【月見・ラパン】もっちり餅の脅威(まめ マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

収穫祭で納める供物には色々なものがあるそうですが、中でも準備に手こずるものの一つとしてあげられるのが『もっちり餅』。

つきうさ農区で収穫したもち米に、この世界一粘着力の強い木の実と言われている『ネバーリーの実』をすり潰して粉末状にしたものを混ぜ合わせ、色付け用の『虹の粉』を一振るい。
赤や青や黄色に染まったら、これまたつきうさ農園でとれた冷たい水を流し込み、それをよ~くまぜまぜしたら準備完了。


…一体何に手こずるの?って、問題はこの後である。
よくある餅つきの要領で、臼と杵でぺったらぺったら搗くのだが…。

「わー…!こっちにひっついたー!」
「くっついてとれないぞー!」

…なんせこの餅、ものすごい粘着力なのである。
また、地上で知られている餅と違って、”蒸す”ということをしないので、月世界の餅はやや液体質。
杵でつくたびあたりに飛び散り、周囲の人にも餅の脅威が襲ってくるのである。

そんなこんなで、餅がひっつく度に作業が止まってしまい、準備に予想以上に時間がかかってしまっていた。

このままでは間に合わない!もう猫の手でも借りたい…!!


…そんなタイミングでたまたま付近を通りかかったウィンクルム達。
あっという間にラビット達につかまってしまい、ふと気づいたら手には杵。
目の前にはカラフルな餅がセットされた臼がどどん。
周囲はラビット達に囲まれ、応援なのか様々な歓声が飛び交っている。
…逃げられない。

これはもう…搗くしかないでしょー!!

解説

■目的
ただひたすらに目の前の餅を搗いてください。
餅を搗くたびに周囲のラビットが合いの手を入れてきます。
ちょっとしたお祭りムードです。

※注意※
あまり勢いよく搗きすぎてしまうと、餅が周囲に飛び散りあらゆる物をくっつけてしまいます。
物であれ、人であれ、ラビットであれ、べったりとくっついてなかなか離れません。

例えくっついてしまったとしても、『ハナレール水』という液体をかければすぐに引き離すことが出来るのでご安心を。

スプレー缶で1本300Jrで販売中です。
スプレー1本分でなので、体の1か所しか離すことができません。
いっぱいくっついてしまったらその分必要になってしまいますのでご注意を。


ゲームマスターより

みなさんこんにちわ。まめです。
念願のギャクエピソードです。(言い切っちゃった)

ウィンクルムの皆さんにしていただきたいことはただ一つ。
”ひたすら餅を搗く!”
…でございます。

例え、パートナーや他の参加者様にくっつこうとも!
ラビットとくっつこうとも!!餅を…餅を搗いてください!!
(あれ?ギャグというより熱血か…?)

プランには、「何とくっついてしまったのか」、そして「どういう心情で餅を搗き続けるのか」を書いていただければと思います。

それでは、どうぞよろしくお願いします!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

キアラ(アミルカレ・フランチェスコ)

  アドリブ・他参加者様とのくっつき可

▼前提
アウトドア派
面白そう
上手くできれば餅味見ぐらいさせてもらえるかも
餅つきには積極的

▼行動
>餅つき
「折角のお祭りムード、楽しまなきゃ損だよ」
かけ声出しつつ杵を振る
兎の合いの手に楽しくなってきて
つい思い切り搗いてしまったり

>くっつき
「っと、くっついちゃったねぇ。搗きづらいしさっさと離しちゃおうか」
誰とくっついても対応に変化無し

>餅剥がし
「あはは、ちょっとやり過ぎちゃったかねぇ」
ハナレール水は遠慮無く買う

▼対アミルカレ
「言いたい事あったら遠慮無く言えばいいのに」
「嫌でもこれから一緒に行動せざるを得ないんだ、溜め込むのは良くないよ?」
遠慮無く言い合える関係が好み


手屋 笹(カガヤ・アクショア)
  あのお餅くっつくと面倒そうですわ…
搗くのはほどほどの威力でお願いしますね…

あと危険なので杵はそんなに振り回さないでください(小突き)
言ったそばから…またやる…

今回のモチ搗き、返し手は必要なのでしょうか?
必要そうならやりましょうか。
カガヤが搗いたモチで色んな方にくっつけ被害出してはいけないでしょうし…
(それに…他の方とカガヤがくっ付くのを考えたら…
何だかモヤっとしましたし…)
勢いつけすぎですわ!
やっぱりお餅が飛んできましたわね…
もうハナレール水を貰わないと…
あ…(足元にもモチが飛んでいて靴で踏んで転びそうに)

(えええーーカガヤが他の方とくっ付くよりも良かったかもしれませんけど…近すぎですわ…)



夢路 希望(スノー・ラビット)
  ※アドリブくっつき可


月で餅つき…何だか昔話みたいです
(実際に搗いていたのは別の兎さんでしたけど)
チラリ、と彼を見つめて
「…凄く、絵になります」

お餅を搗くのは初めてです
分担するなら返し手に
しなければ、私も頑張って搗きますね
慎重に、丁寧に
「…こ、こんな感じでいいんでしょうか」
だんだん楽しくなってきました
(…ユキも楽しそう)
様子を見て、クスリ

飛ばしてしまったりくっついてしまった場合
相手の方に平謝り
同性ならおろおろ
異性ならおどおど、
「…ど、どうしましょう」
が、我慢して早く終わらせてから取る方がいいでしょうか
でも、下手に動いて変な所につくのも…

恥ずかしさに耐えられなくなったら
助けを請うように彼へ視線を


香我美(聖)
  餅搗きを手伝うのは良いんですけれど、すごい……カラフルですね。

「何とくっついてしまったのか」
自分の精霊と、ですね。
私のせいでごめんなさい。

「どういう心情で餅を搗き続けるのか」
これだけ製造過程が違うと出来上がり私の知っている餅とどれくらい違うのか気になります。

服装:くっついたら困るので餅搗きが始まる前に髪を括って袖を捲くる



ロゼ(ベルナルト)
  くっつき可

あらあら、何だか巻き込まれてしまったみたいね
でもお餅つきってやった事ないしいい機会かしら

私、ぜひ杵でついてみたいわ
あら、意外と杵って重いのね…(ふらふら
大丈夫、多分なんとか…って、あらら

あら、くっついちゃったわね
すごいわね、全くとれそうもないもの
これは噛み応えがありで食べるときが楽しみだわ

あとで纏めて剥がしましょう?
いちいち剥がしていたら時間が掛かっちゃうわ

恥ずかしい…?
そういえば確かにこれって距離が近いわね
ふふ、お金の事を真っ先に考えてしまって気づかなかったわ

お餅をつくのって結構楽しいわね
ベルさんも一緒だからあんまり杵が重いとも感じなくなったし
また今度やってみたいわね



●ありのままの君で

「よっしゃーやるぞー!」
「危険なので杵はそんなに振り回さないでください!」

意気軒昂と手にした杵を振り回すカガヤ・アクショア。
神人の手屋 笹は、そんなカガヤを小突きながら注意する。

「あのお餅くっつくと面倒そうですわ……。搗くのはほどほどの威力でお願いしますね……」

笹は更に注意をしようとカガヤの方を見たのだが、肝心のカガヤが隣にいない。

「おー!アイツすごい力持ちだぞ!」
「頼もしいねぇ!!」

周囲のラビット達が騒ぎ立てる方に視点をずらすと、既に会場真ん中の臼の前でスタンバイしているカガヤがいた。
笹の注意は空しく、ラビット達の声でますますやる気になったカガヤは、今度は手首のスナップを効かせて杵をスウィングしている。

「言ったそばから……」

半ば呆れながらも、笹は会場の真ん中へと足を進めた。

「あ、笹ちゃんが返し手やってくれるの?」
「ええ。カガヤが搗いたモチで色んな方にくっつけ被害出してはいけないでしょうし……」

視界の端でくっついてしまったラビット達の慌てふためく姿が映る。

(それに……他の方とカガヤがくっ付くのを考えたら……何だかモヤっとしましたし……)

「まあ、そこは気をつけるよ。さすがに餅つきで怪我人出すわけには行かないしね」

羽織の袖を捲り、臼の前にしゃがみこむ笹。

「それに返し手役が笹ちゃんでよかった。笹ちゃんなら遠慮なく出来そうだしね!」
「え?」
「それじゃ遠慮なく行くよー!よいっしょー!」

突然のカガヤの意味ありげな言葉に動揺した笹。
振り下ろされた杵がまき散らした餅が、硬直していた笹の右頬にべったりとくっついた。

「勢いつけすぎですわ!」
「あっちゃー!」

まさか一搗き目でくっつく羽目になるとは思っていなかったのもあるが、
何より自分の意識が散漫だったこともあり、笹はそれ以上カガヤを責めることはできなかった。

「もう。ハナレール水を貰わないと……」

よいしょと立ち上がり、ハナレール水を売っている露店へと体の向きを変えた笹だったが、踏み出そうとした足が上がらない事に気付いた。
どうやら立ち上がった際に飛び散った餅を踏んでしまったようだ。
踏み込もうとしていた足に重心が移り、笹はぐらりと態勢を崩す。

「あ……」
「危ない!」

笹が転びそうになるのを瞬時に反応したカガヤは、笹を支えようと手を伸ばした。
背中に手を回し肩を掴んで、何とか笹を支えることに成功する。

「笹ちゃん大丈夫!?ごめんごめん」
「……ありがとう」

笹はカガヤに寄りかかりながら、何とか態勢を立て直す。
そこでいつまでたってもカガヤが離れない事に気付いた。

「あの……カガヤ?もう大丈夫です」
「あと言い辛いんだけど……俺の手もモチが……水貰えるまでこのままかな……?」

カガヤの支えた手が動かない。そして笹の顔も正面を向いたまま動かない。
笹を支えるカガヤの手にも餅がくっつき笹を抱き寄せるような形で固まっており、
更には笹の右頬にくっついていた餅が、カガヤの胸にくっついてしまっていたのだった。

(えええーーカガヤが他の方とくっ付くよりも良かったかもしれませんけど……近すぎですわ……)

思わぬ所で急接近した二人。
笹は突然の事態に大混乱である。

それから周囲のラビット達の協力もあり、何とかもっちり餅を完成させ、離れることが出来た笹とカガヤ。
笹は高鳴る胸の正体がわからず、振る舞われた餅にも手を付けられずにいた。
皿にのせられた餅は、綺麗な緑色の餅。

「この餅、笹ちゃんの色だね~!」

そんな笹の様子に気付いたカガヤは、そう言って笹の手にした餅を指差して微笑んだ。

「私の色……ですか?」
「そそっ。笹ちゃんの髪と同じ色だからさ。それじゃ!笹ちゃんをいただきまーす!……お。もっちもち。」

笹の皿から緑の餅を一摘みし、自身の口へと放り込むカガヤ。

「ちょっとカガヤ……!言い方……!!」
「ぐっ!」

思いがけないカガヤの言葉に顔を真っ赤に染めた笹は、カガヤのボディに強烈なド突きをくらわせた。

「あ……私ったらまた……!」

ふいにくらったボディに震えながら、カガヤは小さい声でつぶやいた。

「……あはは。やっぱ笹ちゃんは、こうでなくっちゃね」


●青少年スイッチ
騒がしい周囲のラビット達とは打って変わって、うっとりと目を細める少女が一人。

「月で餅つき……何だか昔話みたいです」

そんな夢路 希望の様子を見て、精霊のスノー・ラビットは優しく微笑んだ。
スノーは床に設置されていた杵を手に取ると臼に向かって構えた。
兎似の耳と尻尾を持つテイルスであるスノーのその姿は、物語に出てくる登場人物のようで、希望は、ほぅと感嘆のため息をついた。

「……凄く、絵になります」

希望の視線と聞こえた小さな呟きにスノーはにっこりと笑う。

「今のノゾミさんも兎みたいで可愛いよ」

希望は黒のウサミミパーカーを着ていた。
パーカーのフードについたウサ耳が、頭の上でぴょこんと立っている。

白うさぎと黒うさぎ。
なんだかお揃いみたいで、スノーはこのパーカーを着た希望が好きだった。

「お餅を搗くのは初めてです」
「僕も餅つきは初めてだよ。テレビで見た時はつき手と返し手って二人でしてたけど……」

目の前にある臼は一つ。杵はスノーが持ったものが一つ。

「分担してやりましょうか。私は返し手をやりますね」

希望は臼の近くにしゃがみ込むと、パーカーの袖を捲った。
いつも隠れている手の甲の文様が露わになる。

「……ありがとう!それじゃあ飛ばさないよう注意しながら搗くね!」

恥ずかしがりやの彼女が、自ら文様を出してくれたことが何だか嬉しい。
スノーは希望を優しく見つめて微笑むと、意を決して杵を構えた。

「よいしょっ!」

スノーは餅を飛ばさないよう注意しつつ餅を搗く。
すかさず希望が手を伸ばし餅を返す。

「……こ、こんな感じでいいんでしょうか」

その手つきはとても不安げで、スノーも希望の手を搗いてしまったりしないよう、ゆっくりと次の一振りをする。

ぺったん。

「「よいしょー!」」

ぺったん。

「「あ、それーっ!」」

二人とも慣れてきて段々とリズミカルになってくると、周囲のラビット達も合いの手を挟んでくるようになった。

(……楽しい!)

ラビットの掛け声と、餅を搗くリズミカルな動きが楽しくなってきて、
スノーは新しい玩具を見つけた子供のような笑顔を浮かべて餅を搗き続けた。

(……ユキも楽しそう)

その様子を見て、希望もクスリと微笑んだ。

しかし、気が緩んでしまったのか、スノーの餅を搗くタイミングがずれてしまった。
ラビット達の掛け声がバラバラと響く。

「まったく見ちゃいられねーな!」

その中でひときわ大きな掛け声を出していた男のラビットが、ギャラリーを掻き分け会場の真ん中へと躍り出た。

「手本見せてやるから杵かせよ!」
「あ……ちょっと……」

スノーから半ば強引に杵を奪おうと引っ張ったその時……。

「きゃっ……!」

杵の先に搗いていた餅が希望の頬に飛びついた。
驚いた希望が立ち上がった瞬間……。
その男の肩と希望の頬がべったりとくっついてしまった。

「「!!」」

その光景に顔面蒼白となる二人。

「あー悪いね。くっついちまったか」
「……ど、どうしましょう」

突然の出来事にオロオロとする希望。
ただでさえ異性に不慣れな彼女は、少しでも離れるように体を動かすも、頬についた餅がそれを許さない。
恥ずかしさに耐えられなくなった希望は助けを請うようにスノーに視線を送った。

「こんな美人さんとくっつけるなら餅つきも悪くねーなぁ」

豪快に笑うラビットの男性。
涙目を浮かべる希望。
それを見て、スノーの中の何かが弾けた。

無言でつかつかと歩き、会場の端にある露店商から見事な手際でハナレール水を購入。
また無言でつかつかと歩いて戻ってくると、その男の頬に目掛けてハナレール水を振りまいた。

「わわ……!悪かったよ!」
「あ……取れました」

スノーの威圧感に、男はそそくさとその場を後にした。
無事離れることができた希望の頬を優しく袖で拭うと、スノーは安堵感から大きなため息をついた。

「ありがとう。ユキ……?」

その様子に不思議そうに首を傾げる希望。

「……嫌だったんだ」

スノーはこちらを見つめる希望から顔を逸らすとぽつりと呟いた。
その呟きが聞こえて、希望は顔を真っ赤に染め上げた。

この間から何かのスイッチが入りそうになっている気がする。
スノーはどうにかなってしまいそうな気持ちをぐっと抑えると、床に置かれた杵を手に取った。

「と、とにかく今は餅搗きだよね!」

青少年スイッチ。さてはて押される日が来るのだろうか……。


●触れ合う二人

会場内に設置された臼の中には、赤や青、黄色や緑といった色とりどりの餅が入っていた。
そのカラフルさに圧倒されながら、香我美はゆっくりと会場の真ん中へ足を進めた。

「餅搗きを手伝うのは良いんですけれど、すごい……カラフルですね」

自分が担当する臼の中には真っ赤な餅がセットされている。

「月世界ならではだね。折角だから楽しもうよ」

そんな香我美の背中をぽんっと押して、微笑むのは精霊の聖。
幸い餅つきの方法は自分達が知っているやり方で問題なさそうだ。
ならば、後はもう楽しむしか無いのかもしれない。

聖の言葉に頷くと、香我美は自身の長い髪を高く括り、袖を捲くった。

「それじゃあ、やってみるわね」
「僕は返し手をやるね。頑張ってね。香我美さん」

杵を掴む手にぐっと力を入れると、香我美は杵を高く振り上げた。

ぺたーん!

「「わっしょーい!」」

ぺたーん!

「「あ、どした!」」

ラビット達の謎の掛け声に合わせるように、香我美はリズミカルに餅を搗く。

「……これは思ってたより楽しいですね」

楽しそうな香我美を見て聖も微笑む。

「よし。もう一回……」

再度、杵を勢いよく振り下ろした時、臼から真っ赤な餅が飛び散った。
そのうちの一つが聖を襲う。

「ごめんなさい。聖さん」

香我美は杵を下ろし、慌てて聖の隣にしゃがみ込む。
そしてうっかり聖の頬についた餅に触れてしまった。

「あ……」
「くっついちゃったね……」

頬に触れた手を離そうと香我美が力を入れると、くっついた聖の顔も力を入れた方向に傾く。

「あはは。本当にすごい粘着力だね」
「私ったら……。聖さん、本当にごめんなさい」

聖はしゅんとする香我美に優しく微笑むと、香我美のもう片方の手を引きゆっくりと立ち上がらせた。

「さすがにこれじゃ餅搗きは続けられ無さそうだね」
「そうですね。この恰好のまま動くのは……、少し、恥ずかしいですが……」

二人は照れくさそうに微笑み合うと、露店へ向けて歩き始めた。


●師弟愛

「餅つきか。面白そうじゃないか」
「……待て、キアラ」

ラビット達の熱気に引き込まれるように、キアラは会場の真ん中へとずんずん足を進める。
それを止めようと精霊のアミルカレ・フランチェスコも後を追う。
アウトドア派のキアラと違い、インドア派であるアミルカレは餅つきなんて願い下げなのだが、一度こうなったキアラは一筋縄では止められない。
気付くといつも彼女のペースになっている。

アミルカレがやっとキアラに追いつくと、キアラは既に片手に杵を持っており、準備万端の状態であった。
さすがに咥え煙草はまずいと判断したようで、携帯灰皿で煙草の火を消している。

「待てと言っている……!俺はこういうのやる柄じゃないんだが……」
「何言ってるんだい。折角のお祭りムード、楽しまなきゃ損だよ」

そう言ってニカっとした笑顔を見せるキアラ。

「しかし……」
「それに上手くできれば餅の味見ぐらいさせてもらえるかもだしね」
「む……」

この世界の餅がどんな物なのか、アミルカレにも多少の興味はあった。
それなりの報酬がもらえるのならば手伝ってもいいかもしれない。

頭の中で傾く天秤に答えを出す前に、キアラはアミルカレ用の杵を用意していた。
覚悟を決めたアミルカレは、その杵を手に目前の臼と向かい合った。

「それじゃ、いくよっ!」
「……あぁ」
「せ~の!」

キアラの合図で杵を振り上げる。
そして掛け声に合わせて振り下ろした。

ぺった~ん!
ぺたん!
「「もいっちょ~!!」」

二人に合わせて周りのラビット達も合いの手を入れる。
キアラは豪快に、アミルカレは餅を周囲に飛び散らせないように、程々の力で堅実に餅を搗く。

ぺった~ん!!
ぺたん!

「「あ、よいしょ~!!!」」

ウサギの合いの手が段々激しさを増してくる。
そしてそれを楽しむかのように、キアラの餅を搗く力にも熱がこもる。

ぺった~~~~ん!!!
ぺたん!

「「ぎゃー!餅がはねたーーーー!!!」」

「あ、やっちゃった」

キアラが思い切り搗いた餅が、周囲に飛び散った。
周りのラビット達にも届いてしまったようで、慌てふためく姿がちらほら。

「そっちは大丈夫だったかい?」

隣に立つアミルカレの肩にぽんっと手を置こうとしたキアラ。
だが、アミルカレは餅を搗いた態勢を起こそうと頭をあげようとしたところだった。

何がどうしてこうなったのか。
キアラの手はアミルカレの頭にぽんっと置かれることとなった。
しかも運悪くキアラが搗いてはねた餅が、アミルカレの頭にもくっついていたのだ。

「……おい……」
「あー……。これは……なんというか新しい感じだね……」

意図せず、キアラがアミルカレの頭を撫でるような形でくっついてしまった。
まさに”可愛い後輩を可愛がる先輩”といった構図である。

「……さっさと剥がしてくれ……」
「そうだねぇ。搗きづらいしさっさと離しちゃおうか」

ムッスリした顔を浮かべるアミルカレ。
キアラはアミルカレの何とも言えないであろうその心中を察し、すぐにハナレール水を売っている露店へと向かう。
露店にいた商人ラビットは、二人の姿を見るや否やニヤリと微笑んだ。

「ハナレール水ですね?300Jrです」
「な……!手伝わせておいて有料か……!」

銭ゲバ気味の性格であるアミルカレは、内心でコノヤロウと思いながら、商人ラビットに詰めよる。
けれど商人ラビットは涼しい顔で、指を3本たててニッコリと微笑んだ。

「手伝ったんだから少しはまけろ」

商人の前にビッと指を2本立て、負けじと値切り交渉をしかけるアミルカレ。

「別にこちらは売らなくてもいいんですよ?」

ニヤッと眼を細めて笑う商人ラビット。
お金が絡んで熱くなっていたアミルカレだったが、商人の言葉に頭の上に置かれたキアラの手の存在を思い出した。

「く……!」
「まぁまぁ、私が買うからさ。これなら一本で済むだろう。はい、これ代金ね」
「毎度~」

商人からハナレール水を受け取ると、キアラはくっついた餅に向けて吹きかけた。
餅はあっという間に剥がれて地面に落ちる。

「あはは、ちょっとやり過ぎちゃったかねぇ」
「無駄遣いの何が楽しい……だいたいもう少し……いや、何でもない」

気楽に笑うキアラに、自由になったアミルカレがずいと詰め寄る。
が、途中でその口を詰むんでしまう。

「何だい?言いたい事あったら遠慮無く言えばいいのに。嫌でもこれから一緒に行動せざるを得ないんだ、溜め込むのは良くないよ?」

そう言ってアミルカレの顔を覗き込むキアラ。
契約をしてからまだ二人で重ねた時は少ない。
年の差もあり遠慮してしまうというのもわかるが、遠慮無く言い合える関係でありたいとキアラは考えていた。
そしてそれはアミルカレ自身も少なからずそう思っていた。

「剥がすのに金がかかるのはわかってたんだ、少しは押さえろ……」

詰むんだ言葉の続きを溢し、アミルカレは少し照れたような表情を浮かべた。

「あはは!了解!ちゃんと言ってくれてありがとうね」

その言葉と表情に満足げに笑うキアラ。
二人の距離が、また一つ近付いた。


●一筋の汗
ラビット達に背中を押され、ロゼとベルナルトはあっという間に会場の餅搗きスペースへと躍り出た。

「あらあら、何だか巻き込まれてしまったみたいね」
「まさか実際に月で餅つきをする事が出来るなんて思わなかったな」

クスクスと笑うロゼとは対照的に、会場の熱気とラビット達の集まる視線に気圧されるベルナルト。

「でもお餅つきってやった事ないしいい機会かしら」

相も変わらず堂々とした様子でいるロゼ。
そんなロゼを見て、ベルナルトは少しずついつもの調子を取り戻しつつあった。

「そうだね。いいお土産話になりそうだし楽しんでいこう」

にこっと微笑むと、ベルナルトは設置されていた杵に手をかけた。

「あ、ベルさん。私、ぜひ杵でついてみたいわ」

重い杵を搗くのは男である自分の役目だと思っていた。
つくづく彼女は普通の女性とは違うのだなと思うと、ベルナルトの顔には自然と笑みが浮かんでくる。

「うん、いい経験になると思うよ。はい、どうぞ」

杵を持ち上げ、ロゼに手渡す。
それを両手で掴むと、ロゼは臼の方へじりじりと近づいていく。
しかしその足元は覚束ない。

「あら、意外と杵って重いのね……」
「だ、大丈夫?すごいふらふらしてるけど……」

その様子を見て、ベルナルトはおろおろとする。
彼女が転んでしまわないように、背中に回って受け止め姿勢をつくる。

「大丈夫、多分なんとか……って、あらら」

振り上げた杵の重心がぐらりと傾き、ロゼの手から滑り落ちる。
ふらついたロゼを支えようとベルナルトが手を伸ばしたその時。
杵が勢いよく臼に落下し、餅が四方八方へ飛び散った。

丁度ロゼの肩を抱くように掴んだベルナルトの手にも餅が飛んできていたようで、
ロゼとベルナルトはそのままくっついてしまった。

「あら、くっついちゃったわね」
「本当だ」

くっついた手や肩を動かしてみるも、全然剥がれそうにない。

「話に聞いてた通り全然離れないね」
「すごいわね、全くとれそうもないもの。これは噛み応えがありで食べるときが楽しみだわ」

離れなくて困るベルナルトとは裏腹に、餅の噛み応えを気にするロゼ。
今日も平常運転だ。

「あとで纏めて剥がしましょう?いちいち剥がしていたら時間が掛かっちゃうわ」

よっぽど餅が気になり始めているのだろうか。
ロゼは床に落ちた杵を取ろうと体を傾けた。

「うん、出費的な事を考えてもまずは餅をついてしまった方がいいね。……でもこれ距離も近いし少し恥ずかしいね……」
「恥ずかしい……?」

ベルナルトの言葉にロゼはきょとんとした表情を浮かべた。
そしてお互いの距離を確認するように、自分の肩、ベルナルトの顔へと視点を流す。

「そういえば確かにこれって距離が近いわね。ふふ、お金の事を真っ先に考えてしまって気づかなかったわ」

気付かなかったのか……。と、肩をがくりと落とすベルナルト。
自分はこんなに動揺しているというのに。

「うん、結構高額だもんね。ラビットも中々商売上手だよ」

苦笑を浮かべながらベルナルトも杵に手をかける。
お互い半分が不自由になってしまったのだから、もう半分で補うしかない。

「と、とりあえず、餅搗き頑張ろうか」

二人でしっかりと杵を持ち、今度は安定した動きで杵を振り上げ、臼の餅へと振り下ろす。
会場内にはリズム良く餅を搗く音と、それに呼応するように合いの手を入れるラビット達の声が響き渡った。

無事に餅搗きが終了し、ロゼとベルナルトは搗きたてのもっちり餅を味わっていた。
カラフル故に口にするのにはやや抵抗感を感じさせるもっちり餅だが、口に含むともっちりふんわりとした不思議な食感が広がる。

「うーん。これは明日あたり筋肉痛になりそうかな……」

肩をぐるぐると回すと、ベルナルトはぐっと背筋を伸ばした。
たった数分の間だったのだが、結構体力を使った気がする。

「お餅をつくのって結構楽しいわね」

お皿に置かれたもっちり餅を見て、ロゼはさっきまでの出来事を思い出し、ふふっと笑う。

「ベルさんも一緒だからあんまり杵が重いとも感じなくなったし。また今度やってみたいわね」

そう言って無邪気な笑顔を浮かべるロゼ。
またやりたいというロゼの提案にベルナルトは自身の肩がずしっと重くなる錯覚を覚えた。

「う、うん……そのうちね」

肩に手をあて微笑むベルナルトの頬を、汗が一筋つたい落ちた。



依頼結果:大成功
MVP
名前:キアラ
呼び名:キアラ
  名前:アミルカレ・フランチェスコ
呼び名:アミルカレ

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター まめ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 09月26日
出発日 10月03日 00:00
予定納品日 10月13日

参加者

会議室

  • [5]ロゼ

    2014/10/02-02:31 

    こんばんは。
    夢路さん達はお久しぶりで、他の方は初めましてね。
    私はロゼで、パートナーはベルナルトさんよ。
    よろしくね。

    餅つきなんて初めてだから楽しみだわ。
    一体どうなるのかしらね。

    (PL:同じくくっつき大丈夫です)

  • [4]夢路 希望

    2014/10/01-23:55 

    キアラさん、手屋さん、ロゼさん達はお久しぶりです。
    香我美さん達は初めまして。
    えっと、夢路希望、です。
    パートナーは、テイルスの、ラビットさんです。
    よ、宜しくお願いします。

    ……な、なるべく皆さんにご迷惑をかけないよう、気をつけます。

    (PL:アドリブくっつきはOKです)

  • [3]香我美

    2014/10/01-23:32 

    こんばんは、私達は皆さん初めましてですね。
    香我美と申します、こっちはファータの聖さんです。宜しくお願いしますね。

    確かに手伝ってもらっておいて売りつけるって商売上手な方たちですよね。
    まあ、私の知っている餅搗きとは少し違うみたいですし、楽しもうと思ってます。

    (PL:こちらも他所の方とのくっつきは大丈夫です。)

  • [2]手屋 笹

    2014/10/01-13:18 

    カガヤ:
    キアラさん達と希望さん達お久しぶりー!
    香我美さん達とロゼさんは初めましてだねーよろしく!

    よーしもちつきするぞー!(杵をぶんぶん

    (※他の方とのくっつきOKです。特に希望されなければ、
    アドリブくっつきOKと記載する程度に留めます)

  • [1]キアラ

    2014/09/30-00:08 

    キアラ:
    笹んとこと、希望んとこは久しぶり。
    あとの二組は初めましてだね、私はキアラっつーもんだよ。
    んで、精霊はマキナのアミルカレ。

    アミルカレ:
    宜しくお願いする。

    キアラ:
    餅つき面白そうだねえ。
    上手くできれば少しくらい食べさせてもらえるかも……っつーことで、頑張って手伝う事にするよ。

    アミルカレ:
    搗くのは幾らしても構わないが、あまり飛び散らせるないでくれ。
    というか、餅離す為に300Jr……手伝わせておいて有料か兎共……!

    キアラ:
    あー……ちょっと銭ゲバ気味なだけなんで、まぁ気にしないどくれ。
    ていうか、無理臭いけどねえ、くっつけないの。

    (PL:他の参加者様とくっつくのも大丈夫ですー)


PAGE TOP