こういうの、好きだろ……?(こーや マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●こういうかんじ
 天気がいい日になるという話だった。近頃は随分寒くなってきたが、今日は暖かくなるらしい。
実際、窓から差し込んでくる日差しはぽかぽかと暖かい。
 だから、君は今日がチャンスだと思った。
評判のいいアイスクリーム店が新店舗を近所にオープンしたのだ。暖かい今日なら店のオープンテラスでも食べられるだろう。
 ウィンドウショッピングの後、オープンしたばかりの店のアイスを食べようとパートナーを誘う。
快くOKしてくれたパートナーと待ち合わせ、君はタブロスへ買い物に出かけた。


 オープンしたてのアイスクリーム店は人が多く、どちらかが注文している間に席を確保しなくてはいけなかった。
君が注文してくると言うと、パートナーはそれを断り、君に席を確保するように言って注文しに行った。
勿論、君が何を食べるか聞いてから。
 君は大人しく席を確保して、パートナーを待っていたのだが――

「いいじゃん、一緒に食べようよ」
「連れがいるので無理です」
 断っているのに執拗に声をかけてくるのだ。
席を求めて歩き回ってる人もいる以上、動いてしまえば席がなくなってしまう。
かわしたい所だが、逃げるわけには行かない。
 断りながらもどうしようか考えてる君の後ろから、パートナーの声が聞こえた。

解説

○目的
パートナーがナンパされるじゃん?
撃退して、んでそっからどんな会話をするじゃろな?
嫉妬してもっとはっきり断れと怒ってちょっと揉めちゃうもよし
大丈夫かと心配してもよし。

というお話。


○参加費
アイスクリーム代を含めた買い物代として一組300j


○その他
今回のエピソードでは『嫉妬』に関しては成否判定及び親密度上昇判定を行いません。
代わりに、ステータスに関わらず『嫉妬』は成功します。

アイスクリーム店ではアイス以外にも飲み物も販売してます。
何を頼んだかも書いていただければ幸いです。

ゲームマスターより

こういうの、欲しかったんだろ……?(壁ドン)

リザルトノベル

◆アクション・プラン

淡島 咲(イヴェリア・ルーツ)

  うぅ…人を待ってるので一緒にはいけないんですよ。
ホントですってばぁ。

(撃退後)
イヴェさんありがとうございました。断っても分かってもらえなくて。
そんな、私が可愛いとかじゃないですよ…イヴェさんは私のこといっぱい可愛いって言ってくれますけど。
私はそんなに可愛くないですよ?
今日、声をかけられてびっくりしたくらいですもん。
うーん、たぶん私には妹がいますからその子に可愛さが全部行っちゃったんじゃないかなーって。
前に住んでた街に居た時はやっぱり花ちゃんの方モテモテでしたから…お手紙もいっぱいもらってましたしプレゼントも沢山…。
でも、イヴェさんに可愛いって言ってもらえるのは嬉しいです。照れちゃいますけど。


ニーナ・ルアルディ(グレン・カーヴェル)
  グレンに日頃のお礼も兼ねて、
一緒に甘いもの食べに行って喜んでもらおうと
今日お誘いしたんですけど…
うぅ、この人達全然諦めてくれません…っ
手首も掴まれたままだし怖い…!

あ、グレン助け…
何さらっと嘘を!前見えないですし少し苦し…
あ、はい、この人達が立ち去るまで静かにしてます。
…あの人達に触られたときは嫌だったけど、
グレンだと落ち着きます…不思議です。

日頃お世話になってるお礼ですっ!
元々指輪だったんですけど、鎖通してみたんです。
指輪に付いてるこの石が身を守ってくれるんだそうですよ。
私、グレンが辛い思いするの嫌ですから…

このデザイン素敵ですよねっ
色違いがあったので私も買っちゃいました、ほらっ!



ロア・ディヒラー(クレドリック)
  (ナンパとか都市伝説じゃなかったんだ…凄く面倒なんだけどこれどうすればいいんだろ)
…私のことほっといてもらえますか?連れももうすぐ来るし。迷惑なんですけど…他所行ってください他所っ手、離して!

あ、クレちゃん!(助かったー…ってうわ、クレちゃんあれなんか怒ってる…?視線が冷たい通り越して人殺せそうなぐらい刺さる。ここら辺の気温が一気に下がった気がするんだけど)

彼女とか呼ばれてびっくりしたんだけど…珍しい呼び方してたよね
(汚されるってそんなおおげさな…って言えない位アイス食べるクレちゃんの目が据わってる、怖い)
とと、アイス溶けてきちゃった。(右手にたれる)

チーズケーキ味のアイスと紅茶(ホット)注文



桜倉 歌菜(月成 羽純)
  これってナンパ!?
ど、どうしよう、こんな事初めてで
でも、羽純くんと美味しくアイスを食べる為、この席は死守しないと!
本当です、連れが居るんです!
え?恋人か…って…恋人ではないですけど(そうだったらどんなにか嬉しいけど!)
や、離して下さい!

羽純くん!助けてくれた…!
しかも、嘘でも…恋人って言葉、否定しなかった!
不謹慎だけど凄く嬉しい

痛!どうしてデコピン
だって…嘘を吐くのは嫌だったから

…羽純くんは、嫌じゃない?私がそんな嘘を吐くの
私はね、いいんだよ
寧ろ嬉しいから(貴方が好きだから)

それって…(期待してもいいのかな)
有難う、羽純くん(今はこれで十分幸せ)

アイス溶けちゃうね
折角だから一口ずつ交換しない?



空香・ラトゥリー(鏡 ミチル)
  わぁい、アイスっ。アイスっ。
えぇと、チョコミントがいいなー。席とっておくからー!

(ナンパされ)
あ、お兄さんもお席を探しちゅうですか?
ざんねんですが、みっちゃんが来るので、
このお席はあいてないのです、ごめんなさい(ぺこ)

あ、でも空歌がみっちゃんのおひざに座ればいいかなぁ。
うーん。
あ、みっちゃん、おかえりですー(手をふりふり)

…お兄さん、いっちゃいましたねー。
むー。みっちゃんお顔こわくしちゃダメですよー。

(視線に気づき)

空歌になにかついてますか?
あ、チョコミントたべたいですか?
はい、みっちゃん!あーん!(にっこり)

今のまま?(キョトン)
なんのことですかー?

みっちゃんの苺もひとくちー(あー)



●芝居と贈り物
 日頃のお礼を兼ねて一緒に甘いものを食べようと、グレン・カーヴェルを誘った。
それで喜んでもらえればと思ったのに、どうしてこの人は諦めてくれないんだろう……めげそうになりながらも、ニーナ・ルアルディはナンパ男から逃れようと必死だった。
「本当に、無理なんです……!」
「いいじゃん、俺とお茶しようよ?」
 男のへらへらした笑いは不愉快で、一刻も早く逃れたいのに手首を掴まれてしまっている。
悲しいかなニーナの力では振りほどくことは出来ない。
 怖い――怯えが最大になりかけた瞬間、アイスを両手に持ったグレンの姿が目に入った。
助けてと、ニーナが言うよりも早くグレンは動いた。
「俺の彼女に何か用か?」
「え、いや……」
 男が掴んでいたニーナの手首を離した隙に、ぐいとグレンはニーナを抱き寄せた。
上がりかけた抗議の声は、自身の胸へニーナの頭を押さえつけることで封殺。
「少し黙っとけ」
 小声で言い添えて更なる反論も予防し、イラつく衝動のままグレンはナンパ男を睨む。
「こっちはデート中だ。邪魔すんな、消えろ」
 どうやらナンパ男は弱い者には強く、強い者には弱く出る典型的な小物のようだ。
怯んだ男は「わ、悪かったな」と小さく言って、そそくさと離れていった。しっかり効いたようだ。
 その背中が離れるのを見届けてから、押さえつけていたニーナの頭を離す。
ぷはっと、ニーナは大きく空気を吸い込んだ。少し息苦しかったのだ。
「あ、ありがとうございます」
「あいつ、またどこかで見てるかも分かんねーし、もう少し恋人のフリしとけ」
 グレンの言葉に、ニーナは素直に頷く。
男に触られたのは嫌だったが、グレンだと落ち着くのだから不思議だ。
 男へ抗議する前に両手を空けられたのは、アイスにスタンドが付けられていたから。
テーブルに置いた苺のアイスをニーナへと勧め、グレン自身もアイスに手を付ける。
ホワイトチョコにバニラ、紅芋の三段重ね。甘党だから仕方がない。
「美味しいですね」
「だな。ホワイトチョコを置いてるってのもいい」
 意外と置いてる店が少ねぇんだよなと、グレンがぼやく。
普段はグレンにからかわれる事が多いニーナは笑みを零した。彼は甘党なのだ。
「あ、そうでした」
 アイスをつついていた手を止め、ニーナは鞄を探った。
取り出した小さな包み――男性に贈るものゆえか、シンプルなラッピングのそれをニーナはグレンへと差し出した。
「なんだ、開けるぞ?」
「どうぞ」
 シックな紺色のリボンを解き、包みの中身を手の平へと落とす。
鎖が通された、石の付いた指輪だった。
「日頃お世話になってるお礼ですっ!元々は指輪だったんですけど、鎖を通してみたんです。
指輪に付いてるこの石が身を守ってくれるんだそうですよ」
 グレンが辛い思いをするのは嫌だからと言い添えて、ニーナは反応を窺う。
指輪をまじまじと眺めていたグレンは薄く笑んでいる。
「いい趣味だな。ありがとよ」
 褒められたのが嬉しかったのか、ニーナの表情がぱあっと輝く。
テーブルへと身を乗り出す勢いでニーナは言う。
「このデザイン素敵ですよねっ!色違いがあったので私も買っちゃいました」
 ほらと、自身の指を指し示すニーナに対し、グレンは思う。
これは一般的にペアリングって言うのではなかろうか。
 しかし、口にはしない。少なくとも本人が気付くまでは。
ニーナが気付いた時にどんな顔をするのかは興味があるが。
「悪い気はしねぇな」
 胸を満たす、暖かな想い。その理由が何かは分からないが、とても心地良い。
今暫くはこの心地に酔っていたいとグレンは思った。



●大人と子供
「あ、お兄さんもお席を探しちゅうですか?」
 声をかけた女の子は、見るからに子供でした(ナンパ男談)。
何故、声をかけてしまったのか自問自答するナンパ男に対し、空香・ラトゥリーは首を傾げる。
「そ、そうなんだ。一緒に座っていい?」
 ナンパ男は一緒にいるであろう保護者が綺麗なお姉さん(出来れば独身、せめて未亡人)という非常に薄いというか淡いというか儚い期待に賭けてみる事にしたようだ。
逞しい根性である。
「ざんねんですが、みっちゃんが来るので、このお席はあいてないのです、ごめんなさい」
 ぺこり、空香は頭を下げるが、すぐに思い直す。
「あ、でも空香がみっちゃんのおひざに座ればいいかなぁ。うーん」
 その『みっちゃん』の性別(あわよくば独身かどうか)の情報を下さい!なんていうナンパ男の心の悲鳴は、空香に聞こえるはずはない。
悩んでいた空香は近寄ってくる鏡 ミチルに気付き、手を振った。
「あ、みっちゃん、おかえりですー」
 一抹の期待と共に振り返ったナンパ男は、すぐに絶望へと表情を変える。
空香が手を振る相手は、未亡人どころか女性ですらない。
「おい、てめぇ何やってんだ?」
「……いえ、なんでもないです」
 ミチルはギロリとナンパ男を睨むも、男の落胆振りは尋常じゃなく、とぼとぼと去って行ってしまった。
その背中をミチルと空香は不思議そうに見守る。
「お兄さん、いっちゃいましたねー」
「なんだったんだ?」
「お席がほしかったみたいです」
「向こうで空いたみたいなのにな」
 小さな女の子をナンパしているとは、ロリコンか。そんな風に身構えたが、あの様子では違ったようだ。
本当にロリコンが小さな女の子に声をかけていたとしたら、それはナンパじゃなくて児童誘拐というシャレにならない犯罪だということはさておき。
 兎にも角にも椅子に腰を下ろし、買ってきたアイスを渡してやる。
空香には苺、ミチル自身はチョコミントだ。
 嬉しそうにチョコミントアイスを食べ始めた空香の様子を眺める。
目付きが悪い粗野な雰囲気の男がじーっと女の子を見るのは傍から見れば不穏だが、本人の心中はもっと不穏。
『そりゃあ10年もすりゃあこいつも成長するだろうけどよぉ。
でもこのチンチクリンがセクシー系に移行する可能性は……限りなくゼロ、だよなぁ……やっぱり俺好みに今から教育をー』
 え、なに、ひかるでげんじな計画?犯罪にならない程度でよろしくね……?と言いたくなる感じ。
「空香になにかついてますか?」
 見られていることに気付いた空香はきょとんと首を傾げるが、すぐに自身で答え(正解とは違うが)を導き出す。
ミチルもチョコミントを食べたいのだ、そう判断した空香はあーんと、スプーンに掬ったアイスをミチルへと差し出す。
「べ、別に食いたいわけじゃねぇよ」
 言いながらも、差し出されたアイスを口にする。
にっこりと笑われれば保護者役の男に反抗の術はないのだ。
「おいしいですか?」
「まあな」
 良かったといいながら、再び自身のアイスを食べ始めた空香だが、食べ続けるうちにどんどんと口の周りがアイス塗れになっていく。
呆れたように溜息をつき、添えられていた紙ナプキンでミチルは空香の口元を拭ってやる。
「ありがとうです、みっちゃん」
 にぱっと、太陽のように空香が笑う。
空香に恋心を抱くミチルには眩しすぎるが、それがいい。
「……ま、今のままでいいよ、おまえは」
「今のまま?」
 ミチルの先程までの考えを知らない空香はきょとんとしたが、それよりも今は――
「みっちゃんの苺もひとくちー」
「ほい、苺」
 苺の甘酸っぱさが空香の口に広がった。



●姉と妹
 おっとりとして見える、押しに弱そうな淡島 咲はナンパ男からすれば格好の標的。
案の定、強く拒否は出来ないようで、ナンパ男はほくそ笑む。
「いいじゃんいいじゃん、ほら、俺が奢るからさー?」
「うぅ……人を待ってるので一緒にはいけないんですよ。ホントですってばぁ」
 そんなやり取りをしていると、「サク?」とナンパ男の後ろから呼び声が。
「イヴェさん!」
「俺の連れに、用でもあるのか?」
 イヴェリア・ルーツが男に近寄り、見下ろす。静かな物言いだが、それ故に威圧感がある。
男はごにょごにょと何事か言い訳し、素早く去っていった。
 安心したように咲が息を吐く。
「イヴェさんありがとうございました。断っても分かってもらえなくて」
「大丈夫だったか?サクは可愛いんだから注意した方がいい」
「そんな、私が可愛いとかじゃないですよ」
 イヴェさんはいっぱい言ってくれますけど、そう言う咲は苦く笑っている。
悲しさすら混じっているようにも見える。
「私はそんなに可愛くないですよ?今日、声をかけられてびっくりしたくらいですもん」
「……サクが可愛くない?そんなことはないぞ。俺はサクの事本当に可愛いと思ってる。
やっと言えるようになったんだ……嘘なんかじゃない」
 真面目なイヴェリアの返答が、咲には不思議に思える。
なぜならば、咲には明確な答えがあるから。
「うーん、たぶん私には妹がいますからその子に可愛さが全部行っちゃったんじゃないかなーって」
 咲にとってはそれが真実。
大事な大事な、愛おしい妹。同時に、憎しみも抱いてしまった妹。
好意を抱いたあの人が自分を妹だと認識したあのときから根付いて離れない、咲にとっての真実。
「前に住んでた街に居た時はやっぱり花ちゃんの方モテモテでしたから……。
お手紙もいっぱいもらってましたしプレゼントも沢山……」
 そう言う咲が、イヴェリアには分からなかった。
「どうしてサクはそんな事を言うんだ?俺は会ってもいない妹の事なんかよりサクの方が大事なんだから」
 そんなに自分のことを卑下しなくていい。
そして、咲にもイヴェリアの言葉が分からなかった。自分にとっては紛れもない真実で、卑下しているつもりではないから。
でも、一つ、イヴェリアの言葉で嬉しいことがある。
「でも、イヴェさんに可愛いって言ってもらえるのは嬉しいです。照れちゃいますけど」
 はにかんだように笑う咲に、今はこれ以上言っても仕方ないと思ったのだろう。
イヴェリアは食べようと、アイスを勧める。
 咲がバニラアイスを食べるのを見守りながら、イヴェリアは考えた。
どうして咲が、こんなにも自分を卑下してしまうのか。そして、咲が言うのとは別の意味で『花ちゃん』の存在が気に掛かった。
 ぽたり、テーブルにイヴェリアの溶けた抹茶アイスが落ちた。



●嘘と本当
 一瞬の硬直。
けれど、すぐに硬直解除。なんていったって固まっている場合じゃない。
初めてのナンパにどう対処するべきか慌てるが、桜倉 歌菜が確保したこの席を手放す訳にはいかないのだ。
「ほらー、嘘言ってないでさ。俺と一緒に食おうよ?奢るよー?」
「本当です、連れが居るんです!」
「えー、何?恋人でもいるの?」
「恋人ではないですけど……!」
 そうであれば嬉しいし、堂々と断れるのに!
一瞬怯んだ歌菜に、ナンパ男はじゃあいいじゃんと言ってのける。
「ほらほら、行こうよー」
 ぐいと、ナンパ男が歌菜の腕を掴む。
歌菜が振り払おうとするよりも早く、つかつかと近寄ってきた月成 羽純がその手を振りほどいた。
「な、なんだよ……恋人か……?」
「俺の連れだ。分かったら、さっさと行け」
 俺の機嫌がこれ以上悪くなる前になと言い添えた羽純の瞳が、黒曜石のように鋭く輝く。
儚く見えるその外見とは裏腹の鋭さを垣間見たナンパ男は怯む。
 暫しの逡巡。しかし徐々に尖っていく羽純の気配は嫌でも分かる。
捨て台詞を吐きながらナンパ男はすたこらと逃げ出した。
 歌菜は、羽純が助けてくれただけでなく恋人という言葉を否定しなかったことが嬉しくて仕方がなかった。
面倒な男から解放されたことも相まって、自然と笑顔になる。
けれど――
 全く……羽純は溜息一つ吐いて、バカという言葉と共に歌菜の額を指で弾く。
勿論、多少は手加減をしている。
「痛っ!どうして!?」
「ああいう時は、嘘でもいいから恋人を待っていると言え」
「だって……嘘を吐くのは嫌だったから」
 思わず羽純は絶句する。
そんなことを言っていられる場合ではなかったのだと、歌菜は分かっているのだろうか。
 上目遣いで歌菜は羽純を窺う。
「……羽純くんは、嫌じゃない?私がそんな嘘を吐くの。私はね、いいんだよ。寧ろ嬉しいから」
「……お前はいつも俺の答えを聞かずに、俺の気持ちを決め付けるんだな」
 盛大に溜息を吐きたい気持ちをどうにか押し込めて、先程弾いたばかりの歌菜の額を撫でる。
労わるようなその手つきは暖かくもくすぐったくもある。
「嫌ではない。だから、次回……なんて無いに越したことはないが、その時は恋人が居ると言え」
 期待しても、いいのだろうか。
口にはしなかった嬉しい理由。好きだから。羽純が好きという気持ちが、胸の内で跳ねる。
「有難う、羽純くん」
 歌菜の顔が花のようにほころぶ。
いつかは。そう、いつかは。でも、今はこれで充分幸せ。
「アイス溶けちゃうね」
「そうだな、食べるか」
 椅子に腰掛け、日差しのせいで溶けかけたアイスを掬う。
歌菜のフレーバーは優しい甘さのパンプキン。羽純のはミルクが香るロイヤルミルクティー。
二人とも違うフレーバー、気になるのは当たり前。甘党の羽純は尚更だ。
「折角だから一口ずつ交換しない?」
「ああ、歌菜のアイスは気になってた……って、おい」
 歌菜が楽しそうにアイスを乗せたスプーンを差し出してくる。
羽純の目が少し泳いだのは気恥ずかしさゆえ。
 仕方ない奴……そう思いながらも、羽純は自身の口角が上がるのを止められなかった。



●所有と独占
 ナンパとか都市伝説じゃなかったんだ……凄く面倒なんだけどこれ、どうすればいいんだろ。
ロアがそんなことを考えているなど露知らず、ナンパ男はあれやこれやと誘ってくる。
「……私のことほっといてもらえますか?連れももうすぐ来るし」
「そんなの放っておいて俺と遊ぼうよ、ほらほらー」
「迷惑なんですけど……他所行ってください、他所!手、離して!」
 いつの間にかつかまれていた手が振りほどけない。
苛立ちながらも、ロアは焦る。
「………離れたまえ、貴様が彼女の傍にいるだけで不快なのだよ」
 ロアとナンパ男の背後から聞こえる低い声。
ロアはその主を知っている。だから、助かったと思うと同時に彼の機嫌の悪さを察する。
 パートナーであるクレドリックの視線は冷たいを通り越して、人を殺せそうな程に鋭く刺さる。
周囲の気温が一気に下ったようにすら感じた。
「彼女は私のものだ。私が物理的排除手段に及ばないうちに消えてはくれないかね」
 ナンパ男の顔からは血の気が引いている。
ご、ごめんな、にーさんと謝る男は、これ以上の不興を買いたくないとばかりに逃げ出した。
 けれどクレドリックの腹立たしさは鎮まらない。
以前にも味わったことがある苛立ち。ロアが自分以外の男に――それが起因しているのは分かるが、この感情をなんと呼べばいいかをクレドリックは知らない。
「ありがと、クレちゃん。食べよ」
 ロアに促され、椅子に座る。
チョコレートアイスと温かい紅茶で、僅かに宥められるクレドリックの心。
しかも、日差しも程よいお陰で、アイスを食べても体が冷えないのだから言うことは無い。
「……彼女とか呼ばれてびっくりしたんだけど……珍しい呼び方してたよね」
「先程の輩になぞロアの名前を教える義理はない。知られるだけで汚されるとは思わないかね?」
 そんな大げさな。そうは思っても口にはしない。
何せ、アイスを食べるクレドリックの目が据わっているのだ。ロアが怖いと思うほどに。
 温かい紅茶を口にし、ロアは自身のアイスを見て慌てた。
「とと、アイス溶けてきちゃった」
 掬おうとするも間に合わず、手にチーズケーキアイスが滴る。
「手を貸したまえ」
 クレドリックがロアに言う。
拭いてくれるのだろうかと思い、素直に差し出した手をクレドリックは一切の躊躇なく舐める。
「え……なに……?」
「何とは……?どのような味がするのか興味ついでに舐めとったまでだ」
 いきなりの出来事に理解が追いつかないロアに、クレドリックは不思議そうに答えた。
本当に不思議そうで、ロアはそれ以上言及できない。
 紅茶のカップに口をつけていたクレドリックが、ふっと笑った。
「ロアと一緒にいると、不思議と気分が安らぐ気がするのだよ」
「そっか。それなら嬉しいな」
 固まっていたロアの表情も釣られて和らぐ。
少しばかりハプニングはあったが、これなら当初の予定通りに穏やかな一日を送れそうだ。
 そんなロアの心中とは裏腹に、クレドリックの両の眼が一瞬、鈍く光った。
勿論、ロアがそれに気付くことはなかった。
 ――永久に私のものだ、絶対に渡すものか――



依頼結果:大成功
MVP
名前:ロア・ディヒラー
呼び名:ロア
  名前:クレドリック
呼び名:クレちゃん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター こーや
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 11月07日
出発日 11月13日 00:00
予定納品日 11月23日

参加者

会議室

  • [12]ロア・ディヒラー

    2014/11/12-23:56 

  • [11]桜倉 歌菜

    2014/11/12-22:54 

  • [10]桜倉 歌菜

    2014/11/12-22:53 

  • [9]桜倉 歌菜

    2014/11/12-22:53 

    ニーナさん、お久し振りです!
    咲さん、ロアさん、空香さんは初めましてっ
    桜倉歌菜と申します。
    皆さん、宜しくお願いいたします♪

    チョコにバニラに抹茶にストロベリー、ああ、何にしようか悩ましいですっ
    美味しい一時を過ごせたらいいですね!
    そんな訳で…

  • [8]空香・ラトゥリー

    2014/11/12-18:55 

    えへへー。みなさんのアイスのふれーばーも気になりつつ
    空歌、プラン提出かんりょーです!

    いいアイス日和になりますよーうにー!(にっこり)

  • [7]ロア・ディヒラー

    2014/11/11-23:09 

    初めましての方は初めまして!ロア・ディヒラーと申します。
    こちらこそ宜しくお願いいたします!

    冷え込んできたけど、こういう暖かい日にはアイスクリーム美味しいよね。
    クレちゃんと違う味頼めば交換し合って2種類食べられるかも!
    何の味にしようか今から迷うなあ・・・

  • [6]淡島 咲

    2014/11/11-18:58 

    初めましての方は初めまして。
    こちらこそよろしくお願いしますね(ぺこり)

    アイスクリーム楽しみですね!
    私もイヴェさんに頼んだら分けてもらえるかなー?

  • [5]桜倉 歌菜

    2014/11/11-00:21 

  • [4]空香・ラトゥリー

    2014/11/10-21:10 

    はじめまして!(ペコリ)
    空歌・ラトゥリーともうしますっ!よろしくおねがいいたします!(にっこり)

    アイスクリームやさん、たのしみだなぁ♪
    なにのアイスにしよーかなぁ。みっちゃんもアイスたべるのかなぁー
    たのんだらひとくちくれるかなー(わくわく)

  • [3]ロア・ディヒラー

    2014/11/10-20:16 

  • [2]淡島 咲

    2014/11/10-11:44 

  • [1]ニーナ・ルアルディ

    2014/11/10-09:11 


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