【スイーツ!】パンパカパンケーキ!(上澤そら マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

●ポルタ村のスイーツフェスタ
 タブロスの近郊に位置するポルタという小さな村。
 普段は閑静なこの村、年に一度この時期だけは見違えたように姿を変えます。
 歴史ある祭典、甘い物をたくさん集めたスイーツフェスタが開催されるのです。
 タブロスや付近の町からも多数の屋台が出店されるスイーツフェスタ。
 どうぞ皆様、心ゆくまで甘い時間を楽しんで。

●パンパカパンケーキ!
「野外パンケーキ、いかがですかーー!!」
 爽やかな笑顔を浮かべ、客寄せをする青年。その青年が貴方たちウィンクルムに声をかける。
「お兄さん、自分で焼くパンケーキ、楽しんでいきませんかっ?あのホットプレートで自分好みのパンケーキを作れるんですよっ!」
 青年が指さす方向には、二人掛け用には大きめのテーブル、そしてホットプレートが置かれている。
「パンケーキといっても色んな種類があります。例えば……」

 ふかふかパンケーキにメープルシロップとバターという王道パターン。
 しかし生地を抹茶やチョコレートに変えればまた違った楽しみ方ができる。
 ホイップクリームやチョコレートソース、小豆やアイスクリーム……様々な可能性を秘めている。

 そして最近タブロスでも人気が出ているのが、薄めのパンケーキが数枚。
 その上にたーーーっぷりのホイップクリーム。更にたくさんのフルーツが飾られたタイプ。
 イチゴやバナナ、キウイにブルーベリーなど様々なフルーツが王道だが、こちらにカスタードソースをかけるのも人気だ。
 此方も生地をコーヒーやらに変更してみたり、アイスをトッピングすれば世界が広がる……!

 また、極厚のパンケーキも焼ける。
 外はカリッと、中はしっとりむっちむち。
 溶かしバターやはちみつでシンプルにいただくのも美味しいし、ブルーベリーのジャムやマカダミアナッツのソースなど遊び心も試せる。

「ね、パンケーキには無限の可能性が広がってるんですよ……!!」
 熱い。この男のパンケーキ愛がホットプレートよりも熱すぎる。
「あ、甘いものダメな方にはお食事系のパンケーキもできますよ!まぁ、スイーツフェスタなので甘いものがオススメですけどね!」
 そう言い、青年はニカッと笑った。
「料理の腕に自信のない方や、自分で焼くの面倒くせぇ!な方は此方でお焼きしますんで!よかったらぜひ楽しんでみてください!」

 少し気になり、客席を覗けば数組のカップル達がホットプレートでパンケーキを焼いたり、お互いのパンケーキを交換し合って楽しんでいる。
 普通のカップルもいれば、医者とバニーガ…じゃない、バニーボーイの組み合わせ。
 コックとソムリエの組み合わせもいる。
 青空眩しい屋外で彼らがパンケーキを仲睦まじく楽しむさまは……実にシュールだ。

「あ、そうそう。洋服汚れたら困りますよね!此方でエプロンの貸し出しをしますんでー」
 そう言い、青年はくじびきボックスを取り出した。
 なぜ?と控室を見ると……様々なエプロンが下がっていた。
「うちの店特製エプロンなんですよ!ぜひ楽しんでいてください!」

―― 嫌な予感しかしない ――

 そう思いつつ、貴方たちはくじ引きボックスの中に手を入れるのだった。

解説

●流れ
ウィンクルムが屋外ホットプレートの前にエプロン姿で待機している所から、
パンケーキ焼き焼き~パンケーキモグモグ、あたりの描写予定です。

但し、プランにあればエプロン受け取る場面や
既にパンケーキ完成後から始めることも可です。

●愛のエプロン貸し出し
会議室でご挨拶時に【10面ダイス】を【A,B両方】振ってください。
Aは神人さん、Bは精霊さんにて、対応する以下の数字のエプロン着用が義務付けられます。

1:普通のエプロン
2:メイド風エプロン(フリル沢山)
3:シックなソムリエ風エプロン(カマーベスト付き)
4:割烹着
5:コック服(コック帽付き)
6:白衣(聴診器付き)
7:焼肉屋にあるような白い紙エプロン
8:ポンチョ(メキシカンハット付き)
9:バニーガール風黒エナメルエプロン(黒うさぎ耳付き)
10:裸風エプロン(普通のエプロンに男性マッチョな裸体がプリントされている)

マトモなものの方が少ない。

●パンケーキ
神人さん精霊さん、それぞれ思い思いのパンケーキを焼くことが出来ます。
プロローグに出てきたものは勿論、トッピングなども無茶でないレベルでご用意できます。
スイーツ!ですので甘いパンケーキ推奨!
ですが、どうしても厳しい方はお食事系パンケーキもオッケィです。
(ベーコン&レタス&エッグ等)


【王道パンケーキ。5段重ねでメープル&バター】
【薄型パンケーキ、ホイップたくさん】
【お食事パンケーキ。野菜たっぷり、サウザンソース】
など。

決めるの面倒くせぇ!な方は「お任せ」も承ります。
その場合、基本スイーツ系になります。
【お任せ・甘さ控えめ】
【お任せ。極厚。甘め。バナナNG】
などなど。ご自由に記載を!

ぜひお互いのパンケーキを食べ比べたり、アーンしたり。
パンケーキモグモグしつつゆっくりとした時間を楽しんでください。

●参加費
パンケーキ代と貸しエプロン代でお一組400Jrいただきます。
エプロン持ち込み不可です☆

ゲームマスターより

阿呆なタイトルと阿呆な設定で巴めろ様の連動企画にひょっこり参加!上澤そらです。
パンケーキで画像検索しましたら小一時間経っておりました。
スイーツ大好き!バニーガール大好き!
……最近己の性癖を隠さなくなってきました。危険な兆候ですね。

プロローグ冒頭は巴めろ様の素敵文章を拝借しております。
……まさかこんな阿呆なノリになるとは思うめぇ……!この場をお借りして土下座です。

エプロンですが、テイルスさんだと耳がダブルになるものもありますね。
コメディ成分高めです。
が、お互いの姿も気にせずロマンスどっちゃり!糖分高め!な心の強い方のプランもお待ちしております!

レッツ パンパカパンケーキ!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

羽瀬川 千代(ラセルタ=ブラドッツ)

  態々コートを脱いでエプロンを強調しなくてもいいのに…(ジト目
兎耳をツイと指先で弾ませ、似合うよ?なんて笑い

自然に好みを尋ね彼の分を先に焼き始める
俺のは薄い生地にホイップたっぷり、小倉と抹茶アイス乗せ
仕上げに黒蜜も掛けようかな…ふふ、半分ずつ交換しようか

?ええと、普段の食事に満足していない訳じゃなくて
ラセルタさんと一緒だと気兼ねが無くて楽しいというか
甘味好きな所とか、何となく味の好みも似ているし
上手くまとめられないけれど…二人で食事をするひとときが、好きだから

ふとコック帽を取って、瞬く青い瞳をじっと見つめる
美味しく焼けたら褒めてくれるんでしょう?
……ごめん、やっぱり今の無し…(ふいと顔背け



スウィン(イルド)
  色んなエプロンがあったみたいだけど
結構普通っぽいのが当たったわね
ほっとしたような残念なような?
イルドのうさ耳とか裸風エプロンとか
見てみたかったわ~(けらけら)
パンケーキができたら半分こしましょうね♪
紙エプロンじゃすぐ駄目になっちゃいそうだから
あんまり汚しちゃ駄目よ?

イルドだったら食事系パンケーキでがっつりがあいそうだけど
折角のスイーツフェスタだし甘い物で
イルドは紫のイメージだから
ブルーベリーメインの厚いパンケーキにしましょうか
ふんふんふ~ん♪(鼻歌を歌いながら割烹着で調理)
で~きた!そっちもできた?美味しそうね!

いただきます♪(イルドが作った方から食べる)
ん、甘くて美味し♪上手にできてるわよ!


柊崎 直香(ゼク=ファル)
  くじ結果1:普通のエプロン
僕と一緒だとゼクの異常さが際立つね!
くじ引いたのゼクなんだから文句はなしだよ
そろそろテイルスにジョブチェンジしたら?

うさぎさん、さっさと作りたまえ
直径15cmぐらいのをいっぱい焼いてよ

【パンケーキタワー】作るんだぞー!
間にホイップクリームとフルーツをサンドしてどんどん積んでく
これ以上は無理って高さになったら
上からとろとろメープルシロップ掛けるよ

はい、ゼク。ぷれぜんとふぉーゆー

どうせゼクは僕の分作ってるんでしょ?
ああ、うさぎさんは人参がお好みだっただろうか

で、僕のは……おお、意外と王道だ
ふかふかあまあまで、やさしい味でなつかしくて、
おかわりを所望してやらぬことも、ない。


俊・ブルックス(ネカット・グラキエス)
  よ、よかった…変なのじゃなかった…
裸…ならねーよ!っていうかお前のはそもそもエプロンですらねえじゃねーか!?

料理は慣れてないので集中して慎重に
おかげで背後のネカに気付かず
だあっ!?あっぶねー吃驚するだろ!
そういう悪戯は程々にしとけ
もし失敗したら責任もってお前が食えよ
…そういえば、お前に料理作ったりとか、今までなかったな
なあ、失敗したらとかじゃなく、お互い相手の分を焼くっていうのはどうだ?
クリスマスの時にも言ってたしな、お前に料理作ってやるって
だから今焼いてるこれはネカの分な

【お任せ、甘さ控えめ】

焼いてる時は格好のせいで理科の実験みたいに見えたけど
出来上がりは美味いな…サンキューな、ネカ



●エプロン纏いし愛戦士たち
 そう、そのエプロンは超適当に配られた。決して決して悪意はないのだ。
「俺の運がいい方とは思わねーが……今日は助かった……」
 そう呟くのは紫の髪を持つディアボロ、イルド。安堵の溜息をつくが視線は鋭く、赤い瞳は手に持つ白い紙エプロンに注がれている。
 イルドに残念そうな声をかけるのは、パートナーのスウィン。
 クセのある黒髪と飄々とした笑みを見せる彼の手には同じく白いエプロン……だが、明らかにそれは割烹着。
「イルドの裸風エプロンとか見てみたかったわー。あと、うさ耳とか」
 けらけらと楽しそうな笑い声をあげるスウィンに、イルドはげんなりとした表情を見せた。
 しかし、もっとげんなりとした表情を見せる者もいるわけで。
 彼らの横を一人の男性と女性にも見える少年が横ぎった。
「あら」
 その姿を見て、スウィンは笑みを深める。
 ん?と振り返ったのはゼク=ファル。その彼の身体を包むのは……黒いエナメルのエプロン。ご丁寧にお尻には白くて丸いふわふわが。
 流石にまだウサ耳はつけていない模様。
「やぁね、ゼク!早く耳もつけなさい?」
「あや、スウィンさんにイルドさん。二人とも来てたんだねー!」
 人懐っこい笑顔を向けるのは柊崎 直香。
 直香はごくごく普通のエプロン姿。薄い紫色のシンプルなエプロンには黒猫のアップリケがついている。
「僕と一緒だとゼクの異常さが際立つね!」
 直香がニッコニコの笑顔をゼクに向ければ、イルドが(ご愁傷様……)といった憐みの表情をゼクに向ける。
 ゼクはげんなりとした表情を崩せずにいた。
「くじ引いたのゼクなんだから文句はなしだよ?」
 直香が己の普通エプロンを見せつけるように裾を翻した。
 く……と、ゼクは悶々と思考に耽る。
(俺のくじ運がどうのとか、なぜ耳まで用意されているんだとか、考えるのはやめる)
 今、ゼクの視線の先には一人の誇らしげな男性の姿が映っている。
 視線の先には……胸を張り、堂々と歩いてくるラセルタ=ブラドッツだった。
 銀髪を風になびかせ、気品溢れるラセルタ。彼は既にエプロンを着用済みだ。
 ゼクと同じ黒いエナメルに白い尻尾、そして……既にウサ耳着用。
「ふむ、皆揃っているのか……ぴょん」
 以前の依頼で既にバニー化していたラセルタにとってウサ耳姿は慣れっこだ。
 や、その時はゼクもウサ耳姿を披露しているのだが……そうそう慣れてたまるか、とゼクは思う。
「わざわざコートを脱いでエプロンを強調しなくてもいいのに…」
 恥ずかしそうにラセルタの後ろから顔を出したのはパートナーの羽瀬川 千代。
 優しげに下がった目尻は、今はジトッとした呆れる表情を見せている。
 千代は白いコック服を着用中。青空の下でコック服、と言うのはまぁ違和感を感じる服装ではあるが、黒ウサギに比べたら物凄くマシな方だろう。
「おー、堂々とした佇まい、威厳を感じるにゃー。ほら、ゼクもウサ耳付けてっ。語尾にぴょん付けるぴょん!」
 直香に褒められ?ご満悦なラセルタさん。
「しかし、意外と裸風は当たらないものなんだな」
 ラセルタの言葉に反応を示した者がいた。
「そうなんです!どうして裸エプロンではないのですか、シュンッッ!」
 きぃぃ!とハンカチを噛みしめ悔しさを露わにしつつやってきたのはネカット・グラキエス。
 長めのブルネット色の髪を持つ中性的で気品ある美青年…だが、今そのネカットの深緑色の瞳は悔し涙が溢れんばかり。
「べっ、別に俺が選んだわけじゃねぇしっ!ってか、裸ッ……ならねーよっ!」
 隣にいるネカットのパートナー、俊・ブルックスが全力でネカに言葉を返す。
 俊は丈が長めの黒いソムリエ風エプロン、そのエプロンにお揃いのカマーベストを着用している。
 赤銅色の髪に琥珀色の瞳を持つ俊。そのスレンダーな身体にソムリエ衣装はとてもシックで、似合っている。
「変なのじゃなくて良かった……」
「おやおや、裸エプロンを変呼ばわりしてはいけませんよ、シュン。新婚感溢れる立派な戦闘服です!……まぁ、人前ですから今回は我慢しましょう」
 やれやれ、といった表情のネカットに俊はすかさず
「今回どころか次回は来ねぇし!二人きりでもやらねぇし!ってかお前のはそもそもエプロンですらねぇじゃねーかっ!」
 と白衣を違和感なく着こなすネカットに突っ込んだ。
「……そもそも、裸エプロンじゃなくて……裸『風』エプロン、だよなぁ……」
 イルドがポソリと呟いた。

●美味しいパンケーキを作るだぴょん!
「千代のコック服も似合うな。弄び甲斐がなくてつまらぬ」
 ラセルタの言葉に「ぴょん」が付いていないことに少々安堵しながら、二人はホットプレートを間にしテーブルに着く。
 大の甘味好きな二人、ラセルタは
「調理はコックの仕事だろう、上手く焼けたら褒めてやる」
 気品溢れる笑みを浮かべる。千代はその言葉と表情に動じることなく、ラセルタの要望を聞く。
「えっと……極厚のパンケーキに、バターと蜂蜜をたっぷり、だね」
 そういうと千代は手際よく手を動かし始めた。
 コック服装な千代はまさにプロのように思え、そんな千代にラセルタはじぃっと見入る。
「ラセルタさんのは焼けるまで時間がかかるし、俺のも同時に作ろうかな」
 そう言うと千代は薄型のパンケーキを数枚焼き始める。
 更に店員を呼び追加のトッピングをオーダーした。
「千代はどんなものを作る気だ?」
 ラセルタが尋ねれば、千代は器用にラセルタの厚いパンケーキをひっくり返しながら答える。
「俺のはホイップクリームをたっぷり乗せて、小倉と抹茶アイス。仕上げに黒蜜もかけようかな、って……」
 千代の構想にラセルタが興味深げな表情を見せる。千代は彼のそんな表情に気付き、くすりと笑い提案した。
「半分ずつ交換しようか?」
「……あぁ、そうしてもらいたい」
 素直にラセルタが頷くと、黒い兎耳が揺れた。

 しばし後、二人のパンケーキが完成する。
 極厚のパンケーキにはたっぷりのバターととろぉりとした蜂蜜。
 千代のものは薄めの生地とはいえ数段重ね、更にアイスなどのトッピングもあってボリューミー。
「……以前から二人で食事をしている時に思っていたが」
 見た目にも美味しそうだが、ラセルタは気になっていたことがあった。
 何?とキョトンとした視線を見せる千代に、ラセルタはコホン、と軽く咳払い。
「……孤児院であまり食えていないのか?」
「え、えぇっ!?」
 あまりにも予想外の質問に千代は目を丸くした。
「俺様との食事は随分と量が多い」
 千代はまず他者を大事にしている青年であることは、誰よりもラセルタがわかっている。
 だからこそ他人のために無理をしているのではないか、と心配になる。
(千代は、俺様の所有物なのだから)
「えぇと、別に普段の食事に満足していないわけじゃなくて……」
 何と表現をすればよいのか、と千代は悩みつつも言葉を紡ぐ。
「ラセルタさんと一緒だと気兼ねが無くて楽しいというか……甘味好きな所とか、何となく味の好みも似ているし」
 ポツリポツリと語る言葉にラセルタは黙って耳とウサ耳を傾ける。
「上手くまとめられないけれど……二人で食事をするひとときが、好きだから」
 そう言うと、千代は満面の笑みをラセルタに向けた。
 あまりにも真っ直ぐで花のような笑顔に
(俺様の所為にするな)
 と、いつもの軽口も叩けず。千代の笑顔から視線を逸らす。
「ふ、ふん。ならばよい」
 そういうとラセルタは極厚のパンケーキを頬張った。

 二人がパンケーキを食べ終え、一息つく。
 満足そうなラセルタの表情を見て、千代はコック帽を取り彼の輝く青い瞳に視線を送る。
「美味しかった?」
 あぁ、と素直に表現するラセルタに千代は
「美味しく焼けたら褒めてくれるんでしょう?」
 と小首を傾げてみる……も、自分の行為に少しだけ恥ずかしくなり。
「……ご、ごめん。やっぱり今の、なし」
 そう言い、ふい、と顔を背けた。
 ラセルタはそんな彼の横顔を見、喉奥から笑みがこみ上げるのを感じ。
(まったく……)
 悪戯な表情を浮かべ、千代に手を差し伸べる。
 しかしその手は千代の頭までは届かず……そっぽを向く千代の耳たぶをそっと摘まむ。
 予想外の感触に、千代はあっ……と声を漏らした。
「自分で強請っておきながら照れずともよいだろう」
 くっく、と喉を鳴らし楽しげなラセルタに、もぅ……と拗ねたような表情を見せる千代。
(宿り木での表情といい、まったくお前は……)
「……可愛らしい」
 ラセルタがそう呟けば、千代の耳の赤味は顔中に広がるのがわかった。
「ラ、ラセルタさんこそ、可愛いよっ」
 千代は精一杯の強がりを見せ、ラセルタの黒い兎耳をつん、指先で弾いたのだった。

●想い重ねたパンケーキ
「色んなエプロンがあったみたいだけど、結構普通っぽいのが当たったわね」
 ホットプレートの前に座るスウィンは割烹着着用。
 直香に割烹着姿を披露したところ「似合う似合う!」と大絶賛だったため、彼はいつも以上にご機嫌だ。
「まぁ、ほっとしたような、残念なような?」
 スウィンがヘラリ、と笑いながら極厚のパンケーキを焼き始める。
 一方イルドもパンケーキを焼き始めていた。
 紙のエプロンには何故か『はだか』とペンで書かれている。誰の悪戯だろうか、謎だにゃー!
「紙エプロンじゃすぐにダメになっちゃいそうだから、汚さないように気を付けてね、イルド」
 いやむしろ、この文字をどうにかしてくれ!と内心で思いながらもイルドはあぁ、と頷いた。
 黙々とパンケーキを焼きつつも、チラリとスウィンの姿を見る。
 楽しげなスウィンの表情に、しばし見入る。
 スウィンがイルドの家に来て料理をすることは多々あるが、その際は勿論普通のエプロン着用なわけで。
 割烹着を着用している所はそうそう見ることはないので、非常に新鮮に思える。
「どうしたの?イルド。あ、出来上がったら半分こしましょうね♪」
 イルドの視線に気づき、スウィンは笑顔を見せた。
 暖かな眼差しを注ぎ、細やかな気遣いを見せるスウィン。非常に家庭的である。そして言葉がちょっとアレなこともあってか……どう見てもいいおかんです。
 ふんふんふ~ん♪と鼻歌交じりにパンケーキを焼く姿は和むことこの上ない。
 包容力と女子力通り越しておかん力高そうで。美味しいおにぎりと味噌汁を振舞ってくれそうで。
「おっさん、あんた割烹着ホント似合うのな……」
「そお?嬉しいわぁ。それじゃあ今度イルドにご飯作る時は割烹着持ってくわねぇ!」
 と褒められご満悦なスウィンであった。

 無事にパンケーキも焼き上がり、二人はトッピングを加える作業に入る。
「で~きた!そっちもできた?」
 スウィンが用意したのは極厚パンケーキ。
「イルドだったらガッツリお食事系パンケーキでガッツリ!が合いそうって思ったんだけど、折角のスイーツフェスタだから甘いものにしたわ♪」
 極厚のパンケーキには薄紫色のブルーベリー交じりのホイップクリームたっぷり、そして更にブルーベリーのソースにブルーベリーの果肉もたーーっぷり。
「イルドのイメージ、紫でまとめてみたのよ」
 ふふ、と微笑むスウィンになんとなく嬉しさと気恥ずかしさを感じるイルド。
「うふふ、イルドのも美味しそうね!」
 イルドが作ったのは王道のパンケーキ。
 普段は料理をスウィンに任せていることもあって、手際が良いとはどうしても言えない。
 しかし相手を想って、相手の喜ぶ顔を見たくて作った気持ちは誰にも負けない。
 パンケーキは二段重ね。まん丸ではないけれど、焼き目もまだらではあるけれど。
 ホイップとフルーツを飾れば、家庭的で温かみのあるパンケーキの完成。
 お互いのパンケーキを半分ずつに切り分け。
「それじゃあ、いただきます♪」
 スウィンは迷うことなくイルドが作ったパンケーキを口に運んだ。
「俺が作った方から食うのかよ」
 そう言い、負けじとイルドもスウィンが作ったブルーベリーパンケーキを頬張る。
「ん!甘くて美味し♪」
 先に声を上げたのはスウィン。満面の笑みを浮かべ目尻を下げる彼の表情に偽りの色などまったく見えない。イルドは密かに胸を撫で下ろす。
「イルド凄いわね、才能あるんじゃない?上手にできてるわよぉ」
「おっさんのも……旨い」
 スウィンの作ったパンケーキはブルーベリーの自然な甘みと心地よい酸味が感じられ、クリームも甘さよりはコクが前面に出ている。
 甘いものがそこまで得意ではないイルドのために作られたことが十分にわかる。
 頬っぺた落ちそう!と笑うスウィンの姿に悪い気はしない。むしろこんなに喜ぶ姿を見られるならば、また何か振舞ってみるのもいいか、とほんのり思うイルドだった。

●約束と、次の約束
 俊は、それはそれは慎重にパンケーキ作りに神経を注いでいた。
 早いうちに実家を出て、1人暮らしの経験はあるがあまり食には関心がなかったよう。
 パンケーキの生地を鉄板に流し、ブクブクと膨らんでは割れる気泡に集中する。
 真面目な俊はあらかじめ調理方法を学習してきたのかもしれない。
 そんな俊の背中に忍び寄る影――息を殺し、そぉっと彼の背後に立ち。
「えぃっ!」
 べたーっ!っと俊の背中にピッタリと張り付くのは、勿論ネカット。
「だあっ!?あっぶねー!吃驚するだろ!」
 いつの間にか目の前の席から離れていたことにも気づかないくらい俊は集中していたようだ。
 突然の衝撃と背中に感じる温かみに俊は慌てて口をパクパクさせる。
「大丈夫です。ひっくり返す時とか、本当に危ない時は邪魔をしません」
 堂々と胸を張り答えるネカットに俊は頭を抱えた。
「あーもう、そういう悪戯は程々にしとけ……」
 心臓に悪い、と息を吐く。
「すみません。一度やってみたかったんです。料理中にちょっかいを出して邪険にされるの……これも男の浪漫ですよ!」
 目をキラキラ輝かせてググッと拳を握る白衣のネカット。胸に輝く聴診器がユラユラ揺れる。
 上品イケメンなのに、爽やかなのに。どこか黒さが見え隠れするのは何故だ。
「俺に浪漫をぶつけるなっ!ってか、もし失敗したら責任持ってお前が食えよ?」
 俊が自身が作るパンケーキの焼き目をフチからチェックする。
 良い焼き目がついた、と器用にヘラでひっくり返せば王道のまんまるパンケーキ。
 よしよし、と誇らしげな表情を見せる俊。隣でネカットもその整ったパンケーキを「美味しそうです」と褒め讃える。
(そういえば……ネカに料理作ったりとか、今までなかったな)
 更に思い出す、以前交わした約束。
「なぁ、ネカ。失敗したら、とかじゃなく……お互い相手の分を焼くってのはどうだ?」
 意外な俊の提案にネカットは目を大きく見開く。
「ふむ、私が俊の分を、ですか……」
 腕を組み考えるそぶりをみせるが、ネカットの腹は既に決まっている。
「素敵です、そういうの。構いませんよ」
「じゃあ、今焼いてるこれはネカの分な」
「浪漫とは違いますけど、シュンのために心を込めて作りますね!」
 笑顔を見せるネカットに対し
「くれぐれも、変なもん入れるなよ」
 白衣のせいか、いつもの行いゆえか。釘を刺すのを忘れない俊だった。
 
 そして、出来上がったパンケーキ。
 俊が作ったのは王道のシンプルパンケーキ。
 程よい大きさの二段のパンケーキには角切りされたバターが乗せられ。パンケーキの熱でじゅんわりととろけゆくバターは、程よく生地に染みこむ。
 綺麗な焼き色と真ん丸な形のパンケーキはお店で提供されるものと遜色ないだろう。
「メープルシロップは自分でかけろ」
 甘さを調節できるように、と俊の心遣い。
 対するネカットは極厚のパンケーキ。たっぷりのホイップクリームにラズベリーやブルーベリー、カシスなど盛り沢山。白いクリームにカラフルなフルーツが鮮やかだ。
 お互いに皿を交換し、食べ進める。
「焼いてる時は格好のせいで理科の実験みたいに見えたけど……出来上がりは美味いな」
 モグモグと柔らかに膨らんだほの甘いパンケーキを頬張る俊。
「ふふっ、こちらこそ。素敵なソムリエさんが私のために焼いてくれた、世界に一つだけのパンケーキ……とっても美味しいです」
 深緑色の瞳がゆるりと笑む。
 本心だって、お世辞でも構わない。ただただ、こうして食べてもらえるのは嬉しいことだ、と俊は思った。

 そして。
「約束通り、残さず食べましたよ?」
 ネカットは紙ナフキンで口元を上品に拭き、柔らかな笑みを浮かべる。
「サンキューな、ネカ……って、え?覚えてたのか?」
 キョトンとした表情を見せる俊に、ネカットは当たり前じゃないですか、と返す。
「愛情たっぷりで美味しかったです。次は裸エプロンですからね、約束ですよ」
「そんな約束しねぇし!」
 約束を覚えていた喜びと共に、俊は今日も激しいツッコミを入れるのだった。 

●ポルタ村パンケーキツリー
「うさぎさん、さっさと作りたまえ」
「……せめて手伝おうとする素振りくらい見せろ」
 椅子に腰かけ、優雅に紅茶を飲みながらゼクの手つきを見守る直香。
 直香に言われる前から既にゼクはパンケーキを焼き始めているわけで。
「まぁ、わかってたけどな」
 とポソリと呟く。そして、何を作ればいい?と直香に問えば。
「直径15cmぐらいのをいっっぱい焼いてよ」
「いっぱい?」
「いっぱい」
 頷く直香。言われるがままにホットプレートに乗るだけパンケーキを焼くゼク。
 直香リクエストのものと、元から焼く自分のパンケーキを器用に同時進行させていくのは、お菓子作りに覚えがあるからだろう。
 手際よく動き、そしてその度に揺れるゼクのウサ耳。
「ゼク、そろそろテイルスにジョブチェンジしたら?」
「テイルスはジョブじゃねぇよ」
 パンケーキに目を落としたままゼクは答える。
(それじゃお前も猫科のテイルスにジョブチェンジしやがれ)
 と、違和感なさすぎて誰も突っ込まなかった、直香のキャットカチューシャを見ながらゼクは思った。

「お前、こんなに食えるのか?」
 流石にストップがかからないことに不安を覚えたゼクが直香に聞く。
 顔を上げたゼクの視界には、直香の姿が見えなかった。
「んー……」
 ゼクの視線を遮るのは、ポルタ村パンケーキツリー。
 間にクリームとフルーツをサンドしたパンケーキは、椅子に座る直香の顔を隠すほど。
「あ、ゼク、このくらいでいいや」
 上手にパンケーキを積み上げる直香の手腕に
「……器用に重ねたな……」
 とある意味尊敬するゼク。
「さて。仕上げに、どーん!」
 腕を伸ばし、上からメープルシロップをとろーーーん、と垂らす。そして。
「はい、ゼク。ぷれぜんとふぉーゆー」
 物凄く、それはそれは物凄く可愛いらしく無邪気な笑顔を見せる直香。
「……俺のなのか。甘党だが大食いってわけじゃないぞ。しかもほぼ焼いたのは俺だ」
 えー、食べないの?と小首を傾げる直香。
「あ、うさぎさんは人参がお好みだったかな?あるかなぁ?トッピングに人参。ちょっと聞いてみ……」
「大丈夫です結構です間に合ってます」
 ゼクさんの口から激しく棒読みでエクトプラズムのように言葉が紡がれてる気がするがそれは気のせいだ。
「わかった……食う」
「そろそろ僕のは焼けた?どうせゼクは僕の分作ってたんでしょ?」
 なんだ、わかってたのか、とゼクは思う。
 良いタイミングで焼きあがったのは三段重ね、ホイップとアイス、それにシロップがかかった王道パンケーキ。
 皿に乗せ、ゼクはほらよ、と直香に渡した。

「お。意外と王道だ。ふかふかあまあまで、やさしい味で懐かしくて……」
 完成したパンケーキに直香が顔を綻ばす。
 料理を作る者にとって、作ったものを美味しそうに食べてもらえるのはやはり幸せで。
 結構なボリュームだったにも関わらず、直香はペロリと平らげた。
「おかわりを所望してやらぬことも、ない」
 ……素直じゃねぇな、とゼクは思いながらも。
「おかわりも何も、パンケーキ自体はどちらも同じようなものだ。ほら、皿貸せ」
 器用にパンケーキを取り分けるゼクを、楽しそうに見守る直香だった。 
「ゼク」
「なんだ?」
「……そのウサミミ、チェリコ村産らしいぴょん」
「う、嘘をつくな!……だぴょん」
 自分の手の甲を確かめるゼクだった。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 上澤そら
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 4
報酬 なし
リリース日 01月22日
出発日 01月28日 00:00
予定納品日 02月07日

参加者

会議室

  • [10]柊崎 直香

    2015/01/27-23:47 

  • [9]柊崎 直香

    2015/01/27-00:13 

    直香:
    出揃いましたようで。
    ラセルタさんもバニーかー。楽しみー。

    ゼク:
    別段俺は気にしてないからな。たかが一時身に着けるだけのものだ。
    ……気にしてないからな。

  • [8]スウィン

    2015/01/25-22:18 

    ふむふむ、まとめるとこんな感じね。

    俊3:シックなソムリエ風エプロン(カマーベスト付き)
    ネカット6:白衣(聴診器付き)

    スウィン4:割烹着
    イルド7:焼肉屋にあるような白い紙エプロン

    直香1:普通のエプロン
    ゼク9:バニーガール風黒エナメルエプロン(黒うさぎ耳付き)

    千代5:コック服(コック帽付き)
    ラセルタ9:バニーガール風黒エナメルエプロン(黒うさぎ耳付き)

    おっさん割烹着似合いそう?ありがと~♪
    直香達も似合うとおもモゴ(ゼクのために口を塞ぐイルド)

  • [7]羽瀬川 千代

    2015/01/25-20:01 

    ……ええと、うん。エプロンだからバニージャナイカラ(視線逸らし

    ラセルタ:
    千代はコック服か。
    折角の機会だ、パンケーキ焼き係として存分に働いて貰うとしよう。
    意外と裸風は当たらないものだな(ふむ

  • [6]羽瀬川 千代

    2015/01/25-19:49 

    こんばんは、羽瀬川千代とパートナーのラセルタさんです。
    野外パンケーキと聞いて、我慢出来ませんでした(ふふ
    皆様どうぞ宜しくお願い致します。

    ば、ばにー…とはいえエプロンですから、今回は語尾を変える必要も無いですし(ぐっ
    無事に美味しいパンケーキが食べられる事を願いつつ、くじを引いてみます。

    【ダイスA(10面):5】【ダイスB(10面):9】

  • [5]柊崎 直香

    2015/01/25-18:20 

    直香:
    ゼクが自分で引けば文句もなかろーと思ったらこの有様である。
    僕が普通のエプロンで、ゼクは黒うさぎさんだね!

    あ、スウィンさんも割烹着すごく似合うと思うよー。

    ゼク:
    …………。(無言で番号の書かれた紙を握りしめている)

  • [4]柊崎 直香

    2015/01/25-18:14 

    ゼク:
    柊崎直香とゼク=ファルだ。
    見知った顔ばかりだな。よろしく頼む。

    とりあえず、くじを引けばいいんだな。

    【ダイスA(10面):1】【ダイスB(10面):9】

  • [3]スウィン

    2015/01/25-13:50 

    え~と、おっさんが割烹着、イルドが裸紙エプロン…

    イルド「どこから裸がきた?!」

    じょーだんよぅ。割烹着、千代に似合いそうって思ったけど。
    他の皆が何に当たるか楽しみにしてるわ♪

  • [2]スウィン

    2015/01/25-13:45 

    スウィンとイルドよ、今回もよろしくぅ♪
    裸エプロンじゃなくて裸風エプロンでしょ~(けらけら)
    しかも違うのが当たったみたいね。でもいいの当たったんじゃない?
    ネカットの白衣…なんだか危ない感じがするのは気のせいかしら…。
    おっさん達は何が出るかしら~?

    【ダイスA(10面):4】【ダイスB(10面):7】

  • [1]俊・ブルックス

    2015/01/25-00:20 

    ネカット:
    はだかえぷろんと聞いて!(ガタガタッ
    …こほん。
    皆さんこんばんは、シュンの精霊のネカットです。
    今回もよろしくお願いします。
    エプロン…じゃない、パンケーキ楽しみですね。

    さて、何が出るかな♪

    【ダイスA(10面):3】【ダイスB(10面):6】


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