プロローグ
北風が吹きすさぶある初冬の日。
首都タブロスの郊外にある屋外プールを掃除している清掃員たちがいた。
屋外プールは通常ならば夏に利用されるレジャーだが、冬でもそれなりに使い道はある。
つまり、寒中水泳をする人々がいるのだ!
「うう、さむーい……。プールの掃除って思ったより大変ね……。あとどれくらいブラシ磨きをやり続けるのかしら?」
清掃員バイトの女の子は、髪を束ねて、青いつなぎの姿で、懸命にも、ごしごし、と床磨きの作業を続ける。
「ねー、そこのバイトの子ー! 床の掃除が終わったら排水口の方も頼むねー! やること多くて大変だけれど、がんばってー!」
声をかけてきたのは、清掃員のバイトを管理している女性社員のお姉さんだ。彼女もまた、束ねた髪に青いつなぎの姿で、ごしごし、と床を磨いている。
「はい! 排水口の方も行ってきます!」
バイトの子は、きりの良いところまで床を磨いたあと、排水口の掃除へと向かうのだが……。
***
「ええと……排水口……なんか、詰まっているわね? 何かしら、このぷにぷにしているの?」
バイトの少女は、不審に思い、ぷにぷにしている水色のゼリー状のものに近寄ってみる。
しかし近寄ってみたものの、実に不気味というか奇妙だ。
なぜ、ここにこんなものが置いてあるのだろうか?
よくわからないが、掃除ができないので移動させることにした。
「ブラシで……掃いてしまおう!」
彼女は、ブラシで掃こうとするのだが……。
『ぽよよよ〜ん、ぷに、ぷに!』
怪しい効果音が鳴ると共に、ブラシが弾き返される。
「え、何、これ?」
慌てている女の子の目の前で、さらに信じられないことが起こる!
水色のゼリー状のものは、徐々に排水口から流れ出て、ぷるるん、と丸ごと出現する。
しかも、増えるわ、増える。
排水口から次々と怪しいゼリーが流れ込み、水色以外にも、赤色、黄色、緑色、白色、黒色、とぞくぞくとシリーズで増えて行くのだ!
「きゃあああああああああああああああああ!」
あまりにもの珍事態にショックを受けた彼女は思わず叫び出す。
そして、叫んでいる彼女のそばで、ぷにぷにした物体は、少女を取り囲む。
『ぷに、ぷに、ぷに〜、ぼいん、ぼいん!』
謎の効果音と共に、女の子はゼリーの中へたちまち飲み込まれてしまった。
「いやーん! ぷにぷにするー!」
さらに少女は、ゼリーの中で問答無用に揉まれてしまう……!
「おーい、バイトの子ー? どうしたのー?」
急いで走ってきた女性社員は、眼前で怪しいゼリーたちが女の子を飲み込んでいる姿を見てびっくり仰天!
「おい、おい! なんだよ、これ!」
目を丸くしているお姉さんにも、ぷにぷにした物体たちはぶよぶよと近づき、やがて、その中に取り込んでしまう……。
「きゃああああああああああああああ!」
彼女も悲鳴を上げるや否や、完全に飲み込まれてしまった。
「あん、こら! バカー!」
飲まれたお姉さんも容赦なく揉まれてしまう!
『ぷに、ぷに、ぷに、ぷにー!!』
謎の物体たちは、まるで勝利の雄叫びでもあげているのだろうか。
***
バイトの少女と正社員の女性は、謎のゼリーに飲み込まれながらも、ぷにぷにしている空間をじたばたと泳ぐ。
何分、中が非常にぷにぷにしているので泳ぎづらいが、それでも外を目指してあがきだす。
やがて、二人が同じ場所にたどり着いたとき、ある奇跡が起きた!
『ちゃらりらりん♪ フィーバー!!』
派手な効果音と共に、彼女たちを取り囲んでいた水色のゼリーが一気に弾けて、大量の液体が飛び散り、消滅する!
そして、その反動と共に、女子たちは外へ弾き出された。
水色のゼリーから飛び出た液体をびっしょり浴びながらも、彼女たちは何とか帰還する。
「うえええん……。何よ、これ! 変なゼリーに飲み込まれたかと思ったら、びしょびしょじゃない!」
バイトの子は、全身水浸しで、パニックになり泣き出す。
「うううん……。何とか、助かったみたいー? でも参ったなあー。こんなのがいたら仕事にならないよー。こういう変なモンスターはA.R.O.A.にでも退治をお願いしたいねー!」
同じく全身が濡れている社員のお姉さんも、呆然とため息をついて、困ったねえと笑い出す。
A.R.O.A.の諸君、ぜひ寒中水泳のプールを守ってくれ!
謎の不届き者のぷにぷにたちを一匹残らず、フィーバーするのだ!
解説
屋外プールに発生した謎のぷにぷにを退治するお話となります。
退治方法は至って簡単。
パズルゲームをしてもらいます。
と、言っても、本格的なパズルゲームをするのはシステム上、難しいので、「疑似パズルゲーム」を楽しんでもらいます。
<パズルのやり方>
まず、モンスターの名前ですが、これはデミ・オーガの一種である「デミ・ぷにぷに」(以下、「ぷにぷに」と略)と呼ばれています。ぷにぷには、6種類います。この6種類は色ごとに違う属性を持っています。例えば、「プロローグ」に登場した水色は水属性です。
そして、同じ色のぷにぷに(65cmのバランスボールくらいの大きさ)を最低4匹集めて、並べます。すると、「フィーバー」して弾けて消えていなくなります。この弾けて消える際に、属性ごとにクセがあります。例えば、先ほどの水色であれば、水属性なので、水を噴射していなくなります。
以下、リストします。
水色:水属性。弾けると水を噴射。
赤色:火属性。弾けると火を噴射。
黄色:地属性。弾けると土を噴射。
緑色:風属性。弾けると風を噴射。
白色:光属性。弾けると光を噴射。
黒色:闇属性。弾けると闇を噴射。
初期位置では、100メートルプールに24匹がランダムでいます。(各6属性が4匹ずつで24匹です。)まず、これらを順次、消して行きます。しかし、ぷにぷには、消しても消しても次々と排水口から出て来ます。なので、3R、パズルゲームの作業を繰り返して頂きます。
1組につき、3回まで、お好きな連鎖反応が楽しめます。
例:1回目は水浸し、2回目は火あぶり、3回目は泥まみれなど。
なお「疑似パズルゲーム」ですので、厳密にパズルの計算はありませんから、3回までの連鎖反応の中で、お好きな属性をお好きな連鎖数だけお好きな並べ方で消してみてください。
ゲームマスターより
今回のシナリオですが、色々と真逆のパターンは出来ないか・・・と思いを巡らせた結果、こういうお話になりました。
冬だけれど、夏みたいにプールの話はできないものか。
PBWだけれど、パズルゲームはできないものか。
女性向けでありながら、男性向け要素も取り入れてできないものか。
そして、試行錯誤の結果、こうなったのです!
寒中水泳がお好きな方も、パズルゲームがお好きな方も、ぷにぷにしたものがお好きな方も、ぜひ皆様、シナリオにいらしてくださいね!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
リゼット(アンリ)
この変なぷにぷにしたのを集めればいいんでしょ? 簡単じゃない。さっさと終わらせましょ まずはこの緑色のを並べるわよ 結構簡単に集まったじゃな…きゃ!すごい風! 消すと何かが起こるのね。注意しなきゃ 何笑ってるのよアンリ。次行くわよ? 黄色はなんなのかしら とにかく並べて…消えなさい! うわっ!なるほど土だったのね…泥だらけ… 乾いちゃう前に終わらせるわよ 最後は水色…って閉じ込められた!? や、やだくすぐったい…なんなのこれぇっ! なんだか力が入らなくなってきちゃ…んっ…! アンリ…早く…来て…っ! ひどい目にあった… 出してくれてよかったわ。ありがとう アンリ、やけにやつれてない? ま、たまにはしっかり働いてもらわないとね |
ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
【ぷにぷに攻撃順:光→水→火】 プールとモンスターの掃除ですか 仕事ならばそのように 殴るとすぐ弾けるようです さっさと片付けてしまいましょう ディエゴさんが色々口をだしてきますが 私に構わないでくださいといったはずです。 白のモンスターを殴ると光が瞬きました 続いて水色では水が出てきました…なるほど では次に消すべきモンスターは赤色ですね 自分の属性から効きにくい属性を選んで殴っていたのですが ディエゴさんは構わず私の前に立って火を受け止めました 風属性なのに…なにやってるんですか 肩をかしますよ あなたのせいで転倒しました 仕方の無い人です …ですが、まあ、お礼を言っておきます… ありがとうございます これでチャラにします |
楓乃(ウォルフ)
・白いつなぎ、ポニーテールで作業 ・光→水→風の順で無意識連鎖 ぷに、ぷに、ぷに… どこを見てもぜーんぶ、ぷにっ!可愛い! そうね、とりあえず近くにいるこの子(白)をくっつけちゃおうかしら。 きゃ…!眩しい…! (よろめいて倒れた所で、ウォルフの作っていた水色ぷに連鎖に巻き込まれ水浸しに) やぁん…、ビショビショになっちゃった…。 ん、これ水なのかな?(ペロリと指先を舐める) 甘かったりしないかなって思ったけど、普通の水みたい。 …?ウォルフ、どうしてそんなに離れていくの? きゃっ…!!(ウォルフが風の連鎖反応で飛んでくる) いたぁい…。(目を開けると目の前にウォルフの顔) ……。 …………。 (涙目&子犬のように震える) |
出石 香奈(レムレース・エーヴィヒカイト)
最近普通のオーガと戦ってないわね… (パズルに興味津々)ま、楽しそうだしいっか♪ 率先してぷにぷにの中に入り精霊の指示に合わせて移動 ぷにぷにして…泳ぎづらいっ 連鎖 風→闇→水 まずはこの緑が揃いそうね レムそっち動かして…きゃっ!? そっちこそ髪がボサボサだわ、はいこれでよし(手櫛で梳いてやる 次は黒を揃えて…やだ、真っ暗 レムどこにいるの? ここかしら…何か触った!? 暗い中手探りで脱出しようとしてたら水色が揃ったみたい…冷たーい! くすっ…文字通りの水も滴るいい男ね …ふぁっくしゅ! さっさと服脱いで乾かし…あ、ありがと… 男に肌を見られるなんてどうってことなかったはずなのに、なんでこんなに恥ずかしいのかしら…? |
桜倉 歌菜(月成 羽純)
パズルゲームは得意です! 羽純くん、頑張ろうねっ アレは離れ三角型の要領で行けそう よーし…って、これの中の行かないとダメ…だよね? 羽純くん、手を離さないでね 飛び込むとむぎゅ 羽純くんと密着状態! はわわわ…兎に角連鎖して消さなきゃ! 一回目、水でびしょ濡れ 二回目、闇に包まれて、羽純くんを見失わないように手を伸ばしたら、羽純くんの手が、手がーッ(恥 三回目、突風に煽られ、羽純くんを下敷きに。唇に柔らかい感触。もしかして…!? ご、ごめんね!羽純くん! 慌てて飛び退いて謝る わざとじゃないの、本当に! 弁明するけど、ドキドキが止まらなくて だって、私にとっては初めての… 思い出したら、くらっと目眩が 羽純くんが近!(真っ赤 |
●楓乃&ウォルフ組
プールはあたり一面、ぷにぷにだらけの光景だった。
悪しきぷにぷにを討伐するため、ウィンクルムたちが送られて来たのだが……。
「ぷに、ぷに、ぷに……! どこを見てもぜーんぶ、ぷにっ! カワイイ!」
敵を見て、飛び跳ね、はしゃぎ出す楓乃。
そんな無邪気が相棒に対し、ウォルフは彼女の頭をわしっとつかみ、注意する。
「オマエはいい加減、自分の体力を知れよ。すぐ充電切れみてーにぶっ倒れんだからよ!」
楓乃の身の上世話係までやっているわけではないのだが、ついついいつものパターンを心配してしまうウォルフなのである。
「さっさと終わらせちまいたいし……それぞれ身近なヤツから片付けようぜ!」
ウォルフはとりあえずの方針を提案し、身近でぷにぷにしている手頃なモンスターを探し出す。
「そうね。とりあえず近くにいるこの子(白!)でもくっつけちゃおうかしら!」
楓乃のすぐ目の前には、白のぷにぷにたちが三匹もうようよしていた。周囲には他のカラーもいるが、なんてことはない。さっそく、作業に取りかかることにした。
「えい! それ!」
楓乃が、なんなく白四匹を横に並べると、ぷにぷに弾け出す!
『ちゃらりらりん♪ フィーバー・フラッシュ!』
白いぷにぷにたちは、閃光を放ち、即座に消滅!
シャキン!
「きゃ……! 眩しい……!」
突然の発光に目が眩んだ楓乃は、くらりくらり、とよろめいてしまう!
そして、よろめき倒れた先には……。
「よっしゃ! 水色ぷにの連鎖完成だぜ!」
ガッツポーツで水色を集め終えたウォルフ。
「きゃー!」
「え? うお!?」
『ちゃらりららん♪ フィーバー・スプラッシュ!』
水色のぷにぷにたちは、大量の液体を放ち、一瞬で消滅!
ざっぱぁぁぁぁぁん!!
物の見事に、コケた反動もあり、頭から全身に水を浴びる楓乃とウォルフ。
「やぁん……。ビショビショになっちゃった……。ん? 甘くはない? これ水なのかな?」
楓乃は、したたる指先に、ぺろりと舌を這わせる。
「おま……!!」
まずウォルフ、びしょ濡れになっている相棒の姿に慌てる。
「……っ!!!!」
次にウォルフ、相棒が指先をあでやかに舐めている仕草に、心臓がドッキリ!
「え、ええと、うう……!」
最後にウォルフ、どうしたらいいかわからなくて後退。
「ん? ウォルフ、どうしてそんなに離れて行くの?」
精霊の奇行に不安を覚える楓乃。
「う、うお!?」
ウォルフは後退した反動で、思わず周囲の緑色ぷにを蹴飛ばしてしまう。
すると、偶然にも……。
『ちゃららん♪ フィーバー・ストーム!』
ゴォォォォォ!!
突然、竜巻が起こり、吹っ飛ばされるウォルフ!
「うわっ……!」
「きゃっ……!」
気がつけば……。
ウォルフ目線からでは、彼が楓乃を押し倒していて……。
楓乃目線からでは、ウォルフの顔が目の前にあって……。
「いたぁい……。きゃー! ウォルフ!!」
「お、おい、待て! 違うから! わざとじゃねーからっ!!」
楓乃は涙目で子犬のように震え……。
ウォルフは誤解を解くために必死に謝って……。
しかし、押し倒しているこの姿……。
傍目からはとても言い訳にならないラブな姿勢だ。
この後、二人が冷静になって体勢を起こすには、十分かかったらしい……。
●歌菜&羽純組
ぷにぷにしている目の前の光景を眺めながら、桜倉 歌菜は、腕をまくって張り切っていた。
「パズルゲームは得意だよ! 羽純くん、がんばろうねっ!」
やる気まんまんの神人に対して、相棒の月成 羽純は、髪をくしゃくしゃとかきながら、クールな表情をしている。
「これも仕事だ。パズルは歌菜に任せる! 早いところ片付けよう!」
二人はさっそく周囲を見渡して、連鎖が行けそうなぷにを探し求めた。
「アレは離れ三角型の要領で行けそう!」
歌菜は付近にいる水色のぷにたちを指差して羽純に教えてあげた。
「ああ……行けそうだ。しかし、どうする?」
どうも三角型から連鎖を導き出すには、やや力技の操作が必要そうだ。
「よーし! コレの中のを移動させれば……。羽純くん、飛び込むから手を離さないでね!」
どうやら歌菜はぷにの中へダイブ・インをするらしい。
「了解! 行くぞ!」
羽純は歌菜の手を握って、ぷにの世界へ一緒に飛び込んだ!
ぷに、ぷに、ぷに〜!
二人は、ぷにの中で、あちらこちらを揉まれつつ、体と体が接近!
(きゃ! 羽純くんと密着状態!!)
顔が赤くなる歌菜をよそに……。
羽純は、飽くまで冷静に、連鎖予定の水色へ向かって、がむしゃらに泳いでいるのだ!
(む……ここのぷにを取り替えれば!!)
離れ三角型、ついに完成☆
『ちゃらりらら〜ん♪ フィーバー・トライアングル・ウォーターフォール!』
ざぱぁぁぁぁん!!
水色が連鎖反応を起こし、歌菜と羽純は、水圧で吹き飛んだ。
そして、上空から滝に打たれた!
「あああん……! びしょびしょ!! きゃ、服がああああああ!」
濡れ濡れで半ばパニくる歌菜。
「水でびしょ濡れくらい、大したことはない!」
ぴしゃりと言い切る羽純だが、彼も彼でびっしょびっしょのいい男☆
「さて……。次はこの黒いやつ、行くか! それ!」
さすがに立ち直りの早い羽純は、目の前の黒ぷにをそろえ始めるが……。
『ちゃらーん♪ フィーバー・ダークモード!』
四匹そろって、連鎖して消し飛んだ黒ぷにぷにたちは、まるで巨大イカがスミを吐いたかのように、真っ黒のスモークを噴出!
もく、もく、もく……。
闇の中で互いを見失う二人。
「羽純くーん!? どこー!?」
「歌菜……!?」
(あ、誰かの手が……。羽純くん!?)
(おや……むにゅ? なんだ、この柔らかで温かな感触は……。ま……まさか!?)
「きゃあああああああ!」
「うおおおおおおおお! すまあああああああん!」
(はあ……はあ……。けっこう、アルんだな……!)
そして、ダークモード終了☆
「悪い! わざとではない! 許してくれ!」
「うえええええええん、ひどいよおおおおお!」
ひたすら謝る羽純。
泣いて、乱心する歌菜。
と、このやり取りの最中……。
新たなるぷにぷにたちの接近により……。
よろり!
と、二人そろってコケてしまう!
『ちゃららん♪ フィーバー・トルネード!』
無意識的にも、本当にウマい具合に、どこかとどこかが連鎖して……。
弾けた緑色のぷにたちから、旋風が!
ゴォォォォォ!!
「きゃああああああああ!」
「お、おい、歌菜!」
風で上空へ吹っ飛ばされた歌菜を……。
落下時点で、羽純が受け止めるのだが……。
『チュッ!!』
顔面キッスが降って来た☆
羽純選手、ノックアウト!!
「ご、ごめんね! 羽純くん! わざとじゃないの、本当に!」
「ははは……いいさ、これくらい……それより……キス、してしまったらしい……」
赤面して、はっと、顔を離す歌菜。
彼女は、くらり、と目眩を起こす……。
「ううん……ドキドキが止まらなくて……。だって、私にとっては初めての……。本当に、ごめんなさい、ごめんなさい!」
「いいから……謝るな……。俺の方こそ、すまん……!」
●香奈&レムレース組
ぷにぷにと踊っている変なデミ・オーガたちを目の前にして、レムレース・エーヴィヒカイトは面食らっていた。
「デミ・オーガの討伐なのだろうが……これ何の作戦?」
戸惑うレムレースの横で、一方の神人である出石 香奈は奇妙な生き物に興味津々である。
「最近、普通のオーガと戦っていないわね……。ま、パズルが楽しそうだし、いっか♪」
さあ、どうしたものか、と頭を抱えるレムレース。
「ううむ、なるべく外側を回るようにして、着実に一回ずつ消して行くか?」
レムレースは、プールサイドの外側付近に緑色のぷにが集まっている傾向に気がついた。
「おい、香奈! あの中へ……行くぞ……!」
とは言うものの、ためらいを感じているレムレース。
「うん! 行こうっか♪」
一方で香奈の方は、率先してぷにぷにの中へ、ダイブ・イン☆
ぷにぷにの中は、やはり、ぷに、ぷに、ぷに〜♪
という具合で、泳ぎづらいったらありゃあしない!
(ううん……あちこち揉まれて……あん……泳げない……しかし……そこの緑、行けそうね……レム、そっち動かして……きゃっ!?)
(よし、香奈……この緑、頼む……あともう一手で……連鎖だ……)
二人はぷにぷにの中を泳ぎ回り、協力して、なんとか緑四つの連鎖を達成した!
『ちゃらりらりん♪ フィーバー・サイクローン!』
ぶうううううん!
と、緑ぷにたちが弾け、爆風が吹き荒れた!
「あん、きゃっ!」
顔面から思いっきり爆風を浴び、プールサイドの端まで飛ばされる香奈! その後、レムレースも続いて吹っ飛ぶ!
黒髪のストレートロングが荒れに荒れ、香奈の髪はあらぬ方向へ乱れている……。
レムレースの方も、緑色の髪がおもしろいくらいにボサボサだ……。
「み、妙な声を出すな! それにその乱れ放題の髪、まとめた方が……!」
レムレースはパートナーのあらぬ姿を見ながら、忠告する。香奈はポケットから髪留めを取り出した。
「そっちこそ、そのボサボサの髪……はい、これでよし!」
香奈の方は、レムレースの髪を手櫛で梳いてあげて、寝癖みたいな髪を直してあげた。
「さあ、気を取り直して……次は、黒が行けそうだな?」
ちょうどプールサイドの端にいたレムレースたちは、外枠のあたりに黒ぷにが溜まっていることを発見し、集め出す。
「レム、そっち行った!」
黒ぷにをスライドさせて、ささっと手渡す香奈。
「よっしゃ、横並びの黒が完成するよな?」
最後の黒ぷにを、ぼよん、と当てはめ、横連鎖、完成☆
『ちゃらら〜ん♪ フィーバー・タコスミ!』
もく、もく、もく……。
まるでタコスミを大量に浴びたかのように、あたり一面、真っ黒な闇に閉ざされる!
「むむ、今度は闇か……。おい、うかつに動くな!」
闇の中で神人を見失ったレムレースは、手探りで彼女を探し求めた。
「レム! どこにいるの? ん? ここかしら……何か触った!?」
香奈も手探りで精霊を探していたところ、ちょうど相手の手らしき部分がぶつかり……とっさにその手を握る。
すると、握られた手の持ち主も……香奈を引き寄せてくれて、彼女は一気に、ぐい、と体が動かされる。
「……香奈を発見……。いいか、香奈? 落ち着いて……あ、ああ!?」
不安な暗闇の中で、何とか香奈を落ち着かせようとするレムレースだが、逆に彼が落ち着くことがなかった。
なぜなら、なぜでなくても……。
ぷに、ぷに〜!
(い、いいい、今、何か柔らかいものが当たったような……!?)
「ん? どうしたのレム? 大丈夫? レムの方こそ落ち着いて!」
と、彼を抱きしめる香奈であったが、抱きしめれば抱きしめるほど、リアルぷにぷにの刺激でたじろぐレムレース☆
そこに邪魔者が!
ぷに、ぷに、ぷに〜!!
ぷにぷにたちが寄って来た!
「きゃっ!」
「うおっ!」
抱きしめている体勢から、ぷにたちのアタックに滑って、一気につるりとすってんころりん!
『ちゃららん♪ フィーバー・タイダル・ウェーブ!』
ざっぱぁぁぁぁぁん!
襲われてコケた反動で、気がついたら水色のぷにたちを連鎖させていた。
まるで大波を直撃したかのように、頭上から大量の液体を浴びてしまった二人! 今や二人の姿は、水も滴るいい女といい男☆
「ううん……冷たーい! ふぁっくしゅ!」
全身びしょびしょの服を着ていては風邪をひくだろうと心配し、香奈は服をぬぎぬぎと脱ぎ始める……。
「ふぅ……。さみぃ……。しかし、寒中水泳の気分は味わえたな……。って、香奈!」
ぶるぶると震えていたレムレースであったが、急いで上着を脱いで、水を絞り、香奈に羽織わせた。
「女性が体を冷やしてはいけない!」
「え? あ、ありがとう!?」
(どうしたのレム? それにあたし……男に肌を見られるなんてどうってことなかったはずなのに、なんでこんなに恥ずかしいのかしら……?)
●ハロルド&ディエゴ組
他の組が、きゃっきゃ☆うふうふ♪ という感じで、ぷにぷに退治をしていたとき……一組だけ気まずいムードの組があった……。
「ふぅ……。プールにいるモンスターの掃除ですか。仕事ならば、それも仕方ありませんね」
何となくやる気がしない、しかしウィンクルムの仕事もサボるわけにはいかず、半ば義務的な気持ちで任務を開始したハロルド。
「よし、エクレール(=ハロルド)! まずはどれから消そうか?」
やや無理げにも、にこにこと話しかける相棒のディエゴ・ルナ・クィンテロ。
「ディエゴさん……口を出さないでください。私にかまわないでください!」
ふん、とぷりぷり怒りながら行ってしまうハロルドであった。
というのも、こういう険悪な雰囲気になってしまったのは、先日の任務、「迷惑写真家グレムリン」のせいである。ハロルドはディエゴが自分を信じてくれていない、監視している、ウソをついている、といった誤解をしたまま仲直りができていないのだ。
「さあ、さっさと片付けてしまいましょう!」
固まっているディエゴをよそに、ハロルドは手始めに、白ぷにを集め出した。
「ふん、それ!」
ハロルドは、ぷにぷにと動く物体たちを、殴りながら動かしている。まるで、ぷにぷにがストレス発散のサンドバッグかのように……。
「はい、四つ! これで連鎖です!」
『ちゃらりららあん♪ フィーバー・シャイニング!』
ピカっと、と閃光が瞬く。
一瞬、強い光が当たり、思わず手を前に出して、目を閉じたハロルドであったが……。
「光属性ですか……。まあ、自分の属性から効きにくい属性を選び続けて行けば、心身にダメージはさほどありませんね……」
と、次にハロルドは、水色を狙う。
水色=水属性というのも、ハロルド自身が水属性なので、無難な選択という意味で彼女は水色ぷにを集め出した。
『ちゃららん♪ フィーバー・アクア・アタック!』
ざっぱぁぁぁぁぁん!
正面から全身に水の攻撃を浴びるが、難なく受け止めたハロルド。
しかし、服は全身びしょびしょで……。
もし、今回、二人の中が険悪でなければ、他の組みたいに、いやん☆バカん♪ という感じで、うきうきと楽しんだことであろう。
ディエゴは、どうというフォローもできず、気まずく黙って観察していた……。
(まずい……。そろそろ何かで挽回しなくては!)
「ふむ……。次に消すべきぷには……赤色ですね!」
ハロルドのこの選択もまた、自分が水属性なので、火属性であれば、攻撃を受けたとしても大したことはないだろう、という計算が働いている。
「そーれ……! これで、四つ!」
『ちゃらちゃらちゃら♪ フィーバー・ファイアボール!』
どかん、どかん、どかん!
爆発して消えた赤色のぷにたちから、火炎玉が弾け飛ぶ!
(む……まずい! エクレールが火炎玉に砲撃されてしまう!)
とっさに飛び出したディエゴ。
ハロルドの前に立ち、燃え盛る火炎玉を直撃して受け止める!
『ちゃら〜ん♪ クリティカル・ヒット! HP −100!!』
「ぐわああああああああ!」
火属性の攻撃をクリティカルで受けて、全身が焼かれ、思わず崩れ落ちるディエゴ。
「ちょっ……!? ディエゴさん、風属性なのに……なにやっているんですか!?」
相棒が取った不可解な行動を目の辺にして、焦り出すハロルド。
「肩……貸しますよ……」
あきれて見かねたハロルドは、倒れているディエゴの腕を肩にかけ、起き上がらせようとするが……。
ちょうどその立ち位置は、先ほど、ハロルドが水色ぷにを消したところなので……水浸しであって……。
案の定……二人は、勢いよく大転回☆
が、しかし……。
「エクレール……大丈夫か……」
二人そろってコケる際にも、ディエゴは自分の体を下にして、ハロルドを受け止めていたのだ。
もっとも、その代償として、残りわずかなHPはさらに削られ、メガネが曲がってしまったのだが……。
「ふう……あなたのせいで転倒しました。仕方のない人ですね……。ですが、まあ、お礼を言っておきます……。ありがとうございます。これでチャラにします」
ハロルドの容赦の一言で、瀕死のディエゴはまるで女神に救われたかのような表情で、静かに目を閉じた。
もちろん、彼は死んではいない。
むしろ、二人の関係に新しいスタートが切れたことで、こういう体当たりのやり方も悪くないな、と微笑するディエゴであった。
●リゼット&アンリ組
さあ、ぷにぷにたちが目の前にうようよと集まって来たぞ。
ぷにぷにたちを、にたにたと眺めながら、リゼットは、ふふんと笑う。
「この変なぷにぷにしたのを集めればいいんでしょ? 簡単じゃない! さっさと終わらせましょ! そうね……まずはこの緑色、並べるわよ、アンリ!」
アンリと呼ばれた精霊の方も、立っている耳をかきながら、あくびをしていた。
「うん? おお! やってやるか!」
やる気満々な声を上げて、アンリはリゼットと一緒に緑色のぷにを並べ始めた。
「けっこう簡単に集まったじゃない!」
「おう、楽勝だろ!」
『ちゃらりらちゃん♪ フィーバー・ウィンド・カッター!』
びゅん、びゅん、びゅん!
まるでカマイタチのような風が巻き起こり、周囲のあらゆるものが疾風に襲われる!
もちろん、例外なく、リゼットのスカートも!
(ん? ……ピンクの……うさぎさん! ぷぷっ、お子様すぎだろ!)
「きゃ! すごい風! 消すときは注意しなきゃ! って、アンリ、何を笑ってるのよ!?」
精霊の心、神人知らず。
この後の恐怖展開を想像すると、アンリは今、目撃してしまったものは彼の心の中だけに止めることにした。
「いや、なんでもねぇよ! なかなかおもしろい仕事になりそうだと思ってさ!」
それとなくごまかすアンリであった。
「さあ、さっそく次、行くわよ? 次は、このへんに転がっている黄色はどうかしら? とにかく並べて消すわよ!」
「よし来た!」
リゼットが指示を出し、アンリが黄色ぷにをころころと転がす。
ころ、ころ、ころ。
ぷに、ぷに、ぷに。
連鎖、完成☆
『ちゃらちゃらら〜ん☆ フィーバー・どろどろビーム!』
黄色のぷにたちは次々と弾け……。
弾けた先から、泥をぬっぷりと放射!
ぴちゃ、ぴちゃ!
降り注ぐ泥に濡れて、どろどろになる二人!
「うわっ!? 泥だらけ……! 乾いちゃう前に終わらせるわよ!」
それでもリゼットは士気を削がれていず、むしろこれからが勝負だと張り切っていた!
しかし、アンリの方は……。
「ったく、なんでプール掃除でこんな泥だらけに……。って、おい、リズ、やめろ! お前はフツウのコトしか言っていないが……そのセリフは色々とマズいだろう! お前の年齢的にも非常にマズい!」
慌てふためく精霊の忠告に対して、リゼットは不可思議な表情で首を傾げていた。
「よくわからないんだけれど……! さあ、次! 水色行くわよ!」
「へい、へい……」
だが、張り切って作業する二人の前に、水色のぷにぷにたちの方から、ぶよぶよと歩きながら近寄って来た……!
「な、なによ……。きゃっ!?」
「え? リズ!?」
ぷに、ぷに、ぽよ〜ん☆
リゼットは、ぷにぷにに呑まれてしまった!
(っ……! 閉じ込められた!? や、やだ、くすぐったい……なんなのこれぇっ! いやん……なんだか……力が入らなくなってくちゃ……んんん……アンリ……)
「って、やべえだろ、これ! おい、リズ! 今、助けるぞ!」
ぷにぷににダイブ・インしたアンリは、泳ぎづらいゼリー状の海を犬かきで急行!
(そうだ……連鎖しちまえば……ここの水色、いただき!)
『ちゃららら〜ん♪ フィーバー・ブルーハワイ!』
ざっぱぁぁぁぁぁん!
水色のぷにたちが連鎖し、消滅し、洪水が起こり、リゼットとアンリが弾き出された。
「はあ……はあ……。今日はよく働いたと思うわ、俺。スコアアタックも出てるんじゃね?」
「ふう……ひどい目にあった……。アンリ、出してくれてありがとう。でもやけにやつれてない? ま、たまにはしっかり働いてもらわないとね!」
●リザルト
『じゃんじゃかじゃん♪ ステージ・オール・クリア! ユー・ウィン!』
<終わり>
依頼結果:大成功
MVP:
エピソード情報 |
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マスター | 夜神鉱刃 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | コメディ |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 11月18日 |
出発日 | 11月24日 00:00 |
予定納品日 | 12月04日 |