プロローグ
南国の海パシオン・シーにある、海岸ゴールドビーチ。
海を眺められる絶好のロケーションに、小さなカクテルバーがあります。
バー『マーレ』。
このバーで、ハロウィンのイベントが行われる事になりました。
☆ハロウィンパーティー&仮装パレード開催☆
ハロウィン限定のカクテルと軽食メニューをご用意して、皆様をお待ちしております。
限定カクテル(一杯100Jr)
・トリック・オア・トリート(ノンアルコール。やさしい味わい)
・パンプキン・ドリーム(甘口。ほろ苦い甘さと、フルーティな酸味。アルコール度数弱め)
・ヴァンパイア・ナイト(辛口。キレの良い味わいで、アルコール度数強め)
限定メニュー(一品150Jr)
・マジック・ナイト(ミートパイ)
・ジャック・オ・ランタン(パンプキングラタン)
・ドリーミー・パンプキン(かぼちゃと栗のタルト)
・バット&スイート(手作りクッキーとパウンドケーキ)
★海岸を仮装パレードしませんか?★
夜のゴールドビーチを、皆で歩きましょう。
お食事とカクテルを軽く楽しんで頂いた後、店を出発。
夜の海を眺めながら、のんびりとした一時をお楽しみいただけます。
なお、仮装パレードの参加費用は、無料です。
(出発時刻20時。参加希望の方は、19時までにご来店頂きますようお願いいたします)
お店の営業時間は、19時から4時まで。
貴方は仮装パレードに参加しますか?
それとも、個室でゆっくりと?
もしくは、バーカウンターでお喋りに花を咲かせますか?
素敵なハロウィンナイトをお楽しみください。
解説
カクテルバーで、ハロウィンナイトをお楽しみいただくエピソードです。
仮装パレードは無料で参加出来ますが、事前に店に入り、お一人様一品は必ず注文をお願いします。(パートナーと合わせてニ品)
併せて、パレードに参加される方は、お好きな仮装をして頂いた上で、バーへお越しください。
どんな仮装をするのか、プランに必ず記載いただきますよう、お願いいたします。
※夜道を照らす『かぼちゃ型ランプ』が、別途無料で貸し出されます。
また、別途チャージ料がお一人につき、カウンター50Jr(パートナーと併せて100Jr)、個室は100Jr(パートナーと併せて200Jr)掛かります。
バーカウンターで過ごすのか、個室で過ごすのか、ご指定ください。
なお、仮装パレードへの参加は希望者のみとなります。参加希望の方はプランに明記をお願い致します。
料金は一律、カクテルが一杯100Jr。軽食は一品につき、150Jrです。
注文したいメニューを、プランに明記してください。
ゲームマスターより
ゲームマスターを務めさせていただく、『野菜カクテルがマイブーム』な方の雪花菜 凛(きらず りん)です。
ハロウィンをちょっぴり大人に楽しんで頂くエピソードです。
ハロウィン一色のバーで、皆様をお待ちしております♪
お気軽にご参加ください!
皆様の素敵なアクションをお待ちしております!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
高原 晃司(アイン=ストレイフ)
アインと個室でゆっくりとするかな! ちょっと仮装って柄でもねぇしな 俺は多分酒飲むの許してもらえねぇだろうから トリック・オア・トリートとマジックナイトでも注文しようかな ってか個室ってそういやぁ二人っきりだよな… な、なんかそわそわするな バーとかそういえばあんまいかねぇしな 多分その所為か? 最近アインを見るとドギマギするのはなんでだろうなぁ (今まではそういうの無かったのにな…) これもウィンクルムになった影響なんかな? これってハロウィンの所為か?それともカクテルの所為か…? アインに言いかける… けど、これを言ったら何かが壊れそうな気がして 静かにカクテルとミートパイに舌鼓をうっておこう |
アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
どうする?カウンターか部屋か選べって そうだな。恋人達の邪魔しちゃ悪いもんな ●個室 バンパイヤ・ナイト2つ グラタンとパイは1個ずつとってシェア ランスは肉が好きだな(パイを一寸大きめに切ってやろう 猫舌のランスが食べれる温度になるまでは、 乾き物のツマミを何か(パンプキンシードとか)摘んでカクテルで乾杯と行こうか うん、美味いな このパイどうやって作るんだろう(サクサク 一寸皿の上でミートソースをつついて材料を確認してみたり はっ(汗 別にランスに作ってあげたいとか思ってないし(←思ってるのバレバレw 誤魔化すように部屋の電気を全部消す 窓から星空が見えると思うから… 「ハッピーハロウィン、ランス」 なんだかドキドキする |
柊崎 直香(ゼク=ファル)
ゾンビー!の、仮装だよー 赤と茶色で汚した衣装にメイクは青色肌と落ち窪んだ眼を表現 あとは演技力でカバーだ カウンターで軽く。 注文はトリック・オア・トリートとバット&スイート 早くパレードに向かうのだー、とゼクの口にクッキー詰め詰め。 仮装パレードに参加 ゼク吸血鬼の後ろを「このうらみ、はらさでおくべきか……」って 鬼気迫る表情で付いていくよ! というかトリックオアトリート言う前にお菓子出されても 反応に困るんだけど。もう。 キミが乗り悪いのは知ってるもんね あとは夜空眺めのんびり歩く。 今の季節なら見えるんじゃない? 『不思議な星』。 ああ、キミの星は地上で現在ゾンビになってたりするのかな? と笑顔でゼクを振り向きつつ。 |
セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
◆カウンターで飲み物と軽食を楽しむ。 仮装パレードにも出席する。19時までに行くぜ。 ◆仮装は狼男にする。灰色狼な耳としっぽ。 パレード時は模型な牙も付けて。 ワンコじゃない、狼だってば。がおー。 ◆飲み物はパンプキン・ドリーム。 マジック・ナイトも食べるぜ。 ミートパイは大好きさ。 ◆悪魔な格好のラキアがなんだかぐっと大人っぽいぞ。と思ったら飲み物まで何だかオトナな!? 「え、ラキアって実は何歳?」 てっきり年下だと思っていたらもしかして違う? 悪魔っぽくふふふと笑って誤魔化されたー? 年齢差なんて些細な事だからいっか! (にぱっ。気にしない) ◆パレードは秋の澄んだ星空が見えて凄く綺麗。 ラキアと2人で星空を眺める。 |
西園寺優純絆(ルーカス・ウェル・ファブレ)
アドリブ絡みOK マジック・ナイト 仮装パレード希望 仮装 黒のゴスロリ風魔女見習い 星の杖 「ルカさま~どう? 似合う~?(仮装した服装で可愛くポーズ えへへありがとうなのだよ~(ニパァ ルカさまも格好良いのだよ! はーい♪」 (バーカウンターにて食事 「ミートパイおいひぃですのぉ(蕩ける笑顔 アレ?ルカさま、それお酒? のんあるこーる? よく分からないけどお酒じゃないの? うー気になるけどルカさまが言うなら分かったですの(ミートパイ食べながら」 (そして仮装パレード 「うわぁ~人がたぁくさんいるですのぉ! 皆似合ってるですの! ルカさま、おてて、繋いでも良い…? わぁい、ありがとですのぉルカさま~(ニコォ うん!楽しむですの!」 |
●1.
「ルカさま~どう? 似合う~?」
くるりと回転すると、橙と黒のハロウィンカラーなスカートがふわりと広がった。
ゴスロリ風魔女見習いな黒基調の衣装に、星の杖。
口元に人差し指を立ててポーズを取れば、星が舞うような可愛らしさ。
「えぇ、とてもお似合いですよ、ユズ」
ルーカス・ウェル・ファブレは、瞳を細めてパートナーの柔らかい金の髪を撫でた。
「えへへ♪ ありがとうなのだよ~」
西園寺優純絆は、ニパァと花の開くような笑顔を見せ、
「ルカさまも格好良いのだよ!」
誇らしげに言って、彼を見上げた。
ルーカスは、直衣に袴、頭には冠と、平安時代の帝をイメージした仮装をしている。
品のある美しさが、彼にとても良く似合っていた。
「おや嬉しいですねぇ、有難うございます」
ルーカスは微笑みを返すと、バー『マーレ』の扉を見上げた。
「さて先ずは、ご飯を食べてから行きましょうか」
「はーい♪」
元気な返事と共に、優純絆はルーカスと一緒にバーへの扉を潜る。
「普段と全然違う格好をすると楽しいね」
カウンター席に座ったセイリュー・グラシアは、隣からの声にそうだなと頷いてから、隣の彼、ラキア・ジェイドバインをじっと見つめる。
「どうかした? セイリュー」
頭には、細長いインパラのような角が2本。
身を包むのは、黒を基調とした貴族服。金銀の刺繍が上品な印象だ。
そして、抑え気味の店内の灯りのせいなのか、微笑は何所か妖艶で。
(なんだかぐっと大人っぽいぞ)
「ねぇ、セイリューは何を頼む?」
視線に訝しげにしつつも、ラキアはハロウィンのメニューを指差す。
仮装パレード開始まで、カウンターで食事を楽しむ予定だった。
「ヴァンパイア・ナイトとジャック・オ・ランタンを頼もうかな」
「飲み物まで何だかオトナな!?」
ラキアの口からノンアルコールではないカクテルが出て、セイリューは思わず心の声を口に出していた。
「そんなに驚いた顔しなくても」
目をまん丸くするパートナーに、ラキアはクスクスと笑う。
「精霊が見た目の年齢通りじゃないのは良くある事だよ」
「え、ラキアって実は何歳?」
てっきり年下だと思っていたら、もしかして違う?
セイリューの問い掛けに、ラキアは、
「何歳だと思う?」
前髪を軽く掻き上げ、逆に質問してくる。仕草にドキッとしてしまった。
「えーっと……」
鼓動が早くなる胸を押さえ、セイリューは考えた。
「……」
考えた。
そして、
「年齢差なんて些細な事だからいっか!」
そう結論付けた。
にぱぁと笑う彼の頭には灰色の耳、腰部分には尻尾。
本日の格好と相成って子犬のようだとラキアは思う。
(人間は短命種だから、年齢離れすぎだと距離感覚えるかも?……って、心配したんだけどね)
手を伸ばして、銀色の耳にもふもふと触れた。
「セイリューの仮装、とてもよく似合ってるよ」
「サンキュー!」
「ワンコな雰囲気もなくは無いけど」
「ワンコじゃない、狼だってば。がおー」
「ふふっ、さぁ、セイリューは何を頼むの?」
「パンプキン・ドリーム。マジック・ナイトも食べるぜ」
ミートパイは大好きさと瞳を輝かせるセイリューに頷き、ラキアは手を上げて注文をした。
「ここ、宜しいでしょうか?」
そこへ、ダンディな雰囲気の男性と可愛らしい少女(?)がやって来て、隣の空いている席を差す。
「おや、グラシアさん達でしたか」
「あ、ルーカスさんに優純絆ちゃん!」
再会に、笑顔で挨拶を返し合う。
「お兄ちゃん達も、パレードに参加するですの?」
「おう、バッチリ仮装してきたぜ! 優純絆ちゃん、今日は一段と可愛いなっ」
「えへへ♪ ルカさま、褒められちゃった」
「相変わらずせいべ……もがぁ!」
性別が迷子と言い掛けたセイリューの口に、ラキアがミートパイを突っ込んで阻止した。
「海辺をパレードとは、素敵な風景が見れそうですね」
「本当に」
ルーカスは薄い紫色のカクテル、ラキアは紅いカクテルを飲みながら微笑み合う。
「お兄ちゃん、大丈夫ですの?」
セイリューの背中を撫でていた優純絆が、急にピタッと止まった。
「どうしました? ユズ」
「ルカさま、ゾンビなのっ」
優純絆が指し示す先に、見事なゾンビメイクの客が居た。
●2.
赤と茶色で汚した衣装。
メイクで青色肌と落ち窪んだ眼を表現して。
「ゾンビー!の、仮装だよー」
両手をだらりと上げたゾンビポーズで、柊崎 直香はゼク=ファルを見上げた。
「ああ……うん」
漆黒のテールコートにマント。クラヴァットをリボンのように結んで。
吸血鬼に扮するゼクは、微妙な表情で直香を見返す。
「どうしてゾンビ」
「なかなかのデキでしょ?」
直香はエヘンと胸を張ると、ゾンビだ!とこちらを見ている可愛い子達に手を振った。
「あとは演技力でカバーするから、まぁ見ててよ」
「?」
仮装パレードで何かする気か?
いつもなら、仮装も無茶振りされる所なのだが、渡された衣装は至って普通だった。
その事も訝しんではいたのだが、何をするつもりなのやら。
「ゼク、パレード始まるまで、ご飯食べるよっ」
考えていると、直香に手を引っ張られカウンター席へと急かされる。
「あれ、セイリューさん達だ」
「柊崎さん達もパレード参加? メイク凄いなっ」
「セイリューお兄ちゃん、お知り合いです?」
優純絆の問い掛けに、セイリューは笑顔で頷く。
「柊崎さん達も俺達と同じウィンクルムだぜ」
「柊崎 直香だよ、よろしくねー」
「ユズは、西園寺優純絆ですの! ゾンビ凄いですの♪」
「私はルーカス・ウェル・ファブレと申します」
「ゼク=ファルだ。よろしく頼む」
四人はにこやかに挨拶をし合った。
「ミートパイおいひぃですのぉ」
注文したマジック・ナイトを一口。優純絆の表情がほにゃりと蕩けた。
「それは良かったですねぇ。熱いから気を付けて食べてくださいね」
その様子をにこにこ眺めながら、ルーカスはカクテルを楽しむ。
「アレ? ルカさま、それお酒?」
ふと優純絆が、じーっとルーカスの持つグラスを見つめた。
淡い紫のカクテルに月を模したレモンが添えられている。
「いえ、コレはノンアルコールですよ」
ルーカスは優純絆に良く見えるように、グラスを傾けた。
「今日はこの後パレードでしょう? 酔ってなんかいられませんからね」
「のんあるこーる? よく分からないけどお酒じゃないの?」
綺麗な紫色を見つめ、パチパチと優純絆が瞬きする。
「ふふ、ユズはまだ知らなくて良いですよ」
ルーカスの大きな手が、優しく頭を撫でてくれた。
「うー気になるけど、ルカさまが言うなら分かったですの」
優純絆はコクコクと頷くと、またミートパイを頬張ってふにゃりと微笑んだ。
直香とゼクの前には、薄紫と紅のカクテルがそれぞれ並んだ。
「乾杯ー」
カチンと軽くグラスを合わせ、カクテルの味を楽しむ。
「ふむ、サクサクで美味しい!」
バット&スイート。手作りクッキーとパウンドケーキも摘んで、直香は嬉しそうに表情を緩ませた。
「ゼクはカクテルだけ?」
カクテルを堪能している様子のゼクを見上げると、彼は緩く首を振る。
「べつに……」
「……」
直香はそんな彼を横目で見た後、
「早くパレードに向かうのだー」
「!?」
問答無用で、ゼクの口へと蝙蝠の形のクッキー詰めていく。
慌ててその手を掴んで止めながら、ゼクは詰められたクッキーを噛んで飲み込んで、直香を見た。
「食うから。食うから人の口に食べ物を詰め込もうとするな」
「素直でよろしいー」
にっこりと笑う直香に軽く溜息を吐いて、ゼクは彼と一緒にクッキーとケーキを摘むのだった。
「セイリュー、そろそろ時間みたいだね」
時計と店員の動きを見て、ラキアがそう囁いた。
「よっし、行くか!」
ぐいっとパンプキン・ドリーム、橙色のカクテルを飲み干す。
ごそごそと懐を漁り、
「俺の仮装はコレで完成なんだぜっ」
模型の牙を装着して、ニカッと笑った。
●3.
店を出発し、海岸まで来る頃。
「うわぁ~人がたぁくさんいるですのぉ!」
後ろを振り返って、優純絆は歓声を上げた。
思い思いの仮装をした沢山の人達が、優純絆達の後に続いている。
「皆似合ってるですの!」
それぞれ手に持ったかぼちゃ型ランプが綺麗で。
仮装した人達と、夢の世界に居るような感覚。
「コレは……意外に人が沢山いますねぇ……」
一方、ルーカスは少しばかり心配な気持ちになっていた。
小柄な優純絆は、人混みに紛れたら、あっという間に見失ってしまうだろう。
「ユズ、逸れない様にしないといけませんねぇ?」
そう彼を見下ろすと、青の瞳が真っ直ぐにルーカスを見ていた。
「ルカさま、おてて、繋いでも良い…?」
「えぇ勿論良いですよ、私も言おうと思っていた所でしたから」
ルーカスは大きく頷くと、そっと彼へ手を差し伸べる。
「わぁい、ありがとですのぉルカさま~」
ニパァと満面の笑顔で、優純絆はその手をぎゅっと握った。
「さぁ楽しみましょうか」
「うん! 楽しむですの!」
優純絆とルーカスは、軽い足取りで海岸を歩く。
ゼクは背後に嫌な予感を感じた。
気付けば、隣に居た筈の直香が居ない。
「このうらみ、はらさでおくべきか……」
あ、居た。
「……何してるんだ?」
振り返ると、背後から、鬼気迫る表情のゾンビが迫って来ていた。
「ゼク、空気読んでよ」
「そんな透明なものが読めるか」
「だーかーらー、ゼクは吸血鬼。僕はゾンビ」
「……で?」
「このうらみ、はらさでおくべきか」
ゾンビポーズで言う直香に、やっと得心が行ったゼクは頷いた。
「俺に吸血されて死んだ設定になってるのか」
コクコク。
「妙な拘りは見せなくていい」
ゼクは小さく溜息を付くと、直香の額を指先で押す。
「あと、菓子だ」
「お菓子?」
「お前のことだから、菓子を強奪のうえ悪戯まで仕掛けてくるんだろ」
はい、そーです。
「わざわざ尋ねなくてもいい」
ゼクはそう言うなり、衣装に隠していた菓子の一つを取り出して、直香に差し出した。
「というか、トリック・オア・トリート言う前にお菓子出されても、反応に困るんだけど。もう」
軽く頬を膨らませつつ、菓子の詰まった袋を受け取る。
「まぁ、キミがノリ悪いのは知ってるもんね」
ふっと笑ってから、直香はゼクの隣に並んだ。
そして再び歩き出す。
「ゼク、見て。夜空が綺麗だよ」
最初は夕焼けの色が残っていた空が、いつの間にか蒼い夜空へ変わっていた。
「今の季節なら見えるんじゃない?」
トトトと何歩か先に進んで、直香が夜空を指差す。
「『不思議な星』」
ゼクは思わず一瞬思考が停止する己を感じた。
「ああ、キミの星は地上で現在ゾンビになってたりするのかな?」
笑顔で振り返る直香と、まともに視線が合わせられない。
「星……意味、わざわざ調べたのか」
誤魔化すように空を見上げた。
「あれはその場の思いつきだ。忘れろ」
そう告げながらも、彼が忘れてくれないであろう事は分かっていた。
南の空に赤く光る星が、二人を見つめている。
「秋の澄んだ星空が綺麗だなー!」
潮風を受けながら、セイリューは大きく伸びをした。
空に光る星と、海に映る星が、宝石のようにキラキラと輝く。
(ラキアも、綺麗だ)
紅い髪を靡かせ、隣で空を見上げるラキアを横目に見て、セイリューは微笑んだ。
そっと彼の手を取って握る。
ラキアは少し驚いた顔をしたが、優しく手を握り返してくれたのだった。
●4.
仮装パレードが出発した後のバーへ、一組のウィンクルムがやって来た。
「アイン、個室でゆっくりしねぇか」
高原 晃司の言葉に、アイン=ストレイフが首を傾ける。
「私としてはカウンターでも構いませんが……」
「なんつーかさ、ちょっと仮装って柄でもねぇしな」
言葉に辺りを見回して、アインは納得した。
周囲はハロウィンの仮装をした客ばかりだ。仮装していないと、居辛いような気持ちになるのも仕方ないだろう。
「わかりました。それでは個室に行きましょうか」
二人は店員に案内され、二階の個室に入った。
向かい同士ソファに腰掛け、店員に渡されたメニューを広げる。
「へぇ、限定カクテルか……」
晃司はチラリとアインの様子を伺った。
出来れば、ノンアルコールじゃないカクテルが飲みたいが、彼は許してはくれないだろう。
「トリック・オア・トリートとマジックナイトでも注文しようかな」
無難に注文。
「私はヴァンパイア・ナイトとジャック・オ・ランタンを頼みましょう」
アインも注文し、一礼して去る店員を見送ると、部屋に沈黙が落ちる。
(個室って、そういやぁ二人っきりだよな……)
急にその事実に気付いて、晃司は何だか落ち着かない気持ちになった。
アインはリラックスした様子で、窓の外の海を眺めている。
「良い眺めですね」
不意にアインに話し掛けられて、大きく心臓が跳ねた。
「そ、そーだな!」
どもるように返事を返すと、アインは訝しげに晃司を見つめる。
「晃司? 具合でも悪いんですか?」
「ば、バーとかそういえばあんま行かねぇし、慣れてなくってな」
ハハハと笑って誤魔化すと、そうですかとアインは表情を和らげた。
その表情にドキリと正体不明の高鳴りを感じた所で、店員が注文したメニューを運んできた。
「美味そうだなっ」
「ハロウィンな感じになってて中々面白いですね」
月を模したレモンが添えられている薄紫色のカクテルに、血のように紅いカクテル。
オバケを模したミートパイに、ジャック・オ・ランタンの器に盛られたパンプキングラタン。
「乾杯しましょうか」
「おうっ」
二人グラスを持つと、カチンと軽く合わせた。
カクテルに口を付けると、甘く優しい味わいが口に広がる。
「美味しいですね」
アインは紅のカクテルを気に入ったようで、よく味わっている。
その姿を眺めながら、晃司は考えていた。
最近、アインを見るとドギマギするのはどうしてだろう。
(今まではそういうの無かったのにな……)
彼に育てられてきた。
親のような兄のような、アインはそんな存在だった筈だ。
確実に『家族』ではなく、もっと違う感情が胸の奥へ宿っている。
これもウィンクルムになった影響?
それとも、このハロウィンの空気の所為?
でなければ、今飲んだカクテルの所為か?
アインがカクテルを嚥下する。
何気ない仕草に、どうしてこの胸は熱くなるのだろう。
「晃司」
「へっ?」
「食べないんですか?」
不思議そうにアインがこちらを見ていた。
「た、食べるっ」
慌ててミートパイを頬張った。
ジューシィな肉の旨味が口の中に広がる。
「美味いっ」
「……」
アインはそんな晃司の様子を観察していた。
(多少反応が鈍いですね……もしかしてお酒が入ってたのでしょうか?)
カクテルを睨んでから、野暮な事かと首を振る。
「晃司。ミートパイ、一口いただきますね」
「へ? あ、いいぜ」
やはり反応が鈍い晃司に少し笑ってから、アインはミートパイを一口。
「……ふむ、中々美味しいですね」
「肉汁がぶわーっと来るよな」
「折角なので晃司も食べてみませんか?このグラタン。焦げ目が中々美味しいですよ」
「へ?」
アインの差し出してきたパンプキングラタンに、晃司は一瞬固まる。
アインの食べかけを食べる。
それって、間接……。
(って、バカか俺は!)
同じ食卓を何度囲んできたと思っているのか。
「いただくぜ」
震えないように注意しながら、グラタンをフォークで掬って食べる。
「美味い」
「はい」
アインの微笑みを見ながら、晃司は今なら、この正体不明の感情を彼に話せそうな気がした。
「アイン」
「何ですか?」
「……」
けれど、言えなかった。
言えば、何かが壊れそうな気がして……。
「今日は来て、正解だったな」
「そうですね」
この距離を、彼の笑顔を見れるこの位置を、失いたくなかった。
●5.
「どうする? カウンターか部屋か選べって」
少し困ったような表情でこちらを見てくるパートナーに、ヴェルトール・ランスは脳内で完璧な作戦を立てた。
「カウンターは恋人達の邪魔になるぜ」
さらりと言えば、アキ・セイジは成程と瞬きする。
「そうだな。恋人達の邪魔しちゃ悪いもんな」
「そうそう!」
「個室でお願いします」
よっしゃー!
ランス渾身のトラップ成功。
(セイジは理由があればチョロイんだ。俺だけが知ってる弱点って奴だな♪)
軽い足取りで、セイジと共に個室へと入る。
そして、セイジの隣に躊躇せず座った。
「どうしてこっちなんだ?」
向かい側だろう、普通。
そんな抗議の眼差しを向けてくるセイジへは、パチンとウインク。
「ほら、料理をシェアするだろ? 向かい側より隣の方が分けやすいんだよ」
「そーなのか?」
「そう♪」
クスリと店員が思わず笑ったのに気付き、セイジはそれ以上の追求を止めた。
「えーっと、ランスは何を頼む?」
メニューを開いて話題を逸らす。
「俺、マジック・ナイトとジャック・オ・ランタンが食べたい。カクテルはヴァンパイア・ナイトね」
「では、ヴァンパイア・ナイトを2つ。マジック・ナイトとジャック・オ・ランタンをお願いします」
一礼して店員が去ると、セイジは少しだけ表情険しくランスを睨む。
「今からでも向かい側に……」
「やだっ! こっちの方がセイジと近くていーもん」
きっぱりと言い切った。
そうはっきり言われてしまうと、返す言葉に詰まってしまう。
「セイジ、外!」
ランスが指差す先、仮装パレードが歩いているのが見えた。
「あれ、セイリュー達だよね」
「本当だ」
「気付かないかな? おーい!」
「流石にここからじゃ聞こえないだろう」
そんな会話をしていると、店員がメニューを運んでくる。
(しまった! 結局席はこのまま……)
隣でニコニコしているランスを少し恨めしく見つめた。
「乾杯!」
店員が下がると、紅いカクテルで乾杯をする。
「美味っ」
「それに飲みやすいな」
セイジはランスに同意しつつ、早速ミートパイを切り分け始めた。
「肉、超うまそー!」
「ランスは肉が好きだな」
パイを一寸大きめに切ってあげる事にする。
「でもまだ熱いから、少し冷ましてからな」
猫舌な彼に微笑み、セイジは付け合せのパンプキンシードを彼に差し出した。
「さんきゅ♪」
暫くカクテルとパンプキンシードを楽しみ、適度に冷えた事を確認してから、二人は料理に舌鼓を打つ。
「うまーい!」
ミートパイを口にしたランスの表情が蕩けた。
「うん、美味いな」
セイジもコクコクと頷く。
「どうやって作るんだろう」
そう言いながら、皿の上でサクサクとミートソースを突付き、中身を確認する。
「パイを分解して……解析中?」
ランスがクスッと笑う。
「俺、肉も好きだけどタマネギも好きだから、作るならタマネギも多めに頼むぜ」
「べ、別にランスに作ってあげたいとか思ってないしっ」
内心を見透かされた事にセイジは赤くなりながら否定するも、彼は全てお見通しという顔。
セイジは赤くなる顔を見られない方法を考え……。
「電気消すぞ」
返事を待たず、部屋の照明を消した。
「なんでー?」
「この方が星が良く見える」
不満そうなランスに尤もらしい答えを返して、セイジは内心でガッツポーズした。切り抜けた!
「ホントだ」
「ッ!?」
直ぐ耳元でランスの声が聞こえ、大きく肩が跳ねる。
セイジが座っていた方が窓際。
ランスはセイジを後ろから抱き留めるようにして、窓の外を見ていた。
心臓が五月蝿い。
赤くなったのを誤魔化せても、鼓動が伝わってしまったら……。
「星がすげえな! セイジ!」
屈託の無い笑顔でランスが見つめてきた。
その笑顔に見惚れて、セイジは咄嗟にこう答える。
「ハッピーハロウィン、ランス」
今日、伝えようと思っていた言葉。
「セイジ」
ランスの顔が近付いて、セイジは瞳を閉じた。そうするべきだと思ったから。
唇に柔らかい感触。
温かい、愛おしい感覚。
瞳を開けると、嬉しそうなランスの顔があった。
「あ……」
その瞬間、羞恥心が爆発した。
「ら、ランス。その、ち、近い……から!」
慌てて彼の胸板を押して逃れようとするけれど。
ぎゅっと拘束が強まって、目眩のするような熱さがセイジを包む。
「俺には敵わないの知ってるだろうに」
耳元の囁きに、火が出る程顔が熱い。
開きかけた口は、再び塞がれて。
セイジはランスの肩越しに、2つの月が輝いているのを見たのだった。
Fin.
依頼結果:大成功
MVP:
名前:アキ・セイジ 呼び名:セイジ |
名前:ヴェルトール・ランス 呼び名:ランス |
名前:セイリュー・グラシア 呼び名:セイリュー |
名前:ラキア・ジェイドバイン 呼び名:ラキア |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 雪花菜 凛 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | ロマンス |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 普通 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 10月04日 |
出発日 | 10月10日 00:00 |
予定納品日 | 10月20日 |
参加者
- 高原 晃司(アイン=ストレイフ)
- アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
- 柊崎 直香(ゼク=ファル)
- セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
- 西園寺優純絆(ルーカス・ウェル・ファブレ)
会議室
-
2014/10/09-23:59
晃司だぜ!
プランは提出済みだ!!
今回はゆったり個室で楽しむぜー -
2014/10/09-23:51
セイリュー・グラシアだ。
プランは提出できた。
仮装パレードも楽しみにしてる。
みんな、楽しいひと時を! -
2014/10/09-23:15
こんばんは。アキ・セイジだ。
ゆっくりと食事とカクテルを楽しむ…つもり…だ。
ああ、そうか。カウンターだとカップルの邪魔になるのか。それなら仕方ないな。 -
2014/10/08-11:54
優純絆:
初めましてなの!
ユズは、西園寺優純絆ですの!
アキお兄ちゃんとセイリューお兄ちゃんはお久しぶりなのだよ(にこぉ
ユズもルカさまも仮装パレードには参加するですの♪
ユズは魔女さんで、ルカさまはえーっと…
ルーカス:
セイジさん、グラシアさん、お久しぶりですね
他の方々は初めまして、私はルーカス・ウェル・ファブレと申します
以後お見知りおきを…(お辞儀
私は平安時代の帝衣装で参加させて頂きます
お会いしましたらよろしくお願いしますね(微笑)
優純絆:
そうそう、みかど様!
今回も、よろしくお願いしますなの! -
2014/10/08-01:27
ハッピーハロウィーン!
お菓子くれても悪戯する系のクキザキ・タダカですよ。
仮装パレードには参加するつもりだよー。
僕はゾンビの仮装で行こうと思う。
精霊の方は吸血鬼とかなんかポピュラーな辺りで?
素敵な夜になりますように!