プロローグ
ここは白馬岳。
標高3000m級の万年雪をたたえるスノーウッドの最高峰である。
アウトドア好きなら一度は登っておきたい山である。
山頂近くには、高山植物のお花畑があり「天空の庭」と呼ばれている。
さらに、自然の温泉が湧いていて、ゆっくりとすることが出来るのだ。
ただの雪山登山と違うところは、頂上まで安全に案内してくれるプロガイドがいることである。
トラブルに遭遇することなく頂上まで案内してくれると評判だ。
雪山登山を楽しむのにこの白馬岳は最適だといえる。
雪崩の心配が少ないこのシーズンならば、ベテラン向けのアイスクライミングを楽しむことも出来るし、初心者向けのらくらく登山コースを選ぶことも出来る。
天空の庭には次の高山植物がある。
サクラ花(花言葉:長く続く愛情)
スタースウェル(花言葉:安らぎ)
スノーシンビジウム(花言葉:祝福)
温泉はきちんと手入れがされていて、水着着用の混浴と、個室の温泉の2種類が用意されている。
混浴は、大浴場となっていて、気軽に楽しむことが出来る。
多くの人たちが利用しているので、混浴だからといって恥ずかしがる必要はない。
個室温泉はほぼカップルのためにある。
綺麗な雪景色を眺めながら二人の時間を楽しむために作られているスペースである。
黒の大理石を基調に作られた豪華な個室である。
ここでは、飲食をすることもできる。
湯船にお酒を浮かべてゆったりとするのもよし、二人の親睦を深めるのもいいだろう。
解説
スノーウッドの白馬岳を楽しみ尽くすエピソードです。
★ストーリーの流れ
前半の構成は、
「雪山登山」か「天空の庭」のどちらかを選択して、ゆったりと楽しんでください。
雪山登山では、案内人のプロガイドと一緒に、白馬岳の頂上を目指して登ることになります。
初心者コースで雪山を楽しんだり、ベテラン向けのアイスクライミングを楽しむことが出来ます。
天空の庭では高山植物の観賞です。
花言葉がそれぞれあるので、花言葉をネタに二人で楽しくおしゃべりしてもいいですね。
天空の庭を選択された場合は登山描写はカットになると思います。
いきなり山頂付近スタートです。
後半の構成は、
「大浴場の混浴」か「個室の温泉」を選んでください。
大浴場で開放感を味わうか、個室で二人の濃密な時間を過ごすか自由に決めることが出来ます。
※個室の温泉は「親密度」「ステータス」に自信があるPC向けになっています。
大浴場と比べて追加費用が発生しますが、二人の距離を縮める大チャンスです。
精霊といつも以上に仲良くなるチャンスですが、必ず一気に距離が縮むとは限らないので、いまの二人の仲を考えてから「個室の温泉」に挑戦するか考えてみてください。
★総費用は通常300Jrです。ただし、後半の温泉パートで「個室の温泉」を選択した場合は700Jrの追加料金が発生します。
ゲームマスターより
雪山だ! 高山植物だ! 温泉だ!
白馬岳って標高高いけど、レジャー施設としてもすごい!
私も行ってみたい!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
リーリア=エスペリット(ジャスティ=カレック)
ジャスティと一緒に行動。 天空の庭には、高山植物があるようなので、植物好きな彼ならきっと喜んでくれるだろう。 高山植物の花畑にうっとりする。 綺麗…。 ジャスティがサクラ花を眺めている。 何か気になることでもあるのか聞いてみたが、慌てて「なんでもない」と言われ、様子が少しおかしく、気になった。 サクラ花。あとで花言葉を本で調べてみようかな…。 温泉は、大浴場に入る。 登山で少し疲れたし、ちゃんと温泉で体を癒そう。 やはり、ジャスティの様子がおかしい。 本当にどうしたんだろう。 この間からなんだかおかしい。 聞こうにも、また「なんでもない」って言われちゃいそうだし…。 ここで聞くのもなんだし、とりあえず様子を見ようかな。 |
ミサ・フルール(エミリオ・シュトルツ)
☆雪山登山 一面真っ白だね、綺麗! ねね、雪うさぎつくろうよっ わぁっ、エミリオさんが作ったのエミリオさんみたいでかわい…なんれもにゃいれす!(頬をつままれ、負けじと精霊の頬をつまみかえす) ぷっ、だ、だめ、おかし、あははっ! ☆個室の温泉 ねぇ、エミリオさん、やっぱり大浴場にしない? は、恥ずかしすぎるよ…っ うっ、嫌じゃ…ない、けど(真っ赤な顔で俯く) お、お邪魔します…っ(勇気を出して精霊の傍へ) 『どうしよう、心臓が飛び出しそうだよ(心の声。ぎゅっと縮こまり震える)』 (手を握られ、笑うことで涙を誤魔化しながら)っ、温かいのは当然だよ!だって温泉に入ってるんだしっ …エミリオさんだって温かいよ、とっても温かい |
篠宮潤(ヒュリアス)
・雪山登山初心者コース ・大浴場 アイスクライミング、興味あるんだけど ヒューリに真顔で止められた…そ、そうだね 初心者コースでも、地上より酸素薄いだろうし、足元も雪で歩きにくいんだよね 楽しみながら体力つけられたらいいな 「この山には、どんな動物いる、の…じゃなくてっ、いるんです、か?」敬語苦手 ガイドさんに質問しながらワクワク登山 景色キレイ! 「もうすぐ頂上っ?」 急くあまり頂上ついた途端酸欠 ●大浴場 男所帯なので羞恥心薄い 「む、胸って…僕の歳でも…育つ、かなぁ…」 デリカシー無いのこっち 精霊の傍に浸かり堂々と相談 「え、ええ?!」 ごめん、ごめん、って…! お湯に潜り体隠す う…ヒューリが知らない男の人に、見えた… |
リヴィエラ(ロジェ)
リヴィエラ: ・雪山登山 (体力、運動神経はなし) はぁ、はぁ、ま、待ってください~… (手を繋がれ驚き、体力があるんだわと頬を赤める。急に背負われ、真っ赤に) きゃっ、ロジェ様!? わ、私は大丈夫ですから…そ、そのっ… ・個室の温泉 こ、ここ個室ですか!?(ロジェの体を見てしまい真っ赤に) ど、どうしよう、直視できません…っ わわ、胸板が背中に当たって…っ も、もちろんずっと一緒です! で、でででも、それとこれとは…っ きゃっ、あの、くすぐったい、です…でも嬉しい…。 (どうしよう、私…もっと色々触れて欲しい。望むがままにされたい。欲するままに… 私、ロジェ様といるとどんどん我がままになっていく…) |
テレーズ(山吹)
天空の庭 花言葉って色々とあるんですね 質問です!山吹のお花の花言葉はなんですか? おお、なんだか壮大です ご両親はそこも考慮して名前を付けたのでしょうか あ、山吹って苗字でしたね ちなみに下の名前は… だめです?むー、気になります 温泉は大浴場に行きますね 広いお風呂!素敵です 混浴だそうですが水着着用なら恥ずかしくないですね こんなに広いと泳ぎたく…な、ならないですえへへ 極楽極楽ーです ですよねー温泉はゆっくりと浸かるのが至高です 大丈夫です、もう泳ぐとか言いませんよ! 大人っぽい私… 自分の事なのに想像が付かないですね 本当に何があったんでしょうねー 外傷が原因でないのなら思い出す必要性を感じないのです 今が壊れそうだから |
●
「ジャスティ、白馬岳に出かけよ」
リーリア=エスペリットのこんな言葉から、いまに至る。
「……大丈夫ですか?」
ジャスティ=カレックはリーリアを気遣った。
「だ、大丈夫……。なんとか……」
ここは白馬岳の山頂近くにある「天空の庭」と呼ばれる場所だ。
高山植物を楽しむことが出来る所である。
とても良い場所なのだが、ここに来るには少し問題がある。
それは、標高3000m級かつ、万年雪をたたえたスノーウッドの最高峰の頂上付近に、ここ、天空の庭があるということだ。
体力があっても、酸素が地上より薄いので、疲労しやすい。登山慣れしていないと、天空の庭に来るのには地味に疲れる。
(天空の庭って……、なんて所にあるの!
本当に「天空」って感じね。
植物が好きなジャスティをここに誘えてよかったと思えば、疲れなんて吹き飛ぶはず!)
持ち前の強気な性格で、弱音を言わず、少し休憩していると、天空の庭の標高になれたのか、気分がよくなった。
「ちゃんとお花畑が作られてるのね」
「そうですね。この標高で、ここまで丁寧に手入れされている場所って、他にないと思いますよ」
ジャスティは雪山に作られた大きな花畑に興味津々といった様子だ。
(誘ってよかった)
リーリアは、ジャスティが隣で楽しんでいると、自分もなぜか楽しくなるのだ。
ウィンクルムとして一緒に活動してきただけではない、何かを感じる。その答えはまだ見つからないが。
花畑の背後に広がる一面の雪に日光がキラキラと反射して、花畑に星が散っているように見える。
「綺麗……」
雪山の頂上付近に、これほど美しい場所があることにリーリアは驚き、感動した。
ふと、ジャスティの方を見ると、サクラ花を見つめていた。地上にある桜の花に似た形状と、色の花を咲かせる高山植物である。
「その花が好きなの?」
リーリアが聴くと、ジャスティは慌てて「え、ああ、そうですね」と歯切れが悪かった。
リーリアはジャスティの様子が少し変なので「どうかしたの?」と、いった。
「なんでもない」
ジャスティは何かを隠すように、いうのだった。
リーリアは「サクラ花ね」と、花壇に書かれた花の名を知る。
(あとで、花言葉を本で調べてみようかな……)
リーリアは思うのだった。
(サクラ花……。
愛らしくて、素敵ですね。
確か、花言葉は「長く続く愛情」だったはずです)
ジャスティは記憶の中の世界に、潜っていった。
ジャスティは、幼い頃の自分を見ていた。とてもひねくれた少年。
人付き合いが苦手なのか、一人で部屋にこもっている。
自分の好きな植物に囲まれて、話しかける相手も大好きな植物たちだ。
植物は自分を裏切らないし、傷付けてきたりしない。
内向的な自分自身の幼少期の風景に、幼いリーリアが登場する。
すると、ジャスティのモノクロの世界は色鮮やかに変わった。
この頃からリーリアに惹かれていたのではないかと、ジャスティは思った。
(僕はいままであの時の少女をリーリアだと気がついていませんでした。だから、普通に接してこられたんです。
ずっと想ってきた相手がリーリアだとわかった今、どうやって接したら良いんでしょうかね?)
まだ、気持ちに整理がつかないジャスティは答えが見えていない。
「登山で疲れたし、ちゃんと温泉で体を癒やそうね」
リーリアは水着を着けてジャスティと一緒に混浴温泉に入っていた。
ジャスティはずっと落ち着きがない。視線が泳いでいた。
「どうしたの? なんだかおかしいけど?」
リーリアはジャスティが心配でここでも再び様子を聴く。
「なんでもないですよ」
ジャスティは、はぐらかすように言うが、明らかに挙動不審だった。
(水着着用とはいえ、リーリアと……。
2人で温泉に入ったことは以前にありましたが、今回は事情が違います!
落ち着け、落ち着くんだ、僕!)
ジャスティが呪文を唱えるように、小声で何か言っているが、リーリアは今は様子見で、そっとしておくことにした。
(初恋の相手と混浴って、どうやったら落ち着けるんですかね!?)
ジャスティは落ち着かない時間をしばらく過ごすことになったのだった。
●
「一面真っ白だね、綺麗!」
ミサ・フルールは目の前に広がる白銀の雪景色に感動していた。
エミリオ・シュトルツと一緒に白馬岳に来ているのだ。
初心者向けのらくらく登山コースには途中で雪遊びをする場所が用意されていて、楽しく雪とふれあえる。
「ねね、雪うさぎつくろうよっ」
ミサは雪で遊べる広場に走って行った。
「そんなに走ると危ないよ」
エミリオは楽しそうなミサを微笑ましく眺めながら、後をついていく。
「雪、柔らかいね」
「積もったばっかりみたいだね。雪が結構深いよ」
「遊ぶならこれくらい雪があった方が丁度良いよ!」
「それもそうだね。せっかく雪山に来たわけだし」
ミサとエミリオは雪で塊をつくって、雪兎を作っていく。
「雪うさぎ……、こんな感じ?」
エミリオが作った雪うさぎは可愛らしくデフォルメが効いていて、とても愛くるしい表情をしている。
「わぁっ、エミリオさんが作ったの、エミリオさんみたいでかわい……、なんでもにゃいれす!」
「何か言った?」
エミリオが黒い笑みを浮かべながら、ミサの頬を摘まむ。
ミサも負けじとエミリオの頬を摘まみ返した。
「ふっ、ははっ」
「ぷっ、だ、だめ、おかし、あははっ!」
二人はお互いに頬を引っ張って、変顔になっているのに笑ってしまった。
雪山は寒かったが、天気に恵まれたおかげで、楽しい時間を過ごすことが出来た。
白馬岳の麓にある温泉に二人は来ていた。
体が雪山で冷えたのもあるが、登山の帰りといえば温泉は定番である。
混浴を利用する客が多いようだが、エミリオは「俺たちはこっち」と、個室の温泉にミサの手を引いて行った。
ミサは「恥ずかしいよ」と小さな抵抗を見せる。
エミリオは「恋人同士だし、絶対こっちの方が良いよ」と譲らない。
ミサは「確かにそうだね」と個室の温泉に入っていった。
「ねぇ、エミリオさん、やっぱり大浴場にしない? は、恥ずかしすぎるよ……っ」
いざ、二人きりで個室の温泉に浸かると、胸のドキドキが相手に聞こえてしまうのではないかというほど緊張している。
湯船は二人で入ってもゆったり出来るサイズで、浴内は大理石を基調とした作りになっている。
大人な雰囲気の落ち着いた個室だ。
窓からは白馬岳が一望できて、雪に飾られたスノーウッドの最高峰を楽しむことが出来る。
「何言ってるの。俺達、恋人でしょ。それとも……俺と一緒にはいるのは嫌?」
エミリオは積極的に振る舞っているが、実際はミサに背を向けていて、内心、理性を保つのに必死だった。
「うっ、嫌じゃ……ない、けど」
積極的なエミリオに、ミサは真っ赤になった顔を下げる。
「ほら、こっちにおいで……、そう、いい子」
エミリオに導かれるままに、隣に引き寄せられるミサ。
「お、お邪魔します……っ」
ミサはありったけの勇気を振り絞ってエミリオの隣でお湯に浸かっている。
(どうしよう、心臓が飛び出しそうだよ)
ミサはぎゅっと縮こまって震え始めてしまった。
「……クス、うさぎみたいなのはお前じゃないか」
エミリオは小さな声で、いった。
「冬になると思い出すんだ。
幼い時、父親に牢屋へ閉じ込められていたことを。
底冷えする冬の寒さに耐え忍んでいたときのことを。
今こうして平然と離せるのは……」
エミリオは隣にいるミサの手を握る。
「お前は温かいね」
エミリオはミサの温もりを感じると安心できた。
自然とミサは瞳から涙が零れてくる。
笑って涙をごまかしながら、ミサはいった。
「っ、温かいのは当然だよ! だって温泉に入ってるんだしっ。
……エミリオさんだって温かいよ、とっても温かい」
ミサの言葉を聞いたエミリオは「ミサ……っ」といって、抱きしめてきた。
エミリオはそっと、ミサの首筋にキスをする。
「今日はこれで我慢してあげる」
エミリオはそう言うと、窓から見える白馬岳に視線を向けた。
自然と、ミサも窓の外を眺める。
白馬岳に積もった雪が日光に照らされて輝いていた。
●
「雪山だね。アイスクライミングも出来るらしいよ」
篠宮潤はヒュリアスと一緒に登山コースを選んでいた。
「雪山を登るのは初だな。
自然体で楽しみながら登った方が己の呼吸も知れよう」
ヒュリアスは自分の体の具合を見に来ているかのように、淡々といった。
「それと、ウルの挑戦心は認めるがね。
初心者でアイスクライミングは危険だろう。
やめておきたまえ」
ヒュリアスにもっともなことを言われ、「……そ、そうだね」と潤は納得した。
こうして雪山登山初心者コースにガイドをつけて登ることとなったのだ。
ガイドが背中に全員分のかんじきやアイゼンを背負って、笑顔で「こっちですよー」と案内してくれる。
二人はガイドについていけば景色を楽しむ事ができる。
ある程度登ると、景色は地上からがらりと変わった。白い雪の世界が広がっている。
「うわー、景色キレイ!」
潤は雪化粧された山肌を見て気分が高揚する。
「ふむ。日頃使用していない筋肉がわかるな」
ヒュリアスは自分の体のなまっている箇所の確認などが気になるようで、山の景色など二の次だ。
「情緒がないなあ」
潤がいっても、ヒュリアスは「そうかね?」と気にしていない様子。
低い音が聞こえた。何かの鳴き声だ。何だろうと目線を向ける潤。
少し離れた所に大きめで灰色の鳥がいた。
「あの鳥はなんていう名前な、の……、じゃなくて、名前なんです、か?」
慣れない敬語でガイドに聴くと、「あれはスノー雷鳥ですね」と教えてくれる。
「低い声で鳴くので有名なんですよ。この時期、沢山いますからチェックしながら登ってみても楽しいですよ」
と丁寧にいってくれた。
「この山には、ほかにどんな動物いる、の……、じゃないや、いるんです、か?」
かみかみの敬語で聴いてもガイドは笑わずに答えてくれる。
「鹿はこの辺の標高ならよく出ますよ。あと狸とか狐も多いですね。小さい鳥だと雪ヒバリなんて見つかると思いますよ」
「へー。楽しみ!」
潤はガイドに質問しながら楽しく登山をする。
ヒュリアスも「この部分の筋肉に効いているな」などと、独り言を言いながら登っていた。
ヒュリアスは彼自身で楽しんでいる様子である。
「もうすぐ頂上っ?」
景色に夢中になって登っていたら、気がついたら頂上近くに来ていた。
「ふむ。ここが頂上かね」
スノーウッドの最高峰から見る景色は見通しがよく、まさに絶景だった。
「う……、苦しいかも」
ずっと喋りながら登ってきたので、潤は酸欠を起こす。
「何をしとるのかね……」
ヒュリアスは呆れながらも、すぐにガイドを呼んで、酸素ボンベで体調を整えてもらうのだった。
「温泉気持ちいいね。来てよかった」
潤とヒュリアスは混浴で、ゆったりと湯船に浸かって疲れをとっていた。
「白馬岳登山、思ったよりは楽しかったな」
凝った体を伸ばしながらヒュリアスはくつろぐ。
潤は温泉に浸かりながら、他の神人たちを眺めながら、ふと思った。
「む、胸って……、僕の歳でも……、育つ、かなぁ……」
「……それを俺に聞くかね?」
頭に疑問符を浮かべている潤に羞恥心というものを教えようと、ヒュリアスは潤の胸の膨らみをじっくり見る。
「え、ええ!? そんなに見るな、ごめん、ごめん、って……!」
潤は慌てて湯船に体を沈めて、体をヒュリアスから隠した。
(う……、ヒューリが知らない男の人に、見えた……)
潤は驚きに鼓動が高鳴っている。
ヒュリアスはそんな潤の反応に満足して、いった。
「男なんぞ、皆こんなもんだ。少しは気を付けたまえ」
混浴でのこの発言に、周りの精霊がふきだした。
「いや、いや、俺はちげーし」「僕はそんな目で見てないよ」「お前だけだ!」などと声が上がったが、ヒュリアスは涼しい顔をしていた。
●
「はぁ、はぁ、ま、待ってください~……」
リヴィエラは疲れ果てていた。
ここは白馬岳の中腹である。足場は凍っていて、アイゼンを履いて氷の斜面を登っている。
雪山を登るのにはそれなりに装備が必要だ。各自の背負っているリュックサックにはそこそこの重量の荷物や食料が入っている。
とくに、水が重たい。
「リヴィー、大丈夫か?」
ゆっくりと歩くガイドの後ろを歩いていたロジェは、リヴィエラが遙か後方に遅れて歩いているのを心配している。
(明らかにバテてるな。一度バテると、そう簡単には回復しないだろう)
「この辺りで休憩を入れられる場所はないか? 恋人が後ろでバテている」
ロジェがガイドにいうと、ガイドはすぐ近くに広くなっている場所があると教えてくれて、休憩を取ることになった。
ガイドはリヴィエラとロジェを挟むようにして2人いる。
先頭と最後尾を体力のあるガイドが歩くのだ。こうすることで、誰かがバテても、はぐれる心配はない。
体力があまりなく、運動神経もよくないリヴィエラがパーティーからはぐれず、ここまで来られたのはガイド達の助けが大きい。
途中に何度か、ロジェはリヴィエラの手をとって、フォローを入れた。
それでも、2人の体力の差は大きくて、リヴィエラは結果としてロジェと歩く距離が開いてしまった。
こうなると、無理に手を引くとリヴィエラが疲労してしまうので、ペースをゆっくりにして登るしかない。
「や、……やっと、ロジェ様に追いつきました……」
リヴィエラはすでにぐったりとしていて、景色を楽しむ余裕はなさそうだ。
「とりあえず、リュックを置くんだ。ほら、チョコを食べると元気が出る」
「ありがとうございます」
リヴィエラはロジェからもらったチョコを食べて、水を飲んで水分を補給した。
なんとか2000m付近まで登ってきたが、帰りのことを考えると、エスケープルートから下山した方が良さそうだとロジェは思った。
ガイドに相談すると、丁度、ロジェと同じ事を考えていたらしい。
「ここで休んだ後は下山しよう。頂上まで行かなくても、ここからの風景も綺麗なものだ」
ロジェが指さす方角には遙か先に見える白馬岳の頂上が見える。
まだ、頂上から距離があるため、山全体のシルエットがはっきりと見ることができて美しかった。
「雪山って、こんなに綺麗なんですね」
リヴィエラは疲れを一瞬忘れて、スノーウッドの最高峰の姿に見とれた。
「帰りは俺が背負う」
リヴィエラは、自分のリュックサックを持ってくれると、ロジェが言っているのかと思った。
ロジェは自分のリュックを片方の肩で担ぎ、リヴィエラを背負った。
「きゃっ、ロジェ様!? わ、私は大丈夫ですから、……そ、そのっ……」
リヴィエラは頬が真っ赤に染まった。
ロジェはお構いなしに歩き始める。
「ほら、俺の背に掴まっていろ」
しっかりと、確実に一歩ずつ歩き、二人はガイド達と下山していくのだった。
下山した後は、白馬岳の麓にある温泉に来ていた。
登山の疲れをとるのに温泉は最高だ。
ロジェが普通に個室の温泉の方に、リヴィエラの手を引いて行く。リヴィエラは疲れもあって特に気にせず、ついていった。
個室温泉に入ってから、混浴じゃないと気がつき、今更になって驚くリヴィエラ。
「こ、ここ個室ですか!?」
ロジェの逞しい体が視界に飛び込み、完全に真っ赤に染まるリヴィエラだった。
(ど、どうしよう、直視できません……っ)
とりあえず、湯船に二人で浸かっていると、ロジェがリヴィエラを引き寄せて、抱きしめる。
(わわ、胸板が背中に当たって……っ)
緊張しきっているリヴィエラとは対照的に、ロジェは積極的だった。
リヴィエラの耳に息がかかりそうな距離で、いう。
「どうした? ずっと一緒にいてくれるんじゃなかったのか?」
「も、もちろん、ずっと一緒です! で、でででも、それとこれは……っ」
あたふたとするリヴィエラを微笑ましく見つめるロジェ。
「柔らかい体……、君の髪から花の香りがする……」
ロジェが後ろから頬にキスをしてきたので、リヴィエラの思考回路は完全にフリーズした。
だが、それ以上にロジェが何かしてくることはなかったので、徐々に冷静さを取り戻す。
「ロジェ様、あの、くすぐったい、です……。でも嬉しい……」
(どうしよう、私……、ずっとこのままでいたい。ロジェ様とこのまま二人でいたい。ロジェ様といると、どんどん我がままになっていく……)
リヴィエラを抱きしめるロジェは、ここに来て理性をフル活動させていた。
(ダメだ……、このままじゃ、もっと多くを望んでしまう。君を大切に守りたいのに、もっと愛したい俺が、俺の中にいるんだ)
リヴィエラがロジェの方を振り向くと、ロジェは思わず唇を重ねていた。
(……っ、こちらを振り向くから……。冷静になれ、俺!)
ゆっくりと温泉に浸かったが、登山で疲れたリヴィエラと対照的に、ロジェは理性を働かせるのに、温泉で疲労するのだった。
●
「花言葉って色々とあるんですね」
テレーズは山吹と一緒に天空の庭を歩いていた。
「花言葉が書いてありますね。
一つ一つに違う意味があるというのは中々奥が深いですよね」
山吹はいいながら、思った。
(登山では同じ道を歩いてきたのに、テレーズは元気いっぱいで若さってすごいですね)
サクラ花は長く続く恋愛。スターウェルは安らぎ。スノーシンビジウムは祝福。
順番に花を見ていくと、ふいにテレーズがいった。
「質問です! 山吹のお花の花言葉はなんですか?」
「山吹の花言葉は、
気品、崇高、待ちかねるですね」
山吹がいうと、テレーズはいった。
「おお、なんだか壮大です。
ご両親は、そこも考慮して名前をつけたのでしょうか」
「……山吹は苗字ですね」
テレーズの勘違いに苦笑を浮かべる山吹。
「あ、山吹って苗字でしたね。
ちなみに下の名前は……」
「名前は少しトラウマがありまして……。
そのうち話せたらとは思いますが、今は秘密にさせてください」
「だめです? むー、気になります」
この後少し、テレーズは粘ったが、山吹は「この話題は終わりです」と取り合わなかった。
下山した後、二人は白馬岳の麓にある温泉に来ていた。
混浴は広く、開放感がある。白馬岳がよく見えて、天空の庭にいたときにはわからなかった全体のシルエットが見える。
スノーウッドの最高峰の存在感に二人は感動した。
「広いお風呂! 素敵です」
山に見とれるのはそこそこに、すぐに温泉の方へテレーズの気持ちは移っていた。
「混浴だそうですが、水着着用なら恥ずかしくないですね。
こんなに広いと泳ぎたく……」
「広いですし、はしゃぐ気持ちはわかりますが、公共の場ということを忘れずに」
はしゃいでいるテレーズを山吹はたしなめる。
「……泳ぎたく、な、ならないです、えへへ。
それにしても、極楽、極楽ーです」
テレーズが「泳ぎません」と宣言したのを聞いて、山吹は思った。
(わざわざ宣言するあたり、子供っぽいですね)
クスリと笑う。
二人でのんびりと湯船に浸かっているとリラックスする。
「温泉はゆっくりと浸かるのが至高です」
「記憶を失う前のテレーズさんは、年相応に落ち着いていて大人っぽかったのですけどね。
今のテレーズさんは、時間がまき戻ったかのようです」
山吹の言葉に、テレーズは、いった。
「大人っぽい、私……。
自分のことなのに想像がつかないですね。
本当に何があったんでしょうねー」
「きっかけは何なのでしょうね」
山吹には心当たりがなかった。
「外傷が原因でないのなら、思い出す必要性を感じないのです」
テレーズは笑顔で山吹に言うのだった。
(今が壊れそうだから)
最後の言葉は口に出さず、飲み込んだ。
依頼結果:大成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 和歌祭 麒麟 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | ロマンス |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 11月29日 |
出発日 | 12月04日 00:00 |
予定納品日 | 12月14日 |
参加者
- リーリア=エスペリット(ジャスティ=カレック)
- ミサ・フルール(エミリオ・シュトルツ)
- 篠宮潤(ヒュリアス)
- リヴィエラ(ロジェ)
- テレーズ(山吹)
会議室
-
2014/12/02-21:49
テレーズと申します。
よろしくお願いしますね。
登山かお花か、どちらも魅力的ですね。
温泉の方は私達は大浴場に行ってきますね。
他にも大浴場の方がいましたらよろしくですよー。 -
2014/12/02-21:46
-
2014/12/02-12:40
-
2014/12/02-10:22
今回はどうぞ宜しくお願いします。
ええと、体力には自信がないのですが、雪山登山に挑戦してみようかなと
思っています。お、温泉は、その…ど、どうしよう…頑張ります。 -
2014/12/02-09:18
おはよう。今回はよろしくね♪
私は天空の庭に行ってみようかな。
ジャスティは植物好きだし、楽しめそう。 -
2014/12/02-05:12