プロローグ
「プレゼント交換って、したことありますか?」
A.R.O.A職員が穏やかに声をかけてくる。
突然何の話だろう、と耳を傾けると職員が一通の封筒を取り出した。
「出社したら、この封筒が置いてあったんです。差出人も書いてありません。しかし何かの依頼かもしれない、と中を覗いてみましたら……」
――プレゼント交換会に参加しませんか?
プレゼントを用意し、提供する。
それが誰の手元に届くかはわからない。
自分にも勿論、誰かが用意したプレゼントが贈られてくる。
「ふふ、誰に届くかわからないプレゼント。何を選ぶか考えるのもドキドキしますし、何を貰えるか、もドキドキしますよね」
楽しそうに職員がふんわりと笑う。
「どうやら、クリスマスプレゼントを此方で集めて。あの、外のクリスマスツリーの下に置いておいてほしいみたいなんです」
職員が窓の外、庭に飾られているクリスマスツリーを指さした。
「すると、この差出人さんがプレゼントを回収し、そして皆様にプレゼントを届けてくれるみたい、ですね」
とにかくプレゼントを用意さえすれば後は勝手にやってくれるようだ。
「どなたかそんな企画をしているのか興味がありますが……もしお時間あるようでしたら、参加してみませんか?万が一差出人が何もしなかったとしても、責任持って私が配らせていただきますよ」
職員が己の胸をポン、と叩く。
「私は何にしましょう……食べ物や飲み物でもよいみたいですね。買ったものでも、手作りでも良いみたいですし。ふふ、久しぶりにマフラーでも編もうかな。あ、でも男性に渡るか女性に渡るかわからないですし、色選びが難しそうですね」
ふむぅ、と眉間に皺を寄せる。
「もし参加していただけるのでしたら、1人1つのプレゼント用意してください。そしてプレゼントには決して自分の名前を書いてはいけないそうですよ」
封筒の中の手紙を見させてもらうと、いくつかの約束事もあるようだ。
見知らぬ誰かにプレゼントを渡す、というのはサンタ気分を味わえそう。
あの人も誘ってみようかな、とあなたは思った。
解説
●流れ
描写のメインはウィンクルムの皆様がそれぞれプレゼントを用意する場面、です。
皆様にどんなプレゼントが届いたかの描写はありますが、それに対する反応はおそらく描かれません。
精霊と一緒に買いに行くもよし、別々もよし。一緒に作るもよし。別々に作るもよし。
パートナーに二人分作らせるもよし。
ついでにパートナーへのプレゼントをこっそり買ってみるもよし。作ってみるもよし。(別料金発生します)
後で渡そうと思うもよし、渡してみちゃうもよし。
●参加費
プレゼント購入、もしくは作成費含めて、一組様一律300Jrいただきます。
その他にも何か購入、作成する場合、品物に関わらず1人200Jrの追加料金が発生します。
(参加+神人精霊それぞれが別に用意、となると700Jr消費することに)
●プレゼント
用意していただいたプレゼントは誰の手に渡るかわかりません。
男性かもしれないし、女性かもしれないし。
子供かもしれないし、ご老人かもしれません。
もしかしたら自分のパートナーに渡るかもしれません。ガチランダムです。
でも誰からのプレゼントなのか、の記載はありません。
全ての人が喜ぶもの!なんて難しいですゆえ、プレゼントの内容はあんまりに残念なもの(片方だけの軍手など)でなければ判定に関わりません。
どんなプレゼントを選び、楽しむかがポイントです。
また、あまりに高額なもの、入手するのが難しいものの場合はマスタリングされる可能性がありますのでご了承ください。
【【 注意 】】
交換用、それ以外のプレゼント用含め、アイテム化はされませんのでご了承ください。
また他GM様のエピソードでも「あたし、こんなの貰っちゃったの、うふふ!」と提示しても
採用されませんのでご了承ください。
想い出は、皆様の心の中に……!
●プレゼント推奨品
デートや戦闘で使うものでなく、ちょっとした日用品、雑貨。
食べ物、飲み物の消えもの。
自作のポエム【オススメ!】など。
ゲームマスターより
お世話になっております、へっぽこ新人GM上澤そらです。
ちょっと無謀なことしてる感が否めませんが、それと同時にワクワクでいっぱいです。
普通にクリスマス前哨戦ショッピング、もしくはお家とかでまったり手作り勤しみデートと思っていただければ幸いです。
どうぞ自由な時間をお過ごしください。
ちなみに私の欲しいものは挫けない心です。
へなちょこですが一生懸命書かせていただきますので、よろしくお願いいたします。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
月野 輝(アルベルト)
プレゼント交換なんていつ以来かしら 誰に渡るか判らないから難しいけど、考えるのもワクワクするわ アルは何にするか決めた? そうね、買い物に行って、お店の中見てから決めましょうか ■プレゼント クリスマスクッキーを作る事に お菓子作りのスキルはないけど、お料理はそれなりにできるから、レシピ見ながらなら何とかなるわ!(調理スキル使用 星やツリー、雪だるまの形のクッキーを焼いてアイシングやトッピングで飾って綺麗にラッピング ■買い物中 杢グレーの暖かそうな手袋を見つけてこっそり購入 アルに似合いそうだと思ったの クッキー作り終わったら渡すわ 「いつも有難う」の言葉を添えて 来年は編み物覚えて何か編むわね だから、来年も一緒に… |
かのん(天藍)
送り主の分からないプレゼント交換楽しそうですね お花だと男性に届いたら迷惑でしょうか? 四角い硝子の器に深紅の薔薇の小振りなフラワーアレンジ作成 柊の葉と金・銀のリボンで飾り クリスマスカードを添えて 2人で買い物に行き 途中で各自使う物(アレンジ、包装用資材)探すため天藍と分かれる 1人の行動は少し寂しい 交換用とは別に天藍へプレゼント贈りたいですけれど、何が良いでしょう? レンジャーの仕事や自警団の活動で冬でも外の作業が多いと聞いているので寒さを凌げる物をと考え、白金触媒式カイロを購入 プレゼント届けた後でと天藍から食事に誘われ喜ぶ 契約の日から傍で支えてくれた事への感謝の想いと一緒に、プレゼント渡せますように |
ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
【プレゼント】 小さいドールハウス型のオルゴール そして銃を扱うディエゴさんのために革手袋購入 【プラン】 ディエゴさんと一緒にプレゼントの吟味です、クリスマスソングの入ったオルゴールはどうでしょうか 街は家族や恋人であろう人達が楽しそうに往き来しています 私は…クリスマスが嫌いかもしれない 記憶が戻っても戻らなくてもきっと一人ぼっちです 家族団らんを見て、どこか羨ましいと感じるのは 私はそういう経験が無いからだと思います このプレゼントを受け取る人が、私が羨むクリスマスを過ごせますように…。 ディエゴさん、それは言い方を変えると 貴方がプレゼントってことですよね あはは…いえ、からかっただけです ありがとうございます。 |
テレーズ(山吹)
面白そうですね! 張り切ってプレゼントを選んでみます 喜んで貰えるものがいいですよね 自分の好きなものをというのは聞きますが…どうしましょう ここは山吹さんにアドバイスでも… あ、でも何を用意するかばれちゃだめですし聞かない方がいいですよね できます、私だって1人で準備できます! 百貨店に行って眺めつつ考えてみましょうか 好きなもので言えば本ですがジャンルによっては興味ないかもですし そうだ、栞にしましょう! これならかさばらないし好きな時に使えますよね 冬ですし雪の結晶のチャームが付いたものに これでよし、と 当日が楽しみですね きっと山吹さんも素敵なものを選んだんでしょうね それは誰に届くのでしょうか 私だといいなぁ… |
●予約
「プレゼント交換なんていつ以来かしら」
月野 輝は大人っぽい容姿からは想像もつかない程、楽しそうな表情を浮かべる。
誰に渡るか判らない、というのは贈り物を考えるのに難しいけれど、何にするか悩むのもまた楽しい。
「アルは何にするか決めた?」
アルベルトが楽しげな表情の輝を眺めていると、声がかかった。
「プレゼント交換、ですか。今まで縁がなかったイベントなのでどうしたものか……」
彼は渋い表情で悩む。
「そうね、お買い物に行って、お店の中を見ながら決めましょうか」
「一緒に買い物に行って貰えると助かります」
輝の提案に素直に甘えることにしたアルベルトだった。
クリスマス色の街を歩く。
「子供からお年寄りまで…となると無難なのは食べ物か小物でしょうか」
様々なお店の中を覗きつつ、アルベルトは呟く。
そうね、とお互いに店内を見回していると
「あら。これ、似合いそう……」
一つの商品が目に止まった。
アルベルトが傍にいないのを確認すると、輝はこっそりレジへ。
無事に購入すると、何事もなかったようにアルベルトと合流した。
(ふふ、どんな反応してくれるか楽しみね)
クールな表情の下に好奇心を覗かせる輝であった。
次に入った本屋では、アルベルトが目的物をこっそりと。
(やはり、渡す相手がわかっている方が贈り物は選びやすいですね)
購入し終わり、輝の姿を探す。一冊の本を読んでいる輝を見つけ、声をかけた。
「輝は何に……おや、クッキーですか?いいですね」
読んでいたのは、お菓子のレシピ本。丁度クリスマスのお菓子が掲載されていた。
「そうなの、これならレシピがあればなんとかなるわ」
調理は手慣れた輝。きっと美味しいものができるだろう、とアルベルトも思う。
「それなら、私も便乗させてもらっていいでしょうか?手伝いますから私のプレゼント用に分けてください」
勿論よ、と輝が微笑んだ。
そして二人はクッキーの材料やラッピング用品を購入する。
途中で見覚えのある黒髪ポニーテールの女性と手を繋ぐ長身男性を見かけ、二人が笑顔を見せる。
帰宅するとすぐにキッチンへ。
輝は粉を振るい、卵や牛乳を加え、手早くクッキー生地を作る。
アルベルトと共に、星型やツリー、雪だるま型の型抜きで生地をくり抜く。
生地をオーブンに入れ、焼き上がりを待つ間に粉砂糖と卵白、食紅でアイシングを準備。
焼かれたクッキーにアイシングを施す輝の表情はとても幸せそうで、アルベルトも顔が綻んだ。
出来上がったアイシングクッキーに、2人でラッピングを施せば。
「よし、これでいいかしら。完成!」
世界で二つだけのプレゼントが完成した。輝のものには赤いリボン、アルベルトのものには青いリボンで口を結ぶ。
輝が笑顔を見せ、そして。
「アル、あのね」
少し恥ずかしそうな表情を見せ、包みをアルベルトに差し出した。
おや、とその包みを受け取れば……中には、杢グレーの色をした暖かそうな手袋が。
「アルに似合いそうだと思ったの。……いつも有難う」
照れながらも、まっすぐに彼の瞳を見る輝。
「凄く……凄く嬉しいです。有難うございます」
「来年は、編み物を覚えて何か編むわね。だから、来年も一緒に……」
輝の眼差しに応えるように、アルベルトが笑んだ。
「ちょうどよかった。これは、輝に」
開けてみてください、と促すと包まれていたのは、仔犬や仔猫のカレンダー付きの手帳。
「わぁ、可愛い……」
「そうそう。ちょっと貸してください」
感動する輝から、アルベルトは手帳を借りる。
そして、来年の12月24日の覧に赤いペンで印をつけた――予約済み、と。
驚き、嬉しさに頬が紅潮する輝。
「キャンセルは不可ですからね」
と輝の耳元で、艶めかしく悪戯な声色で囁いた。
きっと来年も再来年も、ずっとずっと。
手帳には予約済み、の文字が書かれるのであろう。
●尾行
「面白そうですね!」
一見儚げな印象を与えるテレーズは、中身は好奇心旺盛。両手を合わせウキウキとした笑顔を見せる。
張り切ってプレゼントを選んでみます、と鼻歌でも聞こえてきそうなご機嫌な表情で、テレーズは楽しそうに悩み始めた。
部屋にある雑誌のページをめくりながら
(せっかくですから喜んで貰えるものがいいですよね。自分の好きなものを、というのは聞きますが……どうしましょう)
自分の好きなもの……甘いものなども浮かぶが、彼女のパートナーである山吹のように甘いものが得意でないものもいるわけで。
(ここは山吹さんにアドバイスでも……)
そう思い、テレーズは山吹の元へ足を運んだ。
その頃の山吹。
プレゼント交換の話を聞いてから「何にしましょう」と悩んでいた。
自然に浮かぶのはテレーズの顔。
(テレーズさんは何にするのでしょうか。……まさか、手作りオーガクッキーとか……!)
在りし日のテレーズのお菓子作りっぷりを思い出し、山吹の背中に冷汗が流れる。
もしくは、突拍子もないものとか……。まさか、とは思うけど、否定しきれない自分がここに。
「山吹さ……」
声をかけようとするが、真剣な表情を浮かべていることにテレーズは気付いた。
(……山吹さんもプレゼント、悩んでいるんですね……!そんな山吹さんをこれ以上悩ませてはいけませんよね)
そしてこっそりと決意。
(できます!私だって一人で準備できます!)
街を歩けば、クリスマスを楽しみにしている人で溢れかえっている。
そんな中、見覚えのある眼鏡の長身男性とボブから髪が伸びた少女の姿を見つけ、微笑んだ。
そしてテレーズの向かった先は、様々な商品が揃う百貨店。
(ここならきっと、素敵なものがみつかりますよね!)
と、意気揚々と店へ入って行った。
そんな彼女の姿を偶然にも見つけたのは、プレゼントを購入しに出かけていた山吹。
一瞬声をかけようかと悩むが……ひとまず彼女を見守ろう、と決意する。
いつもこちらが答えを提示するのは家庭教師失格ですからね、と思いながら。
店内をテレーズは楽しそうに回る。
可愛らしいお人形に目をトキメかせれば、山吹が『相手の性別わからないんですよっ』と遠くで慌てる。
渋い顔をしてテレーズが棚へ戻せば、山吹が胸を撫で下ろす。
なかなか自分では買わないもの……と、テレーズが手に取ったのは。――ひょっとこのお面。
ない、それは流石にない。山吹が遠くで突っ込む。
テレーズはしばし悩む。悩む。悩む。そして、レジへその面を持っていこうとする。
ネタとしてはアリですが、流石にそれはっ!と彼が意を決し止めに入ろうとすれば……彼女はおもむろに、その面を顔にあててみた。
――大きすぎる。
一般男性用に作られているらしいそのお面。
(……子供に渡ったら被れませんものね)
と、残念そうに棚へ戻しに行った。山吹さんマジ安堵。
ハラハラさせられ、ふぅ、と息を吐く。
(これは完全に保護者の心境ですね……)
自分の行為に苦笑しつつ、尾行再開。
テレーズは謎の伝統工芸品コーナーを出て、百貨店内の本屋で足を止めた。
(好きなもので言えば本ですが……ジャンルによっては興味ないかもですし)
しかし本屋と言えども本だけを販売しているわけでなく。
「そうだ!栞にしましょう!」
ポム、と手を叩く。
(これならかさばらないし、好きな時に使えますよね)
様々な種類があったが、冬らしい雪の結晶のチャームが付いた栞を選んだ。
彼女の髪の色のように、白金に光るチャームは美しい。
栞を持ってレジへ行き、購入するまで見届けた山吹。
素敵な贈り物に安堵すると同時に、テレーズを子ども扱いしすぎていたな、と少しだけ反省もする。
彼にとってはテレーズは可愛い教え子。でも、彼女もしっかりと成長しているのだ、と思い直す。
(そうだ、私もプレゼントを用意しませんと)
考えていたものもあったのだが、ふと見れば彼女が買った栞と同じシリーズのブックカバーも販売していた。冬の森の雰囲気に、雪の結晶がチラホラと舞っている。
(せっかくですから、これにしましょう。プレゼントを受け取った人全員が、素敵なクリスマスを過ごせますように……)
そんな願いを込め、プレゼントを購入した。
それからしばらくして。
テレーズはうきうきと山吹の表情を見る。彼はどんなプレゼントを用意したのだろう。
聞いてみたいけど、せっかくだから内緒。きっと彼のことだから素敵なものを選んだのだろう。
(それは誰に届くのでしょうか。私だといいな……)
テレーズの視線に気づいた山吹は、彼女の視線に柔らかく微笑んだ。
きっと二人も素敵なリスマスを過ごせることだろう。
●特技
「送り主のわからないプレゼント交換……楽しそうですね!」
ポニーテールを揺らし、何にしようかな、と考えるかのん。
彼女が周りを見渡せば、花や植物が咲き誇っている。
「……お花だと、男性に届いたら迷惑でしょうか……」
かのんが頬に手を添えて呟けば、傍にいたかのんのパートナー、天藍が読んでいた本から顔を上げた。
「自分で飾らず誰かに渡す可能性はあっても、迷惑ではないと思うけどな」
思ったことをかのんに伝えれば、彼女の表情は明るく輝く。
「それもそうですね。それじゃあ…」
むぅ、とどんな花を贈ろうか悩み……彼女の中にイメージが閃く。
「天藍、プレゼントのアレンジ用に買い物に行こうと思うのですが……」
「ん?あぁ。俺も付き合っていいだろうか?そして出来れば、ラッピングに手を貸してくれないか?」
「勿論ですよ、天藍のお役に立てますなら」
笑顔で頷くかのんに、天藍は感謝を伝えた。
街はイルミネーションや赤や緑の装飾で暖かさを演出するが、やはり気温は寒い。
天藍がふとかのんに目をやれば、寒そうなかのんの手。
「かのん」
ス、と彼が手を差し出せば、はにかみながら差し出された手を掴むかのん。
天藍の大きな手が彼女の手を包みこむ。手のひらから全身に彼の暖かさと優しさが巡るように感じられる。
二人で雑貨屋に向かえば、その途中黒髪ロングの少女と、緑髪の眼鏡青年を目にする。彼らもプレゼントを買いにきたのだろう、と微笑ましく思う。
「えぇと…それじゃあ私はラッピング用品のコーナーへ行ってきますね」
「あぁ、俺は本と文具のコーナーだな。それじゃあ、また後で」
繋いでいた手を離す。また繋げる、とわかっていてもやはり手を離すのを惜しく感じる天藍。
かのんもまた、1人での行動は寂しい、と感じていた。
天藍は絵本サイズの動物の写真集を手に取った。
日頃レンジャーとして過ごす彼は、動物の写真集に仕事で見聞きした動物の生態を書き加えよう、と思いついたのだ。
写真集と、それに合う説明書き用の便箋を購入する。綺麗な雪山がうっすらと描かれた便箋はこの写真集にピッタリだ、と思いレジに向かう。
交換用のプレゼントを購入した後は。
(さて、かのんへのプレゼントはどうしようか)
待ち合わせた時間までまだ余裕がある。
(できれば普段身に着けられるものを贈りたいが……)
そんな天藍の目にうつった品物。これは、きっと彼女に似合う、と身に着ける姿を想像し微笑んだ。
一方、かのん。サクサクッと迷うことなくアレンジメント用の包装を選び出す。
小ぶりな硝子の器に、金色や銀色の華やかなリボン。
一通り揃えると、最後にクリスマスカードを選び購入する。
(さて、と。プレゼント交換用はこれで大丈夫ですね。せっかくですし、交換用とは別に天藍へプレゼントを贈りたいですけど……何が良いでしょう?)
広い雑貨屋の店内をかのんは回る。
多種多様な商品が並ぶ中、アウトドアコーナーに目が行くのは天藍の生業がレンジャーだからだろう。
「あら……」
かのんの目に留まったのは、白金触媒式カイロ。
使い捨てではなく、ベンジン等を使い発熱させるカイロは環境にも優しい。天藍は冬でも外での仕事が多いため、これで寒さも凌げるだろう、と手に取った。
帰宅後、かのんはフラワーアレンジメントに、天藍は写真集に写る動物たちの生態を丁寧に便箋にしたためていく。
真紅の薔薇を四角い硝子の器へ。楽しげにアレンジを施すかのん。慣れた手つきで柊の葉、そして金や銀のリボンで飾りつける。
「ふふ、完成です」
最後にカードを添え、嬉しそうに微笑む。
「こっちも完成だ」
天藍が動物の写真集と便箋をひとまとめにする。
「天藍、ラッピングする前に、少し見せてもらってもいいでしょうか?」
「あぁ、構わないが……」
見られることに少しだけ緊張しつつ、彼女の楽しそうな表情を見れば安堵の気持ちが広がった。
ラッピングを施した贈り物を無事に本部に届けた帰り道。
「受け取った方が喜んでくれるといいですね」
「あぁ、そうだな。……そうだ、かのん」
「なんですか?」
振り向いたかのんに、天藍はそっと手を近づける。
何が起こるのだろう?と思うと天藍の手が彼女のポニーテールへと伸びた。そして。
「天藍、どうしたのですか?」
ショーウィンドウの鏡にかのんの姿が映れば、彼女の髪には硝子細工の小さな小花が連なった簪が刺さっていた。
わぁ……と目を見開くかのん。
「これなら今の髪留めの邪魔にならないだろう、と思ってな。よかったら使ってほしい」
「ありがとうございます、天藍……!」
動くと簪の小花が揺れる。
「あと……よかったら食事にでも行かないか?せっかくだし」
「喜んで……!」
満面の笑みでかのんは答えた。今は置いてきてしまった天藍へのプレゼントを、その時に彼に渡そう。
契約の日から傍で支えてくれた感謝の想いをありったけに込めて。勿論、この簪も身に着けよう。
かのんが天藍の手を取り、ぎゅっと握る。
握り返す大きな手に幸せを感じる、かのんと天藍だった。
●手袋
「クリスマスのプレゼント交換、か……」
ディエゴ・ルナ・クィンテロが勿忘草の鉢植えに水をやりながら呟く。
パートナーのハロルドと共にプレゼント交換に参加することを決めたが、交換する品が思い浮かばない。
「こういう物選びはどうも苦手だ……エクレールのセンスに任せよう」
水をやり終え、立ち上がる。鉢植えの傍らに置いてある袋を見ながら
「特定の人物へのプレゼントはすぐに決まったのに、な」
と呟き、彼女の元へ向かった。
「それなら、これから一緒に買い物に行きませんか?丁度出かけるところでしたので」
買うものは決まっているのか、とハロルドに聞いてみれば、店を回りながら考えようと思います、との答え。
ならば、とディエゴも出かける支度を始めた。
街はクリスマス一色。
家族や恋人たちが楽しそうな表情を浮かべ、通りを行き来するのを見て、ハロルドは少し憂鬱な表情を浮かべた。
二人は目的地の百貨店に到着。
入り口を見ると、儚げな印象の少女が百貨店に入っていくのを見つけた。
そしてその少女の数メートル後、彼女をこっそりと追う青年紳士もいる。
「何をやってるんでしょうか……」
ハロルドとディエゴが顔を見合わせる。謎は解けぬまま、二人は店内へ。
百貨店の様々なフロアで品物を見る二人。しばらく二人で様々な商品を見比べた結果。
「ディエゴさん、こちらなんてどうでしょう」
彼女が手に取ったのは、ドールハウス型オルゴール。ネジを巻けば、中に配置された可愛いらしい人形がクルクルと回り踊る。流れているのは定番のクリスマスソング。
「クリスマスらしいな。これがいい」
オルゴールの穏やかな音色は聞く者の心を落ち着かせる。
「似たようなものですが、私もこれにしようと思います」
ハロルドが手に取ったのは、彼と同じドールハウス型オルゴール。
基本はディエゴのものと一緒だが、此方は穏やかなメロディとは違い、賑やかなクリスマス曲が流れる。
「あぁ、良いんじゃないか」
こうして、それぞれのオルゴールを購入した。
混雑のため、ラッピングに時間がかかる、との言葉に
「ちょっと見てきたいものがありますので」
とハロルドが申し出る。ディエゴが快く送り出すと、小さな少女は足早に雑踏に消えていった。
ラッピングが終わる頃に彼女は戻ってきた。
「せっかくだから、少しお茶でもしないか?選んでくれたお礼がしたい」
「はい」
ディエゴの誘いに、ハロルドは即座に答えた。
百貨店内のカフェからは外の様子が伺える。
キラキラとしたクリスマスの飾りつけに、たくさんの人々。
人々を見て、ハロルドはふぅ、と小さく息をつく。
「……どうした?疲れたか?」
心配そうな表情を見せ、ディエゴが問う。
ハロルドはその言葉に一瞬戸惑うも……思っていることを伝えよう、と言葉を紡ぐ。
「私は……クリスマスが嫌いかもしれない」
視線を窓からの景色に向けたまま、ハロルドは呟く。
ディエゴは横を向いたままの彼女の表情を見つめる。
「記憶が戻っても戻らなくてもきっと一人ぼっちです、家族団らんを見て、どこか羨ましいと感じるのは私はそういう経験が無いからだと思います」
そして彼女は視線を、購入したオルゴールに移し。
「このプレゼントを受け取る人が、私が羨むクリスマスを過ごせますように……」
きっと、彼女のイメージするクリスマスはあの賑やかなオルゴールのメロディなのだろう。
賑やかで、華やかな。
しかし、クリスマスはそれだけでない。ディエゴのオルゴールのように、優しく穏やかな面もある。
それに。
「……俺が、いるだろ……」
思わず出たディエゴの言葉に、ハロルドはキョトンとした表情を浮かべる。
彼女は言った。記憶が戻っても戻らなくても、一人ぼっちだと。しかし自分は今、ここにいる。
「ディエゴさん……」
ハロルドが真剣な視線でディエゴの瞳をまっすぐと見据える。
そして。
「それは言い方を変えると――貴方がプレゼントってことですよね」
真面目な表情なのに、どこか悪戯な心を感じさせるハロルドの口調。
「お前な…意地悪な冗談言うようになったな」
ふん、と拗ねるような表情で応戦してみれば。
「あはは……いえ、ちょっとからかっただけです」
ハロルドが、笑みを見せた。
その笑顔に、ディエゴの時間が少しだけ止まった。
彼女が見せる、初めての表情。――可愛い。
「……へ、変な意味でなく」
ディエゴがこほん、と咳払いし。
「同居してるんだから、クリスマスディナーを食べるとかクリスマスっぽいことは一緒にできるだろって意味だよ」
焦りや照れで自然と早口となってしまう。そんな彼にハロルドは
「わかっていますよ。……ありがとうございます」
いつもより、少しだけ柔和な表情で答えた。
「……なんだか、暑くないか?ここ。買い物も終わったのだし、そろそろ帰ろう」
そうですか?とハロルドが不思議に思いつつも席を立つ。
ディエゴは己の顔が赤くなっていないか心配になりながら会計を済ます。
今までは、彼女は自分の子供や妹のような存在だった。
しかし、先程の笑顔には――それ以上の、女性という存在で可愛い、と思ってしまった。
感じる罪悪感をディエゴは胸にしまう。
その頃、ハロルドは先程こっそり購入した品物を確認していた
銃を扱うディエゴへの、クリスマスプレゼント。
家に帰ったら渡そう、とまた鞄へしまう。
ディエゴも、家に帰ったら彼女へ用意した暖かい手袋を渡そう、と考えていた。
ハイトランスで拳を使う彼女を守る、手袋を。
お互いを思いやる手袋。
ハロルドにとってこれからのクリスマスは、もう独りきりではないだろう。
手袋がつつむ暖かな手が、伸ばせば触れられる距離にあるはずだから。
●贈り物
『メリークリスマス』と書かれたカードと共にいつの間にか置かれていたプレゼントを各人が手にする。
輝には、愛らしい天使の表情のスノードーム。
アルベルトには、ぎゅうぎゅうに詰め込まれた袋満杯のお菓子。
かのんには、雪の結晶のチャームがついた栞。
天藍には、青いリボンがついた手作りのクリスマスクッキー。
ハロルドには、キャンディのようなカラフルな入浴剤。
ディエゴには、野生動物の写真集。
テレーズには、菓子詰めのプレゼントソックス。
山吹には、賑やかなクリスマスソングが流れる小さいドールハウス型のオルゴール。
皆の気持ちが詰まった贈り物を配り終えた配達人は、己の髭を撫でながら幸せそうな笑みを浮かべた。
依頼結果:成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 上澤そら |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | イベント |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 4 / 2 ~ 4 |
報酬 | なし |
リリース日 | 12月09日 |
出発日 | 12月15日 00:00 |
予定納品日 | 12月25日 |
参加者
会議室
-
2014/12/14-23:51
-
2014/12/14-21:17
プラン提出済みでーす。
何か増えてますね。
【ダイスA(6面):4】【ダイスB(6面):2】 -
2014/12/13-18:45
って、あら?何もないわね。
もう一回、試すわね。何度もごめんなさい。 -
2014/12/13-18:43
なんだかダイス機能って言うのがついたみたいなのでお試しさせてね。
えい♪ -
2014/12/13-14:43
-
2014/12/13-11:04
-
2014/12/12-12:23
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2014/12/12-11:08