プロローグ
●念願の硝子玉
ホワイト・ヒルとスノーウッドの森の間のあまり人が寄り付かない場所にステンドグラスで色とりどりに飾られた硝子工房ある。
外は寒いが工房の中は暖かいのか窓ガラスが少し曇っている。
工房の中から女が1人出てきた。
「今年はなんだか街の方から依頼がこないよな…」
先に外に出て空を眺めながらぼやいていた女のところへと駆け寄る。
「ちょっと!!できたわ!!」
「どうしたの?ローラ??」
「どうしたのじゃないのよ、リーエ、出来たのよ!!」
「できたって!まさか、あの硝子玉?」
建物の前に居た女、リーエに声を掛けローラは嬉しそうに声を上げた。
「そうなのよ!この前に話していた硝子玉よ!」
自慢するようにローラは手の中にある硝子玉を見せる。
「これが前に言ってた硝子玉にメッセージを入れられたらって話してたやつかしら?」
そこには淡いピンク色の硝子玉と淡い青色の硝子玉があった。
「そうよ、よく見て!!」
その硝子玉をよく見えるように前に差し出すとリーエは中をまじまじと見た。
「本当に文字が…どうやって…」
「中に入って…説明するわ!」
ローラはそう言うとリーエを手招きしながら建物の中に入っていった。
●小熊たちの頼み
「全部で5色できたわね」
手の中にそれぞれ、淡い色合いの赤、黄色、青、ピンク、紫の硝子玉を手に持ち太陽に透かして眺めている。
「太陽に透かすのもいいけど雪の上に置くのはどうかしら?」
リーエはそう言うとそっと雪の上に硝子玉を置いた。
「これは……!!」
太陽に反射し硝子の色が雪を彩っていく。また、その中の文字が鮮明に見える。
「とても綺麗……」
2人は順々に持っていた硝子玉を雪の上に置いていくと、それは眩いばかりに辺りの雪を染めていった。
それを眺めていた2人は太陽が何かで遮られるのを感じる。
「え??」
「ん??」
同時に硝子玉から視線を外し前方を見る。
『○×△□×~』
『×△○×○~』
2人の前には赤、黄色、青、ピンク、紫の色をしたフワフワモコモコの小熊がいた。
5匹の小熊は目を輝かせてその硝子玉を見て何かこちらに話し掛けてきている。
「えぇ~、これは?」
「何か言ってるけど……何だろう」
困惑している2人に小熊たちは後ろ足で立ち硝子玉を指差して2人に向かって手を差しだす。
「待ってよ……」
この小熊たちが何が言いたいのかと2人は考え、目の前にいる小熊の何か訴えるよな瞳に少々うろたえる。
そんな2人の様子を見て、ピンク色の小熊がそっと硝子玉に手を伸ばし少し重そうに拾い上げるとそのまま2人に近付いた。
それを見て2人はあることを思い出す。
「そうだ!こないだ街からルンブルの帽子をもらったんだわ!」
リーエはそういうとそそくさと工房の中へと入っていき、被って小熊たちとローラのもとへと戻ってきた。
『かわいいおぼうしなのぉ~』
リーエが戻った瞬間に小熊たちの会話が聞こえ始める。
「君達はどうしたのかな?」
小熊に向かってローラは話し出す。するとそれに反応したのは先ほど硝子玉を手に取ったピンクの小熊。
『あのね、あのね……これをわたしのいるところにたくさんおきたいのぉ~』
リーエは小熊に言われたことをローラに話しながらそのまま会話を続けていく。
『しょうきっていうのが、ずっとあっていやなのぉ~、こわいのぉ~』
『これかざればきえるのぉ~』
青と黄色の小熊も話し出す。
『しあわせなひとからもらいたいのぉ~』
赤の小熊も続けて話している。話し方は陽気だが、小熊たちの表情は曇っている。
「これが?」
ローラはリーエの話しを聞いて少し驚いた表情で硝子玉を見る。
『うん!よろしくね……おねがいなのぉ~』
「え、えぇ……」
紫の小熊の懇願に少し戸惑いながらリーエは頷いた。
『わたしたちはもりのおおきいもみのきにいるのぉ~、ゆきのおにんぎょうかざっておくのぉ~』
『ごちそう、たくさんたくさん、よういしてまってるのぉ~』
そういうと小熊たちは意気揚々と森の中へと消えていった。
解説
●小熊たちに硝子玉をプレゼントし、瘴気を取り除いてあげてください。
・硝子玉を工房で作成する
色は淡い、赤、黄色、青、ピンク、紫の5色から選べます。
硝子玉の中にメッセージが入りますので内容を記載お願いします。
作成数は1~3個までです。必ず1個は小熊にあげてください。全て渡しても構いませんし、2個はお持ち帰りでも構いません。
1個あげても、所持していたら小熊たちにおねだりされるかもしれません。
1個あたり300jrいただきます。
・硝子玉を渡すためにもみの木までハイキング
小熊たちは持ってきた人に楽しんでもらうために、雪像や氷のオブジェなどを道に作っています。
工房からもみの木までは約30分程で到着します。
ここで硝子玉にメッセージが入っているので、パートナーにプレゼントしたりしてもOKです。
・小熊たちと楽しくご馳走を食べながら遊びましょう
『ルンブルの帽子』を被って小熊たちと戯れたり会話できます。
小熊たちに見守られながら、まだ硝子玉を持っていた場合パートナーに上げても良いと思います。
いろいろな遊びをしてあげると喜びますしご馳走を用意してあるようですがお土産も喜ぶかもしれません。
楽しく小熊たちと過ごすことで瘴気が消えていきます。小熊たちを安心させてあげてください。
●ルンブルの帽子について
・鹿のような耳がついた帽子です。被れば小熊たちと楽しく会話ができますが、連続使用は疲れるのでパートナーと交代で使用してください。
・1組に1つ貸し出します。
●小熊たちについて
・硝子玉は小熊と同じ色のものをプレゼントしてあげてください。
・小熊の台詞で言わせたいものがあればご自由にプランにお書きください。小熊がキューピットになるかもしれません。
・小熊は大変好奇心旺盛で活発、フワフワの毛並みで人懐っこい子ばかりで、木登りが得意です。簡単な文字なら読めるようです。
・好物ははちみつ、木の実、とうもろこしです。
ゲームマスターより
お久しぶりです、お世話になっております。草壁 楓です。
メルヘンチックなものにしたくこの度小熊さんたちを登場させてみました。
小熊を自由に動かしてかまいませんので、皆さんに楽しんでもらえたらと思います。
よろしくお願いします。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
手屋 笹(カガヤ・アクショア)
・作成するガラス玉 黄色(小熊さんへ) →メッセージ「あなたともみの木に平穏を」 青(カガヤへ) 小熊さんに差し上げるものを作って… ガラス玉の交換ですか?いいですよ… 伝えたい事…ルーメンのバーで聞かれた事(参加エピ26) にお返事出来ていませんでしたね… わたくしは…カガヤと恋仲になりたかったのですか…? (ハイキング中) 先ほどのガラス玉…後でお渡ししますね。 (小熊さんに青のガラス玉をおねだりされたら) …ごめんなさい、カガヤに渡したいものなんです…! 青ガラス玉:「いつも明るいあなたが好きです」 (カガヤは恋仲の意味では取らないでしょう… わたくしはカガヤの事…好き…?(自問)) ガラス玉…ありがとうございます。 |
かのん(天藍)
青×2 紫×1 3個渡す お土産に蜂蜜の瓶 天藍の名前思い浮かべ青を ~想いを伝えられたら ~幸せを貴方に いつの間にか誰よりも特別で大切な存在になっていた天藍に 胸の内にある想い、恋心を伝えられるようにと 自身の決意を硝子玉に 小熊の所へ行く途中 天藍から告げられた言葉に嬉しさが溢れ言葉が詰まる 硝子玉を天藍に見せ 同じ気持ちを伝えられたらと思っていたと答える 天藍の行動に頬を染めるも温もりを感じられる距離を離れたくないと寄り添って歩く 帽子交代で使用 硝子玉渡す時顔が赤いと小熊に聞かれ 硝子玉のお陰でとても嬉しい事がありましたと幸せな微笑みを向ける ティアラ使用 天藍と小熊達とダンス 硝子玉青×1 小熊から今日の思い出にと渡される |
テレーズ(山吹)
硝子玉が瘴気を払ってくれるなんて素敵ですね 張り切って作っちゃいましょー 私は紫色の硝子玉を作ってみますね 紫って好きなんです 目と同じ色っていうのもありますが、なんででしたっけ…(首かしげ まあ思い出せない事には仕方ないですね! では熊さんにあげるものですし言葉は「みんな仲良し」 まだお友達じゃないけど、なりたいという願いを込めてみます…! 貢ぎ…じゃなくてお土産に蜂蜜も持っていきますね 硝子玉もお土産も喜んで貰えたようで何よりです はしゃいでる姿も可愛い!ちょっとだけでいいので抱きつかせてください! このままずーっとみんな仲良く、何も変わらないまま楽しく過ごせればいいのに …時間はどんどん過ぎていくんですよね |
ファリエリータ・ディアル(ヴァルフレード・ソルジェ)
綺麗な硝子玉に可愛い小熊さん……すごく素敵っ。 小熊さんと遊ぶのも楽しみねっ! まず硝子玉作らなきゃねっ、ピンクと青と赤にするわっ。 中に入れるメッセージは何がいいかしらっ。一つはヴァルに考えてもらおうっと。 もみの木に着くまでに、ヴァルと硝子玉を交換するわねっ。 雪の上に置いたりもしてみるわっ、きっと綺麗だと思うのっ。 小熊さんに会えたら、ご挨拶と自己紹介。 赤い小熊さんに赤の硝子玉プレゼント。喜んでくれるかしらっ。 その後一緒に遊びましょっ。 雪像見せてもらったわっ。貴方達が作ったの? すごーい! ご馳走も楽しみー! どんなご馳走かしらっ。 楽しくって美味しい時間をありがとうって小熊さんにお礼するわねっ。 |
楓乃(ウォルフ)
朝からウォルフが何か作ってたけど何かな? いい匂いだったな~♪ …と、今はガラス玉作りに集中しなきゃね ピンクのガラス玉に「大好き」のメッセージを入れて、完成~! え?もう一個…? 二人で小熊さん二匹分じゃ足りないかしら? なぁに?変なウォルフ。 はぁ~寒いわね。息が白いわ。 あ、見てウォルフ!狼の雪像があるわ。可愛い。 見比べてなんてないわよ。くすくすっ。 小熊さん、今日はお招きありがとう。 これ私が作ったガラス玉よ。 あなたが大好きって書いてあるの。大事にしてね。 それから…歌をプレゼント! 小さいころに聞いてた子守唄なの。 (小熊を撫でながら歌う(歌唱LV4)) 怖くなったらガラス玉を見て、今日のことを思い出してね。 |
●可愛い狼
楓乃とウォルフは少し雪がちらついたスノーウッドの森の入り口付近を歩いている。
(確かさっき作ってたときに、大好きって書いてたよな……オレと交換したいとか……)
ウォルフは自分の作った硝子玉を見ると少し顔を赤らめた。
「あ、見てウォルフ!狼の雪像があるわ。可愛い」
可愛らしい狼の雪像を見つけると楓乃は駆け寄って頭を撫でるようにした。
(1個はあいつらにやるんだろ……ってことは……)
ウォルフは自分の青い硝子玉に目をやる。そこには『ずっと』と書かれている。
「ウォルフってば…どうかしたの?」
「硝子玉1個だよな?」
「えぇ、二人で小熊さん二匹分じゃ足りないかしら?」
「…っ!!」
「なぁに?変なウォルフ」
ウォルフはにこやかに微笑む楓乃を見て自分の勘違いに気付く。
「狼の雪像可愛い。小熊さんたちが作ったのかしら」
楓乃はそう言うとウォルフを見るが、ため息を付いていた。
「見比べてなんてないわよ。くすくすっ」
楓乃は勘違いして落胆しているウォルフには気付かずに話しかける。
「わかってる!ほら、あいつらのとこに行くぞ!!」
ウォルフはそう言うと雪像の狼を見ている楓乃を置いてくように歩き出す。
楓乃もそんなウォルフの心情を知らず、クスクスっと笑いながら後を追った。
それから暫く雪像や木々の飾りを見ながら2人は歩き切り開かれた場所に着く。
2人が入ろうとすると小熊たちが出迎える。
『まってたのぉ~』
ルンブルの帽子を被っているのは楓乃はウォルフにそのまま通訳する。
「小熊さん、今日はお招きありがとう」
優しい微笑みを浮かべて楓乃は小熊達に挨拶をする。
『えっと、まだよういできてないからすわってまっててなの!』
赤、黄色、青、ピンク、紫の小熊がにこやかに出迎えると、ピンク小熊がもみの木の近くにある木の椅子を指差した。
「ほらよ、土産だ」
ウォルフはそう言うと小熊達の前にバスケットを差し出した。
『なにかな……』
黄色小熊がそう言って受け取るとそっと中を覗く。
中には胡桃の蜂蜜浸けが入っていた。
『ほぉ~!はちみつ!くるみ!』
『おいしそうなのぉ~』
小熊達は大興奮である。その様子にウィルフは満足気に笑顔になり椅子へと2人は歩いていった。
●願いを込めて
昼下がり、テレーズは小熊達のいるもみの木までの雪道を山吹と歩いていた。
「山吹さん、随分雪像が増えてきましたね」
「小熊さんたちの精一杯のお出迎えなんでしょうね」
そこには動物の小さ目の雪像がところどころに並んでいる。
「小さいですね……小熊さん特製といった感じですね」
山吹は微笑ましそうにその雪像を見ている。
「小熊さん達瘴気のせいで落ち込んでいるって聞きましたけど、頑張ってくれたんですね」
テレーズも山吹と一緒にそれを見て笑みを浮べた。
「紫色の硝子玉を作ってきました、私はこの色が好きです。小熊さんとまだお友達じゃないですけど喜んでくれますよね?」
テレーズはそう言うと硝子玉を手に取り太陽に透かして見てみる。
「喜んで受け取ってくれますよ」
山吹はそう言うと自分も黄色の硝子玉を取り出し同じく太陽に透かして見始めた。
「なんて書いたんですか?」
「えっと『みんな仲良し』です!!山吹さんは?」
「『幸多き未来を願って』と、瘴気などで問題はありますが、必ず平和に過ごせる時がきますようにと」
2人はお互いのメッセージを聞くと、小熊達への想いが同じだと確認するように微笑みあった。
雪像を見終わった後、2人は無事にもみの木のある小熊達の元へとたどり着いた。
『おきゃくさん!』
2人が中に入ろうとすると勢いよく小熊達が集まってきた。
テレーズはすかさずルンブルの帽子を被る。
「今日は硝子玉を持ってきました、あと、これ良かったらどうぞ」
『がらすだまあとでもらうの!!ありがとうなのぉ!!』
テレーズは硝子玉を見せるのと一緒に硝子のビンを差し出した。
『これなにかな……はちみつ!!たくさん!!』
ビンの中の蜂蜜を確認すると小熊達は『ほぉ~』と声をあげる。
『ごめんなの、まだよういできてないから、すわってまっててなの……』
青小熊がすまなそうにテレーズに謝る。
「大丈夫ですよ、ではお邪魔しますね」
テレーズの通訳を聞いて山吹はにこやかに青小熊の頭を撫でてそう言った。
撫でられたのが嬉しかったのか青小熊は照れたように山吹を見上げた。
『なでなで、すき、なでなで』
それが羨ましかったのか他の小熊も山吹に寄ってくる、が、黄色小熊が話し出す。
『あのイスにすわっててなの!!』
黄色小熊は先に座っている楓乃とウォルフのいる方向を指差しそう言った。
2人とも椅子に向かって歩き出した。
●硝子玉のメッセージ
ファリエリータ・ディアルとヴァルフレード・ソルジェは雪像の道を歩いていた。
「綺麗に硝子玉が出来てよかったわね!」
「これ渡して元気付けてやろうな」
「ヴァル?これなんの雪像かしら……」
ファリエリータは動物の雪像の中に1つ奇妙な雪像を見つけヴァルフレードに問いかけた。
それはただ丸められただけの雪像とも言いがたいものだった。
「お月見のおだんごかしら……あ、ひょっとしてこれかしら?」
そう言うとファリエリータはポケットに閉まっていた硝子玉を取り出した。
取り出した硝子玉と雪像を見比べてヴァルフレードは頷く。
ヴァルフレードは覗き込むようにファリエリータの取り出した赤い硝子玉を見る。
「『ずっと楽しく過ごせます様に』って……」
「ファリエらしいな!ホラ、これやるよ!!」
そう言うとヴァルフレードはサッとファリエリータの前にピンクの硝子玉を差し出した。
「はい!!これどうぞ」
それを見るやファリエリータは自分の持っていた青い硝子玉をヴァルフレードの前に差し出す。
お互いは同時に硝子玉を受け取った。
「『怪我をしません様に』か……」
「えっと私のには……」
ファリエリータがピンク色の硝子玉の中を覗こうとしたが、制止するようにヴァルフレードが話し出す。
「ゆ、雪の上の置いてみないか!?」
さっとファリエリータのも取り上げて雪像の硝子玉と並べるように雪の上に置いた。
ピンクと青の2つの硝子玉は太陽にあたり雪像の硝子玉をも一緒に彩るように反射した。
「メッセージありがとう!うれしい!!」
反射している中にメッセージが見えたのかファリエリータは満面の笑みでお礼を言った。
「な!!熊が待ってるからさっさと行くぞ!」
置いてあった硝子玉をサっと取り上げ早足で歩き出すヴァルフレード。
「ヴァル、待って!!」
ファリエリータは笑いながら早足で歩くのを追いかけてもみの木へと向かったのだった。
『いっらしゃいませなのぉ~』
「はじめまして、私はファリエリータよ」
「俺はヴァルフレードだ」
ルンブルの帽子はここに着く前にファリエリータは被り自己紹介を軽くすませる。
『きてくれてありがとうなのぉ~』
2人が着くと小熊達は大喜びで出迎える。
『もうすこしでよういできるからまっててなのぉ~』
紫小熊がニコニコとそう言った。
丁寧に自己紹介をされて小熊達も丁寧にお辞儀をした。
『こっちなの!どうぞなの!!』
そのまま紫小熊は2人を先客の元へと案内したのだった。
●叶う願い
「足跡があるね」
「何人か来たみたいだな」
かのんと天藍は他愛無い会話をしながらもみの木までの雪道を足跡を追うように歩いていた。
「かのん?」
天藍はそういうと1歩前に出たかのんを呼び止めた。
「何?」
急に足を止めた天藍に少し驚き振り返る。振り返ったかのんに近付きそっとかのんの前に紫色の硝子玉を差し出した。
「さっき工房で作った硝子玉……」
「かのんの瞳の色を思い浮かべてこの色にした、受け取ってくれるよな?」
差し出された硝子玉をかのんは受け取る。そして中に書いてあるメッセージを硝子の中に確認する。
「『願いを叶えて』……願い?」
メッセージの『願いを叶えて』にかのんは小首を傾げ天藍を見つめた。
そんな様子のかのんにゆっくりと近付き耳元に唇を寄せ囁く。
「俺をかのんの恋人にして欲しい」
その言葉にかのんは顔を赤らめ言葉を詰まらせて天藍を見つめる。
黙ったままかのんは自分で作成した青色の硝子玉を天藍の胸元へと押し付けた。
それをそのまま受け取り中のメッセージに目をやった。
「『想いを伝えられたら』か……」
メッセージを見ると天藍は再びかのんに視線を移した。
「同じ気持ちを伝えられたらと思っていたんです」
かのんの言葉に天藍は堪らずそのまま肩を引き寄せる。
「ありがとう」
2人は幸せな面持ちで見つめ合う。かのんの瞳には少し嬉涙が微かに滲んでいる。
「行こうか」
天藍の言葉に頷くとそのまま2人は体温を感じるほど近くまで寄り添いもみの木に足を向けて歩き出した。
『こんちにはなのぉ~』
「はじめまして」
2人を迎える5色の小熊達は満面の笑みだった。
ルンブルの帽子を被っているのは、天藍はかのんにそのまま通訳する。
『あと1くみくるからもうちょっとまってなの!!』
「あ、よかったら蜂蜜です」
そういうと小熊達に蜂蜜の瓶を差し出した。
『は・ち・み・つぅ~~』
また、小熊達は今から踊りだすのではないかというテンションで瓶を受け取り喜ぶ。
2人はニコニコしているので小熊もニコニコと案内していた。
●秘めた想い
一番最後に訪れたのは手屋 笹とカガヤ・アクショアだった。
「少し硝子玉作りに時間が掛かってしまいましたね」
そう言いながらも2人は少し早歩きでもみの木までの道を歩いている。
「あ、笹ちゃん着く前に硝子玉の交換しない?」
カガヤは思い付いたように笹に歩きながら告げる。
「硝子玉の交換ですか?いいですよ……後でお渡ししますね」
いいと言いながら笹は恥ずかしそうに後で渡すと言って歩く。
「え?後で?うん、わかった待ってるね」
特に疑問も持たずに笹の言葉をそのまま受け取る。
(ルーメンのバーで聞かれた事にお返事出来ていませんでしたね……私は)
早歩きをしながら笹は自分の心に自問を始める。
(わたくしは…カガヤと恋仲になりたかったのですか……?あのバーでの胸の痛み……)
考え事をしているせいか笹の歩くペースが少しずつ落ちていくのをカガヤは見逃さなかった。
「笹ちゃんどうしたの?」
「いえ、何でもありません!」
カガヤの心配そうな顔に笹は少し驚いて歩くペースを戻す。
「小熊さん達待ってるから行こうぜ」
カガヤは少し笹を急かすように軽く肩を叩く。
笹は今は急げともみの木に向かったのだった。
『あ、さいごのおきゃくさん!!』
『じゅんびできてるのぉ~』
2人が着く頃にはもみの木の小熊達の会場は準備が整ったとばかりに自信満々に出迎えた。
「遅くなってしまいましたね、手屋 笹と申します、こちらはカガヤ・アクショアです」
「小熊さんたちよろしく!」
集まってきた小熊達に軽く会釈をし自己紹介をした。
「あ、硝子玉を!」
『きれいなのはあとでもらうのぉ~』
笹は咄嗟に小熊にあげようと差し出したが、小熊は頭を横に振りあとでもらうと告げたのだった。
『さぁさぁ、はじめるからすわるのよ!!』
ピンク小熊が2人を急かすように笹の服の裾を引っ張り半ば強引に席へと案内する。
●小熊ともみの木と硝子玉
もみの木の下には、雪で出来たテーブルに木で出来た椅子があり、テーブルの上には食べ物が並んでいる。
『おいしいですか?』
少し畏まったようにファリエリータとヴァルフレードに遠慮気味に赤小熊が尋ねてきた。
帽子を被ってるのはファリエリータである。
「とってもおいしいわっ!」
『よかったのぉ~!これおすすめなのぉ~』
そういうと赤小熊は2人の前にとうもろこしのスープを差し出した。
「ありがとうっ!あ、そうだわっ!!」
ファリエリータはスープの入った皿をテーブルの上に乗せると思い出したかのように赤の硝子玉を取り出した。
「あなたにプレゼントよっ!!」
差し出された硝子玉に赤小熊は目を輝かせた。
『あ、ありがと!!うれしいのぉ~』
そういうのと同時にファリエリータに抱き付く。
『あ、あのかんじ、よめないの……』
「『ずっと楽しく過ごせます様に』よ」
『うれしいの!ありがと!』
思い余ってか今度はヴァルフレードにしがみ付く。
「おい!!なんだ??」
勢い余ってかそのままヴァルフレードは赤小熊に押し倒されのだった。
「ヴァルったら雪だらけねっ!!」
2人と1匹はそのままじゃれて遊ぶのだった。赤小熊のフワフワの毛並みを楽しみつつ。
かのんと天藍は青小熊と一緒にいた。
「どうぞ、あなたに作ってきました」
青小熊は出来上がった料理を運んでいたのか呼び止められて振り向くとそこには自分と同じ色の硝子玉が目に入った。
『ぼくになの?』
ルンブルの帽子を被っている天藍は「そうだ」と頷いた。
「『幸せを貴方に』って書いてあります。大事にしてくださいね」
『しあわせ……』
そういうと青小熊はじっと2人を見る。
「どうした?」
『なんで、ふたりともおかお、まっかかなのぉ~?』
「え!?」
青小熊の質問に天藍はかのんに通訳せず焦りを見せる。
『ふたりのほうがうれしそうで、しあわせそうなの!!』
青小熊はわくわくと2人を交互に見るが、。
『どうしてそんなにうれしそうなの?』
その言葉にかのんは天藍の顔と青小熊の顔を交互に見やる。
「これのお陰で幸せを貰えたからな、お礼に受け取ってくれるだろ?」
少し照れたように天藍は青小熊に硝子玉を受け取るよう促す。
『ありがとうなの!!あ、ようせいさんのがくだんなのよ!!!』
青小熊がそう言うと2人の周りには音楽の妖精が楽団を引き連れて祝福するように演奏を始める。
すると青小熊はかのんの手を取ろうとするが、すかさず天藍が青小熊の手を取り、
「今日は俺に譲ってくれるだろ?」
青小熊はそう言われ少し納得したように手を引く。
『あとでちょっとだけ、おねえちゃんとおどらせてなの』
「ごめん、今日はだめだ!」
そう言うと天藍はかのんをリードするように妖精の奏でる音楽と共に踊りだす。
かのんの頭には美しい宝石がちりばめられ、高貴にしてメルヘンチックなデザインのティアラが揺れていた。
笹とカガヤは黄色の硝子玉を手に黄色の小熊を探していた。
すると近くで皿が割れたような音がした。
『また、やっちゃったのよぉ~』
その音のする方向に行くとそこには黄色小熊が困ったように佇んでいる。
「ケガはありませんか?」
『ご、ごめんなさい!!』
2人が突如現れたせいか黄色小熊は驚いて頭を何度も下げて謝っている。
ルンブルの帽子を被っているのは笹である。
「一緒に片付けますね」
2人と1匹はその場に散らばった皿を片付けると、黄色小熊が少し落ちついたのを確認しそっと硝子玉を差し出した。
「どうぞ」
『がらすだま!!えっと、あなたともみの……』
中に書いてあるメッセージを読もうとしている黄色小熊。
「『あなたともみの木に平穏を』です」
『ありがとう』
「一緒に遊びましょう!」
その申し出に黄色小熊は喜び、その場で飛び跳ねる。すると黄色小熊は2人の手元にまだ硝子玉があるのに気付く。
『そ、それ、きれいながらすだま!』
その欲しそうな顔に笹とカガヤは驚きながら黄色小熊に視線を合わし、
「…ごめんなさい、カガヤに渡したいものなんです…!」
「悪いけど笹ちゃんのガラス玉は俺のだからね!」
そういって笹から硝子玉を受けとるカガヤ。
「『いつも明るいあなたが好きです』か、好きだって、嬉しいな……俺からはこれだよ!」
赤い硝子玉を取り出すと笹に手渡す。
「『いつも一緒に居てくれて感謝!』ですね!ありがとう」
笹の込めた想いとカガヤの想いは少し違うのか笹は切ないような顔をする。
(カガヤは恋仲の意味では取らないでしょう…わたくしはカガヤの事…好き…?)
と自問するが、そんな笹の様子にカガヤは気付かずに黄色小熊をもみの木へと連れて行く。
その後をそのまま自問しながら笹は付いていく。
「わー、この子かわいいね!よーしよしよし」
もみの木の下で黄色小熊を撫で回すカガヤに少し切ない笹がいたが、今は静かに見守るのだった。
『あの、くるみのはちみつづけありがとうございますなの』
楓乃とウォルフに急に話し掛けてきたのはピンク小熊と青小熊である。
ルンブルの帽子を被っていたウォルフはすぐさま反応する。
「うまかったか?」
2匹は目をキラキラと輝かせながら大きく頷いた。
『とっても美味しいのよ!』
「あ、ちょうどよかったわ、硝子玉どうぞ」
ピンクの硝子玉をピンク小熊に差し出す楓乃。
「ウォルフも、ね!」
「わかってる!」
今度はウォルフが青小熊に青色の硝子玉を差し出した。
『きれいなのぉ~ありがとうなの!』
ピンクが丁寧にお辞儀をすると青小熊も真似をしてお辞儀をする。
「『あなたが大好き』って書いてあるの。大事にしてね」
『だいすき!!ピンクもおねえちゃんだいすき……』
ピンク小熊は少し顔を赤らめて俯き、その反応に楓乃も優しく微笑み返す。
『あの……『ずっと』ってなんなのぉ~?』
「っ…!」
そんな青小熊の純粋な質問にウォルフは少し身を仰け反らせる。
『なんなのぉ?』
「あいつのとセットで……ずっと……~~ってことだ!」
何が言いたいのか分からず誤魔化すようにウォルフは口に手を当てて青小熊に言った。
『セット……『ずっと、だいすき』なのね!』
ピンク小熊は納得したように2つの硝子玉を交互に見た。
ウォルフは納得しろと言わんばかり2匹の小熊の頭をグリグリと撫でる。
「あとね、歌のプレゼントよ」
そういうと楓乃は2匹を抱きかかえ頭を撫ぜながら子守歌を歌いだす。
『ねむくなるのぉ~』
『おうたじょうずなのぉ~』
小熊達は気持ちいいのか楓乃に身を任せるように静かに聞き入っていた。
山吹は背中をちょいちょいと突いてくるフワフワの感触をに気付いた。
「はい?」
『なでなでのひと、なでなで』
そこには撫でてくれるのを切望する紫小熊がいた。
今帽子を被っているのはテレーズだった。
「あら、山吹さんに撫でてほしいんですね」
テレーズはそんな様子の紫小熊を撫でる。
『ん~~きもちいいのぉ』
かわいいと言わんばかりにテレーズは紫小熊を撫でる。
山吹もつい一緒に来た黄色小熊の頭を撫でる。
「あ、テレーズさん硝子玉」
2人は同時にれテレーズは紫を山吹は黄色を差し出した。
『たくさんありがとう!!』
「私は『みんな仲良し』です」
「『幸多き未来を願って』と、幸せにと願いを込めました」
2匹は満面の笑顔で深くお辞儀をし、2匹はその場ではしゃぎだした。
「はしゃいでる姿も可愛い!ちょっとだけでいいので抱きつかせてください!」
そう言われ2匹は素直にテレーズに抱き付いた。
数分テレーズは小熊のフワフワを楽しんだが、ふと悲しい顔をする。
「このままずーっとみんな仲良く、何も変わらないまま楽しく過ごせればいいのに……時間はどんどん過ぎていくんですよね」
抱き締めながら悲しそうに言うと、そんなテレーズに黄色小熊が少し距離を取り黄色の硝子玉を差し出した。
その様子にテレーズの被っていた帽子を山吹は被る。
『これあげるからげんきだしてなの!!』
一生懸命に黄色小熊はテレーズを励ますために笑顔で言っていた。
「黄色さん、ありがとう。大丈夫ですよ……それはあなたにあげたものです、大事にしてくださいね」
山吹は黄色小熊の気持ちは受け取ったと言わんばかりに頭を優しく撫でた。
「テレーズさん、時間は過ぎても変わらないものはあります」
黄色小熊は心配そうにまだテレーズを見つめていた。
「ありがとう、大丈夫ですよ!」
テレーズはそういうと更に小熊達を抱き締めたのだった。
その光景を山吹は微笑ましく見守るのだった。
依頼結果:普通
MVP:
名前:かのん 呼び名:かのん |
名前:天藍 呼び名:天藍 |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 草壁楓 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | ハートフル |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 12月04日 |
出発日 | 12月11日 00:00 |
予定納品日 | 12月21日 |
参加者
- 手屋 笹(カガヤ・アクショア)
- かのん(天藍)
- テレーズ(山吹)
- ファリエリータ・ディアル(ヴァルフレード・ソルジェ)
- 楓乃(ウォルフ)
会議室
-
2014/12/10-23:58
-
2014/12/10-22:52
おおっと、確認遅くなりました。
では全色揃ったようなのでこちらも重複して用意おきますねー。 -
2014/12/10-22:17
-
2014/12/10-21:56
-
2014/12/09-21:01
それでは同じ色を渡す方が複数になっても問題ないでしょうし、
わたくし達は黄色の小熊さんにガラス玉を渡す事にしますね。 -
2014/12/08-23:33
こんばんは
皆さんのご予定お知らせ頂き、ありがとうございました
現状を伺った感じだと
赤 ~ファリエリータさん
黄色
青 ~楓乃さん、かのん
ピンク~楓乃さん
紫 ~かのん
という感じですね
黄色の小熊さん用を、笹さんか、テレーズさんが用意して頂けると、硝子玉貰えない子はいなさそうなので、少し安心しました
-
2014/12/08-23:23
みなさんこんばんは。楓乃です。
どうぞよろしくお願いしますね。
私たちの所は青とピンクの2つを作って、両方とも小熊さんにあげようと思っていました。
これなら貰えない小熊さんはいなさそうですかね。
絶対というこだわりは無いので、各自分担でプレゼントでも問題ないです。
メッセージは何か元気が出そうな言葉を入れようと考えています。
-
2014/12/08-21:57
私はファリエリータ・ディアル! よろしくねっ。
そうね、硝子玉もらえない小熊さんいたら可哀想よねっ。
3個作って1個を小熊さんにプレゼントしようと思うわっ。
2個はお互いで交換用!
どの色でも綺麗だと思うけど……うーん、
青とピンクを交換用にして、
赤を小熊さんへのプレゼントにしようかしら?
あ、変更は可能よっ。 -
2014/12/08-00:16
テレーズと申します。
よろしくお願いしまーす。
なるほど、貰えなかった子がいては悲しいですものね。
私達のところは黄色と紫を作ろうかなと考えていました。
どちらも渡すかもう1個作るかは未定だったので他の方の様子も見て決めますねー。 -
2014/12/07-22:46
手屋 笹です。
よろしくお願いしますね。
>かのんさん
なるほど確かに>ガラス玉を貰えない子が出てこないように
わたくしたちは特に色にこだわりはありませんので、
どなたも選ばれない色がありましたらそれでかまいません。
小熊さんに差し上げるのはひとつで、残り2つは交換しようかと思っておりました。 -
2014/12/07-22:29
こんばんは
少しだけ気になったので書き残させてください
皆さんは硝子玉、何色を作成される予定でしょう?
小熊さんにプレゼントするのは毛色と同じ硝子玉とのことなので、硝子玉を貰えない子が出てこないと良いなと思って
私達は青と紫の硝子玉を作って、2色とも小熊さん達にプレゼントの予定です
(1組1色とは決められていないと思っているので、現在2色の作成を考えています) -
2014/12/07-16:18
-
2014/12/07-08:26