タダ酒旨し!体はワインでできてる!(和歌祭 麒麟 マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 今年もタブロス近くで大量のブドウの収穫が確認された。
 ブドウがあったら、やることは一つしか無いといってもいいと思う。
 ワインを作ろう!
 と、いうことで、地酒ワインが量産される季節がやってきた。

 A.R.O.A.に日頃の労働を労うように、獲れたてのブドウで作った地酒ワインが続々と寄付されてきている。
 酒屋じゃないのに、ワインセラーをちゃっかり備えているA.R.O.A.は笑顔で地酒ワインを受け取っていく。
 地酒ワインを楽しみに、この時期を過ごす職員もいるとかいないとか。

 さて、キミたちが仕事帰りにA.R.O.A.の掲示板に目を通すと、「今年もワインの季節だ!」と書かれた大きなポスターが目につく。
 A.R.O.A.職員で消費しきれない地酒ワインをウィンクルムたちに配ってくれるそうだ。
 酒好きのウィンクルムにはたまらない話で、早くも急設されたワイン受取窓口は行列ができていた。
 キミたちの受け取りの順番になると、思っていた以上に大量の地酒ワインが渡される。
 どうやら、今年はブドウが豊作だったようで、みんな張り切ってブドウを地酒ワインにしたようだ。
 地酒ワインを大量にてに入れたキミたちは、せっかくだから二人で飲むかという流れになる。
 神人の部屋で飲むのか、精霊の部屋飲むのか、わいわい話した後、飲む場所は決まった。キミたちは「ワインのつまみ」となる食材を買って帰ることにした。

 さて、この地酒ワインの特徴についてキミたちは次のように知っている。
 普通のワインはブドウを潰してから発酵という手順を踏むが、地酒ワインは短時間で製造するため、タンクに詰めてブドウ自身の重さで潰れてもらって発酵させる。
 自然に任せたこの製法だと、「渋みや苦みが少なく」、「フレッシュでライトな味」になるのだ。
 一般的に、冷蔵庫で冷やして飲む。
 地酒ワインはタンニン成分が少なく、冷やしたときでも渋みがほとんど出ないので飲みやすい。

解説

 地酒ワインを飲んで楽しみましょう。
 どこで飲むか?
 神人の部屋でもいいし、精霊の部屋でもいいでしょう。
 行きつけの持ち込みOKの店に顔が利くのなら、場所を用意してもらうのもいいかもしれませんね。

★ストーリーの流れ
 前半は、地酒ワインと、用意した、または用意された食事を楽しみましょう。
 地酒ワインはすでに冷やし終わっていて、コルクを抜くところから始まります。
 まずは、食事と地酒ワインを楽しんで日頃の疲れを抜きましょう。

 後半は、無礼講!
 お酒が入らないと言いにくいことは、このタイミングで言ってしまいましょう。
 お酒が入ると話しやすいことってあったりします。
 お酒に強ければ、パートナーが酔っていく様を観察するのもいいですね。
 地酒ワインは大量にあります。酔いつぶれてそのまま眠ってしまうと……。飲んでいる場所を思い出しましょう。パートナーの部屋か、もしくは神人の部屋です。あるいは行きつけの店。
 飲みすぎには気を付けようね!

 食事を用意したり、場所をセッティングしたりなど、全部合わせて300Jr必要です。

※注意事項
 未成年飲酒はダメです。体に悪いので。
 A.R.O.A.から未成年にはブドウジュースがもらえるので、ジュースで我慢してね。

ゲームマスターより

 10年に一度あるかないかの出来のワインがうんたかんたら言われる時期がやってきました。
 飲みすぎだと言われても、
「いや、これは飲酒じゃないから、テイスティングだから!」
 とか言い訳しながらワインをぐびぐび飲む季節です。私が。
 酒は飲んでも飲まれないようにね!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ニーナ・ルアルディ(グレン・カーヴェル)

  ジュースまで頂けるなんてラッキーでしたね!
リビングで飲みましょうか。

牛肉は焼いて、チーズも…
あっ、何で先開けちゃうんですかっ
作り終わるまで待ってて下さいって言ったのに…
そういえばソファ、離れて座らなくても
何も言われなくなりましたね、少し嬉しいです…

グレン、もしかして結構酔ってません?
大丈夫じゃないですよ、待ってて下さい今お水を…

グレンが自分の気持ちを言ってくるのって珍しいです…
私いっぱいグレンに助けて貰ってます。
遭難した時はちょっと事故もありましたけど!
グレンの側ほど安心できるところってないですよ?
撫でてれば少しは安心してくれるかな…
お話もっと聞かせて下さい、
少しでもグレンのこと知りたいから…


かのん(天藍)
  場所
天藍の部屋
契約前から天藍が加入してる自警団の詰め所がある建物内の
必要最低限の物しかない殺風景な一室

料理
南瓜・蓮根・薩摩芋等の野菜チップス、キノコのマリネ、チーズとハムとバゲット

サイドテーブルの上にワインと料理を置き
詰め所の仮眠スペースから拝借したクッションを背もたれにして
床にも敷き2人並んで座る
お疲れさまでしたと乾杯

2人でたわいない話をしながらゆっくり過ごせる事が嬉しい

TVのリモコンを天藍の向こうに見つけ場所伝えるも伝わらず身を乗り出し指し示す
その後一連の騒動に顔に血が上る

変に意識してしまい不審がられたらどうしようかと思いながらグラス傾ける
天藍普段と変わっていません私が気にしすぎでしょうか



七草・シエテ・イルゴ(翡翠・フェイツィ)
  この地酒ワインって、どんな色や味をしているんでしょうね。
今夜は優雅に飲めるのかと思うと、本当楽しみです。

今回の主役は、あくまでもワインですからお食事は軽食程度。
そうですね・・・・・・サラダにしましょうか。
トマトとアボカドを1個ずつ、それぞれ角切りにしたら、
みじん切りした玉ねぎとサイコロステーキを適量入れます。
酢、オリーブオイル、塩コショウを加えて混ぜたら完成。
なので、早速作りますね(調理スキル使用)。

お料理も出来て、ワインの用意も出来ましたが、折角です。
「翡翠さん、月を眺めながら頂きませんか?」
ワインを入れたら、月明かりにグラスを掲げて乾杯します。

こんなひとときが持てるって、私、幸せ者ですね。




アマリリス(ヴェルナー)
  以前の(エピ28)お詫びに自宅に招待

ええ、問題なくお酒は飲める年ですが知っていましたのね
…あとでそのべらべらと情報漏洩した方の名前を教えてくださる?

ワインをあけて酒飲み開始してしばらく
たまにはこうしてゆっくりするのもいいですわね
ねえ、ベルナーもそう思うでしょう?

…呼び捨てになったのは貴方の記憶力の関係かしら
(本当の初対面の事を忘れられててイラっとしたため
わたくしが呼び捨てにする方ってほぼいませんのよ
そうね、信頼の証かしら(適当

扉が閉まったのを見てベッドに倒れこむ
枕に顔を埋めて足ばたばた

落ち着くのよアマリリス
どうせヴェルナーの事ですもの
酔いがさめたらころっと忘れてしまっているに決まっていますわ



エレオノーラ(ルーイ)
  飲む場所:神人宅

まあ、こんなにたくさん頂けるのですね
頑張って飲んでくださいね、ルーイ
私はまだお酒は飲めないのでジュースです

では準備もできましたし乾杯しましょうか
私達の契約を祝して、ですか
ずっと待たせてしまってごめんなさい

(いつまで生きていられるのかわからないのならば…
せめて少しの間だけでも自由に外を歩いてみたい
ウィンクルムになってしまえば外に出る理由になるしお父様も外出を認めてくれるはず
利用してしまって、ごめんなさい)

あら、ルーイ?寝てしまったのですか?
起こすのも忍びないので毛布を持ってきて掛けてあげる

いつまで私が生きていられるかはわからないけど…その時までは、頑張りましょうね




「ジュースまで頂けるなんてラッキーでしたね!」
 ニーナ・ルアルディとグレン・カーヴェルは並んで家に向かって歩いている。
 家はA.R.O.A.の近場に借家を借りている。グレンと二人で暮らしているのだ。
「タダで酒が貰えるなら、貰わないって手はねーよな」
 ワインとブドウジュースは重たいのでグレンが持っている。
「リビングで飲みましょうか?」
「家につまみねーだろ、手作り楽しみにしてるぜ」
 グレンはニーナの作る料理が気に入っていた。ニーナの料理は上手で、とてもおいしい。
 味の好みも覚えていてくれるので、グレンの胃袋はニーナの料理を自然と欲しがるようになっていた。
 それはグレン本人が一番わかっている。

 冷やしたワインとブドウジュースをリビングのテーブルに置いて、グレンはニーナの料理を待っている。
 ニーナはおつまみを作っていた。
「牛肉は焼いて、チーズも……」
 おつまみの準備を手早く済ませて、リビングにニーナが行くと、すでにグレンはワインのコルクを抜いていた。
「あっ、なんで先に開けちゃうんですかっ。作り終わるまで待ってて下さいって言ったのに……」
「そんな悲しそうな顔するな。グラスに注いだだけだ。旨そうだからって先に飲んだりしねーよ」
 ニーナは「本当ですか?」といいながらおつまみをテーブルに並べる。
 並び終えるとソファーに腰を下ろす。もちろんグレンの隣である。
「そういえば、ソファ、離れて座らなくても何も言わなくなりましたね、少し嬉しいです」
 ニーナが言うと、グレンは「そんな時期もあったな」と軽く流す。

「味は……ふーん、飲みやすいし悪くはないんじゃねーの」
 グレンは飲みやすいせいか、ワインを飲むペースがいつもより早い。
 ニーナはブドウジュースを飲みながらおつまみを摘まんでいた。
「ニーナって本当にいつも危なっかしいよな。オーガが相手の時とか、ひやひやしてるんだぜ」
 グレンが普段言わないようなことを言い出す。
「グレン、もしかして結構酔ってません?」
 グレンの様子を見ると、酔いが回っているように見える。
「これくらいの量で酔わねーよ。大丈夫だって」
「大丈夫じゃないですよ、待ってて下さい、今お水を……」
 水を取りに行こうとソファーから立ち上がるニーナ。
 ソファーから立ったニーナの手をグレンがとってソファーに引き戻す。
「俺から離れるな」
 グレンはニーナを抱きしめた。
 ワインのフレッシュな香りがする。
 ニーナはグレンの腕の中で、緊張しつつも、しばらくこのままでいることにした。
「ヤックドーラに刺さった剣を抜きに行ったことあっただろ? あの時ニーナが狙われて嫌な汗をかいたぜ。同じ思いはしたくない」
 ワインが言わせるのか、グレンは最近覚えた不安を口にする。
「グレンが自分の気持ちを言ってくれるのって珍しいです……。私、いっぱいグレンに助けてもらってます。遭難したときはちょっと事故もありましたけど! グレンの傍ほど安心できるところってないですよ?」
 ニーナはグレンが微かに震えているのに気がつく。
 ニーナが怪我をしそうになったことが、本当にグレンを不安にさせていたのだ。
(撫でてれば少しは安心してくれるかな……)
 ニーナは震えるグレンを優しく撫でる。
 グレンは徐々に落ち着きを取り戻していった。
「ニーナといると忘れているんだが、たまに家のことを思い出す事があるんだ。医師の家系でさ……、あ、姉が洗脳で両親を斬り殺して……」
 グレンの言葉が詰まる。
「……ワインを飲んでいるときにする話じゃなかったな」
 グレンは言葉を飲み込んだ。
「いいんですよ。お話もっと聞かせて下さい。少しでもグレンのこと知りたいから……」
 しばらく、酔ったグレンがいろいろ喋って時間が経過した。
 グレンは酔いが醒めてくると、
「あー、ワインを飲み過ぎたかな。酔って何を言ったか記憶が曖昧だぜ。変なこといってないといいんだが」
 グレンは酔っていろいろ喋ったのが恥ずかしくて、覚えていないと嘘を言うのだった。


「色々なブランドのワインがそろいましたね。どれから飲みましょうか?」
 かのんは天藍の部屋に来ていた。
 天藍は自警団に加入しているのだが、自警団の詰め所がある建物の中に天藍の部屋がある。
 身辺整理でもしているかのように、殺風景な部屋だった。
 生活に必要最低限のものしか見当たらない。
 かのんが持ってきた料理は南瓜に蓮根、サツマイモなどで作った野菜チップス。きのこのマリネにチーズとハム、バゲットである。
 ワインのつまみとしては最高だ。
「まずはこれから開けるか」
 天藍が手にとったのは赤ワインである。
「赤ですか、いいですね」
 手際よくコルクを抜く天藍。
 かのんと自分のグラスにワインを注いだ。
 ソファーのサイドテーブルにワインとおつまみを広げて乾杯する。
 ワインを一口飲んで少ししてから、かのんはグラスを下ろした。
「今年のワインは当たりですね。フルーティーですよ」
「この味ならいくらでも飲めそうだ」
 かのんと天藍はゆったりとしたペースでワインを楽しむ。
 音がないのでテレビをつけた。BGMの代わりくらいにはなってくれるだろうと天藍は思ったのだ。
 赤ワインを飲み終わった後は、白ワインを開けた。
「これもおいしいですね。白は辛口がおいしい」
「白は辛口が好きなんだな。赤はどうだ? 俺は渋すぎるヤツは口に合わないんだが」
「私もです。今飲んでいるくらいの渋みが少ないのが、赤なら好きですね」
(次、かのんとワインを飲むときの参考として、好みを覚えておくか。白は辛口で、赤は渋くないのだな)
 天藍は頭の中にメモを残した。 
「この間、デミ・ワイルドドッグの集団を相手にしただろ。犬ってヤツは懐くと可愛いんだが、追いかけて捕まえるのは大変だったな」
「そうでしたね。デミ・ワイルドドッグがもうちょっと少なければよかったのですけど。動物に詳しい天藍でも、大変だって思ったりするんですね」
 天藍は苦笑しながら「あれは特殊な状況だったからな」とグラスをからにした。

 テレビは知らないうちにドラマになっていた。
 見たことがないドラマで、しかも連続ものらしい。
「テレビの番組を変えるか。……リモコンどこだったか」
 天藍は少し酔いが回ってきたのか、近くにあるリモコンに気がつかない。
「そこにありますよ」
 かのんが場所を指さす。
「ん?」
「ここですって……、きゃ!」
 かのんが身を乗り出してリモコンを取ろうとすると、酔いで足元がふらついてしまった。
 かのんは天藍を押し倒すように倒れた。
 クッションが滑って床の上にかのんと天藍は転がってしまった。
 二人の体が密着する。
 天藍は「積極的だな」とかのんの頬を手で撫でる。

 ……と、このタイミングで、部屋のドアの方から「よく、きこえないぞ!」「しっ、天藍にバレるだろ!」「押すなよ!」などなど、声が聞こえているのに気がついた。
 天藍は溜息をついて、かのんを起こしてソファーに座らせると、ドアの方に向かっていった。
 勢いよくドアを開けると、自警団の仲間達が崩れるようにして部屋の入口でこける。
「いってえ」「誰だよドア開けたの」「ってこれバレたんじゃ……」
 天藍はせっかくの時間を邪魔されて不機嫌そうにいった。
「お前達、一度馬に蹴られてこい!」
「やべー、天藍がキレたぞー」「まてよ、俺も逃げるぜっ」「じゃあ、俺も!」
 自警団の仲間は蜘蛛の子を散らすようにして逃げていった。
 天藍はドアを閉めて不機嫌そうに戻ってくる。
 かのんはそれがおかしくて、笑ってしまった。
(気まずいな……)
 天藍は「まいったな」とつぶやいてソファーに戻る。
「ワインを飲み直そう。あいつらはたぶん、しばらく戻ってこないはずだ」
 天藍は場を取り繕うようにそういった。
 かのんの隣に腰を下ろすと、ワインを一杯飲み干す。
(変に意識しないようにしなくちゃ。不審がられないようにしないと……)
 かのんは天藍の部屋で一緒にワインを飲むのに少し緊張している。
「天藍、私、普段と変わってません? 私が気にしすぎでしょうか?」
「いつものかのんだ。少し、おしゃべりだけどな」
 かのんは先ほど天藍ともつれ合ったことで、赤面していた。
 天藍も緊張していないわけではない。
(あいつらに助けられたか……、俺もそう余裕があるわけではないんだけどな)
 この日は夜遅くまで二人で飲んでいた。


「この地酒ワインって、どんな色や味をしているんでしょうね。今夜は優雅に飲めるのかと思うと、本当、楽しみです」
 七草・シエテ・イルゴは翡翠・フェイツィと一緒にワインを持って帰路についている。
「何はともあれ、ワインを飲めるのは幸運なことだな。特に……シエと一緒に飲めるんだから、楽しみ」
 翡翠は閃いたように言う。
「シエ、俺の部屋で飲まない? 部屋は片付いているから、レシピ片手に魚料理を作るよ」
「いいんですか?」
「もちろん」
 シエテは「じゃあ、お邪魔しちゃいましょうか」と翡翠の部屋で飲むことにした。

 二人はワインを冷やしている間、キッチンにいた。
「今回の主役はワインですから、お食事は軽食程度。そうですね……サラダにしましょうか。
 トマトとアボカドを1個ずつ、それぞれ角切りにしたら、みじん切りした玉葱とサイコロステーキを適量入れます。
 酢、オリーブオイル、塩コショウを加えて混ぜたら、ほら、完成です」
 シエテは手際よく、食欲をそそるサラダを作り上げた。
「俺は白身魚のムニエルを作ろうと思う。でさ、豆鼓のワインソースで仕上げたいんだ。
 その地酒ワインを使いたいんだけど……いいよね?」
 シエテに確認を取る翡翠。
「どうぞ、おいしいのを作ってくださいね」

 料理が終わると二人は翡翠の部屋にいる。
 綺麗に片付いていた。
「お料理も出来て、ワインも用意できましたが、せっかくです。翡翠さん、月を眺めながら頂きませんか?」
「それじゃあ、部屋の窓から月を眺めて飲もうよ」
「そうしましょう」
 二人は窓辺に移動する。
 ワインのコルクを抜いて、翡翠がグラスに赤いワインを注いでいく。
「綺麗な色ですね」
「香りもいいね。今年のブドウは豊作だったらしいよ。味も期待できると思う」
 二人は月明かりにグラスを掲げる。
「二人だけの夜に……乾杯」
「こんなひとときが持てるって、私、幸せ者ですね」
 二人はワインを口にする。フレッシュでライトな味が口の中に広がった。
 しばらく、二人で向かい合ってワインを飲んで食事をしていると、シエテは翡翠の様子が気になった。
「ちょっと顔が赤くないですか?」
「俺の顔が赤い? 気のせいだと思うけど……、なんか向かい合うだけじゃ物足りなくなってきたね。シエに近寄りたいかも」
「うふふ、どうぞ」
 シエテの横に移動して翡翠は「ねぇ、肩を抱いていい?」と、さらに積極的に出てくる。
 シエテは翡翠に肩を抱かれながら、しばらく時間を過ごした。
「これで夜景があったら、もっと最高の夜になるのにな」
 翡翠はつぶやくように、いった。


 アマリリスはヴェルナーを自宅に招待していた。
 どうして、こんな事になったかというと、A.R.O.A.でワインを沢山貰ったというのもあるが、一番の理由は別にある。
 アマリリスがツイてなかった日、ヴェルナーに世話になったのだ。そのときのお詫びとして、ヴェルナーを自宅に招待している。
「アマリリス様は私と同年代ですよね」
 ワインのグラスを傾けながらヴェルナーはいった。
 アマリリスはブドウジュースではなくワインを手にとっている。
それでバレたのかと思ったが、一応、情報元を聞いておくことにした。
「ええ、問題なくお酒は飲める年齢ですが、知ってましたのね。……あとでそのべらべらと情報を漏らした方の名前を教えてくださる?」
 ここでアマリリス本人が飲酒してるからわかったとヴェルナーに言われれば、それでこの話は終わる。
「適合した際、A.R.O.A.の方が年齢から何から色々と」
 まじめに思い出そうとしているヴェルナーを見て、アマリリスは話を終わりにするわけにはいかなくなった。
 アマリリスはA.R.O.A.に個人情報保護とかの考えはないのかと苛立ちつつ、あとで担当職員を探してやろうと思うのだった。

 ワインを飲み始めてしばらく経つと、二人はゆったりとしたリラックスムードに包まれる。
「たまにはこうしてゆっくりするのもいいですわね。ねえ、ベルナーもそう思うでしょう?」
 アマリリスの「ヴェ」と「ベ」の発音が怪しくなっているのを聞いてヴェルナーはいった。
「酔ってますか?」
「酔ってないですわ」
 アマリリスに断言されたのでヴェルナーは追求しない。
 それでも、どう見ても「酔ってますね」と思うヴェルナーだった。
「そういえば、アマリリス様は私だけは呼び捨てですね。会った当初は『さん』がついていた気がしますが」
「呼び捨てになったのは貴方の記憶力の関係かしら」
 アマリリスは少し不機嫌になる。
(初対面の時の事を忘れてたのは誰かしら!? わたくしが呼び捨てにする方ってほぼいませんのよ!)
「そうね、信頼の証かしらね」
 イライラしているのを表情に出さずに、適当に呼び捨てにしている理由を言っておくことにした。
「なるほど、信頼の証ですか。そう言われると気分がいいですね」
 ヴェルナーはアマリリスの言葉を微塵も疑わずに受け入れる。
 すこし、気分がすかっとするアマリリス。
「では、私も信頼の証として、アマリリス様の事を『アマリリス』と呼ぶことにします」
 ヴェルナーに真顔で言われ、アマリリスは虚を突かれてドキッとした。
 パニックになりかけているのが表情に出ていないか、アマリリスは落ち着きがなくなる。
(本気で言っているの、ヴェルナー!? ヴェルナーって酔っているのかわからないところがあるから、モヤモヤしますわ!)
 しばらく二人は無言で過ごした。

 けろっとした態度でヴェルナーが、
「では、そろそろ失礼します」
 と、頭を下げて帰っていく。
 ろくに見送れないまま、アマリリスはヴェルナーの背中を見送るのだった。

 ドアが閉まるとアマリリスはベッドにダイブした。枕に顔を埋めて足をじたばたさせる。
(落ち着くのよアマリリス。どうせヴェルナーの事ですもの。酔いが醒めたらコロっと忘れてしまっているに決まっていますわ!)

 一方、ヴェルナーは夜風に当たりながら自分のいったことを思いだして、
(なんか、いろいろと、どうしますかね……)
 ヴェルナーの顔はほんのりと朱がさしている。ワインのせいだけではない。


「まあ、こんなに沢山頂けるのですね。頑張って飲んでくださいね、ルーイ。私はまだお酒は飲めないのでジュースです」
 A.R.O.A.で大量のワインとブドウジュースを受け取るエレオノーラとルーイ。
「こんなにくれるとか太っ腹! いい事って連鎖するものだよね。さすがに全部はきつそうだけど頑張る!」
 タブロス郊外に住むエレオノーラの家で飲むことに決めた二人。
体が弱いエレオノーラに荷物を持たせるわけにはいかないと、ルーイがワインとブドウジュースを運ぶ。
「大丈夫ですか?」
 というエレオノーラの問いに対して、
「平気、平気!」
 と元気よくルーイは答えた。

「では準備も出来ましたし乾杯しましょうか」
 エレオノーラのグラスにはブドウジュース、ルーイのグラスにはワインが入っている。
「それじゃあ、俺達の契約を祝して」
「私たちの契約を祝して、ですか? ずっと待たせてしまってごめんなさい……」
「いいって、いいって、大事なのはこれからだから!」
 乾杯をして互いにグラスに口をつける。どちらもフレッシュな味わいがしておいしかった。
(いつまで生きていられるのかわからないのならば……、せめて少しの間だけでも自由に外を歩いてみたい。
 ウィンクルムになってしまえば外に出る理由になるし、お父様も外出を認めてくれるはず。
 利用してしまって、ごめんなさい)
 エレオノーラは心の中でルーイに謝罪する。
 ワインを飲み始めてからルーイはテンションが高くなっていく。
 二人はすでに5年の付き合いがあるだけあって、ルーイはリラックスしていた。
「適合したって連絡があってからもう5年だっけ? 早いよねー」
「そうですね。私が健康だったら、私たちは今頃、ベテランのウィンクルムになっていたでしょうね」
 エレオノーラは自分の体が弱さがルーイの足を引っ張っているようで、申し訳ない気持ちになった。
「いいの、いいの。いま、こうして契約してるし、これからが大事って言ったでしょ」
 エレオノーラは「わかりました」と笑顔で食事に手をつける。今日は気分がいいのだ。
「なんか、客扱いされるの慣れなくて、勝手に屋敷の仕事を手伝いだしちゃったけど、もう俺かなり執事が板についちゃってるんじゃないかな!
 今から武器とか使えるかな? 大丈夫かな!? うわー、どきどきする」
 ルーイは酒が回ってきたのか饒舌だ。
 そんなルーイをエレオノーラは微笑ましく見ていた。

 案の定、酔いつぶれるルーイ。
「あら、ルーイ? 寝てしまったのですか? 起こすのも忍びないですし、毛布を持ってきましょう」
 ルーイに毛布を掛けてあげると気持ちよさそうな表情をした。
 しばらく、ルーイの顔を覗いていると、ルーイがいう。
「俺、エレオノーラが契約の決心してくれて嬉しかったよ。ずーっといつ死ぬかわからないから、他の神人を見つけた方がいいって言われ続けてたし。
 やっとエレオノーラが前を見てくれてすごく嬉しいんだ。これから頑張っていこうな!」
「はい、頑張っていきましょうね」
 エレオノーラは、どこまで自分が頑張れるかわからないが、動けるうちはルーイと一緒にウィンクルムとして精一杯頑張りたいと望むのだった。



依頼結果:大成功
MVP
名前:アマリリス
呼び名:アマリリス
  名前:ヴェルナー
呼び名:ヴェルナー

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 和歌祭 麒麟
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 11月14日
出発日 11月21日 00:00
予定納品日 12月01日

参加者

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