サバゲーしようよ!(和歌祭 麒麟 マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

 戦術勉強会がA.R.O.A.で開かれていた。キミたちは座学を聴きながら、今後のオーガとの戦いにいかせないかとまじめに勉強している。
 勉強会の午前の部が終わると、午後は実技らしい。何をするのだろうとキミたちは思っていた。
「午後はサバイバルゲームです。いわゆるサバゲー。ライフル型のペイント銃を使ってジャングルフィールドで戦ってもらいます」
 キミたちはサバゲーで戦術なんて身につくのかよと思う。
 午前中あれだけまじめに勉強会で講義をしていた講師が、意味のないことをいうはずがないと思い、「がんばるぞー!」という謎の空気が場に広がっていた。
「装備は基本的にジャングル迷彩ね。緑っぽい服の奴。試着室でサイズ合うやつと着替えてきて。
 インカムを貸し出すから、上手くチームで連携してね。
 ペイント弾が入ったライフルは平等のために全員同じのにするけど、遠距離を狙いやすいように調整したものから近距離で狙いやすく調整したのもあるからね。狙撃とかしたい人は申請してくれれば遠距離向けの調整したの貸し出しますよ。
 貸しアイテムは『ペイント弾(弾数気にしないでOK)と専用の連発式ライフル』、『インカム』、『迷彩服』ね。平等のために基本的には貸し出しアイテムでゲームして。
 あと、ナイフアタックは禁止です。痛いからね」

 サバゲーのフィールドマップが全員に配られる。
 ゲームエリアを確認すると、ジャングル風に作られた人工のフィールドらしい。
 交戦になりそうな場所に目を通すと、味方陣地と相手陣地の中間地点にある岩場で撃ち合いになりそうだ。
 続いて、壁が設置されたエリアである。壁には窓がくりぬきで開いていて、隠れながらの撃ち合いになりそうだ。
 最後に、相手チームのフラグエリアである。小さな丘になっていて、狙撃ポイントになってそうだ。
 ゲームの勝利条件は「相手陣地の一番奥に設置されたフラグをとってくること」である。
 ウィンクルムたちはチームに分かれて、ゲーム開始を待つことにした。

解説

 サバゲーエピソードです。
 当たっても痛くないペイント弾を撃ち出すライフルで、相手チーム(NPC)を蹴散らしましょう。

★今回のサバゲーのルール
 敵味方、同じ人数でチーム対戦します。相手チームはNPCです。
 ペイント弾が当たって、迷彩服にピンクのインクがついたら「ヒット」と宣言して、フィールドから退場します。
 インカムはこのとき外して、サバゲーからリタイアになります。
 これは相手チームも同じ条件です。
 沢山やっつければ、相手チームの数が減るので、フラグまでの到達が楽になります。
 また、自分たちのフラグが狙われにくくなります。

 最終的に、どちらかのチームのフラグをとるとゲームは終了になります。
 相手チームのフラグをとって勝利を目指しましょう。
 逆に自分たちのチームのフラグがとられると負けになります。

★交戦が予測されるエリア情報
1:フィールドの中腹。相手チームが乱射してくることが予想されます。
 岩に身を隠しながらの撃ち合いになるでしょう。
 相手チームが一番人数を割いてくるエリアだと思われます。

2:壁が設置されているエリア。フィールドの中腹よりも、相手チームのフラグ寄りに、窓穴がくり抜かれた壁が設置されているエリアがあります。
 壁が遮蔽物になるので、窓の隙間からこちらを狙ってくるでしょう。
 このエリアの敵を逃すと、こちらのチームのフラグまで一気に迫ってこられるルートがあるので、確実に仕留めていきましょう。
 このエリアにいる相手チームの人数は、フィールド中腹より少ないです。

3:相手フラグエリア。開けた小さな丘になっていて、どこから狙撃されてもおかしくないです。
 狙撃手が少数いるはずです。狙撃手の撃破を優先するか、体を張ってフラグを取りに行くか考えどころでしょう。

★勉強会の講義料として300Jrが必要です。

ゲームマスターより

 サバゲーで、すかっとストレスを発散させましょう。
 戦術を考えるのもいいですが、銃を撃ち合うだけでも楽しいものです。
 フィールドを駆けまわるといい運動にもなりますからね!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

篠宮潤(ヒュリアス)

  サバイバル、ゲーム…
講義、面白かった、し、それに、自分の体力の限界、知ってた方がいい、よね

エリア1と2をひたすら駆け回り敵誘導。味方が当てやすくしたり
・わ…エリーさんラダさん組、上手…
・七瀬さん!後ろっ
・あ…ディエゴ、さんっ今僕、横切るからっもし相手が顔出したら、良かったら狙って、下さ…っ
・華麗に突っ込んでくレオンさんの援護加わったり
・逃げる当てる逃げる直感で避ける

インカムで行動伝え
たまに余計な感想までダダ漏れたり

「あ。楽しい、かも…」
弾が当たれば少し嬉しそう

「ヒューリ!?わ、分かったっ頑張る…!」
庇われればビックリ
学んだことは任務でちゃんと活かす、ね

もし離脱したら羨ましそうにゲーム見守ってる



ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
  戦術の勉強ですか、真面目に取り組もうと思います
交戦エリア2の壁にて、フラグ接近の阻止をディエゴさんとします

狙撃が得意なディエゴさんに攻撃を任せがちになってしまうと思います…ので、私はインカムやハンドサインで敵の位置を知らせる、観測手に努めます

相手がこちらに向かってくるなど、必ず当てられる場合以外は無駄には撃ちません
私達の居場所を教えることになります

…ディエゴさん、戦力的な観点から
私を庇うのは間違いだと思います
そんな判断ミスをするなんて…どうしたんですか(ディエゴのペイントに触れる)

庇った時にできましたか?
顔に擦り傷が……、あ
顔にペイントが…わざとじゃないです

彼の笑顔を見るのは不思議な感覚です



エリー・アッシェン(ラダ・ブッチャー)
  心情
戦術勉強会に参加していたはずなのに、と最初は戸惑い。
この状況をエンジョイするラダさんを見て、ゲームやスポーツの一種として私も気軽に参加します。

行動
神人精霊ともにサバゲ初心者。仲間チームとは協力します。
1のフィールドの中腹エリアをメインに活動。岩に身を潜め、隙を見て応戦。敵チームの動向を観察し、戦況の情報をインカムで仲間に伝えるようにします。
こうして銃声や悲鳴が飛び交う中、岩陰でジッと息を殺していると、なんだかまるで映画のワンシーンのようです。ステキな一時ですね。(戦争映画のこと。エリーの美的感覚はややズレています)
サバゲーにははじめて参加しましたが、適度な緊張感があって面白いゲームでした。


ガートルード・フレイム(レオン・フラガラッハ)
  視野が狭い自分には不利だなと思うが
レオンが楽しげなのでまあいいか

短距離用ライフル使用

スポーツスキルで敏捷にレオンに従い
自分のライフルで彼の死角をカバーし援護

ライフル放られて「ぇ?」
突然の事に 突撃するレオンを思わず見守る
撃たれたのを見て 撃った狙撃手を銃撃

後はインカムで連絡とり
フラグ取りに行く味方がいれば援護
いなければチャンスなので自分で取りに行く

●その後
レオンに「お前、わざと撃たれに行っていなかったか」
返事にどんな損得勘定だ、と思う
そういえば彼は実戦では無茶はしない
彼なりに私の存在に気を遣っているのかな

「ああ。こちらこそ」と手を握り返す
只の握手のつもり
が、そのまま手を引かれ、狼狽えながら退場



七瀬 琴子(エディス・アスター)
  実技がサバゲー…?
ま、まあ何かの役に立つかもしれないしね
弾に当たった所でどうこうなるわけでもないし気楽にいきましょうか

私はエリア1に行ってみるわ
ぶっちゃけ自信はないけど、ビギナーズラックでも信じて頑張ってみるわ
岩に隠れながら地道に狙いを定めてみるわね
ずっと同じ場所にいると狙われそうだし隙を見て場所は適宜移動しておくわ

というか人に銃を向けるのってなんだかどきどきするわね…
ペイント弾だってのは分かってるけどね
…ちょっと楽しいかもしれない

フラグに関しては生き残れる気がしないから他のみんなに任せるわ
その分ここで相手の数を減らせるよう頑張るわね
よし、やるわよアスターさん!
容赦は無用よ!



 午前中の座学とは一転して、午後の勉強会は盛り上がっていた。
 全員ジャングル迷彩を身に纏い、ライフル持ってサバゲーフィールドに立っている。
 戦術の実技はサバゲーで身につけようという、講師の暴論に付き合わされ、なんだかんだでサバゲープレイヤーの出で立ちになっているウィンクルムたち。
 もともと、外で活動することが多いウィンクルムの仕事柄か、サバゲーフィールドは賑わっている。
 サバゲーフィールドはどこから取り寄せたのか、南国の植物が植えられていて、生い茂った葉によって薄暗い。
 A.R.O.A.の近くに特設されたらしいが、ジャングルの再現度が高く、人工のジャングルとは思えない。
 湿度もこのフィールドに入ると高くなったように感じた。

(戦術勉強会に参加していたはずなのに……)
 エリー・アッシェンは、サバゲーの展開に戸惑っていた。
 エリーの横でテンション高く「ヒャッハーッ! 銃撃戦だぁ!」とライフルを持って遊んでいるラダ・ブッチャー。
 戸惑っていても仕方がないので、ゲームやスポーツの一種だと考えて、気軽に楽しもうという気持ちになった。

「実技がサバゲー?」
 七瀬 琴子は迷彩服を着せられ、ライフルを渡されて、ポカーンとしていた。
「サバゲーは初めてですね。なんだか面白そうですし、楽しみですね」
 エディス・アスターはわりと乗り気の様子だ。
「ま、まあ何かの役に立つかも知れないしね。弾に当たったところで、どうこうなるわけでもないし、気軽に行きましょうか」
 エディスの気分に流されてか、琴子は自分を納得させる。
 いったん、気軽に遊ぼうと思うと、ごついライフルですらペイント弾を発射するおもちゃに見えてきた。

「サバゲー……、これも戦術の勉強ですか。まじめに取り組もうと思います」
 ハロルドは賑わっているサバゲフィールドでも、落ち着き、ライフルが正常に動作するか確認をしている。
 その様子をディエゴ・ルナ・クィンテロは複雑な表情で見ていた。
(エクレールから俺と出会ってからの記憶がなくなって、どうも上手くいかない。戦術の勉強よりエクレールとの距離を縮めよう)
 ディエゴは迷彩服を着こなしていた。ライフルも持ち慣れているように見える。
(サバゲーの経験はないが、森林での交戦は軍学校の頃経験済みだ)
 ジャングルフィールド内でスコープのついたライフルは必要ないと判断し、遠距離用に調整されたライフルは申請していない。
 森林での交戦経験では機動力が重要だったのが身に染みている。
 自分にとって必要のない部品のついたライフルは使う気がしなかった。

「サバイバルゲーム……」
 篠宮潤は迷彩服にライフルという無骨な装備をさせられて、何をしたらいいのだろうと思っている。
「体力が減少していく中でどこまで己が動けるか、何ができるか知るのは今後のためになろう」
 ヒュリアスは潤の戸惑いに気がついて声をかけた。
「講義、面白かったし、それに、自分の体力の限界、知ってた方がいい、よね」
 これは訓練だと思い直して、潤は気合いを入れる。
 ヒュリアスはそんな潤を見て思った。
(ウルの援護に全力を尽くすとするかね)

「サバゲーは初めてだが、こういうの大好き! だから傭兵になったんだよな!」
 レオン・フラガラッハは「フラグ狙いだ!」と楽しげである。
(視野が狭い自分には不利だけど、レオンが楽しげだから、まあいいか)
 ガートルード・フレイムはレオンが楽しめるように、援護を頑張ろうと思う。


 相手チームとこちらは人数が同じである。
 どちらもウィンクルムのチームとなっている。
 ゲームスタートの合図が全員のインカムから聞こえてきた。
「ヒャッハーッ! 銃撃戦の開始だぁ! 映画みたいで楽しそう!」
 ラダは自分のフラグエリアから一気に走って行く。
 それを追うようにしてエリーもライフルを持って走った。
「勉強ばかりじゃ疲れちゃうからねぇ、スポーツ感覚で楽しもうねぇ」
「ラダさんの言う通りですね。スポーツなら楽しみましょう」
 エリーは笑った。

『マップに書いてある岩場のポイントは銃撃戦になりそうね。相手より先について迎え撃つわよ』
 インカムは全員オンになっている。琴子は地図に「エリア1」とマークしたポイントまで一気に走る。
(一緒にいると索敵されやすそうですから、琴子さんとは少し距離を開けますかね)
 エディスは岩場ポイントに走って行く途中で、琴子と距離を開けた。

 岩場エリアには相手チームより先に到着することができたようだ。
 エリー、ラダは素早く岩に身を潜めた。
 琴子も同じように岩に身を隠す。エディスは琴子をフォローするために、少し距離を置いて待機している。
『岩場のポイント、エリア1に到着したよぅ』
 ラダがインカムにいった。
『そうかね。相手とのファーストコンタクトになる。戦果を期待しているとしよう』
 ヒュリアスがいった。
 岩場ポイント、通称エリア1を突破する前に、こちらの全滅を避ける必要がある。人員を交戦になるであろう予想ポイントに割り振って活動することにしている。
 岩場ポイント、エリア1にいるのはエリー、ラダ、琴子、エディスとなっている。
 後方に、潤とヒュリアスがつけている状態だ。

「敵の気配がしますよ」
 いち早く現場の変化に気がついたのはエリーだった。
 ジャングルの中ではサバイバル経験がなければ直感に頼るしかない。
 前線にいるメンバーの中でエリーが最も冴えていた。
 エリーがインカムに『いつでも撃てるようにしていてください』というと、タイミングを計ったかのように、相手チームのウィンクルムたちが岩場から飛び出してきた。
「ボクたちの方が先に来てたんだよねぇ。ヒャッハーッ! 飛んで火に入る夏の虫とはこのことだねぇ」
 ラダは言いながら、ライフルをフルオートで発砲する。
 ピンク色のインクの塊がかなりハイテンポで射出された。
「ぐああ! ヒット!」
 相手の精霊が真正面からラダに連射されて、脱落する。
 すぐに他の相手からライフルを連射されて、ラダは慌てて岩陰に隠れた。
「アヒャヒャ、まずは一人やっつけたよぉ」
 エリーはラダが撃たれないように、居場所がバレて集中攻撃を食らっているラダのバックアップ射撃を岩陰から行う。
 無意識にライフルだけを岩陰から出して発砲する体勢をとっていた。
 引き金を引いて連射すると、ラダへ対しての発砲が止む。
 その隙にラダは他の岩へと隠れた。
『こうして銃声や悲鳴が飛び交う中、岩陰でジッと息を殺していると、なんだか映画のワンシーンのようです。素敵なひとときですね』
 エリーは戦争映画のワンシーンのことを言っているのだが、インカムを通して聞いたメンバー達はトリガーハッピーなのか!? と若干ひく。

 琴子は岩陰から顔を出しては地道に狙いを定めていた。
 そのたびにライフルで連射される。
 なぜか自分にヒットしないと思っていると、少し後ろから、エディスが援護射撃で相手にペイント弾をたっぷりと送り込んでいた。
「……ヒット」
 相手の神人が一人ヒットを宣言する。
 琴子とエディスのどちらかの流れ弾が当たったのだろう。
(いいところを見せたいなとは少し思いますが、さすがに初めてやるゲームでは難しいですね。背伸びはせずに、自分にできることを精一杯行おうと思います)
 琴子が前衛を頑張る分、エディスは後衛から相手を狙いやすかった。
『人に銃を向けるのってなんだかドキドキするわね。ペイント弾だってわかってるけど、……ちょっと楽しいかも知れない』
 琴子は有利に進んでいるゲーム展開にテンションが上がっている。
『琴子さん、意外とやる気ですね……、でも、楽しそうで何よりです。頑張りましょう!』

『気配はあと二人といったところでしょうか……』
 エリーは相変わらず鋭い直感で現場の状況を推測する。
『じゃあ、ボクがあぶり出すよぉ。ここはボクに任せて先に行くんだ!』
 ラダがなにやらフラグを立てながら岩から飛び出して、ライフルを乱射した。
 すると、相手チームの神人と精霊が岩から出てきて、ラダにペイント弾を連射する。
「冷たっ、インク、冷たいよぉ! ヒットぉ」
 ラダのリタイアは無駄にしないとばかりに、こちらはエリーと琴子、エディスがラダを撃った相手を仕留める。
「ヒットです」
「ああ、ヒットだ」
 前線の三人で岩場をクリアリングして、インカムに連絡を入れる。
『エリア1、クリアです。エリア2を続いて征圧しましょう!』
 エディスがいった。
『了解した』
 ディエゴはそういうと、ハロルドと共に岩場ポイントを抜けてエリア2へと向かっていった。

『エリーさん、ラダさん、……上手』
 潤は順調に戦線を進めたエリーの直感と、ラダの行動力に感心した。
『ウル、俺達もエリア2へ向かおう。エリア1はエリー嬢や琴子嬢に任せておけば、このルートから突破されることはないだろう』

『サバゲーは初めて参加しましたが、適度な緊張感があって面白いゲームですね』
 エリーは感想をいうと、エリア1の守りを固めるようにして、相手チームが来るであろう場所の正面に、銃口を向けて待機するのだった。
ラダがリタイアしたので、フラグ正面を固めるという意味で、琴子とエディスはエリア1の守りにつくことにした。
『エリア2は任せたわよ』
 琴子は横を過ぎて、エリア2へ向かう仲間達に声をかけるのだった。


 岩場エリアより進むと壁があちこちに設置されたエリア2にたどり着いた。
 壁はコンクリがそのままの姿で、分厚い壁となって何枚も設置されていた。
 ジャングルの中にある人工物はやけに浮いて見えるものだ。
 コンクリの壁には何カ所か大きな窓穴がぶち抜いてあって、攻撃できるように作られている。

「いいか、ハル、二人一組で行動するときは離れすぎるな。撃って外したときはすぐに移動しろ。敵を発見してもあてる自信がなければ、俺か味方に連絡すること」
 ディエゴは自分の経験則をハロルドに教えた。
「わかりました」
 ハロルドは機械的に応える。
『俺は窓の隙間から狙撃する。ハルはどうする?』
『このエリアだと視覚が多いですから、ディエゴさんの観測手をやろうと思います』
『そうか。わかった』
 二人はこのエリアに敵がいることに気がついていた。
 ウィンクルムとしての経験が豊富な二人にとって、敵チームが隠れている場所を推測することは難しいことではない。
『エリア2におよそ4名の敵がいる。警戒するんだ』

『え……わかるんですか? すごい……』
 潤はエリア2の敵の数を聞いて、自分が頑張らなければと思う。
『さて、敵の方もこちらに気がついているようだね。こちらから揺さぶりをかけてみるとしよう』
 ヒュリアスがいった。
『あ……ディエゴ、さんっ、今僕、壁の前を横切るからっ、もし相手が顔を出したら、よかったら狙って、下さ……っ』
 潤はいうと、素早く行動を始めた。
 ヒュリアスがそれに続く。
 体勢を低くして素早く壁から壁へと移動していく。
 潤は相手のいそうな場所がわかっていて、移動をしている。直感で何となくわかるのだ。
 ヒュリアスの方は気がついていないようだ。
 ペイント弾が連続して発射される音が聞こえた。
 潤とヒュリアスを捕捉して発砲しているのだ。
 ディエゴは素早く敵を射線に入れると、スタンディングフォームで構えて引き金を絞った。
 一発のペイント弾が発射される。
「ヒットしたぁ!」
 着弾地点から情けない声が聞こえてきた。
「走るぞ」
 ディエゴが言うと、ハロルドは頷いた。
 今いた地点に大量のペイント弾が送り込まれてくる。

『壁の隙間……から狙え、ないかな?』
 潤はディエゴとハロルドの俊敏な動きに、隠れるのが疎かになっている敵を見て言った。
『行こうではないか』
 ヒュリアスがいったをの合図に、二人は壁の窓穴にライフルを突っ込んで、至近距離で発砲する。
 連続してペイント弾を送り込むと、「うぎゃぁあ! ヒットしちまった!」という声が聞こえてきた。
『あ。楽しい、かも……』
『やれば出来るではないか』
 潤は敵を一人やっつけられたことに気を抜いた。
 ヒュリアスの視界には、潤にライフルを向ける精霊の姿がしっかりと映っている。
 連続して発砲してくる精霊。
 潤の死角からの攻撃なので守れるのは自分しかいないと、とっさに尻尾で潤を庇った。
 インクが尻尾につく感触があった。
『ヒットした』
 ヒュリアスがいうのが早いか、敵が倒されるのが早いか、相手の精霊もディエゴの狙撃によって「ヒットだ」と宣言していた。
 潤は悲しそうな顔でヒュリアスを見ていた。自分が失敗したのだという顔をしている。
「やれやれ、そんな顔をするな。俺の分まで戦果を出してくれたまえ」
「ヒューリ!? わ、分かったっ、頑張る……!」
 まさか庇われるとは思っていなかったので、潤は驚いていた。
 ヒュリアスは仲間と連携してゲームをしている潤をみて、成長を微笑ましく思っていた。

 ディエゴとハロルドはこのエリアに残る最後の一人に苦戦していた。
 気配がとても薄いのだ。物音がしない。無駄な動きもほとんど無い。
 こういうゲームに慣れているとすぐに分かった。
 ほんの一瞬の出来事だった。銃口だけが窓穴から覗いている。
 敵のライフルの狙いはハロルドだった。
 躱せるか?
 間に合わない。
 ディエゴはハロルドを背中で庇っていた。
 背中にインクがつく感触がする。
『ヒットだ』
 ハロルドは事態に気がつき、瞬時に動いた。
 敵は潤の連射を受けて走っている。そこを撃ち抜いた。
「あ、ヒットです」
 このエリアの最後の一人をハロルドは仕留めた。
 ただ、ハロルドはそのことに何の関心も持たず、ディエゴに詰め寄った。
「……ディエゴさん、戦力的な観点から私を庇うのは間違いだと思います。そんな判断ミスをするなんて……、どうしたんですか?」
 ハロルドは疑問をぶつける。ディエゴの服についているインクに触ると、間違いなくディエゴがヒットしたことを告げてきて、複雑な気持ちになる。
「何故そうしたか? ……さあ、どうしてだろうな。考える前に体が動いていた。俺らしくない……か?」
「庇ったときにできましたか? 顔に擦り傷が……、あ。顔にペイントが……、わざとじゃないです」
 ハロルドはイタズラをした子供が叱られるときのように弁明する。
「ふ……ははは、すぐ落ちるから気にするな」
 ディエゴはハロルドの態度が面白くてしばらく笑っていた。


 ついに相手フラグエリアに到着したガートルードとレオン。
 仲間が作ってくれた勝利への道を考えると、フラグをとりたい気持ちがはやる。
 ジャングルフィールドでもこの場所だけ開けていて、小さな丘になっている。
 ちょうど、頂上にフラグがある。
 このフラグをとればゲーム終了である。
『狙撃手がいるはずだ。こちらと相手が同数のチームだから、二人で間違いないな』
 レオンは楽しそうに周囲を索敵している。
『私が援護する。狙撃手を各個撃破しよう』
 ガートルードがいうと、レオンは楽しそうに笑った。
『足跡を調べれば、おおよその場所は分かるぜ、行こう』
 丘には上がらずに、周辺のジャングルフィールドの足跡を探してしばらく歩く。
 その間、ガートルードがライフルで警戒していた。
 レオンはあっという間に足跡を見つけた。
『やっぱり、俺はこういうの向いてるな。正面に隠れてる狙撃手見つけたぜ』
 レオンは素早くライフルを構えると、スコープを覗いた。
 サバゲーのライフルについているスコープなど飾りのようなものだが、雰囲気というものは大事だ。
 引き金を絞ると、スコープに移る狙撃手の精霊の迷彩服にインクがついた。
「げえ! 後ろからかあ……、ヒット」
 一人撃破したところで、レオンはガートルードに自分のライフルを放り投げる。
『んじゃ、後はよろしく!』
『え?』
 ガートルードにライフルを預けたレオンはフラグに向かって一直線にダッシュした。
『おりゃぁぁぁ!』
 敵の最後の一人がレオンに向かってフルバーストでペイント弾を撃ち出す。
 レオンはあっという間にインクまみれになった。
 ガートルードがしばらく展開について行けないと、エリア2からハロルドと潤がエリア3に移動してきていた。
 今の発砲位置を確認していたのだろう。フルオートでペイント弾を送り込んでいる。
 ガートルードはチャンスだと思い、小さな丘を走り上がっていく。
 邪魔する者は誰もいない。
 敵チームの赤いフラグが眼に入った。視野が狭いガートルードの瞳でも、しっかりとフラグが見えていた。
 フラグをついに手にとる。
 同時に、ゲーム終了を知らせるアナウンスがインカムに流れた。
 勝利である。

「あー、楽しかった」
 地面に大の字になって寝転ぶレオンにガートルードはいった。
「お前、わざと撃たれに行ってなかったか?」
「んな事ねーけど。……ま、実戦じゃあんな無茶できないからやった、てのはあるわな。死んでいいときに死んでおく方がお得じゃん?」
 ガートルードはいったいどんな損得勘定だと呆れながらも、レオンの満足そうな表情を見て、彼が本当に心からサバゲーを楽しんでいたのだと思う。
「今日は楽しかった」
 ガートルードに手を伸ばすレオン。
「ああ、こちらこそ」
 手を握り返したガートルード。
 すると、レオンは起き上がりそのまま手を繋いで帰り始めた。
 積極的なレオンに狼狽えながら、ジャングルフィールドを退場するガートルードだった。



依頼結果:大成功
MVP
名前:ガートルード・フレイム
呼び名:お前、ガーティー
  名前:レオン・フラガラッハ
呼び名:お前、レオン

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 和歌祭 麒麟
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 11月07日
出発日 11月14日 00:00
予定納品日 11月24日

参加者

会議室

  • [14]七瀬 琴子

    2014/11/12-22:43 

    それじゃあ私はエリア1に行ってみるわ。
    長生きできる気はしないけど、まあ頑張ってくるわね。

  • レオン:
    とりあえず、プラン提出済みだ。
    変更もきくので何かあったら言ってくれな。

    そうそう、俺は1、2エリアの敵がある程度片づいたら、
    最初に3に攻め込むつもりでいるが、
    最初に特攻する奴はやられる確率も高いから、
    他にもフラグ狙いたい人いたら、遠慮せずプランに書いてくれなー。
    その場合は、俺の神人はその人の援護に回るから。

  • レオン:
    んじゃ、気楽に楽しむって言うことでOKだなw
    俺はエリア3でハンティングでざっと狙撃手を始末してからアタックを試みようかと。
    俺もこういうゲームは初だから、足引っ張るかもしれないが、よろしくなー。

  • [11]篠宮潤

    2014/11/11-09:35 

    教えてくれた方々、ありがとう、だっ

    そした、ら…僕たちは基本、エリア1、2でひたすら駆け回って
    相手チーム誘導してる、かと(要は的係り)
    うん、どこまで動けるのか、体力の限界に挑んでみよう…かな。

    人数少なくなってきたらフラグ取りにも挑んでみたい、けど…
    ………(そこまで生き残っている気がしないようだ)

  • [10]エリー・アッシェン

    2014/11/10-23:30 

    皆さん、改めてよろしくお願いします。
    1:フィールドの中腹エリアで、相手チームとの銃撃戦を楽しもうかと思っています。

  • [9]七瀬 琴子

    2014/11/10-21:55 

    七瀬琴子よ。よろしくね。

    私もがちがちにいくよりかはゆるーく楽しみたい派かしら。
    こちら完全にサバゲー初心者だから雰囲気を楽しめればいいかなと。
    エリアについては今の所考え中ね。

  • [8]ハロルド

    2014/11/10-14:15 

    俺は交戦エリア2の壁でフラグ接近の阻止をしている予定だ
    1で交戦する組の横を縫って行くことになると思う。

  • レオン:
    初めましての人もまた会えた人もよろしくなー!
    レオンだ。呼び捨てで呼んでくれ。
    俺も精霊の方は呼び捨てて呼ばせてもらうな。

    俺も、「ゲームとはいえやるからにはきっちり勝たねば!!」という人がいたら作戦立案協力するけど、
    そうでなければ、気楽に楽しみたい派かなー。

    ハンティングレベル3があるから狙撃がいいのかもしれねえが、
    ガンガン前に出て攻めるポジション希望だ。

  • [6]篠宮潤

    2014/11/10-09:05 

    篠宮潤(しのみや うる)、と、パートナーはテイルスのヒュリアス、だよ。
    皆、今回、めいっぱい楽しもう、ねっ。どうぞよろしく、だ。

    なんとなく、「このエリア付近で楽しむつもりだよー」だけでも
    教えてもらえば、僕たち、は、(勝手に←)フォローに駆け回ろう、かなって、思ってるよ。
    命中そんなに高くない、から…;、狙撃、狙うヒトたちの囮、かなぁ、とか。
    (要約:プラン内で一方的に誰かに絡みに行く予定満々←)

    め、目の前うろちょろしてた、ら…ご、ごめん、ね…(ぽそ)
    な、なるべくっ、インカムで「今横切るよ!」とか言うつもり、だから…っ(あわあわ)

  • [5]ハロルド

    2014/11/10-06:48 

    …そういえば、ジャンルがコメディだな
    ラダの言う通り気晴らしで挑むのが吉、か
    ありがとう、仕事と勘違いしていた

  • [4]エリー・アッシェン

    2014/11/10-03:22 

    ラダ・ブッチャー

    今の気分的に、あくまでもゲームや気晴らしとして楽しみたいかなぁ~?
    うん。ボクは遊びたい……。

    あっ、でも、勝ちにいくための戦術を指導してくれる人がいれば、その作戦に沿って行動するよぉ!

  • [3]ハロルド

    2014/11/10-01:47 

    よろしく頼む
    …ハピネスではあるが、これはアドエピ並に作戦立案が必要なのだろうか?
    …戦予定になる場所に自分たちのフラグエリアがないが、守らなくて良いのか…?

    こちらは命中率が高くなるスキルをセットしているので、狙撃ができると思う。

  • [2]エリー・アッシェン

    2014/11/10-00:20 

    エリー・アッシェンです。
    サバゲーや銃にはあまり詳しくないのですが、ワイワイ楽しめたら良いですね!


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