【指南】甘味の味は恋の味?(木乃 マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

◆新任女神は風紀委員?
「こ、こ、ここここ……これは一体、どういう事でしょう!?」
初恋宮(はつこいぐう)と呼ばれる天界の一角にある宮城(みやしろ)
その長官室に当たる、真新しいデスクや本棚の並ぶ一室に『少女』は居た。

少女は御鏡を見ているが、そこに映っているのは少女ではなく……別の場所。
いわゆる地上界である。

――見ている先には、仲睦まじい恋人同士が美味しそうに和菓子を食べているところだ。
新年仕様なのだろう、薄桃色と白色の餡子で出来たヒツジはめでたさを感じさせる。

鏡に映っているのは……そう、女性から男性に和菓子を食べさせている。
いわゆる『はい、あーん♪』をしている所だ。
少女は唇をわななかせ、肩をブルブルと怒りで震わせた。

「ななな、なんて破廉恥なのでしょう!男女が向かい合って食事……しかもてづからで食べさせるなんてっ、有り得ないです!!」
少女、甕星香々屋姫(ミカボシカガヤヒメ)は顔を真っ赤にしてまくし立てていた。
齢は10歳くらいに見えるだろう。
賢く几帳面そうな一方、少し子供っぽさがあり知識に関しては古めかしいモノを感じられる。
……現代で男女が共に食事をする『デート』という文化は、彼女にとって最先端を通り越して未来的過ぎる文化だったようだ。

「こうしてはいられません、すぐに破廉恥な行いは正されるべきです」
男女の関係はもっと清く正しく美しくあるべきです!!と
声高に叫んだ甕星香々屋姫は御鏡をパタリと伏せ、髪を1本抜き取る。
――抜き取った髪をフヮッと放つと同じくらいの年頃の少年が現れる。

「いいですか、童子。地上にあるこの店に赴き、かのような男女の振る舞いを極秘に調査して来て下さい。
 事と次第によっては天罰を下す必要があります!報告書にまとめて情報を持ち帰って下さい」
「はーい♪」

ビシッと指差した甕星香々屋姫に童子は片手を大きく掲げて返事を返した。

解説

※PCは甕星香々屋姫の極秘調査は知りません、普段通りの振る舞いで問題ありません。

目標:
和菓子屋でひと時を堪能しよう

甕星香々屋姫:
ミカボシカガヤヒメ、初恋宮の新任女神で神様年齢10歳。
自称天界の風紀委員で、まだ初恋もしたことがありません。
本の知識によるものなのか、恋愛について誤解が多いようです。

童子:
甕星香々屋姫の送り込んだ監視役、見た目はおかっぱ髪の10歳くらいの座敷童。
今回は、甕星香々屋姫の指令に忠実に奮闘する頑張り屋さんですが根はお子様なようです。
恋心がよく解っておらず、強い興味を持っています。

物陰からウィンクルムを観察しながら、報告書をまとめています。
この童子を通して、間接的に女神様も学習していきます。

和菓子屋:
タブロスにある老舗のお店です。
現在は新年ということで、干支の羊をモチーフにした甘味を用意しています。

・お品書き(全て1人分で、2人の合計金額が消費分となります)
和菓子5個、あんみつパフェ、大判焼2個(アンコ、クリーム) 各300Jr
(和菓子はヒツジ、ダルマ、梅、松の樹、門松(竹の置物)と縁起の良い形にしています)
抹茶ラテ、ほうじ茶、黒豆茶 各100Jr

店内も純和風茶屋で木製の柱に木製のテーブル、長椅子に赤い座布団が敷かれています。
お座敷はありません。

その他:
童子は皆さんをこっそり観察しているので、声をかけてしまうと逃げてしまいます。
逃げられた場合は童子も怒られないように捏造した内容で報告してしまうのでご注意下さい。

新年ですので、今年の目標やこれからの事をパートナーと話してみるとイイかもしれません。

ゲームマスターより

木乃です、ハッピーニューイヤーん!

今回は初心な女神様がこっそり極秘で調査するエピソードです。
解説にあるとおり、ウィンクルムはその事に全く気付いておりませんので
普段通りのデートをして頂いて問題ありません!

和菓子屋で一息入れつつ、日常会話を楽しむと良いでしょう。

それでは皆様のご参加をお待ちしております。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ひろの(ルシエロ=ザガン)

  離れようと思ったけど……。
変に拒絶して嫌われたくも無い、のかな。
私って我侭だ。(甘味にも釣られた

「おやきと、和菓子で。迷ってて」
両方だと多い。(小食
別腹って、他の人すごいなって思う。
「……?こっちだと、大判焼きって言うんだね」(頷く

「ルシェは。餡子、平気?」
(返しに首を振る
「餡子駄目な人もいるって、聞いたから」

和菓子きれい。どうやって作ってるんだろう。
(ほうじ茶を偶に飲み、大判焼きのクリームを食べる

(黙々と食べてふと
ウィンクルムは仲良くなった方がいいんだっけ。
なら、距離取ったら駄目……なのかな。(首傾げ

(なんでもないと首を振る
挨拶だけでも、ちゃんとしよう。
「あの。今年も、よろしくお願いします」



リオ・クライン(アモン・イシュタール)
  せっかくだから・・・ちょっと休んでいかないか?(チラっ)
新年も迎えたことだし、アモンは何か今年の目標はあるか?

注文・和菓子5個、抹茶ラテ

〈行動〉
・買い出し中に可愛い和菓子を見て、ちょっと休憩
・和菓子を前に目をキラキラ
「なんて可愛らしい・・・。くっ、食べてしまうのがもったいないくらいだ・・・!」
・カメラを持ってくればよかった・・・と悔やむ
・リオの目標は「日々精進」
・和菓子を食べられて、お返しとばかりにアモンの持ってる大判焼(食べかけ)にかぶりつく
「ふふ・・・見たか。私だっていつまでもやられっぱなしではないぞ!」

※アドリブOK



楓乃(ウォルフ)
  ・1600Jr消費

■前日の夜
和菓子は初めてでとっても楽しみだけど
よく食べ方がわからないのよね…⇒自宅のPCで調べる
色々種類があるのね。ええと、菓子切を使ってお菓子を切り分けて…
え?食べる時は喋っちゃいけないの?マナーがあるのね…⇒間違った情報を覚える

■和菓子屋
・和菓子(ヒツジ)と抹茶ラテを注文
(わぁ…!こじんまりとして可愛い!)⇒沈黙して食べる

ぷはぁ!…え?何で黙ってるのかって?
そんなマナーがあるってことを昨日知って。…そんなことないの?

…色々考えながら食べても美味しくないわよね。
もうマナーなんて知らない!楽しく味わって食べることにするわ!
うん!おいし~!

・和菓子を全制覇 ※描写省きでOKです



リセ・フェリーニ(ノア・スウィーニー)
  注文:
和菓子5個×1
大判焼2個×1
ほうじ茶×2

新年だから振袖で出かけるわね
別にあなたのためじゃないけど…
褒められて悪い気はしないわね、ありがとう

まあ、素敵!
こんなに綺麗なお菓子は初めて見たわ!
あなたも見てみて?

「ちょっ!顔くっつけな…
新年早々怒鳴りつけるのもよくない…わね
お菓子を食べて落ち着きましょう
おいしい…のかしら、気になって味がよくわからないじゃない!

こら!調子に乗らないの!
まったく…誰かに見られたらどうするのよ
見られてなくてもダメに決まってるでしょ?
仕方ないわね。でもあんこのとクリームのと
それぞれから半分頂きますからね
私のお菓子もおいしいから分けてあげる
あーん?はいはい、わかったわよ


エレオノーラ(ルーイ)
  私は折角なので和菓子に
あとはほうじ茶を

いただきます
可愛らしいですね
食べるのが勿体ないくらいです
うん、美味しいです
一口齧ってみて程よい甘さに思わず微笑む
そちらは…ふふ、表情でよくわかりました

ヒツジの和菓子を手に取りつつ
もう新年ですね…
昨年は契約したりと色々ありましたね
至らない所ばかりですが、今年もよろしくお願いします
和菓子を一旦置いて丁寧に頭を下げる

思い返せば去年は遊んでばかりでしたね…
楽しかったですがお仕事もしないと、ですね
今年の抱負はウィンクルムとしての活動を活発にとでもしておきましょうか
口には出したが戦う事を想像したら少し怖くて俯く

そう、ですね…
つられて微笑む

美味しいです
ありがとうルーイ…


◆報告書・冒頭
オッス、オレ童子!
甕星香々屋姫(ミカボシカガヤノヒメ)の指令で地上界の和菓子屋に極秘調査しに来たんだゾ。
破廉恥は良くないんだゾ、バッチリ報告書に纏めて持って帰るんだゾ。
……とりあえずダンボール箱に入って潜入するんだゾ。

◆新年の挨拶ダゾ
エレオノーラとルーイが品物を注文すると程なくしてテーブルに運ばれてきた。
「わぁ……可愛らしいですね、食べるのが勿体無いくらい」
エレオノーラは目の前の和菓子に思わず目を見開く。職人の手で作られた和菓子はどれも正月祝いを込め、
めでたい形になっており色鮮やかな見た目の細やかな細工はどれも職人の逸品と言える。
隣に置かれたほうじ茶からも香ばしい薫りも鼻腔をくすぐる。
「こっちも羊の焼印が入ってる!」
ルーイは大判焼と抹茶ラテを頼んでいた、大判焼には『賀正』の間に横を向いた羊を焼印している。
しっとりと湯気が立ち熱々だ、抹茶ラテも鮮やかな抹茶色が品の良さを感じさせる。

「いただきます!」
ルーイが元気よく手を合わせ、エレオノーラも静かに両手を合わせてから和菓子におずおずと手を伸ばす。
手に取った梅型の和菓子は花弁が段になった作りで、中央に金箔が乗せられている。
エレオノーラは新しい年が来たのだと感じながらゆっくりと口に運ぶ。
「うん、美味しいです」
エレオノーラは和菓子のほんのりとした甘さに思わず微笑む。
「さすが老舗だね!来てよかった」
「そちらも表情でよくわかりましたが、口の端の餡子を取った方がいいですよ」
大判焼きを頬張り満面の笑みを浮かべたルーイに可笑しそうに笑みを浮かべたエレオノーラが口の端についた餡子を見つけて小さく指を向ける。
ハッとしたルーイは慌てて付いていた餡子を摘んで口に運ぶ。

「もう、新年ですね」
ふと思い返すように羊の和菓子を手にとって見つめながらエレオノーラが呟く、羊の顔も彫り込みがされており笑っているように見える。
「あっという間に時間が過ぎた気がするよ」
ルーイも最近のことを振り返るように視線を宙に向ける。
「至らない所ばかりですが、今年もよろしくお願いします」
和菓子を一度皿に戻しエレオノーラは姿勢を正すとルーイに頭を下げる。
「至らないといえば俺の方だから!」
「ふふ、昨年は沢山遊んで楽しかったですがお仕事もしないと……今年の抱負はウィンクルムとしての活動を活発に、とでもしておきましょうか」

それはつまり、オーガとの戦いに身を投じること。
自分で言葉にしたものの、壮絶な戦いの報告を思い出し……恐るべき敵との対峙に恐怖を感じ俯く。
(私が足手まといになり、ルーイにもしもの事があったら……)
「……お嬢様、これ」
ルーイの声に不思議に思い、視線を上げると……半分に割られたクリームの大判焼。
「ウィンクルムは仲良くなるのも必要って聞くし問題ないんじゃない?なにより、去年は俺も楽しかったしさ!」
こっちも美味しいよ、と笑顔で言葉を続けるルーイ。
「嫌なら今年も楽しく過ごす、でもいいんだよ。今日は俺たち和菓子を堪能しに来たんだしその事を考えようよ」
「……そう、ですね」
今年はまだ始まったばかりだ、焦る必要はないのかもしれない。
エレオノーラはルーイの差し出した大判焼を手に取り頬張る。
「美味しい、です」
「一緒に同じ食べるってのもいいね!」
口一杯に広がるクリームは濃厚で、強ばった心も溶かしてくれるような甘さだった。
(ありがとう、ルーイ)
エレオノーラは目を伏せ、心の中でヒッソリと礼を告げた。

◆精進なんだゾ
続いてやってきたのはリオ・クラインとアモン・イシュタール。
リオは心なしかそわそわしており、アモンが少し呆れた様子でリオを観察している。
(こいつ、絶対和菓子目当てだろ)
和菓子屋が珍しかったのか、リオから誘って休憩と洒落込むことになったが
店内に入ってからリオの視線は明らかに他の卓に並んでいる食の芸術品に向いていた。

程なくして、和菓子と抹茶ラテを置かれるとリオの目はキラキラと輝きだした。
「くっ、食べてしまうのがもったいないくらいだ……!」
「置きっぱなしにすると腐るぞ」
アモンは半目で葛藤しているリオを見ながら大判焼きを頬張りほうじ茶を啜り始める。
口の中に広がったクリームの濃厚な甘味を、あっさりとした口当たりのほうじ茶が和らげてくれた。
「そ、それはそうと……新年も迎えたことだし、アモンは何か今年の目標はあるか?」
バツが悪くなったのか、話題を変えようとリオがアモンの抱負について聞いてみた。
これから一年を過ごす上でパートナーの心得を聞いておくのもお互いにとって相乗効果が期待できる。

「はぁ?……とりあえず気ままに過ごす」
「それはいつもと変わらんだろうが!」
全くキミという奴は!とそのままリオの説教タイムに入りそうな所をアモンはすかさず切り返す。
「で、お嬢様は?」
「私は日々精進だ、昨年の研鑽を活かし今年も日々の向上を怠らず今後に向けて邁進するまでだ」
聞かれたモノを無視する訳にもいかず、リオは腕を組んで自身の今年の目標について語る。
昨年のやり残したことではなく、磨いたものをより良くしていこうというのが彼女の抱負だ。
「わ、お嬢様らしー。もうちょっと簡単なのにしねぇ?色気もクソもねーし」
「なっ、い、色気だとぉ!?何を言っている破廉恥な!」
頬杖を付きながらアモンは教科書通りの答えだと言わんばかりにつまらなさそうな表情を浮かべる、リオはアモンの言葉に顔を真っ赤にしながら勢いよく立ち上がる。
周りで甘味を楽しんでいた客が驚いて視線をリオに集中させる。

「……あ」
集まる注目に気づいたリオが申し訳なさそうに大人しく座り直す様子に、アモンは一連の流れがツボに入ったのか笑いをこらえるのに必死だった。
リオは羞恥心を飲み下そうと抹茶ラテをゴクゴクと勢いよく飲む。
「あ、それも食べられないんなら俺が食っとくわ」
リオの様子を尻目にアモンが羊の和菓子の手を伸ばしてヒョイっと自身の口に放り込む。
「あぁーッ!?アモン、キミという奴は!!」
最後に食べたいものほど後にとっておきたいもの、アモンの口の中に飛び込んでいった羊の和菓子に思わず叫び声を上げる。
……と、同時にポンポンと肩を叩かれる。
驚いたリオは叩かれた方を見ると……店の女将だろうか。温和な雰囲気の、着物を着た小柄なお婆ちゃんがニコニコしており人差し指を唇の前に立てる。
俗に言う『静かにしましょう』のサインだ。

まずこの店は貸切ではない、他の一般客も来店しているのだ。あまり騒いでしまえば他の者が何事かと驚いてしまう。
……当然、これだけ騒げば店内に居る者が再び注視してしまうのは無理からぬことだ。

(私も、まだまだ精進が足りないようだ……)
リオはしずしずとダルマの和菓子を頬張り誤魔化した。

◆喧嘩中なのかゾ?
「何に悩んでるんだ」
「おやきと、和菓子で。迷ってて」
新年の賑やかな雰囲気にそぐわぬ沈黙が流れる、ひろのとルシエロ=ザガン。
(離れようと思ったけど……変に拒絶して嫌われたくも無い、のかな)
自分はなんて我侭なのだろう、そう思う度にひろのは胸に針を刺したような小さく鋭い痛みを感じていた。
「おやき?大判焼きの事か、気にせず両方頼めばいい」
気づいているのかいないのか、ルシエロは変わりなく接してくる。それがひろのを余計に戸惑わせているとは知らずに。
「こっちだと、大判焼きって言うんだね……でも両方だと多い、そんなに食べられない」
「残ったらオレが食べてやる、おいそこの」
ルシエロは近くを通りがかった店員を呼び止めるとそのまま注文する。

「ルシェは。餡子、平気?」
「普段は食べないがな、それがどうかしたか」
素朴な疑問が湧いたひろのはチラと小さくルシエロに目を向ける、ルシエロは質問に訝しげながら問題ないと伝える。
それを聞いたひろのは緩々と小さく首を振った。
「餡子が駄目な人もいるって、聞いたから」
ルシエロは一瞬、瞳に驚きの色が浮かべるがすぐに目を細めて誤魔化した、その表情はどことなく満足気にも見える。

そうこう話していると注文した和菓子と大判焼き、そしてほうじ茶が2つ運ばれてきた。
「キレイ、どうやって作ってるんだろう」
元々整ったものが好きなひろの、余計な飾り気がなく繊細さのある和菓子は彼女の好ましいと思うモノに近しいようだ。
「ヒロノはこういう物が好きなのか」
「え……うん。嫌いじゃない」
ルシエロは和菓子を見つめているひろのを見つめながら質問を投げかけた、ひろのは小さく首を右に傾げながら短く返す。
「和菓子はまだしも大判焼きが冷めるぞ、こっちがクリームでそっちは餡子だ。どちらにする?」
「じゃあ、こっち」
生地から少し見えていた中身を目聡く見つけたルシエロは好きな方を選べ、と伝えるとひろのはクリームの大判焼きを手に取る。
ルシエロは残った餡子の大判焼きを取った。

「……温かい」
「悪くないな」
ひろのは少しずつ大判焼きを齧る、生地の外はカリカリ、中はしっとり。
ルシエロも大して期待はしていなかったのか一口食べると小さく呟きモリモリと一気に食べきった。
「美味しい。お茶も、いい匂い」
口直しにひろのは大判焼きを置いて湯呑に手を伸ばす、一口飲むと小さく息を吐く。
そんな何気ない動作を繰り返すひろのをルシエロは見つめ続けていた。
「……ルシェ?」
視線に気づいたひろのは首を傾げる。
「どうした?」
ルシエロは口角を吊り上げながら面白い物を見ているような表情をしている。
ひろのは一瞬思考を巡らせた。
(ウィンクルムは仲良くなった方がいいんだっけ。なら、距離取ったら駄目……なのかな。それに)
この落ち着く空気を壊したくない。素直にそう思った、そう思いながら首を横に振った。

(そうだ。挨拶だけでも、ちゃんとしよう)
「あの、今年も、よろしくお願いします」
「ぷっ……ああ、よろしくな。ヒロノ」

ぺこりと頭を下げるひろのに、ルシエロは小さく吹き出しながら新年の挨拶を返した。

◆悪戯してたゾ!
「あけましておめでとう、リセちゃん!着物で来たんだねぇ~、とっても綺麗だよ」
ノア・スウィーニーは隣に座る自身のパートナーに頬を緩ませていた。
「別にあなたの為じゃないけど、褒められて悪い気はしないわね。ありがとう」
リセ・フェリーニは白地に桃色のグラデーションがかかった流行りの古典柄に、黄色帯の華やかな振袖を着ている。
髪型も少し変えて、簪で留めておりいつもと雰囲気も違う。
「わざわざおめかししてきてくれるなんて、俺は幸せ者だなぁ」
「あなたの為じゃないってば」
今年も振り回される予感がするリセであった、丁度そこへ注文した品物を店員がいそいそと運んできた。

「まあ、素敵!こんなに綺麗なお菓子は初めて見たわ!」
リセは『祝事でも扱う菓子』という事は聞いていたが、実際に目にするのは初めてだ。
「このダルマ、だっけ?これも目に違う色をのせているのね。ほら、見てみて」
普段は見せないリセの純粋に楽しんでいる様子にノアも嬉しそうに笑みを浮かべる。
……そして少しの悪戯心も湧き始める。

「へぇ~、どれどれ?」
ノアはじっくり見ようと顔を近づけた。リセが手に持っていたダルマの和菓子に、だ。
「ちょっ!顔近づけ過ぎ……」
(いや、新年早々怒鳴りつけるのもよくない……わね)
折角の晴れ着姿でいつものように怒鳴るのもどうなのか。
ノアの振る舞いについ怒鳴ってしまうことも少なくないが、思うところがない訳ではない。
「い、いただきます」
こんなのいつもの事だ、落ち着いて食事に移ればいい!と自分に言い聞かせながらリセはパクッと和菓子を食べた。
しかし、ノアに離れる様子はない。
「リセちゃん、和菓子美味しい?」
(なんかしっとりして甘くて、おいしい……のかしら、視線が気になって味がよく解らないじゃない!)
怒鳴りつけたい気持ちをなんとか抑えようと、リセは一緒に運ばれてきたほうじ茶をグィッと飲む。
「リ・セ・ちゃん♪」
じりじり互いの顔の距離を近づけようとするノア、しかしリセの我慢できる一線は越えてしまったようだ。

「調子に、乗らないのっ」
ノアの悪戯に耐え切れなくなったリセは思わずペシッとノアの額にチョップを落とす。
「こ、公衆の場で一体何をする気!?」
「ごめんごめん、からかいすぎたね」
ノアは自身の額を擦り、いつもの笑みを浮かべる。
「年始早々から……その、大判焼きを分けてくれたら許してあげてもいいけど」
「あはは、じゃあ半分こしようか」
ノアは大判焼きを手に取ると半分に割っていく、中にぎっしりと詰まったクリームがトロリとこぼれ落ちそうになる。
「おー、こっちも美味しそうだよ」
「そうね。ノア、和菓子も美味しいから一個食べていいわよ」
「くれるの?じゃあ、あーん」
割った大判焼きを手に持ったままノアは口を開けた、いわゆる『はい、あーん』を待っている状態だ。
リセは眉を顰めながら和菓子を1つ摘む。
(え?もしかして)
ノアは期待のこもった視線を和菓子に集中する……

「はい、どうぞ」
リセは片方の大判焼きを取るとノアの空いた手に摘んだ和菓子を持たせた。
(残念!でも可愛いリセちゃんを一杯見られたし良しとしよう)
ノアは内心、残念がったがリセの新しい一面を見れたことで満足することにした。

◆静かなんだゾ?
前日。
楓乃はウォルフが見つけたという和菓子屋へ行かないかと誘われた。
(初めてでとっても楽しみだけど、作法とかあるのかしら?)
タブロス市内の情報に限られてしまうものの、見ないよりはマシだと考え楓乃はパソコンで調べてみた。
「ええと、菓子切を使ってお菓子を切り分けて……」
茶会で行う所作を掲載しているページの辿り着いたようで、作法について事細やかに掲載されていた。

「え?食べる時は喋っちゃいけないの?やっぱりマナーがあるのね」
しかし、作法がキッチリ掲載されているからと言って良い結果になるとは限らない。
そしてネットには正しい知識ばかりが掲載されている訳でもない所が恐ろしい。
楓乃は多くの間違った知識を取り入れて臨むことになってしまったが、どのような結果になったのだろうか。

***
「へー、色々あんだなぁ」
お品書きに目を通しながらウォルフは感心したように声を上げる。
「あのっ、羊の和菓子と抹茶ラテをお願いします」
「オレは大判焼き2種と黒豆茶で」
頃合を見て注文を聴きに来た女給に楓乃は緊張した様子で声を上擦らせ、ウォルフもお品書きを指差しながら注文を伝える。
「ふふ、うちは5種ともお出ししますさかい。ほんまに1個でよろしおす?」
「えっ!?じゃあ、セットで(い、1個だけじゃなかったのね)」
クスリと面白げに笑みを浮かべる女給に楓乃は顔を真っ赤にしながら注文しなおす。

「楓乃、緊張しすぎじゃねぇか?」
「そ、そんな事ないよ」
楓乃に対しウォルフが心配そうに様子を伺う。
(ウォルフはなんで緊張してないのかな)
楓乃は普段通りのウォルフに疑問を抱いていると、女給が注文の品を手に戻ってきた。

(わぁ!こじんまりとして可愛い!)
平皿の上にちょこんと座る羊の和菓子に楓乃は目を輝かせながら手を伸ばす。
「んー、クリームもあんこもうめぇー!深い味してんなぁ!」
ウォルフは両手に大判焼きを持って交互に頬張っていた、口直しに黒豆茶を飲むと豆の甘味もほんのりと残っていて渋さはあまり感じられない。
一方、楓乃は黙々と和菓子を口にしていた……何故かウォルフに背を向けて。
「なぁ、なんでそっぽ向いて黙ってんだ?」
明らかに様子がおかしいと感じたウォルフが語気を強めて楓乃に問いかける。
振り向いた楓乃はきょとんとした顔でウォルフを見る。
「和菓子を食べる時はマナーがあって、食べる時は黙ってるのが基本で、西南西を向くと鬼が寄らないとか」
「……はぁぁ」
楓乃は昨夜覚えた作法をウォルフに伝えるとウォルフは呆れたように溜息を吐いていた。

「形ばっか気にして、そんなのオマエらしくねーだろ」
黒豆茶を一口飲んで、ウォルフは楓乃の振る舞いを窘めた。
(確かに食べ辛いし、ウォルフの顔も全然見えないわ)
これでは一緒に来た意味がなくなってしまうではないか、楓乃は眉を垂れてしょんぼりした。
「ちゃんと味わわねーと作ったやつにもシツレーだろ?」
「……そうね、楽しく味わって食べることにするわ!」
気を取り直して楓乃は松の和菓子に手に取りパクッと頬張る。
「美味いか?」
「うん!おいし~!」

頬がこぼれ落ちないように両手で押さえる仕草のご満悦な楓乃に、ウォルフは小さく笑みを零した。

◆報告書・結論
甕星香々屋姫は童子の報告書に一通り目を通すとパタリと閉じた。
「姫様、以上なのだゾ!」
「ご苦労様でした。……なるほど、どうやら私が見た人間はたまたま行き過ぎた行為に及んでいただけのようですね。
 皆が皆、破廉恥な行いをしている訳ではないことには安心いたしました」
童子は目を輝かせながら甕星香々屋姫の反応を伺っていた。
どうやら天罰を下すのは一旦保留するようだ。

「それで、童子。あなたから見てこの者達はどうだったのですか?」
「えっと……オレはね、どっちも大事に想ってるんだなーって思ったゾ!
 うまく言えないけど、仲良しの、もっと凄い眩しいモノがある気がするゾ!見ててちょっと羨ましかったんだゾ」
「……そうですか。童子、もう休んで構いません。おやすみなさい」
甕星香々屋姫がふわりと片手で童子を扇ぐと、童子の姿は光となって散っていった。

(お互いを想う……確か、相思相愛というのでしたね。これも1つの『恋』の在り方なのですか)
童子の報告書を見つめながら、甕星香々屋姫は物思いに耽った。
(恋とは一体、どのようなものなのでしょう?)



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 木乃
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 01月05日
出発日 01月11日 00:00
予定納品日 01月21日

参加者

会議室

  • [5]エレオノーラ

    2015/01/10-16:19 

    初めまして、エレオノーラと申します。
    どうぞよろしくお願い致します。

    和菓子、楽しみですね。
    みんな素敵な時間を過ごせますように。

  • [4]楓乃

    2015/01/10-14:34 

    よお!皆、おめっとさん!!

    エレオノーラとルーイは初めまして、だったよな。
    オレはウォルフ。よろしくな。
    で、こっちは神人の楓乃な。
    ん?おい、楓乃?お前何をブツブツ言ってんだ?

    悪い…。和菓子を前にどっか別の世界にいっちまってるみてーだ…。
    昨日の夜からずっとはしゃいでたからな。

  • [3]リセ・フェリーニ

    2015/01/10-11:58 

    あけましておめでとう。今年もよろしくね。

    ふふっ、もうみんなお菓子のことで頭がいっぱいみたいね。
    私も楽しみだわ。

  • [2]リオ・クライン

    2015/01/09-22:41 

    ひろのと楓乃は久しぶり、リセ様とエレオノーラ様は初めまして。
    リオ・クラインとアモンだ。

    老舗の和スイーツ・・・これは是非堪能しないとな・・・!

  • [1]ひろの

    2015/01/08-09:48 

    リオさん達、と。楓乃さん達は、お久しぶりです。
    他の人達は、初めまして。
    ひろの、と。ルシエロ=ザガンです。よろしくお願いします。

    和菓子……。(意識は既に和菓子へ


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