プロローグ
無表情で無口なラビットがシェイカーを振っていた。
ここはラビット・エデンにあるショットバーだ。バーといってもアルコールを提供しているわけではなく、「ルーメンドリンク」と呼ばれる飲み物を提供している。
どんな大酒飲みでも手軽に酔っ払うことができる。酔っ払う原理はよくわからないが、とにかく味のバリエーションが多くて、おいしいのが特徴だ。
「マスター、いつもの一杯くれよ」
チャラい感じのラビットが、カウンターに座るとマスターに声をかけた。マスターは黙ってルーメンドリンクを用意して、ロックでグラスに注ぎ、カウンターを滑らせる。
「どうも、……最近この店にも可愛い女の子来るようになったらしいじゃない?」
「ウィンクルムの神人というらしい」
「そ、その神人、いいよなぁ、ナンパしたいな」
グラスを傾けてルーメンドリンクを飲むチャラいラビット――ジョージという――はいった。
「ジョージ、この店で面倒ごとはやめてくれよ」
「なにいってんの、マスターだってウサレースとかやって、客を盛り上げてんじゃないの。盛り上がってるお客さんを口説いたって悪いことじゃないと思うんだけどなー」
「好きにしろ」
ウサレースとは、このバーで行われている賭け事である。機械仕掛けのウサギが店内に設置されたコースを競争して、勝ったウサギに賭けた人へ配当がいくというシステムである。
解説
ラビット・エデンにあるショットバーでひとときを過ごすエピソードです。
店内に入るとラビットが沢山います。みんなが飲んでいるのはもちろん「ルーメンドリンク」です。
マスターにどんな味でつくって欲しいか注文すると、注文通りのものを出してくれます。
カウンター席とテーブル席があって、どちらでもくつろぐことができます。
この店の目玉である「ウサレース」とはいわゆる競馬みたいなもの。機械仕掛けのウサギが何匹か競争します。
★ストーリーの流れ
前半は、
ルーメンドリンクを飲み、店内のウサレースの様子を眺めながら二人でお話しタイムです。
ルーメンドリンクは大酒飲みでもあっというまに酔っ払ってしまいますが、アルコールは入っていなくて、未成年でも飲むことが許されています。
後半は、
チャラい感じのラビット、ジョージが神人をナンパにやってきます。なんだかんだで、ウサレース勝負をして、ウィンクルムが勝ったら飲み代を全額ジョージが払い、ジョージが勝ったら神人とデートするという条件で賭けがはじまってしまいます。
レース展開は、賭けなれしたジョージの機械仕掛けウサギが先頭を走ります。このままでは負けそうというタイミングで、機械仕掛けのウサギが故障して止まり、ウィンクルムが賭けた機械仕掛けのウサギが逆転勝利します。
ジョージがケチを付けて突っかかってくるので、あしらって下さい。ウィンクルムの仲がいいところを見せれば、ジョージはあっさり心が折れて、ウィンクルムの分の飲み代を支払い去って行きます。
代金はジョージが全額払ってくれますから、好き放題飲んでオッケーです。ただし、チャージ料の300Jrは自腹です。
ゲームマスターより
もう暑苦しいという時期は終わって、秋がやってきたと感じています。
季節の変わり目は体調を崩しやすいので、体に気をつけていきたいと思います。みなさんも体調に気をつけて下さいね。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
手屋 笹(カガヤ・アクショア)
【前半部】 まだお酒を飲める年齢ではありませんし、 こんな所初めてです…。 ところで…カガヤが妙に静かです…どうしたんでしょうか…? 少しお話してみましょうか。 カガヤにただ守られる以上を望んでいる…?わたくしが…? ええと…わたくしは…? (自身の気持ちを理解していないので明確に返答できません)」 【後半部】 (レース前) 「え、え?何ですか?」 (困ったようにカガヤを見る) (あしらい後) 何だったのでしょうあの方… カガヤ、ありがとうございました… いえ…こちらこそごめんなさい …わたくしも何故ああなったのかあまり分かって無くて… (恋人ではないと言われ、確かにわたくしもそう思っていたはずです…ですが…胸が少し痛いです) |
八神 伊万里(アスカ・ベルウィレッジ)
お揃いのスカジャンで月にお出かけなんて素敵 ショットバーって初めてだから楽しみだね ※ほろ酔いでふわふわ このルーメンドリンクは…カルーアミルク味? カフェオレみたいで美味しいです あれ?アスカ君どうして泣いてるの…? よしよし、泣き虫猫さん 私達もう仲良しだよ(撫で撫で え、賭けレース…ですか でもアスカ君がこんな調子なのでそれはちょっと え、やるの? じゃあ心配だから私も一緒にやるよ 二人で同じのに賭けよう 絶対勝とうね、アスカ君 良かった…勝てたみたい 二人で頑張ったからかな? ええと、ごめんなさいジョージさん アスカ君には私がついてないと駄目みたいです 勿論私もアスカ君がいないと駄目なんです 今日のアスカ君可愛かったなぁ♪ |
リヴィエラ(ロジェ)
リヴィエラ: ・前半 私、最近自分の意志で生きてるって思うんです。 お屋敷にいた頃は、私は一歩も外に出る事ができなかった只のお人形でした。 ロジェ様がこうして、色々な場所を見せてくれるから、私の景色に色がついたんです。 ありがとう…願わくば、貴方と同じ景色をこれからも見れますように。 ・後半 (賭けの対象にされて困惑しつつも)ロジェ様、ウサギさんが勝ちましたよ! あ、あの…ジョージ様、私そういう事は困ります…嫌、手を離して…っ、いやぁっ! あっ、ロジェ様…え、えっ!? あ、あの…ロジェ、様…今、何と…こ、恋人!? …ううん、私嬉しいんです。恋人だなんて…ロジェ様、私、私…(ぽろぽろ涙を零す) |
楓乃(ウォルフ)
※アドリブ大歓迎 ショットバーなんて初めて…。 なんだか緊張するわね。ね、ウォルフ。 ん?ウォルフもしかして…(疑いの目) あら、本当。不思議な飲み物。あ、マスターさん。私も同じものをいただけますか?できればとびっきり甘いのを…。 あ、甘くておいしい♪…おかわりいいですか? なんだか…ふわふわしてきたわ。 そうね、ちょっと休んでるね。 …ん、私眠ってたのね。 ウォルフどこぉ…? あ、あそこにいたぁ♪(ふらふら) ウォルフ~な~にしてるの~?(後ろからハグ) あら~お友達?うふふ、こんにちわー♪ あ、いっちゃった。変なのー。 ウォルフは私のしらないとこで~何してたのかなー?もう隠し事はいやなんだから~ ※とりかへばやエピ参照 |
ミルヒヴァイス=フォルモンテ(ソレイユ=ヴェルミリオン)
今日、ソレイユ様に「素敵な場所」へ連れてって下さると聞いてついて来たのですが…これは酒場ですか? まぁ!ルーメンドリンクですか? お酒の様なものとお聞きしてますが… え?好きな味に…ならミルクティー味がいいですわ♪ 凄い!本当にミルクティーの味がしますわ!(段々酔っ払い うさぎさんです!可愛いですわ~! あのウサギさんはもふもふできるのでしょうか? 凄く興味がありますわ! ??? えっと…これは何が起こってるんですの?? あ、頭が朦朧としてきました… 皆さまのお声が遠いですわ~… うされーすが始まってるのですか…? いけませんわ~ ウサギさん…私ももふもふしたいですわ~…(ソレイユの背中に抱きつくようにすやすや |
●無垢な謝罪
ラビットエデンにあるショットバー。ここは辺りが暗くなると、ラビットたちの憩いの場となる。
ルーメンドリンクという、飲むと酔っ払う不思議な飲み物を出してくれるのだ。
「まだお酒を飲める年齢ではありませんし、こんな所、初めてです……」
手屋 笹はカガヤ・アクショアと並んで店に入った。テーブル席に腰を下ろすと、スタッフが注文をとりに来た。
「何を頼んだらいいのでしょうか? カガヤは何を頼むんですか?」
「うーん、俺もこういう所は慣れてないからなー。オススメとかある?」
スタッフに気軽に質問を投げるカガヤ。スタッフは「お二人にはこちらがよろしいのではないでしょうか?」とオススメを提示してくる。
「じゃあ、それ2つね」
「もう、カガヤ、わたくしはそれにするとは決めてませんよ」
「大丈夫だよ、お店の人のオススメなんだからおいしいって、心配ないよ」
ドリンクが運ばれてくるまでの間、カタカタと音がする方に視線を向ける二人。そこには子犬くらいのサイズのロボットが店内のコースを走り回っていた。
「ウサギのロボットでしょうか?」
「ウサレースって書いてあるね」
カガヤは目を輝かせながら、店内を跳ね回る機械仕掛けのウサギを見ていた。
「お待たせしました」とスタッフが運んできたドリンクは、ショートグラスに入っていた。ブルーの透明な液体で、レモンのようなフルーツが三日月型にカットされて、グラスの縁にさしてあった。ドリンクはスパークリングなのか、小さな気泡がきめ細やかに泳いでいる。
「綺麗ですね、カガヤもそう思いませんか?」
「どんな味がするんだろう? 早くのもう!」
笹は笑いながら、カガヤとグラスをぶつけてから、ドリンクを口にした。
口の中にほどよい甘みが広がってくる。爽やかな香りが鼻から抜けて、美味だと感じる。舌触りもきめ細やかな気泡で心地がいい。
「このような飲み物があったのですね」
笹がカガヤの方を見ると、すでにショートグラスを空にしていて、もう一杯注文していた。
ドリンクに酔ってきた頃、カガヤの口数が少なくなっていることに気がつく笹。
(カガヤが妙に静かです……、どうしたのでしょうか?)
「俺、笹ちゃんに言いたいことがあったんだ……」
カガヤがいった。
「……このあいだ、その……小説家さんの手伝いをしたときのことなんだけど、なんで笹ちゃんを泣かせちゃったのか、まだ、よくわかってなくて……。小説家さんが小説を送ってくれたんだけど、それを読んだら、余計にわからなくなっちゃったんだ」
「カガヤ……、あの日のことを気にしていてくれたんですか?」
「笹ちゃんは……ひょっとして。俺は笹ちゃんを守ってればいいってだけじゃない……の?」
カガヤの質問の答えを笹は持ち合わせていなかった。自分自身の気持ちがわからないのに、曖昧な回答はしたくない。
「カガヤにただ守られる以上を望んでいる……? わたくしが……? ええと……、わたくしは……」
二人の重くなった空気を蹴散らすように、チャラいラビットが乱入してきた。
「へーい、そこの天使ちゃん、そんな男とより、俺と飲もうよー」
笹とカガヤは、ノリの軽いラビットの方に視線を向けた。
「俺はジョージっていうんだ。俺なら楽しいお話、いっぱいしてあげるよ! さあ、こっちに来て一緒に飲もう!」
「わたくしはカガヤと……その……」
「突然なんだよ、あんた。俺は笹ちゃんと一緒にいたいんだ。あっち行ってくれ」
カガヤが苛立ちを隠さずにジョージにいう。酔っているせいもあってか、目が据わっている。
「よし、兄さん、俺とウサレースで勝負だ。俺が勝ったら、そこの天使ちゃんは俺と一緒に飲む。兄さんが勝ったら俺は帰る。ついでに飲み代まで払ってやるぜ。どうだい?」
「本当に俺が勝ったら、笹ちゃんにちょっかい出さないんだな!?」
「俺は、約束は違えないぜ」
どんどん話が勝手に進んでいって、笹は困ってしまう。
「カガヤ……」
「大丈夫、いまは負ける気がしないから」
カガヤとジョージはそれぞれ、1匹の機械仕掛けのウサギに賭ける。
レースが始まると、機械仕掛けのウサギがぴょんぴょんと店内のコースを跳びはねて走る。
ジョージの賭けたウサギはぶっちぎりで先頭を走っていた。カガヤの予想したウサギはその後ろを追いかけている。
「おや、兄さん、俺の勝ちみたいだな?」
「最後までわからないよ」
ゴール直前で、『ウ、ウサァ……』という情けない声を出して、ジョージが賭けた機械仕掛けのウサギが煙を出して止まった。
それを追い越して、一位でカガヤが予想したウサギが勝利する。
「ちょっと、今のはなしだぜ! ウサギが壊れてなければ俺が勝ってた」
ジョージがケチを付けてくると、カガヤは低い声でいう。
「ごめん、俺、笹ちゃんと、今、話したいことがあるから、もう邪魔しないで」
ジョージは「おっかねえ」といって、二人の飲み代を置いて去っていった。
「何だったのでしょう、あの方……。カガヤ、ありがとうございました」
笹は無事にことが収まって安心した。
「……あのとき、笹ちゃんが泣いたのはよくわかってないけど……、嫌だったから……、ちゃんと理解したいから……、あの時泣かせちゃってごめん」
カガヤはずっと考えていた気持ちを笹にぶつけるのだった。
「いえ……、こちらこそごめんなさい……、わたくしも何故ああなったのか、あまりわかってなくて……」
(わたくしはカガヤの恋人ではない……、そう思っていたはずですのに……、胸が少し痛いです)
場の賑わいに対して、笹とカガヤのテーブルは静かだった。
●泣き上戸でも甘えたい!
店内に入ると、ラビットたちで賑わっている。みんないろいろなルーメンドリンクを飲んでいる。
「ショットバーって初めてだから楽しみだね」
「どんな所なんだろうな」
八神 伊万里とアスカ・ベルウィレッジはおそろいのスカジャン「月と兎」を身につけていた。
カウンター席につくと、二人は「ルーメンドリンク、2つ下さい」といった。マスターは「はい」とだけいって、シェイカーを振る。
ロングカクテルのようなドリンクが二人の前に差し出された。
「どんな味なのか飲んでみよう」
「楽しみだね」
二人同時にグラスに口を付ける。
伊万里が飲んだルーメンドリンクは、カフェオレのような味がした。
「カフェオレみたいでおいしいです」
「俺のもおいしいぞ。いちごミルクみたいだ。結構いけるな……」
(酒じゃないのに酔っ払ってきた……、酒の勢いに任せていつもいえないことを言ってみるか……)
しばらく飲んでいると、アスカに異変が現れる。
「……ふぇ、……ぐすっ、……うわーん!」
「え? アスカ君どうして泣いてるの……?」
突然泣き出したアスカに驚く伊万里。伊万里もほろ酔いでふわふわしている。
「俺っ、もっと伊万里と仲良くしたいのに……、いつも素直にいえないんだよぉ……」
アスカは伊万里にすがりついて泣き続けた。
「よしよし、泣き虫猫さん。私たちはもう仲良しだよ」
頭を撫でてやると猫のような耳がピコピコと気持ちよさそうに動く。
そこへ、チャラいラビット、ジョージが割り込んできた。
「そこの可愛い天使ちゃん、泣き虫なんてほっといて、俺と一緒に飲まないかい? 俺はジョージ、一緒に楽しい時間を過ごそうよ!」
「え、そう言われても、アスカ君を放っておけませんよ」
「俺の伊万里をもっていっちゃヤダー!」
アスカは完全に酔って泣き上戸というか、甘えん坊になっていた。
「じゃあ、天使ちゃんとウサレースで賭けだ。俺が勝ったら天使ちゃんは俺と一緒に楽しむ。天使ちゃんが勝ったら、俺はキミたちの飲み代を全額払う。どうだい? 悪い勝負じゃないだろう?」
ジョージは話を勝手に進めて、いつの間にか用意していたウサレースの単勝ウサ券を片手で扇のように開いて、「さあ、先に好きなウサに賭けていいぜ」と余裕を見せる。
「賭けレースですか……、アスカ君がこんな調子なので……」
「……レース? 伊万里は俺のなんだからな! ひっく、アンタなんかに絶対渡さない! その勝負受けてやる! あ……でももし負けたら伊万里が……」
アスカはジョージに簡単に乗せられてしまう。
「え、やるの? じゃあ、心配だから一緒にやろうね。二人で賭けよう? 絶対に勝とうね、アスカ君」
「ホントに? ホントに一緒にやってくれるの? うん、……だったら頑張る、……ぐすっ」
ウサレースがはじまると一斉に機械仕掛けのウサギが走り出す。ウサレースで挑んできただけあって、ウサギを選ぶセンスがジョージにはある。ジョージが賭けたウサギはいいポジションを走っていた。
「いいぞ! 俺たちのウサギが先頭走ってる! 俺達のウサギ速いよ!」
アスカは異様なテンションで盛り上がっていた。伊万里は「そうだね、アスカ君」とあやしながらレースの展開を見守る。
終盤に入って、ジョージが選んだ機械仕掛けのウサギが一気に巻き返してくる。追い込み型のウサギだったようだ。集団からどんどん前に出てゴール前では伊万里とアスカが賭けたウサギに並んだ。
ところがジョージが賭けた機械仕掛けのウサギは、「ピタッ」と動きを止める。その隙に伊万里とアスカが賭けたウサギが先頭でゴールするのだった。
「え、勝ったの……? 伊万里、どこにも行かない? よ、よかったよぉ……、ふぇえええん!」
「よかった、勝てたみたい。二人で頑張ったからだね」
アスカは大きな声で鳴き出した。
レースが終わった後にスタッフが機械仕掛けのウサギを点検すると、ジョージが賭けたウサギは、急激な追い上げでギアが故障したとのこと。
「今のは、不運な事故だぜ、無効試合だろ?」
ジョージがケチを付けてきた。
「ええと、ごめんなさい、ジョージさん。アスカ君には私がいなと駄目なんです」
「……そうみたいだな」
ジョージはアスカが伊万里にすがりついて離れようとしないのを見て、二人の飲み代をカウンターにおいて去って行った。
(今日のアスカ君、可愛かったなぁ♪)
その後、酔いがさめたアスカは顔を真っ赤に染めてカウンターに突っ伏した。自分の発言を思い出して恥ずかしさに震えるのだった。
●俺の恋人に手を出すな!
リヴィエラとロジェはショットバーに来ていた。辺りを珍しそうに見回すリヴィエラ。
「そうか、リヴィーはこういう場所は初めてだったな。テーブル席に座ろうか」
「は、はい、ロジェ様」
テーブル席に着くとラビットのスタッフがやってきて注文をとっていった。しばらくすると、二人の元にルーメンドリンクがやってくる。
リヴィエラにはショートカクテル、ロジェにはルーメンドリンクがロックで出された。
ドリンクを飲みながらリヴィエラはいった。
「私、最近、自分の意思で生きているって思うんです。お屋敷にいた頃は、私は一歩も外に出ることができなかった、ただのお人形でした。ロジェ様がこうして、いろいろな場所を見せてくれるから、私の景色に色がついたんです」
「いや、俺は……、君の本来いるはずだった幸せな家庭を奪ってしまったのに、君はそう言ってくれる。ありがとう……俺は君にどれだけ救われていることか」
「ありがとう……、願わくば、貴方と同じ景色をこれからも見られますように」
二人でドリンクを飲みながら話をしていると、チャラいラビットがテーブル席に寄ってきた。
「そこの可愛い天使ちゃん、俺と一緒に飲まないかい? 俺はジョージ、陽気な男さ!」
「こっちは二人で来ているんだ。失礼じゃないか。カウンターに戻りなさい」
ロジェはジョージに文句を言うが、そんなことでは引かないジョージ。
「よし、兄さん、ウサレースで勝負だ。俺が勝ったら可愛い天使ちゃんは俺と一緒に飲んで楽しく時間を過ごす。兄さんが勝ったら俺はあんたらの飲み代を払って帰る。どうだい?」
「ふん、自信家だな。受けて立とう」
リヴィエラは急展開にあたふたとしていたが、あっという間にウサレースがはじまってしまう。
機械仕掛けのウサギがぴょんぴょんと跳ねて、店内のコースを走っていく。ロジェとジョージの賭けたウサギの一騎打ち状態になっていた。
ゴール手前でジョージのウサギが急に失速する。ロジェの賭けたウサギが勝ったのだった。
「ロジェ様、ウサギさんが勝ちましたよ!」
「よし、俺達の賭けたウサギの勝ちだ。これでアンタの言い分はナシ……」
「えー、今のは……あれだ、ウサギにトラブルがあったんじゃないかな? ねえ、天使ちゃん、一緒に飲もうよー」
「あ、あの……ジョージ様、私、こういうことは困ります……嫌、手を離して……、いやぁっ!」
「おい、手を離せ! トラブルだと? ふざけるな、何なら構造を説明して、はっきりと証明してやってもいいんだぞ」
ロジェはそういうと、ジョージの手を払った。リヴィエラの肩を抱き寄せ、唇を重ね合わせる。
「見ての通り、アンタがどうあがこうが、こいつは俺の恋人だ! 俺の女に手を出すな!」
「あっ、ロジェ様……、えっ!? 今、何と……、こ、恋人!?」
「こりゃ、俺には脈ないな、負けたよ」
ジョージは賭けの代償である、二人の飲み代を払うと去って行った。
「リヴィー、大丈夫だったか?」
涙をぽろぽろとこぼしているリヴィエラに優しく声をかけるロジェ。
「私、嬉しいんです。恋人だなんて……、ロジェ様、私、私……」
二人はお邪魔虫もいなくなったところで、ルーメンドリンクを飲みながら二人の時間を満喫した。
●俺が守る!
「ショットバーなんて初めて……、なんだか緊張するわね。ね、ウォルフ」
「ああ、こういう所、懐かしいぜ」
「ん? ウォルフ、もしかしてこういう所来てたの?」
楓乃とウォルフはラビット・エデンのショットバーに来ていた。
「あー、いや、その、俺も初めてだってこういう所は」
「本当に?」
楓乃はウォルフに疑いのまなざしを向ける。
「あ、当たりめーだろ。初めて、初めて! そんな目で睨むなよな。あ、ほら、あいつらがなんか不思議なもの、飲んでるぜ」
ウォルフは楓乃を言いくるめると、ショットバーの雰囲気を懐かしむ。
(故郷にもこういうとこ、あったな。酒は飲まなかったけど、いろんな賭けやゲームに参加したっけ)
カウンター席に二人で座ると、楓乃は早速注文する。
「みんな不思議な飲み物を飲んでいるんですね。マスターさん、私も同じものをいただけますか? できればとびっきり甘いのを」
「俺は水割りにしてくれ」
「はい」
楓乃とウォルフの注文に静かにマスターが応えると、シェイカーを振りはじめる。
出てきたルーメンドリンクは、楓乃のは、虹色の輝きをしていて、フルーツのような香りがした。ウォルフのは、琥珀色で爽やかな香りがする。
ドリンクを一口飲むと、不思議な味わいだが、おいしいと感じた。
「甘くておいしい♪ おかわり、いいですか?」
楓乃は次々にグラスを空けていった。
「お前、飲みすぎだろ……」
「なんだか、ふわふわしてきたわ」
「あー、やっぱりな。そこに長椅子があるから休んどけ」
「そうね、ちょっと休んでるね」
休憩しようと歩いて行く楓乃の後をついていこうとするラビットを見つけたので、ウォルフが呼び止めた。
「おい、そこのテメー、なんか用かよ?」
「おや、ツレの方か。俺は陽気なラビット、ジョージさ。可愛い天使ちゃんを見つけたから、ご一緒させて貰おうと思ってね」
「あいつは今、酔ってるから、ちょっかい出すんじゃねーよ」
「そうか、じゃあ、キミとウサレースで勝負でもしようかな」
ジョージがいうと、ウォルフは久しぶりの賭け勝負にワクワクしてくる。
「ゲーム勝負ね。面白そーじゃん」
「俺が勝ったら可愛い天使ちゃんは、この後、俺と一緒に過ごす。キミが勝ったら飲み代は全部俺が払うっていうのはどうだい?」
「ふざけんな。そんな賭けできるわけねーだろ、って勝手にはじめんな! クソッ!」
ゲーム展開は、賭け慣れしているジョージより一枚上手のウォルフの圧勝だった。
「ゲームは俺の勝ちだな」
「今のは練習ってことで、もう一回やらないかい? 同じ条件で」
「うるせーな。お前が決めたルールだろ!」
楓乃が目を覚ますと、ウォルフとラビットが話し込んでいた。
「ウォルフ~、な~に~、してるの~?」
ウォルフの後ろから怪しい呂律で楓乃が抱きついた。
「うわっ! 楓乃! なに、抱き付いてきてんだ!」
焦るウォルフをスルーしてマイペースに楓乃はラビット、ジョージに挨拶をする。
「あら~、お友達ですか? うふふ、こんにちはー♪」
ジョージはこの二人の仲の良さを見て、駄目だと判断して、飲み代を置いて去って行った。
「今日は、全然、ウサレースに勝てないよ! 勝利の女神様でも口説いてきた方がいいな、これは」
ウォルフはジョージの背中を見送った。
(ウォルフは私の知らないところで、何してたのかな~? もう隠し事はいやなんだから~)
楓乃はしばらく、ウォルフに抱きついて眠っていた。
●もふもふしたいね!
「……ここは酒場ですか?」
「今日はミルヒにルーメンドリンクとウサレースを見せてあげたくてね」
ラビット・エデンのショットバーにミルヒヴァイス=フォルモンテとソレイユ=ヴェルミリオンは来ていた。
「ルーメンドリンクですか? お酒のようなものと伺ってますが……」
「好きな味で頼めるから、なんでもいってごらん」
「まぁ! 好きな味に……、なら、ミルクティー味がいいですわ♪」
「じゃあ、カウンター席に一緒に座ろうか」
ミルヒヴァイスに席をエスコートした後、ソレイユは座って、マスターにミルクティー味とレモネード味のルーメンドリンクを頼んだ。
マスターは「はい」と静かにいうと、シェイカーを振り始める。
カタカタと音を立てながら機械仕掛けのウサギが店内のコースを走り回っていた。
もふもふのウサギから、メタリックなウサギまでいろいろといる。
「うさぎさんです! 可愛いですわー! あのウサギさんはもふもふできるのでしょうか? 凄く興味がありますわ!」
「ウサギが頑張る姿が可愛くてね、ぜひ、ミルヒに見せてあげたいと思ったんだ」
ウサレースを見ながら飲むルーメンドリンクはおいしくて、どんどん飲んでしまう。
(あ、頭がもうろうとしてきました……、皆さまの声が遠いですわ~……)
ミルヒヴァイスが酔い始めていると、チャラいラビットが寄ってきた。
「やあ、可愛い天使ちゃん、俺はジョージ、俺と一緒に飲まないかい? 可愛いキミと一緒に、ルーメンドリンクが飲めたら最高なんだけどな!」
ジョージのナンパがはじまった。
(……ん? ミルヒが絡まれてる)
ソレイユは間に割って入っていった。
「彼女は僕の連れですから」
「おや、兄さんの彼女だったのか。じゃあ、こうしよう。ウサレースで賭けといこうじゃないか! 俺が勝ったら天使ちゃんは俺と一緒に楽しくルーメンドリンクを飲む。兄さんが勝ったら飲み代は全部、俺が払うよ、悪い勝負じゃないだろう?」
「ミルヒを賭けの商品にするってこと? 女性は物じゃないよ。それも酔っている彼女に何を言っているんだ」
「さあ、ウサレースがはじまっちゃうよ! 賭けた賭けた!」
「そんな、勝手に!」
(……仕方ない、いざとなったら体を張ってでもミルヒを守る!)
この日のソレイユは運がついていた。もふもふの機械仕掛けのウサギに賭けてみたところ、このウサギだけ動きが異様に速い。
「……マスター、このウサギなに?」
「新型を入れてみた。速いだろう?」
ジョージは天を仰いで放心していた。
一方でミルヒヴァイスはもふもふのウサギがぴょんぴょんと跳ねて、勝利を喜んでいる姿に気がつく。
(うされーすが始まっているのですか? いけませんわ~)
「ウサギさん……、私ももふもふしたいですわ~」
そういいながら、ソレイユの背中に抱きつくミルヒヴァイス。
「なっ、ミルヒ! 僕はうさぎじゃないよ」
ジョージは「今日は厄日だ……」といいながら、飲み代を置いて去って行った。
ソレイユは完全に酔いきっているミルヒヴァイスの様子を見て思う。
(今日はミルヒを背負って帰らなきゃ)
こうして、夜は更けていった。
依頼結果:大成功
MVP:
名前:八神 伊万里 呼び名:伊万里 |
名前:アスカ・ベルウィレッジ 呼び名:アスカ君 |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 和歌祭 麒麟 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | コメディ |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 09月15日 |
出発日 | 09月22日 00:00 |
予定納品日 | 10月02日 |
参加者
- 手屋 笹(カガヤ・アクショア)
- 八神 伊万里(アスカ・ベルウィレッジ)
- リヴィエラ(ロジェ)
- 楓乃(ウォルフ)
- ミルヒヴァイス=フォルモンテ(ソレイユ=ヴェルミリオン)
会議室
-
2014/09/20-08:41
みなさんこんにちわ!
ミルヒさんは初めましてですね。
宜しくお願いします。
私も未成年なので、ショットバーは初めてなんです。
ウォルフももちろん、初めてよね?(疑心の目)
-
2014/09/19-13:45
手屋 笹と申します。
ミルヒさんは初めまして、よろしくお願いしますね。
(何でしょうこのうさ耳…)
何だか大人の雰囲気のお店ですね…
どきどきです。 -
2014/09/19-01:17
こんにちわー!ミルヒヴァイス=フォルモンテと申します!
初めてお会いする方々ばかりですわね♪
本名は長いですし、どうぞ皆様ミルヒと呼び捨てにして下さい!
宜しくお願い致します♪(ぺこり
私も未成年ですからお酒なんて飲んだ事がなくて…今から楽しみですわ~♪
と、ところでこのウサレースに出てくる機械仕掛けのうさぎさんは…もふってもいいものなのでしょうか?
可能であるのならば是非是非堪能したいですわ~♪
-
2014/09/18-09:05
こんにちは、八神伊万里です。
ミルヒヴァイスさんは初めまして、他の方はお久しぶりです。
私達、未成年だからショットバーなんて初めてでちょっとどきどきしますね…
みなさん、よろしくお願いしますね。 -
2014/09/18-08:53
こんにちは、私はリヴィエラと申します。
休暇として参加させて頂きます、宜しくお願い致します。
しょ、ショットバーというのは初めてですが、どういう所なのでしょう…楽しみです。