【ユニパ!A】リア充撲滅宣言?(雪花菜 凛 マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

 タブロス市内のゲームセンター『ユニゾンパーク』。
 屋内型のテーマパークで、建物が全部ゲームセンターとなっています。
 豊富なゲームを一日中遊び倒せる人気スポットで、休日ともなると、カップルや家族連れで賑わっています。
 今日も今日とて、沢山の人々がゲームを楽しみに訪れていたのですが──。

『リア充、爆発しろー!!!!』

 そんな場違いな叫びが、辺りに響き渡ります。

「くっ……こいつら、強い!」
 マレットを手に、イケメンの頬からツーッと汗が落ちます。
「きゃ、また……!」
 可愛らしい女の子のマレットを難なく躱して、叩きこまれたパックがゴールに吸い込まれました。
「ふふふふふふ……」
「俺達の勝ちだな!」
 赤髪と青髪の、とても顔立ちが似ている二人の青年が、得意満面に勝利のポーズを取ります。
「さぁ」
「約束だ!」
 青年二人が手を差し伸べ、イケメンは項垂れて、女の子は泣きそうな顔になりました。

 ──リア充め、思い知れ!
 ──イケメンよ、恋人が目の前で、見知らぬ男にチューする所を見て、悔しがるといい!
 ──ってゆーか、はよチュー!
 ──ついに初キッス、ゲットだぜ!

 青年二人と、イケメンと女の子のカップルは、エアホッケーで勝負をしました。

 『青年達が負けたら、独占しているエアホッケー台を他の人に譲る。
  青年達が勝ったら、女の子が青年二人にキスをする』
 そんな条件で。

「すまない……俺が弱いばっかりに」
「ううん、貴方は素敵だったわ! それに、このエアホッケーを占拠しているこの人達を放っておけなかったんだもの」
 イケメンと女の子は見つめ合います。

「こいつら、この期に及んでさらにイチャついてやがる!」
「さっさと約束守れよ!」

「「待て!!!!」」
 
 そこへ、貴方達は乱入しました。

「何だ? お前らもカップルか?」
「リア充、爆発しろ!!」

 青年二人を見て、貴方達はこう言ったかもしれません。

 ──逆だ。私達がお前達を撲滅してやる──と。

解説

ゲームセンター『ユニゾンパーク』にあるエアホッケーにて、青年二人とエアホッケー勝負するエピソードです。

負けたら、神人さんが青年二人にキスをしなければなりません。
勝てば、青年二人はエアホッケー台を開放し、周囲の皆さんに感謝されます。

エアホッケー台は、建物の数ヶ所に設置されており、ウィンクルムさん達に撃退される度、
彼らは台を変えて、同じような悪さをします。

皆様は、各自青年達を撃退する事となりますが、
共闘したい!という場合は、掲示板ですり合わせの上、プランに明記頂きますよう、お願い申し上げます。

この場合、通常は、神人さんと精霊さんで青年二人と戦いますが、
精霊さん二人と、青年二人で戦う、
神人さん二人で、青年二人と戦うという図式も可能です。

10分の制限時間内に、相手ゴールに7点先に入れた方が勝ちとなります。
制限時間内に7点入らなかった場合は、得点が高い方が勝ちです。

なお、青年二人はかなりの腕前の上、『ひたすら神人さんを口説く』精神攻撃も行って来ます。
歯の浮くような台詞や、破廉恥な台詞が飛ぶ恐れがありますので、ご注意ください。
(真剣に彼女が欲しく神人さん達を口説いてきますが、色々残念な仕様です)

また、中二っぽい必殺技を叫んで来ますので、腹筋にもご注意ください。
中二っぽい必殺技を叫んで返すのもいいかもしれません。

普通に戦えば、精霊さんの力で、青年二人に負ける事はないでしょう。

『ユニゾンパーク』への入場料やゲーム代金として、「300Jr」掛かります。
あらかじめご了承ください。

<登場NPC>
デズ&ダグ(17)…双子のチャラい外見の青年。色々残念。カップルを羨むあまりに暴走中。

ゲームマスターより

ゲームマスターを務めさせていただく、『運動神経は皆無ですが、エアホッケーは得意!』な方の雪花菜 凛(きらず りん)です。

木乃GM主催【ユニパ!AorG】連動シナリオです。
ゲーセンと聞いて飛び付きました!
雪花菜が担当するのは、アトラクション系のAです♪

色んなゲームを考えたのですが、雪花菜が唯一得意といえるエアホッケーを題材にしてみました。
楽しくエアホッケーを楽しんで頂けたらと思います。お気軽にご参加頂けますと嬉しいです!

皆様の素敵なアクションをお待ちしております♪

リザルトノベル

◆アクション・プラン

マリーゴールド=エンデ(サフラン=アンファング)

  困った方々ですわね
しっかりどかーん!と反省して下さいなっ

○負けたらキスについて
サフランと私のコンビですもの、負けませんわっ
(…逆の立場を想像したら、何故だかわかりませんけど
とっても面白くなかったですし)

○エアホッケー
開始前にサフランと相談して
ゴールはサフランに任せて前半は攻撃に専念

攻撃するのは私だけという印象を付ける為にも
ガンガン攻撃しますわっ

それにしても何か格好良い攻撃台詞言ってますわね
つ、つられて言いそうになりますわ

○勝負後
サフランは普段もあんな感じですけれど
やる時はやりますのよ
と自分の事のようにえへんと自慢しながら双子に説教

恋とは落ちるものですわ
こんな事をしている内は、まだまだですわね?


夢路 希望(スノー・ラビット)
  トランスもやっとなのに…知らない人にキスなんて、そんな…
でも、このままでは皆さんが遊べません
…勝てたら、本当に開放していただけるんですね?

遊んだ事はありますが…正直あまり自信は
彼とぶつからないよう気をつけつつ
頑張ってパックを返します
必殺技は聞く分にはあまり気になりません<サブカルチャー

…えっ
わ、私なんか、そんな
こ、困ります
…うぅ
慣れていないのでどう返せばいいのか分かりません
最初は恥ずかしいだけでしたが段々怖くなってきました
…ゆ、ユキ?
な、何だか様子が

…あっ
私達の勝ちです!
ユキのおかげですね
…ありがとうございます
凄く、かっこよかったです

お誘いには照れつつ喜んで
ふふ、負けませんよ?


※双方アドリブ可



Elly Schwarz(Curt)
  個人戦

・歯が浮く言葉を言われる度にピクピク
僕が可愛い?嘘はいけません。
僕は自分が誰より劣ると自覚してます、そんな言葉もう通用しませんよ。
そんな言葉で攻撃するなら、他の方へどう…ぞっ!

・勝負後、青年2人の話(悔しがってる様子も)は聞いてない
(キスと言えばこの前【エピ40】のキスの意味。
調べましたけど…腕は恋慕、手首に近かったとしても欲望?
…どれもきっと違いますよ、ね?)
…へ?何ですか?
考え事をしていたので、聞いてなかったです。すみません…。
あなた方はかなりの腕前ですね。

へ?クルトさんには選べる権利があるんですから
ウィンクルムだからって僕に気を使わなくても…っ!?
(勘違いではなかったんですか!?)



リオ・クライン(アモン・イシュタール)
  夢溢れる遊園地で恋人達に迷惑を働くなど・・・。
その様な輩は私達が成敗してくれる!
べっ、別に私達はカップルという訳ではないからな!?(赤面)

〈行動〉
・実はエアホッケー自体をよくわかっていないリオさん。
「えっと、コレを使ってアレを打ち返せばいいんだな?」
・勝負時は慣れないながらも、冷静な分析力で相手の行動パターンを見抜く。
・青年二人の破廉恥な台詞に思わず固まってしまうが、恥ずかしさと怒りで強烈な一撃をお見舞いする。
「この・・・破廉恥なーーっ!!」
・「お前達に教えてやる・・・愛とは奪うものではない、与えるものだ!」
・勝負後、落ち着いたところで自分達の白熱ぶりを思い出し、恥ずかしくなってしまう。



ブランシュ・リトレ(ノワール)
  あ、あの、人に迷惑をかけるのはダメだと、思います

か、カップル?カップルに見えますか?
うう、子供…
ノワールさんもそう思ってるってことですよね
確かにノワールさんから見れば私なんて子供だと思いますが…

ちょっとショックでしたが、試合に引きずっていてはダメ、ですね
他の方のためにも、頑張って勝たないと…
私はエアホッケーの経験はないですがノワールさんがいますし、きっと大丈夫です
ええと…、がんばってゴールは守ります!

私がもっと背も高くてすらっとした大人の女性だったら…
ノワールさんもまた別の反応をしてくれたでしょうか?
ま、まだ私だって成長期ですし、チャンスはあるはずです!
えと、気長に待っていてもらえたらなと…



●1.

 紅い瞳を険しく輝かせ、 リオ・クラインはびしっと双子の迷惑プレイヤーを指差した。
「夢溢れる遊園地で恋人達に迷惑を働くなど……その様な輩は私達が成敗してくれる!」
 彼女の隣に立つアモン・イシュタールは、面白そうにそんな彼女を見ている。
「お前らもカップルか?」
「べっ、別に私達はカップルという訳ではないからな!?」
 『カップル』という単語に、リオの頬が真っ赤に染まった。
「「アヤシイ」」
 じーっと見てくる双子に、リオは吠える。
「兎に角、私達と勝負だ! 私達が勝ったら、そのカップルとこのエアホッケー台は開放しろ!」
 ニヤリと双子の口元に笑みが浮かんだ。
「じゃあ、俺達が勝ったら」
「アンタにチューして貰うぜ!」
 リオを指差し、何だか良く分からないポーズを決める双子。格好付けているつもりらしい。
「私達は負けん! その勝負、受けた!」
 リオが腕組し宣言すると、周囲から拍手が巻き起こった。
(また面倒くせぇ奴らと関わっちまったなぁ)
 アモンは軽く前髪を掻き上げる。
(こうなったお嬢様は言っても聞かねぇだろうし……仕方ねぇから、あいつらのノリに付き合ってやるか)
 『面白そうだし』という言葉を飲み込んで、アモンはエアホッケー台のマレットを手に取った。
「ところでよ」
「何だ?」
「お嬢様はエアホッケーをやった事があるのか?」
 アモンからマレットを受け取りながら、リオははたと止まる。
「えっと、コレを使ってアレを打ち返せばいいんだな?」
 パックを指差すリオに、アモンはヤレヤレと肩を竦めた。
「大体そうだな。パックを相手陣地のゴールに入れたら得点だ」
「ルールも知らないのに勝負を吹っ掛けて来たのか?」
「楽勝の予感!」
 双子がポーズを決めて囃し立てるのに、リオはキッと眼差しをキツくする。
「これくらいのハンデがあった方がいいんだ!」
「まぁ、見てろよ」
 アモンは笑ってマレットを構える。
「サービスは貰っていいんだよなぁ?」
「いいぜ、来いよ」
 双子が好戦的に笑った。
「遠慮なく」
 ヒュッとアモンがマレットを動かすと同時、稲妻のようなサーブが壁に反射して相手ゴールに突き刺さる。
「「え?」」
 双子は一歩も動けない。
「まず、一点」
 アモンが人差し指を立てて、双子をニヤニヤ見つめた。
「あんなのマグレに決まってる!」
「あーそうだな。マグレだ。次はそっちのサービスだろ? 受けられるかなぁ」
 しれっとフェイクを交えてアモンが答えれば、双子は信じた様子で、
「最初だから温めにしてやるよ!」
 リオの方を狙って打ってくる。
「あ……」
 パックは、リオのマレットを通り抜けてゴールに入った。
「『あ』だって、かっわいい~♪」
「なぁなぁ、その可愛い声で俺たちとイイコトしようぜーッ」
 勢い付いた双子が、次々とリオへ言葉を投げてくる。リオは固まってからぷるぷると震え、
「この……破廉恥な──っ!!」
 思いっ切りマレットを振った。放たれた強烈な一撃が、相手ゴールへ突き刺さる。
「こわいこわいー♪」
 双子はまだ余裕な様子で、パックを受け止めた。
「行くぜ! カップル殺しの夜想曲(セレナーデ)!」
 そんな叫びと共に、左右の壁を細かく反射しながらパックがゴールに迫る。
(この角度なら、ここに来る筈!)
 注意深く観察していたリオのマレットがパックを掠める。勢いの落ちたパックにアモンの口角が上がった。
「喰らいやがれ、風皇鉄槌(ストライクエア)!」
 ズバッ!
 超速の一撃が双子のゴールへと突き刺さった。双子は驚いて口をパクパクさせている。
「まだまだ行くぜぇ!」
 アモンとリオの猛攻撃が始まった。双子も必死に打ち返すが、二人には隙がない。
 そして、その時はやって来た。
「これで」「終わりだ」
 リオとアモンの声が綺麗に重なる。
「「触愛・天翔突(フライング・ラブアタック)!!」」
 二人同時に打ったパックがゴールに吸い込まれ、ゲームセット。
「ま、負けた……」
 周囲からは拍手が巻き起こっている。
 がっくりと床に手を付く双子を見下ろし、リオはきっぱりと言った。
「お前達に教えてやる……愛とは奪うものではない、与えるものだ!」
 隣でアモンがクッと喉を鳴らす。
「これぞ愛の勝利だな?」
「なっ!?愛ではない、愛では!」
 真っ赤になるリオだが、この後、試合中の自分達の白熱ぶりを思い出して更に恥ずかしくなり、暫くの間、アモンにからかわれたのだった。


●2.

「え? キス……?」
 夢路 希望は硬直した。
 トランス化するのもやっとなのに……知らない人にキスなんて。けれど……。
「……勝てたら、本当に開放していただけるんですね?」
 決意を込めた眼差しで見れば、双子の青年は軽い調子で頷いた。
「約束は守るぜ!」
(このままでは皆さんが遊べませんから)
 ぎゅっと拳を握る希望の肩に、ふわりと優しい手が触れた。
「ユキ」
 振り返れば、パートナーのスノー・ラビットの穏やかな笑顔がある。
「……負けないよ」
 そのスノーの言葉に、不思議と力が湧いてくるような感覚。
「はい……!」
 希望は頷くと、マレットを手に取った。
(ノゾミさんが……男の人に、キス?)
 一方、穏やかな表情を作りながらも、スノーの心内は嵐が吹き荒れている。
(……嫌だ。見たくない。させたくない)
 マレットを握る手には知らず力が入っていた。

「可愛い子ちゃんのキス、げっとだぜーッ」
「喰らえ、眼断舞地蹴!!」
 赤毛の青年が鋭いサーブを入れてくる。
「キャッ……!」
 勢いのあるパックに思わず悲鳴を上げて、何とか希望はマレットを当てていった。
「ノゾミさん、任せて!」
 ふよふよと返されたパックをスノーが相手コートへと打ち返す。
(初めてだからコツを掴むまで苦戦しそう。でも、絶対に勝たなくちゃ)
 慣れないながらも反射神経でカバーし、打ち返しつつ、スノーはゴールを守るように動く。
「『きゃっ』だって、可愛いなー♪」
「ねーねー今日の下着の色、何色?」
「…えっ?」
「色くらい教えてくれてもいーじゃんっ」
「わ、私なんかの、そんな……こ、困ります」
 うぅ……と希望は俯いてしまう。こんな事を言われるのは初めてで、どう対処したらいいか分からない。
「減るもんじゃないし、いーじゃんっ。あ、こっそり見せてくれるのでもいいよ?」
「そ、そんな……」
(怖い)
 希望の胸に言い様のない恐怖が浮かんだ。見知らぬ男の人に、どうしてこんな事を言われるのか。怖さに涙までも浮かんでくる。
 プツン。
 ゆらりとスノーが動いた。
 彼の雰囲気が変わったのに、希望は大きく瞬きする。
「……ゆ、ユキ?」
「……こんな人達にノゾミさんは渡さない」
 刹那、コートに入ってきたパックを、スノーは鋭く打ち返した。
「ナッ……!?」
 パックに触れる事も出来ず、ゴールを奪われた双子の顔が驚愕に歪む。
「次」
 妙に迫力のあるスノーの眼光に、双子達は怯みつつも、
「まぐれだろ、まぐれ!」
「行くぜ、皇闇朱雀砲!!」
 強烈なサービスが打ち込まれてきた。
「ホーリーマスカレード!!」
 しかし、スノーは難なくそれを打ち返すと、相手ゴールにパックを叩き込んだ。
 双子に動揺が浮かぶ。
「バトルヘヴン!!」
「キングスクリュー!!」
 双子の必殺技を尽く必殺技で返して。
「……あっ、私達の勝ちです!」
 気付けば、得点ボードが、7点目の取得を示し、希望とスノーの勝利を告げていた。
「そ、そんなぁ……」
 ガックリと双子が崩れ落ちる。
「約束、守ってよね」
 双子を一瞥し、スノーはふぅと安堵の息を吐き出した。希望はそんな彼の袖を掴んで微笑む。
「ユキのおかげですね。……ありがとうございます」
 希望の笑顔を見ると、スノーの心に溜まっていたもやもやとイライラが吹き飛ぶのを感じた。
「凄く、かっこよかったです」
「ちょっと恥ずかしいな」
(守れて、良かった)
 仲睦まじい二人の様子に、双子は更にダメージを受けているようだが、もうそんな事はどうでも良いのである。
「ねぇ、もう一回並んでもいい?」
 スノーは希望の顔を覗き込んで微笑んだ。
「さっきは勝つ事で手一杯だったから、今度はノゾミさんとちゃんと楽しみたいな」
 希望は頬を染めて、大きく頷く。
「ふふ、負けませんよ?」
 その後、二人は仲良くエアホッケーを楽しんだのだった。


●3.

「あ、あの、人に迷惑をかけるのはダメだと、思います」
 ブランシュ・リトレは、おずおずと双子の青年にそう声を掛けた。
 彼女の精一杯の勇気。微かに震えつつも、双子に訴える。
「なんだぁ? お嬢ちゃん達もカップルかぁ?」
 双子の剣呑な視線が、ブランシュと彼女の隣に居るパートナー、ノワールに向けられた。
「か、カップル?」
 ブランシュはパチパチと大きく瞬きして、
「カップルに見えますか?」
 思わず、ずいと身を乗り出して尋ねる。
「いや」「見えない。お嬢ちゃん、子供だし」「親子? 兄妹?」
 即行でそんな答えが返って来て、ブランシュはうぅ……と俯いた。
 彼らにそう見えているという事は、ノワールもそう思っているという事で。
(確かにノワールさんから見れば私なんて子供だと思いますが……)
「ホッケー台は君達のものではない。はた迷惑だ。今直ぐ立ち去れ」
 そんな事をぐるぐる考えていると、ノワールが男達に切り出していた。
「じゃあ、俺達に勝ったら、退いてやってもいいぜ?」
「その代わり、俺達が勝ったら、お嬢ちゃんには俺達にキスして貰うからなっ」
「えっ?」
 双子の思わぬ提案に、ブランシュは肩を跳ね上げ、ノワールは盛大に眉を顰めた。
「子供相手に何を言っているんだ。もっと相手はちゃんと選べ」
「別にいいんだぜー勝負しないで逃げても?」
 ケタケタと笑う双子に、ノワールはふぅと息を吐き出す。
「乗りかかった船だ。このまま放っておくわけにもいかないか。……いいだろうか?ブランシュ」
「は、はい。ノワールさんがいますし、きっと大丈夫です」
 ブランシュはコクコクと頷いた。ノワールと一緒にエアホッケー台に立つ。
「お嬢ちゃん、お手柔らかにね~♪」
(うぅ……子供扱い)
 双子の言葉に、ブランシュはまた俯いてしまった。
「ブランシュ」
 ポンと軽く肩を叩かれて顔を上げると、ノワールがじっとこちらを見ている。
「俯いてる暇はないぞ。気合を入れろ」
「! そ、そうですね。他の方のためにも、頑張って勝たないと……」
 ブランシュは再びコクコクと頷くとしっかりとマレットを握った。
「……」
 そんな彼女を見て、ノワールは考える。
 試合を想像したら、ブランシュが盛大に空振りする図が浮かんだ。
「ゴール前は任せた。私が攻める」
「わ、わかりました。ええと……、がんばってゴールは守ります!」
 ブランシュがガッツポーズを取ると、ノワールは小さく笑う。
 かくして、試合が始まった。
「お嬢ちゃん、将来有望だと思うぜーッ」
「おっぱい!おっぱい!」
「破廉恥な」
 双子のセクハラ発言にも、ノワールは冷静にパックを打ち返す。
「なかなか、やるな!」
「煌転光葉刃!!」
 パシィ!
 中二な必殺技にも反応せず、ノワールはリターンを決めた。
「終わりだ」
 最後まで冷静にクールに。乱れなくゴールを決めて、ノワールは勝ちを宣言する。
「ま、負けた……」
 双子が床に手を付く。
「口程にもない。これに懲りたら、二度とこんな馬鹿な真似はしない事だ」
 双子を見下ろし、ノワールがそう言えば、双子は更にずーんと沈んだ。
「行くぞ」
「は、はい、ノワールさん」
 歩き出したノワールの背中を追い掛けながら、ブランシュは彼に話しかける。
「凄かったですね、ノワールさん」
「コツさえ掴めば、案外簡単なものだ」
「……あの、ノワールさん」
 少し躊躇してから、ブランシュは続けて口を開いた。
「私がもっと背も高くてすらっとした大人の女性だったら……ノワールさんもまた別の反応をしてくれたでしょうか?」
 ピタと歩みが止まり、ノワールが振り返る。危うく彼にぶつかりそうになって、ブランシュは慌てて距離を取った。
「ま、まだ私だって成長期ですし、チャンスはあるはずです!」
 彼と視線が合わせられず、俯いたまま言葉を続ける。
「えと、気長に待っていてもらえたらなと……」
「待つことは構わない」
 ノワールの声に、思わずブランシュは視線を上げた。いつもの彼の顔。
「だが、子供というのは外見だけの話だけではなく内面も含んでの話だ。もう少し視野を広く持つといい」
 そう言って、彼はまた歩き出す。
「はい……!」
 ブランシュは笑顔で彼の後ろを付いて行った。
(しかし、君が言う大人の女性になった時、その時には私はいくつになっているのだろうな……)
 随分と気の長い話になりそうだ。ノワールの口元には微かに笑みが浮かんでいた。


●4.

「サフランと私(わたくし)のコンビですもの、負けませんわっ」
 マリーゴールド=エンデは、きっぱりはっきり言い切って、双子をびしっと指差した。
「くっ、このカップル強気だな!」
 双子は何だか悔しそうにしている。
「けど、そういうカップルこそ、負かした時が楽しいってもんだぜー!」
 ふはははと悪人笑いをする双子を見て、ヤレヤレとサフラン=アンファングが肩を竦めた。
「マリー、ちょっと作戦会議」
 盛り上がっている双子を横目に、ちょいちょいとマリーゴールドを呼び寄せる。
「前半は守備に専念するカラ」
「分かりましたわ! 攻撃は私に任せてくださいなっ」
「俺自身は攻撃しないと相手に思わせておいて……」
「後半にガツンとやるんですわね」
 顔を見合わせて、二人は笑う。
(負けられませんわ……逆の立場を想像したら、何故だかわかりませんけど、とっても面白くなかったですし)
(……想像したら、何だかひじょーに面白くなかったデス)
「じゃ、行こーカ」
「しっかりどかーん!と反省して貰いますわっ」
 二人はマレットを手にエアホッケー台に立つ。試合開始だ。
「行きますわよ!」
 まずは、マリーゴールドのサービス。
「優しい、優しいっ」
「おねーさん、もっと思い切ってマレット振ってよー」
 パックを難なく返しながら、双子がそんな事を行ってきた。
「むっ、これならどーですのっ」
 パコーン。
 マリーゴールドは力を込めて、マレットを振り切る。
「もうちょっと思い切って」
「おっぱいぷるんってなるといいな♪」
「なッ……!?」
「ハイ、お返ししますよっと」
 マリーゴールドのマレットをすり抜けてきたパックを、サフランが相手コートに叩き込んだ。
 マリーゴールドは頬を紅く染めながら抗議する。
「破廉恥ですわっ」
「おねーさんの、もっといいトコ見てみたい♪」
「これから俺らとデートでもどう? 舞獣百殺撃!!」
「お断りしますッ! カオティクビクトリー!!」
 えいとマリーゴールドがパックを思い切り叩き込めば、双子は楽しそうにそれを受けて返してくる。
(ハッ! 思わずツラれて必殺技を叫んでしまいましたわ!)
「モテモテですネー」
「ちっとも嬉しくないですわっ」
 ゼイゼイと肩で息をするマリーゴールドにサフランは笑った。スコアは4-4。そろそろ頃合いか。
「マリー」
「了解ですわっ」
 双子がパックを打ち込んできた瞬間、マリーゴールドとサフランは、前衛後衛をチェンジした。
 前に出たサフランが電光石火の如くマレットを振れば、相手ゴールにパックが叩き込まれる。
「はや……い!?」
 双子が目を丸くした。
「さぁ、ガンガンイコーか」
 サフランは笑顔を見せると、猛攻に出た。
 壁を使っての反射攻撃に、目にも留まらぬ早さのストレート。
 あっという間に7点目を取られて、双子は『嘘だぁ~』と言いながら、その場に崩れ落ちる。
「サフランは普段もあんな感じですけれど、やる時はやりますのよ」
 エヘンと、マリーゴールドが誇らしげに腰に手を当て胸を張った。
「んー……何だか少し引っかかるケド」
 サフランは笑って、床を這うようにして逃げようとする、青髪の方の腕を掴む。
「ハイハーイ、チョーットオトナシクシテテネー」
 ギリギリギリ。
 力を込めて腕を捻り上げる。
「痛ーぁッ!?」
(これは破廉恥な台詞のお返しダヨ)
「ダグー!?」
 サフランに片方をガッチリ捕まえられ、双子は逃げられない。
「恋とは落ちるものですわ。こんな事をしている内は、まだまだですわね?」
 そんな双子を見下ろし、マリーゴールドの説教は暫く続いたのだった。


●5.

(負けたら彼奴等にエリーがキス?)
 Curt(クルト)は怒りにピクピクと震えた。
 一方、彼のパートナー、Elly Schwarz(エリー・シュバルツ)は不思議そうに首を傾ける。
「僕なんかにキスされて、嬉しいんですか?」
「「嬉しいに決まってるじゃん!」」
 双子は声を揃えて満面の笑顔を見せた。
 その双子の視線から、エリーを庇うように、ずいっとクルトが前に出る。
「お前等のような奴の相手は面倒だが、彼女がお前等にキスってのは不愉快だ」
(寧ろギタメタにしてやる)
 クルトから沸き上がる殺気に、双子は少しだけ怯えるも、
「しょ、勝負だー!」
 びしっとマレットを向けてきた。
 クルトとエリーもエアホッケー台に上がり、勝負がスタートする。
「では、行きますよ!」
 エリーがまずサービスを放った。
「おっぱいおっぱい!」
「ねーねー可愛い子ちゃん、俺達とゲーセン巡りしねぇ?」
 エリーのマレットを振る姿に、ニヤニヤしつつ双子がそんな事を言ってきた。
「僕が可愛い?」
 ピクリとエリーの片眉が上がる。
「うん、とーっても可愛い!」
「デートしてぇ!」
 カッと目を見開くと、エリーは思い切りマレットを振った。パックがゴールに突き刺さる。
「嘘はいけません。僕は自分が誰より劣ると自覚してます。そんな言葉もう通用しませんよ」
 エリーの瞳にフツフツと闘志が漲った。
「そんな言葉で攻撃するなら、他の方へどう……ぞっ!」
 鋭い一撃が、双子のコートへと突き刺さる。
「……」
 クルトはそんな彼女と双子を交互に見て、小さく息を吐き出した。
(御愁傷様としか言いようが無い。しかし……良い子ちゃんはまた何を言っているんだか)
 そんな事を考えながらも、攻撃の手は緩めない。
 エリーとクルトの猛攻に、双子も善戦するが勝てる訳もなく。
「うわー負けたー!」
「可愛い子ちゃんのキスがぁーッ」
 涙に暮れて倒れ込む双子を、クルトは冷たく見下ろした。
「この程度で騒ぎ回っているとは哀れだな」
(キス……)
 エリーはキスという単語に、首を傾ける。
(キスと言えば……この前のキスの意味。クルトさんは『大きなヒント』と言っていましたが……)
 キスする場所には意味があり、腕は『恋慕』の意味らしい。
(手首に近かったような気もしますし、そうなると『欲望』?)
 けれど……どれもきっと違うとエリーは思う。
「エリー?」
 黙り込んだ彼女をクルトが訝しげに見つめていた。
「……へ? 何ですか?」
 思わずびくっと肩を揺らして彼を見上げる。
「考え事をしていたので、聞いてなかったです。すみません……」
 ぺこりと頭を下げてから、エリーは双子を見遣った。
「あなた方はかなりの腕前ですね」
「可愛い子ちゃん、優しい!」
「天使!」
 双子は感動した顔で、両手を合わせエリーを拝む。クルトは、双子からエリーを庇うように前に出た。
「悪いがエリーにキスして貰えるのは俺の特権だ」
 眼光鋭く見下ろせば、双子は脱兎の如く逃げ去る。
 エリーは目を丸くしてクルトを見上げた。
「クルトさんには選べる権利があるんですから、ウィンクルムだからって僕に気を使わなくても……」
(まだ、そんな事を言うのか)
 瞬間、クルトの中で何かが弾けた。
 エリーの腕を取って引き寄せて、強引に唇を重ねる。
 彼女へ想いを伝える為に。
「!?」
 エリーは瞳を見開いて、硬直した。
 唇へのキスの意味は……。
「気を使う? どう言う事だ。俺がそんな奴に見えるのか?」
 至近距離のクルトの金色の瞳が、燃えている。
「やはりお前には、直接的に言わないと何も伝わらないんだな」
 クッと口元に僅か苦い笑みを浮かべて、クルトはエリーの耳元へ囁いた。
「俺の好意に気付け、エリー……お前が好きだ」
 唇へキスの意味は『愛情』。
(勘違いではなかったんですか!?)
 見開かれる青の瞳を見つめ、クルトが微笑む。切ない瞳に、エリーの胸はざわめいたのだった。

Fin.



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 雪花菜 凛
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 11月20日
出発日 11月26日 00:00
予定納品日 12月06日

参加者

会議室

  • [10]夢路 希望

    2014/11/24-18:56 

  • [9]夢路 希望

    2014/11/24-18:55 

    挨拶が遅くなってしまいました。
    えっと、夢路希望、です。
    パートナーは、ラビットさん、です。
    宜しくお願いします。

    ……な、何だか大変なことに……と、とにかく勝たないと、ですね。

  • おや、反応が遅れてしまいました。申し訳ないです……。
    僕達も個人戦になりそうです。
    皆さん、頑張りましょうね!

  • ごきげんよう、マリーゴールド=エンデと申します。
    パートナーはマキナのサフランですわ。
    皆様、どうぞよろしくお願い致しますっ

    困った方々ですわねぇ。
    しっかりどかーん!と反省して頂きましょうっ

    共闘も楽しそうですけれど、
    今回は私達も個人で対応しようかなと思いますわっ

  • [4]ブランシュ・リトレ

    2014/11/24-00:44 

    ブランシュ・リトレ、です。
    パートナーはノワールさんです。
    よろしくお願いします。

    え、ええと、無理やりはいけないと思います…。
    考え直してもらえれば、いいのですが。

    こちらは私達個人で対応しようかな、と思っています。

  • [3]リオ・クライン

    2014/11/23-09:01 

    みんな、久しぶりだな。
    リオ・クラインとパートナーのアモンだ。

    人に迷惑をかける連中は許せないな・・・。
    私達が成敗してくれる!

    とりあえず、こちらも対策を考えねば。
    共闘も出来るみたいだが・・・みんなはどうする?

  • ブランシュさん方は初めまして。
    その他の皆さんはお久しぶりになるのでしょうか。
    改めまして僕はElly Schwarzと言います。パートナーはディアボロのCurtさんです。

    考え事をしていたら妙な連中に遭遇してしまいましたね……。
    エアホッケー、勝てると良いのですが……。
    とにかく——


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