プロローグ
その夜は、酷い嵐になりました。
木々は強い風に煽られてしなり、時には家屋の建材がはがれ、飛んでいきます。
通行人は傘を離さないようにしっかりと掴み、叩きつけるような強い雨の中を背を丸めて歩いていきます。
傘を失って雨を受け入れている人や、屋根のある場所を探して慌てて走っている人もいます。
屋内に居る人々は外の様子を気にしつつも時を過ごし、嵐が過ぎ去るのを待っています。
どこに居ても、何をしていても。
思っていることは、多分ひとつ。
それは、早く天気が良くならないかということです。
嵐が過ぎ去らないかということです。
けれど――
空に、稲妻が光ります。
一瞬、皆の肩を震わせるような大きな音がタブロスの空気を揺らします。
落ちた、と誰もが思ったその直後――
街は、漆黒と化しました。
街灯の光は消え、店の電飾も消え、信号も消え、沢山の窓から漏れる明かりも消えました。
停電したのです。
豪雨の中、ざわざわとした人々の声が広がっていきます。誰かにぶつかったり何かにぶつかったりしているのでしょう。
復旧は1分後か、5分後か、10分後か、はたまた1時間後か……
その時、ウィンクルム達はどこで、何をしていたのでしょう。
トラブルに見舞われていたのか、それとも、2人きりで――
解説
2人で居たら、突然停電してしまった! そこで何があったのでせう。というフリーエピソード(男性神人編)です。
シチュエーションはもう、エレベーターでもエレベーターでもお店の中でも自宅でも入浴中でもなんでもありです。
持ち込める明かりアイテムに制限はつけませんが、
まあスマホ画面の光とか、懐中電灯くらいでしょうか。
それ以外でも、シチュエーション的にOKと判断したら採用します。
でもまあ、あんまり明るくても面白くないですよ……ね?(意味深)
こちらのシナリオは、光熱費として(ツッコミは受け付けます)一律300ジェールが消費されます。
ゲームマスターより
暗闇の中で2人で××って……良くないですか? 良いですよね!(もちろん健全な意味で)
こちらは男性神人編になります(女性側と同時刻展開となりますが、特に絡みはありません)。
ご参加お待ちしています。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
ハティ(ブリンド)
仕事帰りに合流、リンの家で雨宿り 待ってくれ、俺が開ける 最近貰い受けた合鍵を使って中へ 開いた…感動もそこそこに吹き抜けていく風 …どこか窓が割れてるんじゃないか ソファーがあっただろう?ベッドは、一人用にしては大きいかもしれないが… ああ、そりゃあ…電気が戻ったら大掃除だな。俺も手伝う この分だと明日になるかもしれないが。一先ずおやすみ 布団に潜ってみたり巻かれてみたりしてみるが眠気は訪れず 妙な事をしたら蹴り出すという言葉を思い出している 背中に額を押し付けても動かない 妙な事の境とは何だろう いや、眠っているのだろうなと推測する 眠るのは諦める 少しだけ勿体無い気もしたから 片付けを終えたらソファーで一眠りしよう |
シルヴァ・アルネヴ(マギウス・マグス)
風呂に入ってたらゴロビシャーンッ!っていう音と共に 真っ暗になった 「雷鳴ってる時に風呂ってヤバかったっけ…?」 時すでに遅いし、それより真っ暗で湯船から動けない。困った… 「マ、マギー…マギー~~~マギさーーーん!!」 暫く呼んでたらマギが来てくれた 雷鳴も遠ざかって心細くなってきた所だったから、呆れ顔でもすごく嬉しい 湯船の縁に置かれた燭台の灯りが、壁や天井やマギの姿をゆらゆら照らすのが 石鹸の匂いと相まって不思議。 「雷びっくりしたな。あ、でもマギまだ入ってないのにいつ復旧するんだろ 今ならまだお湯も熱いくらいだしさ、一緒に入るか?」 いつから一緒に入らなくなったっけ?って話とかしながら風呂を使い 楽しく温まる |
信城いつき(レーゲン)
電気も消えるし傘も吹き飛ぶし散々っ でも何も見えなくてもレーゲンがそばにいるから怖くない。本当だよ。 前回の任務(レーゲンと彼の大事な人を庇って戦った悪夢)の話をする 本物のレーゲンは自分がぬれても俺のこと庇ってくれるのに レーゲン寒いよね。せめて手だけも暖まればいいけど (レーゲンの手を自分の頬に当てさせ、自分の手も添え暖める) 引き寄せられて顔が赤くなってるのがわかる。 ……以前なら「避難だから仕方ないんだ」って言ってた でも本当は違う。何でもいいから理由をつけて、自分がそばにいたかったんだ。 レーゲンの手を温めるふりで、手のひらにそっとキス 暗闇でよかった 明るかったら、気づかれてたかもしれない |
シグマ(オルガ)
停電時 ・自宅の共通リビングでテレビを見ていた。 ・暗転後毛布にくるまり直ぐ様近くのクローゼットに隠れる へ?わ、わわわーっ!?(突然の暗闇は嫌ー!) ・オルガに見つかるが、彼も怖いので思わず閉める ・オルガの言葉にプッツン へ?クローゼットが開いた…って、わあぁぁオルガさん(青ざめ し、仕方ないじゃん!突然暗くなるのだけはダメなのー! オ、オルガさんも、怖いんだよ! っ!もうこの際だから言うけどさ! オルガさん、俺と仲良くなる気なんてないでしょ? 態度に出てるんだからね!嫌われてるって、馬鹿でも解るよ! ・結局強引に開けられる ぐぅ…って、あれ?オルガさん髪濡れてるよ。 仕事は完璧主義なのに抜けてるんだからー…。(呆笑 |
ハーケイン(シルフェレド)
◆場所 引っ越しが済んだばかりの自宅で荷物整理中 ◆状況 クソッ、落雷に驚いて梯子から足を踏み外してしまった 持っていた荷物はどこに飛んで行った 何か灯りになるものを……こっちに壁なんてあったか? 何だシルフェレドか 邪魔だ、どけ ……おい。どけと言ってる 何だと貴様、俺が邪魔だと言うのか ええい箱を押し付けるな!地味に痛い! と言うかなんだこれは 一体どういう状態なんだ 背中側は壁、前はシルフェレド、と箱 やっぱり邪魔なのは貴様だ! おいまて、こ、このッ。馬鹿くすぐるな!ガキか貴様は! |
1、絡まり合う2人
「ああ、クソッ」
落雷の音に驚いて梯子から足を踏み外したハーケインは、落ちた格好のまま暗闇の中で悪態を吐いた。シルフェレドと契約してウィンクルムになったばかりの彼は、引っ越しが済んだばかりの共同部屋で荷物を整理している最中だった。
持っていた荷物がどこに飛んでいったのかも分からない。何か灯りになるものを……と手を伸ばした時、何か板のようなものに触れる。
「……こっちに壁なんてあったか?」
「私だ」
「何だシルフェレドか。邪魔だ、どけ」
「何だと? 私が邪魔だというのか」
だが、手に触れている彼(の胸板)は動こうとしない。それどころか、非常に不服そうに反論してきた。ハーケインはやや目つきを険しくしてもう一度言う。
「……おい。どけと言ってる」
「それができればとっくにやっている。お前の方こそ、動く度に腕やら足やらが引っ張られるんだが」
「何だと貴様、俺が邪魔だと言うのか」
「邪魔だ。何か引っかかっているのかもしれん」
停電時、落雷よりも落下してきたハーケインに驚いたシルフェレドは、彼を受け止めようとして失敗した。自分でも間抜けだとは思うが、足元にあった箱に躓いたのだ。絶妙な具合に落ちてきたハーケインに絡まり、お互いに怪我なく床に転がることができたのだが。
室内が暗い為、ハーケインはその状況を全く理解していなかった。
どころか、受け止めようとしてくれたシルフェレドを邪魔扱いしてしまっている。
仕方ないといえば仕方ないのだが――
シルフェレドは、このもみくちゃになった状態を何とかしようと躓いた箱をどかしにかかる。しかし、そこでハーケインに抗議された。
「ええい、箱を押し付けるな! 地味に痛い!」
押し付けていたらしい。
「ああ、それは悪かったな」
ハーケインは、未だに状況が掴めていなかった。
「と言うかなんだこれは。一体どういう状態なんだ」
「ハーケイン動くな。こっちは手探りでやっているんだぞ。お前に動かれると手が離れる」
シルフェレドの言葉は聞かず、混乱しながらも現状を把握しようと努める。背中側は壁で、前にはシルフェレド、と箱。
「……………………」
数秒、ハーケインは考えた。
そして結論を出した。
「やっぱり邪魔なのは貴様だ!」
「ええい、動くなと言っているだろうが」
大人しくしないなら大人しくさせるまで、とシルフェレドは両手をわきわきさせた。途端に、ハーケインのうひゃ、とかふひゃ、とかいう声がした。
「お、おいまて、こ、このッ。馬鹿くすぐるな! ガキか貴様は!」
絡まったまま身悶えするハーケインを、シルフェレドはくすぐり続けた。
(……いい反応だな)
強いていえばS寄りというだけに、楽しくなってきてしまったのだ。
それからしばらく、ハーケインはくすぐり地獄から抜け出せなかった。
2、お泊りの夜
「すっげー嵐だな、おい」
あまり用を為さなかった傘を閉じて乱暴に水を払うと、ブリンドは自宅の鍵を取り出した。鍵穴にそれを差し込もうとした時、ハティが「待ってくれ」とそれを止める。仕事帰り、彼はブリンドの家に雨宿りに来ていた。
「俺が開ける」
ハティは、最近貰った合鍵を扉に差した。がちゃりという音と共にロックが開く。
(開いた……)
感動しつつ扉を開く。すると、頬に冷たい風が当たった。締め切られている筈の部屋で、空気が流れている。
「……どこか窓が割れてるんじゃないか」
「あぁん? 窓だぁ?」
ハティの隣を通って、ブリンドは大股に家の中に入る。ほぼ寝に帰るだけの部屋ではあったが、普段より寒々しいのは彼にも分かった。だが、何しろ真っ暗なので何がどうなっているのか確かめられない。記憶を頼りにコンロが点かないのと水道から湯が出ないのを確認すると、何とかタオルと着替えを取り出す。自身も着替えつつハティにも一式放り投げ、ブリンドは言う。
「着替えたら寝るぞ。ベッドの半分使え」
「ベッドを? ソファーがあっただろう? 確かに1人用にしては大きいベッドかもしれないが……」
「うるせえ。ソファーはビショ濡れだったんだよ」
「ああ、そりゃあ……」
それだけで、ハティは室内がどうなっているのか想像出来た。ベッドは窓から距離があるから無事だったのだろう。
「早く寝ろよ。妙な事をしたら蹴り出すぞ」
「ああ……。電気が戻ったら大掃除だな。俺も手伝う」
着替えを終え、ハティはブリンドが背を向けているベッドに横になり、布団を掛ける。
「この分だと、復旧は明日になるかもしれないが。一先ずおやすみ」
無言のままの彼にそう言うと、彼は瞼を閉じた。
――が。
(眠れない……)
何度か寝返りをうってみるが、ハティに眠気は訪れなかった。さっさと寝ろと思いながら、ブリンドは引っ張られた布団を引き戻す。何度かそれを繰り返して少し。彼はしまった、と思った。ハティの額が、自分の背に押し付けられている。彼の渇ききらない髪が、唇の形が、触れた背中を通して感じられる。
蹴り出すと言ったのに、いざとなったら何故か息を潜めてしまう。
ハティは、動かないブリンドに小さな疑問を抱いていた。
(妙な事の境とは何だろう)
背に額を押し付ける――これも妙な事の範疇に入るような気がするのだが。
(……いや、眠っているのだろうな)
そう推測して起き上がる。少しだけ勿体ない気もして眠るのは諦め、ハティは部屋の片付けを始めた。もう目も慣れて、何がどうなっているかも大体分かる。
片付けを終えたところで、彼は雨が当たらないように移動させたソファーの上に寝転がった。
(……寝たのか)
ハティは寝たと思ったようだが、ブリンドはまんじりともしていなかった。首を巡らせると、ハティはソファの上で寝息を立てている。彼の寝顔を見ていると、先程の動揺がぶり返しそうになる。
(……いや、まさかな)
浮かんだ可能性をすぐに打ち消し、ブリンドはハティから目を逸らした。
3、暗闇に隠れた本当の想い
「うわーっ、電気も消えるし傘も吹き飛ぶし、散々っ」
家に帰る道すがらに雨を凌ぐ手段を失った信城いつきは、レーゲンと2人、手を繋いで嵐の中を走っていた。どっぷりと夜闇に沈んだ小さな町の通りに2人だけ。他に誰かいてもこう暗くては分からない。いつも通っている道なのに雰囲気は様変わりし、ホラー映画の中にでも迷い込んだみたいだ。
「怖い? いつき」
いつきに手を引かれる形で走っているレーゲンの声が聞こえる。
「ううん。レーゲンがそばにいるから怖くない。本当だよ」
振り返って言うと、何となくレーゲンが微笑んだ気がした……見えないけど。
「あそこなら雨宿りできるかも」
薄らとしか周囲が見えない中で、近くにある建物の庇の下に入る。レーゲンはその場の安全性を確認した。庇があるとはいえ、傘や折れた枝等が飛んできて危ないし、雨も降り込んでくる。
「いつき、こっちおいで」
近付いてきたいつきを壁側に立たせ、脱いだ自分のコートをかける。
「明かりがつくまで、ここで待ってよう」
「レーゲン……」
かけられたコートの裾をぎゅっと握り、いつきは俯く。声の調子で彼が何を感じたのか悟ったのか、レーゲンは言った。
「……この前の任務でどんな悪夢を見たか……聞いていい?」
この前の任務、とは宝石の森で『任務が失敗する』悪夢を見せるターコイズを額に受けた時の話だ。
「……うん。俺は……」
いつきはその時――
レーゲンが足を怪我した少年を抱え込み、座り込んでいるのを見た。いつきにはその少年が、レーゲンの大事な人だとすぐに分かった。そして、彼とその『大事な人』を庇って戦ったのだ。
悪夢の中で、レーゲンは一度もいつきを見ようとしなかった。
(本物のレーゲンは、自分が濡れても俺のこと庇ってくれるのに)
再び、借りたコートを強く握る。
「いつき1人に戦わせた? まったく酷いやつだね、その夢の私は。怒っていいよ、そんなやつは」
そう言うレーゲンの声は憮然としていた。全てが冗談でもなさそうな言い方だ。彼の手を取ると、濡れそぼったその手は驚くほどに冷たかった。
「レーゲン寒いよね。せめて手だけでも温まればいいけど」
いつきは彼の手を自らの頬に当てさせ、その上から自分の手を添え重ねた。いつきの気持ちにありがたく甘えたレーゲンは、悪夢を見た彼を安心させたいと優しく言う。
「……大丈夫。絶対に1人で戦わせたりしないよ。1人になんてさせないよ」
以前も、いつきは自分の居場所について不安がっていたことがあった。
「……うん、ありがとう」
その声は、少し沈んでいて。
――不安を感じてるのかな、いつきは。
そっとなだめるように、レーゲンはいつきを引き寄せる。引き寄せるだけで、それ以上は何もしない。
――……本当は、もっと特別な想いがあるけどね。
いつきがいると思っているレーゲンの『大切な人』。
それは、記憶を失う前のいつきなのだから。
きっと今、想いは表情に出てしまっているだろう。
――暗闇でよかった。
――明るかったら、気づかれていたかもしれない。
「レーゲン……」
引き寄せられて、いつきは自分の顔が赤くなっているのを自覚した。
こんなに寒いのに、レーゲンの体も冷たいのに、顔は熱い。
以前なら、「避難だから仕方ないんだ」と言っていただろう。しかし、その言葉は出なかった。
本当は違う。何でもいいから理由をつけて、自分が傍にいたかったのだ。
「手、まだ、冷たいね」
手を温めるふりをして、いつきは彼の手のひらにそっとキスをした。
――暗闇でよかった。
――明るかったら、気づかれていたかもしれない。
4、思わぬ告白
「ん? 停電か」
停電が起きた時、オルガはシャワーの最中だった。特に動じることもなく、彼は冷静に考える。
「直ぐつくかもしれんが、一度上がるか」
「へ?」
ぷつん……と、テレビの画面がブラックアウトした。テレビだけではない。視界全てが真っ暗になる。
「わ、わわわーっ!?」
予告も何もない突然の暗闇にパニックを起こしたシグマは、肩に掛けていた毛布にくるまり、近くのクローゼットに飛び込んで戸を閉める。
「……いない? アレは何をやってるんだ」
そう言うオルガの溜め息が聞こえる。クローゼットの隙間を、オレンジ色の光が通り過ぎる。懐中電灯を点けたらしい。
「…………」
光の移動する様を見るともなしに目で追っていると、不意にその光が視界一杯に広がった。
「へ? クローゼットが開いた……って、わあぁぁオルガさん」
暗闇を背景に無表情で見下ろしてくるオルガに悲鳴を上げ、シグマは青ざめながら内側から戸を閉める。
「!? な、何をする!?」
思わずの彼の行動に、オルガが驚愕の声を上げる。シグマの行動は明らかな拒絶で、それはオルガにとって当然予想外なものだった。
「し、仕方ないじゃん! 突然暗くなるのだけはダメなのー! オ、オルガさんも、怖いんだよ!」
つい本能のままに動いてしまったシグマは、やけになって自分の本音をぶちまけた。たまっていたものが、一気に口をついて出る。言ってしまってから、オルガの反応を予想してシグマの目に恐怖による涙が浮かぶ。
だが、少しの間の後に聞こえてきたのは、戸惑ったような声だった。
「お、俺が怖い……だと? 何を言って……」
「っ! もうこの際だから言うけどさ! オルガさん、俺と仲良くなる気なんてないでしょ? 態度に出てるんだからね! 嫌われてるって、馬鹿でも解るよ!」
「…………」
オルガは、シグマのことが嫌いではなかった。怖がらせているつもりもなかった。彼に怖がられていたという事実は、少なからずオルガにとって衝撃だった。
ほぼ無意識に、クローゼットの取っ手に手が伸びる。内側からの抵抗を受けたが最終的に力任せに戸を開けると、「ぐぅ……」と言うシグマと目が合った。怯えた顔をしたシグマの頬には涙の痕があった。強い恐怖を感じているらしい彼を前にして、オルガの心が重くなる。
(……俺が、この表情にしていたのか)
突然の停電に対しての恐怖もそこには入っていたのだが、それはオルガには分からない。
だがそこで、オルガを見たシグマの顔がきょとんとしたものに変化する。
「あれ? オルガさん、髪濡れてるよ」
「? いつもの事だろう」
「仕事は完璧主義なのに、抜けてるんだからー……」
つい先程までシャワーに入っていたオルガとしてはおかしなことではなかったが、シグマにはそれが場違いなものに映ったらしい。呆れたように、彼は笑った。その笑顔を見て、オルガの心にも少し余裕が出来る。
(さっきの恐怖の表情が嘘かのようだ、な。……な、なんだ?)
しかし、次に胸に去来した契約時に感じたようなモヤモヤに再び戸惑う。
「……悪かった。思い詰めさせたようだ」
だが、それは顔に出さずに、オルガはシグマにそっと謝る。
「俺は、シグマが嫌いではない」
そう言うと、シグマは「え?」と目を瞬かせた。
「だから、とりあえずそこから出てこい」
5、久しぶりに2人で
停電が起きた時、マギウス・マグスは暖炉の前で揺り椅子に腰かけて本を読んでいた。雨が降り気温が下がる中、こうして時を過ごすのは心地良いものだ。
「……落ちましたか」
雷の音が徐々に近付いてきている――そう思っていた時に窓の外で一際強い閃光が見え、轟音の直後、暗闇は訪れた。
立ち上がって窓の前まで行き、外の様子を確認する。街灯は消え、どの建物も明かりひとつ零していなかった。
「停電……そういえば、シルヴァが少し前に風呂に入った所でしたね」
今の落雷には、正にゴロビシャーンッ! という音がぴったりだった。
真っ暗な浴室で膝を抱え、シルヴァ・アルネヴは内心で冷や汗を流す。
「雷鳴ってる時に風呂ってヤバかったっけ……?」
だが、時すでに遅しである。暗闇の中、湯船から動けずに困ったシルヴァは、暖炉の前にいるはずのマギウスに向けて助けを求めた。風呂場で大声を上げるのは恥ずかしいが仕方がない。
「マ、マギー……マギー~~~マギさーーーん!!」
彼の声にマギウスが気付いたのは、それからしばらくのことだった。浴室の戸が開くまでに時間が掛かったのは、恥ずかしさの為に思い切り声が出せなかったからだろう。
「何を、哀れっぽく叫んでいるんですか」
マギウスは、暖炉の傍にあった燭台を持っていた。蝋燭に灯った炎が彼の呆れ顔を見せてくれる。
心細くなってきたところだったので、呆れられていてもシルヴァはすごく嬉しかった。
マギウスが燭台を湯船の縁に置く。小さな炎が、壁や天井やマギウスの姿を照らしている。石鹸の匂いと相まって、何だか不思議な気分になる。
「雷びっくりしたな。あ、でもいつ復旧するんだろ。マギまだ風呂入ってなのに……。そうだ、一緒に入るか? 今ならお湯も熱いくらいだしさ」
「一緒に……ですか?」
安心して声を弾ませるシルヴァの提案に、マギウスは僅かに躊躇った。以前は、一緒に入ったりもしたものだが――
「そうですね。お邪魔します」
確かに、停電はいつ復旧するか分からない。このままでは入浴しそびれてしまうかもしれないわけで、それはマギウスとしても歓迎すべき事態ではない。
脱衣所で支度をしてから浴室に入る。湯船はそこそこ広いものだったが、男2人が入るには少し狭い。
「……いいお湯ですね」
向かい合って、お互いの膝の間に膝が入る格好で湯船に落ち着く。
「だろ? それにしても久しぶりだな。いつから一緒に入らなくなったっけ?」
「さあ、いつ頃からだったでしょうか」
意識してそうしようと思ったわけじゃないけれど、いつの頃からか2人別々に入るようになっていた。
それでも、マギウスは今のこの状況が嫌ではなかった。髪と背中をお互いに洗うのも、随分と久しぶりだ。
(シルヴァが楽しそうだし、偶には良いでしょうか)
暗い中で会話を交わしながら、マギウスは手にシャンプーを取った。
「目を瞑っていてくださいね」
依頼結果:大成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 沢樹一海 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | イベント |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 普通 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 01月10日 |
出発日 | 01月18日 00:00 |
予定納品日 | 01月28日 |
参加者
会議室
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2015/01/17-21:38
挨拶最後になったな
シルヴァ・アルネヴと精霊のマギだ。顔合わせる事はなさそうだけど
よろしくなー。
家にいる時に停電になったから、どうしようかって困ってるトコだけど
……うーん、ほんとどうしよう。 -
2015/01/15-18:26
シグマとハーケインさんは初めまして。と言っても会わないのか今回は。
ハティとブリンドだ。なんとか帰れたはいいが、とうとう停電か。寝るにはまだ早い時間だが、どうするかな。
まだ外にいる人たちも居るようで、皆気をつけてな。 -
2015/01/14-16:48
ハーケインだ。こいつはシルフェレド。
こっちには来たばかりなのでまだ自宅も荷物整理が済んでない。
さっさと片付けたいと言うのに停電とは何事か。 -
2015/01/14-00:08
こんばんは、信城いつきと相棒のレーゲンだよ
なんで俺たちこんな時に外に出ちゃったんだろう……(ため息)。
とりあえず雨と風を少しでもしのげそうな場所で明かりの回復待つよ
みんなも暗闇で怪我とかしないよう気をつけてねー。
-
2015/01/13-01:16
こ、こここ、こんばんわ!
初めましてな人もおひさー!な人もいるね!良かった良かった。
改めて俺はシグマ。精霊はオルガさんだよ。
「元々暗い場所」に行くのは平気だけど、突然暗くなるのだけは勘弁ー!
明るくなるまで隠れとくー!(どこかへ走り去っていく