【ハロウィン・トリート】踊る妖精と光の宴(木口アキノ マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

「今年は、どうして来てくれないのー?」
 悲しそうにかぼちゃを見つめるのは、花の夢を集める妖精たち。
 彼らは、私が経営するフラワーガーデンに住み、花の手入れを手伝ってくれている。
 フラワーガーデンの一画に、妖精たちが自由に花を植えられる場所を設けているのだが、そこの一部にかかぼちゃを植えていたらしい。
「来てくれないって、誰が?」
 お客さんなら、毎日それなりに来てくれているのだが。
「お客様じゃないの。光の妖精なの」
「光の妖精?」
「毎年、このくらいの季節になると、かぼちゃに集まってくれるの。きらきら踊って、とても綺麗なの」
 なるほど、このかぼちゃは、光の妖精に来てもらうために植えていたのか。
「今年は、何かヘンなの……」
 私は、ふと思いついて妖精に言う。
「このかぼちゃ、一つもらえないかな」
 妖精たちは、どうするの?と言いたげな瞳で、私を見上げた。

 管理小屋に椅子と作業台をセット。作業中の気分転換のための紅茶も用意。
「よし」
 私は気合いを入れてナイフを握りしめ、かぼちゃの上部にそれを突き立てる。
 妖精たちが不安そうに眺めるなか、私はナイフや彫刻刀を用い、さくさくとかぼちゃに細工をしていく。
「できた!」
 かぼちゃの中身をくりぬき、皮も目、鼻、口の形に切り抜いた。しかし、妖精の反応は……。
「………」
「これ、何なの……?」
 微妙であった。
 私は子供のころから美術は苦手だったのだ、仕方あるまい。
「ジャック・オ・ランタンだよ。この中にキャンドルを入れて、火を灯すんだ……」
 説明しているそばから、かぼちゃの中が光り始めた。おや、まだキャンドルは入れていないぞ。
 妖精たちが瞳を輝かせた。
「光の妖精なの!」
 光はゆらめきながらかぼちゃの中からふぅわりと浮かび上がる。
 輝く小さな妖精が、踊っていた。
 妖精がくるりと回ると、光の粒が生まれ、きらきらと落ちていく。
「どうして、来てくれたの?」
 花の夢を集める妖精が訊くと、光の妖精は、くるんと宙返りした。
「そうだったの」
 うちの妖精たちは納得した様子だ。
 光の妖精の声は私には聞こえないが、妖精同士で話をしているのかもしれない。
 私は一息入れようと紅茶のカップを持ち上げ、目を見張る。紅茶がほんのり輝いている。
 そうか、妖精から生まれた光の粒が紅茶に入ったのか。
 輝く紅茶というのも、なかなかおつなものだな、と私はカップに口をつける。
「あのね、あのね」
 花の夢を集める妖精たちが口ぐちに私に話しかける。
「光の妖精はね、人々の夢の力が足りなくて、ここに来られないの」
「悪いものが、夢に悪いことをしているみたいなの」
「でもね、このかぼちゃに、楽しいって気持ちが込められたから、来られたみたいなの」
 確かに、私は楽しいハロウィンのお祭りを想像しながらランタンを作ったな。
「だからね、楽しいって気持ちをたくさん、かぼちゃに込めてくれたら、もっともっと光の妖精が来てくれるの!」
 とはいえ、私のランタン作りの腕前は前述のとおり。たくさんのランタンなんて作れるわけがない。
 しかし、妖精たちはすでに、たくさんのランタンにたくさんの光の妖精が集まって、みんなでパーティをするつもりになっている。
「たくさんお客さんも来て欲しいの」
 そうか、お客さんにランタンを作ってもらうというのはどうだろう。
 ランタン作りを楽しんでもらって、その後、光の妖精たちと輝く紅茶でお茶会なんて、なかなか素敵じゃないだろうか。

解説

・ジャック・オ・ランタンを作ってください。
 1組1個のランタンを作成してください。
 ナイフ、彫刻刀、キャンドルなどは用意されています。
 オーソドックスなゴーストフェイス、モチーフをあしらった彫刻風など、どのようなランタンを作成するか、デザインはお任せします。
 かぼちゃの大きさはてのひら大から一抱えもあるビッグサイズまで。お好きな大きさを選んで、2人で力を合わせて作ってくださいね。

・夜のお茶会を楽しみましょう。
 輝く紅茶と、妖精たちが作ったひまわりクッキーで夜のお茶会を楽しんでください。
 自作のジャック・オ・ランタンと、妖精の光で幻想的なお茶会になることでしょう。

・参加費用は、1組500ジェールです。


ゲームマスターより

 悪いものが、夢に悪いことをしている……。
 妖精たちが、何か不穏なことを言っていますね。
 しかし、ウィンクルムの皆さんなら、そんな「悪いもの」を吹き飛ばすくらい、楽しいお茶会にしてくれると信じています!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ミサ・フルール(エミリオ・シュトルツ)

  ハロウィンだよ、お茶会だよ
楽しいね、わくわくするよね♪

☆ジャック・オ・ランタン作り
『かぼちゃの大きさは中くらい』にしようと思うの
皆が楽しい時間を過ごせるように願いを込めて『にこにこ笑っている』ようにかぼちゃをくり抜きたいな
痛っ、大丈夫、少し切っちゃっただけだしっ!?(指を舐められ硬直)
あ、ああ、ありがと(赤面)

☆お茶会
じゃーん!クーヘンバスケット~
素敵な企画を考えてくれたお姉さんと妖精さん達にお礼がしたくてお菓子を焼いてきたの(スキル使用)
え?エミリオさんの分は…あ(汗)
ごめんなさい、ってああっ!?
それ私のひまわりクッキー(涙)
ね、ねぇ、気づいてる?
それ間接キス、だよ…っ(赤い顔を両手で覆う)



篠宮潤(ヒュリアス)
  今までも寄せ植えやカヌーで一緒に何かをやったことはあった…けど
今日、一際こんなに楽しいのはきっと…

子供の顔程の大きさのかぼちゃ
「ね…ヒューリ。似て、る?」
大事だった親友の事をまさかヒューリと話せるなんて
『彼女』の恋人だった犬の精霊さんを思い出し、目や口をくり抜いた欠片で
耳を付け。眉太く掘ったり
「『彼』は…どこへ…行ったんだろう…」
「う、ん…あっ、ヒューリ酷、い…っ」
『彼』のことは追い追い考えよう
…う。耳、削り直された

キャンドルを『彼女』に見立てかぼちゃの横に寄り添わせ
「綺麗…だ」
妖精の光にしばし見とれ。『2人』の温かさみたい
「そう、だね。もう、大事な仲間、が、同じことにならないよう…」
祈り


ミオン・キャロル(アルヴィン・ブラッドロー)
  じゃっくおーらんたん…見たことはあるわ
んー(と中腰でじーっと南瓜を吟味
作るのなら大きいのがいいわね、これっ!
おーもーいー(ずりずり動かしながら助けを求める視線を送る

ペンで顔を書けばいいのね…きゅっきゅっと
…何かしら?(上目づかいで不満げに
判ればいいいいのよっ!(ぷぅっと頬を膨らませ
次は中身をくり抜くわよ…硬い…って抜けない!
えぇ…!?こ、声が近い…
じ、自分で出来るわよっ!(押しのける

帽子を被せたいわ。うん、満足(橙ベースと黒の魔女風帽子
あら、まだ何かするの?

ぼんやり光ってどこもかしこも素敵
クッキー、一緒に食べましょう?(手の平に乗せて妖精へ
紅茶に両手を添え飲む瞬間に不意打ちにはぅと赤くなり俯く



メイ・フォルツァ(カライス・緑松)
  ハロウィンといえば、ジャック・オ・ランタンよね!
折角だから、ババーンとゴージャスにしたいわね!

リョク、カッコつけてないで彫りなさいよ!
これ二人で500jrなんだから、愛がなくても共同作業しなきゃ勿体ないわよー!?

というわけで!
ジャック・オ・ランタンは1番大きいカボチャを使うわよ!
アタイは下書きするから、リョクは彫ってね!

そうね、デザインとしてはぁー
ハート形の両目を書いたら、目の下に小さい横長の楕円形。
口は逆三角形で大きく縁取るわよ?
リョクぅ、やっぱアタイも手伝わせてー。

お茶も楽しかったけどさぁ
アタイ、飽き足りないんだよね。

そうだ!
今度はリョクが下書きして?
それでジャック・オ・ランタン作ろうよ!



菫 離々(蓮)
  妖精さんも花たちも、楽しい夜と夢が見られますように。

かぼちゃはサッカーボール大サイズを希望です
他の大きさの物と並べたら親子に見えて可愛いかなと。
早速ナイフを……ハチさんに取り上げられてしまいました
少々過保護だと思います。私だって戦うんですよ

渋々受け取ったペンでかぼちゃに顔を描いていきます。
魔除けの意味もあるんですよね
でしたら口は大きく裂けて、牙も鋭く、睨みを利かせる眼は……
うーん、あまり怖くなりませんね

ハチさんの手許を見守りつつ取り出した種や皮のお掃除です
一緒に何かを作るのって初めてなのでわくわくします

幻想的な光ですね
妖精さんもお菓子は食べられるのでしょうか
素敵な踊りのお礼に私のお菓子もどうぞ


☆楽しいランタン作り☆
「ハロウィンだよ、お茶会だよ。楽しいね、わくわくするよね♪」
 ハロウィンらしいアイテムをプラスしたコーディネートのミサ・フルールは、駆け出しそうな勢いでフラワーガーデンに続く小路を進む。
 ミサが躓きそうになる前に、エミリオ・シュトルツはすっと彼女の手をとり、微笑む。
「今日は楽しい時間を過ごせるといいね。さ、行こうか」
 エミリオはミサの手をとったまま、彼女をフラワーガーデンまでエスコートした。

 フラワーガーデンの入口付近にはランタン作りの作業場が設けられていた。
 並べられた大小さまざまなかぼちゃを前に、メイ・フォルツァは瞳を輝かせる。
「ハロウィンといえば、ジャック・オ・ランタンよね!折角だから、ババーンとゴージャスにしたいわね!」
 カライス・緑松は大きな声のメイに眉根をひそめるが、メイはそんなことおかまいなし。
「リョク、カッコつけてないで彫りなさいよ!これ二人で500jrなんだから、愛がなくても共同作業しなきゃ勿体ないわよー!?」
 メイの声のボリュームは下がることを知らない。緑松は、メイの喉の構造は一体どうなっているのかと、本気で疑問に思うことがある。
 そんな緑松を後目に、メイは
「というわけで!ジャック・オ・ランタンは1番大きいカボチャを使うわよ!アタイは下書きするから、リョクは彫ってね!」
と、緑松が意見を挟む間も与えずに、ビッグサイズのかぼちゃを選んだ。

 かぼちゃ選びはジャック・オ・ランタン作りにおいて、一番初めの重要な作業である。自分好みのランタンにするには、どのサイズが一番適しているのか。それを見極めなければならないのだから。
「ん~~~」
 ミオン・キャロルはじっくりと並んだかぼちゃを見比べ熟考している。
「じゃっくおーらんたん……見たことはあるわ」
 しかし作るのは初めてである。だから、どんなかぼちゃが良いのか具体的なイメージが湧かず、悩むのである。
「作るのなら大きいのがいいわね、これっ!」
「……大きいと大変だぞ?」
 アルヴィン・ブラッドローの忠告が聞こえているのかいないのか、ミオンは、自分が抱えきれるかどうかの大きなかぼちゃを選び、手をかける。
「っ!おーもーいー!」
「だから言っただろ」
 ミオンはかぼちゃをずりずり動かしながら、アルヴィンに視線で助けを求める。
「はいはい」
 アルヴィンはかぼちゃに両手をかけると、ぐっと力を入れてそれを持ち上げ肩に担いだ。

 菫 離々は、「妖精さんも花たちも、楽しい夜と夢が見られますように」という想いのもと、この企画に参加した。
「お嬢さんは、大きいかぼちゃにしないんですか?」
 蓮が、サッカーボール大のかぼちゃを選んだ菫離々に訊く。
「はい。他の大きさの物と並べたら親子に見えて可愛いかなと」
「そうですね、良いと思いますよ」

 篠宮潤は、子供の顔くらいの大きさのかぼちゃを選んだ。
「ウルは、そのかぼちゃでいいのかね」
 ヒュリアスが訊くと、潤はこくんと頷く。
「作りたいもの、決めてあるんだ……」
 潤はかぼちゃが大事な物であるかのようにぎゅっと抱え、作業場まで運ぶ。

「私はこれがいいな」
 ミサは大きすぎず、小さすぎず、他の人たちが選んだかぼちゃの丁度中くらいの大きさのものを選ぶ。
「ミサは、どんなジャック・オ・ランタンにするの?」
 エミリオが訊くと、ミサは笑顔で答えた。
「みんなが楽しくなれるような、笑顔のジャック・オ・ランタンにしたいな」


「さあ、作りますよ」
 作業台の上に置いたかぼちゃを前に、離々は気合いを入れ、ナイフに手を伸ばす。
 が、横からひょいと伸びてきた蓮の手がそれを取り上げる。
「彫るのは俺がやります」
「ハチさんたら、少々過保護ではありませんか。私だって戦うんですよ」
「そりゃ戦闘となればお嬢さんにも剣を取って頂くことになりますが、今この状況で態々刃物を持たせる必要性は感じません。ということで、お嬢にはこれです」
 蓮は離々に下書き用のペンを手渡す。離々は渋々それを受け取り、かぼちゃに下書きを始める。
「ジャック・オ・ランタンって、魔除けの意味もあるんですよね。でしたら口は大きく裂けて、牙も鋭く、睨みを利かせる眼は……うーん、あまり怖くなりませんね」
 離々の下書きは、だんだん熱が入ってくる。
「眼のラインはもう少し、ぎゅっとつり上がるようにして……」
「お嬢。魔物以外も除けていきそうな面構えですソレ。俺も夜道で出逢いたくない系です」
 出来上がった顔は、蓮も驚くほどの凶悪っぷりだ。
「絵心のない俺よりお嬢が描いた方が愛らしい仕上がりになると思ったんですが……」
 離々の絵心は、蓮の想像を超えていたようだ。
「では、次は俺の番ですね」
 蓮はナイフでかぼちゃの上部を切り取り、中身を掻き出していく。離々はそれを見守りつつ、出されたかぼちゃのわたを掃除する。
「一緒に何かを作るのって初めてだからわくわくしますね」
 離々の言葉に、蓮ははっとして手を止める。
「一緒に作る……。初めての共同作……!いえ、何でもないです」
 きょとんとしている離々から視線をそらし、蓮はまたいそいそと作業を続けるのだった。 

「笑顔のジャック・オ・ランタン、か。ふふ、ミサらしいね」
 エミリオはミサの要望に沿うように、かぼちゃに下書きをしていく。満面の笑顔の、かわいらしいジャック・オ・ランタンになった。
「次は、下書き通りに切り取るのよね。エミリオさんにやってもらってばかりじゃ悪いから、私にもやらせて欲しいな」
「大丈夫かい」
 エミリオは心配そうに訊く。
「うん。それに、私もちゃんと、一緒に作りたいもの」
「そうか、わかったよ。いいかい、ナイフに力が入りやすいようにきちんと握って……」
 エミリオは一度手本としてかぼちゃに一筋の切込みを入れて見せた。
「じゃあ、やってみるね」
 ミサはエミリオからナイフを受け取る。
「刃物を使う時は気をつけ……」
「痛っ」
「ミサ!?」
 言ったそばから、ミサが悲鳴をあげる。
「本当にお前はそそっかしい……」
 すかさずエミリオはミサの手をすくいあげる。
「大丈夫、少し切っちゃっただけだし……っ!?」
 エミリオがミサの血の滲む指を口に含む。熱い舌の感触が、傷をなぞる。
「あ、ああ、ありがと」
 応急措置のためとはわかっているが、エミリオの大胆な行動にミサは思わず赤面してしまう。
 怪我人が出ることは予想済みのようで、作業場には絆創膏も用意されていた。
 エミリオはそれをミサの指に貼りつつ、
「また怪我した時はただじゃおかないから、いいね?」
と悪戯っぽく笑った。

 ずしん、とアルヴィンが大きなかぼちゃを地面に置く。
 大きいかぼちゃは作業台に乗らないのだ。
「まずはペンで顔を書けばいいのね……」
 ミオンは迷いのないペンさばきできゅきゅっとかぼちゃに顔を書いていく。
「………」
 アルヴィンの何か言いたげな視線。
「……何かしら?」
 ミオンはかぼちゃから視線を外し、上目づかいにアルヴィンを見る。
「……何でも」
 しかし、アルヴィンの視線は物語っている。ミオンの書いたかぼちゃの顔はどう見ても、歪んでいると。
「顔だって判ればいいいいのよっ!」
 アルヴィンの言わんとしていることを悟ったミオンはぷうっと頬を膨らませる。
 アルヴィンはミオンの頭をぽんぽんとなでる。
「まぁ、くり抜いたら分らないよな」
「そうよっ。さあ、次は中身をくり抜くわよ」
 ミオンはナイフを両手で掴み、かぼちゃの上部に突き立てる。
「……硬い……って抜けない!」
 ナイフを持つミオンの手がぷるぷる震える。
 見かねたアルヴィンが手を貸す。
「力の入れ方にコツがあるんだよ。こうやって、さ」
 アルヴィンはミオンの背後から両腕を回し、彼女の手に自分の手を重ねる。
「……!」
 急に背中にアルヴィンの体温を感じ、ミオンは思わず身を固くする。
「……ん、どうした?」
 耳元で聞こえるアルヴィンの声。あまりにも、近い。
「ど、どうもしないわよっ。ていうか、そんな二人羽織みたいにしなくたって、言葉で教えてくれれば自分でできるわよっ」
 ミオンは真っ赤になった顔を見られないように俯きながら、肘でアルヴィンを押しのけようとする。
「だーめだ、怪我するぞ?」
 ミオンの胸中を知ってか知らずか、アルヴィンは退こうとしない。
 ミオンは観念して、アルヴィンと共にかぼちゃを彫る。
「全部彫り終わったけれど、何かが足りないわね」
 かぼちゃを前に、ミオンが考え込む。
「そうよ、帽子があればいいんじゃない?」
「ハロウィン用の飾りの帽子があるのー」
 ミオンの声を聞いて、妖精たちがいくつかの帽子を持ってやってきた。
 ミオンは橙ベースと黒の魔女風帽子を選び、かぼちゃに乗せる。
「うん、満足……あら、まだ何かするの?」
 アルヴィンが彫刻刀を持ってかぼちゃの裏側に回り込む。
「夜になってからのお楽しみだよ」

「ランタン作りは、オレ1人で十分だ」
 と、緑松は言うものの。
「アタイは下書きするから、リョクは彫ってね!」
「……って、無視すんじゃねぇよ……」
 メイはすらすらとかぼちゃに下書きをしていく。
「そうね、デザインとしてはぁー。ハート形の両目を書いたら、目の下に小さい横長の楕円形。口は逆三角形で大きく縁取るわよ?」
「おい、落書きしすぎんじゃねぇぞ?」
 緑松の忠告をよそに、楽しそうに作業を進めるメイ。
 緑松が作業場内を見回すと、皆、笑いあったり、真剣にかぼちゃと向き合ったり、メイと同じように、楽しそうだ。そんな様子を見ていると、はじめはあまり乗り気ではなかった緑松も、
(まぁ、自分の作ったランタンでティータイムも悪くねぇな)
などと思うのだった。
「よし、下書き完成!」
 可愛くもあり怖くもある個性的なメイのかぼちゃが書きあがった。
「じゃあ、後はお願いね」
 緑松は頷くとナイフを手に取り、作業にとりかかる。
「あ~、彫るのも楽しそう!リョクぅ、やっぱアタイも手伝わせてー」
 見てるだけというのはメイの性に合わないようで、結局、2人でかぼちゃを彫っていった。

 はたから見ていても、潤が集中しているのがわかる。
 ジャック・オ・ランタン作りは主に潤が作業し、ヒュリアスがそれを補助するかたちであった。
 潤はこのランタンに特別な想いを込めている。
 大切だった、潤の親友。大切な『彼女』の話を、ヒュリアスとも話せたのはつい先日のこと。
 『彼女』との繋がり、そしてヒュリアスとの繋がりがまたひとつ増えた。そんな想いを、形にしたかった。
 だから、潤が作りたかったのは。
「ね……ヒューリ。似て、る?」
 『彼女』の恋人だった犬の精霊。彼を思い出しつつ、目や口をくり抜いた欠片で耳を付け、眉を太く彫ってみた。
「……っ」
 ヒュリアスは珍しく吹き出す。
 頑張った形跡はわかるのだが、果たしてこれを顔と評していいのだろうか。しかし、努力だけは認めてやらねば。ヒュリアスはなんとか褒められる点を探す。
「うむ。眉の太さは似ているのではないかね」
「『彼』は……どこへ……行ったんだろう……」
 潤は『彼』に似せて作ったつもりのかぼちゃを見つめる。
「亡くなった日から……行方不明であったな。奴にも……当然思うところや葛藤があるのだろう」
 ヒュリアスも『彼女』と友であったことを潤に言えたのは良かったが……未だ話せていないことがある事に変わりはない。
 しかし、潤の自分への緊張もようやく解けてきたところだ、今暫くは保留にしておこう。
 ヒュリアスは気持ちを切り替え、今日は単純に楽しむことにした。
「確かに眉はよく似ている……耳はやり直しだがね」
 ヒュリアスは耳の部品を取り除くとぽいっと投げる。
「う、ん……あっ、ヒューリ酷、い……っ」
「ウルが不器用なのは知っていたがね、荒すぎるのだよ。耳の形は、もっと鋭角に……」
 ヒュリアスが新たに耳の部品を削りはじめる。
「目の形はもう少し細かったのではないかね」
「鼻……はこれでいいと、思うけど」
「全体のバランスを考えるとそこは……」
 いつの間にか、2人そろって夢中でジャック・オ・ランタンを作っているのであった。


☆光のお茶会☆
 夕暮れまでに、全員のジャック・オ・ランタンが出来上がった。
 ハロウィン仕様に飾り付けられたフラワーガーデン内に椅子とテーブルが置かれ、お茶会の用意がされている。
 そこに、各自が作ったジャック・オ・ランタンを運んで飾る。
「それでは皆様、キャンドルに火を点けて欲しいの~」
 妖精に言われ、それぞれのランタンに火が灯る。
 中身をくりぬいただけの時よりも、もっと表情豊かになる。
「どう?どう?アタイがデザインしたランタン、可愛いでしょ?」
 はしゃぐメイに緑松も「まあ、悪くはないな」と言う。
 離々のジャック・オ・ランタンはキャンドルを灯すと一層凄みを増す。
「もうちょっと迫力があった方が良かったかしら……」
「いや、充分ですよ、お嬢」
「エミリオさんの下書きのおかげで、すっごく素敵なジャック・オ・ランタンになったよ!」
 自分たちが作ったランタンの前に屈んでいたミサは、後ろに立つエミリオに笑顔で振り返る。するとエミリオがふっと笑う。
「どうしたの?」
「いや、ミサがジャック・オ・ランタンにそっくりだったから、つい」
「ひどーいっ」
 みんなが楽しくなりますように。そんな願いを込めたランタンの笑顔。だからこそ、ミサの笑顔に似ているのだ。いつもみんなの幸せを考えているミサに。
「アルヴィン、これ……」
 ミオンは自分たちの作ったランタンを見て目を見張る。
 アルヴィンが裏側に彫っていたのは猫と蝶の柄。皮を薄く削り、中が光ると皮の薄い部分が浮き出るような細工だ。
「すごい、綺麗ね」
 見惚れるミオンに、どうだと言わんばかりの笑顔のアルヴィン。
 蝶柄の衣服をよく身に着けているミオンをイメージして彫ったのだ。炎のゆらめきに合わせ、蝶もゆらゆら揺れているかのようだった。
 潤はキャンドルを『彼女』に見立て『彼』に似せたかぼちゃの横に寄り添わせる。心なしか、ジャック・オ・ランタンの表情も和らいだように見え、潤は思わず微笑んだ。
「ウル、光の精だ」
 潤の髪に光の粒が舞い降りたのに気付くヒュリアス。
 皆が顔をあげると……。
「わぁっ」
 誰からともなく、感嘆の声が漏れる。まるで満点の星空が降って来たかのように、たくさんの光の精たちが、光の粒とともに空から舞い降りてきた。
「準備は万端ですね」
 フラワーガーデンの管理人と花の夢を集める妖精たちが、紅茶やクッキーを運んできて、全員が席についた。

 カップに注がれた紅茶がふわっと仄かに輝く。
「幻想的な光ですね」
 離々がカップを持ち上げる。彼女の周りを光の妖精がくるくると舞う。
「光の粒は紅茶以外にも効くんでしょうか?」
 どういうこと?と言いたげに離々は蓮を見つめ返す。
「光を纏ったお嬢とか綺麗だなって……いや、なんでも」
 蓮は慌ててクッキーを掴んで口に放り込み、
「クッキー、美味いです」
と誤魔化した。
「妖精さんもお菓子は食べられるのでしょうか」
 離々は持参してきたクーヘンバスケットを取り出す。
「素敵な踊りのお礼に私のお菓子もどうぞ」
 離々が皿に焼き菓子を乗せると、妖精たちが集まってきた。ほんの少しずつお菓子を食べて、妖精たちはまた嬉しそうにくるくる踊った。
「いいね、踊る妖精たちを見ていると、こっちも楽しくなるね!」
 メイがはしゃいでいる。
「まぁ、こういうのもいいんじゃねぇか?」
 緑松は紅茶を飲みつつ物思いに耽る……というのは単なるポーズである。メイのお喋りをシャットアウトするための。
「このクッキー、香ばしい!」
 用意されたクッキーを一口食べて、ミサが顔を綻ばせる。
「サンフラワーシードが入ってるの?なるほど、それが香ばしさの秘訣ね」
 クッキーを作った妖精たちと話が弾む。
「私もね、持って来たのよ~」
 妖精たちは、「何?何?」とミサの周りに集まる。
「じゃーん、クーヘンバスケット~!」
 バスケットの中には、ミサ手作りのお菓子がいっぱいだ。
「素敵な企画を考えてくれた管理人さんと妖精さん達にお礼がしたくてお菓子を焼いてきたの」
 妖精たちの表情がぱあっと明るくなり、口々にお礼の言葉を述べる。
「おや、美味しそうだね」
 エミリオがバスケットをのぞき込む。
「で、俺の分は?」
「え?エミリオさんの分は……あ」
「へぇ、彼氏の分を忘れるなんていい度胸してるね」
 エミリオはいじめっ子の役を楽しんでいるかのようににやりと笑う。
「ごめんなさい、ってああっ!?」
 エミリオはミサの食べかけのひまわりクッキーをひょいと取り上げた。
「それ私のひまわりクッキー……」
「そんな悪い子にはおしおきだよ」
 くすっと笑って、クッキーを一口で食べてしまう。
「……!えっエミリオさんっ」
「?」
「ね、ねぇ、気づいてる?それ間接キス、だよ……っ」
 ミサは真っ赤になった顔を両手で覆う。
「……っ」
 言われて初めて気づいたのか、エミリオも慌てて口元を押さえた。
 2人の気持ちを知ってか知らずか妖精たちは、「間接キスって何なの?」「わかんない。けど、キスって大好きな人同士がするって聞いたことあるの!」「ミサさんとエミリオさんは、大好きな人同士なの」「きゃーーー」などと囁き合っていた。
「ぼんやり光ってどこもかしこも素敵」
 ミオンは夜のお茶会の光景に見惚れながら紅茶を飲む。
「クッキー、一緒に食べましょう?」
 掌にクッキーを乗せ、目の前でふわふわ踊っている光の妖精に差し出す。
 妖精はお礼を言うようにくるりと回転すると、ミオンの掌に降り立った。ミオンの顔には自然と微笑みが浮かぶ。
 満腹になった妖精が光の粒を降らせながらミオンの手から離れていった。
 ミオンはあちこちに踊る妖精を見つめながら、両手で紅茶のカップを持ち、口元に運んだ。
 妖精を見つめるミオンの瞳に光が映り込みきらきら瞬く。
 隣に座るアルヴィンがミオンの顔をのぞき込み、笑う。
「綺麗だな」
「……!」
 不意打ちのようなアルヴィンの褒め言葉に、ミオンは思わず赤くなって俯いた。
 アルヴィンは時々、こんな不意打ちを天然で繰り出してくるから侮れない。

 潤とヒュリアスは、妖精の光にしばし見惚れていた。
「綺麗……だ」
 温かさを感じる光。
(『あの2人』の温かさみたい、だ)
 潤は亡き親友とその恋人を思い出す。ヒュリアスも同じことを思っていたらしい。
「あの2人というか、トランスの光に似ているだろうかね……」
「そう、だね。もう、大事な仲間、が、同じことにならないよう……」
 潤はぎゅっと胸の前で手を握り、祈る。
「……」
 そんな潤の様子を見ていたヒュリアスは、突如、潤の口にクッキーを押し込んだ。
「な、なにふるほっ?」
 クッキーのせいでうまく喋れない。
「いやいや、折角だから、クッキーでも食べて楽しまなければ、と思ってね」
 飄々と答えるヒュリアス。
 でも潤はもう、わかっていた。これはヒュリアスなりの、励ましなのだと。
「ねぇねぇ!潤さんのジャック・オ・ランタン可愛いねっ」
 妖精と遊んでいたメイが潤に声をかける。
「あ……ありが、とう……」
「アタイのランタンも、どうかな?これ、この目がポイントだよ」
「ハート型なのが可愛いよね」
 ミサも話に加わってきた。
「ミサさんのも可愛いよ!なんだか、楽しくなる顔だよね」
「うん!だって、みんなが楽しく過ごせるようにって願いを込めたんだもの」
 ミサが満面の笑みで言う。
「みんな、が……楽しく……」
 潤はふっと笑った。
 今この時だけでも、『彼』も一緒に楽しんでいるような、そんな気持ちになれたから。
 風のせいだろうか、潤の作ったジャック・オ・ランタンが、笑ったかのように微かに揺れた。

 夜は更け、皆で歓談しつつの楽しいお茶会も、そろそろお開きの時間だ。
「お茶も楽しかったけどさぁ。アタイ、飽き足りないんだよね」
メイはまだ楽しみ足りない、といった様子。
「そうだ!今度はリョクが下書きして?それでジャック・オ・ランタン作ろうよ!」
「オレ、絵心なんざ持ち合わせてねえぞ?」
「いいからいいから!」
 お茶会は終わっても、その余韻はしばらく残っていそうである。



依頼結果:大成功
MVP
名前:篠宮潤
呼び名:ウル
  名前:ヒュリアス
呼び名:ヒューリ

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 木口アキノ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 10月10日
出発日 10月16日 00:00
予定納品日 10月26日

参加者

会議室

  • [6]メイ・フォルツァ

    2014/10/14-00:59 

    潤さん、挨拶ありがとうございまーす。
    遅れちゃったけど、初めまして。私はメイ・フォルツァっていいます。
    よろしくお願いしまーす。

    ランタン作り、超楽しみだから当日は張り切るわよー!
    でも、どんなのにするかは迷っちゃうわね!

  • [5]菫 離々

    2014/10/14-00:07 

    こんばんは。
    スミレ・リリと申します。精霊はハチスさん、です。
    どうぞよろしくお願いいたしますね。

    かぼちゃは……あまり大きすぎないものにしましょうか。
    ボール大ぐらいのものに、ゴーストフェイスを彫る予定でいます。
    光の妖精さんに気に入って頂けるとよいのですが。

  • [4]ミオン・キャロル

    2014/10/13-17:05 

    ミオンよ
    初めての方もお久しぶりな方もよろしくお願いします

    …どれにしようかしら(南瓜を吟味しつつ、他の人の取りを聞きながら)
    私も大きいコレがいいわ

    アルヴィン:
    中身だすんだろ、大きいと大変じゃないか?

    いいじゃない!ほら持って持って(ぷぅっと頬を膨らませ
    それじゃ皆さん、また後で会いましょう

  • [3]篠宮潤

    2014/10/13-15:41 

    メイ・フォルツァ、さん、は、初めまして、だ。
    篠宮潤(しのみや うる)という、よ。よろしく、だ。

    またご一緒だね、な人やお久しぶり、な人たちも、ランタン作りとお茶会、楽しもう、ねっ

    ヒュリアス:
    ウルのパートナー、ヒュリアスという。よろしく。
    さて…うちの不器用な神人がどこまで出来るのか……
    …ウル、待ちたまえ。寄せ植えの時にも思ったが、何故ビックサイズを選びがちなのだね…
    (諸々打ち合わせをしに行った)

  • [2]ミサ・フルール

    2014/10/13-00:25 

  • [1]ミサ・フルール

    2014/10/13-00:25 

    こんばんは!
    ミサ・フルールです。
    パートナーのエミリオさんと一緒に参加します。
    初めましての方は初めまして(ぺこり)
    ジャック・オ・ランタン作りも夜のお茶会もすごく楽しみ♪
    ではでは皆さん、


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