プロローグ
●花の迷路
タブロス市内の大型ゲームセンター、ユニゾンパーク。
ゲームセンターとは言うものの、ゲームに力を入れている屋内型テーマパークと考えたほうが早いかもしれない。
パートナーと一緒にやって来た君は、パンフレットを広げて何か気になるアトラクションやゲームがないか探す。
どれも魅力的で、これがいい!とはなかなか決められない。どうしようか、悩む君にパートナーが提案する。
「とりあえず歩いてみて、気になるのを試していこう」
「そうだね、それがいいかも」
延々と悩むよりも実際に実物を見てからの方が早そうだ。
君は賛成し、すぐに歩き出して……これまたすぐに、そのアトラクションを見つけた。『花の迷宮』と、花で飾られた看板には書かれている。
入り口は色とりどりの花で彩られていて、心なしか花の香りまでする。さらにすぐ側で、白馬のユニコーン――ユニゾンパークのマスコットであるユニ子ちゃんが手を振っている。
一体どういうアトラクションなのだろう。
気になった君はパンフレットを広げ、説明を見た。
『お花で作られた迷路でお散歩してみませんか?
出口直前の広場では花の迷路限定のジャスミンティーと薔薇の蜂蜜を使ったクッキーが販売されています』
解説
○参加費
ユニパの入場料やお土産代やらで二人合わせて300jr
ジャスミンティー40jr
薔薇蜂蜜のクッキー60jr
なお、食べ物類は多めに買って持ち帰るとしてもアイテム配布はされませんので御了承ください
○すること
迷路ではありますが、出口に着くことは簡単なので攻略することを意識しなくて構いません
色んな花が咲いていますので、見た目や香りを楽しんでください
花に統一性も季節感もないです、お好きな花を出して下さってOK
また、地面はCGモニター状になっており、歩くと足跡のように画面の中で花が咲くという仕掛けがあります
入り口で咲かせたい花のリクエストも聞いてくれますので、拘りがある方は御指定ください
出口直前の広場ではベンチや芝生のスペースがあり、座ってお茶をすることが出来ます
ゲームマスターより
唯一のらぶてぃめっと四天王のこーやです
Twitterで公募をかけてみましたが、何故か他のGM陣からの立候補がなくオンリーでロンリーになりました
おいしい(確信)
リザルトノベル
◆アクション・プラン
リチェルカーレ(シリウス)
足元の花にスミレを選択 紫のスミレが有名だけれど 白や黄色の花もあるのよ パンジーやビオラも素敵だけれど 私は小さなスミレも好きなの スキル植物学の知識を使用 楽しそうに花の話を 足跡のように咲く花が楽しくて 足取りも踊るように 微かに聞こえた笑い声に振り向く 光と緑の中 こちらを見る彼の顔は柔らかで 恥ずかしいより 嬉しいが大きい 足元の花に勇気をもらって 彼の手をひく シリウスも歩いてみて 楽しい気持ちになるでしょう? 大きな手のひらに 鼓動が早く 芝生に座ってお茶(ジャスミンティ購入) とても楽しかった! あの、ね またこんな風に 一緒にお散歩してくれる? 緊張の面持ち 返された言葉に満面の笑顔 |
ミサ・フルール(エミリオ・シュトルツ)
☆心情 せっかくのデートなのに、あの日からちょっと気まずいよ どんな顔していればいいのかな… ☆関連エピ No.62【耐久床どん】 (精霊に話しかけられ)…え?あっ、ご、ごめんなさい! 話聞いてなかったよ 足元?わぁ、綺麗、薔薇の花が咲いてる! 凄い、凄いね! (精霊の優しさに気づき)エミリオさん、どうもありがとうっ(満面の笑みを浮かべる) さっきはごめんね 考え事をしていたの…エミリオさんのことだよ(恥ずかしそうに俯く) (精霊と手を繋ぎながら迷路を歩く)この時間がずっと続けばいいのに (精霊の車に乗せてもらい宿屋に到着) 今日はどうも有難う、楽しかったよ(背伸びをして精霊にキス) えへへ…あの日の仕返し!(はにかむ) |
篠宮潤(ヒュリアス)
よ、よくヒューリ来てくれたなー…(心の内) ココなら派手に遊ぶものじゃないから…い、いい? ●「わ!凄、い!」 今まで囲まれたことの無い数の花々に興奮 駆けながらあちこち見ていると 「…ヒューリ?」 珍しい。花見て立ち止まるの…え? 「髪…そっか、言われればそう…だよね」 染めてたんだ 「うん。暗い雲の狭間に見える、青空みた、い。似合う、よ」 にこ ★「白詰草を映してもらってみた、よ」 足跡のCG聞かれ微笑み 「う、ん。ふと見た時、見つけたら嬉しいかな、って」 少し楽しそうに足跡振り返ったり ◆「ジャスミン茶、いい香り…」※40Jr そっか、匂い敏感なのかな …? 少し機嫌いいかも?…良かった (いつか、もっと話してくれるかな) |
月野 輝(アルベルト)
花の迷宮ってちょっとロマンチックよね。素敵だわ なに?ジッと見て? そうね、昔だったらもうちょっとクールぶって「悪くないわ」とか言ってたかも でも、綺麗な物は綺麗って言った方がいいなって (そう思うようになったのはアルのおかげ、よね それにしても、ここ凄いわね 見て、チューリップの隣にひまわりが咲いてるわ あっちは秋桜に桔梗、牡丹? ふふ、四季がめちゃくちゃだわ でもとても綺麗、いい香り…夢みたいね(微笑んで 次はどんな花があるのかしら、ね、あっち行ってみましょ(腕を掴んで引っ張り …このまま腕組んでも…大丈夫よね(そっと腕を絡め (広場にてお茶しつつ 足跡に咲いてたのカランコエよね アルが頼んでくれたの? とても嬉しい… |
エレオノーラ(ルーイ)
花の迷路… いいですね、素敵だと思います それにしてもユニ子ちゃん可愛いですね… (足元に驚きルーイの服を掴む) なるほど、足元にも仕掛けがあったのですね (掴んでいた事に気づき離す)あ、ごめんなさい… ふふ、ルーイったら わあ、素敵… 咲いているのは冬の花でしょうか 図鑑で見た事があります いつかは実物を見れればと思っていましたが実際に見ることができて嬉しいです 次もこれるかわかりませんしじっくりと見ておきたいですね 少し、歩いて疲れましたね… 休憩していきませんか? ベンチに座ってお茶をすする …それは、少し気になりますね でもルーイも行きたい場所などあったら遠慮せず行ってくださいね ここも私向けのものを選んだのでしょう? |
●小さな幸せ
足元に白と黄の花が咲く。
リチェルカーレが一歩足を踏み出せば白く、シリウスが一歩足を踏み出せば黄色く。
小さな花。その形には見覚えがある。
けれど、記憶にある花の色と、足元を彩る花とは色が違う。
シリウスが知っているのは紫色のスミレだけ。
彼の僅かな戸惑い、無言の問いに気付いたリチェルカーレは薄く微笑んだ。
「紫のスミレが有名だけれど 白や黄色の花もあるのよ。パンジーやビオラも素敵だけれど、私は小さなスミレも好きなの」
同じスミレ属のパンジーやビオラではなく、野に咲く素朴なスミレが好きなのだとリチェルカーレは言う。
実際、迷路を彩るそれらの花よりも、足跡を飾るスミレの方が気になって仕方がないようだ。
甘い花々の香りの中、楽しそうに花のことを話しながら、リチェルカーレは床に花を咲かせて行く。
踊るような足取りは、御伽噺に出てくる花の妖精のようで。
シリウスは思わず噴出した。
足元を彩る花は現実のものではないというのに、あまりにも楽しそうだから。
それが聞こえたのか、驚いたように目を見開いたリチェルカーレが振り向く。
柔らかなスカートが花弁のようにひらり、舞う。
「転ぶなよ」
からかう言葉は、シリウス自身が驚くほどに柔らかい。
振り返った先で目にしたその表情がチェルカーレには嬉しかった。
光と緑の中で目にした暖かさに、かけられた言葉への恥ずかしさを覚えるよりも嬉しさを覚えるのは無理からぬこと。
自然と、青く輝く丸い宝石が細くなる。
リチェルカーレはさらに白い花を咲かせながらシリウスへと近づき、その手を取った。
転がるように走ってきた彼女に驚いていたシリウスは咄嗟のことに言葉も出ない。元より細い翡翠の目が、僅かに丸みを帯びる。
「シリウスも歩いてみて。楽しい気持ちになるでしょう?」
ほら――
笑って手を引くリチェルカーレの手は、シリウスのそれと比べると随分と小さい。
花のように赤く色づいた頬には愛しさすらこみ上げてくる。
微笑を返し、シリウスは歩を進める。
黄色いスミレが白いスミレに寄り添うように、ふわりと花を咲かせた。
施設内にあるせいか、長いとはいえない迷路は迷うことすらなく二人を出口へと運ぶ。
もっと花を見たいという気持ちもあったが、ジャスミンティーの香りがリチェルカーレの鼻をくすぐった。
休憩がてらに芝生に腰掛け、ジャスミンティーをすする。
カップから伝わる熱が、少しだけリチェルカーレに勇気を与える。
「とても楽しかった!……あの、ね」
リチェルカーレは不安そうに、隣に腰掛けたシリウスの様子を窺う。
黙ったままシリウスは彼女が言葉を紡ぎ出すのを待った。
「またこんな風に、一緒にお散歩してくれる?」
返事よりも先に、シリウスはリチェルカーレの頭へと手を伸ばした。
くしゃり、少しだけ髪を崩すものの優しく撫でてやる。
「あぁ」
返事を聞いた途端、リチェルカーレは花のように笑った。
小さな幸せを知る者の笑みだった。
●心が和らぐ
篠宮潤の足跡となったのは小さな白い花。
三つ葉に抱かれた純朴な花を見て、ヒュリアスは不思議に思った。
「シロツメクサかね?」
「う、ん。ふと見た時、四つ葉の、クローバーを、見つけられたら嬉しいかな、って」
機会ならば全て三つ葉ではと、言いかけてヒュリアスは言葉を飲み込んだ。
きっとこの考えが潤の本質を表しているのだろう。人と向き合うことに怯えるようになるよりも前からの、彼女の根底。
潤が踵を付けた先で花が咲く。
その様子が常よりも穏やかなのは、ヒュリアス以外の人間が近くにいないからだろうか。
そろり、ヒュリアスを窺う。
ヒュリアスが付き合ってくれるとは、潤は思ってなかったのだ。
派手に遊ぶようなアトラクションじゃないからかもしれない。潤自身も、こういった穏やかな場所で遊ぶことのほうが落ち着くので丁度いいだろう。
「レンゲソウか」
ヒュリアスが歩いた軌跡を彩るのは、縁を濃い紫で飾ったレンゲソウ。
スタッフが設定してくれたものだ。
数歩先を行く潤の背中は、いつもより興奮しているように見える。ヒュリアスよりもその小さな背中を、偏見で見ている部分があったことに気付かされたばかりだ。
今日は反省もかねて、潤のしたいことに付き合おうとヒュリアスは決めている。
時折、楽しそうに潤は駆けていく。
ヒュリアスは急ぐことなくその後を追っていたのだが、ふいに足を止めた。彼が後を追ってきていないと、すぐに気付いた潤が振り返る。
「この花があるとは……」
ヒュリアスは壁の一点を、小さな青い花を見ていた。
花を見てヒュリアスが立ち止まるなど、初めてのことかもしれない。それくらい珍しいことで、潤は彼の横に並んだ。
「なん、て、いう花……?」
「名は知らないがね……この花を指し、この色に染めてみてはと言われたのを思い出した」
名前は知らない。無いのかもしれない。その花は鮮やかな青。
「髪……そっか、言われればそう……だよね」
「耳や尾を染めるのは難しかったんでな……」
見比べている潤に、ヒュリアスは苦笑いを零し、付け加える。
何故、誰に、どうして――そんな問いをヒュリアスは予想していた。
けれど。
「うん。暗い雲の狭間に見える、青空みた、い。似合う、よ」
穏やかに、にっこりと潤は笑った。
その笑顔にぎこちなさは欠片も無かった。
芝生に向かい合って座る。
柔らかな芝生は心地よく、それでいて緑の香りは潤がすするジャスミンティーの華やかさの邪魔をしない。
「ジャスミン茶、いい香り……。ヒューリ、は?」
「俺はいらんよ」
目を閉じているヒュリアスは、匂いに敏感なのだろうか?
いや、それなら花の迷路に入ることは嫌がっただろうし……そんな推測を立てていた潤は、気付いた。
少し、そう、少し。
いつも一緒にいるからこそ分かる程度の変化。ヒュリアスの機嫌が良いように、潤には見えたのだ。
いつか、もっと話してくれるだろうか。
潤の口元は緩く弧を描き、注がれるジャスミンティーを喉へと運ぶ。
ヒュリアスは漂うジャスミンティーの香りの中、潤の言葉を思い出す。
『暗い雲の狭間に見える、青空みたい』、それは友人がくれた言葉でもあった。
親友、か……。
今は遠い人を想うヒュリアスの心中は、春の日差しのように暖かかった。
●いたわり
女の子がどういうものを好きなのかさっぱり分からない。そんなルーイにとって、『花の迷宮』は渡りに船だった。
これはどう?と、エレオノーラを誘えば、彼女は淡々と素敵だと思いますと、答えた。
エレオノーラの視線は入り口で手を振っているユニ子ちゃんへと向けられていて、自分の選択は悪く無いようだとルーイはほっとしたのだった。
唐突に服を掴まれたことに気付いたルーイが振り返る。
エレオノーラはルーイの服を掴んだ状態で足元を見ていた。CGに驚いたらしい。
釣られてルーイも足元を見る。
白にほんのり赤が乗ったような色合いの椿と、タンポポのようにふんわりとした形状のピンク色の花――デージーがモニターの中で咲いている。
「なるほど、足元にも仕掛けがあったのですね」
「すごい、足元も凝ってるね」
見入っていたエレオノーラは、ふいに自身の手が何をつかんでいるかに気付いた
緩やかな動作でその手を離す。
「あ、ごめんなさい……」
「大丈夫大丈夫、むしろ役得?」
返された軽口に、くすり、エレオノーラは笑みを零す。
それを見たルーイも満足げに笑い、じゃあ、行こうと、先を促した。
エレオノーラは頷きを返し、時折、花の足跡を見ながらも先へ進む。
鮮やかな花や儚げな花など様々な花が咲き誇る中、エレオノーラの目を引いたのは白い、五枚の花弁を持つ花。
「ヘレボルス……冬の花ですね」
「へえ、冬の花なんだ。エレオノーラ詳しいね」
「図鑑で見た事があります。クリスマスローズとも呼ばれる花です」
外に出る事を許されず、寝台の上で眺めていた。
いつか実物を見ることが出来たなら……そう夢見ながら。
「実際に見ることができて嬉しいです。次も来れるかわかりませんし、じっくりと見ておきたいですね」
含みとネガティブさを感じ取ったルーイの頬が僅かに引きつる。
けれどすぐに彼は気持ちを切り替え、過剰なまでに明るく言った。
「次もあるよ、必ず!今が冬の花なら次は春の花がいいな。楽しみだね!」
その気遣いに気付いたのだろう。
エレオノーラはうっすらと微笑んで答えた。
「……そうですね。次は、春の花を見たいです」
疲れを訴えたエレオノーラをベンチに座らせ、ルーイは広場にあるショップに向かう。
ジャスミンティーと薔薇蜂蜜のクッキーを一つずつ。
疲れたときには甘いものを思ったのだが、エレオノーラはクッキーはいらないと、差し出されたジャスミンティーだけを受け取る。
それならと、クッキーはルーイが食べることにしたのだが、一つ口に入れてようやく自身の飲み物を買い忘れたことに気付く。
美味しいことには美味しいが、クッキーに口の中の水分を持っていかれる。
喉の渇きが酷くなった為、一旦ここまでと手を止める。
「そうだ。次はユニ子ちゃんのぬいぐるみでも探しにいく?」
「……それは、少し気になりますね。でも、ルーイも行きたい場所などあったら遠慮せず言ってくださいね」
エレオノーラの言葉を、ルーイは気にするなと言わんばかりに笑い飛ばす。
「俺も充分楽しんでるから」
なら、いいのですが……そう答えたエレオノーラを見て、ルーイは笑みを深くする。
いいんだよ、もっとわがまま言っても。
彼の顔が語っている言葉に、エレオノーラは気付いていなかった。
けれど、その意味に気付くのはきっと遠くは無い。いつか――
●紅弁慶
自然と視線があちらへ、こちらへ。
花の迷宮というロマンチックなアトラクションに、輝の瞳が黒真珠のように輝く
大人っぽい外見だが、今の月野 輝の仕草は歳相応の少女のもの。
ふいに、輝は並んで歩くアルベルトの視線が自分へ向けられていることに気付いた。
アルベルトの口角は微笑ましそうに、ほんの少し吊り上っている。
「なに?ジッと見て?」
「いえ、少し前とだいぶ反応が違うと思いまして」
以前ならば、わざと落ち着いて見せて「悪くないわ」と言っていただろう。
それは輝自身も分かっている。
「綺麗な物は綺麗って言った方がいいなって」
そう思うようになったのはアルベルトのおかげだ。
けれど、それを面と向かって言うのはやはり気恥ずかしく、胸の内で言い添えるだけだ。
ちらり、自身の足跡を彩る花を見た後、輝は再び周囲に視線を移す。
「見て、チューリップの隣にひまわりが咲いてるわ。あっちは秋桜に桔梗、牡丹?ふふ、四季がめちゃくちゃだわ」
輝が指摘したように、四季の花が平然と並んで咲いている。
それにも関わらず雑然とした印象は無い。
「でも、とても綺麗、いい香り……夢みたいね」
微笑を浮かべた輝は、自身の言葉で気付いた。花の並びに、色合いと香りに統一感があるのだ。
それに気付いた輝はアルベルトの腕を取り、引っ張った。その輝の足元で赤い小さな花が咲く。
「次はどんな花があるのかしら、ね、あっち行ってみましょ」
予想外の出来事にアルベルトの瞳が丸みを帯びる。
けれど、それはほんの一瞬。すぐにアルベルトは輝の誘いに応じた。
輝の行動は、『兄』に向けられたものだと思ったから。
彼女の本当の気持ちがどこにあるのか、分かっていなかったから。
輝は、そっと、慎重にアルベルトの腕へと指を絡める。
このまま腕を組んでも大丈夫よね……不安に思いながらも、輝は自身の指先を止めることが出来なかった。
「お茶にしましょう」
そう言ってアルベルトが買ってきたジャスミンティーと薔薇蜂蜜のクッキーを受け取る。
ジャスミンティーの温かさと、薔薇蜂蜜の柔らかな香りが輝の心をより穏やかなところへと導く。
「足跡に咲いてたのカランコエよね。アルが頼んでくれたの?」
「ええ。折角ですからね」
小さな可愛らしい花は、輝の祖母が好きだった花。
輝の祖母は、アルベルトと輝にこの花のことを話してくれた。
おかげで花に詳しい訳ではないのに、今でもアルベルトはこの花だけは花言葉さえ言える。
『幸福を告げる』、『たくさんの小さな思い出』、そしてもう一つ。
「ありがとう。とても嬉しい……」
「輝も覚えてたようで嬉しいですよ」
小さな、幸福を呼び起こす思い出に浸りながらアルベルトは思う。
『あなたを守る』
●温かい心
折角のデートだというのに恋人同士の間はぎこちない。
この前の出来事が原因だということは、二人ともよく分かっている。
だからこそ、どうしていいのかミサ・フルールには分からなかった。どんな顔でエミリオ・シュトルツを見ればいいのかさえ、今は分からない。
「ミサ、足元を見てごらん」
どうしようと、ミサは花へと視線を向けながら悩む。
笑えばいい?怒ればいい?それとも、なんでもないような顔をするべき?……どれも違う気がする。
「ミサ」
いつもはエミリオの前でどんな顔をしていただろう。
楽しくて、嬉しいことがいっぱいで……ああ、でも、この前は……!
「ミサ、俺の話聞いてる?」
「……え?あっ、ご、ごめんなさい!」
その様子で、ミサがエミリオの話を聞いていなかったことは一目瞭然。
エミリオはわざと意地悪く笑う。
「俺と一緒にいるのに……妬けちゃうな」
「ち、違うの!その……」
「冗談だよ。ほら、足元を見てごらん。お前の好きな花が咲いているよ」
エミリオはミサの手を掬い上げて、足元を見るように促した。促されるままに、ミサは視線を足元へと向ける。
そこに咲いていたのはピンクの薔薇。
見る見るうちにミサが笑顔になる。
「わぁ、綺麗、薔薇の花が咲いてる!凄い、凄いね!」
はしゃぐミサの様子に、エミリオは笑みを深くした。
彼女の笑顔に胸が高鳴るのを感じる。
「やっと笑ってくれた」
ミサは、はっとしてエミリオを見た。
彼は穏やかに、どこかほっとしたように笑っていた。
エミリオはミサの頬へと手を伸ばす。
一度、二度とミサの頬を撫でた指先は、そのままミサの柔らかな髪を掬い取る。
「俺はどんな綺麗な花よりもお前が好きだよ。ミサは俺の大切な花だから、俺以外の男に手折られさせやしない」
エミリオの唇が、ミサの髪に触れる。
それをしっかりと見てしまったミサの頬が、あっという間に赤くなる。
「だからずっと笑っていて……その花のような笑顔で」
「……うん」
恥らうミサの笑みは、常とは違うもので。
けれど、床を彩るピンクの薔薇のような、そんな笑みだった。
「さっきはごめんね。考え事をしていたの……」
その、エミリオさんのことだよ。
恥ずかしそうに言い添えるミサに、愛しさが込み上げてくる。同時に、照れもこみ上げてくるのは仕方がないこと。
「そう……さぁ、出口を目指そうか」
エミリオは愛しい恋人へと手を差し出す。
その行動に、照れ隠しの意味合いがまったくなかったかと言われれば嘘になるけれど。
ミサは嬉しそうにその手を取った。
ああ、そうだ。いつもは、こんな風にドキドキしていたんだなと、思いながら。
別れ際。
送ってくれた恋人を一度よく眺めて再確認。ブーツを履いているのだから、背伸びをすれば充分に届くはず!
「今日はどうも有難う、楽しかったよ」
そう言って、背伸びをして重ねた唇。
初めての――ミサが覚えている限りは――キス。
「えへへ……あの日の仕返し!」
はにかんでミサは笑うけれど、エミリオのダメージは計り知れない。
顔を赤くし、口元を手で覆う彼の心中はお察しください。
「それ、仕返しじゃないから」
花の香りのように甘い、そんな一日だった。
依頼結果:大成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | こーや |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | ロマンス |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 11月20日 |
出発日 | 11月25日 00:00 |
予定納品日 | 12月05日 |
参加者
会議室
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2014/11/24-00:37
初めまして、エレオノーラと申します。
パートナーはルーイです。
よろしくお願い致します。
皆様も素敵な休日が過ごせますように。 -
2014/11/23-21:04
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2014/11/23-21:03
潤さん、エレオノーラさん、初めまして。
リチェルカーレと言います。よろしくお願いします、ね。
輝さん、ミサちゃんは久しぶりです。
今回は素敵な迷路だね。
どんな花が咲いているのか、今から楽しみ。
皆さん、楽しい1日を。
-
2014/11/23-20:56
輝さ、ん、…み、ミサ(いつも名前呼びドキドキてれてれ←)、
またご一緒、よろしく、ねっ
リチェルカーレさん、エレオノーラさ、ん、初めまして、だ。
篠宮潤(しのみや うる)と、パートナーのヒュリアス、だよ。どうぞよろしく、だ。
ユニコーンのマスコットさん、かわいい…ね(じー)
花の迷宮、楽しもうっ -
2014/11/23-17:36
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2014/11/23-14:46
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2014/11/23-14:46
エレオノーラさん、ルーイさんには初めまして。
月野輝とパートナーのアルベルトです。
他の皆さんは先日振りだったりお久し振りだったりね。
花の迷路でお散歩、のんびり出来そうで素敵よね。
楽しい休日になると良いわね。
と、言う事で、皆さん……