それぞれの時間(上澤そら マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

●今日は一人で
 晴れた冬の一日。
 特にA.R.O.Aでの依頼を受けているわけでもない。
 神人、精霊というわけでない、個人の時間。

 いつだって、神人と精霊がベッタリ一緒にいるわけでもない。
 いや勿論、いつも一緒にいるウィンクルムもいることだろう。
 しかしそんな2人にだって、それぞれの時間もあるだろう。

 とある神人は、依頼がない日は家業を手伝う。
 彼の家はパン屋さん。彼が店に立てばいつもよりお客が増える。

 とあるテイルスは、予定がない日は森へ出かける。
 自然を感じ、川のせせらぎを感じながらボーっとするのが癒しの時間なのだろう。

 とある神人は、家でシルバーアクセサリーを作る。
 趣味レベルなのだが、もうすぐ誕生日である精霊のために時間を作っては没頭する。

 とあるディアボロは、本屋へ向かう。
 いつも真面目そうな彼だが、今日は大好きなアイドルの写真集の発売日らしい。

 とある神人は剣の稽古をする。
 いつまでも精霊に甘えないように、少しでも役に立てるようにと思いながら剣を振るう。

 とあるファータは映画を見に行く。
 ラブロマンスはパートナーが苦手らしい。気の合う友人と映画を見に行く。

 戦闘を忘れ。任務を忘れ。
 いつもと変わらない日々。
 貴方は、どんな一日を過ごしていますか?

解説

●流れ
神人と精霊のそれぞれの日常を描きます。
神人さんとウィンクルムさん、リザルト上では出会いません。
でも顔を思い浮かべてニヤニヤする、などでしたら可能です。

●注意
家から出ない!なプランではなく、お外に出ると
他のウィンクルムさんに出会う可能性があります。
絶対に出会うわけでもありませんが、絡みたくない!ロンリーウルフ!な方は
【絡み不可】とお書きください。

アドリブを入れたがる傾向があります。
「キャラ壊すなや!」な方は【アドリブ不可】とお書きください。

過去のリザルトは記載いただいても参照できない可能性がありますので
ご了承ください。

そして、世界観を逸脱したり、NPCに対する行為は
マスタリング対象となりますのでご了承ください。


「俺、いつも一人でデミオーガ倒しってからー」
「ライくんを肉で餌付けする」

そして、生活費として一組300Jr頂戴いたします。
注意多く申し訳ございませんが、どうか良き一日をお過ごしください。

ゲームマスターより

お世話になっております、相変わらずのヘッポコ上澤そらです。

ぜひ皆様の日常を掘り下げていただきたくっ。
自分の精霊との時間は作れない、という制約はありますが
仲良しさんいましたら神人同士で精霊のことをツマミにご飯食べに行ったり、とか
そういうのはオッケィです。

ジャンルはロマンスですが、内容によってはコメディだったりシリアスだったり、
サスペンスだったり。

日付けは特に限定なく「ある冬の日」です。

注意が色々あって申し訳ないですが、ご参加お待ちしております。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

信城いつき(レーゲン)

  ご近所さん達からもらった野菜は晩ご飯で使い切れるぞ(得意げ)
あと林檎はアップルパイにしてお礼がわりにお裾分け
レーゲンは別に焼き林檎用意。帰ったら一緒に食べよう

お裾分けしてたら、他からも声かけられておかずやら野菜とか色々もらってしまった
…うん、確かに任務とか頑張ってるけど
なんで俺の場合「こんなに小さいのに」って言われるのかな?やっぱり身長?

野菜増えた…でも気遣ってくれるのは嬉しい
よし、これで野菜たっぷりカレー作ろう
一杯作って保存すれば、忙しい時でもすぐご飯できるしね
おかずもしっかり食べて大きくなろう

みんなが優しくしてくれるから俺も、頑張れるんだ
レーゲンも早く帰ってこないかな。今日の事話したいよ



栗花落 雨佳(アルヴァード=ヴィスナー)
  枕元で鳴る目覚を止めてもまだどこかで鳴る
もそもそと起き隅に置かれた時計を止め、もう一度ベッドに入ろうとした所で別の所から音
部屋の反対側の時計を止め【起きろ遅刻魔】と書かれたメモを手にとって苦笑
リビングに降りれば、テーブルに置かれたサンドイッチと保温鍋に入れられたコーンスープ
【しっかり食べて出ること】
メモに返事をしてもそもそと食べ始める
食べ終わった皿を片付け、学校に行く支度
冷蔵庫のホワイトボードに【弁当入ってる】
弁当箱を取り出して玄関へ

教授からのセクハラにも気付かず、一日を創作活動に費やす
気付けば昼時間は遠に過ぎ、遅めの昼食食堂のレンジで温めて食べる

夕方にはふらふら街を散策して帰宅



瑪瑙 瑠璃(瑪瑙 珊瑚)
  昨日まで何の予定も入れていなかったのになぜこうなった。

お婆様に誘われ、スノボーの競争相手として付き合う事に。
よって、今はスキー場にいます。

といってもスノボーは年に1度しか滑りません。
なので、最初はウォーミングアップをさせて下さい。
緩い坂から徐々に急な坂へと体を慣らしますので、
一緒に滑るのはそれからでいいですか?
(スポーツスキル使用)

不思議だ。お婆様と競っているのにふと考えるのは珊瑚の事。
(まだ、珊瑚と競争した方が楽しかったかもしれないな)
そういえばあいつ(珊瑚)、
今頃、女の子をナンパするのに躍起になっているんだろうな。

どちらにしろ、珊瑚にはお土産を買っていかないとな。
きっと、喜んでくれるはず。



フラル(サウセ)
  特に予定のない休日。
近くの店をいくつか回って、買い物をしてこよう。

買うものは、新しいマグカップ、マフラー、紅茶の葉。
雑貨屋と紅茶の専門店を覗いてみよう。

マグカップは自分が使っているものが先日割れてしまった。
シンプルで、丈夫そうなものを選ぶかな。

マフラーは、そろそろ新しいのが欲しい。
青いのを見てみよう。

紅茶はセイロンにしてみるか。

一通り必要なものを買い揃えたら帰宅しよう。

途中、ケーキ屋が目に止まった。
サウセは甘いものが好きだから、土産で買っていったら喜ぶかな。
ケーキを2つ買って帰ろう。
あいつも今日は外に出ているから、帰ったら温かい紅茶も淹れて、まったりするか。


明智珠樹(千亞)
  ド変態の朝は早い。
身支度を整え、新聞を読みながらトーストとコーヒーで朝ご飯。
ルームシェアをしている千亞は今日は学校がない。
予定もないのですぐには起きないだろう。
洗濯や掃除を済ませ、趣味のコスプレ制作に勤しめばお昼。

昼も簡単に済ませ。
まだ起きない千亞にもご飯を用意し、冷蔵庫へ。

「お散歩してきます。ゆっくりお過ごしください
 ご飯は冷蔵庫の中です 貴方のたまちゃん」

街へ出て、フラフラした後、行きつけの薔薇園へ。
この季節だからか人は少ない。

記憶をなくし気づいたら、この小さな薔薇園で薔薇に囲まれていた。
来たところで記憶は戻らない。
だが来ると落ち着く。

花屋で千亞にピンクのシクラメンをお土産に購入し帰宅。


●雪と共に
 朝も早く。瑪瑙 瑠璃はスノボを担ぎ家から出た。
 昨日までは何も予定がなかったが、急な家族からの呼び出しにより雪山に向かうことになったのだ。
 途中、まだ開店前のトラットリアの前を通れば、見覚えのあるディアボロ、アルヴァードが店の前の掃除をしているのを見つけた。
 彼に会釈をし、瑠璃は旅立っていった。

 雪山に着き、スノボウェアを着用する瑠璃。
 スノボは初めてではないが、滑るのは年に一回程度だ。
 久々の雪に慣れるために、瑠璃は家族へウォーミングアップを願い出た。

 緩い坂から始め、段々と急な坂へ。
 初めてのスノボではないのと、スポーツ神経もあるため勘は徐々に取り戻されていく。
 小一時間程のウォーミングアップの後、彼は家族とスノボ勝負を始めた。

 雪山に慣れた家族とのスノボ勝負は真剣そのもの。
 しかし心地よい風と舞い散る雪に勝負も忘れ、色んな思いが巡る。
(不思議だ)
 真剣勝負の最中だが、思い浮かぶのはパートナーの珊瑚のこと。
(まだ珊瑚と競争した方が楽しかったかもしれないな)
 珊瑚は瑠璃とは真逆に、常夏の島へ出かけているのだ。
(きっと今頃、女の子をナンパするのに躍起になっているんだろうな)
 そんな姿は容易に思い浮かぶ。
(どちらにしろ、珊瑚にはお土産を買っていかないとな。きっと、喜んでくれるはず)
 珊瑚の笑顔を思い浮かべれば、普段クールな瑠璃の口元に笑みが浮かぶ。
 家族は彼の笑みを余裕の笑みと受け取ったのか、更にスピードを上げていった。
 彼らの勝負の行方は、まだまだ雪の中に。


●母心と共に
 まだ日も登りきらぬ早朝。
 キッチンからトントントン……とリズミカルな音が聞こえる。
 手際よく包丁を動かしているのはアルヴァード=ヴィスナー。
 栗花落 雨佳のパートナーである。
 毎日のことで慣れた作業なのだろう。
 朝食を作り上げ、お弁当を仕上げ。それぞれにメモを貼る。
 冷蔵庫やテーブル、そして雨佳の枕元の目覚まし時計。
 深い睡眠に陥っている雨佳は多少の物音でも起きる気配がない。
 自身も出かける準備をし、最後に玄関に『鍵はちゃんと閉める事』とメモを張り。
 ドアの鍵を再度確認し、彼はまだ寒い世界へと出ていった。

 彼はトラットリアのシェフとして働いている。
 幼い頃からその店で進んで手伝いをし、実力が認められ今や立派なシェフ。
 一見偉そうにも見えるその容姿に反発する者もいたが、彼の仕事ぶりや仕事の姿勢を見れば誰よりも真剣なことがわかる。
 今や、立派な大黒柱だ。
 アルヴァードは誰よりも早く店に着き、店の外、店の中と掃除を始める。
 一通り終え、ピカピカに磨かれた厨房。その中で瞳を閉じ精神集中。
(あいつ、今日はちゃんと起きれてるだろうか。流石に目覚まし三段階、これで起きなければ四つ目の購入を検討だ)
 浮かぶの雨佳のことばかりけり。
(朝食をちゃんと食べて、皿を片付けただろうか。弁当忘れてないか、鍵はかけたか……)
 なんとも母心満載のアルヴァード。結局精神統一タイムは雨佳心配タイムなわけで。
「アル坊、眉間に皺寄ってるぞ」
 声をかけられ振り向けば、この店のオーナーが笑っていた。
 オーナーの後ろには見覚えのある長身青髪青年、レーゲン。
 話を聞けば、店の壊れた時計の修理が完了し届けに来たようだ。礼を伝えるとレーゲンは微笑みを浮かべた。

 昨夜の仕込みを確認し、いよいよランチタイムが始まる。
 途切れることなく訪れる客に、怒涛のオーダー。
 アルヴァードは正確に指示を出し、己も腕を振るう。
 無事にランチタイムが終わったところで、すぐに休憩を得られるわけではない。まずは店の者の賄作り。
 これがあるからどんなにハードでも働ける、と店員達は大絶賛だ。

 それが終わり、やっと自身の休憩が始める。ディナータイムまでの束の間の休息。
 少しの仮眠を取り、アルヴァードはディナータイムのために英気を養った。
「雨佳、ちゃんと飯食え……」
 そんな寝言を呟きながら。
 

●修理と共に
 信城いつきの精霊であるレーゲン。彼は街の時計屋で修理の仕事を手伝っている。
 修理の勉強もでき、報酬も出る。願ったり叶ったりの話だった。
 修理は勿論のこと、人当たりが良く優しい笑みを浮かべるレーゲンは、ネジや工具などの買い出しから、修理品のお届けなども担当している。
 早めに修理が完成した時計を持って、近くのトラットリアへ。
 開店前の店の中には、ディアボロ青年アルヴァードがおり、驚きつつも挨拶を。

 無事にお届けも完了。
 以前なら真っ直ぐに仕事場に戻っていたが、
(以前いつきと通った道だな)
 花屋の前を通ると、黒髪で右目を隠した男性が花を買っているのを見た。
 それを見て、アロマキャンドルの香りをいつきと楽しんだことを思い出す。
 クリスマス、雑貨屋で二人で買い物をしたこと。素敵なプレゼントをもらったこと。
 たくさんの思い出が蘇っていく。
「あら、レーゲンさん」
 思い出に浸っていると突然名前を呼ばれ。振り返れば近所の奥さんがいた。
「いつき君にお裾分けもらったのよ、いつもありがとうねぇ。本当に良い子だわ」
(自分を褒められる以上に嬉しいものだね)
 とレーゲンの笑みが深まった。

 思えば、一年ずっといつきのことで頭がいっぱいだったな、と思う。
(仕事が終わったら、どこか新しいお店に入ってみようかな)
 歩きながら周りをみれば、スポーツ用品店が目に入った。
 最近、体を鍛えたいと言っているいつき。後で寄ってみて、教えてあげよう。
 いいお土産話がきっとできるハズ、と自然に顔が綻ぶ。
 きっといつきは、わくわくした顔で聞いてくれるだろうから。
(あれ?まだいつきの事考えてる)
 相変わらず頭の中は彼と過ごす日々でいっぱい。
(まぁ、いいか)
 いつきと共に、自分の時間はあるのだから。

●花と共に
 ド変態の朝は早い。
 明智珠樹は目を覚ますと、身支度を整え自室を出た。
 彼の精霊である千亞とはルームシェアをしているが、彼は今日は学校が休み。
 起きてくるのは遅いだろう。いつものことである。
 トースターにパンをセットし、コーヒーを淹れる。
 新聞に目を通しながらの朝食タイム。
 それが済めば掃除に洗濯、と家事をこなし、更に趣味のコスプレ衣装作りに勤しむ。
「おや」
 気づけば、もうお昼。しかし千亞は顔を出してこない。
「お寝坊なウサギさんですね、ふふ」
 楽しげに鼻歌を歌いながらフリルのエプロンをつけ、昼食を二人分用意する。
 昼食をサクッと食べ終え、千亞用は冷蔵庫へ。
『お散歩してきます。ゆっくりお過ごしください。ご飯は冷蔵庫の中です。貴方のたまちゃん』
 メモ書きを残し、珠樹は出掛ける支度をした。

 冬の寒い一日、しかし日差しがあり穏やかだ。
 珠樹はいつものお散歩コースを歩く。
 そして一件の紅茶店の前で足を止めた。
 中に中性的な眼鏡美青年がいるな、と思えばそれはフラルだった。
 彼は紅茶派か、と思うと共に千亞も紅茶派であったことを思い出した。
 
 そして珠樹が辿り着いたのは、小さな薔薇園。
 冬と言う季節だからか薔薇の姿は極まばらで、人も少ない。
 一人、ベンチに座る珠樹。
 彼の記憶は曖昧だ。思い出そうとしても思い出せないことが多々ある。
 記憶の始まりはこの薔薇園。
 気づいたら珠樹はこの薔薇園で薔薇に囲まれていたのだ。

 この地に戻ってきた所で、一向に記憶は蘇らない。
 しかし来れば心が落ち着く、彼の小さな故郷でもある。

 いつのまにか、街は夕暮れてきた。
 珠樹は帰りに寄った花屋でピンクのシクラメンを購入した。それは千亞へのプレゼント。
 はにかみ、や内気といった花言葉のピンクのシクラメンは、千亞の瞳のような色で咲き誇っていた。


●買い物と共に
 特に予定もない休日。
 フラルは何をして過ごそうか、と考える。
 中性的で端正な容姿、華奢に見えるが、見る人が見れば彼の内側に男らしい強さがあることを感じるだろう。
 部屋の中を見回し、フラルはそういえば、と思い出す。
(こないだ、マグカップを割ってしまったんだよな)
 フラルは腰を上げ、出掛ける支度を始めた。 

 まず向かったのは近くの雑貨屋。先日はサウセと来たが、今日は一人だ。
 クリスマスの装飾はなくなった店内だが、今日も人で賑わっている。
 ついサウセの姿を探してしまいそうになるのをこらえ、マグカップを探した。
(シンプルで、丈夫そうなものがいいかな……)
 いくつかのマグカップを見比べる、メタルフレームの眼鏡の奥の眼差しは真剣そのものだ。
(よし、これにしよう)
 一つのマグカップを選び出す。一見普通のマグカップだが、底にむむっとした犬のイラストが描かれている。
 飲んでいる自分には見えないが向かいの相手には可愛いイラストが見えるだろう。
(あと欲しかったのは……マフラー、だな)
 同じ雑貨屋でマフラーも物色する。
 肌触りがよく、青色のグラデーションが美しいマフラーが気に入り、フラルはそれもカゴに入れた。

 雑貨屋を出て次に向かったのは紅茶の専門店。
 クリスマスに貰ったコーヒーと紅茶の詰め合わせが気に入り、いくつかの紅茶の香りを比べ、セイロンティーを購入する。
(またサウセと一緒に楽しもう)
 自然と笑みがこぼれた。

 あっという間にあたりは夕暮れ。
 家へ帰宅しようとする途中、ケーキ屋を通りかかると兎少年、千亞を見かけた。
 彼もフラルに気付き、笑顔を見せる。
(サウセも甘いもの好きだし……お土産買っていくか)
 店内では千亞がオススメ!というプリンを二つ購入。
 家に帰ったら紅茶を淹れ、二人でまったりとした夜を過ごそう。
 フラルはご機嫌でケーキ屋を後にした。 


●ケーキと共に
 普段は大学に通う白兎のテイルス、千亞。
 今日は学校はお休み。昼まで眠っていたお寝坊さんだ。
 目は覚ましたものの、布団でゴロゴロダラダラと過ごす千亞。
(今日は学校ないし、珠樹もいないし、平和だぁ……)
 平穏を噛みしめゴロゴロしても、やはりお腹は空くもので。
 自室を出れば、珠樹からのメッセージ。
「何が『貴方の』だ」
 そう呟くも、その表情は楽しげだ。
 有難く昼食をいただき、今日はどう過ごそうかと考えを巡らす。
(あ、そういえば最近、お気に入りのカフェ行ってなかったな。久々に行ってみよっと)

 千亞は早速、行きつけのカフェへ。
 女性向けの店内はそれなりに混んでいたが、お気に入りの窓際の席は空いていた。
 ケーキの販売もされているこのお店、千亞はショーケースを見て瞳を輝かす。
(あぁ、どれも美味しそう……!)
 傍から見れば女の子が一人カフェに来ているように見えよう。
 悩む千亞に店員が。
「新作のチョコレートムースケーキ、オススメですよ」
「え?新作!?それじゃあ、此方と紅茶をお願いします」
 千亞の可愛らしい笑みに店員も微笑んだ。

 テーブルから外を見ると、窓の外に艶々漆黒ショートカットな青年、雨佳が歩いていくのが見えた。
 黒髪繋がりで珠樹の顔が思い浮かぶ。
(そういや珠樹、たまにフラッといなくなるけど、どこ行ってるんだろ?……聞いたところで誤魔化されるんだろうけど、な)
「お待たせしました」
 と店員が来れば、ケーキに意識が集中する千亞だった。

 いただきます、とフォークを入れれば、滑らかなムースの感触が伝わる。
 口に運んだ瞬間にチョコのコクが口中に広がる。
(あぁあ、美味しいっ)
 うっとりする白兎、こんな表情を見られれば作った方も幸せだろう。

「美味しかったです、ご馳走様でした!」
 お会計をしようとし
(ここのプリン、あいつ美味しいって言ってたよな)
 と珠樹の顔が浮かぶ。
「あ、お土産でプリン2つ、お願いします!」
 ……どうやら自分も家で食べるようである。


●絵画と共に
 ジリリリリリ……
 頭の片隅に煩い音が紛れ込んでくる。
 栗花落 雨佳は無意識に手を伸ばし、音源を叩く。するとまた他方からジャンジャンと激しい音。
「うぅん……」
 と低い呻き声を上げ、うっすら目を開けた雨佳は更に手を伸ばし、二つ目の目覚まし時計を叩いた。
 そしてまた暖かな布団に潜り込み、目を閉じる。
 すると、どごーん!どぎゃーん!と煩い音が更に響く。しかも部屋のドア付近。
 仕方なく雨佳はのそのそ起き出し、三つ目の目覚ましを止めた。
 ご丁寧に『起きろ遅刻魔』と彼の精霊、アルヴァードのメモが張ってある。
 苦笑しつつ、また布団に入りたくなる衝動を抑え。
 雨佳は傍らに置いてあった眼鏡をかけ、身支度を整えた。

 リビングに下りれば、次のメモを発見する。
 『しっかり食べて出ること』
 メモの空いたスペースに「ありがとう」と返事を書く。
 そしてテーブルの上にあるサンドイッチをつまんだ。
 しっかり焼かれたベーコンにレタス、目玉焼き。絶妙な焼き具合、味付けだ。
 保温鍋にはコーンスープ。
 寒い朝には有難く、またアルヴァード特製なため味も格別だ。
 普段言われてる通りに、食べ終わって空いた皿や器を水に漬け置いた。
 学校へ向かう準備を終え、家を出ようとし……冷蔵庫のホワイトボードを思い出した。
 『弁当入ってる』
 危ない危ない、と思いつつアルヴァードお手製のお弁当を携え、雨佳は家を出た。
 最後のメモ「鍵はちゃんと閉めること」の約束を守って。

 雨佳は今、美大に通う一年生である。
 絵の才能があることは勿論、儚げな容姿、睫毛が長くアンニュイで、浮世離れした美しさに彼は学内でも噂になっている。
 しかし当の本人はぼんやりとし、絵を描く以外に興味はないようで。
「絵の才能だけではやっていけないぞ。そのために必要なのは、コネだ」
 下品に笑う教授に肩を触られようとも、雨佳は描くことに夢中。
 雨佳の才能を慕う者たちに引き離されていった。

 そんなやりとりが繰り広げられていることにすら気づかず、雨佳は絵に没頭する。
 気付けば時間は既に昼を遠に過ぎていた。
 持参したお弁当を温め直し、人が少ない食堂でモグモグと食べる。
 そしてまた絵画に没頭するのだ。

 すっかり夕暮れてきた街。アルヴァードの帰りは遅いので、しばし街をふらつく。
 すると見覚えのある小柄な少年、いつきを見つけた。
 彼はたくさんの野菜を抱え、急いでいた。
(きっと今頃、アルは休憩中かな)
 野菜に囲まれ眠るアルを想像し、想像に笑みが浮かぶ雨佳だった。


●林檎と共に
「よぉし、焼けたっ!」
 信城 いつきは自宅のキッチンのオーブンの扉を開ける。
 中から甘い香りと香ばしくキツネ色に焼きあがったアップルパイを取り出した。
 粗熱を取りつつ、冷蔵庫を確認する。
(ご近所さん達からもらった野菜は晩ご飯で使い切れるぞ)
 いつきは得意げに胸を張る。
 そしてアップルパイを切り分け、ラッピングを施せば。
「完成!」
 美味しいアップルパイに最高の笑顔を携えて、いつきは冬の街へと飛び出した。

「あらあら、いただいていいの?」
 野菜を分けてくれた近所のおばちゃんに、お返しのパイを渡せば満面の笑みを浮かべてくれた。
「勿論だよ!お口に合えばいいな」
 いつきのニコニコ笑顔におばちゃんメロメロ。
「あ、そうそう。作りすぎちゃったから、よかったら持って行って」
 そう言うと、おばちゃんはタッパーに入れたサーモンのマリネを渡してきた。
「いつき君はこんなに小さいのによく頑張ってるねぇ。それに比べてうちの息子なんて……」
 世間話にも嫌な顔をせず興味を持って聞いてくれる彼は、ご近所さんのアイドルになるのは当然で。

(あれ、なんか……出掛ける前より荷物多くなってない!?)
 ご近所さんにパイを配り歩けば、いつの間にか手にはたくさんの野菜やおかず達。
 一生懸命に荷物を運ぶ途中、公園にお菓子の移動販売車がいるのに気付いた。
 気になるけど、また今度……と思えば、見覚えのある仮面の男性、サウセの姿を見つける。
 甘いもの好きなのかな?と意外な一面を見つけたようで、自然に笑顔になる 

 いつきは帰宅すると荷物を並べる。
(確かに任務とか頑張っているけどなんでこんなに「こんなに小さいのに」って言われちゃうんだろ?)
 腕組みをし、考え込むいつき。
(……やっぱり身長のせいかな?……でも、そうやって気遣ってくれたり、労ってくれるのって嬉しいことだよね)
 目の前に並べた野菜やおかずを前に、にっこりと笑む。
(よし、今日は野菜たっぷりカレーを作ろう!いっぱい作って保存すれば、忙しい時でも食べられるし!)
 いつきは腕まくりをし、エプロンを手に取った。
(おかずもしっかり食べて、レーゲンみたいにおっきくなるぞー!)
 
 カレーを作った後、いつきはハチミツ、バターを入れたりんごをオーブンへ。
 レーゲンのために焼き林檎を用意する。
(みんなが優しくしてくれるから俺も、頑張れるんだ。レーゲンも早く帰ってこないかな。今日の事話したいよ)
 オーブンの中に目をやりつつ、頭はレーゲンでいっぱいのいつきだった。


●本と共に
「いってらっしゃい」
 サウセはルームシェアをしているパートナー、フラルの後ろ姿を見届けた。
 フラルは外へ買い物へと出掛けたため、家には一人きりとなる。
 普段、人前では絶対はずさない仮面をそっと外してみる。そして鏡に映る自分の姿を見て考える。
(少しは、表情も増えてきたでしょうか)
 だとしたら、それはフラルのお陰。そう思い、彼はまた仮面を着ける。
(さて、今日はどうしましょう)
 候補に上がったのは、いつも行く図書館。
(新しい資料が入っていればいいのですが)
 そう思いながら、出掛ける支度を始めた。

 大きな公園が併設された図書館。
 図書館自体、大きい造りだがその分スペースも広く、周りが気にならないのがサウセのお気に入りの理由だ。
 真っ先に向かったのは新着資料のコーナー。
 興味を持っている天文学の本や資料がないかをチェックする。
 もう既に置いてある本や資料はあらかた読破している。
 新着がなければ以前読んだものをまた読めば、新しい発見もあるのでそれはそれで有意義な時間となるが……
(あ、新しい本がありますね)
 新着の本を手に取り、席へ腰かけた。
 分厚いその本は、一日では読み切れないだろう。
 目次を見、気になる分野から読み始めていくことにした。
 目新しい内容や気になる点は丁寧にメモを取る。
 興味のある天文学の本に没頭すれば時間はどんどん過ぎていく。
 あたりが夕暮れに近づく気配を感じ、サウセは今日の読書を中断し、本を棚へと戻した。

 彼が家へ帰ろうとすると、一台の移動販売車が目に止まった。
 どうやらお菓子の移動販売車なようだ。
『南の島の名物お菓子』と旗が出ている。
 サウセは甘いものが好きだが、フラルは甘すぎるものは得意ではない。
「お兄ちゃん、試食どう?」
 車に近寄れば、愛想のいい店員がサウセにクッキーのかけらを渡す。
 口に入れ味わうと、甘さ控えめ、しかし黒糖のコクがしっかりで美味しい。
(これならきっとフラルさんも食べられるだろう。喜んでくれるといいな)
 一袋のクッキーと共に、サウセは家へと急いだ。


●夢と共に
 瑪瑙 珊瑚はホテル内のベッドに寝転んでいた。
 彼は常夏の島へ一人、帰郷しに来ている。
 既に日は暮れ、あたりは闇の世界だ。

 昼間は海でサーフィン三昧。
 珊瑚の中では、華麗なるサーフィン姿で可愛い女の子をク・ギ・ヅ・ケ★の予定だったのだが……
「ちゅらかーぎーなんて、どこにいるんやっさあああ!」
 残念!美人な女性どころか、見回せばお年寄りばかり。
 それはそれで若くてカッコいい珊瑚の姿と泳ぎに見惚れてはいるのだが、いかんせんご老人にトキメキを与えに来たわけではない。
「ああ畜生!もう寝る!」
 窓から見える、真っ暗な海はまるで深海のよう。
 静かだが規則的に聞こえてくる波の音を子守唄に、珊瑚はいつの間にか眠りについた。
 そして、夢を見た。

『珊瑚……珊瑚……』
 誰かが珊瑚を呼ぶ。薄らと目を開けると珊瑚とよく似た男が珊瑚の手を取る。
『珊瑚、ここにいたのですね』
 そう言うと男の目から涙が溢れ、横たわる珊瑚の身体をそっと抱きしめた。

「っ!?」
 珊瑚がハッと目を覚ます。身を起こせば夢に出てきた男は勿論いない。
「何だったんだ、今の……」
 己の姿は寝汗でびっしょり。
(明日は荷造りをしてここを出ようっ。こんなホテル、二度と泊まりたくねぇぞっ)
 そして珊瑚はまた眠りの世界へと落ちていく。
 次の眠りは、きっと安らかだろう。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


( イラストレーター: 九廸じゃく  )


エピソード情報

マスター 上澤そら
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 12月27日
出発日 01月03日 00:00
予定納品日 01月13日

参加者

会議室

  • [7]信城いつき

    2015/01/02-23:59 

  • [6]明智珠樹

    2015/01/02-23:51 

  • [5]信城いつき

    2014/12/30-21:14 

    こんばんは、レーゲンと相棒の信城いつきです。

    いつきに予定を聞いたら、家でご飯つくると言っていたよ
    私は、買い物の後に街をぶらぶらしようかなと思ってる

    出先で会えるような事があれば、その時はどうぞよろしく。

  • [4]明智珠樹

    2014/12/30-14:44 

    こんにちは、明智珠樹です。よろしくお願いいたします、ふふ…!
    瑠璃さん珊瑚さん、先日はありがとうございました。非常に有意義な時間でした…!
    栗花落さんご両人も良きかまくら鍋だったようで何よりです。
    フラルさんご両人もハロウィン以来でしょうか、ご無沙汰しております。
    信城さん、レーゲンさんはじめまして。以後お見知りおきを……!!

    私はいつものお散歩コースをふらふらする予定です。
    千亞さんは?

    千亞:
    えっと、お気に入りのカフェでまったりして、ケーキ屋さんとか、あと
    百貨店の地下でスイーツ見たり、とか…

    色気より食い気みたいです、ふふ…!

  • [3]フラル

    2014/12/30-14:10 

    こんにちは。オレはフラル。
    よろしくな。

    たぶん、自分は近くで買い物をしていると思う。
    サウセは、図書館に行くって言っていたな。

  • [2]瑪瑙 瑠璃

    2014/12/30-12:29 

    瑪瑙瑠璃です。
    いつきさん、雨佳さん、フラルさんは、お久しぶりですね。
    珠樹さん、鍋パーティーではお世話になりました。
    改めまして、よろしくお願いします。

    相方は(南国の)海で羽根を伸ばす予定だそうですが、
    自分は今のところ予定がない為、自宅に引き篭もるかもしれません。

  • [1]栗花落 雨佳

    2014/12/30-01:31 

    こんばんは。栗花落雨佳とアルヴァード・ヴィスナーです。

    ……任務以外の日常…ですか。
    アルはイタリアンレストラン…えっと、トラットリア?で働いているのでそちらに。
    僕は…学校に行ったり行かなかったり…。どちらにしろ絵を描いているか寝ているかなのですけど(苦笑)

    どちらともお誘い大歓迎ですので、一緒に遊びに行く事も出来ます。


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