ぇ悪いってめんどくさいんだしぃ?

うん、さっさとベッドで寝よ。
ぎゃぁっ!?(何かに足引っ掛けて転ぶ)
あっ、眼鏡落としたしぃ!?
何も見えないんだけどぉ!
もう無理…超怖い…動けないしぃ…。
宏介なら変な気起こさないだろうし、
ベッドまで連れてって、側についてろしぃ。
って、アンタ失礼だしぃ!
不服だけど、背中をポンポンされると安心するしぃ。
…ふふ、ポンポンしてくれんだったら、
王子様だったらよかったのになぁ。


(羽純くんと思い切りウインタースポーツを楽しんで幸せだったのに……何という事でしょう!)
 桜倉歌菜は精霊の月成 羽純の傍らで寒さに震えながらストーブのスイッチを押した。 部屋が完全に冷え切る前に、との配慮だ。
 とりあえず、とベッドの上に座ってストーブの火を見つめながら考える。
(これからどうしよう……暗くて怖いし)
 ちらと横を見やれば羽純も何やら考えているが。
(恋愛映画だったりだと二人寄り添って暖を取る……というのが王道だけど)
 そっと凛々しい精霊の横顔を見つめて思う。
(私と羽純くんは恋人じゃないし)
 その事実を自分で反芻して歌菜はなんだか余計に落ち込んできてしまった。
 同じく考えを巡らせていた羽純だが。
(参ったな。このままじゃ確実に体調を崩しそうだ。俺は兎も角、歌菜が)
 そっと歌菜に視線をやり、羽純は口を開いた。
「歌菜、来い」
 え、と驚いて歌菜が羽純をみれば、薄明かりの中ベッドの上で手招きをしている。
「え?来い……っていいの?」
「何だ?変な顔して。風邪でも引かれたら困る」
 冷静にそう言ってのけた彼にあ、と歌菜は納得した。
「そ、そうだよね、非常事態だもんね。あはは……お邪魔します」
 なに恥ずかしがってたんだろう、何を期待したんだろうと自身の頬が熱くなる。歌菜は羽純の布団にもぐりこみ、ふう、とため息をついた。
 ひとりより、断然暖かい。
 羽純はやってきた歌菜に毛布を掛けてやり、自然、二人で同じ毛布に包まる形になった。
 さて、やはり歌菜はというと。
(彼の鼓動、体温、温かい……)
 それが伝わっているということは、すなわち。
(どうしよう、私の鼓動、はやいの伝わってるよね?)
 自然と歌菜の鼓動も相手に伝わっているわけで。
(幸せだけど、緊張でクラクラ……)
 歌菜は気にしないように、気にしないように、と無理に目を閉じる。
 一方、冷静に見えた羽純のほうは。
 歌菜から良い香りがすることに、いまさらながら気づいてしまった。女性であることを意識させる優しい香り。
(……変だな、考えないようにしていたのに……)
 意識すると、目のやり場や、会話に困る。
 いつもならこんなに慌てることもないが、状況が状況だ。目を泳がせて言葉を探す。
「……歌、」
 歌菜、と何か話そうと呼び掛けるために口を開きかけ、やめた。
 隣にいる彼女はすぅすぅと寝息を立ててすでにお先に夢の中。
 なんだか、拍子抜けというか……。
(緊張でカチコチだと思ったのに案外図太いのか?)
 羽純は複雑な心境で彼女の眠る顔を見つめた。
(俺だけ、こんな気持ちのまま置いて寝るとは……)
 歌菜にドキドキなんて、するわけなかったのに。とちょっと悔しく思いながら。
 先に眠った彼女の暖かさを感じながら、羽純もうとうとと微睡んで眠りへ落ちて行った。ストーブが消えた後も、なんだか二人の周りはふわふわと暖かくて。
 心地よくて。
 翌日。真っ先に眠った彼女がからかわれたのは、言うまでもなく。
「緊張してたんじゃなかったのか?」
「えっ」
「俺より先に寝ていたから」
「ええっ」

「ちょっともぉ、最悪ぅ!ありえないんだけどぉ!超寒いじゃん!それに懐中電灯とローソクだけで、超暗いしぃ……ッ!」
 職員が姿を消すなり一息でここまで叫んだのは名生 佳代。精霊の花木 宏介はひとつため息をついてストーブをつけながら返した。
「煩いぞ、佳代。落ち着け、たった一晩の辛抱だろ……」
 その言葉に、普段強気な彼女が珍しくしおらしくなった。
「ご、ごめん……アタイ、暗いのマジで無理……」
 震える声で告げられるあたり、本当に“無理”なのだということが如実に伝わってくる。
「寒さより、暗いのが嫌なのか?このぐらいだったら大したことないように感じるが……」
「少し暗くなっただけで、前が全然見えなくなるんだもん……」
 佳代が弱弱しくそう告げる。暗い部屋の中、不安を押し込めながら。
「そうか、視力の問題か」
「……目ぇ悪いってめんどくさいんだしぃ?」
 右目の視力が急低下してからというもの、彼女の世界は健常な目をもつ人とは異なるものになった。くっきりと、クリアには見えないのだ。暗ければ、なおさらのこと。
「同じ世界見ているようで、違う物なんだな」
 ぼそり、と宏介が呟いた。自分はメガネをかけてはいるが、これは伊達。視力的な意味では全く意味をなしていない。よく見えているのだ。
「うん、さっさとベッドで寝よ」
 その呟きに肯定を返し、佳代はベッドへと移動しようと歩みを進める、が。
「ぎゃぁっ!?」
 何かに足を取られ、転んでしまった。
「あっ、眼鏡落としたしぃ!?何も見えないんだけどぉ!」
「チッ、どうしてこんな時に限って眼鏡落としてるんだ。だから落ち着けと……」
 よくよく見れば、転んでしりもちをついた体勢のまま佳代はぺたりとその場に座り込み動けなくなっている。
(もう無理……超怖い……動けないしぃ……)
「……ん?震えてるのか?佳代らしくもない」
 そっと肩に触れれば、佳代が提案する。
「宏介なら変な気起こさないだろうし、ベッドまで連れてって、側についてろしぃ」
「俺なら変な気起こさないって俺を何だと……」
 はぁ、とため息をつきながら、なんだかんだ言われた通り手を引いて立たせてやる。
「確かに、佳代は煩すぎて女として見れないが」
「って、アンタ失礼だしぃ!」
 ぎゅむ!と佳代が手を引いている宏介の腕に胸を押し付ける。
 その言動や騒がしさに相反して、彼女の胸はとんでもなくやわらかかった。
「……胸を押し付けるのはやめろ!」
 嫌がらせでしかない。
 ベッドにつけば、眠るまで横にいろと佳代がいうので、宏介は言われた通りに傍に距離を取って横になり、彼女の背中をあやすようにぽんぽんと叩く。
(不服だけど、背中をポンポンされると安心するしぃ)
 佳代は、ゆっくりとその背中に触れる手の優しさに微睡んでいった。口元に、嬉しそうな微笑みさえ湛えながら。
(……ふふ、ポンポンしてくれんだったら、王子様だったらよかったのになぁ)
***
 彼女が眠るのをみてほっと一息つき、宏介も自分のベッドへともぐりこむ。寒さが身に染みるのは、もう仕方ないとしよう。ストーブは自然に切れるだろうし。そして彼女の無防備な寝顔を見て宏介は何やら複雑な心境に。
(王子様の夢でも見てるのか……?)
「佳代だって俺を男として見てないから、添い寝しろなんて言えるんだろうな……」
 小さくつぶやいた言葉は、夜の静寂の中にゆっくりと溶けて消えた。

 真っ暗な部屋の中で、受け取った蝋燭を手に、カガヤ・アクショアが提案した。
「とりあえず蝋燭点けようか」
 神人の手屋 笹が頷く。
「今10時で……この時期の日の出が6時半~7時頃」
 カガヤがぶつぶつと計画を練る。笹は顔を青ざめさせて叫んだ。
「さ、寒い……!ずっと簡易ストーブに頼る訳にもいかないですし、一体どうしたら……」
 毛布をかぶってガタガタと震える彼女にカガヤは苦笑して告げる。
「ガスボンベ1本切れたらもう1本をセットしてあったかい内に寝るのがいいかもね」
 笹が毛布をかぶっているのを見て、うんうんと頷きながらカガヤは言葉をつづける。
「そうそう、そうやって毛布で熱を逃がさないようにして……」
 はた、として彼はもっといいことを思いついたとばかりに提案する。
「あと……一緒のベッドでくっ付いて寝る手もあるけど」
 ああ、なるほど、それはあったかそうだ。なんとなく流れで頷いてしまいそうになる笹。が。
 一瞬の沈黙の後、なにやらしどろもどろになりながら早口で答えた。
「い、一緒にですか……!?へ、へへへへんな事しないでくださいよ!?」
 そう、彼には覗きの前科があることを忘れてはならない。
「変な事って……しないよ」
 苦笑しながら答える彼が嫌疑をかけられているのに怒らないのは、まあそういうことだ。
「暖を取る為ですからね……!」
 やむを得ないことだ、と念を押し、笹がカガヤの布団に入る。
「お邪魔します……」
 うんうん、とカガヤが頷けば笹は少し遠慮がちに距離を取る。
「ほらほら、冷えちゃうよー、ぎゅーっとくっついてー」
 後ろを向こうとした笹を何の気なしに引き寄せれば、笹が身じろぐ。
「うう、あったかくはなりましたけど」
(これは……とても落ち着かないです……)
「大丈夫そうかな?」
 へっくしゅ。口をおさえてカガヤが小さくくしゃみをする。
「カガヤ……?まだ寒いのですか?」
 なんだか落ち着かないし、もっと身を寄せるのは不本意ではあるけれど。意を決して笹は行動に出た。毛布にさらに深く潜り込み、ギュッと抱きつく。
「笹ちゃん……?」
「また風邪を引かれたらわたくしが看病しないといけないのですから、あくまで予防ですから……!」
 誤解しないように!とくぎを刺すように言えば、カガヤは嬉しそうに返事する。
「うん、ありがとう」
「ちゃんと寒くないようにしてくださいね……」
 そう言って、彼女はカガヤの瞳を覗き込む。うん、とうなずくと、不安げにもう一度尋ねた。
「これで大丈夫ですか……?」
「ん。これでちゃんとあったかい……」
 彼としてもあまりくっつきすぎるのは関係的にどうかと思いながらも、そっと毛布を手繰り寄せてさらに二人を包むようにする。
「それなら良かった……えっと……おやすみなさい!」
 気恥ずかしさの全てを押し流すようにそう言って、笹は毛布に潜ってしまった。
 逃げられてしまった。頭をぽんぽんと撫でて、彼女が眠りに落ちるのを確認し、カガヤはぽそり、とつぶやく。
「笹ちゃん……好きになってもいいのかな……俺は……」
 これは恋心ではないのだ、と言い聞かせてきた。……多分。感謝の好き、と恋愛の好き、は違って。
 どうすればいいのか自問しながら、誰も答えてくれないその問いかけは静かに宵闇に呑まれ、やがてカガヤもうとうとと眠りに落ちて行った。

 明かりが消え、尋常ではない寒さへと移り変わるであろうロッジの中でミオン・キャロルは言い放った。
「寝るに限るわ!」
 精霊のアルヴィン・ブラッドローは彼女がベッドに勢い良くインするのを見て苦笑した。
(ヒッ……)
 まったく火が入れられていなかった部屋、気の利いたボアのシーツであるわけもなく。さらりとしたシーツは拷問かと思うほど冷たい。
 もう一方のベッドにゆっくりともぐりこむアルヴィンの衣擦れの音を聞きながらミオンはしまった、と思った。
 静寂が部屋を包む。が、大雪の影響で家鳴りがする。窓枠がギシギシ、扉に吹き付ける雪で、時々ガタン、と大きな音がする。
 その音が、段々とミオンの不安を煽っていった。
「……起きてる?」
「……ん、怖い?」
 アルヴィンが優しく答えると、ミオンはガバッと起き上がって抗議した。
「違っ……眠るには早いわよね!薄くて寒いのよ、この布団」
 布団を掴んでずいっと彼に見せ、鼻を鳴らせば、彼が苦笑した。
「はいはい」
 アルヴィンは毛布を一枚床に敷き、そこに二人で座ろうと提案した。
 掛け布団をそれぞれ体に巻きつけ、あまった毛布はミオンが体に巻きつける。
「ありがと……」
 そう告げればアルヴィンが小さく微笑む。
 少しの沈黙が流れた。空気を切るようにしてミオンが口を開く。
「いつ、電気つくのかしらね?」
「さぁ?」
 短い返事が返ってきた。
「早く復帰すると良いわね」
「そうだな」
「……」
「……」
 互いに黙ってしまう。
「……会話、続ける気ある?」
 むっとしながら、ミオンは彼の横顔を見やった。面食らったような顔をした後で彼はふっとほほ笑む。
「んー、無理に話さなくてもいいだろ」
「そうだけど……!」
 むくれるミオンが何を言いたいのかなんとなくわかってアルヴィンはくすっと笑った。
「……何よ?」
 ミオンの唇がさらにむぅっと尖る。
(沈黙に耐えれないのかな)
 それから、ミオンまで黙り込んでしまった。室内の静かさが、外の轟音を引き立てる。
 バタン!と大きな音が聞こえた。何か外で倒れたのだろうか。風の吹きつける音がゴオゴオと鳴っている。そのたび、ミオンはビクリと小さく肩を揺らした。
「大丈夫だって」
 苦笑しながら、アルヴィンはそのてのひらで彼女の頭をぽんぽんとあやすように撫でた。
(手、冷たい……)
彼の手の冷たさに気付く。
(毛布独占してるし)
 ばさり、と自分がくるまっていた毛布を広げ、精霊の肩にかけた。一緒にくるまれば、少しは体温を共有できる。
「さんきゅっ」
 アルヴィンが優しく笑うと、ミオンは照れ臭いのを隠すように少し大きめな声で告げた。
「凍死なんて洒落にならないから!」
 また静かになる二人、先ほどよりは暖かい。けれども、ミオンは音におびえて時折びくりと跳ねる。
 その時、アルヴィンの手が自分より一回り小さなミオンの手をキュッと握った。驚いて彼の顔を見れば、ばっちりと目が合う。優しい視線は“大丈夫”と告げていた。ドキリとして、そのまま顔を自分の膝にうずめる。
(そう、話さなくてもいいのね……)
 重なった手が温かく、安心する。膝から顔をあげれば、うとうとと舟をこぎ始めるミオン。ぽて、と頭を彼の肩に置く。
「どうぞ」
 快くその肩を貸せば、いつしかすぅすぅと寝息を立て始めた。
 髪を撫でながらアルヴィンは考える。
―なぜ、傍にいるのか。
 ふと、懐いてきた野生動物を思い出した。
(ペット感覚……?)
 いやいや……。神人だから……?
 なんにせよ、居心地は悪くない。
 そのまま夜を乗り切り、明け方ごろの冷え込み時にアルヴィンは彼女と毛布に包まったまま、手を伸ばしてストーブのスイッチをオンにした。心地よい目覚めが訪れるように。

 エリー・アッシェンは冷え性ゆえにうまく動かない指先を震えさせながら、ストーブのスイッチを押し、蝋燭に火をつけた。薄明かりが部屋に灯る。精霊のラダ・ブッチャーはほぅっとため息をついた。
「ローソクが燃え尽きるまで怪談でもしましょう」
 エリーの提案に目を丸くする。
(ローソク一本で百物語。これって夏に涼しくなるために……)
 そう思ったが、ラダはニッと笑って頷いた。
「うん、いいよぉ」
 自分も、ホラーは好きだし、付き合うという。
 蝋燭の明かりに照らされながら、エリーが生き生きと怪談を語る。
(生き生きと怪談ってのも変な表現だけども……)
 すごく、楽しそうだ。
「そこで……後ろを振り返ると……」
「ウヒャァ……いたんでしょ?いたんでしょ~!?」
「いたんですよぉお~!」
 蝋燭の光で下からライトアップされたエリーの顔が迫る。ちょっと怖い。
(多分エリーは怪談で心が温まるんだろうねぇ)
 ラダはそんなことを思いながら。二人は交互に怪談を話していく。
「そして……」
 話の途中で火が消えてしまった。
「あ」
「うん、じゃあ寝よっかぁ~」
 ちょうど、ストーブの火も消えている。別々のベッドで眠るため、各々ベッドに向かう、が。
((さ、さむいっ……))
 二人とも感想は同じ。凍てつくシーツに入ることもできず震える。
 ラダも寒いのは苦手だ。けれど、一緒に寝ようというのは違う気がする。というか、なにかこう、世間様的にまずい気がするのだ。
(エリーは友達だけど、こういう時に性別の違いを感じる……)
 まったく、男女間の友情をわかってくれない部分がある“常識”というのは厄介なものだ。
「えーと、背中合わせで座って朝を待つってのはどう? 毛布を全部巻きつけてさ」
 寒さに震えながら氷のようなベッドに入るのを躊躇するエリーに声をかけた。
「そ、そうですね」
 それはいい案ですね、と唇を震わせながらエリーが答える。それならば、抵抗感もあまりない。
 二人で背中合わせになり、毛布を体に巻きつける。体温をわけあえばいくらか暖かい感じがした。
「背中合わせだと戦友って感じがするねぇ」
 なんて言って、エリーの背中越しにラダが笑う。
 そうですね、と返せばかっこいいよねぇ、なんて言って彼が笑うものだから。
 ……外は猛吹雪、しんとした部屋の中に時折聞こえる家鳴りと風の音。そして、エリーの背中越しには暖かなラダの体温。広い背中に体重を預けても、がっしりとして揺らぎはしない。規則的な心音も背中からダイレクトに伝わってくる。
 ややしばらくして。
「ぐぅ」
 ラダの寝息が聞こえた。
「すぴ……」
 彼は夜明けまで起きているつもりだったが、どうにも昼間のスポーツのせいもあって眠気がピークに達していたらしい。
 うーん、戦友が先に寝てしまった。
(緊張しているのは私だけで、ラダさんはぐっすり。こんな状況で熟睡できるのは、私に異性としての魅力がないからでしょうか……)
 ふと、エリーの表情が一瞬陰る。そして振り払うようにニッと笑った。
(いえ。無防備に眠れるぐらい私を信頼してくれている、と解釈しておきましょう!)
 そう、彼女持ち前のポジティブさが発動した。
(あくまでも友達。恋人になるなんて夢物語ですね)
 そんな風に思いながら、じっと隙間風に揺れるカーテンを見つめて。
***
「ヤバイ! ボクだけ寝てた!」
 がば、とラダが顔を上げる。エリーがふふ、とほほ笑みかけた。そして、立ち上がりカーテンを開ける。
「おはようございます。吹雪の後は快晴ですよ」
 ほんとだぁ、よかったぁ……とラダが笑った。
「百物語のせいか、夢でもエリーが出てきたよぉ」
「奇遇ですね。私もある意味、ラダさんの夢を見てました」
「あれ?エリーも寝ちゃってた?」
「いえ……ある意味、です」
 にっこりとほほ笑めば、朝日に照らされる彼女の横顔。秘めた想いは打ち明けられることはなく。

 各々の夜は明け、嵐の後には美しい朝日が昇る。
 ロッジの管理人は猛省し、薪ストーブの導入を約束したのだとか……。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 寿ゆかり
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 01月27日
出発日 02月01日 00:00
予定納品日 02月11日

参加者

会議室

  • [10]手屋 笹

    2015/01/31-23:16 

  • [9]桜倉 歌菜

    2015/01/31-22:11 

  • [8]桜倉 歌菜

    2015/01/31-22:11 

  • [7]名生 佳代

    2015/01/31-22:04 

    「プラン提出完了だ。
     寒さも問題だが、電気がろうそくと懐中電灯のみ、というのも問題だな。
     はぁ、しかし寒い。さっさと寝るのが得策のようだ」

  • [6]桜倉 歌菜

    2015/01/31-01:27 

    改めまして、桜倉歌菜と申します。
    佳代さん、初めまして♪
    エリーさん、笹さん、ミオンさん、またご一緒出来て嬉しいです♪

    …寒いです…!
    これじゃ寝るにも眠れません…!

    どうしましょう…!

    な、何とか一晩乗り切りましょうねっ

  • [5]ミオン・キャロル

    2015/01/30-19:53 

    四隅…違う意味で寒くなりそうだわ!

    皆さん、よろしくお願いします。ミオンです。

    お互い災難ね。
    温かなお茶も飲めないじゃない…
    いっぱい遊んで疲れたし、寝るに限るわっ!
    明日になったら復帰してるかもしれないし

    >佳代さん
    姐さん…!?(末っ子で「お姉さん」呼びが嬉しかった模様)
    クリスマスぶりね、また会えて嬉しいわ!
    あの時も寒かったけど…また寒い夜を過ごすなんて

  • [4]名生 佳代

    2015/01/30-16:06 

    ミオン姐さんは久しぶりでございますわ。
    他の皆様初めまして。
    わたくし、名生佳代と申し…ゲフンゲフン名生佳代だしぃ!
    よろしくだしぃ!

    寒いしぃ!暗いしぃ!
    マジもーありえないんだけどぉ!
    某童話みたいにマッチで暖を取りたくならなくもないけど、
    火の元には気をつけたほうがいいよねぇ。
    …あーもー暗い!暗いしぃ!どうにかしろしぃ!

    「煩いぞ佳代。
     パートナーの花木宏介だ。
     一晩の我慢だ、これぐらい耐えてみせるさ」

  • [3]手屋 笹

    2015/01/30-15:58 

    さむいですわね…手屋 笹です。

    エリーさん、佳代さんは初めまして、よろしくお願いします。
    ミオンさん、歌菜さん、今回もよろしくお願いします。

    せめて暖炉があればまだ違ったのに、
    さてどうしましょう…

  • [2]エリー・アッシェン

    2015/01/30-01:34 

    うふふ……。エリー・アッシェンです。よろしくお願いします。

    ロッジで寒さを乗り切るというと、部屋の四隅に四人が立って順番に背中をタッチして走るアレが思い浮かびます。うふふぅ……、定番ネタの怪談ですね。
    二人なので、今回は実行できませんけど。

  • [1]桜倉 歌菜

    2015/01/30-00:44 


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