【メルヘン】妖精達のダンスパーティー(まめ マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

「このショコランドにウィンクルムがやってくるのかい?!」

 チョコレート色の服を纏い、背中には小さな弓をしょった妖精『ピック』は、カカオの妖精。
今話題のウィンクルム達がやって来ると知ったピックは、大喜びで付近の野原を飛び回った。

「もうピックってば、喜び過ぎよ」
 その様子を見てクスクスと笑っているのはピックの姉の『タニア』。
ピックと同じカカオの妖精で、チョコレート色の服に、日傘代わりにチョコレートの傘を差していた。

「だって、ウィンクルムだよ?!あの、お菓子を腐らせちゃう変な瘴気を払えるのは彼らだけなんだろう?」
「ええ……」
 タニアはピックの言葉に悲しげに目を伏せると、後ろに構えるバレンタイン城を見つめた。
ボッカに占領されてしまったあのバレンタイン城を取り戻すため、伯爵の三人の息子の王子達がギルティ退治の計画を立てている。
その計画にはウィンクルム達の助けが必要なのだということは、この世界の住人であれば誰でも知っていることだった。

「ねぇ、タニア!一番初めに彼らに会うのはきっとボク達だろう?」
 タニアが考え込んでいる間に、ピックは何かを考えついたようで満面の笑顔を浮かべていた。
その微笑みにギクリとしながらも、タニアは同意するように頷いた。

「そ、そうね。ここはメルヘンワールドの入り口になるショコランドの木が一番多く生えているから……」
 その言葉に更に顔を明るくさせたピックは「いやっほ~!」と叫ぶと、空中でくるくるりと二回転を決める。

「だったらさ!ウィンクルムの皆が頑張ってくれるように、ここで盛大にもてなそうよ!」
「ええ?!ここで……?」
 ピックの突然の提案にタニアは目を丸めた。
ここは小さなカカオの妖精が暮らしているだけで、他には何も無いただの原っぱだった。

「妖精達の歌や踊りでウィンクルム達を幸せな気持ちにさせるんだ!」
「ピックは笛上手だものね」
「タニアだって踊りが上手だろう?」
「ウィンクルムの皆さん、楽しんでくれるかしら?」
「きっと大丈夫さ!!」
「そうね……。やってみましょうか!」
 最初は不安そうだったタニアだったが、ピックの強気な言葉に心動かされ、すっかり乗り気になっていた。

「ウィンクルムは皆恋人同士だって言うし、二人をくっつけてあげれば幸せになるよね!」
「え?」
 ピックのその言葉に、タニアは「そうだったかしら?」と首を傾げた。
とはいえ自分もはっきりウィンクルム達のことを知っているわけでは無い。
ピックがそう言うならきっとそうなのかもしれないと思い、そのまま口をつぐんでしまう。

「ええと、誰が誰とペアなのかな。まぁ、きっと見ればわかるよね!それじゃあ他の皆にも知らせてくるよ!」
「えぇ。ピックよろしくね。私は少しでも雰囲気が出るよう、何か工夫できないか考えてみるわ」

 二人でそう合図し合うと、それぞれ目的の場所へと向かう。
ピックが遠く離れていくのを背中で感じながら、タニアはふと『あること』を思い出す。

「ピックってば、かなりの『ドジ』なのよね。上手くいくかしら……」

 これまでの彼の計画を考えると、どれもこれもピックの勘違いで、最後は失敗に終わっていた気がする。
不安な気持ちを抱えつつも、自分がしっかりしなければと心で喝を入れるタニアなのであった。

解説

★解説
メルヘンワールドに入ったらそこは妖精達の世界だった……。

ショコランドにやってきたウィンクルム達を妖精達が歌や踊りで迎えます。

初めは陽気な感じの歌や音楽で、踊りもそれに合わせたアップテンポなダンスです。
その後しばらくしたら、ムーディーな雰囲気の歌と音楽に代わり、
ダンスもそれに合わせてしっとりとしたものへと変わります。

妖精達は自分達だけでなくウィンクルム達も踊ろうとダンスに誘ってきます。
その時、気を利かせたつもりのピックが、各ペアをくっつけようとするのですが、
タニアの心配通り、ドジをしてしまいうっかりくっつけるペアを間違えてしまいます。

最初の陽気な曲は間違えてしまったペアで踊ることになってしまいますが、
気付いたタニアがペアを正しくくっつけなおしてくれますので、
その後のムーディーな曲は二人でしっとりとした時間が過ごせます。

違う人とペアになってしまってどう思ったか、
二人で踊っていることをどう思うか
……などの心情をプランに書いていただければと思います。

★参加費について
また、妖精達へのお土産代として【500Jr】ほどいただきます。
何かお菓子や小物など、妖精達が喜びそうなものをご持参ください。

★ペアの決め方について
最初の間違えたペアをどうするか、会議室で決めていただけますと幸いです。
参加順でも、ダイスを振って決めていただくでも何でもOKです。
指定が無い場合はこちらでランダムに組ませていただきます。

参加人数が偶数とならない場合は、
他の異性の妖精達と踊ってもらう事になります。

その場合ペアの妖精から相手の事について根掘り葉掘り聞かれてしまいますので、
その後正しいペアに戻った時は、少し照れくさい気持ちになってしまうかもしれません。


ゲームマスターより

皆さまあけましておめでとうございます。まめでございます。
そして今年初のエピでございます。

今回はペア間違いハプニング発生!
というかなりチャレンジングなエピソードとなります。
一体どうなってしまうのか……。どきどきしながらプロローグを書いております。
(参加者がいい感じに集まってくれるかが一番不安です…!!)

これからも皆さんのらぶてぃめっとライフを楽しいものにできるよう頑張っていくつもりです。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

油屋。(サマエル)

 

ど、どうしよう!?ダンス全然出来ないよぉ!
ガチガチに緊張してロボットダンス状態
ノグリエさんが優しいので
(この人は本当にディアボロ?天使の間違いじゃないかな)

ちらりと精霊の方を見、二人とも素敵だなぁ
アタシもサマエルの相棒だし
並んで立っても恥ずかしくないような品格の高い女性に……

なんてね アタシがなれる訳ないか(苦笑



初めて優しくされた気がして戸惑いながら了承
精霊の言葉にビクリ
からかわないでよ
お、お姫様なんて……そんな綺麗じゃないし

さっきより自然に踊れるようになったかも

心臓が飛び出すかと思うぐらいドキドキ
あの、えっと……こっちこそありがと

(急に優しくしないでよ)

恥ずかしさのあまり顔を覆う



シャルル・アンデルセン(ノグリエ・オルト)
  パートナーがレムレースさんにチェンジ
わわっ、ノグリエさん…じゃない!?
(とっても真面目そうな方です…)
えと、このまま踊るんですかね?
ダンスはお得意ですか?私は少しだけできます…だから大丈夫ですよ。
今は私と踊ってください(微笑
やはり元のパートナーさんが気になりますか?
…私も…少し気になってしまうんですよ。
(ノグリエさんと踊りたかったな…)

ノグリエと
パートナーが戻りましたね。なんだかほっとしました。
ノグリエさんが他の方と踊ってるのを見るのはなんだか苦しくて。
(今なら抱き付いてもダンスのせいにできるのかな)
やっぱりノグリエさんとがいいです。
ノグリエさん?…私は何処にも行きませんよ。

ダンススキル使用


アマリリス(ヴェルナー)
  お土産:フルーツタルト
相手:サマエルさん

そそっかしい妖精もいたものですわね
しばしお相手願えますか?

踊っている最中も自分の精霊が気になってちらちら見る
全く目が合わないので気にしてるのが自分だけみたいでもやもや

正しい組合せになったら少し安心
どうでした?と聞いたら直球な返事

へぇ…
あら、ごめんなさい
足が滑りましたわ(ぐりぐり
ええ、滑りましたの

わたくしも素敵な時間を過ごせましたわ
…他に何かいう事はあります?

…っ!
あっ、ごめんなさい
今のはわざとじゃ…
…今のも、さっきのも!滑っただけです

それで、今の言葉って…
そう、そうよね
いつものように深い意味ではないと

それにしても心臓に悪かった
誰のせいだと思っているの…



出石 香奈(レムレース・エーヴィヒカイト)
  お土産は卵型チョコの詰め合わせ
中は空洞で、小さな人形が入ってるんですって

ええと、ヴェルナー…だっけ
ごめんなさいね、こんなことになってしまって
こういうのは結構慣れてるし、リードはしなくて平気よ
ちらと可愛らしい少女と踊ってるレムを見て溜息
そうよね、騎士の傍に相応しいのは、あの子や貴方のパートナーのような人よね

レムと合流後
あら…?安心したはずなのにさっきより緊張する、どうしてかしら
男の人と踊るなんて、何てことなかったのに
え、レムとシャルル?
まさに騎士と姫って感じだったわね
でもあたしはお姫様になるのは嫌
共に背中を預け合う仲でありたい

離れそうになられて思わず引き止める
姫じゃなくても踊るくらいは許されたい



●ようこそ皆さん!

「ようこそウィンクルムの皆さん!ここはメルヘンワールドの入り口!僕達カカオの妖精が暮らしているのさ!」
ショコランドの木の前で待ち構えていた妖精ピックは、待ってました!とばかりに得意の笛の音でお出迎え。
そして姉であるタニアも他の妖精を引き連れて、周りを華麗に踊り飛ぶ。
「ありがとうございます。これはお土産のフルーツタルトです」
 『アマリリス』は妖精達に向かって小さくお辞儀をすると、手にしたバスケットからフルーツタルトを小さく切り分けて妖精達に手渡した。
「私のお土産は卵型チョコの詰め合わせ。中は空洞で、小さな人形が入ってるんですって」
 『出石 香奈』も持ってきたお土産を妖精達に手渡していく。
「わー!ありがとう!フルーツ大好きなんだ!」「ありがとう!人形だって!楽しみだなー!」
 二人の周りに妖精達がわらわらと集まった。
一瞬、人数分足りるか悩んだ香奈だが、自分達から見れば小さくても妖精達にとっては大きな物に映ると気付き、その心配は杞憂だったと安堵する。
他のメンバーも持参したお土産を妖精達に手渡していった。

「みんなありがとう!今日は楽しんでいってね!」
 ピックが両手を上げて合図をすると、ショコランドの木の上から沢山の妖精が下りてきて、一斉に音楽を奏で始めた。
どこか民族的でアップテンポなその曲は、皆の心と体をくすぐる。
所々で入るコンガのような音が体に響いて気持ちがいい。
「ペアになって踊ろう!!さぁさぁ恥ずかしがらないで!」
 ピックがそれぞれのペアを指差して合図すると、周りの妖精達は皆の背中をぐいぐいと押し、指示通りのペアを作っていく。
しかし、それはタニアが恐れていた通り『勘違い』のペアとなってしまったのだった。



●ペア間違い発生!

『シャルル・アンデルセン』は事の事態がなかなか把握できず、暫く茫然としていた。
先程まですぐ隣にいたはずの『ノグリエ・オルト』は忽然と姿を消し、代わりにやって来たのは香奈のパートナーの精霊『レムレース・エーヴィヒカイト』。
「わわっ、ノグリエさん……じゃない?!」
 やってきたレムレースをやっと視界に収めるとシャルルは慌てふためいた。
ノグリエを探して見つけるも、彼は『油屋。』とペアになってしまっていた。
その姿を見たシャルルの胸を、ちくりと何かが刺す。

同じようにパートナーの姿を探したレムレースは、香奈が『ヴェルナー』とペアになっていることに気付いた。
正直、香奈以外の女性は慣れないと感じているのだが、歓迎パーティーを開いてくれている妖精達やシャルルの手前、それを口に出すことは無かった。

「すまないシャルル、すぐに元のパートナーの所に戻れると思う。それまでは大人しく従っておいた方がいいかもしれない」
 困惑しているのはお互い同じはずなのに。
(きっと、とても真面目な方なのね……)
  謝るレムレースにシャルルは小さく微笑んだ。
その微笑みを、離れた場所からノグリエが見ていたとも気付かずに。
ノグリエの鋭い眼光がレムレースに突き刺さる。
「俺も早く香奈の元へ戻らねば……何やら殺気のようなものを感じるしな」
「……?」
 レムレースの小さな呟きを聞き逃してしまったシャルルは首を傾げる。

「ところで、レムレースさんダンスはお得意ですか?」
「運動神経は悪くないと思うのだが……」
「私は少しだけできます……だから大丈夫ですよ。今は私と踊ってください」
そう言ってシャルルとレムレースは手をとって踊りはじめた。



「どうやらあちらは踊り始めたようですね……」
「ふぇ?!」
 ノグリエの呟きに油屋は素っ頓狂な声で答える。
これまでダンスなんて踊る機会がなかった油屋は、どうすればよいかわからずにガチガチに緊張してしまっていた。
更に運が悪い事に曲はアップテンポ。
太鼓の音がポン!とすれば、遅れて両手を上下にガシャンと謎のポーズをする油屋。
傍から見れば、一人ロボットダンスを楽しむ猛者状態。

(わわわー!やっぱり私遅れてる?!ど、どうしよう!?ダンス全然出来ないよぉ!)
 シャルルの様子ばかり気にしていたノグリエだったが、目の前で困惑している油屋に気付くと、そっと手を差し出してその姿勢を正してやる。
「大丈夫ですよ。緊張しないでください」
 ノグリエの優しい言葉に油屋は面を食らってしまう。
(この人は本当にディアボロ?天使の間違いじゃないかな)
 『サマエル』と同じディアボロである筈なのに、と思わず比較してしまう。
想像の中のサマエルは、にやりと意地悪そうに笑っていた。
「さぁ今は踊りましょう。私のつたないダンスでよろしければ楽しんでください、お嬢さん」
 ノグリエの言葉に頷くと、油屋もノグリエに合わせて踊りだした。



油屋のことを見つめていたサマエルだったが、相手がノグリエであることを確認すると、すぐに今のパートナーであるアマリリスに向き直った。
前に任務で一緒になったこともあり、彼女のことは知っていた。
凛とした佇まいからは育ちの良さが伺える。
(後で問題にならぬよう言動には十分気をつけねば)
 そんなことを考えてしまうのはサマエルの政治家としての職業ゆえか。

「全くそそっかしい妖精もいたものですわね」
 アマリリスはふぅと小さく溜め息をつく。
最初は主人と従者のように見られることも多かった自分とヴェルナーだったが、最近はもう少し距離が近づいていたように思っていたのだが。
まさかペアを間違えられてしまうなんて、そんなに自分たちは恋人同士には見えないのかと、虚しい気持ちが湧いてしまう。
ただ、この妖精がそそっかしかっただけという事もあるのだろうけれど。
「しばしお相手願えますか?」
 アマリリスがサマエルにそう尋ねると、サマエルは紳士的な笑顔を浮かべて頷いた。
「おや、これはまた可愛らしい御嬢さんに当たりましたね。暫しの間ですがお相手を」



「ええと、ヴェルナー……だっけ?ごめんなさいね、こんなことになってしまって」
「いえ、お互い様ですし、気にしないでください。出石さん」
 今の状況が全く掴めず首を傾げていたヴェルナーと香奈だったが、他のメンバーが踊り始めたのを見てお互い向き合った。
「私で申し訳ありませんが、よろしくお願いします」
 深々とお辞儀をするヴェルナー。
それを見た香奈も合わせてお辞儀をする。
「こういうのは結構慣れてるし、リードはしなくて平気よ」
 あまり踊りの得意でないヴェルナーはその言葉に安堵の息を漏らした。
いくら不器用だといえ、自分が相手になったせいで女性を悲しませるわけにはいかない。
真面目なヴェルナーの頭の中はその事だけで、もういっぱいいっぱいの状態だった。
「よろしくお願いします……!」



●心ここにあらず?

仕方なく踊り始めた各ペアだったが、パートナーが慣れた相手でないという事もありとてもぎこちが無い。
「やはりパートナーさんが気になりますか?」
 ちらちらとさ迷うレムレースの視線に気づいたシャルルは小さく尋ねた。
「……何だか落ち着かない」
「私も……少し気になってしまうんですよ」
 悲しげに笑うシャルルの脳裏には、優しく微笑むノグリエの姿。
(ノグリエさんと踊りたかったな……)



そんなシャルルの胸の内は知らず、ノグリエはただただ静かに二人の様子を伺っていた。
(シャルルに他の男が触れてる。シャルルが他の男に笑ってるそれだけでこんなにも……)
 心に感じる負の気持ちが強くなり、レムレースを見つめる瞳には鋭さが増す。
「ノグリエさん?」
 それに気づいた油屋は小さく声をかけた。
「あぁ、すみません。怖がらせてしまいましたね。大丈夫。何でもありませんよ」
(やっぱりシャルルさんのこと気になるのかな……もしかして、サマエルも同じ?)
 ちらりと精霊の方を見た油屋は思わず息を飲む。
(うわぁ……。二人とも素敵だなぁ……)
 踊るサマエルとアマリリスの姿はとても煌びやかで、もしここが舞踏会だったらあっという間に話題の中心になってしまいそうだった。
(アタシもサマエルの相棒だし並んで立っても恥ずかしくないような品格の高い女性に……)
 そう考えて、油屋はすぐに首を横に振る。
(なんてね。アタシがなれる訳ないか)
 油屋は静かに苦笑した。



「さすが、ダンスがお上手でいらっしゃる」
「サマエルさんも、さすがですわね」
「そう言っていただけるとは。光栄ですね」
 テンポを乱すこと無く規則的にステップを踏むアマリリスとサマエル。
お互い軽口をたたく余裕すら伺える。
その会話の合間、ヴェルナーのことが気になったアマリリスは、ちらちらとヴェルナーへ視線を送る。
しかし、ヴェルナーは踊ることに集中していて一向にこちらを見る気配はなかった。
(一切こちらを見ないのですわね。私ばかりが気にしているみたいで……)
 全く目が合わないことに、自分だけが気にしてるのかとアマリリスは目を伏せた。
(何だか面白くないですわ……)
 アマリリスはもやもやとした気持ちを抱えながら、今のパートナーのサマエルと踊るのだった。



ダンスに集中していたヴェルナーはアマリリスの視線には気付かない。
ただただ、目の前の女性に迷惑をかけないよう真剣に踊っていた。
香奈はそんなヴェルナーをリードしつつ華麗に踊り続ける。
ターンをするたびに飛び込んでくるシャルルとレムレースの姿に溜息を溢しながら。
(そうよね、騎士の傍に相応しいのは、あの子や貴方のパートナーのような人よね……)
 シャルルもアマリリスも可愛らしく、香奈の目には護ってあげなければならないような儚さがあるように映っていた。
まるで物語に出てくるお姫様のように。
そしてレムレースはそのお姫様を護る騎士。
(でも私は……)



「ねぇ、ピック?何だかウィンクルムの皆さんの様子がおかしくない?」
 浮かない表情を浮かべるウィンクルム達の姿に違和感を感じたタニアは、木の上で笛を奏でるピックに近づくと耳打ちした。
「え?いきなりどうしたんだいタニア」
「だって、ほら見て。何か変よ?もしかして……」
 少し離れた所からウィンクルム達を見ると、それぞれの視線の先にいるのは別のペア。
事実に気付いたタニアは、顔面蒼白だった。

「違う!違うわーー!!チェンジチェンジ!!」



●やっと来ましたこの時間!

「皆さんごめんなさい。まさかペアを間違えていただなんて……ピックってばドジなんです」
「本当にごめんよ」
 二人の妖精の謝罪に苦笑をしながら、ウィンクルム達はやっと本来のペアに戻れたことに安堵していた。
「次はもっと気持ちを込めて素敵な演奏をするから、今度こそ二人で楽しんでね!」
 ピックの言葉を合図に先程のアップテンポな曲がピタリと止まる。
代わりにゆったりとしたムーディーな音楽が辺りを包み込んだ。
先程の曲では踊っていたタニアも、今度は曲に合わせて甘い歌声を響かせる。
それぞれが手をとり合い、曲に合わせてゆっくりと踊り始めた。



「あぁ……やっと戻ってきてくれた。ボクのシャルル」
「元に戻りましたね。なんだかほっとしました」
 シャルルを確認するように触れるノグリエ。
手や頬、肩を触られシャルルはくすぐったそうに微笑んだ。
ノグリエに触れられた場所がなんだか熱い。
「ノグリエさんが他の方と踊ってるのを見るのはなんだか苦しくて……やっぱりノグリエさんとがいいです」
 シャルルは先ほどまでの光景を思い出し、またちくりと胸が痛むのを感じた。
(今なら抱き付いても、ダンスのせいにできるのかな……)
 ただ触れるだけじゃ、足りない。
「ボク以外に触れられたところすべてに触れたい。そうじゃないと君がその羽根で何処かに行ってしまいそうで……」
 その言葉にシャルルの胸がとくんと高鳴る。
そして、ほんの少しノグリエに寄り添ってみる。
全てを預けるにはまだ少し、シャルルの心の中には恥ずかしさが残っていた。
(シャルルが寄り添ってくれてる?)
 わずかではあるが近づいたシャルルとの距離に、ノグリエは驚いたように目を見開いた。
「……私は何処にも行きませんよ」
「シャルル……」
 目の前のシャルルを愛しそうに見つめるノグリエ。
「愛してるよ」
 シャルルとノグリエは微笑みあった。
これからもずっと二人で―― と願いながら。



「それで……どうでしたか?」
「はっ!えっと、どう……とは?」
 鈍感なヴェルナーにアマリリスはむっとした顔で再度問いかけた。
「ですから、先ほどのダンスですわ」
「あ、はぁ……そうですね、身長差が少ない方が踊りやすいとは思いました」
「へぇ……」
 直球な返事をするヴェルナー。
(つまり身長差がある私とは踊りにくいと……)
 アマリリスの顔がだんだんと強張っていく。
そんな事にも気づかずに、ヴェルナーは「やはり腰を屈めずに」や「視線の位置が合うと」など淡々と言葉を続けている。

――ブチッ!
アマリリスの頭で何かが弾けた。
と、同時にヴェルナーの足をヒールで力いっぱい踏みつけた。
「ぐぁっ……!」
「あら、ごめんなさい。足が滑りましたわ」
「滑ったのです、か……!」
「ええ、滑りましたの」
 にっこりと笑顔で答えるアマリリス。
確かに捻りを加えてヒールで足を踏まれたのだが、素直なヴェルナーはアマリリスの言葉を信じて耐え抜いた。
「そうですわね。わたくしも素敵な時間を過ごせましたわ」
「そうですか。楽しかったのならなによりです」

――ピクッ!
アマリリスの顔に再度影が挿す。
片足を僅かにあげてスタンバイ。

「……他に何かいう事はあります?」
「いえ、私が言えることは特に何も。……貴方は私だけのものではないですから」
「…っ!」
 それはいったいどうゆう意味なのか。
捉らえ様によっては、『私だけのものになって欲しい』とも聞こえるその台詞に、アマリリスはひどく狼狽えた。
真意を尋ねようと前へ踏み出したのだが、今度はうっかりヴェルナーの足を踏んでしまった。
「ぐっ……!」
「あっ、ごめんなさい。今のはわざとじゃ……!」
「わざと、ですか?」
 足を踏まれて悶えていたヴェルナーは首をかしげる。
「……今のも、さっきのも!滑っただけです」
「そうですよね、まさかアマリリスがわざとなんて」
 涙目を浮かべるヴェルナーから気まずそうに目を反らすアマリリス。
いや、今はそれよりも大事な事がある。
「それで、ヴェルナー、先ほどの言葉って……。その、私だけのものではないと」
「?……言葉通りの意味ですが」
「そう、そうよね」
(いつものように深い意味ではないと……)
 アマリリスは落胆する。
深い意味が無いとわかっていても、先ほどの言葉はとても心臓に悪い。
暑くなった顔をヴェルナーから反らすように横を向いて踊りを再開する。
「そんなに横を向いたままだと踊りにくくはないですか?」
「誰のせいだと思っているの……」
 ぼそりと呟くも、ヴェルナーの耳には届かず。
ヴェルナーはすっかり赤くなってしまったアマリリスの耳をじっと見つめていた。
耳が赤いのはなぜだろう?と、ぼんやり考えながら。
その答えが解るのはもう少し先になりそうだ。



レムレースと合流した香奈は、自分自身に問いかけていた。
どうして合流して安心したはずなのに、さっきより緊張してしまっているのか。
(これまで男の人と踊ることなんて何てことなかったのに……)
 香奈と同じ気持ちかはわからないが、レムレースも同じように問いかけていた。
(やはり本来のパートナーといると安心する)
 しかしそれは何故なのか。
香奈が一番慣れた女性であり友人だからだろうか……。
そんな問いを繰り返すも今は答えが出ないとわかると、レムレースは唐突に口を開いた。
「実は先程、シャルルといる時にノグリエから尋常でない殺気を感じたような気がした。色んな形のパートナーがいるのだな」
 色んな形のパートナーがいて、そして自分と香奈がいて。
「香奈は俺が他の女性といて、どう思っただろうか……?」
「え、レムとシャルル?」
 レムレースからの突然の問いに香奈は驚く。
そして先ほどまでのシャルルとレムレースの姿を思い浮かべた。
「まさに騎士と姫って感じだったわね」
「そう、か……」
 それならば、と顔を上げたレムレースだが、それを遮る様に香奈は言葉を続ける。
「でもあたしはお姫様になるのは嫌。共に背中を預け合う仲でありたい」
 香奈の瞳には強い信念の光があった。
「姫扱いは嫌なのか」
 先程、香奈は踊るシャルルとレムレースを見て、騎士と姫のようだと言った。
(それならダンスも嫌なのだろうか……)
 次第にレムレースの足取りが重くなる。
香奈と繋いだ手もゆっくりと緩みはじめる。
「あ……!待って!」
 その手を香奈が強く握り返す。
「……いいのか?それならよかった」
(姫じゃなくても踊るくらいは許されたい)
 物語に出てくるお姫様にはなれなくても、誰よりも一番近くで支え合っていきたい。
先程よりもしっかりと掴んだ手が、レムレースと香奈の心も繋いでゆく。
繋いだ香奈の手を見ながらレムレースも思う。
もしまた別の男と香奈が踊ることになったら。
それを想像すると何故かとても気分が悪い。
一番慣れた女性だからか、友人だからか、それとも何か別のものなのか……。



「私と踊って頂けますかお姫様」
「え?!」
 跪いて油屋に手を差し出すサマエル。
そんなサマエルの行動に油屋はビクリと肩を揺らした。
初めて優しくされた気がした油屋は、戸惑いながらもその手をとって了承する。
「からかわないでよ。お、お姫様なんて……そんな綺麗じゃないし」
 油屋の手を掴むと、サマエルはグイッと身体を引き寄せた。
もう片方を腰にあてがい、ゆっくりとステップを踏みはじめる。
「肩の力を抜いて。そう、足は自然に動かすんだ」
 苦手なダンスに萎縮してしまっている油屋の肩を、足を、サマエルの優しい言葉が解してゆく。
「俺が多少リードしてやるからその通りに……」
 普段からは考えられない程優しいサマエルに、油屋の心臓は飛び出すかと思うほど高鳴っていた。
サマエルに体を預けることで、ダンスも少しずつ自然なものになっていく。
「目線は相手を見て……。さっきみたいにキョロキョロするのは失礼だ」
「え?!あ、見てたの……?!」
 ノグリエと踊っている時に、サマエルを見ていたことに気付かれていたと気づくと、油屋は顔を赤面させた。
それに気付いたのはサマエルも同様に油屋を見ていたということなのだが、恥ずかしさで一杯だった油屋はその事には気付かない。
ダンスも様になってきたところで、妖精達の奏でる音色が少しずつ薄れていく。
そろそろ終わりの時間のようだ。
二人は足を止め、暫し夢のような時間の余韻に浸っていた。
ふと、繋いだ手がサマエルによってクイッと引かれる。
「素敵な時間をありがとうございました」
 お辞儀と共に、手の甲にキス。
「あの、えっと……こっちこそありがと」
 突然のキスに戸惑いながらも、油屋はお礼を言う。
それにしても今日のサマエルはどこか違う。
(急に優しくしないでよ……)
 油屋は恥ずかしさのあまり真っ赤になった顔を覆って隠す。
その様子を見ながら、サマエルも小さく微笑んだのだった。



「皆、ダンスパーティーは楽しめたかな?」
 甘いムードが漂う一向の元へ、ピックが飛んでくる。
「ふふ、人前で歌うなんて久しぶりだから緊張しちゃった」
 続いてタニアもやって来た。

二人はウィンクルム達の顔を一人一人確認するように見つめると、にっこりと微笑んだ。
「皆なら、きっとこの世界を救ってくれると信じているよ!」
「ここはメルヘンワールドの入り口でもあり、出口でもある。私たちはここで皆の帰りを待っているわ」

 二人の激励を受けて、ウィンクルム達は力強く頷いた。
真の戦いはこれからだ。





依頼結果:大成功
MVP
名前:アマリリス
呼び名:アマリリス
  名前:ヴェルナー
呼び名:ヴェルナー

 

名前:出石 香奈
呼び名:香奈
  名前:レムレース・エーヴィヒカイト
呼び名:レム

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター まめ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 4
報酬 なし
リリース日 01月21日
出発日 01月28日 00:00
予定納品日 02月07日

参加者

会議室

  • [10]アマリリス

    2015/01/25-13:17 

    まとめありがとうございます。
    わたくしもそれで構いません。

  • [9]油屋。

    2015/01/24-23:38 

    おおう発言被っちゃった!けしけし
    香奈さんもシャルルありがと!アタシはそれでOKですっ

  • [8]出石 香奈

    2015/01/24-23:23 

    そうね、シャルルの案が分かりやすくていいと思うわ。
    まとめ有り難うね。

  • 今回もよろしくお願いします。
    パートナーは私も誰でもいいのですが。
    ダイスだと少しわかりにくいので挨拶順1人ずつずれる。
    の方が分かりやすいかもしれません。

    出石さん
    ヴェルナーさん


    レムレースさん

    油屋。さん 
    ノグリエさん

    アマリリスさん 
    サマエルさん

    えっと試しにずらしてみたのですが如何でしょうか?

  • [5]出石 香奈

    2015/01/24-21:11 

    改めまして、出石香奈よ。
    皆今回もよろしくね。
    あたしもペアは誰でも構わないから、ダイスで決めるのはどうかしら?
    A:神人 B:精霊で
    数が小さい順に並べてみる
    同じ数が出たり自分のパートナーに当たったら、そこだけ相談、とか。
    分かりづらかったら、参加者順か挨拶順で一人ずつずれるでもいいかも。

  • [4]アマリリス

    2015/01/24-21:04 

    アマリリスと申します。
    今回はよろしくお願いいたします。
    わたくしもペアの決め方は何でも構いませんわ。

  • [3]油屋。

    2015/01/24-15:22 

    こんちはー!油屋。だよっ 皆お久しぶりだね 今回も宜しくっ♪
    さてと……ペア決めだけど、どうしよっか?
    サイコロか参加順か、あるいは希望制という手も……
    アタシはどれでもOKだよ!!

    ダンスって殆どやった事ないから上手に踊れるか不安かも……orz

  • [1]出石 香奈

    2015/01/24-00:10 


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