【ハロウィン・トリート】古城カフェの秋(巴めろ マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●秋の味覚試食会ハロウィン風味
「古城カフェ『スヴニール』から、またお前たちウィンクルム宛てに手紙が届いていたぞ」
 A.R.O.A.職員の男が、ふっと口元を柔らかくして言う。古城カフェ『スヴニール』とは、かつてウィンクルムたちがゴブリンたちから取り戻した古城にてリチェットというパティシエの青年が営んでいるカフェである。タブロス近郊の小村の外れ――という決して恵まれてはいない立地にありながら、有名情報誌に掲載されたことで注目を集め、以降も、提供されるスイーツの美味しさと古城の雰囲気の良さで人気を保っている。余談だが、ウィンクルムに救われた古城をカフェとして蘇らせた、という一連の物語も、中々に受けがいいらしい。
「何でも、お客への日頃の感謝を込めて秋スイーツの試食会を行うらしい。それで、良ければウィンクルムの皆様も是非に、と。秋の味覚をふんだんに使ったスイーツが3種類とドリンクを、アンティークのテーブルでゆっくりと食べられるそうだ。しかも、どのスイーツもハロウィンをモチーフとしているんだとか」
 試食会と銘打っているだけあって、提供される3種のスイーツプレートとお好みのドリンクは、すべて無料で楽しめる。古城カフェでの時間を満喫するために必要なのは、幾らかの交通費と、それから穏やかな時間を共に過ごすパートナーだけ。
「というわけで、興味のある者は是非、古城カフェの秋を楽しんできてくれ」
 と、職員の男は目元を和らげるのだった。

解説

●古城カフェ『スヴニール』について
小さな村の外れにある豪奢な造りの古城の中、価値のあるアンティークやとっておきのスイーツが楽しめるカフェ。
詳細はプロローグにてご確認願えますと幸いです。
関連エピソード:『古城カフェの開店準備』・『古城カフェの優雅な時間』
※該当エピソードをご参照いただかなくとも、古城カフェを楽しんでいただくのに支障はございません。

●秋のスイーツ試食会・メニュー
黒猫の散歩道
(自家製マロングラッセをたっぷり詰め込んだパウンドケーキは洋酒の香りがアクセント。そっと寄り添うのは黒猫を模したチョコレートクッキー)
ジャック・オ・ランタンのブリュレ
(提供する直前に表面をキャラメリゼする、パティシエ自慢のしっとり濃厚な南瓜のブリュレ)
魔女のお気に入り
(甘くてほくほくの特製スイートポテトタルトには、チョコレートでできた魔女の帽子をちょこんと乗せて)
ドリンクはローズティー・カモミールミルクティー・ショコラショー(全てホット)からお選びいただけます。
お値段は無料、3種のスイーツはプチサイズの物が1枚のプレートに盛り付けられて提供されます。

●リチェットについて
一族に伝わる古城をカフェとして蘇らせたパティシエの青年です。
試食会の準備が忙しいようで、今回のリザルトにはほとんど(若しくは全く)登場しないことになるかと思います。

●交通費について
タブロス市内から古城カフェまでの交通費として、ウィンクルム様お一組につき300ジェール頂戴いたします。

●プランについて
公序良俗に反するプランは描写いたしかねますのでご注意ください。
また、白紙プランは描写が極端に薄くなりますので、気をつけていただければと思います。

ゲームマスターより

お世話になっております、巴めろです。
このページを開いてくださり、ありがとうございます!

古城カフェのお話ももう3つ目になります。
古城カフェがここまでやってこれたのは皆さまのおかげだなぁと、リチェット共々感謝の気持ちでいっぱいです。
古城カフェをご存知の方もご存知でない方も、カフェでの時間をパートナーさんと楽しんでいただけますと幸いです。
皆さまに楽しんでいただけるよう力を尽くしますので、ご縁がありましたらよろしくお願いいたします!

また、余談ですがGMページにちょっとした近況を載せております。
こちらもよろしくお願いいたします。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ハティ(ブリンド)

  耳にイヤフォン
ハロウィンに時計仕掛けのワンポイント
ネジ巻きをモチーフにしたピンブローチを後ろ襟に
リンにも用意したが、装飾と色を合わせてくるあたり悪くはなかったのだろうと
初めて見る金縁眼鏡を見て思う
飲み物はショコラショーを
ああ、マキナなんだが見えないだろうか
取り上げそうな勢いのリンからヘッドフォンを守る
リン、紅茶がこぼれるぞ
素材を活かそうと思って…その話は長くなるのか?
期待と腹減りの目でハロウィン解説を聞き、でも、と途中で割り込む
考えたが俺もアンタと同じが良かったんだ
同じくらい戦えていればと思うが、口にするのはケーキ
崩さないよう大切に食べすすめる
…猫は最後にとっておこう
どうした?…リンも飲むか?


羽瀬川 千代(ラセルタ=ブラドッツ)
  すっかり常連さん気分だね、また一緒に来られて嬉しいな
南瓜に栗にさつま芋!どれも美味しそうで目移りするよ

前方から刺さる視線、不思議そうに首傾げ
思い出す光景にびくと肩竦め。音立てたフォーク静かに置き
ラセルタさんにはお見通し、なんだね

任務中はとにかく必死で、助けたい人達が居たから動けていたんだ
でも、もっと他に何か出来たんじゃないかって(俯き
……素直に頷ける程、まだ自信は無いけど…ありがとう

本当はラセルタさんも辛いのかもしれない
でも、彼は神頼みもしない弱音も吐かない強い人だと分かっているから
せめて…ずっと言えていなかった事を伝えよう

俺はラセルタさんを信じているよ
この先何があっても、俺は貴方の味方だから



シルヴァ・アルネヴ(マギウス・マグス)
  「スヴニールのスイーツ試食会なんてわくわくするなー」
リチェットさんの絶品スイーツにすっかり魅了されているので参加即決

飲み物:二人共カモミールミルクティー

ハロウィンを取り入れようとワイシャツは黄色いカボチャの切り口色
前を軽く合わせたジャケットはビターチョコレート色
ポケットチーフは生クリームのオフホワイト


テーブルに置かれたプレートをじっと見つめ
「食べるのが勿体ないけど、いただきます!」

キャラメルをスプーンでコツンと割り黄金色のブリュレを口に運ぶ
ほろ苦さとカボチャの甘味が口に広がり
「…美味い。やっぱりリチェットさんのブリュレは絶品だなー」

パウンドケーキが気に入ったらしいマギに少し自分の分を取り分ける


アレクサンドル・リシャール(クレメンス・ヴァイス)
  城丸ごとハロウィンの雰囲気に大喜び
目を輝かせて見物

リチェットさんに軽く目礼
忙しそうな様子を嬉しそうに見守る

ハロウィンは俺もよく知らないなあ
お化けの仮装をして『お菓子くれなきゃ悪戯するぞ!』って家々回るんだよな。


飲み物はカモミールミルクティ

お菓子全部可愛いなあ
これなんて黒猫クッキーが乗ってる(嬉しそうにパウンドケーキをパクリ。洋酒の風味に、食べてよかったかなと少し心配)
南瓜のブリュレも嬉しそうに一口

え?悪戯……うーん(しばらく悩んだ後、唐突に)
クレミー、トリック・オア・トリート!
はーい、時間切れー。
ブリュレを一口分匙に掬い口元に差し出して「あーん」
多分こんな感じでその場のノリじゃないかな



ウィーテス=アカーテース(パラサ=パック)
  ○服装
フードつき黒色コートで魔法使い風に仮装

○行動
古城カフェの試食会の噂を聞いて参加します
わ、わ。どれも美味しそう
ドリンクはカモミールミルクティーをお願いして
食べながらパラサとのんびり話をしよう

ねぇパラサ
聞いたんだけど、このカフェが開店する前に
ここに住みついていたゴブリンを退治したんだって
僕達もそういう依頼を受けてみたいと思うんだ

A.R.O.A.に行った時
僕より小さな年の子も頑張ってた
パラサは僕が荒事が苦手だから気を遣って
戦闘がない依頼を選んでくれていたんだよね

ふふ。うん、分かってるよ
ありがとうパラサ

僕はびびりで頼りないかもしれないけど
君の相棒として胸を張れるよう頑張るから
これからもよろしくね


●貴方に伝える
「南瓜に栗にさつま芋! どれも美味しそうで目移りするよ」
 アンティークのテーブルに並ぶのは、秋の味覚をぎゅっと詰め込んだハロウィン仕様のスイーツプレート。きらきらしくさえ見えるスイーツの行列に、羽瀬川 千代は目元を柔らかくした。ラセルタ=ブラドッツの元にローズティーが届き、千代へとカモミールミルクティーが手渡されればティータイムの始まりだ。
「すっかり常連さん気分だね、また一緒に来られて嬉しいな」
 テーブルを挟んで向かい合わせのラセルタへとふんわりと笑みを向ける千代。そんな千代を見てラセルタは満足げに唇を綻ばせたが――その胸には僅か違和が差し、青の視線はじぃと千代へと注がれる。
「……ラセルタさん?」
 不思議そうに首を傾げる千代の目を、ラセルタは真っ直ぐに見た。
「千代、互いに隠し事は無しだと言った筈だが」
「え?」
「……最近、生死に関わる任務が続いたな。大分堪えているのだろう?」
 びくり、指摘に千代の肩が跳ねた。脳裏に鮮明に浮かんだ光景に思わず手が震え、プレートに当たった銀のフォークがカチャリと音を立てる。その音にはっとなって、千代はフォークを静かにプレートに置いた。
「ラセルタさんにはお見通し、なんだね」
 弱弱しい笑みに、「当然だろう」とラセルタが応じる。僅か目を伏せて、千代はぽつぽつと胸の内の思いを言葉にしては吐き出していく。ラセルタは、ただ黙って耳を傾けた。
「任務中はとにかく必死で、助けたい人たちが居たから動けていたんだ」
 でも、と俯く千代の声が細かく震えている。
「もっと他に何か出来たんじゃないかって」
 千代が零した本音をラセルタは無言で全て受け止めて――その言葉が途切れたのを見て取るや、カトラリーと椅子を手に千代の真横へと移動した。千代がきょとんとして傍らに腰を下ろしたラセルタを見やる。
「あの、ラセルタさん……?」
 その呼び掛けには応じずに、ラセルタは手付かずの千代の皿からパウンドケーキを選んで、やや狼狽している千代の口へとそれを運んだ。頭にクエスチョンマークを浮かべながらもケーキをもぐもぐとする千代がそれを食べ終わらないうちに、次に口元へとやってきたのはスイートポテトタルトだ。
「そのまま食しながら、聞け」
 千代が口を開く前に、ラセルタはそう釘を刺した。その声音に何かを感じ取ったのか、千代はこくと頷いてタルトを頬張る。
「千代は余計なところにまで気を回しすぎる。目的達成だけを考え任務に臨めばいいものを」
 ラセルタの言葉に、千代の表情が仄か曇った。けれど、ラセルタは言葉を紡ぐことを止めない。
「……だが、救出すべき者に心を寄せたお前は充分役に立っていた。胸を張っていいと思うのだが?」
 どうだ? と自信に満ちた表情でラセルタは千代に視線を遣る。千代の胸に、温かいものが過ぎった。ラセルタの言葉には心に染み渡るような強さがあると千代は思う。目頭が、じわり熱くなった。
「……素直に頷ける程、まだ自信は無いけど。……ありがとう」
 ぎこちないながらも笑みを浮かべる千代を見て、それでいいとばかりにラセルタは一つ頷く。その瞳の青は優しかった。
(本当はラセルタさんも辛いのかもしれない)
 でも千代は、彼が神頼みもしない弱音も吐かない強い人だと知っているから。
(せめて……ずっと言えていなかったことを伝えよう)
 そう思い決めて、千代はそっと口を開く。
「ねえ、ラセルタさん」
 ラセルタの視線が、遮るものなく千代へと注がれる。千代は、真っ直ぐに彼を見返して口元に静かな笑みを乗せた。
「俺はラセルタさんを信じているよ。この先何があっても、俺は貴方の味方だから」
 ラセルタ、その言葉に僅か目を見開く。それは彼が密かに渇望し続けてきた言葉だった。千代の声の余韻が、ラセルタの心を躍らせる。
「それだけ聞ければ十分だ」
 応じて、ラセルタはその口元に柔らかく弧を描いた。

●独り占めの悪戯を
「おお、すっごい!」
 『スヴニール』店内のハロウィンの飾り付けは、ごく慎ましやかなものだった。黒猫や蝙蝠等がモチーフのシックな小物が、古城の空気に馴染むよう静かに飾られている。けれどそれらは、古城の雰囲気と相まってハロウィンらしい秘密っぽさを演出していた。そんな古城カフェの内装に子どものように目を輝かせて、アレクサンドル・リシャールは傍らのクレメンス・ヴァイスへと笑いかける。
「何だか、ハロウィン! って感じだな!」
「せやねぇ。何や、趣があってええね」
 店へと入る時フードを取ったクレメンスの顔は、今は露わとなっている。神人の楽しそうなのを見て表情を柔らかくしたクレメンスのその面を見やって、アレクサンドルの笑顔はますます明るくなり。2人は他のお客の邪魔にならないよう気をつけながら、店内を見学して回った。
「あ、リチェットさんだ」
 アレクサンドルの緋色の目に、古城カフェの主の姿が映る。軽く目礼すれば、破顔したリチェットも頭を下げた。リチェットの忙しそうな、それでいて楽しげな様子が嬉しくて、アレクサンドルの口元が緩む。
「アレクス、そろそろ席着こか」
 2人用の席に座れば、間もなく運ばれてくるハロウィン仕様のスイーツプレート。ドリンクが届くまでは我慢! と思っても、自然ときらきら輝くアレクサンドルの顔。
「お菓子全部可愛いなあ。これなんて黒猫クッキーが乗ってる」
「魔女の帽子まで食べられるんやねぇ」
 とクレメンスも感心顔だ。ところで、とクレメンスが口元に手を遣る。
「ハロウィンってよう判らへんけど、どんな祭りなんやろか」
「うーん、俺もよく知らないなあ。お化けの仮装をして『お菓子くれなきゃ悪戯するぞ!』って家々回るんだよな」
 等と話しているうちにアレクサンドルにはカモミールミルクティー、クレメンスにはローズティーが届いた。楽しいスイーツタイムの始まりだ。アレクサンドル、嬉しそうに栗のパウンドケーキをぱくりとする。ふわり、洋酒の風味が口の中に広がった。
「美味しい! ……けど、俺これ食べて良かったのかな?」
「ああ、洋酒が入ってるんやね。香り付け程度やろから、お酒によっぽど弱いわけやなかったら問題あらへんのとちゃう?」
 心配顔のアレクサンドルを見て、クレメンスがローズティーを手にくすりとする。そっか、と気を取り直して、今度は南瓜のブリュレにスプーンを伸ばすアレクサンドル。と。
「ところで……悪戯って何をするんやろうか?」
 ふと先ほどのハロウィン談義を思い出したらしく、クレメンスが魔女の帽子の乗ったスイートポテトタルトをつつきながらぽつりと問うた。
「え? 悪戯……うーん」
 問われたアレクサンドルも悩むこと暫し。やがて彼が導き出した答えは。
「クレミー、トリック・オア・トリート!」
「へ? いきなり言われても……」
「はーい、時間切れー」
 悪戯っぽく笑って、アレクサンドルは蕩けるような黄金色のブリュレを一口分スプーンで掬うと、「あーん」とクレメンスの口元へと差し出した。
「多分、こんな感じでその場のノリじゃないかな?」
 にっと笑み零すアレクサンドルだったが――クレメンスの脳裏には、神人が以前他の人に「あーん」をしていたことが思い出されて。
(あの時は呆れただけやったけど……)
 今になって思い出すと、何とはなしにもやもやとしたものが胸を過ぎる。クレメンスの表情がにわかに曇り、彼の不機嫌な様を初めて目の当たりにしたアレクサンドルはしゅんと頭を垂れた。
「あ……嫌だったか? ごめん、クレミー」
 謝りスプーンを引こうとしたところで――クレメンスがブリュレをぱくりとした。目を見開くアレクサンドル。
「……前にしてはったけど、もう他の人にこんなことしたらあかんよ?」
 ぼそぼそとクレメンスが言う。反射的にブリュレを口にしてしまったことが、芽生えた想いを紡ぐのが照れ臭くて、朱に染まる白い頬。可愛らしいやきもちにアレクサンドルも僅か照れ、肯定の意を込めてこくりと頷くのだった。

●僕の相棒
「わぁ……素敵なお店だね」
 古城カフェ『スヴニール』へと足を踏み入れたウィーテス=アカーテース。古城の荘厳な雰囲気に前髪の奥の瞳を輝かせてくるりと回れば、魔法使い風のフード付き黒コートの裾がふんわりとはためいた。
「楽しそうだね、となりの。楽しいのはいいことだぎゃー」
 目には眼帯を付け、肩飾りのついたロングコートを羽織った海賊ルックのパラサ=パックが、にっかりと笑って頭に被ったトリコーンをくいと上げる。
「でも、パラサ=パックは早くスイーツが食べたいのさ」
 パラサの物言いに、ウィーテスはくすりとした。
「うん、そうだね。試食会の噂を聞いてきたんだもの。僕も楽しみだよ、スイーツ」
 そうして2人、空いている席を探し、向かい合って腰を下ろす。間もなく運ばれてきたハロウィン風のスイーツプレートは、眩いほどの艶やかさでウィーテスたちを誘って。
「わ、わ。どれも美味しそう」
 思わずウィーテスがそう漏らせば、
「色んなスイーツが一度に楽しめるのはとても嬉しいぎゃー。どれから食べようか迷うね、となりの」
 とパラサもにこにこと笑み零す。プレートが届いた際に注文したカモミールミルクティーが2人の元に届けば、お待ちかねのスイーツタイムの始まりだ。
「ん、美味しいね」
 スイートポテトタルトを口に運んでウィーテスがその顔に自然と笑みを浮かべれば、言葉で応じる代わりにパラサはこくこくと頷くことで賛同の意を示した。口いっぱいに栗のパウンドケーキを頬張っていたので、返事をすることが叶わなかったのだ。そんな相棒の様子を見てウィーテスは思わず笑みを漏らした。
「ねぇ、パラサ」
 声を掛ければ、南瓜ブリュレの表面をパリリと割ることに集中していたパラサが、顔を上げないまま「何だぎゃー?」と応じる。
「聞いたんだけど、このカフェが開店する前にね、ここに住みついていたゴブリンをA.R.O.A.のウィンクルムが退治したんだって」
「へぇ、ここにゴブリンがねぇ……」
 ブリュレを慎重に口に運びながら、パラサは気のないような返事。ウィーテスはそんなパラサの姿に軽く苦笑を漏らし、言葉の続きを紡いでいく。
「それで、僕たちもそういう依頼を受けてみたいと思うんだ」
「うんうん」
 もうすっかりブリュレに夢中なパラサが、おざなりな相槌を打つ。
「A.R.O.A.に行った時、僕より小さな年の子も頑張ってた。パラサは僕が荒事が苦手だから気を遣って、戦闘がない依頼を選んでくれていたんだよね」
 目元を和らげるウィーテス。パラサは、まだ顔を上げない。
「ふんふん、それで……って! そ、そんなことないぎゃー」
 やっとウィーテスの発言の意味を解したパラサが、慌てたような声を出した。
「パラサ=パックはやりたいと思うことしかしないのさ。たまたま戦闘がなかっただけぎゃー」
 照れ臭いのだろうか、僅か頬を朱に染めて、パラサは言い訳めいたことを言う。ウィーテスは口元を柔らかくした。パラサは自由で、奔放で。でも、とても優しい。
「うん、分かってるよ。ありがとうパラサ」
 ウィーテスの素直な言葉に、パラサが居心地悪いのを誤魔化すように黒猫のクッキーへと手を伸ばす。
「僕はびびりで頼りないかもしれないけど……君の相棒として胸を張れるよう頑張るから。これからもよろしくね」
 クッキーに齧りついたパラサの星のような銀の目が、ウィーテスへと向けられた。その口から、もごもごと言葉が漏れる。
「あのね、となりの。となりのは確かにびびりだけど、オイラは別にとなりのが頼りなさそうなんて思っていないよ」
 ウィーテスは重たい前髪の向こう、茶色の目を見開いた。パラサの告白はまだ続く。
「組んでいて面白そうだし、一緒に冒険したら楽しそうだし。何より、いい奴そうだと思ったから、キミと契約したんだよ」
 だから。
「オイラこそ、相棒としてこれからもよろしくだぎゃー」
 言って、パラサは照れたように、白い歯を零したのだった。

●過ぎる想いは
「『スヴニール』のスイーツ試食会なんてわくわくするなー」
 古城カフェへと足を踏み入れて、シルヴァ・アルネヴは傍らのマギウス・マグスへと明るい笑みを向ける。『スヴニール』のスイーツをすっかり気に入ったシルヴァ、試食会と聞いては黙っていられるはずもなく。ハロウィンを意識し、パンプキンカラーのYシャツにビターチョコレートを思わせる深いこげ茶のジャケットを合わせて。仕上げに生クリームをイメージしたオフホワイトのポケットチーフで胸元を彩り、気合は十分だ。
「わくわくするのは構いませんが……はしゃぎ過ぎないでくださいよ、シルヴァ」
 と、保護者めいた発言をするマギウスもどこか楽しげ。蝙蝠をあしらったループタイを身に付けて、指にはパンプキンローズの指輪が上品に光っている。と、その時。
「あ、リチェットさん!」
 ホールに古城カフェの主の姿を見つけて、シルヴァは思わず声を上げた。丁度ホールの様子を覗きにきていたらしいリチェットが、シルヴァたちに気づいて軽く頭を下げる。シルヴァはそんなリチェットの元へと笑顔で駆け寄り、マギウスも彼の後に続いた。
「招待ありがとう。今日もごちそうになります!」
「今日はお招きありがとうございます」
 2人揃ってぺこりと頭を下げれば、
「こちらこそありがとうございます。またお会いできて本当に嬉しいです」
 とリチェットは心底から嬉しそうに顔を綻ばせた。そんな彼の後ろから、手早く用意された2人分のスイーツプレートがやってくる。
「おおお! めちゃくちゃ美味そう!」
 きらきらと目を輝かせるテンション急上昇のシルヴァを、軽く肘で突いて諌めるマギウス。
「落ちついてください。……折角だから前に来た時とは違う席にしましょう」
 新しい発見があるかもしれませんよというマギウスの言葉に、異を唱える理由はなく。
「どうぞ好きなお席へ。秋の古城カフェを楽しんでいただけますと幸いです」
 2人はリチェットに優しく促されて前とは違うテーブルに着いた。テーブルの上へと並べられる繊細で優美なスイーツプレート。2人分のカモミールミルクティーが運ばれてくれば、美味しい時間の始まりだ。
「食べるのが勿体ないけど、いただきます!」
 プレートをじーっと見つめていたシルヴァが、満面の笑みで手を合わせる。マギウスもそれに倣った。シルヴァ、南瓜のブリュレへとスプーンを入れる。キャラメリゼ部分をこつんとスプーンで割れば、現れるのは見惚れるような黄金色。口に運べば、ほろ苦さと南瓜の甘みが口いっぱいに広がって……。
「……美味い。やっぱりリチェットさんのブリュレは絶品だなー」
 にこにこと笑み零すシルヴァの前で、マギウスはスイートポテトタルトを柔らかく纏め上げるきめ細かな生クリームに目を細める。好物のマロングラッセがごろごろ入ったパウンドケーキを口に運び、その美味しさを噛み締めていると、
「ほら、マギ。差し入れ!」
 気に入ったんだろ? と眩しいような笑みと共にプレートへとそっと乗せられる切り分けられたパウンドケーキ。驚きに僅か目を見開いて、マギウスは静かに「ありがとうございます」と目元を柔らかくした。
「酔っぱらうなよ」
 なんて笑いつつ、シルヴァはケーキの代わりにと勝手に取り上げた黒猫クッキーに軽くキスを零し、自分のプレートの黒猫と並べてにっこりとする。その仕草を見ていて、マギウスの脳裏に浮かぶものがあった。そっと伏せられる紫の瞳。
「マギ?」
 知らず俯いていたマギウスへと、シルヴァから声が掛かる。
「どうした? 具合悪いのか?」
 自分と同じ紫の瞳は、心配の色を湛えていて。マギウスは、首を緩く横へ振る。
「いえ、何でもありません。大丈夫ですよ、シルヴァ」
 口元を優しく和らげれば、シルヴァがほっと息をついた。
「良かった。何だよ、ちょっと心配しただろー?」
 太陽のように笑み零すシルヴァに、マギウスも淡い笑みを向ける。今はただ、この特別な時間を楽しもうと思い決めて。

●お揃いの意味は
「ここが古城カフェか……」
 碧の燐光放つ瞳で、ハティは緩く古城の中を見回した。その耳にはヘッドフォン。上着の後ろ襟には、ネジ巻きを模したピンブローチが鈍く光っている。
「おい、きょろきょろしてんじゃねぇよみっともねぇ。ブチ抜くぞ」
 ハティから渡されたギアの付いた眼鏡チェーンを金縁の眼鏡に揺らしながら、ブリンドはそう悪態を吐いた。まだ古城の内装に気を取られているハティを引き摺るようにしてブリンドはテーブルを確保し、2人揃って席に着く。ハティはショコラショーを、ブリンドはローズティーを注文した。ブリンド、何とはなしにこれもまた相棒に渡された揃いのピンブローチに触れながら、
(仮装すると言い出した時にはどうなるかと思ったが……まあ、悪くはねえな)
 等と思う。そんなブリンドの様子をじぃと眺めるハティ。
(リンの分も用意したけど……悪くはなかったんだろう)
 だって、わざわざ小物と色を合わせたらしいあの金縁眼鏡は初めて見る。ハティの視線に気づいたブリンドが、怪訝な顔を作った。
「何見てんだよ、馬鹿」
「別に……」
 答えになっていない返事にブリンドが暴言を重ねかけたところで、2人分のスイーツプレートとドリンクが届いた。豪華なプレートにハティの口から感嘆の息が漏れる。但し、ごく淡々と。ブリンドがため息を吐いた。
「で。聞いてなかったがこりゃ何の仮装なんだ?」
 ああ、とスイーツに気を取られたままでハティが応じる。
「マキナなんだが見えないだろうか」
「へえ、マキ……マキナ!? ハロウィン関係ねえじゃねーか!!」
 冴え渡るブリンドのつっこみ。とりあえず耳のそれを外せとばかりに伸びる手から、ハティ、ヘッドフォンを両手で押さえて死守する。
「リン、紅茶がこぼれるぞ」
「こぼれるぞ、じゃねーよ!」
「何というか、素材を活かそうと思って」
「素材を活かしたっつーか素材そのものなんだけど?! テメー頭ん中どうなってんだよ!?」
 キリリとして言うハティに、再度ブリンドのつっこみがねじ込まれた。が、当のハティはきょとんとしている。ブリンド、痛む頭を抑えて問いを零した。
「……お前ハロウィンに参加したことねえんだっけ? ったく、どうしようもない神人に教えてやんよ」
 そして始まるブリンド先生のハロウィン講座。ハティはその瞳に期待と、それから「お腹空いた」という色を乗せてその講釈を聞いた。長くなるのか? とハティが思った通りにその話は結構な長さだったので、割愛させていただきます。
「……ってわけだ。つーか何でマキナなんだよ。他に何でもあるだろうが」
 大体テメーは……と続いたブリンドの言葉を、「でも」とハティは遮った。
「考えたが、俺もアンタと同じが良かったんだ」
「な……」
 その台詞の響きに、寸の間言葉を失うブリンド。ハティが、パウンドケーキにそっとフォークを入れた。
「アンタと同じくらい戦えていれば、って」
 言って、ケーキをぱくりとする。その味に、ハティの瞳がきらと輝いた。宝物を扱うようにして、ケーキを崩してしまわぬよう、少しずつ大切に食べ進めるハティ。
「……猫は最後にとっておこう」
 真剣な面持ちで言うハティを尻目に、ブリンドは知らず再びのため息を零した。先ほどの言葉が、甘やかなものではなく戦力についての話だったと解して、気が抜けたのだ。ハティはブリンドのそんな心の動き等知らず、幸せそうにスイーツをつついている。
「……お前は本当にアホだな」
 そう零しながらも、珍かなものを見るようにハティを見守るブリンドの銀の目はどこか優しい。くぴくぴと蕩けるような甘さのショコラショーを飲んでいたハティが、顔を上げた。
「どうした? ……リンも飲むか?」
「飲まねーよアホ面。ヒゲついてんぞ」
 指摘すれば、ハティが慌てて口元を拭う。ガキみたいだなぁと、ブリンドは僅か眼鏡の奥の目元を柔らかくした。



依頼結果:大成功
MVP
名前:羽瀬川 千代
呼び名:千代
  名前:ラセルタ=ブラドッツ
呼び名:ラセルタさん

 

名前:ウィーテス=アカーテース
呼び名:となりの、ウィーテス
  名前:パラサ=パック
呼び名:となりの、パラサ

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 巴めろ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 10月05日
出発日 10月12日 00:00
予定納品日 10月22日

参加者

会議室

  • こ、こんにちは。
    ウィーテス=アカーテースと相棒のパラサです。
    皆さん、どうぞよろしくお願いします。

    わ、わ。仮装、面白そうですね。
    僕達も何かハロウィン風な服装をして行こうかなぁ。

  • [6]ハティ

    2014/10/10-17:45 

    ドレスコードがあるわけではないと聞けて少し安心した。ありがとう。
    改まったものは得意じゃないが、ハロウィンを取り入れるのは面白そうだな。
    普段着ているのが黒と(ブリンドを見て)白ばかりだったし、俺も何か考えてみようと思う。

  • [5]シルヴァ・アルネヴ

    2014/10/09-11:59 

    シルヴァ・アルネヴと精霊のマギだ。よろしくなー

    今回も、どのケーキにするか迷いそう!と思ったら
    ミニサイズのワンプレートかー、嬉しいなぁ。すごく楽しみだ。

    んー、服装はオレ達も普段着よりちょっとオシャレめにしようかなー
    (普段Tシャツにラフなパンツとかだから)と思ってたんだけど
    折角ハロウィンなんだし、派手な仮装じゃなくても、ハロウィンっぽい
    物を組み込んでみてもいいかも?
    代表的なハロウィンカラーを取り入れてみるとか
    ハロウィンモチーフのアクセサリーを身につけるとか
    そういうさりげない感じも楽しそうだ。

    オレはシャツをカボチャ色にしてみようかな。

  • [4]羽瀬川 千代

    2014/10/08-23:38 

    こんばんは、羽瀬川千代とパートナーのラセルタさんです。
    皆様どうぞ宜しくお願い致します。

    俺たちも普段着での参加かなとぼんやり考えているのですが。
    思い思いの仮装をするのも、折角のハロウィンですから楽しそうですね。

  • アレックスと、相方のクレメンスだ。よろしくな。

    服装か……
    とりあえず、ドレスコードの指定がある店じゃないと思うから
    俺たちは普段着の予定なんだけど
    仮装していくのもありじゃないかなあって思う。

  • [1]ハティ

    2014/10/08-21:18 

    ハティとブリンド。古城カフェに行くのは今回が初めてだな。…よろしく。
    デザート、選ばなくていいんだな。ワンプレートとはいいものだ。
    ハロウィンモチーフと聞いて楽しみにしてる。
    参考までに聞きたいんだが、こういう場には皆どのような服装で行くんだ?


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