エレベーターパニック(うち マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 むかしむかしのそれまた昔、と大げさに言う程でもない少し前の出来事である。

 久し振りの休日、ウィンクルム達は神人が言い出したのか精霊から行こうと誘ったのか定かではありませんが気晴らしにタブロス市にあるデパートへ買い物に行く事になりました。
 パートナーに服を買ってあげたり、ウィンドウショッピングと言う名の冷やかしをしたりときっと神人も精霊も満足したりしなかったりして色んな店を回った筈です。

 そんなデパートなのですがエレベーターが最近調子が悪いみたいで時々中途半端な位置で止まってしまうようです。

 どうやら30分から1時間程エレベーターの個室の中に閉じ込められてしまうようです。
 えぇ、貴方にも心当たりがあるでしょう。
 そうです。
 ウィンクルム達の買い物の途中、若しくは帰りにエレベーターに乗るとガタンと音がした後にエレベーターが止まってしまいました。

 その時の記憶を思い出して下さい。
 エレベーターの個室の中は貴方達だけでしたか?
 他の客は乗っていましたか?
 貴方達は何か荷物を持っていましたか?
 個室でしか話せないことを話したりしませんでしたか?

 エレベーターの個室内であった楽しかったり恥ずかしかったりした出来事を振り返ってみましょう。

解説

 ●目的
 止まってしまったエレベーターの中でイチャつけ。

 ●記入事項
 エレベーターの中の状況。(他の客は居たのか等、両者の同意があるなら他のウィンクルムと個室に同乗していても構いません)
 エレベーターの中で話した内容。(重要)
 買い物の内容。(これから買うもの、または既に買ったもの等)

 ●買い物に使ったお金
 200Jr程買い物に使ったものとします。

ゲームマスターより

毎度プロローグ閲覧ありがとうございます。

エレベーターが突然止まると困りますよね。
でも個室に閉じ込められた時にしか出来無い事なんかをやっちゃって下さい。
ぁ、トイレは我慢して下さい。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

手屋 笹(カガヤ・アクショア)

  エレベーター止まってしまったみたいですね…。

緊急用の通話装置でこちらの状況をお伝えして
救助を待ちましょうか。
床にハンカチを敷いて座って待っていましょう。

(カガヤと二人だけという状況は
久しぶりかもしれませんね…)

そういえばカガヤはまた運動用にTシャツ買ったのですか?
どういう意味ですかそれ…

痛い…?
(わたくし身長の事言われるのが嫌でやってしまっていましたがちゃんと嫌だと言った事ありましたっけ…?)

カガヤ…わたくしがそうしてしまうのは…
身長の事言われたくないからです…
…自分の背が低いのがすごく嫌なんです…

もうやりませんわ…
痛くしてごめんなさい。

何故お姉さま…?
わたくしはわたくしで居ていいのですか…?



七草・シエテ・イルゴ(翡翠・フェイツィ)
  買い物の途中、多くのお客さんが降りたので、安心してエレベーターに乗ろうとしました。
そこに後ろから、クリアランスセール帰りのお客さん達が我先にと乗り込んできたので、私達は壁際に押しやられながら乗車。
「こんな密着、初めてです・・・・・・」

エレベーターが止まった時、
私が買ったケーキとティーセットは、翡翠さんの頭の上。
その間、私は押しくらまんじゅうのように揉まれながら、
翡翠さんと向かい合い、半強制的に密着したまま。
思わず、鼓動が聞こえてきそうでした。
「翡翠さん、意外と筋肉あるんですね」って呟いたのは内緒。
本人に聞こえていたら、胸が張り裂けそうです。

翡翠さん
エレベーター動いたら会計して早く帰りましょうか


ひろの(ルシエロ=ザガン)
  人酔いで気分が悪い。
人見知りなので、狭い空間に知らない人と長時間は苦痛。

ルシェの行動に目を瞬き頷く。
視界がほぼルシェで埋まったので、精神的に大分楽に。

近さに少し気後れ、首を小さく傾げてから視線を下げる。(言っても大丈夫かと少し躊躇
「……ルシェは強い、よね?」(周囲に聞かれたくない為にすごく小声

「油断も、しないよね」と一度ルシェを窺い、
「だったら、大丈夫だと、思って。
 ルシェが、武器しまった後なら」
私が近づいても。大丈夫かな、って。

(エレベーター、まだ動かないのかな)
意識が逸れた途端の密着に、びしりと硬直。荷物が手から抜け落ちる。
状況に混乱しながら(あったかい)と再び意識が逸れる。

秋服購入の帰り



ティアーゼ(リンド)
  1人で行こうとしたがリンドが勝手に着いてきた
服を買った帰りでエレベーターには2人だけ

え、嘘。止まりました?
何で知ってたのに乗ろうと思ったんですか!
いえ、全く面白くないんですが…

密室に二人と気づきじわじわ距離を取る
…暇ですね
ところで何で今日はついてきたんですか?
リンドさんは何も買ってないですし用事があったとも思えませんが
ちょっと、それセクハラですよ!は、はきませんから!

でもリンドさんがいてよかったかもしれません
いつ動くかも分からないこの状況で1人は心細かったです

…はっ
今はこんな状況なのでちょっと油断しただけですから!
降りたら今日の事は忘れてください
それに距離が近いというか頭を撫でないでください!


桜倉 歌菜(月成 羽純)
  アドリブ歓迎

買い物の内容
羽純くんを誘って、デパートにマロンケーキ(一個100Jrを二人で一個ずつ)を食べに♪
数量限定の評判のケーキなんです、楽しみっ

中の状況
最上階の目的の喫茶店に行こうとしたら、エレベーターが止まっちゃいました
しかも、羽純くんと二人きり…!

話した内容
ど、どーしよう、羽純くん!

(テキパキ通報してくれる様子に頼もしさとトキメキ)

…あ、あのね、羽純くん
怖いから、少しだけ傍に寄ってもいい?

ごめんね
折角付き合ってくれたのに、こんな事になっちゃって

…キャー!

(照明が消えちゃった
思わず羽純くんに思い切り抱きついて
背中を撫でて貰ったら…凄く安心出来ました
私、彼が好きだなぁって)

有難う、羽純くん



 デパート、そこは行けば欲しい物は大体手に入る店舗の集まり。
 A.R.O.A.本部に割りと近いこの大型デパート。


 ●午前11時
 今日は久し振りの休日、『桜倉 歌菜』はパートナーの『月成 羽純』を誘ってタブロス市のデパートに訪れていた。
 目的はデパート内にある喫茶店で今話題になっている数量限定のマロンケーキ。
 評判のケーキが楽しみなのも然ることながら羽純と一緒にお出掛け〈デート〉と言うだけでも歌菜は顔の表情筋が緩んでしまうようだった。
「(歌菜のやつ、凄い嬉しそうだな。まぁそういう俺もマロンケーキが楽しみな訳だが……)」
 羽純も羽純で純粋にマロンケーキの事で頭が一杯のようだ。
 お互いに心ここにあらずと言った感じでデパートに入り、早速入り口近くのエレベーターに乗り最上階の喫茶店へと向かう。

 ガタン。

 不穏な音と不自然な揺れが歌菜と羽純の乗ったエレベーターから聞こえてくる。
「きゃ!」
 驚く歌菜とは正反対に冷静な羽純はエレベーターのインジケーター〈階数表示器〉を見る。
「……止まってる、みたいだな」
「えぇっ!? ど、どーしよう、羽純くん!」
「落ち着け、歌菜」
 アワアワと忙しない歌菜にそう言いながら、羽純は緊急用のインターホンで管理室に連絡を取ってみる。
 程なくしてインターホンは繋がった。
『こちら管理室です』
「すみません、なんかエレベーター止まっちゃったみたいなんですけど」
『! 暫くお待ち下さい』
 それを最後にインターホンは切れ、羽純はふぅと一息吐いた。
「(羽純くんカッコ良い……)」
 テキパキ通報する羽純の頼もしい様子に歌菜はほぅと感嘆の息を吐いた。
「えーと私達、これからどうすればいいの?」
「ん? 連絡はしたから助けが来るまで待つしか無いぞ」
「う、うん。分かったよ……あ、あのね、羽純くん」
「なんだ?」
 怖ず怖ずとした歌菜の声に羽純は首を傾げる。
「その、怖いから少しだけ傍に寄っても良い?」
 閉鎖空間に囚われて不安なのだろう、歌菜は身体を縮こまらせている。
「(怖いのか?)……構わない、来いよ」
 そう言って羽純は萎縮した歌菜の肩をポンと手で叩いた。
「うん……ごめんね。折角付き合ってくれたのに、こんな事になっちゃって」
「どうして謝る? エレベーターが止まったのは別に歌菜の所為じゃないだろ?」
 しゅん、とする歌菜を元気付けようと笑い掛けると―――。

 プツン。

 エレベーターの照明が突然消える。
「キャーッ!」
 歌菜は悲鳴を上げ、思わず近くに居た羽純に抱きついた。
「……うおっ! 照明が切れたみたいだな」
 その突然の出来事に流石の羽純も焦る……が、震える歌菜を突き放す事等は出来ず。
「おい、歌菜。大丈夫、大丈夫だから、そんなに怯えるな。俺が居る……大丈夫だ」
 歌菜を安心させるように声を掛け、背中を優しく撫でてやると消えていた照明が点いた。
「……ほら、照明も戻ったしエレベーターも動き出したみたいだぞ」
「う、うん。そうだね(ふぁ、背中を撫でて貰ったら凄く安心出来ちゃった。やっぱり私、彼の事が好きなんだなぁって実感しちゃったよ……)」
 そんな事を考えて慌てて離れる歌菜を見て羽純はくっ、と笑う。
「歌菜の顔、真っ赤だぞ」
「……え、えへへ(ありがとう羽純くん)」
「今日は付いて来て良かったな。歌菜一人だったら、泣いて大変だっただろうからな」
 はにかむような歌菜の笑みとそれを誂うような羽純の笑みと共に再びエレベーターは予定通り、上へ上へと登り始めた。



 ●午後14時

 折角の休日、『ティアーゼ』は羽根を伸ばす為に服を買いに来ていた。
 本来は一人で優雅なお買い物、となる筈だったのだが『リンド』が勝手に着いてきたので仕方なく行動を共にしていた。
 その帰り、二人は例の調子の悪いエレベーターに乗ってしまう。

 ガタン。

「え、嘘。止まりました?」
「ああ、そういえば最近ここのエレベーター調子悪いんだって。あんまり目立たなかったけど、さっきそんな事を書いてる看板があったよ」
 まさか本当に止まるとは、とリンドは笑う。
「何で知ってたのに乗ろうと思ったんですか!」
「滅多に出来ない経験だし、面白くない?」
 悪びれない態度でニコッとリンドは笑うので。
「いえ、全く面白く無いんですが……」
 ティアーゼは溜め息混じりにそう返すしかなかった。
「……とりあえず、エレベーターが止まってしまった以上、助けが来るまで待つしか無いですね」
「ふふ、そうだね」
 ここでティアーゼはある事に気付いてしまう。
「(私、今リンドさんと密室で二人きりだ……)」
 非常事態だったとはいえ、リンドに近付き過ぎていた事に気付きゆっくりと後退る。
 それを見てリンドは。
「(ぁ、一応異性だとは思われてるんだね)」
 と、一人で納得しつつ、状況が状況なのであまり刺激しない方が良いと判断してその事には触れない。

「……暇、ですね」
 話題に詰まったのかティアーゼはぽつりとそう呟いた。
「ところでなんで今日は着いてきたんですか? リンドさんは何も買ってないですし、用事があったとも思えませんが……」
「ん? ほらティアちゃんていつも制服じゃん? 今日だって学校帰りで制服だし……。服を買うって言ってたからどんな服を買うのか気になってさ」
 手を頭の後ろで組みながらリンドはそう言う。
「なっ、ちょっとそれセクハラですよ!」
「でもさ、ティアちゃんまだ若いんだしもっと短いスカートなんか穿いても良いんじゃないかなー、なんて僕は思うんだけど?」
 くるりとその場で回りながら付け足す。
「は、穿きませんから!」

 そんな話をしてる内に10分程経ち。
「でもリンドさんが居てくれて良かったかもしれません。いつ動くかも分からないこの状況で一人だったら心細かったと思いますから……」
 ティアーゼは俯き気味にぽつりとそう言った。
 そんなティアーゼのしおらしい様子にリンドは少し近付き、下がり気味の頭に手を置いて撫でてみる。
 ハッとしたティアーゼはぴょんと後ろに跳んで距離を取りつつ口を開く。
「……ちょ、ちょっと何してるんですか!?」
「あ、動き出した。大丈夫だよ、撫でた所で減るものじゃないし」
 同時にエレベーターも動き始め、リンドは柔らかく笑う。
「い、今のはこんな状況なのでちょっと油断しただけですから!」
「ふふ、いつものティアちゃんに戻ったね」
「~ッ! お、降りたら今日の事は忘れて下さい!」
 油断したとはいえ迂闊な事を言ってしまったのは自分だったのでそれ以上強い事は言えないティアーゼ。
「それに距離が近いというか……ちょ、また頭を撫でないで下さいってば!」
「あははっ、もうティアちゃんは注文が多いなー」
 朗らかに笑うリンドの笑い声を乗せて、エレベーターは出口へと降りて行った。



 ●午後15時

午後15時、またもエレベーターは止まる。
 今度の乗客は『手屋 笹』と『カガヤ・アクショア』だ、お馴染みのガタンと言う音と揺れが二人を襲う。
「っと、どうしたんだろ?」
 カガヤは急な揺れで笹が転ばないようにさり気なく支え、エレベーターの様子がおかしい事に気が付く。
「エレベーター止まってしまったみたいですね……。この緊急用のインターホンで連絡をして救助を待ちましょうか」
 笹は状況を掴むなり、冷静に通報し終えると、落ち着いた感じで床にハンカチを敷く。
「焦っても仕方ありませんし、座って待つ事にしましょう」
 カガヤに座るように言いながら、笹はハンカチの上に腰掛ける。
「そうだね。とりあえずは待つしか無いしゆっくりするかー」
 どっこいせ、と笹の隣に座る。
「(カガヤと二人だけという状況は久し振りかもしれませんね……)」
 しかし隣り合わせで座る事で、二人きりという状況を強く意識してしまったのか、笹は何か話題が無いかと頭を捻る。
 そして、今日買った買い物袋に視線をやり。
「そういえばカガヤはまた運動用のTシャツを買ったのですか?」
 やや呆れ気味に言ってみる。
「え、Tシャツ? そりゃもっともっと早く動けるように筋トレしないとだからね~、笹ちゃんのパンチを避けられるように」
 にひっと笑うカガヤ。
「どういう意味ですかそれ……」
「だって笹ちゃんのパンチ痛いんだもんな。避けないと身が持たないっていうか、ははっ」
 軽い笑い話のような感じで話すカガヤだったが、逆に笹は何か思う所があったようだ。
「(痛い……? 今までわたくし、身長の事を言われるのが嫌でやってしまっていましたが、それをちゃんと嫌だと言った事ありましたっけ……?)」
 俯き、少し考えた後に。
「カガヤ……わたくしがそうしてしまうのは、身長の事を言われたくないからです。自分の背が低い事が凄く嫌なんです……」
「笹ちゃん……あ、そうか……(笹ちゃんはお姉さんに……)いや、俺も気付かなくてごめん」
「……分かってくれましたか。わたくしの方ももうやりませんわ、痛くしてごめんなさい」
「ぁ、いや、さっきはああ言ったけど、実はそれほど痛いって訳じゃないんだ。けど……この際だし本音を言うけど、そんなに気にしなくて良いと思うよ。笹ちゃんはお姉さんじゃないでしょ」
「何故お姉さまが……?」
「笹ちゃんは笹ちゃんらしくしてて良いんだよ」
 隣り合って座っている笹をカガヤはぎゅっと抱き締める。
 それは笹が何処かに行ってしまわないようにと焦る気持ちと、本人すらも気付かない程度のほんの少しの嫉妬心。
「わたくしは、わたくしで居ていいのですか……」
「……あぁ、良いんだ」

 ポーン。

 そんな音と共に、いつの間にか動いていたらしいエレベーターの扉が開く。
「は?」
 外にはエレベーターに乗ろうとしていた親子が。
「ママー何してるのかなー?」
 勿論、中はエレベーターが動いていた事に気付いてなかった笹とカガヤが(しかも座り合って抱きついてる)。
「なっ! まっ!?」
 思考が追いつかずに居た笹だったが奇声を上げてしまいながらもガバっと立ち上がり、急いでカガヤの腕を引きながら平静を装ってエレベーターから脱出した。



 ●午後16時

 買い物の途中の『七草・シエテ・イルゴ』と『翡翠・フェイツィ』はエレベーターから多くの客が降りるのを確認し、安心してエレベーターに乗った……筈だった。
 しかし、空いているエレベーターを見つけたのは自分達だけである筈がなく、シエテと翡翠の後ろから雪崩れ込むようなクリアランスセール帰りの客の群れがエレベーターへと押し寄せて来る。
「わ、わ、わ……」
 おっとり気味のシエテではその人の波に抵抗出来ず、流されるままに壁際へ。
「シエ、手!」
 寸での所で翡翠が手を伸ばして引き寄せたお陰でバラバラになる事はなかったが、それでも気が付いたら客で密集したエレベーターの奥に翡翠と密着する形で乗車する事に。



 そして、シエテと翡翠はこの混雑の所為で気付いていなかった(気付けなかった)が、実はこのエレベーターには同じウィンクルムである『ひろの』と『ルシエロ=ザガン』も同乗していた。
「むぎゅう……」
 ただでさえ人の多いデパートで買い物をして人酔いで気分が悪いのに、殆ど身動きすら取れない状態のエレベーターに乗せられる事になるなんてまさに青天の霹靂である。
「大丈夫かヒロノ?」
「う、ん」
 ルシエロが居る分まだマシな方ではあるが、これが一人ならトラウマになっていたかもしれない。



 でもまぁエレベーターだし直ぐにこの混雑も捌けるだろう、などと翡翠が高を括っていたそんな時の事である。

 ガタン。

 例によって例の如く、エレベーターが止まってしまう。

「私、こんなに混雑した(エレベーターに乗る)の初めてです……」
「はは、何か誤解しそうな言い方だな……。とはいえ、シエ。キツくない?」
 翡翠としてはぐっちゃりと言うかむにゅっていうか、なんかもうそんな感じで別の意味で身体から嫌な汗が出てきてる。
「だ、大丈夫です……」
 とは言ったものの、もう殆ど抱き合うというか、お互いの鼻息とか当たりそうな位置に押し込められている状態だ。
 少しの間なら耐えられない事もないが、エレベーターが止まったとなると暫くは動かない、つまりこの状態が暫く続くという事だ。
 翡翠はシエテが買ったケーキとティーセットが潰れたり割れたりしないよう買い物袋を頭の上に置いた状態でどうにか動けないかと色々試してみる。
 しかし、どう動こうがシエテの柔らかい身体を擦るだけだ。
「(ぅぐぐ……)」
「(なんだか押し競饅頭みたい……。ぁ、でも翡翠さんって意外と筋肉あるんですね)」
 こんな半強制的に密着した状態だとお互いの鼓動が聞こえてきそう、なんてシエテが考え始めていると。
「なぁ、シエ」
 当の翡翠が話し掛けてきて一際大きく鼓動を高鳴らせてしまったかもしれない。
「(まさかさっき考えてた事、口に出してた……?)」
 徐々に顔が熱くなっていくのを感じる。
「本当に俺が怖くないの?」
「へ? な、何でですか?」
 どうやらシエテが考えていた用件とは違ったらしく、安堵の息を吐いてそう答える。
「何でって、前に触られるのあんなに嫌がってたから、本当は嫌がってるんじゃないかと思って……」
「それは、私の……いえ、なんでもないです」
「それってどういう……?」
 本当の原因は自分にある、しかしそれはまだ言いたくない、言葉を濁すシエテだったがこれでは翡翠に伝わらない、だからシエテは少しだけ勇気を出して。
「ふふ、心配しないで下さい。それに本当に嫌だったら買い物に誘ったりなんかしませんよ」
 と、だけ伝えた。



 エレベーターが止まったと聞いたひろのは目が回りそうな気持ちだった。
 人見知りの激しいひろのは知らない人と狭い空間に長時間居るのは苦痛でしかない。
 このどうしようもない状況に足元が崩れていくような感覚を味わう。
「(……少しやばいか?)」
 即断即決、壁際のルシエロは無言でひろのを自分の腕の中に(壁に肘を立てて)囲うよう自分達の位置を変え、ひろのを壁際に。
「これならまだマシだろう?」
 大勢の中をもぞもぞ動いたルシエロに抗議の視線が突き刺さるが、ルシエロはそれを物ともせずニッ、とひろのにだけ笑顔を向ける。
 ルシエロの突拍子もない行動にひろのは目を瞬かせる。
 しかし、視界が殆どルシエロで埋まったのでひろの的には大分楽になった。
「前から聞こうと思っていたが……」
 近い顔を更に近づけながらルシエロが呟く。
「オマエ、何で敵に近付く」
 顔の近さに少し気後れするが、小さく首を傾げ、視線を下げながらひろのは口を開いた。
「ルシェは強い、よね?」
 周りに聞こえないようなか細い声で一言だけ。
「……? ああ」
 よくは分からないが怠らない努力をしている自負のあるルシエロはそれを肯定した。
「油断も、しないよね?」
 ちらりと下げていた視線を一度だけ上げ。
「だったら、大丈夫だと、思って。ルシェが、武器仕舞った後なら……」
 私が近付いても大丈夫かな、って最後の言葉は言葉になってなかったかもしれない。
 ルシエロは一人満足そうに頷いたひろのにこれ以上聞く事が出来なかったが、それでも自分を信頼しているという事だけは分かり、小さく笑った。
 気分も良いし、何も考えずルシエロはそのままひろのを抱きしめた。
「(エレベーター、まだ動かないのかな)」
 意識が逸れた途端のルシエロからの密着に、ぴしりと石化したように硬直。
 荷物が手から抜け落ちてしまう。
 しかし、このよく分からない状況でひろのはあったかい、と感じてしまった。

「(子供は苦手の筈だったが……)」
 抱きしめた時の収まりの良さにルシエロの顔にまた自然と笑みが浮かんでいた。

 暫くして動き始めたエレベーターを降り、シエテ達もひろの達もデパートを後にした。



 ●後日談

 例のデパート、流石に一日に何回も止まってしまうエレベーターの所為で客足が遠退きかけたらしいが、修理と同時にセールを行って事なきを得たらしい。
 機械類のメンテは定期的に。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター うち
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 09月20日
出発日 09月25日 00:00
予定納品日 10月05日

参加者

会議室

  • [14]ひろの

    2014/09/24-23:16 

    ルシエロ=ザガン:

    >翡翠
    すまん。あまりよく覚えて無くてな。
    他の客までははっきりと覚えていない。

    (こちらの都合で振り回してすみません)

  • >ルシエロの兄さん

    まぁ、いつ動くかわからないし、じっとしているよりはいいかなと思ってね。
    メタ的には、本来の目的とそれるけど。

  • [12]ひろの

    2014/09/24-21:23 

    ルシエロ=ザガン:

    >翡翠
    前の任務のことで少し会話をな。

    荷物以外って、「しか」と言いつつ随分持ってきてるじゃないか。

  • >ルシエロの兄さん
    最初に乗ったときはね。
    でもエレベーターが停止して気がついたときは、ルシエロの兄さん達しかいなかったなぁ。
    そっかぁ、結局他に乗り合わせたお客さんは、全員降りたんだな。

    ルシエロの兄さん達、あの時、中で何していた?
    俺、荷物以外はトランプとかウノとか、双六セットとか王様ゲームの道具しか持ってきてなかったんだけど。


  • [10]ひろの

    2014/09/24-20:09 

    >翡翠
    デパートでも、いつも人が多いわけじゃない。
    偶々乗るヤツが少なかったんだろう。

    ……翡翠のときは人が多かったのか?

  • >ルシエロの兄さん
    確かにあの時間帯は、俺達だけかなと思う
    笹の嬢ちゃん達、ティアーゼの嬢ちゃん達、歌菜の嬢ちゃん達は
    違う時間帯か別室のエレベーターみたいだから。

    だが、デパートなんだし
    俺達が乗った後から、他のお客さんもなだれ込むように乗ったんじゃないかと思ってね。
    気のせいかな?

  • [8]ひろの

    2014/09/24-19:24 

    >翡翠
    オレ達とオマエ達だけじゃなかったか?
    他に乗り合わせた客はいなかったと思ったが。

  • >ルシエロの兄さん
    それじゃあ
    あの時のエレベーターに乗ったとき、ルシエロの兄さんとひろのの嬢ちゃん、シエと俺だけかな?
    それとも・・・。


  • [6]ひろの

    2014/09/24-07:16 

    >シエテ
    ああ、オレ達は帰る途中で。
    他の客が大勢降りた後だったからな。

    シエテと翡翠が一緒だったか。

  • [5]桜倉 歌菜

    2014/09/24-00:43 

    ご挨拶が遅くなりました!
    桜倉 歌菜と申します。
    パートナーはライフビショップの羽純くんです。

    ティアーゼさんとリンドさん、シエテさんと翡翠さん、先日は大変お世話になりました!
    ひろのさんとルシエロさん、笹さんとカガヤさんははじめまして♪

    デパートにある喫茶店へ限定ケーキを食べに行こうと思ったら、
    エレベーターが止まっちゃいました…!
    羽純くんと二人きり…(ごくり)

    と、兎に角動くまで大人しくしていようと思いますっ
    (個別で話す予定となっています)

  • 七草シエテです。
    ひろのさん、ルシエロさん、さっ(舌を噛む)・・・手屋さん、カガヤさん、お久しぶりですね。
    覚えてくださって嬉しいです。
    ティアーゼさんとリンドさん、歌菜さんと羽純さんは先日お疲れ様でした。

    あの時、翡翠さんと私は、買い物の途中でエレベーターのトラブルに見舞われました。
    多くのお客さんが降りるのと入れ替わるように乗っていたのですけど、その時に乗っていましたか?

  • [3]ティアーゼ

    2014/09/23-20:12 

    ごきげんよう、ティアーゼと申します。
    初めましての方もお久しぶりの方もよろしくお願いしますね。

    エレベーターが止まるとは、困りましたね。
    早く動くといいのですが…。

    (現状では個別の予定です。)

  • [2]手屋 笹

    2014/09/23-11:20 

    カガヤ
    「ひろのさん、ルシエロさん、シエテさん、翡翠さんはいつだかの任務振りだね。
    ティアーゼさん、リンドさん、歌菜さん、羽純さんは初めまして、よろしく!


    何でエレベーター止まったの?
    止まってる時間結構長いな…
    直るまでどうしてようかな」

    (特に同乗希望無ければ個別で話している予定です。)

  • [1]ひろの

    2014/09/23-10:15 

    ルシエロ=ザガン:
    笹とカガヤ、それにシエテと翡翠は久しぶりだな。

    ティアーゼ、リンド。歌菜と羽純は初めてか。
    よろしく頼む。

    エレベーターが止まった、か。
    オレは、誰と閉じ込められても構わないが。

    30分から1時間とは、長いのか短いのか。


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