【月見・リエーヴル】恐怖! モグラ叩き地獄(如月修羅 マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

●モグラたたきの恐怖
 「Love-Bit」と呼ばれる種族の青年が、頭を下げてお願いする。
 曰く……。
「ミエル・ナヴェの畑に、モグラもどきのヴァーミンが出たんです!」
 ミエル・ナヴェはようは蜂蜜のように甘いカブのことらしく、そのカブの畑には「モグラもどき」と呼ばれる、これまたモグラに似た生物がいるらしい。
「モグラもどきは、モグラよりもうちょっと大きくて……えぇっと大人の両掌からちょっとはみだすぐらいですね。とても温厚で人懐っこくて、つぶらな瞳が可愛くて!
大抵は土の中で土を耕したり害虫を食べたりして共存してくれてるんです。
ちなみに外にでて生活することも可能ですので、ペットとして飼う人もいないことはないですね」
 そんなことを言いつつ、ちょっと脱線したことに気が付いた青年がこほんと咳払いを一つした。
「えぇっとそんなモグラもどきのヴァーミンがでたんです。人を見れば噛みつき、ミエル・ナヴェもむさぼりたべてしまって……」
 今はまだ怪我人が数人ですんでいるが、今後どうなっていくか検討もつかないという。
「そこで、このヴァーミンを倒していただきたいのですが……問題がありまして……」
 問題? という問いかけに、青年が力なく頷く。
「まず基本的に土の中に潜っています。
人が近づくと穴からでてきて噛みつく……という感じなのです。
畑は広大ですし、穴を掘っていく、というのはあまりにも現実的ではないので、皆様にはミエル・ナヴェの畑を回っていただこうかと。
すでに抜かれた所の穴がありますので、そこから出てくるヴァーミンを倒して行って欲しいのです」
 ヴァーミン自体は凶暴だが、体力はあまりないらしく、そこまで苦戦することはないだろうという。
「私たちが確認してるだけで、15匹はいましたね。
時間が掛かるでしょうから、休憩も織り交ぜながら……お茶ぐらいは出せますし、それにミエル・ナヴェはそのままでも美味しくいただけますから!」
 おやつ代わりに数本食べてくださいね! と青年が微笑んだ。
「あの……お願いしてもいいでしょうか?」

解説

モグラたたきだぜひゃっほーい!
 みたいな依頼です。

●モグラもどきのヴァーミン
 15体。
 近づけば穴から出てきてすぐに噛みつこうと飛び掛かってきますので、違いは迷うことなく分かります。
 トランスした皆様が1~2撃ふるえば倒せますので、苦戦はしないでしょう。
 ただし、必ずしも穴がある=出てくるというわけではなく、逆に穴がない=でてこない。というわけでもありません。


●畑
 広大な畑。
 所々ミエル・ナヴェが収穫されているがまだまだ沢山はえている。

 
●ミエル・ナヴェ
 「はちみつかぶ」の由来通り、甘い蜜汁たっぷりのカブ。
 そのままで食べてもいいですし、すりおろしてさらにジャムとかで食べても美味しいデザートに。
 あっさりと塩で一夜漬けみたいにして食べてもさっぱりといただけます。
 ちなみにすりおろしたりするのは、青年が道具を貸してくれますのでご安心を。
 大体お一人様2~3本食べてOKです。
 お持ち帰りもいいらしいですよ。

ゲームマスターより

カブはあっさりと塩漬けが好きな如月修羅です。
よろしくお願い致します。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

木之下若葉(アクア・グレイ)

  もぐらモドキ……
本当、月には色んな生き物が居るよね

畑は広いみたいだからペットボトルの水くらいは持って行こうか
ちょっと長めの棒も行くまでに探しておくよ
無かったら剣の柄でも使えばいいしね

まず、一つ穴を見つけたら近くに他の穴が無いか探すよ
穴から穴の間を線で繋ぐように辿って行けば、
その間の地中をモグラもどきが移動した確率が高いかと思ってさ

次に、無人に見えてもノック代わりに棒状の物で穴の中を軽くつつく
「誰かいませんかー」
噛みつかれたらご愛敬、だね

ヴァーミンになっていない子に会えたらもふもふしたいなって思うよ。もふもふ

ふう、結構歩いたね
お言葉に甘えてミエル・ナヴェを1本
凄いね本当に果物みたいに甘いや



初瀬=秀(イグニス=アルデバラン)
  ミエル・ナヴェ……はちみつかぶなあ
本当に創作意欲の湧く場所だわ
ま、その前に一仕事だがな
あーはいはい分かったから落ち着け

とりあえずでたらめに探しても効率悪いしな
こう、盛り上がってるのがもぐらの掘った後だからその近辺か
耳がいいって言うしタムタムで地面叩きながら探ってくか
で、お前は何やってんだ
それで捕まえられたら苦労しないだろうよ……

まあ基本は地道に探して叩きつつ飛び出したら攻撃だな
イグニスの陣取ってる穴の方に追い込めればいいんだが
見た目に騙されるなよそいつ噛むぞってほら言わんこっちゃない!

全部終わったら少し持って帰らせてもらおう
何作るか…ん?いや店には出さんぞ
一日頑張ったからな、お前に作ってやるよ



セラフィム・ロイス(火山 タイガ)
  ◆情報を聞き、調達。木の棒は現地で
危ないから外で!

気合い十分だね。ん(トランス)

盛り上がりとかないかな(ふれたり耳をあてるのは危ないかな)
犬の鼻があれば探しやすそうだけど・・・テイルスってどうなの?
ちょっと!トランス済でも危ないって!?

それなら。僕も頑張らないとね
◆棒でなぞり、振動を感じれないか試し、知らせる
攻撃は払って回避


そろそろ残り少ないかな。仕上げいくよ
◆穴に発炎筒を投げ込む
(無い場合、爆竹や催涙スプレーを数箇所し追い込み)
いったよ!

え。だって一斉に出てきたら流石に大変だろ?(首かしげ


おいしい。そのまま食べれるなんて醍醐味だよね

■一等には自分の分のカブをあげる
どうせ考えてないだろうから


セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  美味しい野菜の畑を荒らすとは、ヴァーミン許すまじ!
普段肉を優先して食べているだけで、野菜だって好きさ。
「美味しい食材はオレ達が守る!」な意気込みで!
畑に着いたらトランスだ!(超やる気)

タイガと「よーし競争だぁ」と倒したモグラの数を競おう。その方が面白いじゃん?
地面に空いた穴を探すぜ。
モグラ塚みたいにこんもり土が盛ってある所。
見た感じカブの葉が途切れているトコが狙い目か?
出てきたらこの『ボートのオール』でぶん殴るぜ。
気絶でもしてくれりゃそのまま用意してきたネットの袋に放り込んで捕まえる。
捕まえた後暴れたら更に数回ネットINのまま殴撃し静かにさせる。

合間にミエル・ナヴェも食べる。
そのままもぐもぐ。




 広大な畑には、あっちこっちにまだミエル・ナヴェが収穫されずに残されていた。
 収穫済みのミエル・ナヴェが数個、今だ地面に転がっている。
 さらに、なんだか白い破片がぽつぽつと落ちているのを見る限り、どうやらモグラもどきのヴァーミンが食い散らかしているようだ。
 セラフィム・ロイスはこの畑の主の青年に、やる前に話を聞く。
 どうやら木の棒として扱うのにちょうどいい物があるらしい。
「ありがとう」
 青年が持ってきた棒を受け取り、己の精霊である火山 タイガにと渡す。
「リアルもぐら叩き! よっしゃやるぜ~倒すぜ~」
 気合は十分だった。
 受け取れば、感触を確かめるかのように、ぶんぶ んと素振りを始めたのを、慌てて止めるセラフィム。
 今回のモグラたたきは地道な作業である。
 とにかく只々時間と気力と、その他諸々が必要になる作業だ。
 気の遠くなるような広さに、どうやってでてくるのか分からないヴァーミン。
 余程気の長い人や地道な作業が好きな人でも、やはり嫌気がさすというもの。
 そうなれば、休憩をはさむだけじゃなくて違うことでも気力を漲らせたい。
「勝負しねーか?」
 それだけでは足りないかと、さらに言葉を続ける。
「ただやるのも張り合いねぇし早く終わると思うしさ。数で勝負しようぜ!」
 タイガが皆に言えば、アクア・グレイが大きく頷く。
(競走、ですか)
「はい! 農家さんも困ってますし。一匹でも多く退治出来るように頑張ります!」
 気合は十分だ。その瞳には闘志が漲る。
 それにしても、と木之下若葉がゆるりと首を傾げた。
(モグラもどき……か)
 ちょっと想像しつつ、ぽそりと呟く。
「本当、月には色んな生き物が居るよね」
「そうですね」
 気になりますね、と言えばそうだね。と答えが返ってきた。
「今日は他のウィンクルムの皆様ともぐらたたき対決ですよ!」
 どこかきらきらした笑顔でイグニス=アルデバランが少々興奮気味に言えば、初瀬=秀が仕事を忘れるなよ、と釘をさす。
「……え、違うんです? 最終的にもぐら退治できれば問題ないと思ったんですが」
 それに、とぐっと拳を握る勢いで秀にと詰め寄る。
「ともかく! おいしいカブと農家の方の為にも頑張りましょう秀様!」
「あー……はいはい。分かったから落ちつけ……」
 ひとまず落ち着かせに走る秀の傍ら、同じく燃えている者が居た。
「美味しい野菜の畑を荒らすとは、ヴァーミン許すまじ!」
 セイリュー・グラシアだ。
 秀達の所と違うのは、宥める人がいないということだろうか。
 ラキア・ジェイドバインといえば、にっこりと微笑みつつも内心は穏やかじゃない。
「畑を荒らす動物は、許せないなぁ」
 見た目が多少可愛くても、ヴァーミンは害獣であれば、やることは一つだ。
 かくして散らばった面々は、ヴァーミン退治をするために戦場へと一歩踏み出していく……。
「頑張ってくださいね」
 青年がそんなウィンクルム達を頼もしそうに見送るのだった。



 広大な畑が広がっている。
 神人と精霊がそれぞれで別れれば、4つの班になって。
「セラ頑張ってこう! トランス頼む」
 ぶんぶんと再び木の棒振る勢いのタイガに、セラフィムが微笑む。
「気合い十分だね。ん」
 絆の誓いを……そっと囁くそれは、力を与えてくれて。
 モグラもどきのヴァーミンも敵ではなくなるだろう。
「んじゃ、頑張るとするか!」
「そうだね……、盛り上がりとかないのかな?」
 畑の盛り上がりはあるが、青々とした葉っぱに阻まれて、カブが埋まってる付近であろう膨らみはちょっと分かりにくい。
 一個ずつ見て行くしかないのか、それとも。
 ゆらりゆらりと尻尾が揺れるタイガを見つめ、ふと気になる疑問。
「犬の鼻があれば探しやすそうだけど……」
 そして、耳までじーっと見た後に首を傾げる。
「テイルスってどうなの?」
 その視線をどこかくすぐったげに受けながら、タイガも首を傾げた。
「んー。マタギの家系だし身体能力は高けぇ方だと思うけど」
「じゃぁ、どうなんだろうねぇ……?」
 そっと視線を外し、地面にと棒をつけて振動を探ってみる。
 どこまでも静かで、わずかな揺れも感じない。
「どうだろうな」
 そう言いながら、地面に耳をつける姿を見つけ、慌ててセラフィムが辞めさせようと手を伸ばした。
「ちょっと! トランス済でも危ないって!?」
 少し離れたその場所でぽむぽむと地面を叩けば、ぼこっと何かが飛び出してきた。
「うおっとっ」
 噛みつかれるその一瞬前に飛びのいたその俊敏さは、流石というべきか。
 それにほっと息を吐き、セラフィムが今一度飛びかかってくるのを棒でいなす。
「でいや!」
 ついでの攻撃は、態勢を整えたタイガによって。
 バラに噛みつこうとしたヴァーミンは、そのまま一撃を受けて地面にと沈む。
「タイガ、大丈夫?」
「おう! このまま確実に倒していこうぜ!」
 きらっきらの笑顔を向けられてしまえば、それ以上何も言えない。
 小さく息を吐き、セラフィムも微笑んだ。
「それなら。僕も頑張らないとね」
 今一度、地面につけた棒からは何か振動を感じとって。
「さて、これはヴァーミンか、モグラもどきか……」
 2人、確実に探していく。



 トランスを終えたラキアとセイリューは、地面の穴を探していた。
 少しずつ少しずつ、気配を探って歩く。
 そんな中、ラキアが思うは、野菜をあまり食べていないセイリューのこと。
(この依頼なら、セイリューも野菜食べてくれるし)
「君、最近肉ばかり食べすぎ」
 それに軽く肩をすくめる。
「普段肉を優先して食べているだけで、野菜だって好きさ」
 だからこそ、「美味しい食材はオレ達が守る!」な気合十分である。
 モグラ塚みたいにこんもり土が盛っているのを見つけたセイリューがソレに沿ってあるけば、ラキアがそれを潰していく。
 そんな様子に首を傾げれば、ラキアが微笑んだ。
「トンネルが多いとカブの生育には良くないからね」
「あぁ、なるほど……っ!!」
 丁度カブの葉が切れている所だった。
 土がもこもことなった次の瞬間には、セイリューの喉元めがけて飛び掛かってくる。
「セイリュー!」
 ラキアのシャイニングアローにより、そのまま自分に返ってきた攻撃にこてんと転がった。
 どうみても海蛇にしか見えない杖を油断なくヴァーミンにと向けつつ、セイリューの元へ。
「大丈夫だった?」
「あぁ、それにしても結構速いんだな」
 だが、次のもこもこと盛り上がるのはすぐに2人とも確認していて。
「そこだっ!」
 飛び掛かってきたのを、ボートのオールでぶんなぐるのだった。
 2体とも気絶しているのかそれともなんなのか。
 とりあえずネットの袋の中に入れておく。
 もしも動き出したときは、そのまま文字通りの袋叩きをすることになるだろう。
「あ、そうだ。野菜を痛めないように気を付けないとね」
 その言葉に頷き、2人油断することなく再び歩いていくのだった……。


 じっくりと探しているのは若葉とアクアだ。
 持ってきていたペットボトルの水が音を立てて揺れる。
 一つ、穴を見つければその周りに穴がないか探してみる。
 穴から穴への距離をしっかり測り、移動距離を測れば結構な距離だった。
 長い棒がなかったら剣の柄でも入れてみようか と思っていた若葉だったが、青年から貰えた木の棒により、柄よりは安全に穴の中に入れれそうだった。
「あ、ワカバさん、こっちにも穴がありますよ!」
 今の所穴から飛び掛かってくるヴァーミンは居ない。
 銃を片手に携帯し、油断しないようにしながら中を覗き込むアクア。
 やってきた若葉が棒をそっと突っ込んでみる。
 アクア曰く。
(ワカバさんがサーチ、僕がデストロイですかね!)
 結構物騒だった。
 探っていた若葉が首を傾げた。何か違和感を感じ、そっと棒を抜けば……。
「わっ」
「わわ! ワカバさん、危ないですから噛みつかれそうになったら避けなきゃ駄目ですっ」
 物凄い勢いで飛び出してきたヴァーミンは、なんとか若葉の指先を齧り切る前にアクアの脳天を狙った銃撃により一旦穴の中に引っ込む。
「はは、モグラもどきの1本釣りだったね」
「モグラもどきの1本釣りー、じゃないですよ!」
 トランスしてない状態では、流石に一発や二発程度では仕留めれそうにない。
「ワカバさん、トランスを!」
「そうだね」
 貴方の思い、お借りします。と力を与え、もう一度棒を入れてみるが、流石に同じ手には引っかからないのか。
「ちょっと貰いますね」
 ダメ元で垂らしてみた水に、飛び出てきたのは先ほどとは違う感じのモグラもどき。
 ひゃぁぁっとでも言いそうなその表情と、わたわたしているその姿をみれば、これが本来のモグラもどきなのだろう。
「……」
「ワカバさん?」
 ちょっとだけもふもふを堪能しても問題はないだろう。
 もふもふを少し堪能した後、先ほどのヴァーミンも無事倒し、再び探し始めるのだった。



 秀とイグニスは、でたらめに探しても効率は悪いと、盛り上がっている所を重点的に見ながら一緒に歩いていく。
(耳が良いっていうしな……)
 とりあえずタムタムで地面を叩きながら歩く秀の隣。
 タムタムと音がする。
 見つけた穴に紐で括ったミエル・ナヴェを垂らすイグニス。
「で、お前は何やってんだ」
(うーん、もぐらさん上手く穴から出てきてくれれば楽なんですけど)
「これで釣れませんかね!」
 きらきら、わくわくとそういうイグニスに、秀が苦笑を漏らす。
「それで捕まえられたら苦労しないだろうよ……」
 だがしかし、どうなるか分からないのが現実 というもので。
「……あ、モグラもどき!」
「まじか……見た目に騙されるなよ? そいつ噛むぞ」
 手ごたえを感じたイグニスが釣り上げた物は、鋭い牙でミエル・ナヴェに噛みつくモグラもどきだった。
「結構かわいいですよー」
 ちょいっとお腹を触ろうとした瞬間には、がぶりと指先をかまれて。
「ほら、言わんこっちゃない!」
「く、やんちゃさんですね!」
 イグニスの一撃を受けたモグラもどきは、ぽぉーんと吹っ飛ばされて地面に転がる。
「普通の子は温厚といいますし、どうしてヴァーミンになってしまったんですかね? 心当たりないか後で聞いてみましょうか」
「そうだな……その前に、本当に気をつけろよ」
 そう言って、釘をさすのは忘れない秀だったの だった。


「みなさーん、休憩如何ですかー?」
 もう一戦のその前にと青年の声が響き渡った。 
 大声で叫ぶ青年が持ってきた道具は、戦闘の邪魔にならぬよう、纏めておかれていた。
 その言葉に集まってきたウィンクルム達は、今の所の成果を伝え合う。
「どうだった?」
 タイガがゆらりと尻尾を揺らしながら問いかければ、答えたのは若葉だ。
「俺たちの所は2体だよ」
「こっちも丁度2体だな」 
 秀がそう言い、確認するようにイグニスを見れば、頷かれる。
 一歩、先に行くのはセイリュー達だ。
「じゃぁ、一番多いのは俺たちのとこかな?」
「みたいだね」
 やはり、野菜にかける思いが強いからだろうか。
 セラフィムと若葉と秀の所は2体ずつ。
 ここまでで倒せたモグラもどきは総勢9体。
 そうなると、残りは6体だ。
 あと少しのようにも見えるが、ここまで盛大に仲間を狩られたヴァーミン達の警戒も強くなっているだろう。
「勝負はここからだな」
 タイガの尻尾がゆらりと揺れた。
 まだ、逆転を狙える。
 戦闘的にも数を競い合う勝負的にも、ここからが本番のようだった。 
「みなさん、一先ず此方をどうぞ!」
 これはおまけですよ! と差し出されたミエル・ナヴェは、あっさりとした塩漬けだった。
「汗もかいたでしょうし……塩分もお取りくださいね!」
 どうぞ、と食べやすいように爪楊枝で刺された状態でアクアに差し出される。
 ぱくりと食べればあっさり とした塩味が、染み渡るようにも感じた。
「ん、美味しいですワカバさんも!」
 アクアが笑顔で言えば、若葉も誘われるように一つ貰う。
「美味しいね」
「ふむ……」
 秀も貰って一口食べれば、何か思う所があるようで。
 イグニスが首を傾げるのを見て、なんでもないと首を振った。
 一応青年に原因に心当たりがないか聞いてみるが、何もないようだった。
「あぁ、確かに美味しいねぇ。これは猶更守らないと」
 ラキアが言えば、セイリューも頷いた。
 味わったからこそ、余計に思いは深くなったのかもしれない。
「タイガも、ほら」
「サンキュー」
「美味しい。そのまま食べれるなんて醍醐味だよね」
「おう、疲れた後は特にうまい!」
 仲睦まじく食べて いれば、青年がほんわかと皆を見つめていた。
 邪魔になる前に、と再び戻って行った青年を見送って。 
 本格的にミエル・ナヴェを楽しむのは終わってからだと、再び別れてやり始めるのだった。



 再び散ったウィンクルム達は、最後の追い込みに掛る。
 ここで気を抜いたら全部水の泡になってしまうだろう。
 残りは6体。
 ここからはどこがどれだけ倒せるかにかかってくるだろうか。
「ん、美味しいな」
 ミエル ・ナヴェをもぐもぐしながらも、セイリューの視線はきちんとヴァーミンを探していて。
 畑から取り出されたばかりのソレは、先ほどとは違いふんわりとした甘さと瑞々しさが口の中に広がる。
 ラキアと探すが、やはりそろそろ警戒を強めているのだろう。
「あ、また見つけた」
 一先ず穴から出てこないことを確認しつつ、穴を潰していく。
 秀とイグニスは、地道に探していた。
「そろそろ、見つからなくなってきましたね……」
「なーんか、一気に見なくなったんだよなぁ?」
 虫の知らせとでもいうのだろうか。
 モグラもどきすらも姿を見せなくなっているように感じる。
「はて、一体なんだろうな?」
 その答えは、セラフィム達の所だった。 
 大きく足踏みして誘きだそうとするものの空振りなタイガをみて、ごそごそと何かを取りだす。
「最後の仕上げと行こうか」
 セラフィムが取り出したのは催涙剤だ。
 発炎筒や爆竹はヴァーミンはともかくモグラもどきと場合によってはミエル・ナヴェに少々危ないか、という判断によりそれになったのだったが。
「いったよ!」
 飛び出してきたヴァーミンを攻撃しながらタイガが抗議する。
「せーらー。やるなら最初にしてくれよー」
「え。だって一斉に出てきたら流石に大変だろ」
「なるほど」
 きょとんと見詰めるセラフィムに、タイガが頷きながらも胸が高鳴る。
(かわい!)
 この高鳴りは、倒してるからだけではないだろう。
 ちなみに、若葉とアクアは再びモグラもどきとご対面していた。
 なんだかやけに助けてぇぇという瞳に見えなくもない。
「どうしたの?」
「どうしたんでしょうね、ワカバさん」
 2人顔を見合わせるが、答えは今の所分からなかった。

 それから暫し立った後……自然と集まった皆は数を確認しあう。
「俺達のとこは駄目だったな」
「1体だけでしたね」
 秀の言葉を捕捉するようにイグニスが微笑しながら言う。
 結構頑張ったつもりだったのだが……。
「僕達は、1体ですね」
 アクアがそう言えば、若葉も肯定し頷く。
「その代わり、普通の子には会えたんだけどね 」
 もふもふ具合を思い出して言えば、セイリューがちょっと眦を下げていう。
「最初に飛ばしすぎたかな……」
「1体捕えたんだけどね」
 ラキアも微笑している。
 セラフィムがはんなりと微笑みながら、そんな皆に唇を開く。
「こっちは最後のが効いたのかなぁ」
「こっちは3体だったぜ!」
 タイガがにっと笑い数を報告すれば、皆から驚きの声が上がった。
「で、お前さんたちは何をしたんだ?」
 一体何をしたかと言う秀の問いに、セラフィムが微笑み答える。
「穴から催涙剤をちょっとね」
「ヴァーミンといえども辛かったかもしれないね」
 若葉のぽそりと言った言葉に、そうかもしれない……と声には出さずにアクアは思ったのだった。
 あの時のモグラもどきは、きっとそれに巻き込まれてしまったのかもしれない。
 最終的に勝ったのは、催涙剤を使ったセラフィム達の所だった。
 勝ったら何も考えていなかっただろうタイガの代わりにミエル・ナヴェを差し出そうとしていたセラフィムのミエル・ナヴェは、そのままお持ち帰りに回ることになって。
「とにかく、もう一周してみようか?」
 ラキアの問いかけに、セイリューが頷く。
「よし! じゃぁ今度は競争とか関係なしにきっちりと回ろうぜ!」
 そうして、最後の確認のために回るのだった。


 やがて、青年もやってきた。
 そわそわと皆がぽつりぽつりと帰ってくるのを心配そうに見詰めている。
「あの……大丈夫でしたか?」
 全員が集まった所で、再度そう言って心配そうに問いかければ、タイガがにっと笑って安心させるように大きく頷いた。
「ほら、誰も怪我してないぜ!」
「それに、畑の被害もそんなにないみたいですよ。ちょっとだけ穴が開いてましたけれど」
 アクアも見て回って確認していた被害の方も、ヴァーミンが食い散らかしていただろう所以外は特になかった。
 穴の方はヴァーミンと、モグラもどきも開けたものかもしれない。
「あぁ、それなら俺が多少均しておいたよ」
 少々畑に穴が開いていたがそれは、ラキアによって綺麗に均されている。
「トンネルが多いとカブの生育には良くないからね」
 と言うラキアに、なるほどと、頷くアクア。
 青年が感涙したように震える声でお礼をいう。
 意外と大変な作業なため、かなり喜ばれたようだ。幾ら共存関係を築いていても、ある程度の均衡は大事である。 
「これで全部かな?」
 若葉がそう言って、今一度確認するように皆に問いかける。
 15体きちんと倒していたものの、最後とばかりに広大な畑を見回った皆は、大丈夫だと頷いた。
「もう安心していいですよ」
 改めてそういってイグニスが青年にと報告する。
 青年が嬉しそうに笑い、頭を何度も下げる。
 これでミエル・ナヴェが食い散らかされることはないだろう。
「どうぞ、お持ち帰りくださいね」
 持ち帰るという皆のミエル・ナヴェを袋に入れて渡しながら、青年が言う。
 受け取った袋を手に秀がふむ、と考え込む。
「何作るか……」
「あ、新メニューですか?」
 どう使うのかと気になるイグニスに、秀が微笑を零した。
「ん? いや店には出さんぞ。一日頑張ったからな、お前に作ってやるよ」
 その言葉に、ぱぁっと笑顔が毀れる。
「私に!? 楽しみです!」
 その笑顔に、秀も自然と笑顔が毀れるのだった。
 ……もっと笑顔になるような、そんな料理を出そう。そう、思う。
 傷ついた野菜を間引きして貰う。出荷に適さなくても、味は変わらないのだから……とラキアは袋を握る。
「自宅で煮物にして食べてみたいよ」
(セイリューも食べてくれるだろうしね)
「楽しみだな」
 セイリューがわくわくとした顔で頷いた。
「で、セラはどうするんだ、それ?」
 結局すべて持ち帰れるソレを見て、セラフィムが首を傾げる。
「一緒に、食べようか」
 料理は、2人で決めればいいというのにタイガが大きく頷いた。
「俺達はどうしようか」
「コンポートにしても美味しそうです」
 アクアの笑顔に、若葉が頷く。
 そんな皆に、青年も嬉しそうに笑い、頭を大きく下げた。
「これで、今年も美味しいミエル・ナヴェをお届けできます!」
 きっと今日守られたミエル・ナヴェは食卓へと上るだろう。
 そして、それを囲んだ皆は笑顔になるはずだ。
 ウィンクルム達は、そんな人たちの笑顔も守ったのだった。 



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 如月修羅
エピソードの種類 アドベンチャーエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル 戦闘
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 5
報酬 少し
リリース日 09月25日
出発日 10月03日 00:00
予定納品日 10月13日

参加者

会議室

  • プランは出せた。
    楽しくモグラ叩き&ミエル・ナヴェ祭りできているといいな。

    タイガもチッチの焼き肉祭りおつかれさーん!
    今度はミエル・ナヴェの食い放題だぞ!(違

  • [5]初瀬=秀

    2014/10/02-10:44 

    更にギリギリ参加。初瀬と相方のイグニスだ、よろしく。

    あー、うちのが「競争ですね!負けませんよ!」と張り切ってるんでな。
    ちなみにノープランらしい。出発までにいい作戦思いつけばいいがな……
    俺もミエル・ナヴェのお持ち帰りを目論みつつ筋肉痛にならん程度にやらせてもらうわ。

  • [4]セラフィム・ロイス

    2014/09/30-20:55 

    :タイガ
    よっしゃーー!!サンキュー!張り合い出たぜ!人数も増えたし♪
    あ、これから増えるんならの面子にも向けるけどあくまで「のった!」って
    思ったらで、無理強いはしねーからな

    んっじゃま。どれだけ多く倒せるかで
    ちりじりスタートかな~


    あっと。セイリューはチッチの時の肉合戦おつかれさん。また次は勝負だ!
    (PL:主にプランに書いてもらえて再現敵わなくて残念でっ・・・!)

  • [3]木之下若葉

    2014/09/30-19:39 

    ぎりぎりの参加でごめんね。
    木之下とパートナーとアクアだよ。
    揃って宜しくお願い致します、だね。

    俺達は穴から穴を辿って飛び出して来ないかな―って探すつもり。
    穴見つけたら「無人ですかー」って感じで棒とかでつついてみたりしながらさ。
    噛みつかれたら……御愛嬌と言う事で。

    競争か。いいんじゃない?
    ちょっと面白いかもね。

  • セイリュー・グラシアだ。今回もヨロシク。
    モグもどきがどんどん飛び出してくれれは楽しいんだけどな。
    地道にモグラ道を踏みつぶすところから始めようと思う。
    ラキアはミエル・ナヴェのお持ち帰りも、もくろんでいるらしい。

    競争か・・・それも良いかもな・・・・。

  • [1]セラフィム・ロイス

    2014/09/29-22:34 

    ううん。まだ一人だけどとりあえず挨拶でも
    僕セラフィムとシンクロサモナーのタイガだよ。依頼としては難易度はあまり高くなさそうだけど
    不意打ちとか気をつけないとね。こちら足踏みとか主張して積極的にいくつもり

    タイガはもぐら叩きの競争をしたいとかいってるけれど・・・(ちらり)


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