【指南】新年会で年明け早々騒いじゃおう(和歌祭 麒麟 マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 新年がやってきた!
 キミの所にA.R.O.A.から年賀状が届いている。
 おきまりの定型文と、可愛らしいイラストが鮮やかに描かれている。
 定型文の後ろには、新年の挨拶が書かれていた。
 手書きでなにやら新年会の事が書かれている。

「みなさん、今年も無事に新年を迎える事が出来ました。新年、はじめが肝心! 新年会を開くので、みんなでお正月を楽しみませんか?」

 新年会をA.R.O.A.が開催するらしい。会場は家からそれほど遠くない。
 折角だから、顔を出してみてもいいだろう。

「私たち職員が作った、おせちに雑煮、甘酒を楽しんで下さいね」

 お正月の雰囲気も味わうことが出来そうである。
 パートナーを誘って遊びに行くのも楽しいかも知れない。

「今年もウィンクルムとして頑張る鋭気を養って下さいね」

 文面はこれで終わりかと思うと、まだ続きがある。

「今年の目標とか、お祈りしておきたい事ってありませんか?」

 新年の抱負というヤツだろうか?
 折角の年の初めである。今年の目標を考えるのも悪くない。
 自分の思っている事でもいいし、考えれば色々ある気がする。

「会場の近くに神社があるんですけど、絵馬に今年の目標とか、お願いを書いてみるのも楽しいと思いますよ」

 一年は始まったばかりだ。新年らしく参拝に行くのもいいかもしれない。

 最後に気になる一文が書いてある。

「なんか新任の女神様のところから、監視役が来るらしいです。
 ウィンクルムの監視だと書面に書いてあったのですが、
 ……気にしないで楽しんじゃってください。
 きっと平気です。どうにかなりますよ!」

解説

 新年会エピソードです。
 新年会をパートナーと楽しみましょう。

★ストーリーの流れ
 前半は賑やかな新年会会場で、おせちや雑煮、甘酒を楽しみながら、パートナーと楽しく時間を過ごします。
 新年の挨拶ついでに、料理を楽しむのもいいでしょう。

 後半は神社で絵馬の裏に、好きなことを書いてください。
 パートナーは何を書くのでしょうか?
 お互いに書いた内容を見せ合ってもいいし、内緒にしておくのもいいですね。
 仲良く神社を参拝しましょう。

★新年会場に、監視役として童子が参加しています。
 童子は座敷童風の女の子です。
 神社までトコトコとついてきますが、離れた所から見てるだけ。
 恋心にとても興味を持っているので、パートナーと仲がいい所を見せてあげてください。
 きっと喜んで帰っていくでしょう。
 童子は勘違い女神様にきちんと報告するので、きっと女神様も恋を学習してくれるはず。

★参加費に300Jrが必要です。

ゲームマスターより

 新年おめでとうございます。
 今年も楽しくウィンクルム活動をしていきましょう。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

手屋 笹(カガヤ・アクショア)

  【新年会】
カガヤ!?
傷は塞がったようですがまだ痛みは残っているのですね…
傷があった部分を擦ります。

皆さんへの挨拶が終わりましたらカガヤの隣に座り
ここに座るようにと座布団をぽんぽんして
一緒にお料理を食べるように促します。

【参拝】
腕は大丈夫ですよ。
カガヤの方こそ先ほどの痛みはもうありませんか…?

絵馬の内容?
…そんな目標にされたらやらざるを得ませんね…

「お料理をうまくなりたい!」
と書いて見せます。

…支えとは戦いの中だけではないと思うのです…
なので…カガヤに元気で居て欲しいので今年はお料理を頑張りたいのです。こちらこそ見ていてください!

…クリスマスの汚名返上です…
それにカガヤが望んでいるなら…(呟き)



かのん(天藍)
  少し改まった装いで新年会の会場へ
職員さんと神人さんへ昨年お世話になった事への感謝と新年のご挨拶をしつつ、天藍と2人でおせちを、あればお屠蘇も頂く
お酌します?

神社へ参拝へ
階段等の段差の前でそっと差し出される天藍の手をいつもありがとうございますの言葉と共に握る
天藍と私2人とも依頼と本業が順調に1年つつがなく過ごせるようにとお祈り

絵馬
文面:天藍が依頼で怪我等しませんように
書き終わった所でお互いに書いた内容を見せ合う
徐に天藍がかのんの絵馬に文字を書き足し驚く
その後の文面:かのんと天藍2人が依頼で怪我等しませんように

俺1人だけが怪我しないのでは意味がないからなと、書き足した理由を答える天藍と笑みを交わす



ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
  【新年会】
……ディエゴさんたら
ずっと甘酒を飲んで天藍さんやカガヤさんに話しかけているのです
……むぅ
別に、気にしませんけどね
機嫌良さそうですし。

【参拝】
ちゃんと参拝のルールを読んでお詣りしましょうね

絵馬には
「ミットランドの平和」を願いました
ウィンクルムの使命も大事ですけど…
…戦闘依頼になるとディエゴさんとあまり話す機会無いですし
もっとゆっくりした時間を一緒に過ごしたいなって

……混んできたら嫌ですし早く帰りましょう(そそくさ)

買い物に誘われてからずっと手を繋いでますが
いつまでこうしていれば良いんですかね…

え、あ、もう放しちゃうんですか…

…なにッ!?
それは狡いですよディエゴさんッ!(本気ダッシュ)



ミヤ・カルディナ(ユウキ・アヤト)
  気持ちも新たにね

アヤトを誘って参加したい
面倒がると思ったら意外とすんなりOKしてくれた…?
…何かあったの?

●新年挨拶
朱色基調の水仙柄の古典的な振袖に藤黄の帯を着こなし、髪もあげてお年賀です
神様や世話してくださる方への挨拶なのですから正装です

?アヤト?どうしたの?

こんな日に竹刀なんて持ち歩かないわよ><

御節も美味しいですね
請われるままに言われを説明しますね

●神社初詣
拝殿の作法をさりげなく教えつつ初詣
お賽銭の額には決まりは無いのよ
だってお金が発明される前から神様はいらっしゃるでしょ?(にこ

出店でお菓子を買ったら童子ちゃんにもおすそ分けです(にこ

絵馬に願うのはアヤトの健康と無事
あっ、見ちゃダメぇ(汗



ジゼル・シュナイダー(ヘルムート・セヴラン)
  おせちにお雑煮に甘酒だって
いいね、美味しそう

あ、忘れてた
あけましておめでとう
今年もよろしく

じゃあ食べよう
これらをお腹いっぱい食べれるのはお正月くらいだし
ヘルムートも食べ貯めておくといいと思う
人生なにがあるかわからないからね

絵馬は折角だし描いてみる
…それは自分で書いてこそ意味があるのであって人に頼むじゃないと思う
(なんか不満そうな顔してる気がする…

仕方ない、かして(かきかき
はい、これ

でも慣れてきたのか少しは何考えてるのかわかるようになった気がする
気がするだけ、だからね
まだ分からない事の方が多いから自分でも努力して

私も同じ事書いとく
人付き合い苦手なのは私もだし
お互い達成できるよう頑張ろう


 新年会、当日。外はとても寒かった。寒気の影響で空は晴れ渡っているというのに、吹き付ける風が肌にいたい。
 家から近い位置に新年会会場があってよかった。
 会場に到着すると、まず目に飛び込んできたのは正月飾りだった。
 門松が建物の門に飾られている。
 正月の時くらいにしか目にしないので、新年がやってきたと季節を感じた。
 建物の中に入ると暖房が効いていて暖かい。
 外の冷たい風からやっと別れを告げると、会場に向かうのだった。


 入口で職員が「あけましておめでとうございます」と挨拶をした。
「おめでとうございます」と一言告げるジゼル・シュナイダー。
 隣にいるヘルムート・セヴランは「ん」とだけ応答する。
 会場はとても広く、大量のお節料理がテーブルに所狭しと並べられていた。
 二人は席に向かい合うようにして座る。席は掘りごたつになっていて、足が痺れる心配はなさそうだ。
 部屋の隅の方からこちらをチラチラと見てくる女の子が一人いる。
 見た目は座敷童のようだ。何か言ってくるわけでもなく、見ているだけなので、ジゼルは無視することにする。
 ヘルムートははじめから気にしていないようだ。
 座っていると、職員が熱々のお雑煮を持ってきてくれた。甘酒も一緒に運ばれてくる。
「おせちにお雑煮、甘酒。いいね、美味しそう」
 色合いが綺麗に作られていて、おせちは華やかだ。
 雑煮は醤油だしで作られているように見える。
「あ、忘れてた、新年の挨拶、まだだったよね。あけましておめでとう。今年もよろしく」
「おめでとう」
 ジゼルの言葉に短く返事をするヘルムート。
 ヘルムートは別に機嫌が悪いわけではない。視線は食べ物に釘付けになっている。
 ジゼルはヘルムートの薄い反応には慣れっこなので、特に咎めることなく、いった。
「じゃあ食べよう。こういうお正月メニューをお腹いっぱい食べられるのはこの時期くらいだし。
 ヘルムートも食べ貯めておくといいと思う。人生何があるかわからないからね」
 ヘルムートは相づちを打つ。
 ジゼルは早速、おせち料理に取りかかる。縁起ものが重箱にぎっしりと詰められていて、ジゼルは大満足だ。
 ヘルムートは取り皿におせちを集める。集め終わったあと少し口にして、すぐにお雑煮を食べ始める。
 とりあえず、おせちで食べたいものは回収したので、ゆっくりと食べていくスタイル。
 甘酒を飲んだりしながら、二人で食事をすすめていく。
 会話は時よりどちらかが「あれとって」「ん」という、最小限の会話だけだった。
 賑わう会場の声をBGMに二人は食事に夢中である。
 育った環境が過酷だったためか、食事の時は二人とも、会話などに脱線しないのだ。
 一通り食べ終わった後で、やっと会話が始まる。
「おせちおいしかったね」
「そうだね」
「甘酒もっと飲む?」
「ん」
 ジゼルがヘルムートのコップに甘酒を注いであげる。
「ジゼルは?」
「じゃあ、もらおうかな」
 ジゼルのコップに甘酒を注ぐヘルムート。
 二人の会話は短い言葉のキャッチボールだ。
 多くの言葉で場を取り繕うより、二人とも沈黙を好むのだ。
 沈黙は二人にとって落ち着くのである。

 近くに神社があるということで、二人は参拝に向かう。
 賽銭箱に小銭を放り、思いつきでお祈りをする。
 先ほど、会場にいた座敷童のような女の子がついてきているのに気がついたが、二人は気にしなかった。
 神社の奥の左手側に長テーブルが二つ置かれていた。
 近くで絵馬を売っている所を見ると、ここでお願いを書くのだろう。
 ジゼルは絵馬を二人分買って、長テーブルに置いてあるペンを手にとった。
 色の種類が多いので絵馬の裏をカラフルで鮮やかに出来そうだ。
 ヘルムートは絵馬を見つめて難しそうな顔をする。何を書くか全然思いつかないといった様子だ。
「ジゼル、書いておいて」
 ヘルムートはギブアップした。
「……それは自分で書いてこそ意味があるのであって、人に頼むものじゃないと思う」
 ヘルムートは正論を返されて「思いつかないんだよ」と短く告げる。
 これは本当に書くことが思いつかないのだなと判断したジゼルは、ヘルムートの絵馬を手にとる。
「仕方ない、かして」
 太いペンで文字を書いていくジゼル。
「はい、これ」
 ジゼルは絵馬に『意思疎通』と書いていた。
 また、ずいぶんと難しいことを書くなと、ヘルムートは困った顔をする。
 それでも、ジゼルが書いてくれたことは嬉しかったようだ。なんとなく、雰囲気で伝わってくる。
「慣れてきたのか、少しはヘルムートが何を考えているのかわかるようになった気がする。
 でも、気がするだけだからね。
 まだわからないことの方が多いから自分でも努力して」
 ヘルムートは少しの間、去年のことを振り返り、つぶやく。
「できるだけ」
 はっきりしない物言いだが、今のヘルムートならこれが限界かとジゼルは思うのだった。

●新年の挨拶
 A.R.O.A.の新年会ということで、見知った顔と会うこともある。
 去年一緒に任務を行った仲間の姿が会場にあった。
 ディエゴ・ルナ・クィンテロが新年の挨拶に向かう。
 かのんと天藍の元にディエゴが向かうと、その後ろをハロルドがついていった。
「あけましておめでとう。こういう場所で会うのは珍しいな」
 ディエゴが二人に声をかけると、かのんと天藍も新年の挨拶をした。
「明けましておめでとうございます」
「あけましておめでとう。去年は色々と世話になった」
 挨拶をする三人を見てハロルドも「あけましておめでとうございます」と機械的にいった。
 かのんと天藍はハロルドがハロウィン以降、雰囲気が変わってしまった事を知っている。その事情も何となくだが伝わっている。
 雰囲気が変わってしまったハロルドだが、かのんは「今年も宜しくね」と、優しくいった。
 ハロルドは表情をあまり変えずに「はい、こちらこそ」と答え、二人の会話は終わる。
 ディエゴとハロルドに天藍がいう。
「今年もかのん共々、宜しく頼む。
 それと、ディエゴ、そのうちオフの時に飲みにいこう。なんか考え事でもあるなら酒のつまみに聞くぞ」
「ああ、楽しみにしている」
 そう言うと、ディエゴはかのんと天藍の元から移動した。
 ハロルドがその後をついていく。少しだけかのんと天藍の方を振り返った。かのんが微笑んだので、ハロルドは反応に困る。
 ディエゴに声がかけられた。
「ディエゴさん、あけましておめでとうございます」
 声の方をディエゴが向くと手屋 笹とカガヤ・アクショアがいた。
「あけましておめでとう。
 カガヤは怪我の方はもう平気なのか?」
 カガヤは前のミッションで大怪我をしていた。
 軍医だったディエゴは当然のことながら気になる。
「え、怪我? このとーりもう大丈夫! 痛っ……」
「カガヤ!? 傷はふさがったようですが、まだ痛みは残っているのですね……」
 笹が心配そうにカガヤの傷があった場所をさする。
「大丈夫、ではないな」
 ディエゴに怪我の度合いを見抜かれて、カガヤは苦笑する。
「傷はふさがってるはずだけど、完治とはいかないみたいだな……。
 みんなへ挨拶してから大人しくしてるよ。とほー」
「そうした方がいい。お大事にな」
 カガヤはずっと黙っているハロルドの方を一度見て、二人にいう。
「新年くらい笑っていこうぜ。仲良くしろよ!」
 ディエゴは苦笑しながら、二人から離れた。ハロルドもその後を続く。


 新年会会場を後にしたハロルドとディエゴ。
 今は近くの神社に来ている。
 先ほどから座敷童のような女の子がついてきていた。
 職員がいっていた監視役だろう。特に何かしてくる様子はなく、無視していて問題なさそうである。
「ちゃんと参拝のルールを読んでお参りしましょうね」
 新年会会場では楽しくなさそうにしていたハロルドだが、ディエゴと二人になると、上機嫌になっていた。
 参拝の列に並ぶ二人。
「新年会は楽しくなかったか?」
「楽しくないことはないですけど、……ディエゴさんは楽しかったみたいですね。甘酒を飲んで、天藍さんやカガヤさんと楽しそうにしてて。別に、気にしてませんけどね」
 新年会は挨拶で忙しく終わってしまった。
 ディエゴが色々な人と繋がっていて、会話を楽しむ姿はハロルドとしては何故か面白くなかった。
「折角、おせちとかあったんですから、もっと私と話すこともあったんじゃないですか?」
 ハロルドが珍しく気持ちをはっきりと伝えてくるので、ディエゴは嬉しくなった。
 拝礼を終えると、絵馬を購入した。二人それぞれが備え付けのペンで祈りを書いていく。
 少し考えてハロルドはペンを動かしていく。綺麗に形の整った文字が並んでいった。
「絵馬には『ミットランドの平和』を願いました」
「俺は『全てのウィンクルムの健康』を祈願した。願うだけじゃなく、行動にも移さなきゃな」
 ディエゴがいうと、ハロルドはいいにくそうに話す。
「ウィンクルムの使命も大事ですけど……。
 戦闘依頼になるとディエゴさんとあまり話す機会がないですし。
 もっとゆっくりした時間を一緒に過ごしたいなって」
 ハロルドの言葉を聞いて、ディエゴは思わずハロルドの手を握ってしまう。可愛いと感じたのだ。
「……今まで憎まれ口を叩いていたかと思ったら、そんな、可愛い……、違う、そんな願いだったとは」
 手を握られると、ハロルドは胸が温かくなったように感じる。
 絵馬を二人仲良く飾る。こういう時間は時には必要だと感じる。
 依頼をこなすだけではなく、二人でいる時間を作ることが、お互いに、今は必要な時期なのかも知れない。
 ハロルドの変化を見ていてディエゴは思った。
「混んできたら嫌ですし、早く帰りましょう」
 絵馬を飾り終えるとハロルドがディエゴの手を引く。
「帰りに、買い物でも行くか。いったろ、今日はオフだって」
 ディエゴとの時間がまだ続くと思うとハロルドは嬉しく感じる。
 一方で、絵馬を飾り終えていつまでも手を繋いでいるのが気恥ずかしい。
(ずっと手を繋いでますが、いつまで、こうしてればいいんですかね……)
 手を先に握ったディエゴも完全に手を離すタイミングを失っていた。
(前までは安心する手だったが、今は何かがおかしく、落ち着かない)
 ディエゴの方から手を離す。
「え、あ、もう離しちゃうんですか……」
「……先に境内を出た方にアイス奢りな!」
 いきなりそういうとダッシュするディエゴ。ハロルドは呆気にとられるが、すぐに状況を理解する。
「なにッ!? それはずるいですよディエゴさんッ!」
 本気の走りでディエゴを追いかけるハロルド。いつしか二人は笑顔になっていた。


 新年の挨拶を終えると、笹は席に着き、隣の座布団をぽんぽんと叩く。
 隣に座れというジェスチャーにカガヤは喜んで座った。
「おせち、美味しそうですわね」
「傷を早く治すためにも、沢山食べようかな」
 去年のことを振り返りながら二人で仲良く料理を楽しんだ。

 新年会の会場を後にした二人が来たのは近くの神社である。
 参拝の列に並ぶ。
「そういえば、笹ちゃんはあの時の怪我はもういいの?」
「腕は大丈夫ですよ」
「そっか、それならよかったけど……」
 笹が怪我を負ってしまったという事実が、カガヤを悲しませる。
 笹はカガヤが心配してくれているのがよく伝わっていた。
 そっと、カガヤの手を握るのだった。
「わたくしは大丈夫ですわよ」
 笹の言葉にカガヤは「それだけじゃダメなんだ」と呟いた。
 少し離れた所に座敷童風の女の子がいて、こちらを見ていることに笹は気が付く。
 特に何か声をかけてくるわけではなかったので、気にはしなかった。
 拝礼を終えて絵馬を購入する。
 絵馬にお祈りを書くスペースとして、長机が置いてある場所があった。
 色とりどりのペンが用意されていて、賑やかな色彩で願いが書けそうである。
 しばらくペンを回しながら考えていたカガヤは、閃いていう。
「俺は……笹ちゃんと契約した時の約束果たせてないじゃん……。
 力を貸してもらう代わりに、守るって約束だったのにな……。
 絵馬に書く内容……、決まったな」
 大きく力強い文字で絵馬に願いを書いていく。
 笹へ絵馬に書いた文字を見せる。
 そこには、
『笹ちゃんに怪我をさせたくない。強くなる』
 と、書かれていた。
「笹ちゃんを悲しませないように力を付けるから! 見ててよ!」
 カガヤの思いが詰まった絵馬のできあがりである。
「……そんな目標にされたらやらざるを得ませんね」
 絵馬にすらすらと文字を書いていく笹。書くことは決まっているようだ。
 書き終わるとカガヤに見せた。
『お料理をうまくなりたい!』
 絵馬の文字を見てカガヤのテンションが上がる。
「え、ほんと!? やったー! 楽しみにしているね!」
「支えとは戦いの中だけではないと思うのです。
 なので、カガヤに元気でいて欲しいので、今年はお料理を頑張りたいです。
 こちらこそ見ていてください!」
 小さくこぶしを握り、笹は呟くようにいった。
「クリスマスの汚名返上です。それにカガヤが望んでいるなら……」
 お互いのためを思った絵馬を仲良く飾った。
 沢山ある絵馬の中でも、カガヤの力強い文字はよく目立っている。
 その横に笹の絵馬が寄り添うようにあった。


 新年会で一通り新年の挨拶を終えて、席に着くかのんと天藍。
 職員が甘酒の他にお屠蘇を運んでいたのでもらった。
「お酌します?」
「ありがとう」
 お酌を交わしてお屠蘇を頂く。ほどよくお燗された日本酒が口の中に広がり、米の甘さがうまかった。
 おせちや雑煮を食べながら新年会を楽しむのだった。

 会場を後にして二人が来たのは近くの神社だ。
 折角なので参拝に来ている。先ほどから後を付けてくるように座敷童風の女の子がトコトコと歩いている。
 特に声をかけてくる様子はないので、そっとしている。
「会場の外は冷えますね」
「冬だからな。こうすれば、少しは暖かいだろ」
 神社の階段に差しかかると、天藍がかのんの手を握る。
「いつもありがとうございます」
 笑顔でかのんがいうと、天藍は嬉しそうに笑った。
 大きな鳥居は赤い漆で塗り上げられている。鳥居をくぐると参拝客がちらほらと見える。
 作法を気にする人がいれば、我流でお祈りをする人まで色々だ。 かのんと天藍は並んで賽銭を投げて、お祈りをする。
「かのんは何をお祈りしたんだ?」
「天藍と私、二人とも依頼と本業がつつがなく、順調に一年過ごせますようにってお祈りしました。天藍は?」
「大過なく過ごせるように。お祈りというよりは、心構えをこの場で誓ったんだ」
 拝礼を終えた二人は、絵馬を書くことになった。
「さて、何を書こうか」
「私は書くこと決めていますよ」
「早いな。そうだな……、じゃあ、俺は……」
 絵馬に文字を書いていく二人。
『天藍が依頼で怪我などをしませんように』
 かのんが書いた絵馬にはそう書かれていた。
『笑顔で過ごせるように』
 天藍の絵馬はシンプルな文面が書かれている。
「書けましたよ、ほら」
 天藍に書いた絵馬を見せるかのん。
「怪我をしないのが俺だけじゃ困るぞ」
 そう言うと、天藍はかのんの絵馬に文字を足す。
『かのんと天藍の二人が依頼で怪我などをしませんように』
「俺一人だけの無事を祈願しても意味がないからな」
 天藍の言葉にかのんは笑みを浮かべて「そうでしたね」といった。
 天藍の表情も優しい。
「天藍はなんて書いたんですか?」
「俺か」
 絵馬を見せるとシンプルな願いが書かれている。
「笑顔ですか。今年も笑顔一杯で過ごせるといいですね」
「ああ、お互いにな」
 天藍は文章には書いていないが、願いはかのんを念頭に置いて書いている。
 かのんの笑顔が絶えない一年にしたいと願ったのだ。
 絵馬を仲良く飾ると、二人は沢山納められている絵馬を眺めていく。
「みんな、色々な願いがあるんですね」
「俺たち以外のウィンクルムも新年会の帰りにここに寄っているみたいだ。みんなの祈りが届くといいな」
「お互い怪我がない一年にしましょうね」
「笑顔も忘れるなよ」
 二人は優しい表情で見つめ合った。
 離れた所から座敷童風の女の子が、目をキラキラさせながら二人を見ていた。何かをメモするとトテトテと歩いて神社の外に出て行った。


 新年ということで気持ちも新たにして、新年会に参加することにしたミヤ・カルディナ。
 新年会にユウキ・アヤトを誘ったところ、いつもと違ってすんなりと同行してくれた。
 道中、ミヤがアヤトに聞く。
「面倒くさがると思っていたのに、意外とすんなりOKしてくれたね」
「別に、気まぐれだよ」
 アヤトはクールに返す。
 去年、数件の依頼をこなしたことで、アヤトにも真剣な気持ちが芽生え始めていた。
 ウィンクルムとして、ミヤの誘いにもなるべくのっていこうと考えている。
 考えてはいるが、言葉にはまだ出来ない。
「……何かあったの?」
 挙動が怪しいアヤトを心配してミヤが声をかけた。
「なんでもないって」
 アヤトはぶっきらぼうに言った後、もう少し言い方があるだろうと反省する。
(俺のこと心配してくれるのか)
 アヤトはミヤの気遣いに和んでいた。
(それよりも、ミヤの和服姿が眩しい!
 可愛いを通り越して、美しい!)
 ミヤのことを絶賛したい気持ちがあるが、恥ずかしさから反対の言葉が出てしまう。
「馬子にも衣装だな」
「もう、失礼ね」
 ミヤは朱色を基調とした仙水柄の振袖を着ている。仙水は冬の花の代名詞。この季節にふさわしい。
 藤黄の帯が美しく、公の場に出るのにふさわしい格好だ。
「竹刀はどうしたよ」
「こんな日に竹刀なんて持ち歩かないわよ」
 アヤトは思っている事が口に出せず、脳内反省会をしていた。

 新年会で挨拶をして回った後、おせちを頂く二人。
 隣に座るミヤに、アヤトはついつい視線が向いてしまう。
(チラチラと見てしまうな。ドキリとするよ、これは……)
 ミヤと視線が合って、アヤトはとっさに何か喋らないとと口を開く。
「あー、そういえば、この紅白かまぼこっておせちの定番だよな」
「これはね、かまぼこが日の出を象徴してて、元旦には必要なものなのよ。
 紅はめでたさ、白は神聖を表しているんですって」
 丁寧に回答が返ってきて、アヤトは丁度箸で摘まんでいた栗きんとんについても興味がわく。
「じゃあ、この栗きんとんにもなにか言われがあるのか?」
「栗きんとんは、黄金色でしょ。財宝に例えられていて、豊かな一年を願っているのよ。
 ついでに言うと、栗は山の幸の代表で、『勝ち栗』なんて言われたりするの。ウィンクルム向きの食べ物だと思わない?」
「へー、物知りだな」
 ミヤの知識の幅広さにアヤトは驚いていた。

 新年会の会場を後にして、近くの神社に参拝に来ている。
 ミヤから拝殿作法を聞きながら二人でお祈りをする。
「お賽銭の額に決まりはないのよ」
「お賽銭って縁起に引っかけて千Jr(縁充)かと思ってた」
「ふふっ、そんなわけないじゃない。だってお金が発明される前に神様はいらっしゃるでしょう?」
 ミヤはにこやかな表情でいった。
「ははは、確かに神様の方が昔からいるもんな」
 座敷童風の女の子が新年会の会場からずっとついてきている。
 ミヤはアヤトに「ちょっと待ってて」といい、出店でお菓子を買ってくる。
「童子ちゃんにもおすそ分けです」
 笑顔でお菓子を差し出すミヤに「ありがとうございます」と笑顔一杯でお礼を言う童子。
 監視役だが、素直で純粋なのだ。
 ミヤはアヤトの元に戻ると、絵馬を一緒に購入した。
 絵馬にミヤは次のように書く。
『アヤトの健康と無事』
 アヤトの方は、
『実力を付けてオーガを倒す』
 と記した。
 ミヤが何を書いたのかアヤトは気になってのぞき込む。
「俺のこと書いてたのか……」
「あっ、見ちゃダメぇ」
 焦るミヤにどうリアクションしていいか、アヤトは笑っているしかなかった。
 二人で絵馬を飾っていると、童子がメモをとって神社から去って行った。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 和歌祭 麒麟
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 01月01日
出発日 01月08日 00:00
予定納品日 01月18日

参加者

会議室

  • [6]ミヤ・カルディナ

    2015/01/07-14:54 

    あけましておめでとうございます。
    本年もどうぞよろしくお願いします。

    ミヤ・カルディナとユウキ・アヤトです。
    新たな年を迎えて気持ちも引き締まりますね。
    皆様とお会いできますことを楽しみにしております。

  • 明けましておめでとう。
    私はジゼルでこっちはヘルムート。
    よろしく。

  • [4]かのん

    2015/01/04-21:07 

  • [3]かのん

    2015/01/04-21:07 

    笹さんとハロルドさんはお久しぶり
    ミヤさんとジゼルさんははじめまして
    絵馬には何を書きましょうか・・・考えるのも楽しいですね
    では改めまして

  • [2]手屋 笹

    2015/01/04-17:24 

    手屋 笹です。

    ミヤさん、ジゼルさんは初めましてよろしくお願いします。

    改めましてあけましておめでとうございます。
    本年もよろしくお願いします。

    新年会も参拝も楽しめると良いですね

  • [1]ハロルド

    2015/01/04-03:30 


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